妖精の尻尾の音竜   作:ハーフィ

21 / 202
今回から始まる!

ファントム!
これからちょくちょくウルがしゃべります。
でも気にしないでww


幽鬼の支配者の交響曲
前兆の幽鬼(ファントム)


「帰ってきたー!」

 

「結局得したのはルーシィだけだったね」

 

「ま、しょうがないよ」

 

アミク達はマグノリアに帰ってきた。

 

「ねえその鍵売ろうよ」

 

「何てこと言うのかしらこのドラネコ!?」

 

「それ溶かして金の延べ棒にする、の」

 

「だめよ!?」

 

 

そこで、アミクは気になってルーシィに聞いた。

 

「ところで、その鍵って何の鍵なの?」

 

「あ、これはね人馬宮のサジタリウスの鍵なのよ!」

 

「人馬!?」

 

「人馬、ねぇ・・・」

 

アミクは頭だけナツでそれ以外全部馬である生物を思い浮かべた。

 

「キモいわ!!」

 

「なんで俺なんだよ!!」

 

ルーシィとナツから文句を言われた。

 

 

『――――へぇ、その子星霊魔導士なのか』

 

グレイの胸に掛けられているネックレスから声が聴こえた。

氷のウルだ。

アミクにしか聞こえていないが。

 

「そういえばグレイ。そのネックレスはどう?」

 

「ああ、氷くっつけただけなのにすっげぇ安心感があるぜ。

 ウルがいるみてぇだ」

 

『・・・』

 

思いの他鋭い言葉にウルは黙った。

 

 

「それより、お前たちの処分はギルドに戻ったら決定する」

 

エルザのその言葉に皆固まった。

 

「あ、あ”~~」

 

「忘れかけてた・・・」

 

「・・・ま、まさかアレ!?アレになっちゃうの!?」

 

アミクが恐怖で震えながら叫んだ。

 

「え!?アレってなに!?」

 

 

「アレは嫌だぁぁぁぁあああ!!!」

 

「アレは怖いよー!!」

 

「あ、アレはネコに使っていいものではない、の!!」

 

「だからアレって何なのよ―――!!」

 

グレイ達も叫ぶのでルーシィも釣られて怖くなってきた。

 

 

アミクはガタガタと震える。アレはだめだ。

 

アレをやられてしまえばきっと・・・。

 

「へ!だーいじょうぶだって!!きっとじっちゃんなら、よくやったって褒めてくれるさ!!」

 

ナツがポジティブに言った。

 

が。

 

「いや、アレは確実だろう。ふふ、久々に腕が鳴るな」

 

エルザが無慈悲に告げた。

 

ナツの顔が引きつる。

 

「嫌だぁあああああああっ!!!!

 アレだけはぁっ!!!アレだけはっ!!!

 嫌だああああああああ!!!」

 

 

「だから!アレって何なのよおおおおおお!!?」

 

ルーシィは絶叫した。

 

 

「まあ、私としては今回の件は概ね海容してもいいと思うが・・・

 決めるのはマスターだ。覚悟しておくんだな」

 

「はぁああああ~~~」

 

アミクは大きなため息をついた。

今回勝手にS級クエストに行ったことは反省しているが、

後悔はしていない。

 

だが、アレをやらされるとは・・・。

 

ナツはエルザにズルズル引きずられ、アミク達もどんよりと帰っていった。

 

 

 

「・・・ねぇ、さっきから見られてない?」

 

アミクが先ほどからこちらを気まずげに見る人々に気付いて言った。

 

そして、アミクの地獄耳がとある人々の会話を捕らえる。

 

 

「『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』のギルドが・・・」

 

「あんなことに・・・」

 

 

「うーんまた誰かやらかしたのかしら・・・ってちょっとアミク!?」

 

アミクはルーシィの制止も聞かずにギルドに突っ走る。

 

慌ててナツ達も追いかけてくる音が聞こえる。

 

 

 

そうして一足先にギルドに到着したアミク。そこには――――

 

「なに、これ・・・」

 

巨大な鉄柱がいくつも刺さったギルドがあった。

 

 

「なっ!」

 

「そんな・・・」

 

「一体誰が・・・なの」

 

「俺達のギルドが・・・!」

 

追いついたナツ達も絶句する。ナツに至っては少し涙目だ。

 

 

 

「なにがあったというのだ・・・」

 

エルザが怒りに拳を握っていると―――。

 

「ファントムよ・・・」

 

後ろから声が聞こえたので振り向くと、そこには悲しげな顔をしたミラがいた。

 

「ミラさん・・・」

 

「ファントム、だと・・・!」

 

「悔しいけど、やられちゃったの・・・」

 

そう言って顔を伏せる。

 

 

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)』ギルド、地下。

 

 

 

「上は使えそうにないからここを使ってるの」

 

ミラの言う通り、ここでは皆酒を飲んだり、ファントム――――『幽鬼の支配者(ファントムロード)』の悪口を言ったりしていた。

ファントムに攻め入る話までしている人もいる。

 

 

「エルザが帰ってきた!」

 

「アミクにナツ達とも一緒だぞ」

 

 

アミク達は軽く手を上げてマカロフの方に向かう。

 

マカロフは酒を飲んでいた。見た感じいつもと変わらない様子だ。

 

 

「よっ、おかえり!」

 

マカロフは呑気そうな顔でアミク達を出迎える。

そんなマカロフにナツは突っかかった。

 

「じっちゃん!!酒なんか飲んでる場合じゃねぇだろ!?」

 

だが、マカロフはナツの言葉を無視し、プンプン怒りだす。

 

「おー、そうじゃった、お前たち!勝手にS級クエストなんかに行きおってからにー!」

 

さほど本気で怒っているわけでもなく、軽い感じだ。

 

「今はそれどころじゃねぇ!!」

 

「罰じゃ!今からお前達に罰を与える!!覚悟せいっ!」

 

そう言うや否やマカロフはナツとグレイ、ハッピーとマーチには「てい」とチョップをしていく。

 

「てい」

 

「きゃっ」

 

「てい」

 

「おじいちゃん、セクハラだよ・・・」

 

ルーシィとアミクに至ってはお尻を叩いてきた。

 

そのマカロフの傍でミラが「マスター、ダメでしょ!」と怒っていた。

 

「マスター! どんな事態かわかっているのですか!」

 

「ギルドが壊されたんだぞ!!」

 

エルザやナツの言葉もけんもほろろだ。

 

「まぁまぁ落ち着きなさいな・・・騒ぐほどのことでもなかろうに・・・

 ファントムだぁ?誰もいないギルドを狙って何が嬉しいのやら・・・」

 

アミクはそれを聞いてほっ、と息をついた。

少なくとも怪我人はいないってことだ。

 

 

「不意打ちしかできんような奴らに目くじら立てる必要はねぇ・・・放っておけぇ!」

 

そう口にしてからまた酒を飲み始めた。

 

と思ったら「ぬ・・・?」とグレイのネックレスを見る。

 

「・・・グレイ、そのネックレスにある氷はなんじゃ?」

 

「これは・・・簡単に言うとガルナ島でアミクが付けてくれたんだ。

 あの『絶対氷結(アイスドシェル)』の残りカスみたいなものらしいぜ」

 

「ふぅむ・・・」

 

マカロフは意味ありげにこっちを向く。

アミクは冷や汗を流して目を逸らした。もしかして、ウルのことバレてる?

いや、マカロフにならバレてもいい気がしたが・・・。

それにしても氷の中に微かにある魔力に気付くとは、さすがマカロフだ。

 

 

「まぁよい、あ、ちょっとトイレ」

 

「じっちゃん!話は終わってねぇぞ!!」

 

「ナツ、マスターも本当は悔しいのよ。

 でも、ギルド間の武力抗争は禁止されているから

 下手に動けないのよ・・・」

 

ナツもエルザもミラの説明に黙るしかなかった。

 

 

『・・・帰って来て早々一波乱ありそうだな』

 

ウルの声が俯いているアミクの耳に響いた・・・。

 

 

 

 

 

「はぁ~『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』と『幽鬼の支配者(ファントムロード)』って仲が悪いのね・・・」

 

「結構前からゴタゴタしてるんだけどね・・・」

 

アミクとルーシィとマーチは帰路についていた。暇つぶしにプルーを召喚し、川沿いに歩いていると

「嬢ちゃん達落ちるぞー」と船乗りのおじさんに言われた。

 

「罰免れたのは助かったけど」

 

「それな、なの」

 

ルーシィの言葉にアミクとマーチはコクコクと頷く。そんなにやばいのだろうか、『アレ』は。

 

「あたし、ほんとは『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』か『幽鬼の支配者(ファントムロード)』かどっちに入るか迷ってたんだー」

 

「言っちゃなんだけどファントムはあんまりいい噂聞かないけど、なの」

 

「まあ、ね。でもホント『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』に入ってよかったよ!

 アミクともナツ達ともこうして会えたし」

 

屈託のないルーシィの顔を見ているとこっちまで嬉しくなる。

 

「あ、そうだやっと小説の次話完成したんだけど読む?」

 

「え、本当?読む読む!」

 

実は小説書いているのをバレた日からアミクはルーシィから読ませてもらっているのだ。

読者第1号である。ルーシィもアミクが楽しく読んでくれるので、嬉しくてモチベーションになるらしい。

 

 

「『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』はホントにーーーー」

 

家の玄関を開け、そのままルーシィの部屋に直行する。

そして、ドアを開けた。

 

「よぉっ!」

 

「邪魔してる」

 

「サイコーーーーー!!?」

 

「エルザまで・・・」

 

ルーシィがギョッとし、アミクも呆れる。

 

「ってか多いわよ!なんでみんなこっちにいるのよ!」

 

「実はな、ファントムがこの街にまで襲撃に来た、ということは

 私達の家まで知られている可能性があるわけだ」

 

「ねぇとは思うが、少人数でいるところを狙われるかもしれねぇ」

 

「うっ・・・」

 

ルーシィはそれを聞いて自分を抱きしめる。確かに、知らぬ間に襲われる可能性があるのは恐怖だ。

 

「アミクがいるとは言え、女二人に猫1匹だ。

 心配だからできるだけ固まっていようと思ってな。

 だが、グレイとナツだけでは年頃の女であるルーシィと

 アミクと一緒にするのはどうかと思って私も来たわけだ」

 

「ナツとグレイが泊まるのは確実なのね・・・」

 

「大丈夫大丈夫、しょっちゅうだったからそんなの!」

 

にこやかに言うアミクの顔が見られない。

 

だが、みんながいるなら心強い。

 

 

「しかし、いい部屋だな」

 

エルザは部屋の中を見回した。

ルーシィが色々模様替えしたり小物を置いたりしたことで、やや質素だが雰囲気のいい部屋になっている。

 

「ここは確か元々は客室だったな?よくナツが泊まっていた部屋だ」

 

「いや、ここで寝ろって言ってんのにいつの間に私の部屋に入り込んでんだよね

 このバカは・・・」

 

「女の子が寝ている部屋に入るなんて最低じゃない!」

 

ルーシィの言葉にアミクはそっとグレイの方を見た。

 

「なんだよ!?ほんとに俺はたまたま部屋に入った時にルーシィが寝ていただけだ!」

 

『この弟子、女子にすぐ手を出す野獣になったのか・・・』

 

一応、グレイの擁護のためにウルに対して首をブンブン横に振った。

 

だが、グレイはそれを別の意味に捉えたらしい。

 

「お、俺は何もしてねぇ!」

 

何も言っていないのに見苦しい自己弁護を始めた。

 

「ともかく、ここで住むには何の不満もないだろう?」

 

「もちろん!アミクのお陰でいい所に住まわせてもらいました!」

 

「うんうん、私もルーシィが一緒に住んでくれて嬉しいよ」

 

 

 

 

「ね、見てエルザエッチぃ下着あったよ!」

 

「こ、こんな大胆なものを履くのか・・・」

 

『ほう・・・なかなかやるじゃないか』

 

「うひょー!この菓子うめぇ!」

 

「・・・な、なにぃ!?まさかそういう伏線だったとは・・・」

 

「グレイ、そっちよりこっち先に読んだほうがいいよ。

 ネタがわかんなくなるから」

 

「・・・あんたら・・・人の家でめっちゃ寛いでるわね・・・あと、グレイ読むな!」

 

「おい待てよ!続き気になるだろーがよ!イリスはどうなるんだ!」

 

ルーシィがグレイの手から小説を取り上げた。

 

騒がしい。この面子が集まるとやはり静かではいられない。

 

だがアミクはその騒がしさが心地よかった。

 

 

「くっそー!じっちゃんもミラもみんな!ビビってんだよ!!」

 

「それは違ぇだろ・・・」

 

「今回の件で一番悔しいのはマスターだ・・・。そのマスターが我慢しているんだ。

 私たちがとやかく言うことではないだろう」

 

ナツの言葉を皮切りに今回の件について話し合った。

 

「それにしてもファントムってひどい事するのね・・・今までもこんなことあったの?」

 

「ううん、普段は小競り合いぐらいで済んでるんだけど・・・」

 

「急に大きいこと仕出かしてきた、の」

 

ルーシィはまだ入って間もないので『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』と『幽鬼の支配者(ファントムロード)

との因縁についてよく知らないのだ。

 

「んがー!やっぱ納得いかねぇ!!じっちゃんもビビってないでやり返せばいいだろ!?

先に手出されたのはこっちなんだぞ!?」

 

「だから、そう言う問題じゃないって!それにおじいちゃんも怖がってるわけじゃないよ。

 あの聖十大魔道の一人なんだよ?」

 

「聖十大魔道って?」

 

ルーシィの質問にエルザが答える。

 

「聖十大魔道と言うのは魔法評議会議長が定めた、大陸で最も優れた魔導士10人につけられる称号のことだ」

 

「そういえばファントムのマスターもそうだったよね?」

 

アミクも思い出したように口にした。

 

(それに・・・ジーク兄さんもそうだって言ってた・・・)

 

アミクの脳裏には人を小バカにした顔をする青髪の青年が浮かんでいた。

 

「ファントムには他にも『エレメント(フォー)』と呼ばれる、『妖精の尻尾(こっち)』ではS級魔導士に当たる者たちがいると言う」

 

エルザはそのまま『幽鬼の支配者(ファントムロード)』について説明した。

 

「その他に、特に厄介とされているのがーーーーー

 

鉄竜(くろがね)』のガジル。鉄の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)だ」

 

「ええ!?ナツやアミク以外にもいたんだ・・・」

 

ナツはガジルのことを聞いてムスッとしていたが、アミクは不安そうに外を見ていた。

 

「じゃ、もしかしてそいつ、鉄を食べるの?」

 

「めっちゃガジガジ言ってそう、なの。あ、でもガジルの名前ってそこから来ているって話もある、の」

 

「そんな単純でいいのかしら・・・」

 

 

そんなルーシィ達の会話を聞きながらも、アミクの耳には不穏の足音が聴こえてくる気がした・・・。

 

 

「そうだ。せっかくだ。昔みたいに一緒に風呂に入ろうか。

 背中を流してやる」

 

「あ、私も」

 

「あんたらどんな関係よ!?」

 

「じょ、冗談だからね!?」

 

そこには顔を赤くしたアミクとナツとグレイ、そしてルーシィが居たという・・・・。

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

アミクは目の前の光景が信じられなかった。

 

 

マグノリア広場にある巨大な木。

 

そこの幹の高い部分に誰かが磔になっている。

 

 

その者たちは・・・・

 

 

「レビィ!!ジェット!!ドロイ!!」

 

シャドウギアの三人組だ。

 

 

傷だらけで服もボロボロ。それに、レビィの腹部にあるマークはーーーー

 

 

「ファントム・・・・!」

 

アミクはギリッと歯を食いしばった。

 

こんなに痛めつけ、辱めるような仕打ちを・・・。

 

流石のアミクも胸の中が憤怒でひっくり返りそうだ。

 

「・・・みんな、レビィ達を下ろしてあげて」

 

「・・・任せろ」

 

ナツとグレイとエルザはすぐにレビィ達に飛びかかり、磔に使っていた

鉄杭を全て外した。

 

そして、レビィ達を静かに地面に横たえる。

 

そこにアミクは近付いた。

 

「『治癒歌(コラール)』」

 

レビィ達の傷を治療する。

 

彼らの痛々しい姿を近くで目にしてアミクの目には涙が浮かんだ。

 

「レビィちゃん・・・!」

 

ルーシィも悲痛な表情をしている。彼女はレビィとは仲が良かったため、尚更ショックなのだろう。

 

 

 

 

そこに、マカロフがゆっくりと歩いてきた。

 

影が差して表情は窺えない。しかし、歩くたびに高まってくる魔力を感じれば

彼がどんな気持ちでいるのか、察するのは簡単だ。

 

こっちに近付いてきてレビィ達の前で止まる。

 

 

まだ、目を覚まさない。

 

 

 

 

「ボロ酒場までなら許せたんじゃがな・・・ 

ガキの血を見て黙ってる親はいねぇんだよ・・・」

 

 

怒気の籠った声を発し、持っていた杖をバキッと折る。

 

 

前を見据えたその顔に浮かぶのは逆鱗に触れられた(ドラゴン)の表情そのものだった。

 

 

「戦争じゃ・・・・!!」

 

 

アミクは今回、自分の中で燃えたぎる熱に身を任せることにした。

 

 

つまり、アミクも容赦はしない、ということだ。

 

 




ガジガジって食べるからガジルっていうのは本当らしいです。

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