妖精の尻尾の音竜   作:ハーフィ

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やっぱりルーシィとジュビアの友情劇は欠かせないと思ったんで前回みたいな展開にしました。


実はもう一つ考えてたのがあって、初手サキュバスがアミク、でソッコーでバトル終了しちゃうやつです。


アミク、エサになる

「わたしはこれから彼氏と二週間旅行だ。しばらく呼ぶなよ。彼氏とな」

 

「二回も言わなくていいから!!」

 

「か、彼氏と・・・大人だわ」

 

「彼氏・・・相手も星霊なのかな?」

 

「アンタも早く彼氏作んなよ?まぁ、無理だろうけどな」

 

アクエリアスはルーシィを鼻で笑って帰っていった。

 

「余計なお世話よ!」

 

「大丈夫!ルーシィならきっと取っ替え引っ替えできるくらいに男が集まるから!」

 

「何その悪女!?」

 

アミク達は勝利の余韻に浸っていた。ルーシィとジュビアは疲れたのか倒れている。

 

「そういえばジュビア。さっき私達のこと名前で呼んでくれたよね?」

 

アミクがニヤニヤしながら聞くと、ジュビアが頬を染めた。

 

「え・・・あれは、その」

 

「もうあたし達友達なんだから!呼び捨てでいいじゃない!」

 

ルーシィも嬉しそうに言う。

 

「・・・そうね。よろしく、アミク、ルーシィ」

 

「ジュビア、歓迎するよ!」

 

「気が早いわね。まずは帰ってからでしょ」

 

やっぱり、ジュビアはいい人だ。それが分かってアミクは嬉しかった。

 

「さてと、私は先に進むけど・・・二人は?」

 

アミクは音を食べたこともあってまだ元気だが、二人は魔力を使い果たしたのかぐったりしていた。

 

「ちょっと無理かも・・・」

 

「休ませてください・・・」

 

「うん、分かった!あとは任せて!」

 

アミクが「とりあえず、回復かけとくね」と『持続回復歌(ヒム)』を二人に掛けた時。

 

 

「アミクー!無事でよかった、のー!」

 

 

マーチが飛んでやって来た。

 

「あ、マーチ!よかったー!」

 

アミクはマーチを抱きしめる。

 

「ナツが助けてくれた、の」

 

「それは匂いでわかってた。マーチは私を探して?」

 

「うん、なの」

 

マーチと合流できたのは大きい。マーチに運んでもらえば大分時間短縮できるからだ。

 

 

「マーチ!まずはナツ達の方に加勢に行くよ!」

 

「あいさー!なの」

 

マーチがハッピーの真似をして、アミクの襟首を掴む。

 

「って、この二人置いていってもいい、の?それに、『大海』のジュビア?なんで・・・」

 

「話は後!二人は大丈夫だから!じゃ、お先!」

 

アミクはルーシィ達に軽く手を振ると、ビューンと飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

ナツは三羽鴉(トリニティレイヴン)の一人、梟と戦っていた。だが、この敵なかなか手強い。

 

「ホーホホウ。ここまでやるとは。見くびっていたぞ、火竜(サラマンダー)

 

梟の外見は頭が梟そのもの。体は巨漢というなんとも珍妙な姿だった。だが、背に背負っているロケットで飛んだり、推進力を使って突進したりと厄介な強さを持っている。

 

「ケッ、ここでお前相手にモタモタしている暇はねぇんだ!」

 

ナツが両手に炎を纏わせて攻撃しようとすると。

 

 

「『音竜の咆哮』!」

 

梟に向かって音のブレスが放たれた。

 

「ホホウ!」

 

梟はそれを軽やかに避ける。無駄に機動力があるとやりづらい。

 

 

「やっ、ナツ。加勢に来たよ」

 

「アミクーーー!!」

 

ハッピーが嬉しそうに両手を挙げる。

 

「・・・ってサモン!怪我してんじゃん!大丈夫!?」

 

「・・・あのな、俺は別に召喚士じゃないからな」

 

壁にはボロボロのシモンが寄りかかっていた。どうやらアイツにやられてしまったらしい。

 

「俺のことはいい・・・それより、ナツを手伝ってくれ・・・」

 

「アミク!俺一人で十分だ!」

 

「ごめんナツ!できればナツの意思を尊重してあげたいけど、今は状況が状況だから!」

 

アミクは不満そうなナツの隣に立った。

 

「・・・ったくしょうがねぇな」

 

「ホーホホウ、貴様の悪名は響き渡っている。光か闇かどっち付かずの偽善者よ」

 

梟がロケット噴射で宙に浮きながら話しかけてくる。

 

「はぁ?偽善者だぁ?アミクは善とか悪とか難しいことは考えてねぇよ。やりたいことをやっているだけだ」

 

「うん、ナツ。私を脳筋みたいに言うのはやめようか」

 

アミクはナツを乾いた笑みで見た後、自分の上を飛んでいる梟に目を移す。

 

「・・・梟?すごい頭してるね」

 

「ホホウ、二人の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)を相手するのは少し骨が折れる。一人は消えてもらおう!」

 

梟はロケットを大噴射して急に突っ込んで来た。

 

「速っ!?」

 

「『ジェットホーホホウ』!!」

 

梟はアミクに体当たりするとそのまま向こうの壁まで突っ込んでいった。

 

「アミク!!」

 

ナツが慌てて振り返った時にはアミクは壁にめり込んでいたところだった。

 

「あっ・・・ガァ・・・!」

 

アミクはダメージを受けながらも俊敏に立ち上がり宙に浮く梟を睨みつけた。

 

「ホホウ、思ったより頑丈な悪よ」

 

(さっきの付与術(エンチャント)、まだ効果続いててよかった・・・)

 

ヴィダルダスとの戦いの時に防御力を上げていたので、それのおかげでダメージが少なかった。

 

とにかく、さらに付与術(エンチャント)を掛けた方がいいだろう。

 

「――――『速度上(スケル)―――』」

 

「させると思うか!『ミサイルホーホホウ』!!」

 

「わっ!?」

 

アミクが歌を歌い始めた直後、梟の背中からロケットが飛び出してきて、アミクに真っ直ぐ向かって来た。

 

そのロケットから手が伸びてきてアミクを掴む。するとアミクはそのままロケットに運ばれて飛び回った。

 

「ふざけた技だが恐ろしい」

 

シモンが飛び回るアミクを見て呟く。

 

「ホーホホウ!貴様のその付与術(エンチャント)は歌わなければ効果がないことは知っている!つまり、歌っている間は隙が大きい!そこを狙う!」

 

「ううぅ・・・」

 

梟の言う通りだ。最近ではそれなりに時間短縮できるようになったが、それでも歌わなければならないのは一緒なので、戦いの中では使いづらいのだ。

 

「う、うぅぅぅ・・・うえ」

 

それに、ロケットという乗り物に乗っているからか、酔い始める。

 

「ま、まさか・・・」

 

そこでマーチが戦慄したように言った。

 

「アミクの弱点を把握している、の?」

 

「ホホウ、その通り!『音竜(うたひめ)』はサポートも前衛もこなせる厄介な悪党だと聞いている!だから、先に潰すまで!」

 

「そんなことさせねぇ!!」

 

ナツが拳に炎を纏わせて突っ込んできた。

 

「『火竜の鉄拳』!!」

 

「『ジャスティスホーホホウ』!!」

 

梟もナツに合わせてパンチを放つ。互いの拳がぶつかり合いーーーーー互いに吹っ飛ぶ。

 

「くっ・・・」

 

「ナツと互角・・・なの?」

 

吹っ飛ばされたおかげで梟はアミクに近づき、逆にナツは遠ざかった。

 

「今だ!ホホウ!」

 

その時、ロケットからアミクが離れた。酔っていたアミクは弱り果て、そのまま落下する。

 

そんなアミクに梟は駆け出した。

 

「弱った獲物を確実に仕留める。これぞ! ハンティング!」

 

そして、口を大きく開いた。人間の頭よりも大きく開く。

 

「『キャプチャーホーホホウ』!!」

 

アミクは暗い洞窟の入り口のような口に頭から飲まれた。

 

「うぇ!?や、やあぁぁぁぁ・・・!」

 

アミクの足が力なくバタつく。その間にもアミクの身体はどんどん飲み込まれていき・・・・

 

 

「ナ・・・ツ・・・」

 

 

ごくん、と音を立てて丸呑みされた。アミクはヌメヌメした暖かい場所に落ちた。たまに熱くて、体が溶けてるような感じもする。圧迫感のせいで苦しい。酔いもまだ治ってない。

 

アミクは息苦しさでだんだん気が遠くなり、気絶してしまった。

 

 

 

 

 

「な、何する、の!この鳥!!」

 

「やめろーーーー!!」

 

マーチとハッピーが叫んだ。そして、梟に向かって飛んで行く。

 

「アミクーーーーー!!テメェ、今すぐ吐き出せ!!」

 

ナツもすぐさま駆け出した。

 

「ホホウ!私の捕食(キャプチャー)は呑み込んだ者の魔力を消化し、取り込む」

 

と言うや否や梟は手から衝撃波を放ち、ハッピーとマーチを叩き落とす。

 

「うあ!?」

 

「ぐっ!!」

 

「つまり、私は捕食(キャプチャー)した『音竜(うたひめ)』の魔法を使えるのだ!」

 

見ると、梟の頭からアミクのような緑色のツインテールが生えていた。キモい。

 

 

「な、なんだと!?」

 

シモンは驚いて目を見開いた。

 

 

 

 

 

 

ジェラールはアミクの駒をコン、と倒した。

 

「残念だなぁエルザ。いい駒を失ってしまったぞ」

 

 

梟に食べれた今、吐き出しでもしない限りアミクは助からないだろう。消化されてジ・エンドだ。

 

 

「ふむ、アミクにはここまで来て欲しかったのだが・・・」

 

ジェラールはちょっと残念そうに呟いた。

 

 

 

 

「うおおおああああああ!!!」

 

ナツは飛び上がって梟に向かう。

 

「『音竜の咆哮』!!」

 

梟の口からブレスが放たれる。アミクの魔法だ。

 

「ぐおおおおおお!?」

 

そのブレスに巻き込まれながらもナツは踏ん張る。

 

「・・・へっ!これがアミクの音だって?笑わせんな!アイツの奏でる音はもっとすげぇぞ!!」

 

ナツはブレスを振り払って梟に『火竜の鉄拳』を叩き込む。

 

「ホウ!?」

 

予想外だったのか梟は顔面でそれを受けた。

 

「ホ、ホホウ、流石だな。だがーーーー」

 

上空に吹っ飛ばされた梟は口を開けると歌を歌い始めた。

 

「なにぃ!?」

 

ナツは驚いて梟を見上げる。なぜなら、それはアミクの得意の魔法だったからだ。

 

「そんなもんまで使えんのかよ!!」

 

「『治癒歌(コラール)』!!」

 

聞いていて気分のいいような歌声ではないが、効果はあるようだ。梟の顔面の打撲痕が治った。

 

「ホーホホウ!さらに『攻撃力強歌(アリア)』『防御力強歌(アンサンブル)』!!」

 

「そ、そんな・・・付与術(エンチャント)まで・・・」

 

マーチが絶望したように呟いた。ただでさえ、ナツを圧倒するほど強かった者がさらに強化されたのだ。

 

「ホホウ、正義は例え相手の魔法だろうと使いこなすもの!これでもう貴様に勝ち目はないぞ」

 

「ク、クッソォ!!」

 

ナツが悔しげに梟を見上げると・・・。

 

「アイスメイク『騎士槍(ランス)』!!」

 

「ホウ?」

 

梟目がけて大量の氷の槍が飛び交った。

 

「ホホウ!」

 

梟はそれを衝撃波で撃退する。

 

「今のって・・・」

 

「グレイ!なの!」

 

マーチが歓声を上げた。

 

そして彼女の言う通り、グレイが向こう側からやって来たのだ。

 

「おい、クソ炎!こんな所で何遊んでんだ!」

 

「遊んでねぇよ!アミクがコイツに食われたんだよ!!」

 

「なっ!?」

 

こんな時でも喧嘩する二人だが、ナツの言葉にグレイはギョッとした。

 

「ホーホホウ、氷の造形魔導士か。貴様の悪名も届いているぞ。私が裁いてやろう」

 

「チッ、何が悪名だ。ナツ!手を組むぞ。さっさと片付けてやる!!」

 

「えぇ、お前と!?ヤだよ」

 

「今は意地張ってる場合じゃねぇだろ!!」

 

ナツが嫌そうにしているが今は無視だ。

 

その時、梟がお腹を撫でた。腹からはゴロロロロ、と音がした。

 

「消化が始まった。あと10分もすれば『音竜(うたひめ)』は溶けて跡形も無く消える。そして、『音竜(うたひめ)』の魔法は完全に私のものになる」

 

グレイとナツの背筋が冷たくなった。そうなれば、アミクは――――――死ぬ。

 

「クソォ!今回だけだ!グレイ、アイツアミクの魔法を使うぞ!」

 

「そうみてぇだな・・・」

 

味方だと心強いが、敵に使われるとこんなにも厄介だとは。

 

「ホーホホウ!『音竜の響拳』!!」

 

梟はロケット噴射してグレイの方を狙ってきた。

 

「アイスメイク『(シールド)』!!」

 

咄嗟にガードするが

 

 

パリィン!!

 

 

「グハァッ!!?」

 

あっさり壊され、突き抜けた拳はグレイの腹にめり込んだ。威力が段違いだ。

 

「ホホウ、みなぎる力。溢れる魔力。この魔法は素晴らしい」

 

梟は自分のロケットの噴射音を食べてながら感慨深げに言う。

 

 

「くっ・・・ヤッベェなこりゃ・・・」

 

グレイも相手の強さを実感していた。口から流れる血を拭いながら立ち上がる。

 

(アミクの魔法が使える、ということは耳もよくなっているのか?)

 

ウルはそう思案した。だとすれば、自分が声を出すのはまずいかもしれない。

 

梟にもウルの声が聞こえてしまうことになるからだ。

 

(いや、待て―――――)

 

そこで、ウルは閃いた。

 

 

「『音竜の旋律』!!」

 

梟が蹴りを放つ。

 

「アイスメイク!『大槌兵(ハンマー)』!!」

 

それに向かいうつグレイ。

 

足と氷がしばらくせめぎ合ったかと思うと氷の方が砕け散った。

 

 

―――――が。

 

「うおおおおおおお!!」

 

ナツがその氷の後ろから飛び出してきた。

 

氷の後ろにナツが隠れていたのだ。ナツは全身に火を纏い、梟に突っ込む。

 

 

 

――――だが。

 

 

 

「ホーホホウ!『聴こえ』ていたぞ!」

 

梟は逆にナツに攻撃を喰らわした。

 

「『音竜の輪舞曲(ロンド)』!!」

 

「ぐああああああっ!!」

 

額から血を流しながら吹っ飛ぶナツ。

 

「ナツ――――!!」

 

ハッピーが絶叫を上げた。梟の猛攻はまだ終わらない。

 

「『音竜の譚詩曲(バラード)』!!」

 

 

ロケットの推進力で更に威力を増した体当たりがグレイに直撃した。

 

「がぁああ!!!」

 

 

向こうの壁までぶっ飛ばされる。

 

 

「ク・・・あの二人があそこまで圧倒されるなんて・・・」

 

シモンは歯噛みしながら喋る。

 

「『闇刹那』は通用しない・・・どうすれば・・・」

 

 

 

 

「ぐぅ!はぁ・・・・」

 

 

「クソ、アミクを取り込んだだけはあるぜ・・・」

 

ナツもグレイもボロボロだ。

 

ナツは何とか床に着地。グレイもよろよろと壁から立ち上がる。

 

 

「ホホウ、まだ立ち上がれるとは。おみそれしたぞ」

 

梟は感心したように言う。

 

「・・・けっ、所詮は人のモン、パクっただけだ。本家に比べれば程遠いな」

 

グレイが挑発するように言うと、梟の眉がピクッと動いた。

 

「ホホウ、戯言を!次で止めだ!正義は勝つ!」

 

梟は息を大きく吸い込んだ。ブレスを吐く気だ。

 

「オレだって負けてねぇぞ!!」

 

ナツも対抗しようと息を吸う。

 

 

 

 

 

 

 

 

そのとき。

 

 

 

 

『こっちだ!』

 

 

 

 

「!!ホウ!?どこだ!?」

 

聞き覚えのない声に思わず梟はブレスを中断してしまった。

 

声が聞こえた方向を見るがそこにはグレイとナツがいるだけ。じゃあどこに?

 

キョロキョロと見回す。見回してしまった。

 

 

「『火竜の咆哮』!!」

 

「ホホウ!!?」

 

その隙は大きかった。ナツがブレスを吐く猶予を与えてしまったのだ。

 

梟は慌ててそれを避けるが、避けきれず、腕に火が燃え移ってしまった。

 

「迂闊だった!ホーホウ!」

 

梟が飛びあがろうとすると―――――足元が凍りついた。

 

「ホウ!?」

 

「捕まえたぞ!ナツ、やれええええええええええ!!!」

 

ナツのブレスに紛れてグレイが氷を伸ばしてきていたのだ。

 

ナツは梟に向かって一直線に飛び込む。

 

「これくらいどうということはない!」

 

梟は足元の氷を衝撃波で壊す。そして―――――

 

 

「貴様を捕食(キャプチャー)して二人目の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)の魔力を手に入れる!

 『キャプチャーホーホホウ』!!」

 

「ぐお!?」

 

ナツを頭から咥えこんだ。ナツがジタバタする。

 

「ナツ――――!!」

 

ハッピーが必死に顔を上げる。

 

 

そのままナツは成すすべなく丸呑みにされる―――――かと思われた。

 

「うがああああああ!!!こんなとこで終われるかぁぁぁぁ!!!」

 

ナツが感情的に大声を上げて、両手に業火を灯した。その両手でがっしりと梟を掴んだ。

 

梟の体が燃えあがる。

 

 

「あちちあっちあああっちちちち!!!」

 

たまらず、梟はナツを吐きだした。ナツはすぐさま彼に接近する。怯んでいる今チャンスだ。

 

「『火竜の煌炎』!!!」

 

梟の腹の至近距離に両手を叩きつけた。炎が爆破したように広がる。

 

 

「ホロロロロ―――――!!!」

 

梟は燃えながら吹っ飛ぶ。そして、背から落下する――――――

 

 

 

直前に両足で着地した。

 

 

「ホ、ホウ・・・正義は・・・負けられない・・・!」

 

「うぇえ、まだ倒れねェのかよ!!」

 

付与術(エンチャント)のおかげで耐えきれたようだ。

 

梟は両手に音を纏わせるとナツの方に突っ込んできた。

 

 

「ホ、ホ、ホウ!!消し飛ばして、くれる!!」

 

 

「・・・来いやぁ!!」

 

ナツも構えて向かい討とうとした・・・・が。

 

 

グレイがナツの前に立ちふさがった。

 

 

「グレイ!?なにすんだよ!?」

 

「黙ってろ!」

 

グレイはナツに怒鳴り返すと腕と肘に鋭い氷を付けた。

 

 

 

グレイにとって最初、エルザはいけすかない奴だった。自分よりも後から妖精の尻尾(フェアリーテイル)に所属したくせに、自分よりも強くなった。

 

グレイはそれが気に食わなかった。だから、毎度勝負を挑み、エルザに勝とうとした。雪辱を晴らすために挑み続けた。

 

 

そんなある日、グレイが勝負をしようとエルザを探すと彼女は泣いていた。涙を流していた。

ギルドではいつも仏頂面をしていて孤立しているエルザが、だ。

 

 

その日、決めたのだ。

 

 

エルザを泣かせない、と

 

 

「泣かせねぇ・・・」

 

グレイは自分に言い聞かせるように呟く。そして、顔をガバッと上げた。

 

「エルザは俺たちの仲間なんだ!!泣かせるわけにはいかねえ!!!」

 

そう言って駆けだす。梟の両手がグレイに向かって伸びた。

 

「エルザは泣いちゃいけねえんだ!!!」

 

それを掻い潜り、懐に潜り込む。そして―――――

 

 

「『氷刃・七連舞(ひょうじんななれんぶ)』!!!」

 

氷の刃で連続切りを叩きこんだ。

 

 

「ホロロロロォ―――――!!!?」

 

梟は吐血しながら床に倒れ込んだ。ついでにアミクも吐きだしてくれた。

 

今度こそピクリとも動かない。

 

 

吐きだされたアミクはそのまま床に落ち―――――

 

 

「よっ、と」

 

 

――――る前にナツが抱えて事無きを得た。

 

アミクは今だ気絶している。というか胃液とかでネチャネチャしている。

 

「うへぇ、気持ち悪ぃ・・・」

 

アミクが聞いていたら拳の一つは飛んできたかもしれないことを言っていると、マーチとハッピーが飛びながらやってきた。

 

「アミクー!大丈夫ー!」

 

「おう!寝てっけど無事だ――――」

 

ナツはアミクを見下ろして固まった。

 

 

アミクの体は、付与術(エンチャント)のおかげかまだ溶けていなかった。だが問題は服の方だ。

服は耐えきれなかったのか前の部分やニーハイが溶けてしまっている。つまり――――

 

 

 

 

 

 

 

ブラジャーをした巨乳が丸見えだった。

 

 

「うほお!!?」

 

ナツは慌ててるのか喜んでいるのか分からない奇声を上げながらアミクを下ろす。

 

そしてアミクをガン見した。

 

「えい」

 

 

「ぎゃあああああ!!」

 

「ナツ――――!?」

 

そのナツの目をマーチが引っ掻く。

 

ナツは目を押さえて転げ回った。自業自得だ。

 

 

 

一方グレイは魔力をほぼ使い果たし、うつ伏せになって倒れていた。

 

 

『全く・・・世話の焼ける弟子だ・・・』

 

ウルが呆れたように言った。さっきの梟が聴いた声はウルだったのだ。

 

『だが、よくやったよ、グレイ』

 

ウルは自分の弟子の成長に目を見張る思いだった。

 

仲間を想う力で魔力を引き出し、強敵を打ち倒す。これを彼はやってのけたのだ。

何よりも、これがグレイの力だということか。

 

 

 

「ありがとう・・・ウル・・・」

 

眠たげなグレイが言った言葉は偶然だったのか、あるいは気付いたのか。

 

そこが気になるウルだった。

 

 

 

 

 

シモンは驚きと共に目の前の光景を見ていた。

 

 

「グレイ・フルバスター。そして、ナツ・ドラグニル。二人共想像以上の強さだ・・・!」

 

 

感嘆の声を上げるシモンであった。

 

 

 

 




今回二人がかりでも苦戦したのは相手が付与術使っていたからです。


次はたぶんジェラールと会います。

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