妖精の尻尾の音竜   作:ハーフィ

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単位落としたら死ぬ。助けて。

テスト終わったので再開したいと思います。


バトル・オブ・フェアリーテイル

不敵な笑みを浮かべて現れた男、ラクサス。

 

 

そして他に、緑髪のロン毛の男、フリード。

 

 

兜の様なものを被った不気味な風貌の男、ビックスロー。

 

 

眼鏡を掛けた女性、エバーグリーン。

 

 

この3人は雷神衆と呼ばれている。簡単に言えばラクサス親衛隊だ。

 

 

「遊ぼうぜ、ジジイ」

 

 

笑みを浮かべたまま、マカロフに語りかけるラクサス。

 

「バカな事はよさんか!!ファンタジアの準備も残っとるんじゃ。今すぐ皆を元に戻せ」

 

マカロフが言い聞かせてもラクサスのニヤニヤは止まらない。

 

「ファンタジアは夜だよな。さぁて何人が生き残れるかねぇ・・・」

 

 

 

刹那、アミクの頭上から雷が落ちてくる。

 

「よせぇ!!!」

 

マカロフが叫んだ直後、雷はアミクを避けて床に落ちた。

 

 

みんな、安堵でホッと息をつく。

 

 

「この女たちは人質に頂く」

 

ラクサスがアミクの肩を抱いて言った。

 

「ルールを破れば1人ずつ砕いていくぞ。言ったろ、余興だと」

 

「冗談ですむ遊びと、そうはいかぬものがあるぞ、ラクサス」

 

あまりにも非道な行いにマカロフが怒気を含ませて言いつける。しかし、それを物ともせずにラクサスは答えた。

 

「もちろんオレは本気だよ」

 

フリードとビックスローが続けて言った。

 

「ここらで妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強は誰なのかをはっきりさせようじゃないか」

 

「ーーーーつう遊びだヨ」

 

 

ビックスローの後ろでは樽の様な人形たちが「遊びー」「遊びー」と復唱している。

 

 

 

「ルールは簡単。

 

 最後に残った者が勝者。

 

 バトルオブフェアリーテイル」

 

全員の顔つきが変わる。

 

まるで、本当に余興をするかの様な説明。

 

この中での強者を決める、という傲慢さ。

 

そして、ラクサスの目には大きな野心が渦巻いていた。

 

 

誰もが、ラクサスが本気だと認めざるを得なかった。

 

 

 

その時。

 

 

 

 

ガコォ――――ン!!

 

 

 

テーブルが急に跳ねあがった。

 

 

「いいんじゃねえの?わかりやすくて」

 

 

それを行った犯人は実に楽しそうな笑みを浮かべていた。

 

 

「燃えてきたぞ」

 

 

「ナツ!!」

 

 

ギルドでもトップの問題児、ナツ・ドラグニルだ。

 

「ナツ・・・オレはお前のそういうノリのいいとこは嫌いじゃねえ」

 

ラクサスが好意的に言った。

 

「ナツ」

 

「祭りだろ?じっちゃん」

 

ナツは軽く腕まくりすると。

 

「行くぞ!!」

 

ラクサスに向かって飛びかかっていった。

 

「だか・・・そういう芸のねえトコは好きじゃねえ」

 

「オラァ――――!!」

 

「落ち着けよ、ナツ」

 

「ぴぎゃああああああああ!!!」

 

 

あっさり、雷で返り討ちにされてしまった。去年もひどくやられたのに、学習していない。

 

 

 

そのまま黒焦げになって気絶するナツ。

 

 

「せっかく復活したのに、なの」

 

マーチが呆れ気味に言う。

 

 

そんな出来事など気にしてないかのようにエバーグリーンとビックスローが口を開く。

 

「この子達を元に戻して欲しければ私たちを倒してごらんなさい」

 

 

「俺たちは4人!そっちは100人近くいる。うっわぁ!こっちの方が不利だぜ!ぎゃはははっ!!」

 

 

「制限時間は3時間ね。それまでに私たちを倒せなかったら、このコたち・・・砂になっちゃうから」

 

 

 

そして宣言される女性たちの命の危機。

 

「そ、そんな・・・アミクが・・・」

 

それを聞いたマーチの顔に、恐怖が浮かんだ。

 

 

 

「バトルフィールドはこの街(マグノリア)全体。オレたちを見つけたらバトル開始だ」

 

「ふざけおってぇぇ!!!」

 

 

怒りで巨大化するマカロフ。

 

 

「だから慌てんなって・・・祭りの余興さ。楽しもうぜ」

 

ラクサスはそう言うとアミクを持ち上げた。

 

 

 

「・・・いや、ラクサス。それは置いて行け」

 

「・・・チッ」

 

 

フリードの苦言にラクサスは渋々アミクを置いた。

いや、持っていって何するつもりだったんだよ。

 

 

そしてラクサスは指から眩い光を放つ。

 

「眩し!なの!」

 

 

眩しさに目を瞑り、収まったあと目を開けるが、すでにそこにラクサスたちは居なかった。

 

「バトル・オブ・フェアリーテイル、開始だ!!!」

 

 

その言葉だけを残して。

 

 

 

「あんのバカタレめぇっ!!」

 

マカロフが悔しげに吐き捨てる。

 

 

「クソォォオオオオッ!!姉ちゃんたちを助けねえと!!」

 

「あいつらぁぁ―――――!!!」

 

 

エルフマンたちはラクサス達を探しに外へと駆けだした。

ギルド皆が一丸となって全員で女性たちを助けようとしている。

 

 

「ワシが・・・ワシが止めてやるわ!!クソガキがっ!!」

 

怒り心頭のマカロフもギルドの出口に向かって走る。―――――が。

 

 

 

ゴチ―――――ン!!

 

 

外に出る一歩手前で見えない壁にぶつかったかのようにマカロフの動きが止まった。

 

 

「何やってんだじーさん!」

 

『・・・これは・・・』

 

それを見たグレイとウルがそれぞれ反応を示した。ウルの方は何かに気付いたようだ。

 

「なんじゃコレは!?進めん!見えない壁じゃ!」

 

マカロフが外に出ようと体を押し付けるが、やはり何かに阻まれ出れない。

 

「こんな時にどーしちまったんだよ。見えない壁なんかどこにもねーだろ」

 

「んごおおおおお!!?」

 

グレイがマカロフを引っ張ってみても確かにマカロフだけがこっちに来られない。

その時、空中に文字が浮かんだ。

 

「これは・・・フリードの術式か!?」

 

『やっぱりそうか』

 

「術式!?」

 

「結界の一種じゃ。踏み込んだものを罠にはめる設置魔法。おそらく、このギルドを囲むようにローグ文字の術式が書かれておる!」

 

反芻するグレイにマカロフが説明する。

 

「術式に踏み込んだ者はルールを与えられる。それを守らねば出ることはできん。見よ」

 

グレイはマカロフに言われて浮かんだ文字を見た。

 

 

<ルール「80歳を超える者と石像の出入りを禁止する」>

 

 

「何だよこの言ったモン勝ちみてーな魔法は!?」

 

つまり、この場合80歳を超えるマカロフと石像になったアミクたちは外に出られないということである。

 

「術式を書くには時間がかかる・・・ゆえにクイックな戦闘には向いておらんが罠としては絶大な威力を発揮する」

 

『魔法の使い方が上手いな・・・』

 

ウルはこの術式を作った人物に対して素直に感心した。

 

 

 

(術式のルールは絶対・・・いくらマカロフでも壊せないだろうな)

 

それに「年齢制限」と「物質制限」の二重の術式。フリードとかいう輩は強力な魔導士のようだ。

 

「初めからじーさんは参加させる気がねえって事か。周到だな」

 

グレイはそう吐き捨てるとマカロフに背を向けて駆けだした。

 

「こうなった以上オレたちがやるしかねえな」

 

「グレイ!」

 

マカロフの呼びかけにも振り向かずにグレイは覚悟の決まった目つきで走る。

 

 

「アンタの孫だろうが容赦はしねえ。ラクサスをやる!」

 

『―――まだ、グレイじゃ勝てないと思うけどね―――』

 

ウルは贔屓目抜きでそう分析する。今までずっとグレイにひっついてきて彼の実力は把握している。

 

確かに、グレイは強い。だが、先ほど相対した時に感じた、ラクサスのあの高い魔力。以前の自分ともいい勝負するだろう。

いや、自分を負かすこともあり得る実力も秘めている。

 

ウルはすぐにラクサスの実力を見抜いたのだ。彼は『強者』だと。

 

 

『勝てるとすれば――――』

 

 

ウルは揺られながらとある人物たちを脳裏に浮かべた。

 

 

 

 

 

 

一方マカロフもラクサスに勝てそうな人物を模索していた。

 

(エルザならもしかしたら・・・あるいはアミクか・・・?しかしこの状態では・・・)

 

二人とも石になってしまっているので現状、戦闘不可能。だとしたら残るは―――――

 

その時、一人だけ飛びださずに扉の陰に隠れて震えているリーダスを発見した。

 

「ご・・・ごめ・・・オ・・・オレ・・・ラクサス怖くて・・・」

 

「よい、それより東の森のポーリュシカの場所は分かるな?」

 

「ウィ」

 

「石化を治す薬があるかもしれん。行ってこれるか?」

 

「ウィ!そーゆー仕事なら!」

 

一人だけでも残っていてよかった。リーダスには悪いが彼自身あまり戦闘力は高くない。

なので、別方向から石化を治すことに協力してもらうことにした。

 

 

「ごあ―――――っ!!!」

 

そこで、ようやくナツが起きた。

 

 

「やっと起きた、の」

 

「あれ!?ラクサスはどこだ!?つーか誰もいねえ!!」

 

気絶している間に皆出ていってしまったのでナツだけ置いてけぼりになってしまったのだ。

 

(ナツが本気になれば・・・もしかして・・・)

 

ナツを見たマカロフは彼に可能性を賭けた。

 

 

「祭りは始まった!!ラクサスはこの街(マグノリア)の中におる!!倒してこんかい!!!」

 

「おっしゃああああああああああ!!!」

 

 

マカロフからもはっきり許可を得たためかテンション爆上がりのナツ。雄叫びを上げながら外に突っ込んでいく!

 

 

 

「まってろォラクサスゥゥゥ!!!!」

 

 

 

 

 

ゴチーン!!

 

 

 

外に出る直前、ナツは先ほどのマカロフのように見えない壁にぶつかった。

 

 

マーチたちはそれを見て呆然となる。

 

「なにこれ?」

 

ナツが顔を術式に押しつけながら言う。

 

 

『ええええええっ!!!?』

 

 

 

 

 

 

 

「どーなってんじゃあナツ!!おまえ80歳か!?石像か!?」

 

「知るか!!何で出れねえんだよォォ!!」

 

 

頼みのナツがまさかのギルドから出られない事態に陥った。

 

 

マーチはナツとマカロフが言い争うのを聞きながら術式に手を伸ばす。

マーチの手は問題なく通り抜けた。

 

 

「・・・あーしは大丈夫、なの」

 

 

「オイラも通れるよー」

 

ハッピーも飛びながら外に出たり中に入ったりを繰り返す。ならば、問題があるのは術式ではなくナツだと思うべきだろう。

 

 

マーチがそう推測していると再び空中に文字が浮かんだ。

 

「・・・バトル・オブ・フェアリーテイル途中経過速報?」

 

マーチが読み上げるとすぐさま次の文字が浮かぶ。

 

<ジェット VS ドロイ VS アルザック>

 

「な、なんじゃこれは!?」

 

「何でこいつらが戦ってんだ?」

 

訳が分からず全員で首を捻っていると。

 

 

<勝者 アルザック>

 

 

「アルザックが勝った、の・・・」

 

 

<ジェットとドロイ 戦闘不能>

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル) 残り人数81>

 

 

流石にここまで来ればこれがどういうことか分かる。

 

 

 

「フェ、妖精の尻尾(フェアリーテイル)同士で戦わせてる、の?・・・」

 

 

 

 

それに続くように次々とあちこちの戦況報告が上がってきた。

 

 

<マックス VS ウォーレン 勝者 ウォーレン>

 

 

<ワン VS ジョイ 勝者 ワン>

 

 

<ミキィ4人抜き!>

 

<ワカバ VS マカオ 戦闘開始>

 

「よせ!やめんかガキども!!」

 

マカロフが叫ぶが、アミクのように声を届かせることはできない。

 

「おそらく、街中に術式の罠がはってある、の。それにかかったみんなが戦いを強制されて・・・なの」

 

「これがラクサスの言っていたバトル・オブ・フェアリーテイル」

 

フリードは言っていた。妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強は誰なのかはっきりさせよう、と。

つまりこれは勝ち抜き戦。ラクサスの言う「余興」なのだろう。

 

「くぅぅぅ〜オレも混ざりてぇっ!!何なんだよ!!この見えねえ壁はよォ!!」

 

 

ナツが顔を壁に押し付けて唸る。戦い、と聞いてナツのバトルジャンキー精神が疼いたのだろう。

そんなナツにマカロフはチョップした。

 

「混ざってどうする気じゃバカタレ!」

 

「最強決定トーナメントだろ!!これ!?」

 

「まぁ、ある意味そう、なの」

 

随分日和った見方だがナツの言うことも間違いでもない。

 

 

「仲間同士で潰し合うなど・・・」

 

「ただのケンカだろ?いつものことじゃねーか」

 

「これのどこがいつも通りじゃ。仲間の命がかかっておる!!皆必死じゃ!!正常な思考で事態を把握できておらん!!」

 

マカロフの言葉をナツは黙って聞く。

 

 

 

「このままでは石にされた者たちが砂になってしまい、二度と元には戻らん・・・」

 

つまり、『死』だ。永遠に彼女たちを失ってしまう。

 

「いくらラクサスでもそんな事はしねーよ。ムカツク奴だけど、同じギルドの仲間だ。ハッタリに決まってんだろ?」

 

だがナツはそんな言葉を笑って一蹴した。

 

「ナツ・・・」

 

「アミクも言いそう、なの。影響された?なの」

 

「そんなんじゃねーよ」

 

照れたように頭を掻きながらそっぽを向くナツ。

 

 

「つーか何で出れねんだ!?80歳超えてたのか・・・オレ」

 

「ナツおじいちゃん、なの・・・ププッ」

 

「あー!マーチ、笑うんじゃねえ!!」  

 

 

 

ーーーーお前はあのラクサスを仲間だと言うのか・・・?そこまではやらないと、信じられるのか・・・?ワシは・・・

 

 

マーチたちの会話を聞きながらマカロフは拳を握り締める。祖父である自分よりもナツの方がラクサスを信じられる、と言うのだ。

マカロフは情けないような恥ずかしいような気持ちになり思わず俯いた。

 

 

 

その時、またも空中に文字が浮かぶ。

 

 

<残り時間 2:18>

 

<残り人数 42人>

 

 

(42人!?仲間同士の潰し合いで、もう人数が半分以下に・・・)

 

 

そして、とうとう戦況が大きく動き出す展開になった。

 

 

<エバーグリーン VS エルフマン>

 

<勝者 エバーグリーン>

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル) 残り41人>

 

 

「雷神衆が動き出した、の!」

 

「まさかエルフマンがやられるなんて・・・」

 

 

「オレも混ざりてぇ・・・」

 

 

 

雷神衆の参戦。人数が半分ぐらいになったところでしかけてきたのだろう。

 

 

 

(ラクサス・・・)

 

 

仲間同士が傷つけ合う戦い。仲間を平気で傷つけるラクサスや雷神衆。様々な状況が渦巻く中、マカロフは未だに自分の孫を信じるべきか、迷っていた。

 

 

 

 

 

 

 

そして、アミクは今も動かない。

 

 

 

バトル・オブ・フェアリーテイルの行方はーーーー?

 

 

 




次回も近いうちに出したいです。

て言うか今回アミク出番なし!

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