妖精の尻尾の音竜   作:ハーフィ

37 / 202
ジェラールって七年経っても外見ほぼ変わらないって、ほんとイケメンって得だよな。


エーテリオンとジェラール

ナツとシモン、そしてアミクは急いで上へと向かっていた。

 

未だに気絶しているアミクはシモンが背負っている。

 

「だー!グレイに止め刺されちまった!クソ!もう一回だ!」

 

「何がもう一回、だ。それより今はエルザを追いかける方が重要だ」

 

「う・・・う・・ん?」

 

ナツとシモンが会話しているとアミクが目を覚ました。

 

 

「お!アミク、目を覚ましたか?」

 

「えーと・・・私、食べられて・・・」

 

「そうだ。ナツとグレイが助けてくれた」

 

シモンが簡単に説明すると、アミクはナツの方を向いてふんわりと笑った。

 

「ん、ありがとね・・・ナツ」

 

「・・・まぁ無事でよかったぜ」

 

ナツは頭をボリボリ掻きながらそっぽを向く。

 

 

「でも、ごめんね?足手まといになっちゃって・・・」

 

加勢に行ったのに助けになるどころか邪魔になってしまったと思う。情けない・・・。

 

「そーゆー時だってあるだろ!気にすんな!」

 

「サバサバしてるなぁ・・・」

 

アミクはシモンに礼を言って下してもらった。もう自力で歩ける。

 

 

「って服がぁ!?」

 

「あーちょっと損傷していたからな。ナツの服を貸してもらった」

 

アミクの服が際どい感じに溶けちゃってたので、上はナツの服を借りるしかなかった。下はニーハイがダメになったくらいなので問題はない。

 

まぁ恥ずかしいものは恥ずかしいが。

 

 

「うぅ~・・・ところでグレイ達は?」

 

「さっきの場所で休んでもらっている。後からショウが外に連れて行くから大丈夫だ」

 

「あれ?ショウって・・・」

 

「さっき念話で連絡が取れた。ついでにミリアーナとウォーリーも二人の仲間を見つけた、と」

 

「あ・・・ルーシィ達か」

 

ならばルーシィ達は大丈夫だろう。それより・・・

 

「エルザはジェラールと決着をつけに行ったらしい」

 

アミクが聞く前にシモンが教えてくれた。

 

「ぐっ・・・」

 

その時、シモンが胸を押さえてうずくまる。

 

「シモン!?大丈夫?」

 

アミクが治療しようとするとシモンが手で制止してきた。

 

「いい。魔力を温存してくれ」

 

「これくらいすぐ回復するって!」

 

アミクはさっさと『持続治癒歌(ヒム)』を使ってシモンを癒した。

 

「・・・すまない」

 

「ううん、シモンにはいろいろ助けてもらってるし」

 

シモンを暖かな光が包んだ。これでほっといても勝手に回復するだろう。

 

「でもすごいよねシモンって」

 

「・・・?」

 

「何が?」とでも言うかのようにキョトンとするシモン。

 

「エルザのこと8年間もずっと信じてきたんでしょ?エルザのことずっと信じてくれる人がいてよかったよ」

 

エルザも救われた想いだっただろう。ほとんどのかつての仲間たちがエルザに敵意を向けていたのだから。

 

「これも、愛ゆえにだね!」

 

「い、いや・・・そんな・・・」

 

いきなり図星を言われてアタフタするシモン。

 

 

「ああ見えても、エルザって結構純情だから!押しまくればたぶんいける!」

 

「そ、そうか・・・」

 

熱弁するアミクに圧倒される。シモンは「それよりも」と手を振るとアミク達に言った。

 

「・・・頼む、俺の代わりにエルザを助けに行ってくれないか?」

 

今はまだ怪我も治ってなくて、身体も普段通りに動きそうにないのだ。

 

だが、ナツはその頼みを一蹴した。

 

「嫌だ」

 

「なっ・・・!仲間なんだろ!?心配じゃないのか!」

 

憤るシモンにナツは軽く返す。

 

「これはエルザの戦いだ。アイツが決着を付けるってんならオレらは手を出すべきじゃねぇ」

 

「ナツにしてはすごい理性的」

 

「んだとコラ!!」

 

アミクが感心したように言うとナツが目を釣り上げた。

 

シモンは納得する。エルザの勝利を信じているからこそ自分は手を出さないと言っているのだ。

 

だが。

 

「いや・・・エルザは、アイツを・・・ジェラールをも救おうとしているんだ!」

 

「ん・・・?」

 

シモンの言葉にナツは首を曲げる。

 

「・・・やっぱり。エルザのことだからジェラールと一緒に自分も死ぬ、とか言い出しかねないよ」

 

アミクも薄々感づいていたのか頷いて納得する。

 

「ああ。ジェラールは狡猾な奴だ。エルザのその気持ちさえ利用しようとするだろう・・・」

 

そうなればエルザは無事では済まない。惨たらしい最悪の結果に繋がってしまう。

 

 

ナツは胸の中に怒りの炎を灯した。

 

 

「なんで、それを先に言わねぇんだよ・・・!」

 

 

ナツの目が据わる。

 

「―――エルザがジェラールを助けようとするならそれでもいいけど・・・エルザは絶対に助ける!行くよ、ナツ!」

 

「おう!燃えてきたあああああ!!!」

 

アミクとナツは上を目指して去っていった。あとに残されたシモンはアミク達の後ろ姿を見てポツリ、と呟く。

 

 

「――――いい仲間を持ったな、エルザ」

 

 

 

 

 

 

 

エルザはジェラールを追い詰めた。

 

ジェラールの首に刃を押し当てる。

 

「くっ」 

 

「・・・お前には聞きたいことがある。なぜ、アミクを狙った?」

 

エルザはそれがずっと疑問だった。

 

「・・・理由は二つある。一つはお前にもしものことがあった時のための生贄の予備だ」

 

「待て。アミクは生贄の条件に満たしているのか?」

 

エルザとて8年間何もしなかったわけではない。エルザなりにRシステムについて調べていたのだ。

 

「確かに、生贄のおおよその条件は聖十大魔道士に匹敵するほどの肉体だ。しかしだ――――お前も薄々気付いているんだろ?アミクは聖十大魔道士を打倒し得る可能性を持つ器だ」

 

 

「!!」

 

それは少なからず共感できる所だった。まだ自分の方が圧倒的に強いとはいえ、エルザを負かすほどの力量。あのジョゼに立ち向かえる勇気。そして自分さえ怯ませる威圧。

 

「それ以外にも生贄の資格たり得る理由がある」

 

先ほどからジェラールが素直だが、何か裏があるのではないのか、とエルザは警戒しながらもジェラールの話を聞く。

 

「アイツの魔力だ。アイツの魔法――――音楽魔法、と言ったか?この音楽魔法はかなり特殊だ。歌うことで治癒や付与術(エンチャント)など様々な効果をもたらす魔法。

 言うなれば一つの魔法の中に万能性、つまり無限の可能性を秘めているわけだ。その魔法に加え竜迎撃用の太古の魔法、滅竜魔法。

 この二つの魔法を持つアミクの魔力は未知数かつ強力なものになるだろう。その魔力はゼレフに捧げるにふさわしい」

 

狂気的な笑みで語るジェラールの首に、静かに剣を添えているエルザ。

 

そのエルザは、もしかしたら自分が関わっていなくてもアミクが生贄にされる可能性は十分にあったことに気付き戦慄した。

 

「とはいえ、まだ未熟だからな。エルザに比べれば儀式の成功率は低いだろう。だから、アイツはあくまで生贄の予備(・・・・・)だ。本来の目的はもう一つの理由の方だ」

 

ジェラールは再び笑みを作った。

 

「復活したゼレフの世話役だ」

 

「世話役・・・だと?」

 

随分と大層な役目に任命されたものである。

 

「ゼレフを復活させたにせよ、そのゼレフが万全の状態じゃないかもしれないだろ?五体満足かも分からん。その後の生活で大怪我をしないとも言えない。だから、ここでアイツの出番ってわけさ」

 

エルザが耳を傾けているのを見て気分が乗ってきたのか、ジェラールは腕を広げながら説明した。

 

「俺はゼレフに健康体でいてもらいたいんだ。アミクの音楽魔法は人の心に寄り添い、癒す魔法とも聞く。怪我を治してもらったり、歌で気分を落ち着かせたり、と、アミクにはゼレフを甲斐甲斐しく世話する存在になってもらうんだよ。いや、いっそメイドの仕事もさせた方がいいかな?

 まぁ、癒す、という意味では『天空の巫女』でもよかったかもしれないが・・・居場所を掴んでないうえ、アミクの方が適任だと思うからな」

 

結局、お世話係に過ぎないのでジェラールとしてはこの戦いで死んでしまってもかまわないとも思っていた。

 

そんなことは知らないエルザは、思ったよりもくだらなくて、吐き気のするような話に腸が煮えくり返る思いだった。エルザは剣をさらに押し込んだ。

 

「そんなこと、させると思うか?

 

 

 いや、そもそもできないと言った方がいいか。

 

 

 本当はRシステムなど完成していないのだろう?」

 

 

 

 

ナツとアミクは必死に階段を駆け上る。

 

「―――ちょっと、まずいかも!?」

 

「な、なにが、だ!?」

 

息を切らしながらもアミクとナツは会話した。

 

 

「聴いた感じ、う、上からすごいのが降ってきそう!多分、エーテリオン!!」

 

「マジか、やべぇな!」

 

軽く言うナツだがその顔は焦りに満ちている。このままではエルザに相まみえることもなく終わってしまう――――と思った直後。

 

 

 

 

 

 

―――――聖なる光が全てを覆い尽くした。

 

 

 

「そんな・・・」

 

 

アミクが呆然と呟く声だけが響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・あれ?生きてる?」

 

「ど、どうなったんだ?」

 

エーテリオンを落とされたはずで、自分達はあっけなく死んだ、と思っていたが・・・アミクが恐る恐る周りを見回す。

 

塔の外壁や装飾は剥がれ落ち、綺麗に輝く魔水晶が姿を現していた。

 

「なにこれ・・・すごい魔力・・・!」

 

先ほどのエーテリオンの魔力が詰まったような感じだ・・・いや、まさにそうなのかもしれない。

 

「楽園の塔がエーテリオンを吸収した・・・?」

 

そんなバカな。

 

 

「一体・・・とにかく、エルザの方に向かおう!」

 

「言われなくても分かってらァ!!」

 

非常に嫌な予感がしたアミクとナツは大急ぎで上へと向かった。

 

 

 

 

 

 

「貴様はいったいどれだけのものを欺いて生きて来たんだァ!!!」

 

エルザの心は怒りと憎しみで埋め尽くされた。

 

Rシステムを発動させるには魔力が足りない、と指摘してからジェラールが「俺は俺を救えなかった」とか語りだし、エルザの同情を誘った。エルザもジェラールを救いたかったため、ジェラールと共に果てることを決意して最期の瞬間まで抱き合っていたはずだった。

 

だが、それは全てこの男の計略の内だったのだ。

 

知らされる『楽園の塔』の正体。それは巨大な魔水晶(ラクリマ)だった。その魔水晶(ラクリマ)にエーテリオンを吸収させ、27億イデアの魔力を得ることに成功したのだ。

 

そして、現れたのがジークレイン、評議員の一人。

 

彼は――――彼らは元々一人の人間だと告げる。ジークレインはジェラールの思念体だったのだと言う。さらに思念体を作っていたため、ジェラールは本来の力を出せていなかった。

 

つまり、思念体が戻った今、ジェラールは元の力を取り戻してしまったわけだ。

 

「ジェラールゥゥッ!!」

 

エルザは刀を構え、斬りかかるがジェラールは圧倒的な魔力を放ち、近づけさせない。

 

「どうした?さっきまでの勢いはどこに行った?」

 

「ハアアアァァァァッ!!!」

 

エルザが剣を振るうが、三羽鴉(トリニティレイヴン)の一人である斑鳩との激闘、さらにジェラールとの戦いで体力が尽きかけていたので、キレがない。その剣をジェラールは容易に避ける。

 

 

 

「今頃、評議院は完全に機能を停止している。ウルティアには感謝しなければな。あいつはよくやってくれた。楽園にて、すべての人々が一つになれるのなら死をも怖れぬと・・・まったく、バカな女であることに感謝せねばな」

 

ジェラールはエーテリオンを放った直後の評議会にて、ウルティアに評議会を潰すようにさせていた。 

 

「貴様はいったいどれだけの人を利用すれば気がすむんだ!!」

 

 

エルザがジェラールにそう叫んだ瞬間、エルザの身動きが取れなくなった。

 

「な、何だこれは!!?」

 

エルザの体に蛇の模様が身体中に現れ、エルザを縛る。

 

 

「『拘束の蛇(バインドスネーク)』。さっき抱き合ったときにつけておいた」

 

 

「ぐっ・・・・!」

 

「Rシステム作動の為の魔力は手に入った。あとは生け贄があれば、ゼレフが復活する。もうお前と遊んでる場合じゃないんだよエルザ。この27億イデアの魔力を蓄積した魔水晶ラクリマにお前の体を融合する。そしてお前の体は分解され、ゼレフの体へと再構築されるのだ」

 

 

「クソ・・・」

 

ジェラールは動けないエルザの体を魔水晶(ラクリマ)の近くまで運んで、その中に押し込むと、エルザの体が魔水晶(ラクリマ)に呑み込まれていった。

 

「お前のことは愛していたよ。エルザ」

 

 

「ああああああああああっ!!!!」

 

 

エルザは悔しくて悔しくて絶叫した。自分の甘さのせいでこのようなことを招く結果になってしまった。

 

 

「偉大なるゼレフよ!!!今ここに!!!この女の肉体を捧げる!!!」

 

エルザの身体がどんどん魔水晶(ラクリマ)に取り込まれていく。

 

「ジェラァァァァァァルゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!」

 

エルザの怨嗟の声を心地よさ気に聞きながらジェラールは高笑いした。

 

 

 

 

 

 

 

そんなエルザの体を掴む手があった。

 

 

 

「えい」

 

 

その人物はエルザをあっさり魔水晶(ラクリマ)から引っ張り出した。その人物とは―――――

 

 

「ア、ミク・・・?」

 

「はーいアミクでーす。『治癒歌(コラール)』」

 

アミクはエルザに手を当て、治療した。

 

「よぉ、エルザ」

 

「ナツ・・・?」

 

ナツもアミクの隣に立つ。

 

 

「さ、帰ろうぜ。早く仕事に行かねえとアミクとルーシィの食費が無くなっちまうぞ」

 

「いや、余裕だからね!?」

 

そんな軽口をたたきながらエルザに語りかけるナツ。

 

だが、そんなナツにエルザは申し訳なさそうに言った。

 

「す、すまん・・・体が、動かないんだ」

 

その瞬間ナツは悪い笑みを浮かべてエルザの側にしゃがみ、くすぐり始めた。

 

「なっ!こら、やめ・・・!!」

 

「普段からひどい目にあってるからな!!今がチャンスだ!これでもくらえ!!」

 

「ちょっとーナツー遊んでる場合じゃないよー」

 

アミクはそう言ってからやっとジェラールを見た。

 

ジェラールとアミクの視線が交差する。

 

 

「・・・やっぱり、ジーク兄さん、だよね?」

 

アミクの言葉にエルザは驚いた。アミクは先ほどの場面を見ていなかったはずだが。

 

 

「ほう、よく気がついたな」

 

「だって・・・ジーク兄さんと全く臭いが一緒なんだもん。そもそもこの『楽園の塔』に来てからジーク兄さんの臭いが微かにしてたんだ」

 

「そういえば鼻がいいんだったな。改めて、俺がジェラールだ」

 

ジェラールは薄笑いを浮かべた。ジークと同じような笑み。だが、それより遥かに邪悪な笑みがアミクの瞳に焼きついた。

 

「また会おうって言ってただろ?」




簡単に言うとアミクはいたらいいな、程度で攫われちゃったとばっちり娘です。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。