「はぁ〜」
ルーシィはカウンターで突っ伏した。
アミクはそんなルーシィを慰めている。
「どうしたのルーシィ?」
ミラがルーシィに聞いた。
「・・・報酬の出入りが少ない」
「あら、お嬢様でしょ?お金なんらたくさん持ってるんじゃない?」
「家のお金は持ってきてないんですってばー!」
ルーシィがまた深々とため息を吐いた。
「それにお金持ちでも報酬が少ないと気が滅入るものなんです・・・」
「まぁまぁ、あの面子じゃね・・・」
アミクも同じ苦労が分かるのか苦笑いしていた。
「このままだったら家賃払えないかも・・・」
「まぁその時は立て替えてあげるから・・・」
「それはダメー!依存しちゃうからー!」
ルーシィが手をブンブンと振って拒否する。
「それにあともう少しだから!家賃五万でよかった本当に!あと二万高かったら「家賃払えない〜!」って嘆いてる自分が思い浮かぶわ・・・」
「う〜ん、何かしら?そんなルーシィを見たことある気がするわ」
「でも、あいつらが物壊しまくって報酬減らすから万が一があるかもって・・・家賃が〜」
(結局言うんかい)
アミクもガクッと脱力した。
「アイツら、物を壊して悦に浸ってるんじゃないかしら」
「そんなことないと思うナー」
ルーシィが見つめる先にはビリヤードをしているナツとグレイがいた。
「どっから持ってきたんだろ・・・?」
アミクが疑問に思っていると。
「よーし、じゃあ俺からな!」
ナツがビリヤードの棒(キューというらしい)を持って構える。
「おお、様になってんじゃん」
アミクが感心した顔でナツを見ているとーーーー
ドゴオオン!!
ナツが打ったボールが他のボールをぶち壊した。
「ちぇー、6個だけかー」
「すごいーナツー!」
「綺麗にぶち抜いていった、の」
「バカ言え、一つは罅が入ってるだけだから5個だ!」
『細かいよ・・・』
「そんなこったろうと思ったよ!」
アミクはガン、と頭をカウンターに打ち付けた。
そんなアミクの頭を慰めるように撫でるルーシィ。あるいは傷の舐め合いなのかも知れない。
「・・・そうだわ、二人にぴったりな依頼があるんだけどどうかしら?」
そう言ってミラが差し出してきたのは
「劇・・・?」
アミク達最強チームは列車から降りて目的地に向かう。
「演劇か・・・こういうのはやった事がないな。あーあーあー!」
「いや、私たちは出演しないから・・・」
「あたし達がするのは演出の手伝いよ!魔法で舞台を盛り上げるの」
ただ演じるだけではなく、魔法を使う事で観客達を幻想に引き入れる。そのための魔導士なのだ。
「この依頼達成すれば今月の家賃は余裕で払えるのよ!」
ルーシィはグッと拳を握った。
「それにいつかあたしの小説が舞台化するかもだしこういうのは見ておいて損はないのよ!」
「ほぉ・・・」
「気が早い話だね・・・」
ルーシィの小説ならありえるかも知れないが。
依頼主、ジェラード劇団の団長、ラビアン。本来の依頼内容は魔法による演出の手助けだったが・・・・
「
「えぇ、どうも・・・ところでなんで人がこんなにいないんですか?」
「これには事情がありまして・・・」
曰く、30年前に脱サラして夢の演劇の道へと入ったものの、公演する舞台は不評続きで、妻は夢を追い続ける自分に愛想を尽かし出て行った。
そしてすでに団員役者が全員逃亡しているという。
「うぅ・・・このままでは劇を公演することができません、どうもありがとうございます!」
「いや、感謝するところじゃないでしょ・・・」
特徴的な語尾を持つ団長さんである。
そこで、エルザが声をあげた。
「安心してください。なぜなら・・・演劇者ならここにいますから!」
「マジか!?」
「輝いてる!?」
エルザがめっちゃキラキラした笑顔でラビアンを見た。
「ま、ここまできてほっとくわけにもいかないしね」
アミクも便乗する。
「面白そう!」
「あーしの演技力を見せつける時、なの」
「確かによく仰々しいこと言ってるもんね〜」
みんな乗り気なところを見てラビアンは感動したのかジワリ、と涙が滲み出るとーーーーーー
「まぁ、やらせてやってもいいかな。チッ、素人か」
「そこは「ありがとう」って言わないんだね・・・」
急に態度のでかくなるラビアンであった。
それから一週間後の公園までビラを配ったり演劇の練習をしたりと忙しかった。
特に酷かったのが台本で内容がヤバすぎてルーシィ共々絶句したのはいい思い出である。
そして、一週間後。
いよいよ劇が始まる。
「こんなに人が集まるとは・・・どうもありがとうございます!」
「いやいや、ここから本番だよ」
「うん!ここまで来たら絶対に成功させようね!」
『おう!』
みんなで気合いを入れると全員配置に付いた。
これにて開幕だ。
『フレデリックとヤンデリカ』
「むか〜しむかし〜ある所に王子様が居りました〜」
「その王子様は隣国の姫君に恋をしました〜」
舞台の前で、星霊であるリラと薄着をしたアミクが歌うようにあらすじを語る。
観客達はアミクとリラの声を聞いてうっとりとなった。
「なんて綺麗な声なの・・・」
「あの娘、すごく可愛いな・・・」
「そして王子は姫君を助けに行きました〜」
「姫捕まってたのかよ!?」
あまりにも早い展開にツッコミを入れる観客。
その間に、アミクは堂々と着替えを始めた。と言っても着ていた服の上からドレスを着て、ティアラを被っただけだが。
「ここで着替えんのかよ!?」
そして、まだ降りている幕の中に入って行った。
「せめて中に入ってから着ろよ・・・」
すると、幕が上がり天井からロープで吊るされたルーシィと檻の中にいるアミクがいた。
「姫二人もいたのかよ!?」
「あと、捕まり方統一しろ!」
しばらくすると舞台袖から王子に扮したエルザが現れた。ガチガチになりながら。
「わ、我が名、ななななは、フレデリィックぅ・・・や、やや、ヤンデリカ姫、ツツツ、ツンデリカ姫、たすくぇに、にに、参りましとぁ」
「ガッチガチじゃねぇか!!」
「おい、ツンデリカ姫なんて題名になかっただろ!?」
今度はルーシィが吊るされたまま、悲痛そうな声を出す。
「ああ、フレデリック王子!私達は
「いや、『あの』って誰だよ!?」
次に檻の中にいるアミクが高笑いを上げた。
「ホーホッホッホッホ!!捕まってしまうなんて、哀れでございますね、お姉様?」
「お前も捕まってる側じゃねぇのかよ!?」
「結局どっちがヤンデリカでどっちがツンデリカなんだ・・・」
今度は舞台袖からグレイが出てくる。
「我が名はジュリオス。姫君達を助けたければ私を倒してみたまえ」
「今度は誰だよ!?」
「セインハルトはどうなったんだー!?」
グレイは魔法で、氷でできた剣を作り出して構える。
「いざ、尋常に勝負!」
「おぉ!すげぇ!」
「どうやったんだ?」
エルザも対抗して剣をいっぱい出した。
「わ、わわ私の、10のけ、剣をくらぁえ・・・!」
「ぐわーやられたー!」
「なんか知らんけど弱ぇーーー!!」
グレイをやっつけたエルザはアミクの入れられてる檻を壊し、ルーシィを吊っているロープを切った。
「ありがとうございます、フレデリック王子」
「恩に着ますわ、フレ
「噛んだぞあの娘」
「あ、真っ赤になった」
エルザは膝をついてアミクとルーシィを真っ直ぐに見る。
震えながら。
「ここ、子供をたくさん、作りましょう。姫達」
「気が早ぇよフレデリック!!」
「しかも二人とも相手する気かよ!!」
倒れ伏したままだったグレイが顔をあげて叫んだ。
「くっ、ここで終わってたまるか!出でよ我が下僕のドラゴン!」
すると、舞台の奥にあった暗がりから何かが飛んでくる。
それはドラゴンの着ぐるみを着たナツだった。それをハッピーが頑張って飛びながら運んでいる。
ナツは火を吐きながら大声をあげた。
「オレは全てを壊すドラゴンだ!!」
「な、なんだあれ!!」
「ドラゴン!?」
観客も驚いている。
するとジュリオス(グレイ)がフレデリック(エルザ)に言った。
「こうなったら仕方ない。共に戦おう」
「あ、あああぁ。心強い」
「お前が呼んだんだろうがー!!」
「どういう展開だー!!」
そこに、ルーシィとアミクが王子達に向かって言う。
「二人共、逃げてください!」
「ここは私たちにお任せを!」
「おいおいおいー!」
「何言ってんだ姫さん達ー!!」
途端、グレイとエルザはスタコラサッサと逃げ出した。
「オウ」
「た、助かったー」
「逃げんのかーい!!」
そこで、アミクとルーシィが向かい合って言い争いを始めた。
「お姉様!ここは私に任せてくださいまし!」
「何を言ってるの!お姉様を置いては逃げれません!」
「どっちがお姉様だよ!?」
「いい加減全部はっきりしろー!!」
その時、上から光が差した。そして、天使の格好になったマーチがゆっくりと降りてくる。
「猫の天使様!?」
観客も唖然とした。
「二人共、喧嘩はやめなさい、なの」
「「お母様・・・!」」
『お母様!!?』
観客全員のツッコミが一致した瞬間だった。
「喧嘩している暇があったら、あーしの墓にお供え物しろ、なの」
それだけ告げるとマーチは上に戻っていった。
「それだけかよ!?」
「何しに来たんだよお母様!!」
客達の間でざわざわと不穏な空気が流れ始めた。
「なんか、酷いなこれ・・・」
「とんでもねぇ内容だ」
その時。
「き、着ぐるみの分重い〜!」
ナツを運んでいたハッピーが重さに耐えきれずにロープを離してしまった。
当然、ナツは落下。
「「キャーーーーー!!?」」
アミク達は慌ててそれを避ける。どーんと音がして舞台に穴が空いた。
「キャー!?」
「わわ!燃え移った!」
見るとアミクとルーシィのドレスにナツが吐いた火が燃え移っていた。
「グ、グレイー!」
「助けてー!」
アミク達の助けを求める声に、グレイが駆け出そうとすると、
「グベッ!」
その背中をエルザが蹴ってアミク達に急接近。そしてーーーーー
ズパズパズパン!!
ドレスを切り捨てた。アミクに至っては薄着まで。
「「きゃああああああ!!?」」
当然下着姿になってしまったアミク達。
男の観客は鼻の下を伸ばしてアミク達を凝視し、子持ちの母親は咄嗟に子の目を隠していた。
「だ、大事はないか、ヤンデリカ姫とツンデリカ姫」
「演技下手なくせになりきり感がすごいね!?」
エルザはアミクとルーシィの二人にマントを掛けてあげる。(もう一個はグレイのだった)
「痛ぇーーーー!!」
そこで、ナツが復活し、がむしゃらに炎を吐く。
舞台の半分が燃えた。
「やめないかナツ!」
グレイがナツを凍らせて止める。
「こ、こうなったら、みんなまとめてててて、成敗する!」
エルザがガクブルになりながら剣を構えた。
「ホーホッホッホッホッ!!全て私が仕組んだ事ですわ!」
急に黒幕感を出し始めたアミク。ヤケになったらしい。
「喧嘩はおやめなさい・・・なの」
空気を読まずに再び降りてくるマーチ。
「もーメチャクチャー!!」
あまりにもカオスな状況にとうとうルーシィは絶叫した。
だが、それをこっそり見ていたラビアンは満足そうに頷いており、観客達も楽しそうに笑いながら見ていた。
「し、しかもなんか嫌な予感が・・・」
ミシリ
嫌な音がした。
次の瞬間。
ガラガラガラドーン!
舞台があった建物が崩れ落ちた。
「結局こうなるのねー!!」
もはや最強チームの宿命と言ってもいいだろう。
しかし
「わははは!!」
「おもしれーーーー!!」
「サイコーーーーー!!」
観客達は大喜び。エルザ達は大乱闘を繰り広げているが、それを喜劇のように見ている。
アミクはルーシィに近付いて話しかける。
「メチャクチャ、だけど・・・楽しいでしょ?このチーム」
アミク自身も楽しそうに言う。
ルーシィはそんなアミクに笑顔で頷いた。
数日後。
未だにアミク達はシェラザード劇団にいた。
「てめーら、素人のくせになかなかやるじゃねーか」
ラビアンがぐったりしているアミク達に言う。すごい朗らかな表情で。
結局あの劇は大ヒット。次から次へと客は集まり、アミク達は1日に三回も公演するほどのハードスケジュールをこなされた。
依頼そっちのけで。
「おい、クズども起きろ、さっさと次の公演やるぞー!」
「顔とセリフが一致してない・・・」
「な、なぁ・・・もう報酬くれよ・・・」
「もう帰りた〜い」
「なの・・・」
「あーあーあー!」
『なんでこいつだけこんなにやる気あるんだよ・・・』
このメンツの中で元気なのはウルとエルザぐらいのものだった。
結局、このチームと行動すればロクなことが起きない、と確信したルーシィ。
家賃危ないときはアミクと二人だけで仕事に行こう、と誓う彼女であった。
ここの観客達のツッコミのキレが良くて面白い。
楽園の塔で個人的に面白いのがショウのゲス顔。
ゲス顔好きだなおい。