妖精の尻尾の音竜   作:ハーフィ

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BOF編はサクッと終わらせたいな。できればだけど。


収穫祭

ちょっとした騒動の後、アミクはルーシィ、マーチと共に家に帰っていた。ついでにプルーも。

 

「あーあ、いい仕事見つからなかったなー」

 

「まぁ、毎日同じ依頼しかないってわけでもないからその内いいの見つかるよ」

 

「そうだといいけどね・・・そういえばさっきはどこ行ってたの?」

 

「公園。ちょっと気になったことがあって・・・」

 

あまりルーシィには余計な心配は掛けたくないので曖昧に誤魔化した。

 

川沿いをルーシィと二人で歩く。ギリギリの所を歩いていたので船を漕いでいたおじさんたちに心配されてしまった。

 

「じょーちゃんたち危ねーぞ」

 

「つーかあの子たち本に載ってなかった?」

 

雑誌、読んでくれてありがとうござまーす。

 

アミクが心の中で感謝を述べてるとき、マーチがルーシィが持ってるマフラーに気付いた。

 

「それ、ナツのマフラー、なの?」

 

「あ、あの時の・・・」

 

「ちょっと貸して」

 

アミクはルーシィからマフラーを受け取るとそれをジーと見た。

 

「・・・よく見たら結構汚れてる。せっかくだから洗濯でもしてあげよ」

 

「いーわね、それ。あたしいい洗剤持ってるから貸してあげる」

 

「プーン」

 

「え?「ルーシィってばやさしいっ!!」だって?」

 

「プーン?(汗)」

 

「いいのよ、分かってるから」

 

「多分分かってないこの人・・・」

 

 

 

アミクはプルーとルーシィの会話に呆れながら家のドアを開ける。

 

 

 

まず、ルーシィが中に入ってしたことは侵入者チェック。リビング、二階、自分の部屋、アミクの部屋。念のためお風呂。

 

 

「誰もいない・・・か」

 

「そこまで神経質になんなくてもいいと思うけど」

 

「それはあたしも思った・・・自分ん家なのに・・・」

 

 

「大体どんなに注意したっていつの間にか入りこまれてるんだから気にするだけ無駄だよ」

 

「そういう問題じゃなくて、そもそも!アミクは警戒心が足りないのよ!男ってのはいつ飢えた魔獣になってもおかしくないんだから!」

 

「ナツやグレイに限っちゃそんなことないと思うけど」

 

「ハッピーだってああ見えてもヘタレだから安心、なの」

 

「流石に不憫になってきたわ・・・」

 

 

何度も言うようだがこれは慣れなのだ、慣れ。

 

「そのうち逆に誰もいない時のほうが不安になってくるから」

 

 

「そうだったこの子すでに調教済みだった・・・」

 

 

 

ルーシィががっくり膝をついて項垂れた。

 

 

 

 

 

「アミク、あたしこれからお風呂入るけど、一緒にどう?」

 

「ホント!?いいよ!背中流してあげる」

 

ルーシィに提案にアミクは嬉しそうに答え、一旦自分の部屋に戻った。それから程なくしてマーチと共に風呂場に直行する。

 

 

風呂場にはすでにルーシィが入っているみたいだ。服が脱ぎ散らかっている。

アミクもマーチもすっぽーんと服を脱いだ。

 

「ってかハッピーってほとんど裸なんだからマーチもそんなに服着る必要ないんじゃない?」

 

「むーっ、これでも女の子、なの。裸なんてはしたない、の」

 

「ハッピーはしたない奴じゃん」

 

そんなことを言い合いながら風呂場に入ると―――――

 

 

「失礼しま――――――ってプルーが萎れてる―――――!!?」

 

「プゥーン・・・」

 

風呂に入ったプルーが空気の抜けた風船のようにしぼんでいたのだ。

 

「あぁ、なんかこの子ね、お湯に浸かるとしおれるみたい」

 

「なんで!?逆カップラーメン!?」

 

「かっぷらーめん・・・?」

 

一足先に風呂に入っていたルーシィがプルーを持ち上げる。

 

 

「でもこれはこれで可愛くない?」

 

「そ、そうかな・・・?」

 

 

アミクは苦笑いした。

 

 

 

 

 

髪と身体を洗って、アミクも風呂に入る。

 

 

「ふわあああああ、やっぱり気持ちぃぃよおおぉぉぉ」

 

 

トロン、ととろけた顔でお湯に浸かるアミク。そんなアミクに水を掻きながらルーシィが近づく。そして、アミクのふくよかな胸を突いた。

 

「なーんかまた大きくなったんじゃない?コレ」

 

 

「ふぁお!?ちょっと、それを言うならルーシィだって」

 

 

アミクもルーシィもどっこいどっこいの大きさなので眼福です。

 

 

「毎回思うけどこのお風呂広いわねー」

 

この家のお風呂はかなり大きく、二人入っても多少スペースが余るほどである。詰めれば5人はいけるかもしれない。

 

「そうなんだよー。だから一人で入ると広く感じてちょっと寂しかったんだよねー」

 

マーチは小さいので一緒に入っても大して変わらないのだ。

 

「よし!そろそろルーシィの背中流させて!」

 

「はいはい、どうぞ」

 

 

風呂から上がって急かすアミクに苦笑しながら彼女に背を向けた。

 

「・・・ん!上手いわね・・・」

 

「これには私のプライドも掛ってるんだよ!昔からナツやエルザ達に「背中流すの上手い」って褒められ続けてきたからね!」

 

「アミクはたまに変な所でプライド掛ける、の・・・」

 

 

 

 

アミクの職人技の如き手つきに感嘆した後、風呂場から出た。

 

 

「ってかプルー、いつまでしぼんでんの?」

 

「乾かせば治るんじゃないかしら?」

 

 

 

 

 

 

風呂場から出るとそろそろ寝る時間になってきた。アミク達は揃って歯を磨く。

 

 

「・・・ここだけの話、私の『装飾曲(アラベスク)』があれば風呂入ったり歯磨いたりしなくても清潔にできるんだよね」

 

「このタイミングで言う!?それに気分的にどーよソレ」

 

「あんまりやんないよ。やむを得ない時ぐらいだし」

 

とはいえ、この魔法は結構便利である。血まみれになっても一瞬で綺麗さっぱり。証拠隠滅も簡単。

 

 

 

二階に一緒に上がってそれぞれの部屋に向かう。

 

「じゃ、お休みー」

 

「お休みなさ~い・・・」

 

「お休み、なの」

 

 

アミクとマーチは欠伸をしながら部屋に入った。

 

「ふぁ~眠い・・・」

 

「アミク、まだ本調子じゃないし、今日はあんなこともあったから疲れてると思う、の・・・」

 

 

『あんなこと』。ラクサスの事だろう。

 

そういえば一応マカロフに言っておくべきだったかもしれない。

 

 

(それにしても・・・)

 

ラクサス――――いつにも増して様子がおかしかった。もしかしたら近いうちに何か仕掛けてくるかもしれない。

十分に用心せねば。

 

(ラクサス・・・)

 

昔からツンツンした雰囲気はあったが、最近は何かに耐えているような表情をすることも多くなっていた。

やはり、さっき本人が言っていたことと関係しているのだろうか。

 

いや、アミクはラクサスが歪んだ原因の一つを知っている。『ソレ』も含まれてるのかもしれない。

 

 

「―――もー!!せっかくもう少しで収穫祭なのに、悩みが大きすぎるよー!!」

 

ラクサスのことはどうにかしてあげたいが収穫祭も楽しみたい。しかし、こんな心境じゃ素直に楽しめるかどうか・・・。

 

 

「あー!やめやめ!!こーゆーときは寝て脳をリセットするに限る!」

 

「さっきからなにをブツブツと・・・」

 

マーチの呆れ声を聞きながらアミクはベッドに潜り込んだ。

 

 

「・・・・ん?」

 

 

何か違和感が。そーっと横に視線を向けてみた。

 

 

 

 

そこにはナツとハッピーが寝ていた。

 

 

 

アミクのベッドで!

 

 

「ひゃあ――――――――っ!!!」

 

 

 

ドタドタドタ!

 

 

アミクが悲鳴を上げた直後、廊下を走る音が聞こえてきたかと思うと――――

 

 

 

「どーしたの!?不審者!?変質者!?それともナツ!?」

 

「最後の方です!!」

 

ところで不審者と変質者の違いって・・・。

 

 

「ってナツ!?なんでこんなとこで寝てるのよ!?」

 

「ん・・・おはよ、アミク、ルーシィ」

 

アミク達が騒ぎたてたせいかナツが目を覚ました。

 

「なんかこういうの久々だからついびっくりしちゃったよ!」

 

「っていうかアンタら帰れ―――!!」

 

アミクとルーシィが言うとナツは、

 

 

「あ、やっぱだめだ」

 

 

ベッドに倒れ込んで寝た。

 

「・・・んーしょうがないな。このまま寝かしてあげよ」

 

「もー、そーゆーとこよ!そんな簡単に男に気を許しちゃいけないんだから!」

 

アミクが仕方なさそうにナツに布団を掛ける。

 

それを眠たげな目で見ながらハッピーがここに来た要件を告げた。

 

「ナツのマフラー返してもらおうと思って・・・」

 

「ああ、はいはいコレね」

 

アミクは洗濯して綺麗になったマフラーを渡した。

そこで、マフラーを見てふと思い出した事があった。

 

 

「そーいえばこのマフラー、イグニールから貰ったって言ってたよね」

 

「あい!」

 

「ふーん」

 

それからアミクは自分の右腕を持ち上げた。その手首には不思議な色のミサンガが通されている。

 

 

「かくいうコレもオーディオンが私にくれたものなんだよ!」

 

「へーどっちも、ドラゴンからの贈り物なのね」

 

「・・・うん」

 

 

そして、大事な母との絆の証でもある。

 

アミクはミサンガを優しげに包み込んだ。

 

 

 

「うーん・・・」

 

「ねえ、大丈夫なの?ナツ」

 

「あい」

 

 

ナツが苦しそうに寝ているのでルーシィが心配そうに尋ねた。

 

「それに、アミクも良くないんでしょ?」

 

「ちょっと、ね。まだ気持ち悪いかも・・・」

 

ナツよりはマシに見えるが、確かに少し顔色が悪い。

 

ハッピーが思い出すようにしみじみと言った。

 

「前にも何回かあったんだー」

 

「あぁ、あったね・・・私がナツの炎を、ナツが私の音を間違って食べちゃった時・・・あと、ナツがラクサスの雷を食べた時」

 

「自分の属性以外の魔法を食べちゃダメなのね。元々魔法は食べ物じゃないけど」

 

そこまで言ってルーシィはある疑問を持った。

 

「てかなんでラクサスの雷を?」

 

アミクとナツの場合は分かる。

 

二人はコンビなので、一緒に行動することが多い。その為、うっかり互いの属性を食べてしまった時があったのだろう。

 

「昔、ナツが勝負を挑んだ、の」

 

マーチがフワフワと飛んできて説明する。それにハッピーが続けた。

 

「もちろん瞬殺されたけど」

 

「そ、そんなに強いの?ラクサスって・・・」

 

ルーシィが怯えながら言う。ギルドの中でも屈指の強さを持つナツが瞬殺されるのだ。尋常じゃない強さなのだろう。

 

 

「オイラが思うにギルダーツ抜かしたらラクサスが一番強いんじゃないかな」

 

「ちなみにギルダーツってのはみんなが「オヤジ」って呼んでる人だよ」

 

途中でアミクが注釈を加えた。

 

 

「あ・・・でもエルザがいるしなー。ミストガンも強いって噂だし」

 

「ミラも昔は凄かった、の。魔人って呼ばれてた、の」

 

「ま、魔人!?あのミラさんが!?」

 

ルーシィは過去のミラジェーンを知らないから想像もできないだろう。

 

「ミラさん、昔はホントヤバかったなー。こう、不良少女みたいな感じでエルザといっつも喧嘩ばかりだったし」

 

「あのミラさんが!?それにエルザも喧嘩してたんだ・・・」

 

「そう・・・あのケンカ止めるの大変だったな・・・」

 

アミクが遠い目になった。その時の苦労が計り知れない。というかその頃すでに仲裁役だったようだ。

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強決定戦やったら誰が優勝するんだろ!?」

 

「あたしは身内同士で優劣つけるなんてやだなー。みんな『強い』でいいじゃない」

 

ルーシィの言葉も尤もであるが・・・人というものは何かで優劣を付けたがるものだ。

 

 

「グレイやエルフマンだって十分強いし・・・ガジルとジュビアは間違いなく強いよ」

 

「アミクだって負けてない、の」

 

ハッピーとマーチがワクワクした顔で話していると、ハッピーが思い出したように荷物から紙を取り出した。

 

 

「あ!二人にこれ渡そうと思ってたんだ」

 

「仕事?」

 

「・・・じゃないんだけど」

 

ハッピーが差し出した紙。それはーーーーー

 

「来週、この街の収穫祭だからね。妖精の尻尾(フェアリーテイル)もお祭りに参加するんだよ。右下の方を見て」

 

言われた通り、ルーシィは右下を見た。そこには、

 

 

「ミスフェアリーテイル!?」

 

「あい。妖精の尻尾(フェアリーテイル)の女のコたちの美人コンテストだよ。優勝したら50万Jもらえるんだ」

 

50万。結構な大金だ。

 

「家賃10ヶ月分!!そしてなんてあたし向き!!」

 

ルーシィにはビビビッときたようだ。

 

「ミラやカナだって出るけどアミクやルーシィだって負けてないよ」

 

「ミラさんも出るんだ。週ソラのグラビアやってる人が出ちゃ勝ち目薄くなっちゃわないかな」

 

魅力的な女性がいっぱいいる妖精の尻尾(フェアリーテイル)だが、ミラはその中でもトップを走る美女。勝負にならないとは言わないが、優勝するのは難しいのではなかろうか。

 

「で、でもあたしの方が若いし!フレッシュな魅力ってことで・・・」

 

「そんな刺身じゃないんだから・・・」

 

「いける!いけるわ!!50万J!!ミスフェアリーテイル絶対優勝してやるんだから!」

 

「さっき身内同士の優劣がどうとか言ってた人のセリフとは思えない」

 

「それはそれ、これはこれ、ってやつじゃない、の?」

 

アミクたちがジト目でルーシィを見るが、本人はどこ吹く風。

 

 

「・・・まぁ、頑張ってね、応援するから」

 

アミクがそう言うとルーシィはキョトンとした。

 

「何言ってんのよ。あんたも出るんでしょ?」

 

「あい。アミクにも出て欲しいからこれ渡したのに」

 

「えぇーーーー!出ないよそんなの!」

 

「いいからいいから。アミクなら優勝も夢じゃないわ!」

 

この人アホなの?自分からライバル増やした。

 

「お願い!一緒に出て!こういうの初めてだから心細いの!」

 

「・・・はぁ〜分かったよ・・・」

 

結局押しに弱いアミクが折れる形でミス・フェアリーテイルコンテストに参加することになってしまった。

 

 

「ハッピ〜ン お魚食べてく?」

 

「ワイロ、なの・・・」

 

お金のためならなんでもする。これが人間の業か・・・。

 

 

 

 

 

収穫祭当日。

 

 

 

「おおう・・・おう・・・祭だぁ・・・」

 

「こんなテンション低い盛り上がり方初めて見た・・・」

 

ナツが未だにフラ〜っとしながら歩く。アミクの方は大分良くなってきたが、ナツはそうでもないらしい。

 

「食えるモン片っ端から食うぞぉ・・・!」

 

「食うぞー!」

 

「なぜか『治癒歌(コラール)』も『状態異常無効歌(キャロル)』も効果薄いし。ほっとくしかないか・・・」

 

アミクがそう言うと、一緒にいたジュビアがキョロキョロしながら言った。

 

「それにしてもすごいんですね」

 

「この街にこんなに人がいたなんてねー」

 

ガヤガヤと喧騒が鳴り響く。街の住人も今日が収穫祭なので楽しみなのだろう。

 

そして、それだけではなく。

 

「ファンタジアを見るために他の街からも人が集まってるからな」

 

グレイがルーシィたちに説明する。

 

『ファンタジア?』

 

『大パレードの事だよ。私たちもそれに参加するんだ』

 

ウルにこっそり教えるアミク。ウルは収穫祭自体参加するのは初めてなのでぜひ、楽しんで欲しい。

 

 

「あ、参加といえば・・・」

 

もう少しでミス・フェアリーテイルコンテストじゃなかろうか。

 

「ルーシィ、行くよ!遅れちゃう!」

 

「わー待ってー!」

 

アミクとルーシィが駆け出して去って行くのを見ているジュビア。彼女は妙なオーラを出しながら言った。

 

 

「ジュビア、アミクとルーシィには負けられません」

 

「おまえも出るのか・・・」

 

『波乱の予感だ・・・』

 

 

 

 

『マグノリアの町民の皆さん!!および近隣の街の皆さん!!

 え?このイベントを見る為に死者の国から来たって人もいるの?終わったら墓に帰ってね』

 

マックスがジョークも交えて宣言する。

 

『お待たせいたしました!!我が妖精の尻尾(フェアリーテイル)の妖精たちによる美の競演!ミスフェアリーテイルコンテスト開演でーーーす!!!』

 

ギルド内は大盛り上がりを見せた。いよいよ待ちに待った催しが始まるのだ。大興奮である。

 

『司会はこのオレ、砂の魔導士マックスが務めます!!』

 

先程の人心を掴む話口調といい、テンポの良さといい、確かに適任だろう。

しかし、売り子もやっているのに司会まで務めるとは大変そうである。

 

 

さて、最初の一人が出て来た。本格的に始まるのだ。

 

『エントリーNo.1!異次元の胃袋を持つエキゾチックビューティ!

 カナ・アルベローナ!!』

 

 

 

 

 

 

 

「いよいよだね〜、あー緊張する!」

 

アミクはガチガチになりながら舞台裏で待機していた。

 

 

「アミクってこういうの慣れてそうなのに、そんなに緊張するの?」

 

近くにいたルーシィがアミクに尋ねる。

 

 

「そりゃあ大勢の前で歌うことはあるけどさ。歌ってるときは人の視線あんまり気にしないし。

 でも、こんな自分を見せるような催しはほとんどやらないし、それにあんな格好(・・・・・)、恥ずかしいよぉ・・・」

 

それに今回はギルドの者ばかりではなく外部からも来ているのだ。羞恥と緊張が割増である。

 

 

「大丈夫だって!それこそ、歌うときみたいに堂々としていればいいのよ」

 

「そうよ。歌ってる時のアミクはとてもキラキラしているわ。それを思い出して頑張ってみて?」

 

ルーシィだけでなくミラも励ましてくれたので、ちょっと気分が楽になった。

 

「・・・善処します」

 

そこで、エルザが腕を組んで不敵に言う。

 

「やる気になったところで悪いが、今は私たちはライバルだ。手を抜くつもりはない」

 

 

 

「エルザ・・・強敵だね・・・」

 

「ふふ・・・勝負とつくとつい燃えてしまうのだ」

 

彼女も参加者だ。彼女の魔法、『換装』次第でどんな服も着られるだろう。どんな服装でくるか未知数である。

ルーシィが「優勝が遠のく〜」と嘆いているが今は気にしない。

 

(まぁ服も大事だけどアピールも重要だね)

 

ただ、きれいな服を着ているだけじゃダメだ。服装とアピールがマッチして観客たちの心をどれだけ虜にできるかが勝負所なのだ。

片方だけが優れていても魅力が削減されてしまう。

 

 

 

その時、観客が盛り上がる声が聞こえた。

アミクとルーシィ、エルザはカーテンの裏からこっそり見る。

 

『さあ!魔法を使ったアピールタイムだ!!』

 

カナはカードを両手に持ち、ばら撒くとカードは増殖し、カナを包んだ。

 

『おおっと!カードがカナの姿を隠して・・・』

 

するとーーー

 

『水着に着替えたー!!』

 

「ふひゃあああ!!大胆だよぉ!」

 

アミクは恥ずかしいのか真っ赤な顔を手で覆った。

 

「水着・・・!?ずるい!」

 

「なるほど、その手があったか・・・」

 

ルーシィとエルザもそれぞれの反応をしている。

 

「50万・・・いいえ、酒代は頂いたわ」

 

「あれ、言い直す必要あった?」

 

まぁカナの参加した動機は納得である。

 

 

 

 

 

 

次の人物に進んだ。

 

『エントリーNo.2!新加入ながらその実力はS級!雨もしたたるいい女!!ジュビア・ロクサー!!』

 

ジュビアは自分の体を見ずに変化させると、自分の足元に波を作り出す。そしてーーーーー

 

 

『オオオ!!水着が似合う演出をつくり出したー!!』

 

「グレイ様見てますか!」

 

「まさかの連続水着!?」

 

しかし、水を使っての演出は素直に感嘆する。

 

 

 

 

 

そしていよいよ。

 

『エントリーNo.3!!ギルドが誇る看板娘!!その美貌に大陸中が酔いしれた!!ミラジェーン!!』

 

「優勝候補が来たか・・・!」

 

グラビアにも出ているミラ。さて、観客も今まで以上の盛り上がりを見せている。

 

果たして、彼女の演出はーーーーー?

 

『さあ、アピールタイム!』

 

「私、変身の魔法が得意なんで変身しまーす!」

 

ミラは両腕を伸ばして魔法を使うーーーーー

 

 

「顔だけハッピー!」

 

「ヴォふ!!?」

 

アミクはついズッコケて額を床に打ち付けた。

 

 

『えーーーーーー!!!?』

 

観客も唖然としている。

 

 

「顔だけマーチ!」

 

「あーし、なの!?」

 

「顔だけガジルくん」

 

「ぶーーーーーっ!!!」

 

 

 

 

これは酷い。

 

 

アミクはさっきから腹筋が千切れそうでヤバイ。

 

 

「優勝候補が自滅した・・・!」

 

「ぷふふふ・・・!!ルーシィ、悪い顔してる・・・!」

 

 

 

 

次はダークホースだ。

 

 

『エントリーNo.4!『最強』の名の下に剛と美を兼ね備えた魔導士、妖精女王(ティターニア)のエルザ・スカーレット!!』

 

 

「キターーー!!!」

 

「エルザーーっ!!」

 

「カッコいいーー!!」

 

「あれが妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強の女か」

 

 

 

「すごい人気」

 

「さすがエルザ!」

 

ルーシィとアミクも引き続きこっそり見ている。

 

「私のとっておきの換装を見せてやろう。とーーーーっ!!」

 

なんか随分気の抜けた掛け声と共に換装する。

 

そして現れたのがーーーーーー

 

 

「ゴスロリ!!?」

 

「ギャップ萌えがヤバイ!!」

 

「フフ・・・決まった!」

 

ありゃあ決まったわな。やっぱりダークホースだった。

 

 

 

 

それからも次々と参加者がアピールして行った。

 

 

『エントリーNo.5!!小さな妖精!!キューティ&インテリジェンス!!レビィ・マクガーデン!!』

 

「「いいぞーレビィ!!」」

 

レビィは自分の魔法、立体文字(ソリッドスクリプト)でアピール。

 

 

 

 

『エントリーNo.6!西部からセクシースナイパー、ビスカ・ムーラン!!』

 

「か、可愛い!」

 

ビスカは得意の射的で的の真ん中を百発百中。

 

 

 

 

そして。

 

 

『エントリーNo.7!我らがギルドのスーパールーキー!!その輝きは星霊の導きか・・・ルーシィ・ハー』

 

「だー!!ラストネームは言っちゃダメェ!!」

 

 

いよいよルーシィの番だ。フルネーム言うのを止めたのは自分の父がお金持ちだと知れば賞金がもらえなくなるのでは?と危惧したためである。

 

 

『ルーシィ、頑張れ!』

 

アミクがこっそり声を送ると、ルーシィは親指を立てて応えた。

 

「何だ?」

 

「可愛いなあの娘」

 

観客からの第一印象もいい感じである。

 

 

「えーと・・・あたし、星霊と一緒にチアダンスします」

 

そして、鍵を構えて召喚する。

 

 

「バルゴ!」

 

「お仕置きですか、姫?」

 

チアリーダーの恰好をしたバルゴが出てきた。

うん、こいつしかいねえわ、適任なの。

 

 

「おお!あの娘も可愛い!!」

 

「飛び入り参加か!?」

 

「メイドなの?チアなの?」

 

 

「なるほど、衆人環境での公開処刑ですね?」

 

「ちがうわ!!」

 

 

 

まぁ、最初にそんな漫才があったが二人のチアダンスは好評だった。美少女二人、というのも受けたのだろう。

 

 

だが、たまにバルゴが軟体動物のような動きをしたのが非常に気になったが・・・。

 

 

 

 

 

「ああああああ”あ”あ”!!ヤバイヤバイ次私だよぉぉぉぉ!!」

 

「落ち着け、あれは観客ではない。いちごのショートケーキだと思え」

 

「それエルザの場合だと逆に集中できないんじゃない!?」

 

観客に飛びかかってしまいそうである。

 

 

なんかズレてるエルザだったが、お陰で気が抜けた。

 

 

「・・・よし!行ってくる!!」

 

 

 

 

 

 

『エントリーNo.8!!この声の前では誰もが耳を澄ませてしまう!老若男女のハートを鷲掴み!聖女の如き愛で満ち溢れる心!!『音竜(うたひめ)』のアミク・ミュージオンッ!!!』

 

(長い長い、なにその恥ずい文句、買い被りすぎ)

 

アミクはギクシャクしながらステージの真ん中まで歩いていった。

 

 

「おおおおおお!!!」

 

「可愛いいいいい!!!」

 

「あれが噂の『歌姫』!!」

 

「いや、『聖女』だろ?」

 

「初めて姿見た!!」

 

「結婚してーーーー!!」

 

「皆の者、静まれい!女神の御神前であるぞぅ!!」

 

 

うるせぇ。

 

 

 

「ど、どーみょ、アミュク・ミュージオンでしゅ。わ、私は歌を歌いたいと思いミャす!!」

 

 

「アミク、噛み噛み、なの」

 

「はは、なんだあの服」

 

『それにしても、予想以上の人気ぶりだな』

 

グレイが笑う中、ウルが感心するように言う。噂は結構出回っているが、実際に姿を見た者はそんなにいないので、一目見ようとやってきた人達もたくさんいるのだろう。

 

 

ところで、今のアミクの服装。

 

 

いわゆる『魔法少女』の服装である。アミクが恥ずかしがるわけだ。

 

 

さて、アミクはアピールを歌に持っていくことで本領発揮しようという魂胆だ。

 

 

『いきまーす!私ーーーー』

 

マックスからマイクを借りて、いざ歌わんーーーーーーーーーというところで。

 

 

 

「エントリーNo.9」

 

唐突に女性の声が後ろから聞こえた。

 

 

「え、あの、私アピールまだなんですけど・・・」

 

 

せっかく始めようとしたのに。

 

流石に不機嫌になって振り向くとーーーーー

 

 

「妖精とは私のこと。美とは私のこと。そう・・・全ては私のこと・・・

 優勝はこの私、エバーグリーンで決定〜!ハ〜イ!こんなくだらないコンテストは終了で〜す 」

 

団扇を持っている眼鏡を掛けた女性がいた。

 

 

「ってエバさん!?帰ってきてたんだ!」

 

エバーグリーン。妖精の尻尾(フェアリーテイル)の一員である女性。ここ長い間、仕事の為不在だった。

 

 

「久しぶりねアミク。ちょっと見ない間に随分調子乗ってるんじゃない?」

 

「あ、いやそういうわけじゃ・・・」

 

再会早々、キツイ言葉を掛けてくるエバーグリーンにたじたじとなるアミク。

 

 

「生意気なのよ。まだ青二才のガキの癖に。なんでラクサスはこんなヤツ気に入ってるのかしら・・・」

 

エバーグリーンは不機嫌そうに吐き捨ててくる。

 

アミクはこのエバーグリーンが少し苦手だ。こっちは仲良くしたいのだがやたら突っかかってくるし、「美しいのは〜」とかくどくど説いてくるし、睨みつけてくるし。

いや、人当たりが強いのはラクサスもだがエバーグリーンはなんか違う。こう、なんか小姑みたいな感じがするのだ。

 

「と、とりあえず、おかえりオバさん。あ」

 

ここで噛んでしまった。

 

 

「だああああれが、おばさんですってえええええ!!!」

 

「ちゃうんです!ちゃうんです!」

 

 

般若の形相をしたエバーグリーンがアミクの顔を覗き込んできた。

 

 

その直後、彼女は眼鏡をずらす。

 

 

「あ・・・」

 

 

(しまった・・・!)

 

 

 

そこでアミクの意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

 

「アミク!」

 

 

マカロフが叫ぶがすでに時遅し。

 

 

エバーグリーンの瞳を見てしまったアミクは一瞬でカチカチの石像になってしまった。

 

 

「な、なんだアレ!?」

 

「石!?」

 

「アピール!?」

 

「等身大フィギュア化!?」

 

『マズイぞ!町民の皆は早く逃げて!』

 

マックスが避難勧告をすると観客たちは一目散に逃げ出した。

 

 

 

「何をするエバーグリーン!!祭りを台無しにする気か!!?」

 

マカロフが憤ってエバーグリーンに怒鳴る。だが彼女はむしろ面白そうに言った。

 

 

「お祭りには余興がつきものでしょ?」

 

そして、カーテンに火を点ける。

 

 

カーテンが燃え落ちた時、そこには石になったミス・フェアリーテイルコンテストの参加者たちがいた。

 

「控え室にいた奴らが全員石に!?」

 

「ルーシィ!」

 

「姉ちゃん!」

 

「エルザまで!!」

 

「バカタレが!!今すぐ元に戻さんかっ!!」

 

マカロフがそう怒鳴った瞬間、ステージの中央に落雷が起こり、そこにある男が現れた。

 

「よう・・・フェアリーテイル のヤロウども」

 

いや、一人ではない。後ろに他の二人の男も現れて、そこにエバーグリーンが加わる。

 

 

 

そして、真ん中にいる男。

 

 

 

「祭りはこれからだぜ」

 

 

ラクサス・ドレアーが好戦的な笑みを浮かべながら腕を組んでいた。

 

 

 




魔法少女のモデル?


プリキュアでも思い浮かべてください。


(作者の圧倒的想像力不足)


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