妖精の尻尾の音竜   作:ハーフィ

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はぁいどうもですー。楽園の塔もクライマックスです。

作者の文章力がどこまで持つかブルブル。


シモン

「二人共。逃げてくれ・・・」

 

エルザが弱々しい声で言った。

 

「え、やだ」

 

アミクはあっさり拒否した。ナツも同意するように頷いている。

 

「エルザも一緒に帰らなきゃダメだよ。エルザは家族なんだから。だからさっさとあの人ぶっ飛ばしちゃうね!」

 

軽快に話すアミクに対してエルザは苦しげだ。

 

「よせ・・・相手が悪い。おまえ達はあいつを知らなさ過ぎる」

 

「知らなきゃ勝てねえもんなのか?」

 

「頼む・・・言う事を・・・聞いてくれ」

 

涙ながらにアミク達にそう頼むと、ナツはエルザの体を起き上がらせ、寄りかからせた。

 

「エルザ。オレ達もオマエをぜんぜん知らねえ」

 

 

 

「けど!勝てるよ!」

 

アミクがそういった直後、ナツがエルザの腹を殴り気絶させる。

 

 

それを見届けてアミクは自分とナツに付与術(エンチャント)を掛けた。

 

「〜♪ 『攻撃力強歌(アリア)』!『防御力強歌(アンサンブル)』!『速度上昇歌(スケルツォ)』!!」

 

三つもやると魔力消費がハンパないが、出し惜しみして勝てる相手ではないはずだ。

 

「ジーク兄さん・・・いや、ジェラール!貴方の思い通りにはさせないよ!」

 

「・・・お前に俺を倒せるとでも?」

 

ジェラールは見下したように腕を組む。自分が負けるとは微塵も考えていないらしい。

 

「私だけじゃないよ」

 

「ジェラァァァァァル!!!」

 

ナツがアミクの隣で手の平に炎を灯しながら吠えた。ジェラールは更に口を歪める。

 

「『双竜』。お前らのコンビネーションがどれほどのものなのか、見てみたかったんだ」

 

「・・・エルザが、泣いてた」

 

アミクが静かに言葉を紡ぐ。

 

「弱音を吐いて、声を震わせていた。そんなエルザは見たくない。

 エルザは強くて凶暴な時もあるけど、いつも仲間のことを考えてくれてる、優しくてかっこいい人だよ!」

 

そして、それにナツが続けた。

 

「目が覚めたとき、いつものエルザでいてほしいから、オレ達が戦うんだ!」

 

「『音竜の翼撃』!!」

 

アミクが先手を打って攻撃する。素早く動いて、アミクの両腕がジェラールに直撃し、衝撃波を発生させた。

 

「『火竜の鉄拳』!!」

 

ナツも直後に飛び込み、殴り飛ばした。ナツの炎はジェラールを包み込み、燃え盛った。

 

まだ、二人の猛攻は終わらない。息を大きく吸い込む。

 

「『火竜の――――』」

 

「『音竜の――――』」

 

「「『咆哮』!!」」

 

二人の同時に放ったブレスが混じり合ってジェラールに向かっていった。

 

それはジェラールを飲み込み、大爆発を起こす。

 

 

モクモクと煙が沸き起こり周りがよく見えない。だが、かなりのダメージを喰らわすことはできただろう。

 

・・・だが――――――。

 

「・・・なんだ?それがお前らの本気か?多少は痛かったが、大した威力ではないな」

 

煙が晴れるとジェラールがピンピンして出てきた。

 

「嘘!?」

 

「まだまだぁ!!」

 

アミクが自分たちの攻撃が大した痛手になっていないことに驚いている中、ナツは再びジェラールに飛びかかった。

 

「『火竜の鉤爪』!!」

 

「ふん」

 

ナツの炎を纏った蹴りがジェラールの腕に受け止められた。

 

「そこ!」

 

その時、ジェラールは後ろからアミクの声が聞こえたので対処しようと、ナツを吹き飛ばし後ろを振り向くが――――――

 

 

(いない!?)

 

そこに誰もいないのを見て、ジェラールの片眉がピクリ、と動いた。

 

そのジェラールの顔面に迫る拳が――――――

 

 

「・・・そんな小細工が俺に通用すると思ったか」

 

「あ”っ!?そ、んな・・・!」

 

届くよりも速くジェラールが裏拳をアミクの頭部に叩き入れていた。

 

「だが、惜しかった、とは言っておこう。まさか声を飛ばすとはな。一瞬だけでも不意を突いたのは大したものだ」

 

(動きが・・・早い!)

 

素早さも強化しているのにそれに反応するほどの速度。聖十大魔道の一人であるのは伊達ではない。

 

 

「この手で消滅させちまう前に一度、滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)の破壊力を味わってみたかったんだが」

 

ジェラールはそう言った後、ボロボロになった自分の上着を脱ぎ捨てた。

 

付与術(エンチャント)込みでも俺に多少のダメージしか与えられないようじゃ、怖れるに足らんな」

 

「・・・くっ!!」

 

アミクが悔しげに歯を食いしばった。

 

「よくも儀式の邪魔をしてくれたな。オレの天体魔法のチリにしてやるぞ」

 

突然、ジェラールの身体が発光した。

 

「『流星(ミーティア)』」

 

「・・・!」

 

アミクとナツがその攻撃に反応してかろうじて避けれたのも、『速度上昇歌(スケルツォ)』のお陰だろう。

 

ジェラールがものすごい速さで突進してきたのだ。

 

「ぐぅあっ!!?」

 

だが一息いれる暇もなく攻撃されたため、今度は避けられなかった。次々と攻撃を当てられていく。

 

(視覚だけに頼っちゃダメ!感覚、臭覚、そして聴覚!全て使う!)

 

アミクは全ての感覚を研ぎ澄ませた。

 

ジェラールが飛び回る。彼の攻撃を読み取らなければ。

 

「・・・今だ!」

 

アミクは前方にむかって拳を振るった――――――――――が。

 

 

 

ジェラールがかくん、と上に曲がって拳を回避した。アミクの拳は掠るだけで終わった。

 

「また速度が上がった!?」

 

「オレに掠らせるとはなかなかのスピードだ!だが、もうお前たちの攻撃など二度と当たらんよ!」

 

ジェラールは縦横無尽に飛びまわってアミクとナツに攻撃を仕掛けていった。ひざ蹴り、裏拳、叩き落としなど様々な方法で痛めつけてくる。

 

(・・・防御力を上げておいたお陰で大きなダメージは入ってないけど・・・いつまで持つか・・・)

 

アミクは口から流れ出た血を拭うとナツを見る。ナツも大分ボロボロだった。

 

「止めだ。お前たちに本当の破壊魔法を見せてやろう」

 

その時、ジェラールがアミク達に向かって特大の魔法を放った。

 

「七つの星に裁かれよ!『七星剣(グランシャリオ)』!!」

 

「う、あああああああああ!!!?」

 

とんでもない威力の衝撃波がアミク達の身体を貫いた。痛みで意識が飛びかける。魔水晶(ラクリマ)の床は砕け、アミクとナツは回転しながらふっとぶ。

 

「うぅ・・・・」

 

「ぐっ・・・」

 

「ほう、隕石にも匹敵する破壊力を持つ魔法だったんだがな。よく意識が残っているものだ。

 流石は付与術(エンチャント)と言ったところか」

 

ジェラールは付与術(エンチャント)の効果が思ったより高かったことに驚いていた。だが、それだけだ。あそこまでのダメージならばしばらくは動けないだろう。

 

 

「それにしても派手にやりすぎたな。これ以上Rシステムにダメージを与えるのは不味い。魔力が漏洩し始めている」

 

ジェラールの言う通り、砕けた魔水晶(ラクリマ)から魔力の霧が漂っている。

 

「さて、儀式の続きをやるとするか―――――」

 

 

「『音竜の』」

 

ジェラールがエルザの方に向かおうとしたその時、アミクの声が聞こえた。ガバッと振り返る。

 

「『遁走曲(フーガ)』ァ!!」

 

倒れたままのアミクがそう叫んだ瞬間。

 

 

ボガァン!!

 

 

「ぐ、あぁ!?」

 

ジェラールの足元から衝撃波が生じる。たまらず浮いてしまうジェラール。だが、すぐに体勢を立て直し、膝をついて着地した。

 

「い、いつの間に・・・」

 

「フフ、驚いたでしょ?」

 

アミクがナツを治療しながらフラフラと立ち上がった。

 

「攻撃、当てたよ?」

 

アミクがあっかんべをしながら言うと、ジェラールは少し目を見開いた。

 

 

タネはこうだ。

 

アミクの『音竜の遁走曲(フーガ)』は足が付いている所に魔力を隠し、任意のタイミングでその魔力を開放することで衝撃波を発生させる魔法である。

 

だが、普通だったらジェラール程の魔導士であれば隠された魔力にも気付くだろう。

 

しかし、今アミク達が立っている床が肝だ。この床は魔水晶(ラクリマ)でできている。つまり、魔力の塊なのだ。

そんな所に魔力を隠したところで魔水晶(ラクリマ)の魔力が邪魔をして気付かない。

 

木を隠すなら森の中、というわけだ。

 

 

「ふざけた真似を・・・」

 

ジェラールがアミクを排除しようと一歩踏み出すと。

 

ドゴォォォォン!!!

 

 

「なっ!?」

 

轟音がしたのでそちらを見てみると、ナツが炎の拳を魔水晶(ラクリマ)の床に叩きつけたところだった。

 

「貴様・・・」

 

「やっぱり、壊されるとまずいみたいだね?」

 

アミクがにっこり笑って言う。

 

「これを壊されると儀式はできないんでしょ?そういうことだったら悪いけど、うちのナツは壊すのが大の得意なんだよね」

 

そのナツは獰猛な笑顔でジェラールを見ていた。その手にはメラメラと燃え盛る炎を宿して。

 

「というわけで、この塔は破壊させてもらいまーす!!」

 

にこやかに告げるアミクに本気の殺意を抱くジェラール。

 

「この小娘ェ・・・!!!」

 

怨嗟の声を上げるとジェラールはまずはナツを止めようと彼の方に向かっていく。

 

「おおおおお!!」

 

ジェラールが殴りかかるとナツはそれに対処して炎を纏った腕をジェラールにぶつける。

 

「くっ」

 

「おらああああああああ!!!」

 

楽園の塔を壊さないように細心の注意を払っているため本気を出せないジェラールに対して、ナツは周りのことなど構わずに暴れまくればいいのだ。

 

勝利条件はこちらの方に有利に傾いている。

 

 

 

もちろんアミクもただ立っているわけではない。

 

「『音竜の遁走曲(フーガ)』!!」

 

少女の声が響いた直後、ボガァンボガァンボガァン!!とあちこちで連鎖的に衝撃波が巻き起こった。

 

「一つだけとは、言ってないよ!」

 

ジェラールのアミクを見る視線は射殺さんばかりだ。

 

 

「立ち上がったことを後悔しながら地獄に行けぇ!!」

 

「しぶとさには自信があるんだ!やれるもんならやってみやがれ!!」

 

ジェラールは光弾を生み出すとアミクとナツ、それぞれに放った。

 

 

「よっと!」

 

 

「わわっ」

 

 

それらを危なげなく避けていく二人。

 

 

「こいやぁぁぁぁ!!!」

 

ナツは飛びあがるとジェラールに向かって突っ込む。それに対し、ジェラールは巨大な光弾を放ってナツにぶつけた。

 

 

「んぎぎぎぎぎ・・・!」

 

ナツはその光弾を抑えながら後ろに押されていく。床には、ナツが足で踏ん張って出来た跡が線のようにできていた。

 

「ナツ!」

 

その音で起きたのかエルザがナツの名を呼ぶ。

 

「うおらぁああ!!」

 

だが、心配は無用だ。ナツはその光弾を振り払った。

 

 

「へへっ!どうしたそんなもんかよ!塔が壊れんのビビって本気出せねェのか!?

 全然効かねぇなぁ!!」

 

笑いながら言うナツにジェラールは手を向けた。

 

 

「いつまでも調子に乗ってんじゃ――――」

 

 

「『音竜の響拳』!!」

 

 

だが、ナツにばかり意識を向けていた彼は後ろに迫っていたアミクに気付かず、後頭部を思いっきり殴られる。

 

 

「ぐぅっ!!?」

 

「からの!『音竜の鉤爪』!!」

 

倒れ込んだジェラールにアミクが蹴りを放つ。だが、ジェラールは咄嗟に転がって避けた。

 

そのまま蹴りは魔水晶(ラクリマ)の床に叩きつけられる。衝撃波と共に、魔水晶(ラクリマ)が更に砕けた。

 

 

「あらら、避けちゃったね・・・ま、構わないけどね!」

 

アミクにとってはジェラールに当たろうが魔水晶(ラクリマ)に当たろうが関係ないのだ。どっちに当たっても勝利に近づくのだから。

 

「あいつら・・・塔を・・・!」

 

エルザはアミクとナツが何をしているのかを察した。

 

「オレが・・・オレが8年もかけて築き上げてきたものを・・・!!貴様らぁ・・・!!」

 

ジェラールは目をかっと見開き、怒りで震えながら言った。

 

「それは、お気の毒さま!言ったでしょ?壊すのは得意だって!」

 

アミクはフラッとしながらも不敵に笑う。正直、自分も隣にいるナツも立っているのがやっとであるが、それでも我慢しなければならない。

 

 

「許さんぞぉ!!」

 

ジェラールはそう叫ぶと両腕を交差して掲げた。瞬間。魔力が吹き荒れた。

 

 

「う!?うう!」

 

「ぐあっ・・・なんだこの魔力は・・・!気持ち悪ぃ・・・!!」

 

 

アミクは思わず自分の足元を見る。するとそこには――――

 

(か、影が光源とは逆に伸びてる!?)

 

不思議な光景があった。

 

 

 

ジェラールの頭上に邪悪な魔力が集まってくる。

 

「無限の闇に堕ちろぉ!ドラゴンの魔導士共!!」

 

いよいよ、魔法を放とうとした時。

 

「ジェラール!!」

 

緋色がアミク達の前に立ち塞がった。

 

 

「エ、エルザ!?」

 

「お前に私が殺せるか!!?ゼレフ復活に必要な肉体なのだろう!?」

 

エルザは生贄である自分が死んでは儀式を行えないから、と自分を人質にしたのだ。

 

 

「ああ、そうだ・・・しかし今となっては別にお前でなくともよい。そして!もはやそこの小娘もいらん!!」

 

ジェラールはアミクをギロっと睨んで叫んだ。

 

「なっ・・・!!」

 

「3人揃って砕け散れぇ!!!」

 

ジェラールの魔法の魔力が更に高まる。

 

「エルザ!危ないよ!!」

 

「お前たちは何も心配するな。私が守ってやる!」

 

エルザはいつものように、だがどこか儚げに笑った。

 

「やめろおおおおおおおおお!!!」

 

ナツが絶叫した直後。

 

「天体魔法『暗黒の楽園(アルテアリス)』!!」

 

 

 

とうとう強大な魔法が放たれる。人の命など簡単に奪えそうな魔法が。

 

 

「エルザァァァァァァァァ!!!!」

 

 

アミクがせめて、付与術(エンチャント)を掛けようとした、その時。

 

 

アミクの耳に、ザッという音が入ってきた。

 

 

 

「――――『防御力強歌(アンサンブル)』ゥゥゥゥゥゥ―――――!!!」

 

 

アミクの絶叫と同時に―――――爆発が、その場を包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

煙が濛々と立ち込め、周りの状況が良く分からない。だが、とりあえず自分達は生きているらしいことは分かった。

 

そして、煙が晴れるとそこには――――――

 

 

 

 

ボロボロになった巨漢の男の背があった。

 

 

 

「・・・シ、シモン・・・?」

 

 

エルザは呆然とその男の名を呼んだ。

 

 

「エ、エルザ・・・」

 

シモンはフラッと仰向けに倒れた。

 

「シモン!」

 

エルザとアミクは慌ててシモンに駆け寄った。

 

 

「まだウロウロしていやがったか、虫けらが」

 

ジェラールが嘲ったように言うがそれすら耳に入らない。

 

「『治癒歌(コラール)』!!」

 

アミクは急いで治癒しようとした。が―――――

 

 

「そんな!?回復が追いつかない・・・!!」

 

 

治癒するそばからシモンの生命力が抜け落ちていく。

 

 

シモンが庇うのに気付いてシモンに付与術(エンチャント)を掛けたのに。それでも耐えられなかったのか。

 

「なんで、おまえが・・・!!逃げなかったのか!?」

 

エルザが悲痛な声で呼びかけるも、シモンは虚ろな目で声を漏らすだけだった。

 

「・・・よ・・・よかった・・・いつか・・・お、おまえの・・・役に・・・立ち、たかった・・・」

 

「シモン!!死んじゃダメ!!絶対!絶対死なせないから!!」

 

アミクが必死に『治癒歌(コラール)』を掛けるも、快方の兆しが見えない。

 

 

アミクは無力感と絶望感に苛まれた。

 

 

何が聖女だ。何が希少な治癒使いだ。

 

 

エルザの大切な仲間さえ、目の前の人さえ救えないのに・・・。

 

 

「『持続回復歌(ヒム)』!!『状態異常無効歌(キャロル)』!!」

 

ありったけの魔力を使って付与術(エンチャント)も掛ける。

 

なのに・・・。

 

 

「・・・アミク・・・もう・・・いい・・・」

 

シモンが息も絶え絶えに言った。

 

「いいわけない!!ほら!!なんか治ってきた気がする!!大丈夫だよ、いけるいける!!」

 

その言葉は自分にも言い聞かせているみたいだった。だが、そうでもしないと涙が溢れてきてしまいそうだ。

 

エルザの目にも涙が溜まっていく。ナツはただ、呆然とそれを見ていた。

 

 

「おまえは・・・いつも・・・やさしくて・・・やさ、しくて・・・」

 

 

そういえば必死に自分を治そうとし、自分のために涙を流すとは、アミクは本当に心優しい少女なのだろう。そんな彼女にはこれからもエルザを支えて欲しい。

ナツにもその強さと仲間を想う心でエルザを守ってもらいたかった。

 

本当にエルザはいい仲間に恵まれてよかったと思う。

 

 

いよいよエルザとアミクの自分を呼ぶ声も聴こえなくなってきた。

そんなシモンは昔のエルザの幻影を見る。

 

 

昔のエルザはいつもニコニコ笑っている、強い女の子だった。

 

そして、シモンはそんなエルザが昔から―――――今でも

 

 

(大好き・・・だった・・・・)

 

 

 

その思考を最期に、シモンの意識は闇に包まれた。だが、その闇は暖かさもあり、決して嫌なものではなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イヤアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

 

 

 

エルザの悲痛な絶叫がアミクの耳に嫌でも響く。エルザの目から涙が次から次へと零れた。

 

 

 

救えなかった。

 

 

エルザを悲しませてしまった。

 

 

 

一つの生命を失くしてしまった。

 

 

 

「あ、あああ・・・あああ・・・」

 

 

涙がポタポタと落ちる。この涙は意味があるのか。泣いたところで死んだ人間は帰ってこないというのに。

 

 

 

「・・・『持続回復歌(ヒム)』・・・」

 

 

往性際悪く、付与術(エンチャント)を掛けてみる。

 

 

もちろん、すでに息絶えた者には発動しない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フフフ、フハハハ、フハハハハハハハハ!!!!」

 

 

 

耳障りな笑い声が聴こえる。

 

 

「くだらん!実にくだらんよ!!そういうのを無駄死にって言うんだぜぇ、シモォォォォン!」

 

 

命を掛けてエルザを守ったシモンに対して、ジェラールはどこまでも邪悪に告げた。

 

 

「大局は変わらん!どの道誰も生きてこの塔からは出られんのだからなァ!!」

 

 

「黙れえぇぇぇ!!!!!!」

 

 

刹那。

 

 

ナツの怒声と共にジェラールの顔面がぶん殴られた。

 

 

ぶっ飛ばされたジェラールはそのまま魔水晶(ラクリマ)に叩きつけられる。

 

 

「ごはあぁっ!!?」

 

 

 

驚いたエルザがナツを見ると―――――

 

 

バキッ

 

 

ガリッ  ゴリッ

 

 

 

魔水晶(ラクリマ)を食べていたのだ。

 

 

エーテリオンを吸収した膨大な魔力を持つ魔水晶(ラクリマ)を。

 

 

 

さらに、後ろからも。

 

 

 

カン!!  カン!!  カン!!

 

 

何かを打ちつける音がする。

 

 

エルザが振り返って見ると―――――

 

 

 

アミクが魔水晶(ラクリマ)を床、つまり魔水晶(ラクリマ)に打ちつけ、それで生じた音を食べているのだ。

 

 

 

否―――音と一緒に魔水晶(ラクリマ)から漏れ出てるエーテリオンの魔力も吸い込んでいる。

 

 

 

 

(こ、こいつら・・・エーテリオンを食ってやがる!!)

 

 

アミクはその内めんどくさくなってきたのか、ナツと同じように魔水晶(ラクリマ)をバリボリと食べていた。

 

 

「ウ、ウ、オオオオオオオオオオオオ!!!」

 

ナツの魔力が高まっていく。

 

だが、すぐに体内の魔力を吐き出し、喉を押さえて苦しみ始めた。

 

 

「あああ!!あ、がああああ、あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!」

 

アミクの方を見ると彼女も苦しそうに喉を押さえて蹲っている。

 

 

「なんてバカなことを・・・!エーテルナノには炎や音以外の属性も融合されているんだぞ!!」

 

アミクは最初、音を立てることで『音』の属性を高め、エーテルナノを食べても耐えられるようにしていたようだが、どれほど効果があるか。

 

 

「う、ああああああ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!」

 

「ああああああ!!!あ、ああああ、ああ・・・」

 

 

(強力な魔力を炎や音の代わりに食えば、パワーアップするとでも思ったか!

 それも二人揃って!)

 

コンビ組んでるだけあって思考回路まで案外似ているのかもしれない、と思うジェラール。

 

 

(その短絡的な考えが自滅をもたらした!)

 

 

ジェラールがほくそ笑むと――――――。

 

 

 

 

 

 

二匹の竜は、覚醒した。

 

 

 

 




ジェラールやっぱ強し!

ところで暗黒の楽園って天体関係ある?

備考:音竜の輪舞曲 = 音竜の翼撃
   音竜の旋律 = 音竜の鉤爪

  です。

アミクは気分によって言い方が変わります。

感想とか待ってまーす。
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