妖精の尻尾の音竜   作:ハーフィ

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今期は単位落とさないようにがんばります・・・。


神鳴殿

マグノリア中心部カルディア大聖堂。

 

 

そこにラクサスはいた。

 

 

彼は空中に浮かんだ文字を見て楽しげに呟く。

 

「アミクとエルザが復活にミストガン参戦か・・・アミクはともかくオレを含めて妖精の尻尾(フェアリーテイル)トップ3が揃った訳だ」

 

簡単に終わってしまっては面白くない。なのでちょうどいいタイミングだったと言えよう。ついでに誰が最強なのか白黒つけるチャンスでもある。

 

 

「やはり祭りはこうでなきゃな」

 

 

アミクの実力は底知れないときもあるが自分ならば簡単に叩きつぶせるだろう。

後はエルザとミストガンを潰し、最強となってマスターの座に就く。そして、妖精の尻尾(フェアリーテイル)は最強のギルドとして名を馳せるのだ。完璧な計画だ。いよいよ自分の野望が実現する。

 

 

それらの未来を思い浮かべてラクサスはにんまりと笑った。

 

 

 

その時。

 

 

「・・・なっ・・・!?」

 

 

空中に浮かんでいる文字、そこの残り人数が急激に増えた。

 

 

「・・・石化していた女どもが全員復活している!?」

 

 

どういうことだ。エバーグリーンが解いたわけではないだろう。術式を見返しても彼女が負けたという記述もない。

 

 

「どうなってやがる・・・!いや、まさか・・・!!」

 

 

ラクサスには石化を治せる人物に心当たりがあった。

 

 

 

 

 

「『状態異常無効歌(キャロル)』!!」

 

 

パリィン!

 

 

アミクの魔法によりルーシィ達の石化が解けた。

 

 

「あれ?何これ?」

 

「ジュビアはどうしたのでしょう?」

 

「私たち・・・」

 

「んん?」

 

石化が解けた彼女たちは状況を把握していないらしく戸惑っている。

 

 

「おおっ!!!」

 

「元に戻った――――っ!!!」

 

「よくやったアミク!」

 

ナツやマカロフたちも大喜びだ。

 

「ルーシィ!!」

 

「え?何!?」

 

多くの魔力を消費したアミクも、少しよろけながらルーシィに抱きついた。

 

「アミクの石化が解かれた時点でラクサスたちの負けは決まってた、なの!」

 

「ああ、アミクのお陰で早期解決ができた。そうでなければ、私がエバーグリーンを倒さなければならなかっただろう」

 

「そうだとしても、そんなに手間はかからなかったと思うけどね」

 

 

エルザの実力ならエバーグリーンなど楽に倒せるはずだ。

 

 

(ともかく、人質は解放された。さぁ、どうするラクサス)

 

 

 

 

「クソが・・・!」

 

 

ラクサスは少し前の自分をぶん殴りたい気持ちだった。

 

 

「なんでエバの石化がアミクごときに解かれんだよ!!ア!?いつからそんなに弱え魔法になったァエバァ!!」

 

苛立ちの余り石柱を殴るラクサス。そんな彼にフリードが歩み寄った。

 

 

 

「アミクの魔法が有能すぎるんだ。初めに、歌う隙を与えずに石化させるべきだった」

 

 

エバーグリーンが御託を並べていたからアミクに歌う余裕があったのだ。真っ先に石にさせていればアミク自身の石化が解かれる事もなかっただろう。

 

 

 

ラクサスは歯ぎしりした。

ラクサスもあんなことを言ったがアミクを認めていないわけではない。だからこそ、彼女の魔法の効果が石化を解く程までに高まっていることを予想せず、アミクが復活したときにも余裕ぶっこいていた自分に腹が立っただけだ。

 

その苛立ちのままラクサスはフリードを問いただした。

 

「なぜ戻ってきたフリード」

 

「ゲームセットだからな。人質が解放されたらマスターはもう動かない」

 

もうマカロフにはラクサスに降参する理由がない。つまり、ゲームの破綻だ。

 

だが、ラクサスはフリードをキッと睨むと。

 

 

ズギャアアア!!

 

 

フリードのすぐ近くの床を抉った。

 

「終わってねえよ。ついてこれねえなら消えろ。オレの妖精の尻尾(フェアリーテイル)には必要ねぇ」

 

厳しいことを言うラクサス。彼はまだ諦めるつもりはなかった。こうなったらもう手段は選ばない。

 

 

 

 

「バトル・オブ・フェアリーテイル !?」

 

「ラクサスがそんな事を?」

 

一方、ギルドではアミクたちがルーシィたちに状況を説明していた。

 

「・・・がそれももう終わりじゃ。お前たちが石から戻ればラクサスのくだらん遊びに付き合う事もあるまい」

 

「でもフリードの罠にかかってキズついたみんなは・・・」

 

「そうよ!ラクサスを懲らしめないと示しがつかないわ!」

 

ミラが悲しげに俯くと、ビスカが拳をつくって訴えた。

 

「わーっとるわい。後でワシが最大級の仕置をする。ラクサスめ・・・今回ばかりはただではすまさんぞ」

 

流石に今回はやり過ぎだ。今までは嫌味を言ったりするぐらいで特に大きく行動することはなかった。だからマカロフも強く言わなかった。

なのに今回、このような大ごとにしてしまった。自然と厳しい口調になる。

 

 

 

「ちょっと待ってくれ」

 

しゅたっ、と手を挙げてナツはマカロフを止める。

 

 

「確かにアレだ・・・仲間同士、無理やり戦わなきゃならねーって状況はどうかと思ったが・・・妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強を決めるっていうラクサスの意見には賛成するしかねえだろ」

 

「そう、かな・・・?」

 

うんうんと頷くナツに対してアミクは首を傾けた。

 

 

「まあ・・・あまりラクサスを怒らねーでくれって事だ。じっちゃん」

 

「ん・・・私からもお願い。ラクサスも色々思うところあってやったことだと思うし・・・」

 

マカロフは二人の言葉に呆れと驚きが混じった気持ちが湧いた。

 

(ナツ、アミク・・・お前らというやつは・・・)

 

 

「つー訳で」

 

ナツはにこやかに笑うと拳同士をを打ちつけた。

 

 

「今から第2回バトル・オブ・フェアリーテイル開始だぁー!全員かかってこいやー!!」

 

『はいい!!?』

 

「やめーい!」

 

 

いきなりとんでもない事を言いだしたナツに皆唖然とする。

 

 

「だってオレたち何もしてねーじゃん!ホラ!バトルしよーぜ!!」

 

「ナツが言うと冗談に聞こえないなー・・・」

 

「ふむ、だったらまず私が相手になってやろう」

 

「おぉ、エルザか!ちょうどいいな!この前の決着をつけようぜ!」

 

「コラコラ、エルザものらないの」

 

アミクはノリノリなエルザを引き止める。

 

 

「ナツ、女のコ相手にバトルとかはないと思うよ」

 

 

「女とか男とか関係ねーし!!」

 

「うわっ、すげームカツク顔、なの」

 

 

「ホラ行くぞアミク!久しぶりに勝負だ!」

 

「やーだぁーー!!」

 

ナツとアミクが追いかけっこしているのをみんな朗らかに笑いながら見た。

 

そんな様子を仏頂面で見ているガジルにジュビアが近づく。

 

「どうしたのガジルくん?」

 

 

「別に・・・」

 

ジュビアの質問にムスッとして答えるガジル。

 

「楽しいギルドだよね」

 

「イカれてるぜ」

 

 

その顔は相変わらず不機嫌そうな表情。だが、この中で一番付き合いが長いジュビアから見ると、少なくとも嫌がってはいないように見えた。

 

 

その時。

 

 

ミラが入口の異変に気付いた。

 

 

「あれ?なにかしら」

 

「ん?」

 

 

ミラの言葉に他のみんなも入口の方を向く。

 

そこには、術式の壁が黒く塗りつぶされている光景があった。

 

 

ビ―――――!!

 

 

そこに急にドクロマークが現れ、警報を鳴らす。

 

 

「な、なに!?」

 

 

呆然としている間にもギルドの中にまでドクロマークが表示されている術式の情報ボードが溢れた。

 

 

そして、ラクサスの声が聞こえてくる。

 

 

『聞こえるかジジィ。そしてギルドの奴らよ』

 

 

「ラクサス・・・」

 

 

ほんのちょっとしか経っていないはずなのに、アミクはなぜか久しぶりにラクサスの声を聞いた気がした。

 

 

『ルールが一つ消えちまったからな…今から新しいルールを追加する。バトル・オブ・フェアリーテイルを続行する為に、オレは「神鳴殿」を起動させた』

 

「神鳴殿じゃと!!?」

 

 

とある単語に驚愕するマカロフ。彼の様子から『神鳴殿』なるものはヤバい物だと察せる。

 

 

『残り1時間10分。さあ・・・オレたちに勝てるかな?それともリタイアするか? マスター。ははははっ!!!』

 

 

ラクサスの声は高笑いを響かせたところで情報ボードと共に消えていった。

 

 

 

「何を考えておるラクサス!!!関係のない者たちまで巻き込むつもりかっ!!!・・・んぐっ!!?」

 

 

マカロフが激昂した直後、急に胸を抑えて苦しみ始めた。

 

 

「おじいちゃん!!?」

 

「じっちゃん!!」

 

「マスター!?」

 

「どうしたの!?」

 

 

慌てて駆け寄ったアミクはマカロフに向けて治癒魔法を使った。しかし、少し楽になっただけのようでマカロフは倒れ込んで苦しんだままだ。

 

 

「やだ、おじいちゃん死なないでよ・・・!」

 

一瞬頭の中に浮かんだ不吉なワード。それを振り払うように治療を続ける。

 

 

 

「大変!!いつものお薬!!」

 

 

「こんな時に・・・!!」

 

 

「マスターしっかりしてください!!」

 

 

全員必死な顔でマカロフを介抱するが、やはり快方の兆しはない。

 

 

「神鳴殿って何だよ!?」

 

ナツの質問にも答えない。

 

「ううう・・・」

 

「じっちゃん!」

 

「大変!!みんな・・・外が!!」

 

そこに薬を取りに行っていたミラが慌ててやってくる。それを見てアミクは嫌な予感が膨れ上がるのを感じていた。

 

 

 

マカロフを医務室のベッドに寝かした後、二階に上がって外を見てみると、帯電ている球体が空に浮かんでいた。それも一つではなく大量に。軽く100個以上はあるだろう。

 

 

それが、マグノリアを囲むように空中に点在していた。

 

「神鳴殿・・・聞いたことはあるが、あまり詳しくは知らない・・・ただ、強力な破壊力を持つ物らしい」

 

エルザの話を聞いてみんな顔を上へと向けた。

 

 

「雷の魔水晶(ラクリマ)・・・?」

 

レビィがそれらを見上げて呟く。

 

 

 

 

「まさか神鳴殿って・・・雷の宮殿とかそういう意味!?」

 

この街(マグノリア)をそれに見立てて・・・!!」

 

 

戦慄したようにいうジュビアにカナが続けて言う。

 

 

「てかアレが放電したらどうなっちゃう訳?」

 

「・・・おそらく、街中にたくさんの雷が落ちちゃうと思う・・・」

 

アミクはその光景を想像し青ざめる。

 

 

「そんなことさせないわ!!スナイパーライフル換装!!」

 

そこに、狙撃が得意なビスカがライフルを出現させ魔水晶(ラクリマ)の一つに向けて構えた。狙いを定め、撃つ。

 

見事、魔水晶(ラクリマ)を壊した。

 

「やった!」

 

「さすがビスカ!」

 

アミクたちが称賛するとビスカが得意げにライフルを構え直す。

 

「こんなの全部私が・・・」

 

 

その直後。ビスカの身体を雷が貫いた。

 

 

「ああああああああああっ!!!!」

 

 

「ビスカ!!?」

 

「なにこれどうなってんの!!?」

 

ドサリ、と倒れ込んだビスカにアミクは慌てて治癒魔法をかける。

 

「『治癒歌(コラール)』!!」

 

おかげでビスカの傷はすぐに癒えた。が、ビスカは雷のショックで気絶したままだ。

 

「クソ!大丈夫かビスカ!!」

 

 

エルザはビスカを抱え上げた。一旦医務室に運んでおいたほうがいいだろう、と思ったからだ。

 

そして彼女は今の現象を分析し、アミクたちに伝えた。

 

 

「あの魔水晶(ラクリマ)・・・生体リンク魔法がかかってる!」

 

詳しく言うと攻撃した者と自分のダメージを連結させる魔法である。つまり攻撃を与えればそのダメージがそのまま自分に返ってくる仕組みだ。

 

 

 

「このままじゃ街の人まで!」

 

「ラクサスをやるしかない!行くよっ!!」

 

「あたし・・・できるだけ街の人、避難させてみる!!」

 

ルーシィたちは急いで下に向かう。アミクもそれに続いた。

 

 

「雷神衆も全員残ってる!気を付けて!」

 

「・・・また石化されたらたまらん。私かアミクがエバーグリーンをやろう」

 

ビスカを医務室に運び終えたエルザがそう言った。

 

「そうだね。私たちには石化は効かないし」

 

「私らも他の雷神衆に遭遇したら倒しておくよ」

 

「任せてください!」

 

カナやジュビアもやる気のようだ。

 

「私は・・・マスターたちを見てるよ」

 

レビィは残ることにしたらしい。

 

 

「私は他のメンバーを探してみるわ」

 

ミラがそう言ってくれるのはありがたいが、正直に言えばミラにはここに残って欲しい。だが、ミラがメンバー、特にエルフマンを心配していることが伝わってくるのでそのまま行かせることにした。

 

 

「ルーシィも気を付けて・・・あ、ハッピーとマーチもルーシィに付いて行って」

 

「あい!」「なの」

 

「アミクも無茶はしないでね」

 

アミクとしては特に心配なのがルーシィなので猫二匹を付けた。これで何かあれば飛んで逃げることができる。

 

 

 

「・・・んじゃ、武運を祈るよ!」

 

神鳴殿を止めなければラクサスは大量虐殺者になってしまう。それを防ぐためにもなんとしてでもラクサスを止めなければならない。

 

 

「ぐお〜〜〜おまえらズリーぞぉ〜!オレも戦いてぇ!」

 

 

アミクたちが出口に向かって駆け出すと、後ろからナツの悔しそうな声が聞こえてくる。ちょっと可哀想だがしょうがない。

 

ナツの嘆きを無視してアミクたちは外に出てーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

ゴチーン!!!

 

 

 

「きゃん!!?」

 

 

アミクは顔面を見えない壁に打ち付けた。その勢いで尻餅をつく。

 

 

「な、何これぇ・・・」

 

 

アミクは涙目で赤くなった鼻をさする。見上げるとそこには文字が浮いていた。

 

 

<80歳を超える者と石像の出入りを禁止する>

 

術式のルールだ。この条件に該当する者は外に出られない。

 

 

周りのみんなも突然のことに固まってしまった。口を開いて唖然とする。

 

 

そして。

 

 

 

『おまえもかーーーー!!!』

 

「うわーーーーん、なんでぇーーーー!!?」

 

 

みんなの叫びがギルド中に響いた。

 

 

 

結局アミクも術式に阻まれ外に出ることができなかった。

 




なんか今回雑になった気がする・・・。

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