元
ルーシィが実家から戻ってきて数日後。
アミク達の家で盛大なパーティが行われようとしていた。
「えー、遅くなりましたが。ルーシィの正式入居書類も出したことですし、ルーシィの引越し祝いをしようと思いまーす!」
『おおおおーーーーー!!!』
アミクの音頭に集まっていたナツ達が拍手をした。
「というわけでおめでとうルーシィ!」
「ど、どーも・・・たかが引越し祝いでここまでする?」
「いいのいいの。ちょうど皆騒ぎたかったところだろうし!」
「なんか複雑・・・」
当の本人のルーシィは苦笑いをしている。
色々あったおかげでルーシィの正式入居ができなかったが、今回やっとすることができたので、ナツ達を呼び、パーティをすることにしたのだ。
「これでルーシィも家賃払うための借金地獄が始まるんだね」
「なんて不吉なことを言うのかしら!?」
ハッピーの言葉にルーシィがギョッとしていた。
「うむ。やはり美味いな。アミクは将来いいお嫁さんになれるぞ」
「お嫁さんって・・・それはエルザもじゃない?」
『私も食べてみたいけどね・・・口ないから』
アミクとエルザが卵料理を突っつきながら会話している。ウルは寂しそうに呟いていた。
ちなみに、料理はアミクやエルザが担当した。
「おいクソ炎、どっちが先にこのピラフを食べ切れるか勝負だ」
「望むところだ!」
「他の人の分の残しとけ、なの」
マーチがナツとグレイを窘めている。いっぱい作ってはあるが、食べ尽くされてしまえば他の人が食べる分が少なくなるのだ。
「ウメェなこれ!」
「何杯でもイケるな!」
スキンヘッドの男と、褐色肌の少女が絶賛する。
『・・・・・』
皆、黙った。
何か違和感がある。いつも通りのメンバーに何か異物が混じっているような・・・。
「「誰だよ!?」」
ナツとグレイがスキンヘッドの男と褐色肌の少女に気付いて声をあげる。
「お!?」
「ん!?」
二人はビクッとなってそろりと目を逸らした。
そこにエルザが剣を突きつける。
「貴様ら、人の家に勝手に上がり込むとは。不届き者め」
「それ盛大なブーメランになってることに気づかない?」
アミクがジト目で言った。
「ヒ、ヒィ!!?
「なんでこんなところに!?」
二人はエルザを見ると抱き合って震えた。
アミクは慌ててエルザと二人の間に入る。
「待って待って!この二人を招いたのは私だから!」
そう言うとエルザはゆっくりと剣を下ろした。
アミクと二人組はホッとする。
「そうか・・・だがこの二人は何者なのだ?」
だがエルザの質問に再びビクッとなった。
ナツやグレイ達もジッと二人を見る。
アミクは乾いた笑みを浮かべながら紹介した。
「えーとこっちのハゲの人はボーズ。こっちの女の子はスー。
どっちも・・・元・
『な・・・!?』
一同は驚いて唖然として二人を見た。まさか、あれだけの事をしたファンロムの一員がいるとは思わなかったのだろう。
エルザはアミクを睨んだ。
「アミク、どういう事だ。あんな事をしたファントムを家に招くなど・・・」
「まぁ、事情があってね・・・」
アミクはつい先程あった出来事を話し始めた。
「やっば、遅くなったな・・・」
今日もギルドの再建の手伝いをしていたのだが、ついつい張り切りすぎて遅くまで居残ってしまった。
今日はルーシィの引越し祝いパーティがあるのに。
ルーシィやナツ達は先に帰ったのでまだ着いてないのはアミクだけだろう。
「はぁ・・・近道しよ」
アミクは偶に使う路地裏に足を向けた。
路地裏に入ってしばらくした頃。二人分の足音が聞こえてきた。
どうやら待ち伏せしていたようだ。
(なになに?チンピラかな?)
アミクは立ち止まって二人が現れるのを待つ。
無視しようかとも思ったが、二人は前方から歩いてくるので結局鉢合わせることになってしまう。
現れたのはスキンヘッドのサングラスを掛けた男と褐色肌に額の宝石が特徴の少女。
二人はにやついた面に若干の怯えが混じった表情をしながら近づいてくる。
「ヘッヘッヘ、嬢ちゃんや。こんな遅くまで何やってたんだい?」
「良かったらあたい達と遊ばないかー?」
少女の方は訛りが混じったような口調だった。
「うーん、ごめんね、私ちょっと急いでるから・・・」
「まぁまぁ、そう言わずにーーーーーーミラーマジック『千面鏡』!!」
急に少女の方が魔法を使った。アミクの周り全てが鏡に囲まれ、囚われる。
「うわ、これ気持ち悪・・・」
どこを見ても自分が写っていると言うのは良くない気分だ。
「あははは!!自分の間抜けな姿しか見えないのはどんな気分だ!?」
外から少女の笑い声が聞こえた。敵意のある口調だが、一体どう言う目的だろうか。
「まぁいいや、『音竜の響拳』」
アミクは軽く鏡を殴り、衝撃波を発生させて壊した。
パリィィィィィィン!!
「なぁ・・・!?」
少女が驚いて目を見開く。男の方は少女の前に出て舌打ちした。
「チッ、やれる方の奴だったか!喰らえ、音撃弾術『ハウリング』!!」
男が魔法を使うと、不協和音がこちらに向かって襲ってきた。なるほど、なかなかの攻撃力だ。
「からの、『ディスターブド』!!」
今度は足元から不協和音が飛び出してきてアミクを襲った。
音系の魔法の使い手か。
アミクは涼しい顔をしながらそう推察すると
カプ
不協和音を口に咥えた。
シュルルルルルルル
そして、ラーメンを啜るように吸い込む。
味はブラックコーヒーと言ったところか。
「は・・・・はぁ!?」
「あ、あいつまさか!!音を食って・・・!!」
二人は驚愕して立ち竦んでしまった。
「・・・う〜ん、微妙かな。もうちょっと甘めだったら良かったけど」
全部食べ終わったアミクがそう批評すると二人はアミクの正体に気付いたようだ。
「あの女!『
「嘘だろ!?よりによって!」
今更正体に気付いても遅い。
「出力を抑えて・・・『音竜の咆哮』!」
「くっ『姿鏡』!」
少女の方が目の前に鏡を出す。
ブレスはその鏡に吸い込まれていったがーーーーー
パリィィィン!!
「きゃあああ!!」
「おわあああああ!!」
吸収しきれなかったのか、鏡が割れてしまった。そしてブレスはそのまま二人に直撃した。
「で?なんでこんなことしたの?」
アミクは仁王立ちで二人の前に立った。
二人はボロボロの姿で正座している。
「え、えっとぉそれがですね・・・」
二人の説明によると、
なんと二人は前の事件で解散した
自分の仕事場が無くなってしまった二人はとにかく食い繋ごうと新しい仕事先を探す。
だがここにきて今まで好き勝手してきたツケが回ってきた。
元々評判の良くなかった
そんなギルドに所属していた経歴を持つ二人は信頼ゼロだった。どこに行っても
評判とやらかした出来事のせいで周りの向ける視線は冷たく、仕事にありつけない。
二人はそんなジレンマに陥ってしまった。
二人はそんな生活を送っている内にこうなった原因は何か?と考える。
全部
全部
「―――――で、復讐しようと考えたわけ?アホか」
「うぅ・・・俺らだって短絡的だったと思うぜ・・・」
「でも・・・誰かのせいにしなきゃやってられなかったんだよ!」
「一日一食を心がけても足りない食費・・・」
「雨で濡れて眠れやしない野宿・・・」
二人はざめざめと泣き出した。
確かに自業自得とはいえ、ボーズとスーの境遇にはさすがに同情する。その中で、心に溜まったモノを掃きだしたかったのだろう。
だからって逆恨みして良いという訳ではないが。
まあ、まともな判断ができなかったということで良いだろう。
(・・・どうしようか)
アミク自身、こういうのはほっとけない性格なのだ。
「・・・はぁ・・・しょうがないなぁ・・・」
自分でも難儀な性格だとは思う。
しかし、ここままでは自分が落ち着かないのも事実。
「一つだけ聞くけど・・・あの事は反省してる・・・?」
せめて彼らの本音を知りたかった。
「はいぃ・・・今回のことも前回のことも反省してますぅ・・・」
「ちゃんと真面目に働こうとしてるんですぅ・・・でも世間の目がぁ・・・」
涙を流しながら喋る彼らのことが可愛そうになってきたアミク。
おそらく嘘ではあるまい。
アミクはそう判断してとりあえず二人の腹ごしらえをすることにした。
つまり
パーティに参加させたのだ。
「ってことなんだけど・・・ごめんね、さすがに、無神経だったかな・・・?」
アミクが不安そうな顔で皆を見回す。
見ると皆苦笑している。
「アミクらしいよなー」
「ったくしょうがねぇな」
「それがアミクの魅力、なの」
「あい!」
「もう、終わったことだし、ね」
全員アミクに好意的だった。
「・・・ありがと。でも問題は泊めるとこなんだけど・・・」
「え!?もしかして家に泊めるの!?」
ルーシィがギョッとして言った。いくらなんでも一緒の家にいるのは不安なのだろう。
「さすがに泊めるのはダメかな・・・でもこの人たち追い出すと野宿だし・・・」
「あ、あたしは別に大丈夫よ!」
ルーシィが慌てて言う。
「でも、せめて一緒に寝て・・・」
「オッケー!」
即答した。友達と添い寝するのが嬉しいらしい。
するとエルザが苦笑した。
「割り切ったわけではないが、アミクがそうすると決めたのなら私はその意思を尊重しよう。ただ・・・」
エルザは言葉を切るとボーズとスーをギロリ、と鋭い目で見る。
「もし、アミクとルーシィに危害を加えたら・・・・容赦はせぬぞ」
「「は、はいぃ・・・」」
二人は鋭い眼光に震えるしかなかった。
それからボーズとスーも交えてパーティを楽しむ。
最初は二人共ぎこちなかったが、屈託のないナツや、分け隔てなく接するアミクなどという面子によってすっかり溶け込んでいった。
ナツが面白おかしく話す仕事の話に笑うボーズ。女性陣で自分だけ胸が小さい、と凹むスー。
ハッピーを抱きしめ撫でまわすスー。グレイと魔法談義に花を咲かせるボーズ。
一緒に笑い、一緒に騒ぐ。禍根を忘れ、一緒に楽しむその様子は、マグノリアで一番輝いていたと言えるだろう。
もしも、これが
楽しい時間はあっという間に過ぎ―――――
「―――って結局皆泊まるじゃん!!」
「やはり心配だからな」
「まぁいいじゃねぇか!たくさんいた方がいいだろ?」
「あい!」
全員泊ることになってしまった。お前ら自由だなおい。
まぁ、確かに見知った人がたくさんいた方がいい。これは渡りに船というやつだろう。
というより、みんなエルザみたいに警戒心の緩いアミクを心配してくれたのかもしれない。
騒いでいると急にボーズとスーが二人揃って土下座した。
「姉貴!」
「姉さん!」
「ふぇ!?」
それに急に姉貴呼ばわり。アミクの頭は困惑で満ちた。
「こんな、こんな俺たちみたいな奴らにここまで親切にして下さってありがとうございます!!」
「あんなことをしたのに・・・なんて慈悲深いんだ!!」
「・・・!?!?」
わたわたと慌てるアミクと感激して涙を流す元・
それを見てエルザ達が共通して思ったこと。
また信者増やしたな、と。
女子と男子で別れて寝ることにした。
当然女子であるスーはアミク達と一緒である。
「こ、こういうのは初めてなんだ」
「そうなの?じゃあ、私達が初めてのアレだね!」
「アレってなによ・・・」
「ふむ、しかしお前は良く訛るが、地元の癖なのか?」
「あぁ、故郷でずっと暮らしていたけど、
オークの街に住んでいた友達に誘われて魔導士ギルドに入ったんだ。
それがファントムだけど・・・」
「いつか、その地元にも行ってみたい、の」
「特に面白味もねぇぞ?」
「そういう所になんかすごい秘密があったりするんだから!」
女子たちは集まってガールズトーク。
男子達は・・・
「おい、てめぇ今なんつった?」
「何度でも言ってやるよ、おめぇの体臭クセェって言ったんだ。ちゃんと風呂入ってんのかよ。それで服脱ぐとか臭すぎて近所迷惑だわ!」
「んなにぃ!?てめぇこそその目に悪そうな色の髪のせいで視力が下がるんだよ。燃やしてハゲになったほうがいいんじゃねぇか?」
「あぁ?」
「おぉ?」
「・・・だ、だれか助けてくだせぇ!!」
「慣れるしかないよ」
ナツとグレイのケンカに巻き込まれてるボーズであった・・・。
翌朝。
皆で朝食を食べた後、アミクはボーズとスーにある名刺を渡した。
「こ、これは・・・?」
「これは前仕事で行った孤児院の場所。ここだったら君たちのことを受け入れてくれるはずだよ。過去のこととかもあまり気にしないし、君たちの今の人柄を見ると思うから」
ボーズとスーは呆然とした。
ご飯や寝床を恵んでくれただけでなく仕事場まで紹介してくれるとは。
なんて懐の深い人なんだろうか。
ガバッと二人は再び土下座した。
「うぇ!?また!?」
「姉貴!!一生ついて行きます!!」
「ついていきます!!」
「来なくていいから!?何でそんな簡単に人生棒に振るわけ!?自分の道を進みなさい!」
アミクが脇に手を当てて言うと二人が恍惚とした表情になった。ナニコレやべぇ。
「な、なんて心に染みわたる声色に言葉・・・」
「あたい達は、ほんとに幸運だよ・・・」
アミクに眩しいものでも見るかのような反応だ。後光でも差しているのか。
「とにかく!子供の世話とかできる?ま、それじゃなくても掃除とか食器洗いとかもあるから安心して。それに君たち魔導士だから用心棒みたいな役割もできるし」
魔法は使い様によっては日常生活でも十分役に立つ。
ボーズの不協和音攻撃だったらカラスや野生の動物を追い払うこともできるし、スーの鏡はいつでも姿見に使える。
「それで信頼を積み上げてまた魔道士ギルドに入るとかもできるよ」
本当に至り付くせりだ。そろそろ二人のアミクを見る目がヤバい。私は神か。
「・・・あれで天然?無自覚?すごくない?」
「俺達はもう見慣れたもんだけどな」
「ふふ、久しぶりに見たぞ、アミクの女神モード」
「信者製造機とも言う、の」
「マーチ、言い方がとんでもないよー」
外野がうるさい。
「ま、だから頑張りなよ。世の中すべてが君たちのこと見放してるわけじゃないんだから。ちゃんと見てくれてる人達もいるから。過去と向き合って生きていればその内みんな認めてくれるから!諦めないでね!」
「・・・ばい”・・・」
二人の目から涙が滝のように溢れる。
アミクはそんな二人を見て「あわわわ」とティッシュを差し出していた。
「・・・なぁ、アイツを育ててくれた
グレイの疑問に全員「さぁ?」と言いたげに首を傾けた。
孤児院に行くまでの移動賃を渡すと「絶対返しに来ます!」と誓われた。
意気揚々と出ていく二人をすっきりした顔で眺めるアミク。
「―――うん!よかったよかった!」
そんなアミクをほっこりしながら眺めるルーシィ達。
「なんか、すごいとしか言いようがないわ」
「ここだけの話、アミクのおかげで改心した闇ギルドもいくつかあるのだ」
「そこからでた異名が『
「なにそれ初耳なんだけど!?」
アミクがガーンとしていた。
『あっはっはっは!とんでもない娘だ!』
『笑い事じゃないよウル・・・』
アミクはこっそり『
そんなことがあって数週間後。
やっとのことで
「皆ー!!今日から仕事の受注再開よー!
仮設のカウンターだけど・・・ガンガン仕事やろー!!」
『うおおおおおお!!!』
ミラの言葉にギルドの人達がカウンターに殺到する。
「何あれ・・・いつもはお酒飲んでるだけの癖に・・・」
やる気に満ちる面々を眺め、カウンターでジュースを飲み呟くルーシィ。
「それにナブなんてどうせ仕事行かないだろうに・・・あんなに食い付いちゃってるし」
アミクもルーシィの隣で呆れ気味だ。
ルーシィは周りを見回すと首を傾げた。
「そういえばロキは?」
「あらあら・・・ルーシィもとうとうロキの魔の手にかかっちゃったのね」
「違います!」
ルーシィは慌てて否定するとため息をついた。
「この前のファントムとの戦闘の時、あたし鍵落としちゃって・・・ロキが拾ってくれたって話をアミクから聞いたからお礼言いたかったんだけど・・・」
「そーいえば見当たらないなー」
最後に会ったのがあの、やつれた表情の時だったはずだ。無事ではあるようだが大丈夫だろうか・・・。
アミクが思案しているとミラがルーシィに問いかける。
「それより星霊に怒られなかった?鍵落としちゃって」
それを聞いたルーシィが何かを思い出したのかお尻に手を当てる。
「思い出しただけでお尻が・・・」
「めっちゃ聞こえてたよ・・・」
ルーシィの悲鳴と鞭の音、そしてアクエリアスというルーシィが持つ星霊の一人の怒声。
自分の部屋でそれを聞いたアミクは何事か、とルーシィの部屋に飛び込んだらお取り込み中だったようで。
アミクとは初対面であるアクエリアスだったが、「邪魔すんじゃねぇよ!」とアミクまで鞭打ちしそうになったのでルーシィを見捨てて逃げた。
南無。
「まぁ、悪い人じゃないんだろうけど・・・」
「あはは・・・」
アミクの言葉に乾いた笑いを上げるルーシィ。
そんなアミク達の会話を聞いていたらしいナツ、ハッピー、グレイが絡む。
「冷やしてやろうか?」
「さり気ないセクハラだよ?それ?」
「ルーシィ~赤いお尻見せて~プクク」
「堂々としたセクハラだよそれ!?」
「もっとヒリヒリさせたらどんな顔すっかな?」
「やめようか!!?」
ルーシィの代わりにアミクがいちいちツッコんでくれた。
その時。
「ぎゃわ―――――!!?」
テーブルが飛んできてナツを押しつぶす。
「ナツ―――――!?」
アミクが慌ててテーブルを持ち上げナツを助けた。
「もういっぺん言ってみろ!!!!」
そこで聞こえた怒声。
「エルザ?」
エルザだ。アミクは何の騒ぎか、とそちらを向いた。
「この際だ。ハッキリ言ってやるよ。弱ェ奴はこのギルドに必要ねぇ」
この声はラクサスだ。
いつの間にか帰って来ていたのかラクサスは薄笑いをしながら、自分を睨んでいるエルザを見る。
「貴様・・・!」
「ファントム如きに舐められやがって・・・恥ずかしくて外も歩けねーよ」
するとラクサスはガジルに襲撃されたレビィを指差した。
「オメーだよオメー」
「!」
「元はと言えァオメーらがガジルにやられたんだって?つか、オメーら名前知らねぇや誰だよ?」
嘲るようにレビィたちシャドウギアに話しかけるラクサス。しかし、レビィ達は悔しげに俯いて何も言わない。
アミクは思わずむっとして反論の言葉を上げようとしたが、その前にルーシィが口を出す。
「そんなひどいことを・・・!」
するとその声に反応したラクサスがこっちを向いた。ニヤァと口が裂ける。
「お?これはこれは更に元凶のねーちゃんじゃねぇか」
「ラクサス!」
ルーシィが苦しそうな顔をしたので、アミクは窘めるようにラクサスの名前を呼ぶ。
それから、ミラがラクサスに語りかけた。
「もう全部終わったの、誰のせいとかそういう話だって初めからないの!戦闘に参加しなかったラクサスだってお咎め無しって、マスターは言ってるのよ」
「ま、待ってミラさん。ラクサスは――――」
あの時助けてくれたのは確かにラクサスなのだ。
なので「戦闘に参加しなかった」というのを訂正させようとすると――――
バチィ!
一瞬でラクサスが距離を詰めてきた。
「アミク!?」
ルーシィやエルザ達が身構える中、ズイ、と顔を近づけてくる。
「余計なことは、言うなよ?」
「・・・」
アミクは脅すように顔を覗き込むラクサスに思わず唾をゴクリ、と飲み込んだ。冷や汗をかきながらゆっくり頷くとラクサスは顔を離した。
「ラクサス、アミクに何しやがった!」
一部始終を見ていたナツが激昂してラクサスに飛びかかった。
ナツが殴る瞬間。バチィ!とまた一瞬でナツの背後に移動した。
「ラクサス!!!オレと勝負しろぉ!!!この薄情もんが!!!!」
「あははははっ!!!オレをとらえられない奴が何の勝負になる!」
ラクサスは大声で笑うと周りを見渡して宣言するように叫んだ。
「俺がギルドを継いだら弱ェモンは全て削除する!!!そして歯向かう奴も全てだ!!! 最強のギルドをつくる!!!誰にも舐められねぇ史上最強のギルドだっ!!!!」
高笑いを上げながらバチィ!と雷になって去っていくラクサスを、アミクは寂しそうに見ていた。
(ラクサス・・・)
「だ、大丈夫!?何もされなかった?」
はっと我に返ると皆心配そうにこちらを見ていた。
「う、ううん!なにもされてないから大丈夫!」
首を振りながら言うと皆安心したようだ。
「それにしても継ぐって・・・何ぶっ飛んだ事言ってんのよ」
ルーシィが面白くなさそうに言うが、アミクが首を振る。
「それがそうでもないんだよね。ラクサスはおじいちゃんの実の孫なんだよ」
「え・・・え――――――っ!!?」
驚くルーシィはハッとした顔で続けた。
「じゃ、じゃあマスターが引退したら次のマスターはラクサスなの!?」
「そうならないようにおじいちゃんも引退できないって話なんだけどね・・・。ラクサスももっと皆と話し合えばいいのに・・・」
悲しげに言うアミクにルーシィはふ、と思ったことを聞いてみた。
「アミクはラクサスが改心すると思ってるの?」
「――――ラクサスは、ただ不器用なだけだよ・・・
「・・・」
「そんな人は・・・ギルドの皆と仲良くなって欲しいのに・・・」
その悲哀の籠った瞳には何を映しているのだろうか。
ルーシィにはアミクに掛ける言葉が見つからなかった。
「あんな奴に関わると疲れるだけだ。放っておけ。それよりどうだろう?仕事にでも行かないか?」
「え?」
エルザがそんなアミク達に声を掛ける。
「もちろんナツにグレイも一緒だ」
「「え”!?」」
二人が嫌そうな顔をした。
「
この際チームを組まないか? 私たち5人で。ハッピーとマーチをいれて7人か」
「わぁ!いいんじゃない?」
「あたしも賛成!」
『へぇ?面白そうじゃないか』
アミクが顔を綻ばせて頷くとルーシィも賛成する。
ウルからも楽しげな雰囲気が伝わってきた。
「
「いいぞー!!!」
「お前らが最強だー!!!」
「ルーシィって最強か?」
「アクエリアス出されたら勝てる気がしねぇ」
「私も・・・」
ギルドのメンバー達も最強チームの正式結成の瞬間を目撃して騒いだ。
「「こ、こいつと・・・」」
「不満か?」
「「いえ嬉しいです」」
「あんたら・・・」
睨みあっていたナツとグレイがエルザの一声でコロッと意見を変えた。
アミクはそんな二人に呆れる。
「早速仕事に行くぞ!」
エルザのやる気満々の声を聞きながら、アミクはメンバーを一人一人見た。
火の
氷の造形魔導士のグレイ。ついでにウル。
期待の新人である星霊魔導士のルーシィ。
お魚大好きハッピー。
昔からずっと一緒にいるマーチ。
そして自分、音の
なんとも濃い面子が集まってしまったものだ。
アミクはこれから起こりうる波乱万丈の日々と騒動を思い浮かべ、楽しそうに微笑んだ。
今は色々な問題は忘れよう。ただ、この皆と過ごす一時を大事にしよう。
マカロフは再建途中のギルドの骨組みの上に座り、酒を飲みながら考え込んでいた。
(引退、か・・・)
評議会に行った時ヤジマに言われたことだ。
そろそろ引退すべきだ、と。
「ギルドも新しくなる。ならばマスターも次の世代へ・・・」
となると
ラクサス。信念と心が浮いている。
ミストガン。ディスコミュニケーションの見本みたいな奴。
ギルダーツ。無理。
「となると・・・まだ若いがエルザかのう・・・ううむ、S級になっていればアミクを指名したかったのじゃが・・・」
アミクのような人柄であればギルドマスターにふさわしいはずだ。しかし、ないものねだりしても仕方ない。
そう考えていた時。
「マスター、こんな所にいたんですかぁ~!」
「ん?」
ミラが下から呼んでいた。
「またやっちゃったみたいです」
「は?」
呆けるマカロフにミラは手に持っていた書類を見せた。
「エルザたちが仕事先で街を半壊させちゃったみたい」
「はっ!!!?」
その瞬間、マカロフは真っ白になった。
「あとアミクから伝言~。『ごめん、おじいちゃん。止められんかった』だって~!」
マカロフは静かに涙を流す。 そんなマカロフにミラは追い討ちをかける。
「評議院から早々に始末書の提出を求められてますよー。あれ?マスターどうしました?」
マカロフは立ち上がると、夜空に輝く星と月に向かって叫んだ。
「引退なんかしてられるか――――!!!」
まだまだマカロフの苦労は続きそうである。
ボーズ&スーはアニメ版で出てきたキャラクターです。
ほんとはファントム編で出す予定だったけど・・・
忘れてた!
なので閑話に登場させました。
だって、食わせたかったんだもん。音撃弾術!相性ぴったりじゃん!