妖精の尻尾の音竜   作:ハーフィ

42 / 202
今回からBOFに入る前の話です。BOFに繋げるための話でもある。


新しいギルドの前奏曲
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「いやー、色々あったねー」

 

ギルドへの帰還中、アミクはルーシィ達の後ろを歩きながら1人ごちる。

 

 

『・・・そうだな。色々ありすぎたよ』

 

それに返答するのはグレイの胸に掛けられているネックレス。そこに付着している氷であるウルだ。

 

 

『・・・私がこうして生きているのはウルのおかげでもあるよ』

 

『それはもういいって言っただろ』

 

 

アミクの言葉にウルがめんどくさそうに返した。

 

 

 

実はやっとウルと喋れたのは今朝なのだ。

 

それまではどんなに話しかけてもうんともすんとも言わなかったウルだが、今朝になって『無事だったか・・・』とか今更な言葉を言い放ってきたのだ。

 

それで問い詰めてみると、最初は誤魔化そうとしたがアミクがあんまりにも粘るので観念して話してくれたのだ。

 

曰く。

 

 

「まさか楽園の塔に『絶対氷結(アイスドシェル)』を使うだなんてねぇ・・・」

 

アミクの言う通り、ウルはあの時、自分の魔力を使って『絶対氷結(アイスドシェル)』を放ったと言う。

自分の魔力は『絶対氷結(アイスドシェル)』の魔力なのでそのまま使って楽園の塔を凍らせて封印しようとしたらしいのだ。

 

魔力が少なすぎたため一瞬しか『絶対氷結(アイスドシェル)』を維持できずすぐに解けてしまったのだが、その一瞬でアミクのエーテリオンとの融合化が遅れ、代わりにジェラールが融合した、というわけだ。

 

絶対氷結(アイスドシェル)』は術者を氷に変える魔法だが、元々氷のウルには関係ない。

それのせいなのかどうなのかは分からないが、自分を氷に変えずに対象を凍らすことができた。

 

それをした後、ウルの魔力がすっからかんになってしまった。それでウルはしばらくの間、休止状態、つまり眠っているような状態となったわけだ。

 

『一か八かだったけど上手くいって良かった』

 

『私っていろんな人に助けられてたんだな・・・』

 

『ま、アミクには恩もあるしね』

 

ちなみにあのまま封印しようとしたら魔水晶(ラクリマ)の中に居たアミクまで封印されていた可能性もあったことは言及しない。

何事も結果オーライなのだ。

 

 

 

ウルと会話しながら歩いているととうとう目的地に到着する。

 

 

一行は目の前にそびえるものを見て口をポカンと開けていた。

 

 

「こ、これは・・・!」

 

「うわぁ!!」

 

「おおっ」

 

「驚いたな・・・」

 

「ほへー」

 

『これは大分・・・』

 

それぞれ感想を口に出しながらそれを見る。

 

「完成したんだ・・・」

 

アミクは感慨深そうに呟いた。自分達が遊びに行っている間に完成してしまったのだ。

 

 

「新しい妖精の尻尾(フェアリーテイル)!!」

 

 

そこには立派になった妖精の尻尾(フェアリーテイル)のギルドがあった。

 

 

早速門の中に入ってみるアミク達。ナツはさっきからポケーっとしているが、前と違いすぎて頭が追いついていないらしい。

 

「オープンカフェもある、の」

 

外で開放的に飲んだり食べたりできるようになったのはいい考えだと思う。スペースを確保できるうえ、天気が良ければピクニック気分で飲食可能だろう。

 

 

「入口にはグッズショップまで!?」

 

「いらっしゃい!つーかオマエらか。おかえり~」

 

売り子は砂の魔法を使うマックスがやっていた。

入口に店を置いたのは一般人でも気軽に買いに来られるようにしたのだろう。

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)特製Tシャツにリストバンド、マグカップにタオル、オリジナル魔水晶(ラクリマ)も取り扱ってるよ」

 

「へー」

 

「ついでにアミクの歌が収録されている再生用魔水晶(ラクリマ)も売ってるぜ」

 

「なにそれ!?」

 

感心したように見るアミクの眼前に『アミクソング』と書かれた魔水晶(ラクリマ)が差し出された。

 

アレか、前に「この魔水晶(ラクリマ)に向かって歌ってよ~」とか言ってたヤツか。まさか商売を見越して?抜かりない。

 

「中でも一番人気はこの魔導士フィギュア1体3000J」

 

「いつの間にこんな商売を・・・」

 

実在人物のフィギュアなど良く造れたものである。

 

「うわー、凄い!私のもある!けど恥ずかしい・・・」

 

アミクが自分のフィギュアを手に取った。

 

「ちなみにそれ、ツインテールが勝手に動くぞ」

 

「呪いの人形!?」

 

見ると確かにツインテールがニョキニョキ動いていた。キモイ。

 

「うん、よくできてる、の」

 

マーチもやってきてアミクのフィギュアに触ると・・・

 

パカーン

 

「あ」

 

アミクのフィギュアの着ていた服が脱げた。下着残して。

 

「もちろんキャストオフも可能」

 

「キャ―――――!!!?」

 

アミクが顔を真っ赤にしながらテンパってフィギュアをナツに投げつけた。

 

「ぐえっ、なにすんだよ!」

 

「うわーん!」

 

涙目になってフィギュアを拾いに行くアミク。ツインテールがぐるぐる回っていた。

 

「・・・」

 

ルーシィはそっと自分のフィギュアを押さえた。服が脱げないように。

 

『私は・・・グレイのフィギュアについてるネックレスの氷。コレが私か。小さいな』

 

細部まで作られているお陰で一応、グレイのフィギュアの付属品っぽく、氷のウルも作られていた。だ

 

ともかく、この店は妖精の尻尾(フェアリーテイル)の知名度を利用した儲けが沢山出そうだった。

 

 

一行はいよいよ、ギルドの中に入った。

 

 

「うわーなんか前より広くなったような気がする!!」

 

アミクがギルド内を見回しながら言う。

 

「・・・ていうかウェイトレスの制服がエロい事に・・・」

 

絶対マカロフの趣味だと思う。

 

 

 

 

 

 

そこに居たカナの説明によると地下には娯楽設備、酒場の奥にはプールといったものが設置されたと言う。

 

「プールも!?ホントにギルドなんだよねココ?」

 

更にはS級魔導士でなくとも2階に上がれるようになったらしい。ただ、S級クエストを受けるにはS級魔導士を同行させなければならないらしいが。

 

 

「前と違う・・・」

 

「前の方が良かったの?」

 

ナツが居心地悪そうに言うので聞いてみると「うーん」と首を傾けられた。

 

 

「なーんか前の方がしっくりくるんだよなー」

 

「確かにずっと前の時のままで過ごしてきたしね・・・。でも、カナみたいな古参組も馴染んでるようだしそのうち慣れるんじゃない?」

 

そう言うとナツは「それもそっか!」と納得したように頷いた。

 

 

 

「帰ってきたか、バカたれ共」

 

「あ」

 

アミク達が新しくなったギルドに感嘆しているとマカロフが歩いて来る。その隣には・・・

 

 

「新メンバーのジュビアじゃ。かーわええじゃろォ」

 

「よろしくお願いします」

 

楽園の塔でお世話になったジュビアがジュビーンといた。

 

「ははっ!!本当に入っちまうとはな!!」

 

「ジュビア・・・アカネでは世話になったな」

 

「およ?知り合いか!?」

 

すでに知り合っているとは思わなかったのかマカロフは少し驚いている。

 

「みなさんのおかげです!ジュビアは頑張ります!」

 

ジュビアはそう言うとアミクとルーシィに視線を向け、

 

 

「恋敵・・・」

 

「違いましゅ・・・」

 

アミクががっくり項垂れながら否定した。

 

 

「ならば知っとると思うが、こやつは元々ファントムの・・・」

 

「ええ・・・心配には及びません。今は仲間です」

 

マカロフがエルザに耳打ちするが、それに関しては問題ない。

 

マカロフは嬉しそうに笑った。

 

「ほーかほーか、ま・・・仲良く頼むわい」

 

「もちろん!」

 

アミクが元気よく返事をしてジュビアを見ると彼女も嬉しそうに笑い返してきた・・・・アミクがグレイの近くにいるのを見てめっちゃ睨んできたが。怖い。

 

「そ、それにしても、ジュビア随分前と雰囲気変わったね」

 

アミクが冷や汗を流しながらもジュビアの格好について言及した。

今、ジュビアが着ているのは全体的に白くて明るい服で、髪もストレートのショートになっている。

 

前の髪の毛先がカールして、暗い色のコートを着用していた時に比べ、明るくなっているので親しみやすくなったように見える。

 

「えへへ、イメチェンです!」

 

「へー、似合ってんじゃん」

 

グレイがそう言うとジュビアはパァァァァと顔を輝かせた。

 

 

「あぁ・・・もうジュビア、このままとろけてしまそう・・・」

 

「ホントにとろけないでよ!?」

 

ジュビアの体は水な為、とろけちゃうと水浸しになってしまう。

 

 

 

「そうじゃ、もう1人の新メンバーも紹介しとこうかの。ホレ!挨拶せんか」

 

マカロフがそう言ってある人物に目を向けた。

 

釣られてアミク達もそっちを見る。

 

 

「え!?」

 

「オ、オイ嘘だろ!?」

 

その人物はアミクたちにとって物凄く見覚えのある人物だった。

 

「ま、まさか・・・」

 

『アイツはあの時の・・・』

 

黒髪にガジ、ガジ、という咀嚼音。アレは―――――

 

 

「ガジル!!?」

 

 

元・幽鬼の支配者(ファントムロード)のメンバー、『鉄竜(くろがね)』のガジルこと、ガジル・レッドフォックスであった。

 

 

「マスター!こりゃあ一体どういう事だよ!!」

 

「待って!ジュビアが紹介したんです」

 

マカロフに詰め寄るグレイをジュビアが慌てて止める。

 

 

「ジュビアはともかくコイツはギルドを破壊した張本人だ」

 

 

「フン」

 

 

厳しく言ったエルザの言葉にガジルは鼻を鳴らした。

 

「まぁまぁ、あん時はこやつもジョゼの命令で仕方なくやった事じゃ。昨日の敵は今日の友ってゆーじゃろーが」

 

マカロフも弁護するがウェイトレスのお尻を見ながら言っていたので説得力がない。それに、いくら命令でもあの時のガジルが『仕方なく』やったとは思えないが・・・。

 

 

「うん・・・私も全然気にしてないよ」

 

「レビィちゃん」

 

レビィがおどおど震えながら言っているところを見ると、苦手意識はまだ持っているらしい。

 

それよりも、アミクはジェットとドロイのガジルを見る目の方が気になった。どう見ても友好的な目つきじゃない。

 

(ちょっと・・・注意しておいた方がいいかも)

 

とりあえずそのことを心に留めておく。

 

 

「冗談じゃねぇ!!こんな奴と――――」

 

 

「――――歓迎するよ、ガジガジ!!」

 

ナツが文句を言おうとガジルに歩み寄っているところに、アミクが割り込んだ。

 

 

「―――チッ、悪ぃが慣れ合うつもりはねえ」

 

「まぁまぁ、そう言わずにがっちゃん!妖精の尻尾(ここ)は楽しいよ?」

 

「知るか。あと、呼び方統一しろ」

 

笑顔で絡むアミクをガジルが嫌そうな顔でいなす。

 

それを呆れたような顔で見るグレイたち。

 

 

「アイツの心の広さには毎回驚かされるぜ」

 

「ホントにね。あっさり心を開くなんて・・・」

 

「あそこまで警戒心がないと逆に心配になってくるな・・・」

 

「しょーがねーよ。アミクはバカだからよー」

 

「バカだねー」

 

「バカ、なの」

 

『・・・プッ、バカだって・・・』

 

「聴こえてますよキミタチ!!?」

 

ナツには絶対に言われたくなかった。

 

 

「ガジルだって根はいい人なんだから!!・・・多分」

 

「そこは断言しろよ」

 

「それに、おじいちゃんが大丈夫だって言うなら大丈夫でしょ」

 

「うむ、道を間違えた若者を正しき道に導くのもまた老兵の役目」

 

2人の言葉を聞いてエルザ達はマカロフとアミクの人を見る目を信じることにした。

だが、そこにエルザが釘をさす。

 

「とはいえ、しばらくは奴を監視してた方がいいと思いますよ」

 

「はい」

 

 

 

「ほら皆、座りなよ。そろそろメインイベントよ」

 

カナがアミクの背を押して1つのテーブルへと向かわせた。その時、辺りが暗くなる。

 

「わっ、なに?何が始まるの?」

 

アミクは耳を澄ませながらキョロキョロと見回した。良く見ると向こう側にカーテンが閉められたステージがあるのが見える。

 

そのカーテンが一気にサァァァ、と引かれた。

 

 

すると―――――

 

 

そこにはギターを持ったミラが居た。

 

 

「ミラさんだ!」

 

「待ってたぞ―――!!ミラ―――!!」

 

「ミラちゃーん!!」

 

「ミラジェーン!!」

 

 

あちこちでミラコールが沸き起こる。

 

 

ミラは息を吸い込むと―――――歌い始めた。

 

 

『あなたの居ない机を撫でて・・・』

 

 

アミクにも勝るとも劣らない美声だ。穏やかなギターの旋律(メロディ)と共に歌が紡がれてゆく。

 

 

「いい歌~」

 

「そうだよね・・・・ん!やっぱり美味しい!」

 

「おい、アミクあんまり食うなよ聴こえねぇだろ!」

 

歌を一気に食べすぎたのか歌が聞こえづらいようで、後ろの人達に文句を言われてしまった。

 

それにしても良い歌だと味も美味だ。

 

 

『待ってる人~が~居るから~♪』

 

ミラが歌い終わるとギルドのメンバー達が沸き上がった。

 

 

「ミラちゃーん!!!」

 

 

「最高――――!!!」

 

「いいぞ―――!!!」

 

 

オオオオオオオ、と盛り上がるメンバー達。

 

アミクはとりあえず、その騒音を食べることにした。

 

 

「痛え――――!!!」

 

その時、ナツが悲鳴を上げる。思わず見ると、ガジルがナツの足を踏みつけたみたいだった。

 

「ギヒ」

 

「何すんだテメェ!!わざと足踏んだろォ!!!」

 

「ア?」

 

ナツが怒って机に足を乗っけた。汚い。

 

 

「コラ、ナツ。汚いよ」

 

「え?あ、お、おう」

 

アミクはナツの足を掴んでそっと床に下ろした。それから、近くにあったお絞りで机を拭く。そうしている間に「ミラちゃんの歌の最中だろ!」と他のメンバーから投げられたコップがナツとガジル、アミクに命中する。

 

 

「痛!私、完全にとばっちりなんですけど!!?」

 

「物投げたの誰だコラァ!!!」

 

「ナツもテーブルひっくり返さない!!ちゃぶ台じゃないんだから!!」

 

ナツがひっくり返しそうになったテーブルを抑えつけながら諌めた。そこに、グレイが立ち上がりナツに噛みつく。

 

 

「ナツ!テメェ暴れんじゃねえ!!」

 

だが、立ち上がった拍子にエルザに肘をぶつけてしまい、エルザの持っていたケーキが床に落ちた。

 

 

『あ、グレイ。ご愁傷様』

 

ウルはそれを見て、無い手を合わせる。

 

「私の・・・いちごケーキ・・・」

 

「テメェら!!漢なら姉ちゃんの歌聴きやがれっ!!」

 

「やかましいっ!!!」

 

 

エルザがエルフマンの顎を思い切り蹴飛ばした。ケンカ止める側が暴れているのではどうしようもない。

 

 

「あー、もう!皆もう少し大人しくできないのー!?」

 

アミクが涙目で叫ぶ。普段ならいいが、今はせっかくミラが歌っているのだ。静かにしてもらいたい。

 

 

その時。

 

 

「あ・・・」

 

 

テーブルからついさっきアミクが持って来たブロッコリーが落ちた。

 

 

「ブロッコリーがぁ!!」

 

アミクが咄嗟に手を伸ばすと―――――

 

 

 

 

 

グシャ

 

 

 

 

 

無慈悲にも誰かに踏みつぶされた。あとに残ったのは床のシミと化した緑色だった。

 

 

 

アミクは真っ白になる。開いた口がふさがらない。

 

 

 

 

そして――――――

 

 

 

 

 

「おんどれキサマラぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

アミクの大音量の声にギルド中が一瞬シーンとなった。

 

全員がアミクを見る。

 

彼女の体からは謎のオーラが出ており、ツインテールがウネウネと蠢いていた。

 

「あ・・・」

 

 

「やべぇぞこりゃあ・・・」

 

 

「だ、だれだよアミクマジギレさせたヤツ!?」

 

 

そして皆一斉に慌てだした。ナツやグレイも抱き合って震えだす。あのエルザでさえ、冷や汗を流した。

 

 

「少しまずいな・・・」

 

 

「え?え?アミクどうしちゃったの!?」

 

よく分かっていないルーシィにマーチがそっと教える。

 

 

「・・・普段は温厚なアミクがマジギレした、の・・・これは、『狂演者(バーサーク)』の再来、なの」

 

「何その物騒なの!?」

 

 

「ああなったらなかなか手がつけられない、の。すぐに正気に戻るのが唯一の救い、なの・・・」

 

「一体何が起こるってのよー!?」

 

ルーシィが頭を押さえた。何が起こるか分からない恐怖ほど怖いものはない。

 

 

「簡単な話―――――」

 

そう言ってマーチは耳を押さえた。

 

 

「うがああああああああああああああ!!!!!!」

 

 

怪物の咆哮かと思うような大絶叫がか弱そうな少女の口から放たれる。

 

 

あまりの大音量に近くに居た者達は吹っ飛び、窓ガラスは割れ、床が剥がれた。耳を押えてフラフラしている者も居る。

 

かくいうルーシィ達も鼓膜が破れそうなほどの声量に頭がおかしくなりそうだ。

 

 

「ご、轟音と共に暴れる猛獣となる、の・・・」

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)には不文律みたいなものが存在する。

 

その中でも特にデンジャラスな不文律で「アミクをキレさせてはならない」といったものがあるのだ。

もしもそれを破った時は―――――

 

 

 

マーチが目を回しながら説明した途端―――――アミクはそのまま人の群れに突っ込んで行った。

 

 

「我に昇天されたい者は出てこおおおおおおおおおい!!!」

 

 

人ごみの中心で暴れ出すアミク。何人もの人が塵のようにぶっ飛ばされた。

 

こうなったアミクは煩いし、とにかく暴れる。普段のアミクなどひとかけらも見えない。

 

「ぎゃああああああ!!!」

 

「『狂演者(バーサーク)』モードのアミクだ――――!!!」

 

「誰かアミクを抑えろ―――――!!!」

 

 

悲鳴を上げて逃げまどう者達。だが、逆にアミクに挑んでいく勇者も居た。

 

 

「アミク――――!!勝負だ――――!!」

 

 

ナツだ。ナツがアミクに飛びかかって―――――

 

 

 

「ぶろっこりぃ!!!」

 

 

「ぐえっぷ!!?」

 

あっさり殴り飛ばされた。

 

 

ナツはそのままグレイを押しつぶしながら落下してしまう。

 

 

「チクショー!アイツよくもやりやがったなー!」

 

「テメェ!オレの上に乗るんじゃねぇ!!」

 

「んだコラァ!!」

 

 

また、ナツとグレイのケンカが没発してしまった。

 

 

それに感化されたのか周りでもケンカが再び起こり始めて、喧騒が大きくなる。

 

 

こうしてエルザやアミクも交えてしまった大喧嘩が起こってしまった。これでは本当に収拾がつかない。

 

 

 

「バラードなんか歌ってる場合じゃないわね」

 

ミラはそう言うと変身で服装を変えた。

 

 

「ロックで行くわよぉ!!」

 

 

パンクファッションになってギターを「ギャイイイイイン」と鳴らす。

 

それを見たギルドメンバーと一部はステージに上がって一緒に踊ったり楽器を演奏したりした。

 

 

 

とにかくあちこちで大騒ぎ。

 

ルーシィは頭を下げて避難しながら疲れたように言う。

 

 

「これじゃ前と全然変わらないじゃない・・・」

 

 

どんなに外装を変えても中身は変わらない、ということなのだろう。

 

いや、むしろ酷くなってるような気もする。アミクまでケンカに参加しているからか。

 

しかし―――――

 

 

 

「でも・・・こーゆー方が妖精の尻尾(フェアリーテイル)だよね」

 

ケンカしながらもその顔は笑っており、憎むような顔ではない。楽しげに談笑する者、ミラと一緒に踊る者、ケーキを食べる者。

 

様々な人間が自由にやりたいことをやる。

 

ルーシィはこういう空気が好きで妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入ったのだ。

 

 

「ルーシィ~・・・」

 

 

そこに正気に戻ったアミクがフラフラとやって来る。

 

「アミク!元に戻ったのね!」

 

「お恥ずかしい姿をお見せしました・・・」

 

アミクが項垂れたまま返事をする。

 

 

「あの状態は久しぶりだよ・・・」

 

 

ああなってる間はアミクも記憶があまり残らない。ただ、なんかやらかした、という感覚は残る。

 

 

「でも、アミクとエルザがどっちもケンカするのは初めて見るわ。どうなることかと・・・」

 

もしも、アレ以上エスカレートしていたら、せっかく立て直したギルドがまた壊れてしまう。

 

 

 

 

「でも、ルーシィの言葉には賛成だよ。この方がずっと、妖精の尻尾(フェアリーテイル)っぽい」

 

アミクがいつの間に持ってきたのか卵とブロッコリーをついばみながら言った。

 

 

「私が――――私達が大好きな妖精の尻尾(フェアリーテイル)はこれでいいんだ」

 

 

アミクが嬉しそうに言った言葉にルーシィも笑顔で頷き返した。

 

 

 

 

 

「な、なぜあと1日我慢できんのじゃ・・・クソガキ共・・・」

 

 

その時、マカロフがプルプル震えながら言葉を発する。

 

 

そして―――――

 

 

「明日は取材で記者が来る日なのにぃ!!?」

 

泣き始めた。

 

「取材!?」

 

「あー、なるほどー。ショップやウェイトレス、ステージはそのためだったのか・・・」

 

見栄えを良くするための努力というわけだ。

 

「でも、皆暴れちゃって壊しちゃうんだから!全くもう!」

 

 

アミクがプンプンしながら言うとマカロフが叫んだ。

 

「貴様もじゃぁぁぁぁ!!!いや、窓ガラス割ったり、貴様の叫び声のせいで周りの住民から「うるさい」って苦情が来てる分、もっと酷いぞ!」

 

「ごめんなさーい!!」

 

アミクは涙目で謝った。心なしかツインテールもシュンとなっている気がする。

 

 

 

「はぁ・・・とにかく、片付けるの手伝ってくれ・・・」

 

 

「はい・・・」

 

 

なんだかんだ言ってアミクも妖精の尻尾(フェアリーテイル)の一員である事を実感するルーシィであった。

 

 

 

 

 

 




何気に連載開始してから一カ月以上経ちました。


ここまで来れたのは読者の皆さんのおかげです。

特にお気に入りとか感想とかメッセージ、誤字報告などきたら嬉しいです。


これからもよろしくお願いします!

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