妖精の尻尾の音竜   作:ハーフィ

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さて…戦闘か…

コイツの一人称「オレ」なのか「わい」なのか…。


ちょっと胸糞注意。


アミク VS ジャッカル

静寂。死体が転がっている会議室だった部屋の残骸。

 

そこで二人の人物が向き合っていた。

 

 

その内の一人────アミクはジッと相手の出方を窺う。

 

 

(どんな魔法を使うんだろう…)

 

最初に評議院の本部…ERA全体を包むような衝撃からすると強力な魔法であることは間違いない。

まずは相手の攻撃を見て…。

 

「そういや言ってへんことがあるんや」

 

「…」

 

もう一人の方、ジャッカルが声をかけてくる。

なんだ、油断させる作戦か?

 

「さっきわいを殴ったやろ?手ェ見てみぃ」

 

「え…?」

 

手に違和感を感じて言われた通り見てしまった。手にはいつの間にか謎の模様があって、手全体が眩く光っている。

なんだこれ、嫌な予感が…。

 

そして────

 

 

 

ドガァン!!

 

 

「あがっ!!?」

 

 

突然手が爆発した。一瞬の激痛が手から全身に広がる。

手を押えて痛みに耐えた。ジャッカルはそんなアミクを見て愉快そうにしている。

 

「オレの呪法は触れたものを爆弾に変える力や。下手に触れたらアカンで」

 

「ば、爆弾…?ボマーじゃん…『ボマーに気を付けろ』とか言いながら他人にベタベタ触って起爆する人じゃん…」

 

「何言うとるん、姉ちゃん」

 

軽口を叩いているがダメージは大きい。特に爆発された手が傷だらけだ。滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)のタフさのお陰でこの程度で済んで良かったというべきか…。

 

「触れちゃダメなら…触れないで攻撃すればいいだけだよ!」

 

幸いアミクには遠距離攻撃もある。それらを中心で戦えばいい。

 

「『音竜弾』!!」

 

いくつもの音の塊を射出してジャッカルに攻撃する。

 

「へぇ、変わった魔法を使うんやな」

 

ジャッカルは避けようという動きすら見せずにそれらを受け入れる。音の弾が着弾すると衝撃波が撒き散らされた。

 

(よし、アイツに触れさえしなければどうということはない!)

 

そう思っていたアミクだったが…。

 

「なんやこれ、音波か?騒がしそうな魔法やな。わいも似たようなもんやけど」

 

ほぼ無傷なジャッカルの姿があった。

 

「効いてない!?」

 

『音竜弾』はシンプルな遠距離技ではあるが、威力も弱いわけではないはずだ。それをケロリと耐えるとは、耐久力も高いようだ。

 

(『音竜弾』じゃダメージは雀の涙…ならば!)

 

「『音竜の』…」

 

両手を前に突き出して音を収束させる。

 

「お?今度は何や」

 

「『追複曲(カノン)』!!」

 

一発の火力が高い魔法ならダメージを与えられるはず。

音が込められた塊がジャッカルに真っ直ぐに向かう。今度もジャッカルはそれを避けようとはしなかった。

 

ただニヤッと笑うのみ。

 

 

ドオオオオン!!!

 

 

音の塊は衝撃波どころか爆発を起こす。その衝撃で突風が巻き起こり、土煙が立ち込める。

 

 

「うわっ!?こんなだっけ!?」

 

 

ツインテールが風ではためくのを感じながら爆発した場所を見る。

流石に今のはジャッカルも無事では済まないはずだ…。

 

 

しかし土煙が晴れた時、そこにピンピンしているジャッカルを見てアミクは目を見開く。

 

「今の喰らってもノーダメなの!?」

 

「いーや?ちぃっとは通ったわ」

 

ジャッカルはヘラヘラとしながら腕の傷を見せてきた。それだけ?

 

「…!そっか。さっきの爆発…」

 

アミクの魔法があんな風に爆発するのに違和感を感じていたが、あの爆発はジャッカルが起こしたものだったのだろう。『追複曲(カノン)』が当たる直前に爆発を起こして衝撃と爆風、そして爆音で攻撃を防いだのだ。

アミクの場合、爆音で自分の音を相殺されるのが痛い。

 

「ま、まだ!『音竜の咆哮』!!」

 

今度は音のブレスを放って見たものの…。

 

「爆」

 

ドオオン!!と爆発を起こされて音のブレスが散らされた。

 

「やっぱり爆発系の魔法はいつだって強すぎるよ…」

 

攻撃に使っても火力は十分、防御に使っても絶大な強固さを誇る。戦闘でも超強力で有用な魔法だ。

 

「魔法?そんなもんと一緒にされたら困るわ」

 

ジャッカルが嘲笑する。どういうことだ、どう見ても爆発の魔法だが…。

 

「そういやもう一つ言い忘れてた。オレ達冥府の門(タルタロス)が使うのは魔法じゃねえ。『呪法』!」

 

「呪法…?」

 

聞いたこともない。

 

「魔法の上位に存在する力。魔導士如きには勝てんわ!」

 

魔法とはまた別の力か。言われてみれば目の前のジャッカルからはほとんど魔力を感じられない。なのにあそこまで強力な爆発を使えるということは…彼の言っていることは本当なのだろう。

 

「そんなのが存在するなんて…」

 

アミクが衝撃を受けていると、ジャッカルは両腕を振るう。

 

「!『音竜壁』!!」

 

嫌な予感がして音の壁を張る。その直後。

 

「『爆螺旋』!!」

 

床が爆発し、爆風と爆炎がアミクを包む。

 

「ぐぐ…!」

 

音の壁は少しは耐えてくれたが、すぐにヒビが入ってしまう。

 

「耐えるんかいな!それ、もういっちょや!」

 

ジャッカルは楽しそうにそう言ってさっきよりも強い爆発を起こした。

 

「きゃああああっ!!!」

 

今度は耐えられず、音の壁は割れてしまう。アミクは衝撃で吹っ飛ばされてしまった。

 

「うぐっ…!」

 

地面に倒れ込み、体を滑らせた。肌が削れて痛みが走る。

 

「痛っ…やっぱ爆発は厄介だよ…」

 

さっき言った通り、爆発は衝撃や爆風と共に爆音も生む。それがアミクの音を掻き消そうとしてくるのだ。

 

「なんや、この程度かいな」

 

ジャッカルはつまらなさそうに言う。もう少し耐えてくれると思っていたらしい。

 

彼は何の気なしに床を見て────何かを思いついたようだった。

邪悪にニィ、と口を大きく歪める。剥き出しの尖った歯が見る者には恐怖を与えられるだろう。

 

「なぁ、もっと遊ぼうや」

 

「は…?」

 

ヨロヨロと立ち上がったアミクに楽しそうな声をかける。そしてジャッカルは床に落ちていた何かを掴む。

 

「ほな、受け取りな!」

 

ジャッカルがその何かを投げてくる。

 

「あ…」

 

それは────死体だ。

 

転がっていた議員の死体のうちの一つ。

 

「この…!!」

 

頭に血が上る。死体をボールのように投げるなんて…死者を冒涜するようなことを…!!

 

アミクは投げつけられた死体を抱きかかえるようにしてキャッチする。そうしてジャッカルを射殺さんばかりに睨んだ。

睨まれているジャッカルは軽薄な笑みを浮かべたままだ。それが空恐ろしく感じられた。

 

「死体にすら優しくするなんて、優しさを通り越して愚かの極みやな」

 

「死んでるからって手荒に扱っていいわけがない…人を…なんだと思ってるの!!?」

 

「オモチャや」

 

一瞬、時が止まったように感じた。

なんて言った?人を人とも思っていない?

ジャッカルの目を見る。彼の目はアミクを見ているが、本当に人間を見ているようなものではなかった。

ただただ純粋な悪意がアミクの心を貫き、彼女は何も言えなくなってしまった。

 

「それよりソレ(死体)、早く捨てた方がええで」

 

ジャッカルがアミクが抱えている死体を指差す。突如、死体が光り出す。

 

「え…ま、まさか…」

 

ハッと気付いて死体を下ろして離れようとする。だが、間に合わなかった。

死体を下ろそうとする直前。

 

 

ドオオオオオン!!!

 

 

死体が大爆発を起こした。土煙が辺りを包み込む。

 

「ぁ…!!」

 

小さな悲鳴が掠れるように消えていく。土煙が晴れる。

 

「…ぅ…」

 

血だらけだった。体のあちこちが黒焦げになり、両腕はボロボロ。服も一緒にボロボロになって露出が多くなってしまった。瞳の光が消えかかっている。その僅かな光もすぐに消えた。

両膝を付いた体勢だったアミクは、虚ろな瞳のまま前のめりに倒れてしまう。

 

「ハハハハハハッ!!投げ捨てればいいものを、変な道徳心に縛られてるからそうなるんや!」

 

嘲笑うジャッカル。すぐに死体を投げれば爆発に巻き込まれなかったかもしれない。なのに、彼女はそれができなかった。

 

「そのせいで死んでもうたら意味ないやんけ!ほんと人間って馬鹿やなぁ」

 

ジャッカルはアミクの体を足で踏む。そして驚いたような声を上げた。

 

「しっかし、体が残ってるなんてすげえやないか!無駄に頑丈な女やな」

 

体が四散するほどの威力の爆発にしたはずなのだが。まぁ、どうでもいい。どうせこの女は死ぬのだ。

 

「さいなら、楽しかったで。ちぃっとだけな」

 

そのままアミクの体を起爆させようとした。

だが、ピクリとアミクの腕が動く。

 

「『音竜の響拳』!!」

 

咄嗟に彼女が起き上がり、ジャッカルの顔面をぶん殴る。

 

「ぐえええ!!?」

 

ぶっ飛ばされたジャッカルは近くの瓦礫に突っ込んで埋まってしまった。しかしすぐに瓦礫を吹き飛ばして復活する。

 

「気絶したフリとか、姑息やないか!!」

 

「貴方に言われたくない!!」

 

第一、気絶したフリじゃない。本当に一瞬だけ気絶してた。意識が覚醒したら踏まれてたので咄嗟に起き上がり攻撃したのだ。

 

「ハハ、つーか忘れてへんか?オレに触れたらマズイんやで?」

 

ジャッカルに踏まれた背中と彼を殴った拳に違和感。爆弾に変えられたのだろう。

 

「はぁ…ふぅ…私も言い忘れてたことがあるんだ」

 

全身が痛い。血も流れてる。目が霞む。だがここで倒れるわけにはいかない。

 

魔法を発動する。

 

「『防御力強歌(アンサンブル)』!!『持続回復歌(ヒム)』!!」

 

直後、背中と手が爆発した。

 

「ぐぅっ…!!」

 

痛い。

 

でも、耐えられる。我慢できる。このくらいなら大丈夫。

 

「なっ…!?」

 

爆破されても立っていたことに驚いたのか、ジャッカルは余裕そうだった表情を崩した。

 

「…ふぅ…私、強化も回復もできるの」

 

持続回復歌(ヒム)』のお陰で満身創痍だったアミクの体が少しずつ、ゆっくりと癒えていく。

 

「…お前、付与術(エンチャント)が使えるんか!珍しいわな!」

 

意外そうな表情だった。

 

「そうだよ…あともう一つ」

 

ペロリ、と舌を出して口の周りを舐める。

 

「爆発って音も大きいから、美味しいんだよね」

 

「…はぁ?どういうことや」

 

「せぇい!!」

 

アミクが瞬時にジャッカルに近付き、思いっきり蹴り飛ばす。

 

「く…学習しない奴やなぁ!!」

 

案の定、アミクの足に模様が付いて輝き出した。そして爆発。

 

音もなく(・・・・)

 

「…あ?」

 

おかしい、なぜ音がしない。そういえばさっきも爆発した時音が聞こえてなかった。さっきは気にしてなかったがなぜだ。

 

 

「…もぐ」

 

爆発したアミクといえば、何かを食べている動作だ。そしてゴクンと呑み込む。

 

「…こういうこと!」

 

「い、意味分からんて!!」

 

ジャッカルは困惑していた。彼はアミクが爆音を食べたとは思い至ってないみたいだ。

まぁ、確かにナツとは違って分かりづらいかもしれない。音食べるって見た目空気食べてるようにしか見えないし。

 

ウェンディと被るやんけ。

 

 

「分かんないならいいや。もうその爆発の突破法も見つけちゃったしね!」

 

「そんなもんが突破法やて!?ただ耐えて我慢してるだけやないか!!」

 

 

そう、防御力も上げて持続的に治癒してひたすら爆発に耐える。さらに爆音を食べて魔力も体力も回復。その魔力でまた自分の耐久力を上げる。

これぞ半永久機関。ほぼ完璧な布陣だ。

 

「貴方のやり方は大体はわかった。もうここからは思い通りにはさせないよ!」

 

ドンと足を踏み鳴らしてジャッカルに強い視線を向けた。人を自分の遊び道具としか思っていない奴になんか負けたくない。

平気で多くの人を虐殺し、人の死を笑うような人物を許すわけにはいかなかった。

 

「謝っても許さないんだから!!えーと、ジャック?」

 

「…調子乗ったらアカンで、人間」

 

その視線を向けられたジャッカルは、さっきまでとは違い少しだけ警戒と怒りが篭った目でアミクを見返したのだった。

 




まさかの痩せ我慢ごり押し戦法。

ゲームでも防御バフしまくって耐えまくるのが割と強かったりするんですよね、多分。

っていうかジャッカル原作よりも酷いことしてない?いや、原作も大概でした。
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