っていうかジャッカルって鼻くそも爆弾にできそう
鼻くそ飛ばしてくるジャッカルとか嫌だわ
いくつもの爆発がアミクを襲う。
「固くなったゆーても限界はあるはずやろ!」
爆発、爆発、そして爆発。爆風と爆炎がアミクに叩き付けられる。
だが。
「うううああああ!!!」
それらを全て耐えながら強行突破してくるアミク。
「嘘やろ!?」
いくら耐久力を上げたとはいえ、無敵ではないはずだ。事実、小さくはない傷がいくつもアミクの体に出来るがそれを全て無視して無理矢理突っ込んできていた。
「『爆螺旋』!!」
慌てて地面を爆発させるも、それも物ともせずに突き破ってきた。
呆気にとられるジャッカルの目の前まで迫ったアミクは手の平を彼の顔面の手前に広げる。ギリギリジャッカルに触れない距離だ。
「触れずに『音竜波』!!」
「ぐがっ!!」
手の平から衝撃波を放って触れずにダメージを与える。
「クソが!!」
ジャッカルは悪態を吐くとアミクに向かって手を伸ばした。
「もっともっと!!」
しかしお構い無しにアミクの拳がジャッカルを襲う。
「ごおっ!!?」
「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ドーン♪!!」
リズミカルに拳を打ち込み、締めはアッパーカット。ジャッカルのお腹に強烈な一撃を叩き込む。一撃ずつ威力が上がっていく謎仕組みのお陰で大ダメージだ。
苦悶の声を漏らしながら打ち上がったジャッカルに向けてブレスを一発。
「『音竜の咆哮』!!」
反応もできずに音波の本流に巻き込まれるジャッカル。吹っ飛ばされて瓦礫に落下した彼はペッと唾を吐いて起き上がる。
(さっきまでええようにやられとった癖に、急に対応してきよる…!)
適応力が高い。あっという間に自分相手に善戦────それ以上に渡り合っている。
大きな火花を撒き散らしながらアミクが爆発する。さっき何回もジャッカルを殴った分が一気に起爆したのだ。しかし、ジャッカルは素直に喜ぶことはできなかった。
案の定。
「ビリビリする!すっごいビリビリする!」
彼女は手が皮が剥がれて血まみれのボロボロになりながらも、しっかりと自分の足で歩いてきた。口をモグモグさせているのを見るにしっかり音も食したらしい。
「…お前、何もんや」
ジャッカルが鋭い視線をアミクに向けた。アミクは立ち止まって胸を張る。
「言ったでしょ!私は
「…
ジャッカルはアミクの腕にある紋章を見る。さっきはあまり気にしてなかったが、確かに
バラム同盟の他二つのギルドを壊滅に追い込んだギルド。
「六魔やグリモアをやったギルドの奴か…こりゃおもろいな」
ジャッカルはニヤッと笑う。
「たかが一介のギルドにやられるなんてあいつらも情けへんと思っちゃいたが…ちぃっとは考えを改めんとアカンっぽいな」
「もう舐めてかかるのは止めた?」
勝気な顔で得意げに煽ってくるアミクの表情が腹立たしい。
だがあの顔を恐怖と苦痛、絶望で歪ませたら最高の愉悦になるだろう。
「つーか姉ちゃん、敵と悠長にお話とか随分と油断してるんとちゃうか?」
「確かに!」
素直なアミクはすぐにジャッカルを攻撃しようと飛び出そうとした。しかし。
「『地雷呪法』」
アミクの足元に魔法陣のようなものがあった。呪法というから正しくは呪法陣か?
「そこから動いてみぃ、ドカーンや!」
「私は一向に構わん!!」
躊躇などなかった。アミクが陣から足を離した途端、今までよりも強力な爆発が起こる。威力をすごく高めた爆発だ。
「頭沸いとんのか、ワレェ!!?」
あまりの躊躇の無さと無謀さにジャッカルが目を剥いて驚愕する。だがすぐに笑みを浮かべた。
「せ、せやけどあの威力なら流石にアイツも耐えられへんやろ──」
「痛くなぁぁぁい!!!」
「んなアホな!!?」
嘘だ、めっちゃ痛い。全身が悲鳴を上げてる。防御貫通してきてダメージが結構入ってる。傷ついた足を無理矢理走らせてる。血がまた頭から流れるのを感じる。
だけど爆音も食べたし多少は回復した。意地でも根性でも動きを止めない!
「『音竜の
渾身の体当たり。衝撃波を放ちジャッカルを思いっきりぶっ飛ばした。
「反撃ダメージなんて恐るに足ら──」
ボォン!!
「いいっーーー!!?」
さっきの爆発のダメージもあってすごい痛い。触れる度にダメージ覚悟とか害悪すぎる。
でも我慢だ、我慢。女は我慢が得意!
「ええ加減にせいや!!」
ヤケクソになったようにジャッカルが我武者羅に爆発を起こしてアミクを襲う。アミクは冷静にその爆発を躱してジャッカルに近付く。
「『爆螺旋』!!」
「つッ!!」
至近距離で爆発に巻き込まれ、アミクは後ろに仰け反る。
「ようやってくれたな!!今度はこっちの番や!!」
ジャッカルが大きく拳を振りかぶって一歩踏み出した。
「こっちこそ!」
しかしそれはアミクの狙い通り。
「さっき地雷やってくれたお返し!!」
ジャッカルの足元から衝撃波が飛び出した。
「『音竜の
直前に仕込んでいた地雷衝撃波だ。衝撃波に撥ねられたジャッカルの身体が宙に浮く。
「『音竜弾』!!」
集中砲火。いくつもの衝撃波がジャッカルを襲う。
ドサッと地面に落ちるジャッカル。彼は尻餅をついた体勢のままゆっくりと近づいてくるアミクを見た。
(なんや、コイツ…)
どんなに爆発を食らっても、どんなに傷ついても、物ともせずに。耐えて耐えて耐えて。自分に立ち向かってくる。
執念深く、どこまでも追ってくる。危険があろうと、無謀だろうと撥ね除けて迫ってくる。
ずっと。ずっと。
諦めずに。
この久しく感じていなかった感覚。背中が冷たくなり、鳥肌が立つ。
(なんで、人間如きに…)
瞳が揺れ、彼女から目を離せなくなる。離したら終わりだ、と脳の中で告げる。
(オレが…震え…)
体がブルブルと揺れる。体が思うように動かない。冷や汗が服に染み込み、握りしめた指がヌルッと滑った気がした。
これは…恐怖?
バカな。
そんなことがあるはずがない。
「あり得へん…」
自分は人間なんかよりも上位の存在なのだ。人間とかいう下等生物に自分が恐れを抱く?
ブルブルと震え、もはや痙攣の域に達したジャッカル。怒りで震えているのか、恐怖で震えているのか、もう彼には判断できなかった。彼はクワッと顔色を変え、白目を剥く。
「あり得へんわぁ!!」
ジャッカルの姿が変わる。
体が大きくなり、服が破ける。あらゆる体毛が増え、毛深くなった。顔も人間のものではなく獣のような頭部と成り果て。牙が鋭利に生え揃い、爪も鋭く伸びていた。
彼はもう人間の姿を保ってはいなかった。
「グオオオオオオオオ!!!」
「うひゃあっ!!?第二形態もあるのー!!?」
まるでエルフマンの
「ガアアアアア!!!」
怪物化したジャッカルがその大きくて太い腕を振り絞り、思いっきりパンチを放ってきた。
「ぅがっ!!」
慌てて腕でガードするが、威力がさっきとは違う。腕がミシミシと悲鳴を上げているのが聞こえてくる。
さらに彼の場合これだけではない。
ジャッカルの拳が触れている部分が爆発する。
「いやあっ!!?」
後ろに吹っ飛んだアミクは受け身も取れずに地面を転がった。それを追撃しようと駆け出してくるジャッカル。
「グオオオオオオオオ!!!」
アームハンマーをアミクに叩きつけるが、アミクはそれを転がって避けた。叩き付けられた地面が爆発する。
ジャッカルは獣のように鋭い目で忌々しげにアミクを睨んだ。
「人間如きが!!オレら悪魔に上等くれとんじゃねえぞ、コラァ!!」
「あ、悪魔…?」
悪魔。この男の正体が悪魔!?
この姿は悪魔ゆえにということか?しかも「オレら」って…まさか
いやそんな疑問は後だ。
「滅べ!!人間どもぉ!!」
腕を振り上げ、叩きつけてくる。それも横に跳んで避けた。爆発するが爆音を頂く。
「…貴方達がどんな目的でこんなことするのかは分からないけど…」
ジャッカルを睨み、自分の中の魔力のスイッチを押す。融合した魔力が溢れ出す。
「私が戦っているのはだれかを守るためや弔いのためだけじゃない!!
(ウェンディ、お願い!)
風が吹き荒れ、音が猛る。音と風の共鳴。
「モード天音竜…!!」
アミクの様子が変わったのを見てジャッカルが目を見張った。
「強化形態があるのは貴方だけじゃないよ!」
「…図に乗るなぁ!!」
ジャッカルが腕を振るうが、もうその場にアミクはいない。
「『
別の方向から風を纏った音の塊が発射され、すごい勢いでジャッカルの背中に着弾する。衝撃波が生じ、暴風が吹き荒れた。
「ガアアッ!!」
ジャッカルは苦悶の声を漏らす。速すぎて爆発が間に合わない。さっきとはスピードもパワーも桁違いだ。
「…なぁっ…!!?」
一瞬でジャッカルの目の前に移動した少女。驚くジャッカルの顎を蹴り上げ、宙へと浮かべた。
アミクも飛び上がり、宙を浮くジャッカルの上に移動。
「『天音竜の』────」
足に風と音を纏い、竜巻のように大回転。
「『舞姫』ぇ!!」
ドゴォ!!と回転の勢いを付けたまま、思いっきり足をジャッカルの脳天にぶち込んだ。
一瞬でジャッカルの姿が消え、下の方から轟音が響いた。地面に叩きつけられめり込んだのだ。地面がひび割れ、クレーターになる。
そのクレーターの中心に大の字となって倒れているジャッカル。彼の姿がどんどん戻っていく。獣人のような姿から、人間の姿へと。
「…ふぅ…か、勝った…ヤバかった…」
「モード天音竜」を解除し、アミクはようやく一息ついた。魔力はもうすっからかんだ。体も今まで無理して動かした反動なのか、あまり動けない。精々ブルブルと震えながらゆっくりと歩くくらいしかできなかった。
手強い相手だった。とにかく爆発するのが大好きな強敵だった。厄介な魔法…いや「呪法」とかいうものに大分苦しめられたが、自分の魔法と特性、そして根性で勝ちをもぎ取った。
体はもうボロボロだが話を聞くくらいならできるだろう…。
アミクはフラフラとジャッカルに近づく。
「くはは…いや…ほんま参ったね…」
彼は負けたというのに笑っていた。
「ここまでされたんわ初めてや…悔しいわ…」
人間に敗北するなどジャッカルにとって初めてのことだった。見下していた人間なんかに。
「こんなイカれとる奴がいるとはなぁ…オレもぶったまげたわ」
相変わらず愉快げなジャッカルにアミクは淡々と問う。
「聞かせてもらうよ。なんで評議院を襲ったの?」
「教えるわけあらへんやろ…どの道知ったところで…お前も手遅れや…」
「…!?」
ジャッカルの身体が光り出す。周りに地面に光りの柱が立ち、目の前が眩しくなった。まるでこの場所だけが黄金の光に包まれているのかのよう。
「な、何!?」
「すまん…キョウカ」
ジャッカルは誰かの名を呟く。
「せめて…コイツを道連れに…堕ちるわ…」
光が強くなる。この光はERA跡地全てを包んでいるようだった。
「まさか…自爆!?どこまでも爆弾キャラだね…!!」
急いでここを離れなければ。巻き込まれてしまう。
アミクは傷だらけの身体に鞭打ち、足を引きずってでも離れようとする。
しかし、アミクは忘れていた。
ボォン!!
「あ”っ…!!?」
先ほど、ジャッカルを蹴った分が爆発したのだ。よりによって足にダメージを喰らってしまい、地面に倒れこんでしまった。もう立ち上がれそうにない。
魔力が空っぽのせいで魔法も使えない。詰みか?
「う…逃げなきゃ…」
「はははははっ!!逃げられんわ!!もう間に合わへん」
這ってでもジャッカルから離れようとするアミクを滑稽なものを見るかのように笑うジャッカル。
「爆弾はオレ自身が死んでも止まることはないわ…!!だからどうやってもお前は死ぬ…!!」
「嫌だ…!!まだ死ねない…!!死にたくない…!!」
「無様やな!!かはははははっ!!」
早く。早く早く。遠くに行かなきゃ。このままだと死ぬ。マジで死ぬ。
眼球に黄色い光が突き刺さって前がよく見えなくなってきた。そろそろヤバいかもしれない。
「せいぜい足搔け…!!地獄で会おうや…!!」
「いや…いや…!!」
万事休すか。
「楽しかったで、
「いやああああああああああ!!!」
誰か、助けて…!!
誰か────────
●
その日、人々は目撃した。
ERAのある高所。そこで地面が揺れるような轟音と共に眩い黄色の閃光が破裂したのを。
ニュースで評議院で多くの死者が出たことを報じられたのはすぐのことだった。
果たして、その死者の中には巻き込まれた一人の少女も含まれているのか…。
悪魔の何がヤバいかっって自爆特攻できるとこヤバいんだよね