妖精の尻尾の音竜   作:ハーフィ

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肝心のセリフ覚えてない、という失態。

今回は短いです。


音竜(うたひめ)、散る

雨の降る音で目を覚ました。

 

 

「・・・ここは・・・?」

 

 

彼女は辺りを見回す。見覚えのある場所だった。確か、マグノリアにある墓地だったはず。

 

 

「私は・・・」

 

 

彼女は自分の格好を見た。いつも通り、鎧で身を包んでいる。だが、その鎧はビショビショに濡れていた。

 

 

自分は外で、立ったまま寝ていたのだろうか。なぜこんなところで。確か自分は・・・。

 

 

彼女は緋色の髪を払ってもっとよく探ってみた。

 

 

すると。

 

 

 

向こうの方に多くの反応があった。

 

 

「あれは・・・・!」

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)のギルドのみんなだ。ナツやルーシィ達もいる。ということは・・・

 

 

「そうか・・・!みんな無事だったんだな・・・!」

 

それに自分も生きているらしい。全員生還が叶ったのだ。

 

 

彼女・・・・エルザはみんなの方に走り出した。

 

 

 

 

「みんな・・・!」

 

エルザがそこに着くと、何人かがこちらをチラッと見た。

 

「・・・?」

 

しかし、何故みんな黒い服など着ているのだろう。そんな喪服みたいに・・・。

それにそんな痛ましそうな表情で見てくるのは何故・・・?

 

エルザはハッと気付いた。

 

 

全員ある墓の前で悲痛な表情をしている、ということを。

 

 

頭が痛い。  

 

       何か忘れている気が。

 

 ダメだ。

 

         思い出すな。

 

 

  私の

 

 

    死んで

 

 

 

ズキズキとする頭を押さえながら墓を見る。

 

 

 

 

 

『アミク・ミュージオン ここに眠る』

 

墓石に書かれていた言葉だった。

 

「ああ、あああああ、あああああああああああ!!!!」

 

 

 

全てを思い出した。

 

 

アミクは    

 

       自分の身代わりに

 

 

  エーテリオンと融合して

 

 

 

 

 

  死んだ

 

 

 

 

「エルザ・・・」

 

 

ミラがそっと抱きしめてくるがそんなの気にならない。

 

ただ、呆然と墓を見ていた。

 

 

 

「彼女、アミク・ミュージオンは神に愛され、神を愛し、そして我々友人を愛しておった。その心は悠久なる空より広く、その歌声は愛する者の心に染み込み、その言葉は人々を諭し、慰めた。

 ワシは彼女を・・・本当の・・・家族のように・・・思って・・・・」

 

マカロフが堪えきれずに鼻水と涙を流す。

 

 

「彼女の・・・眠りが・・・安らかなることを、祈る・・・」

 

 

そこまでマカロフが言った時。

 

 

一人の人物がアミクの墓の前に置いてあった花束を蹴った。それだけに止まらず、灰も残らせずに燃やしてしまう。

 

「何やってんだよお前ら!!アミクが死ぬわけねぇだろ!!こんな墓作りやがって!!」

 

ナツはそう吠えると墓を壊そうと拳を握る。

 

それを他のメンバーたちが取り押さえて止めた。

 

「離せよ!!ふざけんな!!アミクは死んでねぇ!!!死んでねぇんだァァァァァァ!!!!」

 

ナツの絶叫にルーシィも絶叫で返した。

 

「もう、やめて、ナツ・・・現実を見なさいよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

それから、ルーシィは膝をつく。

 

「ねぇ、あたし・・・一人で家賃10万も払えないわよ・・・また、一緒に住んでよ・・・一緒に仕事行こうよ・・・なんで・・・死んじゃったのよぉぉぉ!!!」

 

ルーシィが嘆願しているの中。

 

 

マーチは墓の前から一歩も動かず俯いている。

 

ハッピーはそんなマーチの隣で彼女の手を掴んで泣いていた。

 

「うぅ、うえっく、アミクぅぅぅ・・・」

 

「・・・」

 

マーチの表情は窺えない。ただ、強く握られている拳が、彼女の気持ちの全てを物語っているように見えた。

 

 

 

「・・・どこに、行っちゃった、の?」

 

ポツリ、と一言だけマーチは呟いた。

 

ルーシィの後ろではアミクに貰った氷を握りしめながら、グレイが静かに泣いていた。

 

 

グレイだけではない。レビィもミラもエルフマンも皆アミクの死を悼んでいる。

 

 

みんなから離れたところではラクサスがいるのも見えた。

 

仲間のことなどどうでもいいと思っている奴かと思っていたが。まぁ、元々アミクに対しては弱い所があったので少しは気にかけていたのだろう。

 

ただ、表情は遠すぎてよく分からない。怒っているのかもしれない。案外泣いているのかもしれない。

 

 

エルザは現実逃避気味にそんなことを考えていた。

 

 

その場にはいつものギルドの雰囲気などない。あるのは悲しみと嘆きだけだった。

 

 

みんなの笑顔のために命を捨てようとしたのに、残されたのはアミクの死と誰も笑わないギルド。

 

リサーナが亡くなった時と同じような空気が生まれてしまった。

 

 

こんな・・・はずでは・・・

 

 

どこで間違えてしまったのか。何が悪かったのか。

 

誰のせいか。

 

 

私のせいだ。

 

 

私の代わりに、彼女が。

 

私のせいだ。 私のせいだ。

 

 

自分さえいなければ。

 

 

 

 

私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ私のせいだ。私のせいだ。

私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ私のせいだ。私のせいだ。

私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ私のせいだ。私のせいだ。

私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ私のせいだ。私のせいだ。

私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ私のせいだ。私のせいだ。

 

 

私は、大切な仲間と家族を死なせてしまった。

 

 

 

 

「ははは・・・・ハハハハハ・・・!!」

 

 

もうダメだこんなことになるならいっそのこと最初から死んでいればなぜこうして生きているもう意味がないのに誰も守れずにのうのうと

 

 

 

「―――――――楽園の塔の件と今までの功績により空いた聖十大魔道の二席をそれぞれエルザ・スカーレットに授与、アミク・ミュージオンには永久授与することに決定した」

 

 

いつの間にか評議会の役員達が来ていた。そして、自分に聖十大魔道に任命するという。

 

 

 

 

 

「―――――そんなもの必要ない!!!」

 

エルザが叫ぶと、ヤジマ以外は驚いたような顔をする。

 

エルザはそんなのどうでもよかった。

 

ただ、仲間さえいてくれればそれで十分だったのに。

 

 

右目が義眼になってから、そこから涙が出なくなった。

 

 

それは今も変わらない。悲しくて悲しくて胸が張り裂けそうなのに、右目から涙が出てこない。

 

なぜかそれすら悲しかった。

 

 

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)が悲しみに暮れ、誰も幸せになれない、そんな結末がそこにはあった。

 

 

 

 

 

 

そして、そんな皆の様子を幽霊のようになって漂っているアミクは見下ろしていた。

 

誰も自分のことが見えないようだ。

 

「私・・・本当に死んじゃったんだ・・・」

 

 

自分の死を皆こんなに悲しんでくれている。ラクサスまで葬式に来てくれたのは正直嬉しいやら悲しいやらだ。

 

 

「ごめんね、皆・・・ほんとに・・・」

 

アミクは顔を手で覆う。目に触れると水滴が付いてきた。

 

幽霊にも涙などあるのだろうか。

 

―――もっと、皆と過ごしたかった――――

 

 

―――オーディオンとも会ってないのに――――

 

 

――――死にたくなかった――――

 

 

後悔と未練が次々と湧きおこる。

 

 

罪悪感も胸を締め付けてきた。

 

マーチに一人にするな、と言いながら自分の方が先に逝ってしまった。

 

 

不義理な奴だ、自分は。

 

 

(ああ・・会いたい・・・皆に会いたいよ・・・!)

 

 

終わってしまった自分の人生を嘆き、二度と交わることのできない妖精の尻尾(フェアリーテイル)を見て、孤独感が突き上がる。

 

 

――――嫌だよ・・・!嫌、だ!誰か私に気付いて・・・!一人にしないで・・・!!

 

 

アミクがナツ達に手を伸ばした、その時。

 

 

―――――アミク――――――

 

 

 

 

誰かが自分を呼ぶ声が聞こえた。聞き覚えのある声だ。

 

 

 

(この、声は・・・)

 

アミクは周りを見回すが声を発した人物はいない。

 

 

 

―――――オレに、償いをさせてくれ―――――

 

 

また、聴こえた。

 

 

(貴方は―――――やっぱり―――――)

 

 

―――――オレを解き放ってくれてありがとう、アミク―――――――

 

その言葉を最後に―――――光が溢れた。

 

 

 

 

 

 

「エルザ―――――!!」

 

 

「アミク――――――!!」

 

 

「ナツ―――――!!みんな無事か――――!!」

 

 

アミクは薄らと目を開けた。ルーシィ達が自分を呼ぶ声がする。

 

 

(いき、てる・・・?)

 

記憶もはっきりしている。なんとか、一命取りとめた、というところだろうか。

 

よかった。

 

アミクは深く安堵した。

 

波の音が聴こえていることから、自分達は今浜辺にいるようだ。

 

 

 

 

―――しかし、なんか誰かに抱っこされてるような気がする。

 

 

気がするも何もなかった。ナツがアミクを横抱きに抱えていた。ナツの肩にはエルザがよりかかっている。エルザも無事だったらしい。

 

 

――――もしかして、あの魔力の渦の中で私を見つけたの!?

 

 

流石ナツだと言うべきか。仲間のためならば不可能なことさえも可能にしてしまう。それがナツだ。

 

 

「・・・アミク・・・よかった・・・!!」

 

エルザがアミクに気付くと、涙を流しながらアミクを抱き寄せる。

 

アミクの存在を確かめるかのようにぎゅっとする。

 

 

(あれは・・・一つの可能性だったのか・・・)

 

先ほど見た『アミクが死んだ世界』。なぜあんなのを見たのかは分からない。

 

(あるいは・・・私への戒めだったのかもな)

 

アミクとエルザはまだ知らないが、二人共同時に同じものを見ている。だから、恐らくただの夢ではない。エルザの言う通り可能性の一つを見せられたのかもしれない。

 

 

 

「ナ、ツ・・・」

 

 

アミクがナツの名を呼ぶと、彼は絞り出すように言った。

 

 

「俺達だって同じだ・・・。仲間がいない妖精の尻尾(フェアリーテイル)だなんて考えられねぇ。だから、エルザ!もう二度とこんなことするな!!」

 

エルザはそれを聞いてフニャっと笑うとさらに涙を溢れさせた。

 

 

「アミク・・・いぎでて、よ”がった・・・!!」

 

今度はアミクに話しかけるが、嗚咽で聞き取りづらい。

アミクはクスリ、と笑ってナツの頰に触れた。目尻に水滴を煌かせながら。

 

 

「ごめんね、ナツ・・・ありがとう」

 

 

怖かっただろう。仲間を目の前で失いそうになって。その中でもアミクを救おうと動けるナツは凄い。しかし、ここまで泣いてくれるとは自分は結構愛されていたと自惚れてもいいだろうか。

 

涙を流すナツの力強い腕を感じながらアミクはナツから降りる。本当に生きててよかった。これからもみんなと一緒にいられる。

 

神に感謝したいほどだった。

 

 

 

 

「アミクゥゥゥゥゥゥ!!!うわァァァァァァん!!!」

 

「アミクー!エルザー!よかったァァァ!!!」

 

 

マーチがアミクの方に飛び込んできて、胸に顔を埋める。

 

ルーシィもアミクとエルザを二人一緒に抱きしめた。

 

 

 

 

アミクは向こうからやってくる他の仲間達を見て、マーチとルーシィの体温を感じながら自分は生きていることを実感した。

 

 

 

そして、心の中で一人の人物に感謝するのだった。

 

 

 

 

(ありがとう・・・ジェラール)

 

 

 

 

こうして、アミクもエルザも無事生還することができた。

 




次が楽園の塔編最後です。


そのあとちょっと閑話挟んだ後、BOF編です。
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