妖精の尻尾の音竜   作:ハーフィ

25 / 202
今回ジュビア出まーす。


ウルの憂鬱と大空のアリア

氷になったウルは悶々としていた。自分の弟子が戦っている姿をすぐ近くで見られるのはいいが・・・

こいつらのやってることは戦いなのか?

 

 

まず、グレイはエレメント4の一人である『大海』のジュビアと出会った。

 

グレイは戦いを挑もうとするが、なぜかジュビアは真面目に戦おうとしない。

 

いや、分かってる。あの顔は惚れた顔だ!グレイに一目惚れしてしまったのだ。

 

(グレイも隅に置けないね)

 

少し寂しく思いながらも、心の中でニヤニヤするウル。

 

 

ーーーーーだが。

 

水に閉じ込めたり、ルーシィに嫉妬して襲いかかって来たり、色々ヤバい女だった。

 

グレイもグレイでとんでもない男だった。

 

戦闘中に胸を揉んだりするなど、いつの間にそんなすけこまし野郎になったのか。

 

「で、まだやんのかい?」

 

「キャピーン❤️」

 

そして、なんとかジュビアに勝ったグレイは何故だかネックレスから冷えるような視線が突き刺さっているような気がして落ち着かないのだった。

 

「な、なんだ・・・?この寒気は・・・!?」

 

 

 

 

 

一方、エルフマンは。

 

 

『大地』のソルなる者と戦い、トラウマを抉られていた。

 

「ノンノンノン。いけませんねぇ。貴方が全身接取(テイクオーバー)をしようとして

 失敗し暴走して、どうしたのか、何をしてしまったのか。貴方は妹様を・・・」

 

このようにエルフマンの心を突くように喋りかけてくるムッシュ・ソル。

 

エルフマンが全身接取(テイクオーバー)をしようとしても、トラウマのせいで失敗してしまう。

 

さらに、ジョゼを騙そうとし、それがバレ、捕えられたミラ。今にも潰されそうだ。

 

そして、思い出す過去の出来事。

 

2年前。

 

ミラとリサーナ、そして自分はS級クエストに行こうとしていた。

 

そこで、ナツとアミクも誘おうとした、のだが・・・。

 

『アミクとナツも来るか?』

 

『おー!行きてぇ・・・んだけど・・・』

 

『私たち二人で仕事受ける約束してたんだ。

 まぁ、今やる必要もないし、ミラさん達と仕事行こうか?』

 

『いや、これは俺たち家族だけで十分だ!

 それに漢の約束は守るべし!』

 

『私は女ですが・・・?』

 

「や、やめろ!二人を連れて行け!」

 

これはもう過去の出来事だ。分かっているのに叫ぶことをやめられない。

 

 

「エルフマン・・・貴方まで失ったら・・・!」

 

ソルに一方的にやられるの中、ミラの泣きそうな声が聞こえた。

 

「何で・・・もう姉ちゃんの涙は見ねえって誓ったんだ。なのに何で泣いてんだよ!!」

 

エルフマンは覚醒し、全身接取(テイクオーバー)に成功し、ソルをタコ殴りにした。

 

そして、理性も残っている。もう暴走はしない。

 

「守れなかったんだ。そのせいでリサーナは死んじまった」

 

「私は生きているわ。あの時決めたじゃない。あの子の分まで生きようって。一生懸命頑張ろうって」

 

 

そう言われ、抱きしめられる。エルフマンはリサーナに続いてミラまでも失いそうになったがそうならずに済んだことと、ミラの言葉が嬉しくて、

泣いてしまった。

 

 

 

 

 

そして合流したエルフマンとグレイ。

 

「なんだこの女。幸せそうな顔で倒れてやがる」

 

「・・・これでエレメント4はあと一人。『大空』のアリアだけよ」

 

エレメント4は超魔道巨人ファントムMkIIの動力源であり、3人も倒した今、

動きが格段に遅くなっていた。

 

煉獄砕波(アビスブレイク)』を唱えるスピードも遅くなっており、あと一人を倒せば止めることができるだろう。

 

 

 

 

 

 

「うーん、ほかのエレメント4はどこにいるんだろう?」

 

「もう倒されてるのかも、なの」

 

アミクは長い廊下を走っていた。

 

あちこち走り回って雑兵を倒したりしていたがガジルどころかエレメント4にすら出会わない。

 

仕方なく、ナツの匂いがしないところを中心に動力源を探し回っている。

 

そのまま、少し広い部屋に出た。

 

「ここを突っ切れば・・・・ん?」

 

 

その時、目の前に風が吹く。

 

 

「悲しい・・・」

 

その風から声が聞こえた。

 

 

「音の翼は朽ちて堕ちてゆく・・・

嗚呼・・・そこに残るは竜の屍・・・」

 

「貴方は・・・ガジルと一緒にいた・・・」

 

「アミク!ソイツ、エレメント4の1人、なの!」

 

その男は覆いをした目から涙を流し、名乗った。

 

「我が名はアリア・・・

エレメント4の頂点なり。

(ドラゴン)狩りに推参いたした」

 

 

(ドラゴン)狩り?滅竜魔導士はこっちなのに

可笑しなこと言うね」

 

「アミク!気をつけて!なの!ソイツ、強い、の!」

 

「分かってる!」

 

 

アミクは先手必勝とばかりに飛びかかる――――が、

 

 

 

「うっ!?」

 

急に何かに突き飛ばされた。アミクはそのままもんどり打つ。

 

「アミク!?」

 

「い、今何も見えなかった・・・」

 

音さえ聞こえなかった。

 

無音なのか、聞こえないほど小さいのか。

 

「私の魔法は空域。この空域の中で、貴様は耐えられるかな」

 

「くあっ、あ、ぐっ!」

 

次々とアリアは空域を繰り出し、アミクにぶつけていく。

 

一方的にやられて、吐血し、血が噴き出す。

 

「アミクが手も足も出ないなんて・・・なの」

 

目にも見えず、音も聴きとれないのでは唯の無力な少女だ。

 

傷だらけになっていくアミクを見てマーチは歯を食いしばった。

 

「『空域・絶』!」

 

「がっ!」

 

アミクの顔に腹に足に手に、攻撃が当たっていく。

 

「上には上がいるってことですよ。『音竜(うたひめ)』」

 

「・・・くぅ・・・」

 

アミクはフラフラになりながらもまだ、自分の足で立っていた。

 

「まだ立つか、『音竜(うたひめ)』」

 

「こんなところで・・・負けてらんないよっ」

 

アミクは無理矢理不敵な笑みを浮かべる。

 

「私は『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』の魔導士。

 貴方がどんなに強くても必ず倒す。

 

 ――――燃えてきたよ」

 

ナツの口癖を使う。こっちまでなんだかやる気に満ち溢れるからだ。

 

「威勢はいいな。さて、それがいつまで持つか」

 

「『音竜の咆哮』!!」

 

ブレスを放つ。それはやっとアリアに当たったかと思われたが――――。

 

「消えた・・・?」

 

気配が消えた。慌てて耳を澄ます。

 

――――すぐ後ろで音が聴こえた。

 

 

「―――――!」

 

咄嗟に前に避けようとするが――――。

 

「う、あ!?」

 

「残念だが、逃げられんぞ。マカロフと同じ苦しみを与えてやろう。

 『空域・滅』!」

 

アリアが両手から発する空域に閉じ込められてしまった。

 

そして、一気に魔力を抜き取られる。

 

「ああああああ”あ”あ”あ”あ”!!」

 

「アミク――――!!」

 

苦しい。痛い。『枯渇(ドレイン)』も合わせて使ってるのかすごく痛い。

 

寒気がする。死んじゃう。こんなはずじゃ。

 

「悲しい・・・!妖精たちに響かせていたその声色は

 二度と紡がれることはないだろう・・・。

 

 翼はもがれ、『音竜(うたひめ)』は地に堕ちる・・・」

 

 

こんな、ことって・・・ナツ、ルーシィ、皆・・・。

 

死の気配が鎌首をもたげた。

 

 

 

 

瞬間。

 

 

 

 

 

バチバチバチバチ!!!

 

 

上から黄色い雷が降ってきた。

 

 

「ぬおっ!?」

 

 

それはアリアに直撃する。

 

 

感電して、その拍子に『空域・滅』を解除してしまう。

 

 

 

「・・・はぁ!はぁ、危なかった・・・」

 

 

今の雷って・・・・。

 

 

「まさか―――――」

 

アミクは脳裏に金髪でヘッドホンをした青年が浮かんだ。

どういう心境の変化だろうか。

 

まぁ、いい。今は目の前の敵に集中だ。

 

 

「・・・今の攻撃はどこから・・・?」

 

「よそ見してる、場合!?」

 

「!」

 

アミクはスピードを活かし、アリアの懐に潜り込んだ。

 

「『音竜の響拳』!!」

 

「ぐふっ!」

 

やっと攻撃が入った。アリアは腹を殴られ、空気を吐く。

 

「・・・やってくれたな」

 

アリアはそう呟くとまた、気配を消した。

 

 

(・・・集中しなきゃ。全くの無音ってわけじゃないはず。

 そこを聴きとるんだ)

 

アミクは全神経を聴覚に集める気持ちでいた。

 

こうなったら視力は邪魔だ。目を閉じる。

 

 

闇の中で時々外の戦闘音が聞こえてくる以外は静かだ。

 

ここでいつ襲ってくるのかどこから襲ってくるのか。

 

それを見極め――――否、聴極めなければならない。

 

 

 

 

フォン

 

 

 

「これだ!!」

 

アミクは反射的に後ろに向かって衝撃波を放ちながら、床を踏み、前に跳ぶ。

 

「ぐぅ、まさか避けられるとは・・・」

 

アリアに衝撃波が当たったのか、痛そうに顎を撫でながら言う。

 

 

「・・・まだだ」

 

「・・・?」

 

このタイミングでアミクは魔法を発動する。

 

 

「『音竜の遁走曲(フーガ)』!!」

 

「ぐわぁあ!!?」

 

アミクがさっき踏んだ床が衝撃波を起こす。

 

アリアの巨体が浮いて床に着地する。

 

 

――――別名、『音竜の足跡(あしあと)』。

 

アミクが踏んだところに、音の衝撃波を発生させる。

 

地雷みたいなものだ。

 

 

「どーよっ!」

 

アミクは得意げにアリアを見た。

 

さっきに比べれば、攻撃をどんどん当てに行っている。

 

流れに乗ってきたのではなかろうか。このまま押していけば――――。

 

 

「―――ふふふ、まさかここまでやるとは」

 

 

アリアは不気味な笑いを見せた。なんだろう。嫌な予感がする。

 

・・・なんだか魔力が高まっているような?

 

「ここまでしてくれたお礼だ。本気を出そう」

 

―――あれでまだ本気じゃなかった!?

 

アミクは愕然とした。あれ以上の魔力を持って向かってくると言うのか。

 

アリアは目を覆っていた布を外した。今まで見えていなかった目が見える。

 

その目が光った。

 

瞬間。

 

 

「うああああああ!?」

 

体の中のものが吸い込まれるような感覚がする。

 

魔力ではない。もっと致命的なもののような。

 

マーチも苦しそうにしている。

 

「『死の空域・零』発動。この魔法は全ての命を喰らい尽くす」

 

「・・・なんで!そんな、簡単に!人の命を奪えるの!?」

 

アミクが叫ぶように聞いてもアリアは歪んだ笑みを浮かべて言い放つだけだった。

 

 

 

「さあ、楽しもう」

 

 

「―――私は!命を軽く見るような連中に負けたくない!」

 

アミクは言い終わると―――――歌を歌い始めた。

 

「貴方と同じ名前の魔法を使って、倒す!!」

 

「おもしろいな。私と同じ名前?どんなものか気になりますね」

 

不敵に笑うアリアそっちのけにアミクは自分に付加術(エンチャント)を掛けた。

 

 

 

 

「『攻撃力強歌(アリア)』!!」

 

「・・・なるほど、付加術(エンチャント)か。

 これまた珍しいものを使う」

 

 

魔力を吸われるならば、防御力は上げたところで意味がない。

それに正直、付加術(エンチャント)に多くの魔力を割きたくなかった。

 

 

「・・・ほんとはスピードも上げたいけど、これで決めるしかない・・・!」

 

 

 

アミクが向かって来ようとしたのを感じたのかアリアも空域を発動させようとした。

 

「来い、『音竜(うたひめ)』」

 

 

言われた途端、アミクは飛びだす。

 

 

「この空域の中では生物は滅する!」

 

 

大量の空域が発生したのだろう。微妙に空気が揺らいでる。

 

だが、視覚には頼らない。

 

(空域も、無音じゃない!はず)

 

もう一度、集中する。限界まで。空域の正確な場所まで分かるように、超音波も発して。

 

聴覚で全ての情報を集める。反射して戻ってくるまでの時間。それから距離を測り、

音の響き具合から大きさも推測する。

 

コォォォ

 

気付けば目の前に空域が聴こえる(・・・・)

 

「シッ!」

 

まずは横に避けた。

 

体を捻って空域をから逃れる。

 

と思ったら目の前にまた空域。

 

今度は下を潜るように避けた。

 

次は上、その次は右、その次は左、その次は・・・・

 

次々と、空域のある領域が分かるかのように全部避けていった。

 

「・・・なっ!?・・・」

 

アリアは驚いたように目を見開いた。だが、すぐにニヤッとする。

 

 

(幾ら何でも密集してるものは避けれまい!)

 

アミクが飛び込んで行ったのは空域が密集していて避けれる空間がないところだった。

 

あわや、万事休すかーーーーーと思った直後。

 

 

「『音竜の斬響(スタッカート)』!!」

 

手刀で作った音の刃で空域を切り裂いた。

 

 

「バカな!?空域を切り裂いて!?」

 

 

 

 

動揺しているアリアに詰め寄るアミク。

 

 

 

そしてーーーーーーー

 

 

 

 

 

「『滅竜奥義(めつりゅうおうぎ)』!!」

 

 

 

バッ、と拳を構えた。

 

 

 

「!」

 

アリアの腹に拳を入れる。右腕にもう一つ。胸に掌底。脇腹に蹴り。勢いを殺さず顔に裏拳。

そして、回し蹴り。左拳。頭突き。アッパー。後ろ蹴り。ラリアット。タイキック。

 

「『音災神楽組曲(おんさいかぐらスイート)』!!!」

 

舞うように拳や足、果ては頭までも使って攻撃をしていった。

 

「うああああああああああ!!!」

 

アミクは雄叫びを上げることで更に自分の中の熱を上げる。

 

素早く、激しい、そして付加術(エンチャント)のお陰で攻撃力の上がったラッシュ。

 

当たるたびに発生する衝撃波。

 

アリアは反応できない。なすがまま、一方的に攻撃に晒された。

 

そしてーーーーーーー。

 

 

トドメの正面突き。

 

一際大きな衝撃波がアリアの胸で起こる。

 

 

「ガハァッ!!」

 

アリアは口から血を吐き出しながら吹っ飛ぶ。

 

 

そして、白目を剥いて地面に倒れこんだ。

 

 

 

「・・・・や・・・った・・・」

 

 

アミクもそれを見届け、倒れこむ。

 

もう限界だった。

 

 

「アミクーーーー!!」

 

マーチが泣きながら飛びついてくる。

 

「よかった、よかった、の!すごい、の!あのアリアを倒した、の!」

 

「うん、うん・・・でも、私だけの力じゃない」

 

「・・・さっきの雷?」

 

「・・・うん」

 

アミクはどこかでこの様子を見ているであろう青年に小さく呟いた。

 

 

「ありがとう・・・・ラクサス」

 

 

 

 

 

超魔道巨人ファントムMkIIより離れた場所で。

 

 

 

壁に空いた穴からその様子を見ていた金髪の青年、ラクサスが不機嫌そうな顔でいた。

 

「・・・チッ、何やってんだか・・・」

 

ラクサスは自嘲するように吐き捨てた。

 

「・・・勘違いするなよ。オレはファントムの奴らが気に入らねぇから

 やっただけだ。

 決してお前の・・・お前らのためじゃねぇ」

 

周りには誰もいないのに誰に対して言っているのか。

 

自分に言い聞かせるためか、あるいは中にいる少女に向けてのものなのか。

 

 

ラクサスは少女が嬉しそうにしている顔を見て、その場を去った。

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、思ったんだけどよ。マスタージョゼを倒しちまえば、こっちの勝ちじゃねぇか?」

 

「ナツじゃ無理だよ!うちのマスターと互角の魔力を持っているのに、敵いっこないよ!」

 

「でもよ、そのじっちゃんだって戦えねぇし、ラクサスやミストガン、エルザもいねぇんだぞ。

 じゃあ誰が勝てるんだよ」

 

「考えないようにしてたのにーーーー!」

 

ナツとハッピーはあちこちうろちょろしていたが特にエレメント4に会ったりもしたかったので、

とりあえず、アミクの匂いがするところに行った。

 

彼女と合流して行動した方が都合がいいからだ。

 

 

 

 

嘆くハッピーにナツは手をポン、と置く。

 

「俺がいるじゃねぇか!

 俺だけじゃねぇ!アミクもいる!

 俺だけでも勝てるし、二人だったら絶対倒せる!」

 

 

なんの根拠もない、自信に満ち溢れた言葉。

 

エルザやマカロフたちの方が強いのに、ナツの言葉には本当にやり遂げてしまいそうな

安心感があった。

 

 

「アミクの匂いが強くなってきたな」

 

「マーチもいるよね?怪我してなければいいけど・・・」

 

 

そしてたどり着いたその部屋には

 

 

倒れ伏したアミクがいた。

 

 

「ーーーーー!アミクっ!」

 

ナツは素早く駆け寄って抱き抱える。

 

「おい!しっかりしろよ!こんなとこで寝てたらーーーー」

 

 

 

 

 

「くーすかーすーすー」

 

「「ホントに寝てた!?」」

 

アミクが気持ちよさそうに寝息を立てている。

 

「あ、ナツ、ハッピー」

 

「マーチ!無事だったんだね!」

 

周りの警戒をしていたマーチがフワフワと飛んで帰ってきた。

 

「そちらこそ、なの。

 今、アミクはちょっとだけ仮眠中、なの。

 エレメント4の一人を倒してたから疲れて・・・」

 

「お!倒したのか!さすがアミクだな!」

 

「んん、ンンンンんん・・・」

 

ナツが嬉しそうに頷いていると、アミクが目を覚ました。

 

 

「・・・ふあ?ナツ?おはよう・・・」

 

「ようアミク!お疲れだったみたいだな!」

 

「うん・・・あの人すっごく強くて。ほら、あそこに伸びてるーーーーー」

 

目を擦りながら説明しようとするとーーーー

 

 

「・・・悲しい」

 

「なんだ!?」

 

「そんな!?」

 

ナツの背後でアリアがボロボロながらも立っていた。

 

いや、すでに限界だろう。フラフラだ。

 

しかしそれでもアリアは両手を構えた。

 

「私は竜に喰われた・・・だが、タダでは喰われまい。

 『火竜(サラマンダー)』と『音竜(うたひめ)』・・・

 二匹の竜の首を頂いて散ろう」

 

「ナ、ツ・・・!」

 

「クッソォ!!」

 

ナツとアミク。そしてついでにハッピーとマーチも『空域・滅』に囚われる。

 

これはアリアの最後に残された力だ。これで全員殺す。

 

アリアがいざ、魔法を行使しようとした時。

 

 

 

 

 

 

「『天輪――循環の剣(サークルソード)』!!」

 

 

緋色の髪を持つ女性。

 

 

その人物がアリアを滅多斬りにした。

 

 

「がふぉあぁぁ!!!」

 

血飛沫が上がり、アリアはばたりと倒れた。

 

「マスターが貴様ごときにやられるはずがない。

 今すぐ己の武勇伝から抹消しておくがいい」

 

 

これで超魔道巨人ファントムMkIIの動力源は全てなくなったため、動きを止め、

煉獄砕波(アビスブレイク)』も発動されないはずだ。

 

 

剣を持った女性がアミクたちに近づいてくる。

 

アミクは泣きそうになった。

 

その人物はアミクたちが良く知る人物だったからだ。

 

「「エルザ!!」」

 

 

「ナツ、アミク。無事だったか」

 

凛とした佇まいはエルザそのものだ。

 

「良かった、回復したんだね!」

 

「ああ、アミクの魔法のお陰だ」

 

アミクは疲れた体に鞭打ってエルザに抱きついた。エルザはそんなアミクを優しく受け止める。

 

「それより、アミクも怪我をしているではないか。早く治療しておけ」

 

「あーうん・・・魔力回復したいから音出して?」

 

「お安い御用だ」

 

エルザは持っていた剣の持ち手で

ガァン、ガァンと床を叩いてくれた。

 

「モグモグ、『治癒歌(コラール)』・・・

 助かったよエルザ」

 

「大した労力じゃない。

 それにしてもアリアを倒すとは流石だな」

 

「トドメ刺したのエルザじゃん・・・」

 

「どっちにしろアイツはもう限界だった。

 トドメを刺そうとなかろうと倒れるのは間違いなかっただろう。

 

 ・・・アリアはエレメント4最強と呼ばれていたのだがな」

 

「まぁ、手助けとかもあったからね」

 

「手助け?ナツか?」

 

「いや、実はーーーー」

 

アミクがそれについて話そうとするとーーーーー

 

 

 

さっきからずっと使われていなかったスピーカーから声が聞こえ始めた。

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の皆さぁん。我々はルーシィ・ハートフィリアを確保しました』

 

「嘘!?なんで・・・!?」

 

ルーシィはギルドにいたはずだ。いや、思えば彼女を狙ってると分かってるのに前線に置く必要はない。

 

隠れ家にでも移動させたのだろう。その時襲われて攫われたのか。

 

 

その時、ガン、という音がした。

直後。スピーカーから甲高い悲鳴が響き渡った。

 

 

『きゃああああああああああ!!!』

 

「ルーシィっ!!」

 

「あの野郎・・・!」

 

「下劣な・・・!」

 

アミクもナツもエルザも怒りで拳が震える。

 

 

『当初の目的は果たしました・・・・。 

 後は貴様らの皆殺しだ、糞ガキども・・・・!』

 

 

怒り、いや最早怨念の込められた声。そのあまりの迫力にアミクは寒気がした。

 

 

「・・・ナツ、ルーシィを助けに行って、ガジルも倒して」

 

「アミク・・・」

 

アミクはナツの腕を掴み訴えた。

 

「私も助けに行きたいけど・・・いまのこの状態じゃ足手纏いになりそう・・・

 それに他の皆も治療しなくちゃ」

 

ナツは悔しげに言葉を紡ぐアミクをジッと見る。

 

「ナツならガジルにだって勝てるよ。

 コンビとしてずっとナツを見てきた私が保証するよ」

 

アミクに続いてエルザも話した。

 

「私はここでアミクを守っている。ジョゼが来るかもしれないからな。

 ・・・ナツ、お前の中には眠っている力がある。

 それを解放しろ。ーーーー私を超えていけ!!」

 

 

エルザは静かに告げた。

 

 

「任せたよ、ナツ!」

 

「・・・ああ、分かった!」

 

ナツとハッピーは走って向こう側に消えて行った。

 

(ナツはーーーー大丈夫。

 信じてるからね!)

 

そんなナツの背中を見てアミクは強く拳を握った。

 

 

 

 

 




滅竜奥義出せて嬉しいです。

次はドラゴンフォースだな・・・。

イメージは大体できてるんだよ・・・。

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