妖精の尻尾の音竜   作:ハーフィ

22 / 202
アミクもカチコミいきまーす。




音竜(うたひめ)鉄竜(くろがね)

幽鬼の支配者(ファントムロード)』はフィオーレ王国内のオークの街にある。

 

 

そのギルドの中では下品な声が響いていた。

 

 

「だっはーーー!!サイッコーだぜ!!」

 

「妖精の尻尾(ケツ)の奴らはボロボロだってよぉ!」

 

「その上ガジルのやつァ、3人もやってきただってよぉ」

 

「ヒュゥー!!流石だぜ!」

 

酒を飲み、大騒ぎの男達。その顔には他人をおもちゃとしか見ていない、見下した表情があった。

 

 

「そういやぁ・・・マスターの言ってた『奴』って誰だ?」

 

「さぁ?知らねーな」

 

「手を出すなとか言ってたよな」

 

「ふん、どうでもいいさ!惨めな妖精に乾杯だぜ!」

 

「おぉーよ!!」

 

 

彼らは自分が強者であることを疑わない。

 

自分たちは妖精を餌にする肉食獣である、と心の底から思っていた。

 

 

「あ!いけね、もうこんな時間だ」

と、1人の魔導士が立ち上がり、荷物を手に扉へと歩き出す。

 

「お?なんだよ、女か?」

それを見た1人の魔導士がからかう。

 

「まぁな。まぁまぁいい女だぜ?依頼人だけどな・・・脅したら報酬を2倍にしてくれるってよぉ」

ニヒヒと嫌な笑みを見せた。

 

「がっはは!俺なら3倍は行けるぜぇ」

 

「けっ!言ってろタコ」

 

こいつらは魔導士としても人間としても最低な奴らだ。

 

依頼とは雇用者との信用関係が成り立ってこそ受理できる。

この男達はその偽物の信頼を無理やり、とって付けて仕事をしているのだ。

 

 

「あーあー、でもよー襲った時にあの『歌姫』がいたら攫ってきたかったなー」

 

「スッゲー美人でスッゲーキレーな声してるんだってよ!

 もし、ここにいたら裸で歌わせてみてーもんだ!」

 

「ギャハハハハ!!違ぇねぇ!!」

 

 

品のない笑い声が響く中ーーーーー

 

 

ドッゴォオオオオオオオオオンッ!!!!!

 

バァアアアアアアアアアアン!!!!!

 

ギルドの扉がぶっ飛んでさっき出て行こうとした男を向こうの壁際までぶっ飛ばした。

 

 

全員唖然として入り口を見る。

 

 

 

そこには拳を振り抜いた格好のナツと蹴った後の格好をしているアミク・・・そして

 

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)じゃああああああああああああああああ!!!!!」

 

 

ギルドのほとんどのメンバーだった。

 

 

全員に共通している点。

一人残らず憤怒の表情をしているのだ。

 

家族を傷つけられ、怒りに狂う妖精達。

 

ファントムは、この魔法界には怒らせてはならないギルドがあることをはっきりと実感することになる。

 

 

 

「誰でもいい!!かかってこいやああああああ!!!」

 

ナツが叫びながら暴れる後ろでアミクは耳を澄ませる。

 

 

ーーーーここには沢山の声が飛び交ってどれが誰の声だかわかりづらいが、ほとんどのメンツがここにいるようだ。

 

 

そして、アミクの背後を狙おうとコソコソしている影・・・。

 

 

「『音竜の旋律!!』」

 

「ぎゃああああああ!!」

 

すぐ蹴り飛ばした。

 

 

 

ナツに寄り添うように暴れる少女。

ファントムの一人がその姿を見て叫んだ。

 

 

「あ、あいつら!!『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』の『双竜』だああああああ!!!」

 

「オラオラオラオラ!!」

 

 

ナツとアミクがリンチを繰り広げている間にもグレイや、エルフマンたちも次々と攻撃していく。

 

ファントムも知っている相手が出てくると、いちいち戦慄して怖気づいてくれるのでやりやすい。

 

ハッピーも木の枝で叩いて攻撃している。

 

・・・あれでも真面目なのだハッピーは。

 

マーチも爪を鋭く伸ばして素早い動きで敵を切り刻んでいく。

 

「てかマーチすごいね!いつの間にそんな芸当できるようになったの!?」

 

「訓練した、の」

 

 

 

 

「『音竜の響威(フォルツァンド)』!!」

 

アミクは床に魔力を込めた手を叩きつけた。すると――――

 

パアアアン!!!

 

『があああああ!!?』

 

自分を中心に巨大な衝撃波を発生させた。それは床を抉り、敵を吹き飛ばしていく。

 

そうしたら、辺りの敵は一掃していた。

 

それを確認するとアミクは周りを見回した。

 

こっちの士気はすこぶる高い。一人で何人も叩き潰しているのもいるので、三下達は問題ないだろう。

 

現に、先程、マカロフを狙おうとしていた魔導士たちが巨大化したマカロフの手で「かぁぁ――――――――っ!!!」と押しつぶされていた。

 

「ひぃっ、ば、化け物・・・・!!」

 

「貴様らはそのバケモンのガキに手ェだしたんだ・・・人間の法律で自分を守れるなど・・・努々思うなよ・・・あァ?」

 

「ヒィいいいいいい!!!」

 

マカロフのあまりの形相に男たちはチビる。

 

 

 

「ジョゼぇーーー!!出てこんかぁっ!!」

 

「どこだ!ガジルとエレメント4はどこにいるっ!!!」

 

 

マカロフとエルザが叫びながら敵を何人も吹き飛ばした。

 

 

 

アミクはもう一度耳を澄まし、匂いも嗅ぐ。

 

そこで、聴こえてくる声があった。

 

 

 

「けっ・・・あれがマスターマカロフに『妖精女王(ティターニア)』のエルザか・・・凄まじいな、どの兵隊よりも頭1つ2つ抜けてんなぁ」

 

 

ギヒッ、と変な笑い方をする。

 

 

「ギルダーツにラクサス、ミストガンは参戦せず、か・・・舐めやがって」

 

もしかして、とアミクは声をした方に顔を向けた。

 

 

「ギヒッ・・・しかし、これほどまでマスタージョゼの計画通りに事が進むとはなぁ。

 せいぜい暴れ回れや、クズどもが」

 

(計画、通り?)

 

嫌な予感がする。もし、アイツの言う通り、ここに攻め入ることまで想定されていたとしたら。

むしろそうなるように仕向けたのだとしたら。

 

 

頭に響く警鐘は止まないがまずはアイツを―――――

 

 

「やっつける!」

 

感じる魔力からして只者ではない。自分の予想が正しければ彼は―――――

 

 

「『音竜の!響拳』!!」

 

「!」

 

急にこっちに向かってきたアミクを見て少し驚いた顔をした後、面白そうな表情に変わる。

 

衝撃波が彼に当たった。

 

「・・・っかったぁ・・・」

 

だが、全く効いているように見えない。余裕の表情を浮かべ続けている。

 

むしろ殴った自分の拳が痛かった。

 

「ギヒッ!気づかれちまうとはな!・・・そうか、テメェが

 『双竜』の片割れ、『音竜』の方か!いや、『歌姫』と呼んだ方がいいか!?」

 

「そういう貴方こそ、『鉄竜(くろがね)』のガジル、でしょ!?」

 

「ギヒヒッ、ホントは厄介なモンがいなくなってから暴れようと思ったが・・・

 いいよなぁ、殺り合おうや・・・『音竜(うたひめ)』ぇ!!」

 

彼―――――ガジル・レッドフォックスは獰猛に笑った。

 

 

ここに、滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)同士の戦いが始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

一方、置いてけぼりにされてしまったルーシィ。

 

そんなルーシィはベットで寝ているレビィ達を見ていた。

 

(レビィちゃん・・・)

 

傷はアミクが治してくれたおかげで殆ど残っていなかったが、意識はまだ戻らない。

 

ルーシィはレビィに声をかけられたときを思い出した。

 

 

自分が小説を書いていることを知ってそれを読みたい、と言ってくれたこと。

自分の書いた小説を見せる、というのは自分のケツの穴見せるようなものなのに、

勇気を出せるルーシィはすごいのだと言ってくれたこと。

 

 

 

『私が読者1号になるよ!』

 

『あ、ごめん、読者1号もういるんだけど・・・』

 

『え・・・ま、まぁ2号でもいいよ。ルーちゃんの小説、楽しみにしてるから!』

 

『あ、レビィ。丁度いいや。件の小説、読み終わったから貸すね』

 

『アミク?・・・読者1号ってアミクだったんだ。納得』

 

『あ、貸してもいいよね?ルーシィ』

 

『もちろん!か、感想お願いね・・・』

 

『ちなみに、それ主人公が崖から・・・』

 

『『ネタバレ禁止!!』』

 

そうやって二人で慌ててアミクの口を塞いだものだ。

 

 

 

 

「許せないよ・・・こんなの・・・」

 

ルーシィは唇を噛んだ。膝の上に置いている拳をぎゅっと握りしめる。

 

 

 

とにかく、何かお見舞い品を買ってこようとルーシィは外に出かけた。

 

 

 

自分の身に起きることも知らずに。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜♪

 

「『攻撃力強歌(アリア)』『防御力強歌(アンサンブル)』!!』

 

「ギヒッ!それが付加術(エンチャント)か!そうこなくっちゃなぁ!!」

 

 

アミクは歌って自分の攻撃力と防御力を上げる。

 

相手が鉄の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)ならば自分の体そのものが盾となり、矛にもなる戦士であるはずだ。

それはさっき自分の拳で実証済み。

ならば、身体能力面ではナツに劣っている自分が素の力でガジルにかなうとは思えない。

 

だからこその付加術(エンチャント)だ。

 

 

「『音竜の旋律』!!」

 

「『鉄竜棍(てつりゅうこん)』!!」

 

アミクの蹴りが、ガジルの変形して伸びた腕に当たる。

 

ガァアアン!!と音が響いた。

 

「うお、結構響くな」

 

「『音竜の輪舞曲(ロンド)』!!」

 

すかさずアミクは両腕を振るってガジルの顔面に当てた。

 

「ふん!」

 

だがガジルはそれに耐えて見せる。

 

「ギヒッ、案外痛いぜ・・・」

 

(思ったよりダメージを与えられてない・・・!)

 

硬さが尋常じゃない。本気ではないとはいえ、かすり傷程度とは。

 

「そんなか弱そうな見た目でエグい威力出せるモンだな?仮にも滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)か」

 

ガジルはまたギヒヒッ、と特徴的な笑いをした。

 

「・・・『音竜の咆哮!!』」

 

「『鉄竜の咆哮!!』」

 

不意打ち気味にブレスを放てば、すかさず反応してあっちもブレスを放ってきた。

 

音と鉄が衝突する。

 

ギャリギャリ、とせめぎ合う。

 

しばらくの拮抗。打ち勝ったのは―――――

 

 

ガジルだった。

 

 

ゴオオオオオオオ!!!

 

鉄の刃の旋風が音を散らし、こっちに向かってくる。

 

「きゃ、あああ、あああああ!!」

 

 

ブレスはアミクを呑み込み床に激突した。

 

敵、味方関係なく魔導士たちを巻き込んだ。

 

「う、ううぐ、あぅ・・・」

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)』の面子はそこで見た光景に目を疑った。

 

アミクが血だらけになって立とうとしていたのだ。あのナツと並び立つ程とされるアミクが、だ。

 

「ア、アミクっ!」

 

マーチが声を上げた。

 

幸い傷は深くないが、鉄片が所々刺さっている。

 

(防御上げてなかったら危なかった・・・!)

 

すぐに『持続回復歌(ヒム)』使い、戦闘中でも回復できるようにする。

 

「みんな!私はまだ、大丈夫だから!」

 

そう大声で叫んでからアミクは上から降ってくるガジルを睨む。

 

「ギヒッ!アレを喰らってまだピンピンしてやがる!イカれてるぜ!」

 

「『音竜の』・・・・」

 

アミクは両手に音を纏わせる。それから、それを合わせた。

 

「『交声曲(カンタータ)』!!」

 

全力でガジルにぶつけて、解き放つ。

 

「グッホアアアア!!!?」

 

お腹に直撃したそれは流石に効いたようでガジルは少し吐血した。

 

「ぐ・・・ギヒッ、ギヒヒッ!!いいぜいいぜぇ、今のは効いたぜぇ!!

 やるじゃねぇか音竜(うたひめ)ぇぇぇ!!」

 

アミクはすぐにガジルから離れる。

 

「俺にダメージを負わすたぁ、その衝撃波の威力は高ぇな・・・

 『鉄竜棍』!!」

 

「う、わ!?」

 

『ぎゃあああああ!!』

 

ガジルの腕が伸びる。彼は自分の仲間もろともアミクを攻撃しようとした。

 

「自分の仲間まで・・・!」

 

アミクはガジルを睨むが、ガジルはそれを涼しそうに受け流した。

 

仕方なくアミクはさっき浮かんだ疑問を口にする。

 

「・・・計画通りってどういうこと?」

 

「お?聞こえてたのか。耳がいいんだな」

 

「答えて。一体何を狙ってるの?」

 

ガジルはギヒッと口を歪めると腕を剣に変えた。

 

「・・・!」

 

「教えるわけねぇだろ!!」

 

ガジルはその剣をアミクに向かって振るう。

 

「『鉄竜剣』!」

 

横薙ぎに振るわれるそれをアミクは上に跳んで避けた。

 

ガジルはアミクが避けたのを見ると彼もアミクに向かって跳んだ。

 

「空中じゃ避けれないだろ!」

 

今度は腕を槍に変えて迫ってくる。アミクは冷静に両手を構えた。

 

「『鉄竜槍』!!」

 

ガジルはアミクの胸を狙って槍を突き出した。その瞬間。

 

 

バァン!

 

アミクが横に衝撃波を放ち、その推進力に乗り、槍を避けたのだ。

ガジルの槍がアミクの脇腹を掠める。

 

「避けれないのは・・・お前だ!!」

 

アミクはガジルの胸に手を当てた。

 

「何を・・・」

 

「鉄ってことは金属!金属は音を伝えやすい!ってことは・・・」

 

そのまま爆音をガジルの中に流した。

 

「バババババババババ!!!」

 

強烈な振動で、ガジルが震える。

 

この振動でガジルの中から壊すつもりだった。衝撃波を放てればいいが、金属の内側で発生させるのは難しい。

 

「ああああああああああああ!!!!」

 

アミクは雄叫びを上げながら魔力を解放した。見ると、ガジルの吐血がひどくなっている。

 

「がふ、イカれてるぜ。てめぇ、こんなの思いつくなんてよぉ」

 

だが、とガジルは拳を構え。

 

「あ――――」

 

「俺の鉄はこれぐらいで壊れるほどヤワじゃねぇんだよ!!」

 

アミクの頭を殴り抜いた。

 

血が飛び散り、少女の顔がのけ反る。

 

「アミク――――――!!!」

 

それを見たナツが叫び、マーチが悲鳴を上げ、アミクの名を呼んだ。

 

 

 

 

 

 

アミクは戦闘不能になったかと思われた――――が。

 

 

「なにっ!」

 

アミクはちょっとぐらついたかと思うとすぐに態勢を整えたのだ。

 

頭から血が出ているがそれでもまだ元気に見える。

 

(こいつ・・・俺が殴り付けた瞬間に衝撃波でガードしやがった)

 

ただ、完全に防げたわけではなかったらしい。だから、頭から血が出ているのだ。

 

「・・・っはぁ!はぁ、このままじゃジリ貧だ・・・」

 

治癒に使う魔力も惜しい。周りの音を食べながら戦っているが、魔力を次から次へと使うため、

消耗も激しい。

 

下手をすれば魔力欠乏症になってしまう可能性もある。

 

「すゥ―――」

 

それでも回復手段があるだけマシである。周りの悲鳴や戦闘音を吸い込んでいった。

 

(・・・音が聞こえねぇ?アイツが食ってんのか)

 

音の滅竜魔導士であるので予想はついていたが、これではいつでも魔力を回復できるようなものだ。

 

「・・・ギヒッ、おもしれぇじゃねぇか」

 

ガジルは上等だとでも言うかのように腕を剣に変えた。

 

 

「『鉄竜剣』!!」

 

「『音竜の斬響(スタッカート)』!!」

 

相手が斬撃ならこっちも、とアミクは音の刃を放った。

 

キイィン!と鉄の刃と音の刃がぶつかり合って弾ける。

 

アミクはそれを見届けると人ごみの中に入っていた。

 

「あぁ!?テメェふざけんじゃねぇ!!逃げる気か!」

 

ここで、ガジルは怒った。

 

やっと興に乗ってきたところだったのにお預けにされた。

 

ガジルは不完全燃焼のまま他の者に殴りかかろうとした時だった。

 

 

「これで倒れて!!」

 

上から声が響く。ガジルは一瞬で口端を釣り上げ、足を槍に変えて上に蹴りあげた。

 

 

 

 

―――――が。

 

 

空振った。最初っからアミクなんていなかったかのように。

 

 

「!?どこへ行った!」

 

ガジルが顔を前に戻すと――――

 

目の前にアミクがいた。

 

(フェイクか―――!!)

 

「『音竜の―――』」

 

ガジルに頭を向け、全身に魔力をこれでもか、と込める。

 

「『譚詩曲(バラート)』!!」

 

頭からガジルにぶつかる。ガジルの顔面に直撃し、轟音と共に強力な衝撃波が舞った。

 

彼はそのまま吹っ飛び、机や椅子、果ては他のファントムのメンバーも巻き込んで転がっていった。

 

 

「なぁっ!?ガジルが!?」

 

「あんな女子にやられた!?」

 

それを見ていたファントムのメンバーがショックを隠しきれずに口々に言う。

ガジルは倒れたままピクリともしない。

 

「い、いや待て!」

 

 

一人の男が言うと、ガジルが鼻を抑え、ふらふらながらも立ちあがっているところだった。

 

「・・・タフすぎでしょ」

 

あわよくばあれで決めるつもりだったが、やはりそうは問屋が卸してくれないらしい。

 

「もう、そろそろヤバいかも・・・」

 

いくら、音を食べて体力や魔力を回復できるとはいえ、精神的な疲労はどうにもならない。

 

それでも、魔力回復のためにもぐもぐ、と音を食べるアミクだった。

 

 

 

「・・・ギヒッ、やってくれたなぁ」

 

ガジルは鼻血を流しながらもしっかり足を地につけていた。だが、ダメージは大きかったようで少しふらついていた。

 

 

「惜しかったなァ、俺がもうちょっと柔らかかったなら倒れていたかもなぁ」

 

ガジルは首をゴキゴキ、とやる。

 

「だが、これが俺とお前の実力差だ。オメェじゃ俺に勝てねェんだよ」

 

「・・・」

 

確かにこのままだとガジルの火力に押されて負けてしまう。

 

だが、それでもアミクには負ける気はしなかった。

 

「そんなの最後までやってみなきゃ分からないよ?」

 

「ギヒッ、気にくわねぇな。そんなに言うんだったらグチャグチャになるまで叩き潰してやるよ」

 

ガジルの顔が狂気で歪んだ。アミクは唾をごくり、と飲み込むとガジルに対して構える。

 

 

 

 

その時。

 

 

 

ズッドオオオオン!!

 

 

何かが落ちてきた。

 

 

アミク達は思わずそちらに注目する。

 

 

そこには――――

 

 

 

「おじい、ちゃん・・・・?」

 

 

青ざめた顔のマカロフが倒れていた。魔力が全く感じられない。

 

さっきから居ないと思っていたが、まさかジョゼを倒しに行ってたのだろうか。

 

それで負けて?

 

 

「おじいちゃん!!」

 

「お、おい!まだ決着はついて―――」

 

「マスター!!」

 

アミクはガジルを無視してマカロフに駆け寄り、抱き上げる。

 

エルザも走ってきた。

 

 

「わ、わしの・・・魔力が・・・」

 

「おじいちゃんしっかりして!」

 

アミクは涙目でマカロフに治癒を掛ける。

 

目に見える傷は治せる。だが、このように魔力が枯渇していてはアミクにはどうしようもない。

 

 

マカロフがやられたことにより『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』の士気はだだ下がりだ。

 

「ちぇっ、お楽しみはもう終わりか」

 

ガジルはつまらなさそうに言うとそこら辺に落ちていた鉄を拾ってガジガジ、と食べた。

 

 

 

本当はギリギリだった。体当たりされた後、一瞬だけ意識が飛んでいた。なんとか立つことはできたが、ダメージのせいで本来の力を出し切れなかっただろう。

 

それでも、自分は勝っていたと信じるが危ない状況だったことには変わりはない。

 

 

(あの、女・・・イカれてるぜ)

 

ガジルは心の中で悪態をついた。

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)』とは逆に『幽鬼の支配者(ファントムロード)』は士気が上がって勢いに乗り、『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』を全滅させようとしてくる。

-

 

 

 

(このままでは・・・・)

 

エルザはこの状況が不利だと悟る。こうなればとる手段は一つだけだ。

 

「撤退だー!!全員、ギルドへ戻れー!!!」

 

「何言ってんだ!俺はまだ戦える!」

 

「ここで逃げてちゃ漢じゃねぇ!!」

 

エルザの号令に反論するグレイとエルフマン。

 

だが、マカロフの傍にいたアミクが泣きそうな声で懇願する。

 

「おねがい!エルザの言うこと聞いて!じゃないとおじいちゃんが・・・」

 

アミクの悲壮な表情をみてグレイとエルフマンは反論の言葉を飲みこんだ。

 

そして全員渋々撤退を始める。

 

アミクはマカロフをエルザに預けナツの元に駆け寄った。

 

 

「ナツ!怪我は無い!?」

 

「俺は全然大丈夫だ。むしろお前の方が大丈夫か?怪我してんぞ」

 

「これは後で治すよ・・・ナツも行こう?」

 

「・・・」

 

ナツは黙ったままアミクを見つめる。

 

「・・・ナツ?」

 

「おめぇ、ガジルと戦ったんだよな」

 

ナツが真面目な顔をして聞いてきた。アミクは頷く。

 

「うん・・・そういえばナツは乱入してこなかったね。

 いつもだったら「俺に戦わせろー!」って来ると思ったんだけど・・・」

 

 

「先にアミクに取られちまったし、どんどん他の奴らが襲ってくるもんだからガジルはアミクに任せてやったんだ!

 でも見てて冷や冷やしたぞ」

 

「あい!」

 

「ほんと心配した、の」

 

「あ、ハッピーにマーチも無事だったんだ」

 

皆で出口に向かいながら話すアミク達。

 

アミクは不安を紛らわすためにもナツと会話をしていた。

 

「・・・それで、どうだったんだ?」

 

「強いよ。確実に。負けてた可能性が高い」

 

「・・・そっか」

 

「もちろん負ける気は無かったけどね。ただ、てっちゃんのタフさは甘く見ない方がいいよ」

 

「てっちゃん?」

 

「あの人、鉄だから」

 

 

そんなアミク達を見ながらガジルは口角を釣り上げた。

 

 

「ギヒッ!もう終わりか!つまんねぇなぁ・・・」

 

ある程度回復したのか今は元気そのものだ。

 

その背後が揺らめき―――巨漢が現れた。

 

 

「―――アリアか」

 

「全てはマスタージョゼの計画通り・・・素晴らしい!!」

 

その男――――アリアは急に泣き始めた。

 

「いちいち泣くんじゃねぇよ、うぜぇな・・・で?ルーシィとやらは捕まえたのか?」

 

 

ピクッとアミクの耳が反応した。

 

それに目敏く気付いたナツが「どうかしたか?」と聞いてくる。

 

「計画通り・・・今は本部に幽閉している・・・」

 

「ルーシィが!?」

 

「おい、ルーシィがどうかしたのか!?」

 

アミクが振り返ってアリアとガジルに問い詰めるもガジルはニヤッと笑っただけだった。

その後、アリア共々消えていった。

 

 

――――消える直前、ナツとガジルの視線が一瞬だけ交わる。

 

 

 

「――――ナツ?」

 

ナツはガジル達が消えていった場所を見つめると自分に飛びかかってきた一人の男を捕まえて

皆が出ていった出口とは反対側の方の出口に向かう。

 

アミク達も当然ついて行った。

 

 

「な、なにすんだよ!?」

 

「おまえ、ルーシィどこにいるか知らねぇか?」

 

「ルーシィ?誰だそれ」

 

そう言った瞬間、男の手が燃えた。

 

 

「あぢいいいいいい!!!?」

 

「はい、『治癒歌(コラール)』」

 

すかさずアミクが治癒する。

 

「もう一度聞くぞ。ルーシィはどこにいるんだ?」

 

「だ、だから知らねぇって・・・」

 

今度は足が燃えた。

 

「ぎゃあああああああ!!!」

 

「はい」

 

また、治癒。

 

 

「ほら、お兄さん早く言っちゃった方がいいよ?

 ナツが貴方の頭を燃やそうと顔を燃やそうと眼球を燃やそうと

 舌を燃やそうと食道を燃やそうと胃を燃やそうと内臓を燃やそうと

 命を燃やそうと全部全部私が治してあげるから。

 そうなるとお兄さんは死ぬこともできずにずっとずーっと

 燃え続けることになるね?」

 

 

にこやかに笑っているアミクの顔。

 

いつもは安心感と尊さを与えてくれる笑顔だが、

今のこの笑顔は会話の通じないムシケラに対して無理矢理浮かべたようなものだった。

 

ナツも怒らせると手がつけられないが、アミクはギルドの中でもマジギレさせてはいけない者のトップに入る。

 

ファントムはそんなナツとアミク()の逆鱗に触れてしまったのだ。

 

 

 

「ヒィッ!?ほ、本当に知らねぇんだよぉ!で、でも、俺達の『本部』はこの先の丘にある!!そこかも・・・」

 

 

男が言った後、アミクは耳を澄ませた。向こうに本部らしき建物があるのでそこを中心に聴きとる。

 

 

『バケツ――――!!?』

 

『ほほほ、古典的故に対処法も多いのですよ』

 

「ビンゴ!」

 

アミクは指を鳴らした。でもどういう状況なんだろうか。

 

 

「あそこからルーシィの声と変質者の声が聞こえた!」

 

「でかした!いくぞおおおおおお!!」

 

ナツは雄叫びを上げながら走っていき、アミク達も後に続く。

アミクはその間もルーシィ達の会話を盗み聴きすることにした。

 

 

『はぁ、バケツかぁ・・・』

 

『って、するんかーい!!』

 

―――え?ほんとに何の話?――――

 

『わ、私は紳士ですから!』

 

 

――――あ、もしかしてトイレ?――――

 

『ネパアアアアアアアア!!?』

 

『古典的な方法も案外使えるわね~、今度小説に使おうかしら』

 

――――え?何したの?あんなに悲鳴上げて一体何したんどすか!?――――

あと、何気にこれネタバレでは・・・。

 

 

と、近づいてきた建物を見ると・・・高い。

 

 

「あ、ルーシィ!」

 

見上げるとかなり高い所からルーシィが飛び下りようとしていたところだった。

 

「ナツ!私がナツを飛ばす(・・・)から!ルーシィを・・・」

 

「分かった!任せろ!!」

 

力強く答えると、ナツは高くジャンプした。

 

 

アミクはそこを狙って衝撃波を放つ。

 

 

「うお!?」

 

その衝撃波に押され猛スピードで飛んでいくナツ。

 

 

そして、

 

 

「ナツ――――――アミク―――――――!!!」

 

落ちてきたルーシィが叫ぶ。

 

 

「「ルーシィ――――――――――!!!」」

 

ナツがルーシィをキャッチし、その勢いのまま壁に突っ込んでいく。

アミクがハッピーに運ばれて二人と壁の間に入る事でルーシィ達が壁にぶつかるのを阻止した。

 

「ルーシィが空から降ってきた!」

 

「親方ァ、空から女の子が!!なの」

 

 

「・・・ありがとう、二人共・・・!」

 

「ルーシィ、無事でよかった・・・うぇ~ん」

 

「めちゃくちゃだなおい。あと、前後から乳が・・・」

 

今、アミクとルーシィはナツを挟むように抱きついているので

巨乳にサンドイッチされている形になってしまったのだ。

 

そこ代われ。

 

「・・ってアミク!何よその怪我!?」

 

「ぐすっ、ん?あ、大丈夫だよこれは」

 

「ダメよ!!女の子の体に傷は残しちゃいけないのよ!」

 

「あ、後で治療するつもりだったんだよ・・・」

 

「今すぐやりなさい!!」

 

なんかルーシィがオカンっぽくなってきた。

 

「・・・よし、ルーシィも取り返したし、早くギルドに戻ろう」

 

アミクが自分の治療をして言うとナツが反論する。

 

「なんでだよ!ここが本部なんだろ?だったらこのまま・・・」

 

「ナツ・・・おじいちゃんも重傷なんだよ?」

 

「え・・・マスターが・・・?」

 

そこで、ルーシィがショックを受けたように固まった。

 

「あ、ルーシィ。ごめんね・・・今おじいちゃんが・・・」

 

「俺がじっちゃんの仇をとるんだよ!!」

 

「だーかーら!今はそれどころじゃないって・・・」

 

アミクとナツが口論していると、急にルーシィが

 

「ごめん・・ごめんね・・・」と謝りだした。

 

それを聞いたアミク達は慌てる。

 

「ちょ、ちょっと!ルーシィは別に悪くないよ・・・」

 

―――『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』の皆があたしのせいで苦しんでいる。――――――

 

そう思うだけで胸が張り裂けそうな程痛かった。でも――――

 

「それでもあたし、ギルドにいたいよ・・・」

 

ルーシィは泣き続ける。アミク達が傷つけられた悲しさ。助けに来てくれた嬉しさ。

 

自分のせいでこうなったという悔しさ。

 

いろんな感情が混ざって涙があふれる。

 

「・・・ルーシィ・・・」

 

アミクはただルーシィを抱きしめ、背中をさするだけだった。

 

 

 

 

 

 

 




ガジル出た―!なんかやたら戦闘狂になっちゃったけどいいよね?

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