「『音竜の響拳』!」
アミクは一人の男をぶっ飛ばした。
男はあっさり目を回す。
「んー呆気なかったね」
アミク達最強チームは盗賊退治の依頼でとある洞窟に来ていた。ここは盗賊のアジトなのだ。
「歯ごたえねぇな」
ナツがつまんなそうに盗賊の一人の頭を壁に押し付ける。
「ちょっと、ナツ!やり過ぎないの!」
アミクはナツに注意すると、呻き声を上げている盗賊達の元に歩み寄り、特にひどい怪我をしている人を中心に回復した。
「な、なぜ俺たちを・・・?」
「痛がってるの、見てらんないからってだけだよ。『
そんなことをやっていると盗賊達が感動したように目を潤ませた。
「お、俺たちのような盗賊のためにもご慈悲をくれるなんて!」
「俺たち!天使様を見習って改心します!!」
「でた」
「でたな」
「でちゃったか~」
「でた、の」
ナツ達はもはや一種の自然現象のような反応でそれを見ていた。
「ねぇ!?治療しただけなのになんでここまで大げさに反応すんの!?おかしくない!?治癒ぐらいみんなするよね!?」
「確かに悪党をも治療するという話は珍しくはないが・・・まぁ、アミクだからな」
「そーだそーだ」
「なにそれ!?」
答えになってない気がする。
「改心しない可能性は考えないの?」
「その時はもう一回ぶっ飛ばす」
アミクはたまに脳筋になる。
アミクの敵も気に掛ける心遣いは確かに魅力だが、エルザからしてみれば甘い、と言わざるを得ない。
心配なのだ。その優しい性根が災いして最悪の事態に陥らないか。
「MOoooo~!!アミクさんマジ天使!俺にもその慈愛の心で抱きしめ――――」
「強制閉門~」
ニッコリ笑いながらルーシィは戦いに参加させていたタウロスを送還した。
「うん、今回は特に問題も起きなかったね!」
アミク達は大団円の結果にホクホクしながら歩いていた。
「嬉しそうだな〜アミク」
「ナツは嬉しくないの?お金だよお金!ガッポガッポだよ!」
「お前言うほどお金に困ってないだろ」
「そうだけど!」
騒がしく会話しながら歩いていると、マーチが向こうにいる人影に気が付く。
「ん、あれ、ロキじゃない、の?」
「ほんとだ」
見ると確かにロキがいた。ルーシィはロキに近づく。
「ロキ、この前はありが・・・」
「るるるルーシィ!?ごめん僕は仕事の途中だからああああああああ!!!」
ロキはルーシィを見た瞬間脱兎の如く逃げ出した。
「オメェ、ロキになにしたんだよ」
「なにもしてない〜」
グレイの言葉にがっくりしながら答えるルーシィ。
「あそこまで怖がるなんて、一体なにがあったんだろう?星霊魔導士とトラブルがあったって言ってたけど」
アミクの疑問に答えられる人物はいなかった。
温泉で有名な村、鳳仙花村。アミク達が滞在する村だ。
そこでアミク達は温泉に入っていた。
「もう、なんなのよぅ・・・」
「まだロキのこと気にしてるの?」
アミクが未だに唸るルーシィに声を掛けた。
頭にはマーチを乗せている。
「あんまり気にしなくていいと思うよ?時間が解決してくれると思うし」
そうアドバイスしてアミクはエルザの方に向かった。
「ふぅ、ここで温泉に入れたのは僥倖だ」
「確かに気持ちいいねぇ・・・」
温泉なんていつぶりだろうか。
「そ、そろそろ上がりたい、の〜」
「あれ、のぼせちゃった?」
マーチが目を回していた。
「おーしやるぞー!」
ナツが枕を持って雄叫びをあげる。元気なやつだ。
「なにをだよ・・・・」
グレイが気怠そうに言うとナツが枕を振り上げる。
「オイ!!見ろよ!!旅館だぞ旅館!!!旅館の夜っつったら枕なぐりだろーが!!!」
「枕投げ、ね」
アミクが即座に訂正した。
「ふふ・・・質のいい枕は私が全て押さえた。貴様らに勝ち目はないぞ」
「質って・・・」
アミクは思わず苦笑いする。
「俺はエルザに勝ーつ!!」
ナツが不意打ち気味にエルザに向かって枕を投げつけるが・・・。
「甘い!」
エルザがさっと躱したことにより、後ろにいたグレイに当たった。
「グオえ!?ナツ、テメェ!!」
頭に血が上ったグレイも枕を持って立ち上がる。
「むー、みんなやる気?だったら私もやってやろうじゃん!」
アミクが両脇に枕を持って言い放つ。
「え?アミクもやるの?じゃ、あたしも混ざろうかな」
ルーシィがそう言って腕まくりした瞬間。
すごい勢いでルーシィの顔面に枕がめり込み、ルーシィは障子を突き破って庭に飛び出していった。
「ルーシィ!?もー許さない!ルーシィの仇ー!」
それを見たアミクがさらにやる気を出して枕二つをぶん投げた。それらは見事ナツとグレイの顔面にぶつかる。
「や、やっぱやめとこーかな。死んじゃう・・・」
庭で白目を剥いていたルーシィはそう呟いたと言う。
しばらくの間枕投げに熱中していたアミク達。
「オラァ!」
「残念!」
ナツが投げてきた枕を衝撃波で弾き飛ばす。
「あー!魔法はズリーぞ!」
「勝つためならば手段は選びませーん!」
アミクがあっかんべをして言った。
「それに君たちとは違って私の魔法は被害が少ないからね!枕を燃やしたり凍らせたりしないもんね!ちゃんと手加減してるし!」
「ぬぐぐぐ・・・おい、グレイ。一旦手を組むぞ」
「チッしょうがねぇ、まずはアミクから倒すぞ」
「ええ!?いつもの仲の悪さはどこいったの!?」
随分あっさり手を組んだ二人。
「だったら先手を打つ!」
「私を忘れてもらっては困るぞ!」
エルザがアミクに向かって枕を投げつけてきた。
「ちょ!?一人狙いはずるくない!?」
「勝つためならば手段は選ばんのだろう?」
「うわーん、やられたー!!」
嘆いた瞬間。アミクは閃いた。
「そぉれっ!」
アミクは枕をバットのように振り回して、エルザが投げつけてきた枕をナツとグレイの方向に打ち返した。
「「うおわぁ!!?」」
二人は仰け反ってそれを避けた。
今!
アミクは一瞬で二人に近づくと枕を振りかぶり・・・
「枕殴り!」
「結局殴んのかよ!!」
頭を引っ叩いた。
後ろからヒュン、と音がした。
瞬間、アミクは横に飛び退く。
エルザがアミクの後ろから投げつけてきたのだ。
「「ぐベェ!!」」
飛んできた枕はナツとグレイの顔に当たって落ちた。
「ふふふ、流石だなアミク。やはり、こうでなくてはな」
「エルザこそキレのいい投げっぷりだったよ。さぁ、そろそろ決着をつけよう」
「望むところだ」
「・・・俺ら、踏んだり蹴ったりだな」
「・・・ああ」
『全く・・・騒がしい』
一方。
ルーシィの方は。
「アイツら、本当に人間なのかしら・・・アミクも実力は化け物じみてるのよね・・・あ、でもハッピーとマーチは猫だっけ。プルーも犬だしねー」
「ププーン」
星霊であるプルーを召喚し、夜の外を散歩していた。
すると・・・
「あーし、本当は人間・・・なの」
「へぇ・・・ってええええ!?人間!?ってかアンタ喋れるの?」
「なの」
「・・・なの?」
聞き覚えのある口調にルーシィが固まる。
「あーしは全ての人間を滅ぼすため、地獄から蘇った魔王の生まれ変わり、なの」
「プクク・・・」
「はいはいもういいから、あんたらしょーもないことしてないで出てきなさい」
ルーシィが呼びかけるとハッピーとマーチが茂みから出てくる。
「バレてしまった、の」
「やっぱり魔王なんて嘘くさいんだよ」
「ハッピーの聖なる石を持つ勇者だってどっこいどっこい、なの」
「アンタら・・・」
ルーシィが呆れていると・・・
「ハーイ、お嬢さん」
「浴衣似合うじゃん。観光?」
「オレたちオシバナから来たんだけどサ。どう?一緒に呑みに行かない?ファンキーにサ」
やたら首をカクカクと動かす男とチャラい男がルーシィをナンパしてきた。
「わるいけどツレいるからごめんね〜」
「ツレってそこの猫たちと・・・」
男たちはプルーを見るとしばらく考えた。確かにパッと見形容しがたい生物だが。
「ま、まあ、このファンキーなツレも一緒でいいからサ」
「行こうじゃん」
「強引だなぁー・・・ハッピー、マーチ、なんとかしてよぉ」
ルーシィがハッピーたちに助けを求めるが。
「にゃー」
「くかー」
「にゃーって!!あと寝るな!!」
その時、ルーシィは自分の身体に起こった異変に気付く。体が動かないのだ。
「遊ぼうじゃん。オレたちと」
「ファンキーな夜にしようぜ」
(こいつら魔導士!!? ヤバ・・・)
ルーシィが冷や汗を流したその時。
一人の男がすっ飛んできて二人組のうち片方を殴り飛ばした。
その勢いでもう片方も倒す。
その人物とはーーーーー
「怪我はない?」
「ロキ!」
それからマーチはルーシィとロキが飲食店で会話するのを聞いていた。
ロキがやたらルーシィと離れていたりしたが、ルーシィがロキに鍵を拾ってくれたことに対してお礼を言っていた。
ロキがルーシィに意味深なことを言ったらしいのも見てた。
その直後、ルーシィがロキのほっぺたを引っ叩いたのも。
「行くよ!ハッピー、マーチ、プルー!」
ルーシィは不機嫌のままマーチ達を引っ張って店から出て行く。
その時、不思議そうにロキを見ていたプルーをロキが優しげな目で見ていたことが印象的だった。
印象的と言えばそこの店主がやたら頷くのも印象的だった。
翌日。ギルドにて。
「昨日の枕投げは俺が勝った!」
「いいや、俺だ!」
「「どっちだアミク!!?」」
「私に聞かないでよ・・・」
ボロボロのナツとグレイが昨日の枕投げの勝敗で揉めていた。
「んじゃあルーシィ!!」
「どっちが勝ったと思う!?」
「あ、今ルーシィに話しかけない方が・・・」
アミクが忠告するも、時すでに遅く・・・。
「うるさい」
ルーシィがギロリ、と二人を睨む。
「あ、あい・・・」
「ごめんなさい・・・」
ビビった二人は静かになった。
「ルーシィすげぇな・・・」
「アミクとエルザ以外にあの二人の喧嘩を止められる奴がいるとは・・・」
周りのギルドメンバーはそんなルーシィを見て感心していた。
ミラはアミクに聞いてみる。
「どうしたのルーシィ?なんだか不機嫌ね」
「昨夜からずっとそうなんだよ・・・」
外に出ていたルーシィが不機嫌な表情のまますぐに布団に潜り込んでしまったのだ。
アミクとしては何があったのか気になるが、ルーシィの不機嫌オーラに当てられ、話しかけづらく、今に至る。
「・・・昨夜、ロキに会ったの」
「あ、そうなの?」
その場の雰囲気を見兼ねたのかマーチが説明してくれた。
男達にナンパされていた所をロキに助けられ、印象店で話をしていたらルーシィがロキをぶった、と。
「ロキはなんて言ってたの?」
「それはよく聞こえなかった、の」
「そっか・・・・」
その時。
「ねぇ!ここって
「ロキはどこにいるの!?」
「急に別れよう、って切り出してきて・・・」
「ロキを出してよ!」
騒がしい声にそちらを向くと何人もの女性がミラに詰め寄っているのが見えた。
「うわお、何あれ・・・」
「多分ロキが引っ掛けてきた女達、なの」
「何股してるんだろう・・・」
アミクが遠い目をしているとーーーーー
「ルーシィ〜助けて〜」
ミラがルーシィに助けを求めたので女性達が全員ルーシィの方を向く。
「何よこの女」
「ちょっと可愛いし・・・」
「もしかして・・・ロキの本命!?」
「ちょっ!?」
ルーシィがやべ、という顔になった。そしてアミクを見つけるとーーーー
「アミク、助けて!」
「ふぇぇぇええ!!?」
ぐりん、と女性達の視線がアミクに突き刺さる。
「アンタが本命ね!」
「何よすごく可愛いじゃない!!」
「ロキについて教えなさいよ!」
「ロキを返して!!」
「はわわわ!わ、私は無関係だよ〜!」
巻き込まれてしまった。
アミクは追いすがってくる女性達から必死に逃げた。
それをルーシィが手を合わせて見送った。
「ごめんねアミク。ちょっと生贄になってて!」
「アンタ鬼か、なの」
「はぁ、はぁ、恋する女の子は強いって身に染みたよ」
「ごめんごめん、って」
なんとか女性達を撒いたアミクは家に帰ってルーシィの部屋に居た。
ルーシィも帰ってきていたらしい。
「・・・それで、昨夜何があったかはマーチから聞いたから大体わかったけど・・・何を言われたの?」
「・・・それは、自分の命が残り少ない、とか・・・とにかくロキについて調べてみようと思うの」
確かに、冗談にしては性質が悪い。なにかある、と考えた方が自然だろう。
「・・・ふーん、ま、できることがあったら協力するよ」
「・・・うん、ごめんね、ありがとうアミク」
申し訳なさそうに言うルーシィに対して、アミクは手を振った。
「と、言ってもアミクは何もしなくていいわよ。ロキに関係のある星霊魔導士について調べるから」
「え?どうやって調べるの?」
「星霊魔導士については星霊に聞くのが一番!」
そう言って銀色の鍵を取り出した。
その鍵を使って召喚されたのは・・・。
「じゅ、十字架?」
「なの?」
「南十字座の星霊、クルックスよ。通称クル爺!」
「ほマ」
この星霊は星霊学のスペシャリストらしく、星霊界と人間界を繋ぐ門の情報を全て持っていると言う。そのため、過去にどんな星霊魔導士が何の星霊を呼び出したのか知ることができるんだとか。
「へぇ、凄いんだねー」
「じゃ、ロキと関係のありそうな星霊魔導士について調べてくれる?」
ルーシィが頼みごとをすると、クル爺はーーーーーー
寝た。
「ちょ!?寝ちゃったよ!?」
「ううん、クル爺は寝ながら情報を検索するのよ」
「紛らわしい・・・」
しばらくクークー、と鼻提灯を膨らませていたかと思うと・・・
「カアアアアアアーーーーーーーーーーーー!!!」
「どう?何か分かった?」
どうやらあの叫び声は検索結果が出た、と言うことらしい。
アミクとマーチはびっくりして心臓がドキドキしていた。そのうえ、思わずルーシィに抱きついてしまった。
反射的に声は食べたが。
「び、びっくりした〜」
「心臓に悪い、の」
アミクとマーチがドキドキしていると、クル爺が結果を話す。
「ほマ、どうやらカレン・リリカという者と関係があったようです」
「カレン・リリカ!?」
「知ってるの?」
ルーシィの説明によるとカレン・リリカは週刊ソーサラーのモデルもしていた、
だが、数年前に事故で亡くなった、と。
「その人とロキは一体どんな関係だったの・・・?」
「普通に恋人同士だったんじゃないの?」
むしろそれ以外には考えられないが・・・。
とにかくもっと詳しく聞こうとすると
「ほマ、これ以上は申し上げられません。星霊界にも個人情報保護法が適用されておりますので」
「そこをなんとか・・・!」
ルーシィが頼みこむと・・・クル爺は寝始めた。
「なんだかんだ言いながらも調べてくれるんだ」
「いや、本当に寝てるわ」
「分かるの!?」
全然違いが分からん。
寝ているクル爺をじーっと見るマーチと一緒に違いを探そうと観察していると。
何かを考え込んでいたルーシィが何かに気付いたのかハッと顔を上げる。
「もしかして・・・」
「何か分かった?」
「まだ、推測の段階なんだけど・・・」
とルーシィがアミクに説明しようとすると。
「アミク、ルーシィ、マーチ!大変だ!」
唐突にグレイが窓から飛びこんできた。
「うわお!こっちも大変だ!?」
「それより、ロキが
アミク達は驚愕した。まさにそのロキについて話していたのに。
「なんで!?」
「知らねえよ!今みんなで探してんだ。あいつ、ここんトコ様子おかしかったからな・・・とりあえず辺りを探すぞ!」
「う、うん!マーチ!空から探して!」
「了解!なの!」
マーチに指示した後、アミクはルーシィと二手に分かれようとしたが・・・ルーシィがアミクの腕を掴んで止める。
「待ってアミク!あたし、ロキのいる所に心当たりがあるの!」
ロキはとある場所にいた。
今立っている場所は崖で目の前には滝がある。そしてその崖の手前に誰かのお墓があった。
そのロキの背は今にも消えそうなほど儚かった。
その後ろで響く、二人分の足音。
「ロキっ!やっぱり・・・ここだったんだ」
「まさか、あれが・・・」
「・・・ルーシィかぃ?それにアミクも・・・どうして、ここへ?」
ロキの顔は普段の余裕そうな表情とはかけ離れたものだった。
まるで今にも死んでしまいそうな・・・。
ルーシィはそんな彼を見て口を開ける。
「カレンのお墓でしょ?ここって」
ロキは冷や汗をツーと流した。
「星霊魔導士カレン。あなたの
アミクは何も知らされずルーシィの後をついてきただけだった。だから、何の話が始まるのかじっと耳を澄ます。
「星霊ロキ・・・ううん、本当の名は獅子宮のレオ」
(え!?)
アミクはポカーンと口を開いてロキとルーシィを交互に見る。
まさかロキの正体が星霊だったとは。だからこそ、クル爺もロキとカレンの関係に関してあまり詳しく言えなかったのだ。星霊の個人情報保護法が適用されるために。
「・・・よく、気がついたね・・・」
「あたしはたくさんの星霊と契約してる星霊魔導士だから、ね。でももっと早く気づくべきだった。本来鍵の所有者が死んだ時点で星霊との契約は解除され、強制的に戻される。
カレンが死んで契約は解除されたはずなのにあなたは人間界にいる・・・なんらかの理由で帰れなくなったのね」
アミクは黙って二人の会話を聞いていた。
「人間は星霊界じゃ生きられない。同じように星霊は人間界じゃ生きていけない。生命力は徐々に奪われやがて死に至る」
ルーシィのアミクに言い聞かせるような口調にロキは諦めたようにため息をついた。
「そうだね、僕は確かにカレンの星霊だった・・・そしてカレンが死んでから3年間、僕は星霊界に帰れずにいる・・・」
「3年って・・・!!1年でもあり得ないのに!!」
「そ、そういえばロキが
アミクが思いだして声を上げた。
つまり何らかの理由で星霊界に帰れなくなったため、
その時、ロキの身体から光の粒子が昇り始めた。
「ロキっ、それっ!」
「あぁ・・・もう、限界なんだ・・・力が、出ない・・・」
ルーシィが慌てるとアミクがすぐさま駆け寄って治療しようとする。
「・・・そんな!治療できない・・・」
「ごめんね、アミク・・・
ロキは必死に治療しようとするアミクの肩を優しく掴み、首を振る。
それを見てアミクは泣きそうになった。
「そんな、ことって・・・!」
するとルーシィがロキに駆け寄り、その肩を掴んで必死に呼びかけた。
「あたし!!助けてあげられるかもしれない!教えて、帰れなくなった理由ってなんなの!?あたしが
「無理だよ・・・僕はもう、星霊界へは戻れない・・・掟を破ってしまったんだ・・・」
「掟・・・?」
弱弱しく言うロキ。そしてロキは語ってくれた。自分がなぜ星霊界に帰れないのかを。
ロキ――――レオは3年前までカレン・リリカと契約していた。
しかし、彼女は星霊を大切にしなかった。男が言い寄る度にアリエス――――自分と同じくカレンと契約していた星霊――――に無理やり相手をさせたり、攻撃の盾にするなどしていたのだ。その扱いの酷さからマスターボブに警告を受けるも、これをアリエスが彼に何か吹き込んだからと思い込み、無理やり人間界に拘束しようとまでしたらしい。
アリエスに対する扱いに見かね、無理矢理彼女と入れ替わったレオは自分及びアリエスとの契約解除を要求する。しかし星霊を手放したくないカレンはそれを聞き入れず、レオは解除するまで星霊界に戻らないという強行手段に出た。
そのまま耐えて3カ月たったある日。そろそろカレンのことを許そうか、と思っていた時にカレンが仕事先で死亡したと聞いたのだ。
この一連の行為を「所有者を死なせた」として掟を破ることになってしまい、星霊界へ帰還できずにいたのだ。
「ひどいよ、そんなの!ロキはアリエスを守るためにしたことなのに・・・!そのカレーさんが悪いじゃん!」
「カレンだよ・・・はは」
ロキが力なく笑うと――――彼の体が透け始めた。
「時間、かな・・・」
「や、だ・・・やだやだ!消えちゃやだぁ!!」
アミクがロキの胸に縋って泣き始める。
「アミク・・・君のような心の優しい少女に出会えたのは幸運だったよ・・」
ロキは優しくアミクの頭を撫でると今度はルーシィを見る。
「最期に君のような素晴らしい星霊魔導士にも会えて良かった、ありがとうルーシィ」
最期の別れの言葉。ロキはなすすべなく消えてしまうのだろうか・・・。
いや、ルーシィは諦めていなかった。
「待って!!絶対助ける!!諦めないで!!」
ルーシィはロキに抱きつき、自身の魔力を使ってレオの扉を開こうとした。
「・・・!私も、手伝う!」
アミクも涙を拭くとルーシィに抱きつく。これが何の助けになるか分からないが、自分の分の魔力まで使って扉が開くように願った。
「開いて!お願い!!」
「開けえええええええ!!」
「ルーシィ、アミク・・・もういいんだ・・・やめてくれ・・・!」
ロキの言葉にアミクはキッとロキを見返した。
「いいわけない!」
それにルーシィも続く。
「目の前で消えてく仲間を放っておけるわけないでしょ!?」
ルーシィは持ちうる魔力全てを使い、星霊界の扉を開けようとするが、開く様子はない。アミクも、効果があるか分からないが『
それとは別に、心なしかアミクの魔力の消費が早い気がする。ルーシィの消費する魔力が多すぎて近くにいる人の魔力も使っているのかもしれない。
「二人共!一度にそんなに魔力を使っちゃダメだ!」
「言ったでしょ!?絶対助けるって!星霊界の扉なんてあたしが無理矢理開けてみせる!!」
「頑張れルーシィ!」
「開かないんだよ!契約してる人間に逆らったら星霊は星霊界へ帰れない!!やめてくれ!
君達が星霊と同化し始めてる!!このままじゃ君達まで消えてしまう!!」
本当だ。なんか自分の体から光の粒子が流れている。だが
「そんなの知ったことかぁぁぁぁぁ!!!」
アミクは絶叫した。何もしないでロキが消えてしまう方が嫌だった。
だから――――全力を尽くす!
「これ以上僕に罪を与えないでくれぇぇぇぇぇ!!!」
ロキもアミクに対抗するように絶叫した。
それを捩じ伏せるようにルーシィが言い放つ。
「何が罪よ!そんなのが星霊界のルールなら、あたしが変えてやるんだから!!!!」
「そーだそーだ!!」
その瞬間。
アミクた達の辺りに風が吹き荒れ、空は一気に星空が浮かぶ夜になり、滝の水が一気に空中に舞い上がった。
それはアミク達の上で水が集まり、形を成していく。眩い光がその場で満ち溢れた。
そして現れたのは―――――
「え?何!?」
「何かきたー!!?」
「そ、そんな・・・まさか・・・」
巨体だった。
「星霊王!?」
「おヒゲマスター!?」
ズコッ
アミクの唐突なボケにルーシィとロキ、そしておヒゲマスター――――――こと星霊王は思わずズッコケた。
気を取り直してルーシィはロキに確認する。
「星霊王って・・・一番偉い星霊ってこと!?」
ロキが無言で頷いていると、星霊王が威厳のある声で話し始めた。
『古き友、人間との盟約において我ら・・・鍵を持つ者ヲ殺める事を禁ズル。直接ではないにせよ間接にこれを行なったレオ。貴様は星霊界に帰る事を禁ズル』
「なにそれ!それはあんまりだよ、おヒゲマスター!!」
「そうよ!!3年も苦しんだのよ!!仲間の為に!!!アリエスの為に仕方がなかった事じゃないの!!!」
「そーだよ!おヒゲマスター!」
『余も古き友の願いには胸を痛めるが・・・』
「古い友達なんかじゃない!!今!!目の前にいる友達の事言ってんのよ!!ちゃんと聞きなさい!!!ヒゲオヤジ!!!!これは不幸な事故でしょ!!ロキに何の罪があるって言うのよ!!!無罪以外は認めないんだからねっ!!!」
「断固反対!おヒゲマスター!」
『合いの手のように挟んでくるのはやめてもらおうか!?』
耐えきれなかったのか星霊王がくわっとアミクを見た。
「もういいアミク、ルーシィ!!僕は誰かに許してもらいたいんじゃない!!罪を償いたいんだ!!このまま消えたいんだ!!」
「そんなのダメ――――――!!!!!」
ルーシィが立ち上がり叫んだ瞬間。
彼女の背後に沢山の星霊が現れた。
「罪なんかじゃない!!仲間を想う気持ちは罪なんかじゃない!!!」
アミクも星霊王の前に立った。
「それとも、
『・・・』
星霊王は何も答えない。ただ、星霊を一度に沢山召喚したルーシィに驚いているようだった。
―――――星霊が、これ程同時に・・・!?
しかし、大量に召喚して魔力が持つわけもなく、星霊達は消え、ルーシィは前のめりに倒れそうになる所をアミクとロキで慌てて支えた。
「ルーシィ!!」
だが、ルーシィは気丈に星霊王を睨み、言い放つ。
「あたしの
あんたも星霊ならロキやアリエスの気持ちわかるでしょ!!」
「なんて無茶なことを!!一瞬とはいえ死ぬ可能性だってあるんだぞ!」
ロキがルーシィにそう言っているのを尻目に、アミクは星霊王と向き直った。
「この光景を見ても、貴方の意思は変わらないのかな。
星霊王はアミクとルーシィを交互に見ると――――重々しく口を開いた。
『古き友にそこまで言われては・・・間違っているのは『法』やもしれぬな』
『!!』
それを聞いてアミク達の胸に希望が灯った。
『同胞アリエスの為に罪を犯したレオ・・・そのレオを救おうとする古き友・・・その美しき絆に免じ、この件を『例外』とし、レオ・・・貴様に星霊界への帰還を許可スル』
その言葉でアミクとルーシィの顔に喜色が広がる。
ルーシィが星霊王に向かって親指を立てた。
「いいとこあるじゃないヒゲオヤジ♪」
「懐が深い!おヒゲマスター!!」
『え、呼び方戻った・・・』
ちょっとしょんぼりした星霊王はアミクに目を向けた。
『・・・問おう。お主は星霊魔導士でもないのに、星霊のために体を張った・・・。なぜだ・・・』
不思議そうに聞く星霊王にアミクはピースサインをした。
「仲間なら、当然のことだよ!」
『・・・フフ、フフフフ・・・!そうだな、そうだったな・・・古き友とは、そういう存在だった・・・』
星霊王は愉快気に笑いながら消えていく。彼は途中でニカッと笑みを作った。
『免罪だ・・・星の導きに感謝せよ』
ロキはまだこのことが信じられないのか呆然としていた。
「待って下さい・・・!僕は、僕は・・・!」
『それでも罪を償いたいと願うならば・・・その友の力となって生きていく事を命ずる。
それだけの価値がある友であろう・・・命をかけて守るがよい』
そう言い残して星霊王は光となって完全に消えた。
「・・・だってさ!」
アミクはニコニコしてロキに振り返る。
ルーシィも笑顔だ。
ロキは次々と溢れる涙を止めることができなかった。
ずっと許されないと思っていた。
そのまま消えて、もう星霊にもギルドの皆にも会えなくなると思っていた。
しかし、こんな現実があっていいのだろうか。
二人の少女が自分の運命を変えてくれたのだ。
―――――――これで僕の罪は消えた訳じゃないけど・・・君達には前へ歩き出す勇気をもらった。
「ありがとう、二人共・・・そしてよろしく。今度は僕が君達の力になるよ」
そう言い残すと―――――
ロキは金色の鍵となってルーシィの手元に現れる。
ルーシィはそれを見て優しげな笑みを浮かべた。アミクもその後ろで涙を拭っている。
「こちらこそ」
「よろしく」
アミクは大団円で終わった結果に大変満足して夜空を見上げた。
満天の星空が輝く中で、獅子座が一際強く輝いた気がした。
アミクが『攻撃力強化』を使ったのは力押しで星霊界の扉こじ開けられないか、という思考から。まさに脳筋思考。
今回アミク役にたった?たったよね多分。
星霊王的には『ヒゲオヤジ』は許容範囲らしいです。
次からいよいよ楽園の塔編ですよー。
まぁ、察しのいい方はアミクが誰と戦うか想像つくかもしれませんが・・・。