しばらく休んでいると、アミクの耳に複数の足音が聴こえてきた。
この足音からして、グレイ、エルフマン、ミラだろう。
「アミク!それに・・・エルザ!?目が覚めたのか!」
「こ、この人、エレメント4の『大空』のアリア!?エルザが倒したの?」
「いや、アミクがやってくれた」
「うおおお!漢じゃねぇか!!」
「女ですけど・・・」
というより、なぜミラがここにいるのだろうか。
「はい、皆寄って寄って〜治療しま〜す」
「お、おい大丈夫なのかよ。アリアって奴はヤベェ奴だったんだろ?
怪我とかしまくったんじゃ・・・」
そうやって心配してくれるグレイ。
「大体直したから大丈夫。だけど体力的に無理そう。
めっちゃ疲れた」
「それでも凄いわね。あのアリアを倒しちゃうなんて。
時期S級魔導士も夢じゃないわよ?」
「いや、今回は色々重なって・・・」
『それよりアミク聞いてよ。グレイが敵の女の子にセクハラしたんだ』
ウルもアミクに話しかけ、騒がしくなる一同。
「全く、お前達。緊張感がないぞ。ナツは戦いに向かっているのだ。
私たちはルーシィを救出しだい、脱出を・・・」
ゾクッ
その時、とてつもない強大な魔力を感じた。
邪悪で凶悪な、魔力の奔流。
(こ、れは・・・)
アミクは冷や汗を流しながらも足音が聴こえて来る方を見る。
パチパチパチパチ
拍手。
相手がしていたのは手を打ち鳴らしているだけだった。
だが、その威圧感は強まっている。
「・・・まさか、本当に来るとは・・・」
エルザが呆然と呟く。
彼が「皆殺し」と言い放った時点で、こちらを直接潰しにかかって来ることも予想していたのだろう。
だからエルザは比較的冷静に彼を見ることができた。
「・・・おいおい、嘘だろ・・・?」
『とんでもない魔力だね・・・』
グレイは呆然と呟き、ウルも険しい声を出す。
「・・・・マスタージョゼ」
アミクはその名を呼ぶ。
「ア、アミク・・・」
マーチが震えながらアミクに抱きついてきた。アミクはそっと守る様に抱きしめ返す。
絶望的な程の差を見せながらやって来る男。
「いやいや、見事でしたよ。
気味の悪い笑顔で言うジョゼ。
「クククッ、まさかここまで楽しませてくれるとは正直、思いませんでしたよ・・・」
とうとうジョゼが目の前までやって来る。
アミク達はその凶暴な魔力を一身に浴びた。まるで怨霊の様なエネルギーだ。
震えが止まらない。
「・・・貴方が、ルーシィを!」
それでもアミクはジョゼを怒気の籠った瞳で睨みつけた。
「おやおやぁ、心外ですねぇ、私はただ依頼でルーシィ・ハートフィリアを連れ戻しに来ただけなんですけどねぇ・・・」
ニタァ、と口を歪めるジョゼには嫌悪感しか湧かない。
「こんなことをしておいて、ぬけぬけと・・・!」
エルザが怒りで唇を噛む。
「テメェを倒せば、終わりだろうが!!」
グレイとエルフマンが戦闘態勢をとる。
「さて・・・楽しませてくれたお礼をしませんとなぁ・・・たっぷりと、ね」
ゾワァ
エルザは咄嗟にアミクを抱きしめ、一緒に地に伏せた。そして、叫ぶ。
「避けろおおおおおおおお!!!」
ジョゼから邪悪な魔法が放たれる。
壮絶で凶悪な奔流。エルフマンとグレイはエルザの警告も空しく直撃し、吹っ飛んだ。
「がはぁ!!」
「ぬぐぅううううう!!!」
『グレイ!?』
「グレイ!エルフマン!!」
ウルの焦る声と同時にミラも二人に向かって駆け出す。
だがーーーーー
「悪いですが大人しく寝てて下さい」
ジョゼがミラにも魔法を放った。
それに吹き飛ばされゴロゴロ転がっていくミラ。
「ミラさん!!」
「くっ!よくも」
エルザは換装してジョゼに斬りかかった。
しかし、ジョゼはそれを避け、エルザの足を掴み、投げ飛ばす。
だが、すぐに体勢を整え、『黒羽の鎧』に換装するとジョゼを横から狙った。
「フン!」
「ぐっ!」
ジョゼは魔力を放出し、それを防いだ。
「驚きました。なぜそこまで動ける?
「アミクのお陰だ。それに、仲間が私の心を強くするんだ。愛するもの達のためならばこの体など・・・いらぬわ」
エルザが気丈に言い放った。
「ククク、なるほど・・・『
評議会からも重宝される、稀有な逸材だとね」
「アンタなんかに知られたくなかったよ!!」
アミクがジョゼを威嚇した。
エルザは素早くジョゼに向かうと剣を振るうが、やはり、避けられ、防がれ、
反撃される。
アミクとマーチはその攻防を見ていることしかできなかった。
激しい音のおかげで魔力や体力は回復してきているが、正直、ジョゼに勝てる気がしない。
エルザに
「ぐわあああああ!!!」
エルザの悲鳴に意識を取り戻す。見るとエルザが壁に激突し、崩れ落ちるところだった。
エルザは血だらけな上に腕が変な方向に曲がっている。
骨折は確定だ。
「エルザぁ!!」
「エルザ・・・!」
アミクとマーチが叫ぶも、エルザは呻くだけで起き上がらない。
「すみませんねぇ、貴方が元気なものですからあまり手加減ができませんでしたよぉ」
ねっとりと陰険そうな口調でジョゼは笑う。
先ほどまで苛烈な戦いを繰り広げていたのにジョゼにはあまり疲労の色は感じられない。
回復したはずのエルザでさえこうなのだ。自分なんか一溜まりもないだろう。
ジョゼはとどめをさすつもりなのかエルザに向かって歩き出す。
状況は非常にまずい。
こっちも、あっちも。
アミクの耳にはガジルとナツの戦いの音も聴こえていた。
ナツの劣勢。ガジルの飛び抜けた攻撃力と防御力に苦戦しているようだ。
(動くなら、今しかない・・・!)
人を嬲る快感でか、ジョゼは今隙だらけだ。
さらにこっちを足手纏いと見たのか気にしてすらいない。
チャンスだ。
(『
こっそり
「んな!?」
それはジョゼに当たった。それに留まらず、アミクは頭を動かしてブレスを斜め上――――ナツ達がいるであろう
方向に向ける。
ちょうどブレスの射線上にはモーターのような音がした。おそらく電化製品だろう。
その電化製品をどうにかすればナツの助けになるかもしれない。そういう考えでブレスを放った。
大分賭けだが、大丈夫だろうか。
一方。
ナツとガジルの戦いはガジルの一方的なモノになりかけていた。
ガジルは床にある鉄板を食べることで体力と魔力を回復したが、火種のないナツは消耗したまま戦うしかない。
「炎さえ食べれば、ナツは負けたりしないんだ!」
ハッピーが叫び、ルーシィも何か助けになるようなものはないか探していると。
ゴオオオオオオオオオ!!!
急に床から轟音のする衝撃波が流れるように出てきた。そして、ある壁を壊していく。
「何だァ!?」
「・・・!」
急な出来事にガジルは驚く。
だが、見覚えのあるナツとルーシィ、ハッピーは破顔する。
「アミクだ・・・!アミクが加勢に来てくれたんだ!」
「でも、どこにもいないよ・・・?」
アミクは今ナツのところに加勢に行ける状況ではない。
なのでブレスだけでも放ったわけだが・・・結果的にこれが功を成した。
壊された壁の向こうにあったのは・・・。
「!あれなら・・・いけるでありまして・・・もしもし!」
そこで、ルーシィが召喚した星霊、サジタリウスが持っていた弓を構えた。
そして、矢を放つ。
サジタリウスは弓矢の名手。狙ったところに百発百中である。
矢は電化製品を貫き、発火させる。
「矢の撃ち方によっては発火させることも可能!であるからしてもしもし!」
次々と電化製品を撃ち抜いていった。
火が出てきたのを見てナツは喜んだ。
「おっしゃー!火だー!」
早速パクパクと食べるナツ。
「ふぅー、サンキューな。アミク、ルーシィ!」
ナツがそう言うとルーシィはグッ、とグッドサインをした。
「ギヒッ!何を勝った気でいやがる!これでやっと対等だ!」
体の所々に包帯を巻いた男――――ガジル。
この包帯はさっきのアミクとの戦いでできた傷だ。既に全快しているが念のために付けている。
「・・・さっきから気になってたんだけどよぉ。おめぇ、アミクにやられた怪我、まだ治ってねぇのか?」
そのとき、ナツが静かにガジルに聞いた。
「ちっ、とっくに治ったわ!あんな奴、俺の敵じゃねぇ!」
ガジルは忌々しそうな顔をして吐き捨てた。
ガジルとしてはアミクを圧倒できると考えていた。
脅威なのは『双竜』としての連携であって、彼女単体なら弱い、と舐めていたのだ。
「一つだけ言っとくぞ。アミクを甘く見んな。お前じゃアミクを超えられねぇよ」
ナツと一緒にコンビを組んでるので、アミクの強さはナツもよく知っている。
自分が背を預けるに値するほどの強さだ。生半可な力ではナツとコンビなど組めるはずない。
逆もまた然り。
アミクが支えるに値する、と判断したからこそ、自分はアミクにコンビだと認められているのだ。
「アミクを超えられないようじゃ、俺には敵わねぇよ」
だからこそ。
アミクに信頼されている自分は負けない。
そんな自信が湧いてくる。
「―――さっきから聞いてりゃ、俺がテメェに敵わないだと・・・?」
何を言ってるんだこいつは。
さっきまで自分にボロボロにやられていたではないか。
それが、コイツにもあの女にも、俺は勝てないだと・・・。
「寝言は寝て言え!!」
ガジルは激情のままナツに向かって飛びかかった。
ぐっ。
ナツは拳を握りしめると。
「オッラアアアアアアアアア!!!」
炎を纏った拳でガジルの頭を殴り付けた。
真っ赤に燃え盛る炎はアミクやルーシィの想い、そしてギルド皆の想いが込められているようだった。
「――――小娘がぁ・・・!!」
場面は戻り、アミクは繰り出した拳をジョゼに掴まれていた。
咆哮を放った後、急接近して殴ろうと思ったのだがジョゼに反応され、今に至る、というわけだ。
「くっ――――」
「よくも私の顔に傷を付けてくれたなァ・・・!」
怨嗟の声に思わず顔を見ると確かに頬にうっすらと傷がある。
(さっきので、掠り傷、か・・・)
諦観の意味も込めて薄く笑った。
「何笑ってんだクソアマァ!!調子乗ってんじゃねぇ!!」
さっきまでの丁寧な言葉遣いをかなぐり捨て、乱暴な口調でがなりたてた。
顔が悪鬼のように歪み、醜く変貌している。
どうやら笑みを違った意味で捉えたらしい。
「『デッドウェイブ!!』」
怨霊のようなエネルギーがアミクに殺到してきた。
「か、は、ああああああ!!!」
それらはアミクを突き飛ばし、腹にめり込ませ、押し潰すかのように圧力をかけてくる。
かと思えば魔法を巧みに操って突き刺すようにアミクの体に撃ちこんできた。
血が口から勝手に溢れた。
「アミク!!やめて、なの!!」
「来ちゃだめ、マーチ!!」
マーチが翼を生やしてアミクを助けようと向かってきた―――――が。
「目障りだ」
ジョゼは短い言葉を吐くと怨霊のエネルギーでマーチを叩き落とす。
「あぁ、マーチ・・・」
アミクがマーチに手を伸ばすも、怨霊のエネルギーが体に巻きついて宙づりにされた。
ギシギシ、と締めあげてきて苦しい。
「か、ふ、あ・・・!」
「捕まえましたよぉ・・・それにしてもよく暴れる竜だ」
幾分冷静になってきたのか、表情が嫌らしいものに変わり、口調も丁寧になった。
そして先程からナツ達がいる方向で轟音が聞こえるので、ナツとガジルが戦っていることに気付いたのだろう。
「・・・ナツの戦闘力は、計れて、なかった?ナツは私以上に、強いよ?」
アミクは息も絶え絶えにジョゼを睨んだ。
そんなアミクを見てジョゼは口角を釣り上げる。
「謙遜はよしたまえ、
アリアとの戦闘のダメージがなければ、もう少しいい勝負となっていたでしょう・・・」
「それはっ、光栄、だねっ」
「
私と戦いあそこまで持ち堪えるとは・・・ね」
「だから」とジョゼは一瞬無表情になると。
「そんな強大な魔導士がねぇ・・・」
ミシミシィ!とアミクを締めあげた。
「マカロフのギルドにいることが気に食わんのですよっ!!!」
「あ、があああああああああああああ!!!」
「アミクっ!!」
エルザが足を引きずりながらもなんとか立とうとする。
ジョゼはそんなエルザを見ると、魔力の塊をエルザにぶつけた。
たまらず、エルザは吹き飛ばされる。
「くあっ!」
「さて・・・なぜ、私がマカロフに止めを刺さなかったか、お分かりですか?」
「え・・・?」
アミクは全身の骨が軋みを上げるのを感じながら疑問の声を上げた。
「絶望、絶望を与えるためですよ・・・!」
「ぜつ、ぼう・・・?」
「そうです・・・目が覚めた時・・・
愛するギルドと仲間が全滅していたらどうでしょうか?クククッ悲しむでしょうねぇ。あの男には絶望と悲しみを与えてから殺すのです!ただでは殺さんよぉ・・・!!苦しんで苦しんで、苦しませてから殺すのだぁ!!!」
「・・・っこの、蛆虫!」
ここまで邪悪だとは。拗れすぎて自分がやっていることの善悪もついていないように見える。
アミクはただただ、吐き気がした。
「
エルザにラクサス、ミストガン、そしてギルダーツ。
その名は我が街にまで届き、
気に入らんのだよ・・・元々クソみてぇに弱っちぃギルドだったくせにィ!!」
「そ、そんな・・・そんなくだらない嫉妬で戦争を引き起こしたの!?」
「嫉妬ォ?違うなァ、我々はものの優劣をハッキリさせたいのだよ・・・」
歪んだ笑みを浮かべるジョゼ。この男は妬みで人を平気で殺すのだ。
「あ!あぐあっ!」
さらにきつく締めつけてくる。血が逆流し、口から零れた。
「ア、アミクを離せぇ・・・!」
エルザが必死にこっちに向かおうとするのを見て、ジョゼは嘲笑った。
「エルザ・・・貴様はそこで仲間が無惨に殺されるところを見ているがいい。
そして、自分の無力さを思い知れ・・・!」
そして、再びアミクに顔を向けた。
「前々から気にくわんギルドだったが、この戦争の引き金は些細な事だった。
ハートフィリア財閥のお嬢様を連れ戻してくれという依頼さ」
ルー・・シィ・・・?
「この国有数の資産家の娘が
「うぐああ”あ”っ・・・!!がふ!ごぽっ・・・!」
とうとう肋骨が折れ、肺に突き刺さった。急いで治療せねば危険だ。
「ハートフィリアの金を貴様らが自由に使えたとしたら間違いなく我々よりも巨大な力を手に入れる!!
それだけは許してはおけんのだぁ!!!」
「・・・・かっ」
「それ以上はやめろ!アミクが死んでしまう!」
口から次から次へと血が流れ落ちるアミク。
それを見て涙を流しながら叫ぶエルザ。
「お嬢様もお嬢様だ!
アミクは静かにジョゼの目を見つめた。どこか悲しげな瞳で。
「うちのギ、ギルドだってどっちが強い、よわ、いとか揉めてるけど・・・楽しさがある。
騒がしいけどあた、たかさがある。でも、今のあなたにはただ、つめ、冷たい執着心と嫉妬心があるだけ。一番であることに拘りすぎて大切なことに気付いていない、かわい、可愛そうな人だよ・・・」
喋るたびに床に血が垂れ、シミが沢山できた。
「そ、それにじょ、情報収集もろくにできてないのは、自称一番のギルドとしてどうかと思うよ」
「・・・なんだと?」
「ルーシィは、家出してきたんだよ・・・。家の金なんて、自由に使える、わけがないのに・・・」
ジョゼは目を見開いた。
「一緒に家賃十万の家に住んで、一緒に行動して、一緒に戦って、一緒に笑って、一緒に泣いて・・・同じギルドの仲間だし、大切な同居人だよっ!
それなのに、戦争の引き金とか、ハートフィリア家の令嬢とか・・・音楽が演奏する人を選べないみたいに、子供だって親を選べない!
貴方に、涙を流すルーシィの何がわかるの!?」
血を吐きながらもルーシィへの想いを並べる。
エルザも同意するように座り込んだまま頷いている。彼女は足も折れてしまったらしい。後で治療しないと。
アミクはルーシィが初めてギルドに来たときのことを思い出していた。
ギルドマークを付けてもらって嬉しそうな顔。
メンバーたちの問題児っぷりに驚いて開いたまま塞がらない口。
入ってからは周りに振り回されながらも、楽しげに笑って過ごすルーシィをよく見かけた。
仕事先でもギルドでも家でも。
そんなルーシィを一つも知らないくせに・・・。
「勝手にルーシィを語るなぁ!!」
ルーシィの涙や笑顔を知っているから、ルーシィのために、アミクは嘆願するように叫んだ。
「・・・今まで知らなかったのなら、これから知っていくさ・・・」
ジョゼは唇を歪めた。
「だがこれだけは分かっている。アイツがこれから過ごすのは・・・地獄だってことがなぁ!!!」
ガッ、とアミクの首を絞めるように掴む。
「あっ・・・!」
「私があの小娘をただで父親に引き渡すと思うか? 金が無くなるまで飼い続けてやる・・・ハートフィリア家の財産全ては私の手に渡るのだぁっ!!」
「ルー、シィに、その汚い手で、触るなぁ!!」
アミクは汚らわしく笑うジョゼを同じ人間だとは思えなかった。
この、汚らわしい人間が。
「・・・・!?」
一瞬。一瞬だけアミクの威圧がジョゼのそれを超えた。
ヒヤリ、と首筋に
しかし、その感覚はすぐに消えた。
(何なんだ、この小娘は・・・)
自分がこの小娘に恐怖した?聖十大魔道である自分が?
恐怖を覚えた自分を恥じるようにアミクの首から手を離すと、もう一段階きつく締め上げた。
「・・・あ”っ・・・・かっ・・・!!」
大量の血液がアミクの口内から放出され、ゴポゴポ、と血泡まで出てくる始末。
もう・・・意識が・・・。
体が冷たくなっていくのを感じる。視界がだんだん暗くなり、狭まっていく。いつもなら鮮明に聞こえるはずの音や声もよく聴き取れない。
私は、死んじゃうのかな・・・。
「やめてくれ!!殺すなら私にしろ!!」
「貴様はそこで見ていろと言ったはずだ!」
エルザもなんとしてでもアミクを助けようと言葉を募るが、無意味。
「だ・・・め・・!あ、み・・・く・・・」
マーチもうっすらと目を開けた。
「て、めぇ・・・!アミクに、何しやがる・・・!!」
さっきまで気絶していたグレイもフラフラになりながらもジョゼに立ち向かおうとするが、ダメージが思ったより大きかったのかガクッと膝を突いてしまった。
『アミク!!』
ウルも必死にこちらに呼びかけてくれている。
「・・・そういえば貴様、さっきは大声で何か叫んでたようですが、なんでしたっけ?万年引きこもり?独身?その口でよく言えたものですねぇ!!」
瞳の光が失いかけ、瞼を閉じそうになる、アミクの目。
滅竜魔導士とはいえ、まだ16歳の少女であるアミクの肉体が耐えれるはずもなかった。
「・・・そうですねぇ、まずはその無駄に大きくて綺麗な声から潰してやらああああああああああ!!!!」
そう怒鳴ると、ジョゼは怨霊のエネルギーをアミクの細い首に穿とうと放つ。
「やめろおおおおおおおおおおお!!!!」
「アミクーーーーーー!!!」
「ちく、しょうっ・・・!!!」
『・・・くっ!』
エルザとマーチの悲鳴すら不明瞭になってきたところで、走馬灯が流れた気がした。
ナツ・・・ルーシィ・・・ハッピー・・・・おじいちゃん・・・オーディオン・・・みんな・・・せめて最期に一目見たかった・・・。
・・・・・・・・・・
身体が自由になる感覚。浮遊間。優しく抱きとめられた感じ。ぽかぽかあったかい。
「親より先に逝く子がいるか。アミクよ」
「お、じいちゃ、ん・・・?」
「そうじゃ、お前のおじいちゃんじゃ」
安心できる、どこか懐かしい、この魔力。おじいちゃんだ。
「出来の悪い親のせいで幾つもの血が流れ、痛み、涙を流した。もう十分じゃ。この戦争を終わらさねばならん」
「マスター!」
エルザも感激で涙を浮かべている。マーチもそうだ。グレイも喜色満面である。
マカロフは抱えていたアミクをエルザに渡す。
「よくやった。よく持ちこたえてくれた。アミク、エルザ。そして全てのガキ共に感謝する。
アミクはそれを聞いて力なく笑みを浮かべた。うっすらと目を開けてはいるが、いつ気絶してもおかしくない。
それに、アミクの今の状態は非常に危険である。
「アミク達を連れて下がれ、エルザ」
「・・・分かりました。グレイ、手伝ってくれないか」
「ああ、分かった。俺はエルフマンとマーチを連れて行く」
「ま、待て・・・俺も起きた・・・」
エルフマンが復活したので彼がミラを肩に担ぎ、グレイがアミクをお姫様抱っこで抱え、エルザがマーチを抱えた。
「アミク・・・死ぬなよ・・・!」
「し、な、な、い・・・よ」
顔色が白いのに何を言っているのだろうかこの娘は。
ウルはそう思った。
「天変地異を望むというのか」
「それが家族のためならば」
マスター同士の魔力がぶつかり合い、空が軋んだ。
決着の時は近い。
頑張ってエグくした。あと眠い。