妖精の尻尾の音竜   作:ハーフィ

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ハーメルンで金稼げるかなぁ・・・。


孤独な雷鳴

「どらあっ!!!」

 

ナツの攻撃がラクサスに迫る。

 

「てめぇらにだってわかるだろ!!今このギルドがどれだけ腑抜けた状況か!!」

 

それを防いだラクサスは自分の胸の前に雷を溜めた。

 

「オレはこのギルドを変える!その為にマスターにならなきゃいけねェんだよ!!」

 

「・・・たぁ!!」

 

アミクはラクサスの懐に潜り込むと拳を突き上げた。

 

それを腕を交差して防ぎ、後ろに飛ぶ。

 

そこでチラ、と術式の情報ボードを見た。そこには<神鳴殿発動まであと1分30秒>と書かれていた。

 

「何してやがんだ、ジジィは!!街がどうなってもかまわねえのかよ!!」

 

どこか焦りを含んだ口調だ。

 

「大丈夫だよラクサス」

 

アミクは優しげにラクサスを見て告げる。

 

「君が心配するような事は起こらないから」

 

「なんだと?」

 

「街を壊したところでなんの得もない事くらいは承知でしょ?今更後に引けなくて困ってるんじゃない?」

 

アミクの隣でナツも同意するように頷いていた。

 

「意地張り続けるのも疲れるよね!!ラクサス!!」

 

まるで、それがラクサスの本心だとでも言うかのような言い草。

 

 

違う。自分は目的のためならなんでもする。他人への気遣いなど必要ない。

 

 

「てめえが、知ったような口を・・・・!!昔から、オレを知った気になりやがって・・・!!」

 

 

拳を振り上げて向かってくるアミクを見ながらラクサスは過去―――――アミクがギルドに来てしばらくした頃を思い出していた。

 

 

 

 

 

「あそこにいる人、マスターと匂いが似てる・・・」

 

ナツやリサーナと共に仕事をしてきたアミク。ギルドのカウンターで休んでいると気になる人物を見かけた。

 

頭にヘッドホンを付けた金髪の少年。このギルドのマスターと匂いが似ているというのもあるが、ずっと一人でいるところをよく見たので心に引っかかっていたのだ。

 

「あの人はラクサス。マスターの孫だよ」

 

アミクの呟きを拾ったリサーナがすかさず教えてくれた。

 

「お、お孫さん!?じゃあ強いのかな・・・」

 

「ギルドの中でもトップクラスだよ。なんせS級魔導士だからね」

 

S級魔導士。確か、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の中でも屈指の強さを持つ者に与えられる称号だったはずだ。

 

「ラクサスだと!?よーし、また勝負しに行くぞ!!」

 

「またやるのー?今度も返り討ちにされるよー?」

 

「今度のオレは一味違うぜ!」

 

これまで一緒に行動してきて大体ナツの性格が分かった。とりあえず誰かと戦いたがりのバトルジャンキーだ。(ナツに限った事ではなく大体の人に言えるが、ナツは特に)

 

そんなナツにアミクはおずおずと告げる。

 

「え、と・・・今日はナツと遊ぼうと思ってたんだけど・・・怪我しちゃったら嫌だよ・・・」

 

「う・・・」

 

しおらしく言うアミクに気まずそうな顔になるナツ。涙まで浮かべられたらこっちが折れるしかない。

 

「わーったよ・・・また今度にしてやる!」

 

「結局は挑む、の」

 

マーチが呆れたようにため息をついた。

 

 

とにかく、アミクがラクサスについて知った日だった。

 

 

 

 

ある日、アミクたちは山の中でちょっとした討伐系の依頼をこなしていた。

 

「あと一匹だね」

 

「私たちでも倒せる程度でよかったよ」

 

「うおーーーー!!まだまだ暴れ足りねえぞーーーーー!!」

 

あまり強くないモンスターだったのでアミクたちのような子供でも倒すことができた。報酬も結構高いし、今回は美味しい仕事だろう。

 

「どうだアミク!オレの方が3匹多く倒したぞ!!」

 

「はいはい、すごいすごい」

 

ナツの扱いも今ではだいぶ慣れたもの。適当に相槌を返しながら辺りを警戒する。

 

「リサーナはミラさんたちと仕事に行ったからダメだったけど、次は一緒に仕事行けたらいいね」

 

「ハッピー、この川、魚がいる、の」

 

「うわーほんとだー!」

 

ハッピーとマーチが川を覗き込んでいるのを見ながらアミクは口を開く。

 

「そーだな。それより、最後の一匹どっちが早く倒せるか競争しようぜ!」

 

「またぁ・・・?普通にやろうよ~」

 

アミクが疲れたように言うのにもかかわらず、ナツは「たぶん、あそこにいるぜ!うおおおおおお」と走っていってしまった。

 

「ナツー待ってー!」

 

「置いて行かないで、なの」

 

ハッピーとマーチもフワフワと飛んで行く。

 

「しょうがないなぁ・・・」

 

アミクは仕方なさげにそう言うとナツたちが向かった方に足を踏み出した。

 

 

 

「あれ、見失っちゃったな・・・」

 

ナツたちがあっという間に行ってしまったせいでアミクだけがはぐれてしまったようだ。

 

 

「でも匂いは残ってるからこれを辿っていけば・・・」

 

ナツの匂いを追いかければすぐに合流できるだろうと思い、足を進めて行く。

 

「うーん、草いっぱい生えてるなー」

 

背の高い雑草に辟易する。草のせいで視界が悪い。それでも、匂いがする方向にまた一歩踏み出した。

 

 

その時。

 

 

「あ・・・?」

 

 

アミクの足は地面を踏まなかった。それどころがなんの手応えもない。体がぐらりと揺れ、アミクの体は空中に投げ出された。

 

浮遊感、そして落下。

 

「きゃ、きゃああああああああああああ!!!」

 

落ちながら悲鳴をあげるアミク。混乱して上手く頭が回らない。これ、もしかして死ぬ?

 

 

「あうっ!!」

 

 

激痛と共にアミクの落下は止まった。

 

 

「いった〜・・・こんなところに崖があったんだ」

 

足をさすりながら上を見上げて呟く。草が邪魔で崖が見えていなかった。アミクが無事なのは下にある草がクッションになってくれたお陰だろう。だが、無傷ではない。

 

「・・・!!いたたた!!うう・・・っ」

 

足首の骨が折れてしまったようだ。あまりの痛みに思わず涙が滲む。

 

「今の私で治せるかなぁ・・・痛いよぉ・・・」

 

今のアミクの実力では完治はできないだろう。これでは歩くこともままならない。

 

「ナツたちが見つけてくれるまで大人しく待つしかない、か・・・」

 

ナツも鼻が利くのですぐに見つけられるだろう、と安心していると。

 

 

「グオオオオオオオオオオ!!!」

 

獣の吠え声がすぐ前方から響いてきた。

 

はっとしてそちらを向くと、そこにはアミクたちが探していたモンスターが血走った目でこちらを睨みつけていた。

 

 

イノシシ型で鋭い牙を持つモンスター。山から降りてきては作物を荒らすことがあるので、度々討伐依頼の対象となっている。

モンスターの中では強くない方とはいえ、彼らの猛突進はまともに当たれば並みの魔導士でも大怪我するほどだ。

 

「や、やだ、こんな時に・・・!」

 

まともに立てないこの状況ではモンスターの攻撃を避けることは難しい。ならば、攻撃される前に倒すのが得策だろう。

 

「やるしかない・・・!『音竜の・・・咆哮』!!」

 

 

アミクはすぐに行動に移した。息を大きく吸い込むとモンスターに向かって吐き出す。そうして放出されたブレスはモンスターまで迫り・・・

 

 

「えっ!?」

 

突進で散らされた。

 

 

「そんな・・・」

 

 

足の痛みのせいで力があまりでなかった。それに狙いも少し逸れてしまっていた。だから、モンスターは簡単に攻撃を散らすことができたのだ。

 

 

「ブオオオオオオオ!!!」

 

モンスターは雄叫びをあげるといきなりこっちに向かって突進してきた。

 

 

「いやっ!!」

 

 

すごい勢いで近づいてくるモンスターに怖気付いてアミクは思わず目を瞑ってしまった。

 

 

迫りくるモンスター。あわや、ぶつかる、と思ったその時。

 

 

 

バチバチバチ!!!

 

 

「ブオオオッ!!?」

 

急にモンスターが感電した。焦げ臭い匂いを撒き散らしながら痙攣する。そして、力尽きて倒れ動かなくなってしまった。

 

 

「・・・た、助かった、の?」

 

恐る恐る目を開けると、そこには黒焦げになったモンスターが。

 

「ナツ?助けに来てくれたの?」

 

周りをキョロキョロと見回していると誰かがアミクに向かって歩いてきた。

 

 

その人物は・・・

 

 

 

「あ・・・ロクサス・・・さん?」

 

 

「そこで間違えてんじゃねーよ」

 

バチバチ、と帯電しているラクサス・ドレアーだった。

 

 

 

 

 

「モーション無しで突っ込んできたからびっくりしちゃった」

 

「たまにいるんだよ。不意打ちみてぇに突進できるやつらがな。つーかなんでオレはこんなこと・・・」

 

アミクはラクサスに背負われていた。

 

「ラックさんやっぱり強いんだね。まさに瞬殺だったよ」

 

「―――無理して喋んなくてもいいぞ?」

 

アミクの口調には少しばかり緊張が混じっている。初めてあのラクサスと会話するのだから仕方ないとは思うが。

 

と、ラクサスはアミクを背負ったまま岩を飛び越えた。子供一人背負っているのに軽々と跳躍するとは。

 

「い、いえ。少しでもラッキーさんと仲良くなりたいんです!だから手っ取り早く仲良くなるためにはやっぱりコミュニケーションかな、と」

 

「そりゃあ熱心なこった」

 

ラクサスは興味なさ気に言った。

 

 

ラクサスとしては仕事帰りでちょっと近道しようとしてこの山を通っていただけなのだ。なのにそこで子供がモンスターに襲われそうになっていたので反射的に助けてしまった。

しかも良く見れば最近妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入ってきた滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)の少女だった、というわけだ。

 

(ったく、なんでオレがこんな事・・・)

 

ナツと同じ滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)だというので記憶に留めておいた少女。こうして見るとあっさりへし折れそうな程線の細い体型をしていて、あまり強そうには見えない。

 

 

ラクサスはまた弱そうなやつがギルドに入ってしまった、とため息をついたのだった。

 

 

「で、ここか?」

 

「あ、はい!もしはぐれたらここで待ち合わせしようって・・・」

 

アミクは前もって印を付けておいた木を見つけるとラクサスを止めた。

 

 

「あとは臭いを辿ってくるはず。はー、よかった見つかって」

 

胸を撫で下ろしながら彼女は切り株の上に座らせてもらう。

 

「ありがとうランクさん。あなたがいなかったらどうなっていたか・・・」

 

「そろそろツッコんでいいか?いいよな?」

 

アミクは背負っていたリュックの中からゆで卵を取り出し、ラクサスに差し出した。

 

「どうぞ、これは助けてくれたお礼」

 

「いらねーよ別に」

 

「おいしいよ?ほら食べちゃって」

 

アミクはラクサスの手にゆで卵を押しつけるとリュックからもう一個卵を取り出した。自分も食べるのだ。

 

 

「腐っちゃいねえだろうな・・・」

 

ずっとリュックの中に入っていたっぽいので少し心配だが、とりあえずひとかじりしてみた。

 

 

「・・・まぁまぁだな」

 

「うん、おいしい!これこの前仕事先でもらったんだ。ニワトリさん育てていてね、産みたての新鮮な卵だって!」

 

「よかったな」

 

「うん、よかったよかった!」

 

こうして話してみるとラクサスは無愛想で無口なほうだが悪い人ではない事は分かる。

 

「そういえば、ランさんはマスターのお孫さんだって―――」

 

そう言いかけた瞬間、ラクサスの纏う雰囲気が変わった。

 

 

「――――関係ねえだろ」

 

「え?」

 

底冷えするような声でラクサスはアミクに聞く。

 

「オレがジジィの孫だってことがおまえと関係あるのか・・・?」

 

そう言ってアミクを睨んだ。その眼差しに少し怯んだが、それでも答える。

 

 

「特にはないけど・・・マスターの孫さんって聞いたから気になっただけだよ」

 

そう言ってもラクサスは厳しい視線を向けたままだ。

 

 

「どうだかな。どーせジジィの孫だからってゴマ磨っとこうって魂胆か?言っとくがオレは友達ごっこなんざしねえよ・・・もう話しかけんな」

 

ラクサスはそう言うとすぐに立ち上がって去っていく。まるで、何かから逃げるかのように。

 

 

「待ってラクサスさん!!」

 

アミクの制止も無視してラクサスはあっという間に見えなくなってしまった。

 

 

 

「ラクサスさん・・・」

 

 

ラクサスが消えた方向をじっと見るアミク。マスターの孫だということに随分神経質になっていた。そのことで何かあったのだろうか。

 

アミクはそのまま悩みこんでしまった。

 

 

 

ナツたちが黒焦げになったモンスターを持ってやってきたのはしばらく後のことだった。

 

 

 

「どこ行ってたんだよアミク!怪我までしやがって!」

 

「探した、の!」

 

 

「いや、置いて行ったのは君たちでしょ・・・」

 

それからアミクは大体の事情は話したがラクサスとした会話の内容までは話さなかった。

 

 

 

 

 

<神鳴殿発動まであと45秒>

 

ラクサスがそのメッセージに気をとられた瞬間、アミクの裏拳が顔に当たった。さらに追撃するようにナツの蹴りも腹に入る。

 

 

「何も起きねえ!!」

 

「黙れ・・・」

 

 

流石に多少のダメージは入ったのか少し疲弊しているラクサス。

 

 

そんなラクサスを見てアミクは言葉を紡ぐ。

 

 

「ラクサスはもっと私たちを信じるべきだと思う。昔も言ったよね?」

 

「黙れっていってんだろおおおおおおっ!!!」

 

 

 

 

 

 

「ラクサスさん!ブロッコリーあげるから話を聞いてよ!!」

 

「うるせえ、話しかけんなっつったろ」

 

最近ギルドではアミクが山盛りのブロッコリーを持ってラクサスに話しかけ、すげなく拒絶される、という光景が見られた。

 

 

あまりギルドの輪に積極的に関わってこようとしないラクサスを追いかけているのが珍しいのか、他のメンバーたちも興味深げに見守る。

 

 

 

「はぁ・・・話くらい聞いてくれればいいのに・・・」

 

 

「オメェもよく飽きもしねえであいつと関わろうとするよなぁ」

 

ラクサスの後ろ姿を見てため息を吐くアミクにミラジェーンが小馬鹿にしたように言った。

 

 

「ラクサスって何考えてんのか分かんねえのに、そんなやつと仲良くしようだなんてもの好きだな」

 

「思ってもないこと言わないでよミラさん。ラクサスさんは悪い人じゃないよ」

 

 

アミクがそう言うとミラは気まずげに頭を掻いた。

 

 

「ちっ、まぁせいぜいがんばれよ」

 

なんだかんだ応援してくれているらしい。ミラは口は乱暴だが、根はやさしいのだ。

 

 

アミクもこんなにラクサスを気に掛けるとは思わなかった。ただ、無性にほっとけなかったのだ。あの日見たラクサスの表情がまるで迷子の子供のようで。

 

 

ある日、いつものようにブロッコリー片手にアタックしようとしていると、ラクサスがそそくさと外に出るのが見えた。

 

 

(今日という今日は逃がさない!)

 

 

ふんす、と拳を握ったアミクはラクサスを追いかける。

 

ちなみにマーチはハッピーに連れられて魚を食べさせられていたため付いて来なかった。

 

 

「ラクサスさーん!今日こそはブロッコリーを食べてもらうよー!!」

 

どう考えても目的がすり替わっているが、本人はその事に気付かない。

 

 

しばらく走るとラクサスの後ろ姿が見えた。

 

「いた!ラクサーーーー」

 

そのとき、そのラクサスを何人もの人影が取り囲んだ。

 

「・・・!」

 

嫌な笑みを浮かべた大人たち。ラクサスは露骨に嫌な顔をする。

 

「んだよ、何の用だ」

 

「いえいえ、あの妖精の尻尾(フェアリーテイル )のマスターの孫とはどんな人物か、一目見にきただけですよ。ヒヒッ」

 

「さぞかし才能溢れる若者なんでしょうなぁ、なんせあのマカロフの孫ですから」

 

「そこでですねえ、我々の商団と契約しませんか?なーに大したことではありませんよ。

 貴方がもし、モンスターや動物の素材を手に入れたらそれを我々に売る。我々もあなたに商品を売る。単純なことですよ」

 

 

彼らは中規模の商団らしい。事業を拡大させるためにラクサスに目をつけた、というところか。ラクサスはますます不機嫌になった。

 

おそらく、こいつらは自分をダシに祖父であるマカロフにも近づくつもりだ。妖精の尻尾(フェアリーテイル )のマスターとその孫が愛用している商団、と宣伝する魂胆もあるかもしれない。

 

そうなれば箔がつく。こいつら自分が欲しいわけじゃない。自分の肩書きさえもらえれば十分なのだ。

 

「お断りだ。失せろ」

 

ラクサスが凄むと商団は少し怖気ついたように後ろに下がった。しかし、引きつった笑みを浮かべながらも言葉を紡いでくる。

 

 

「へ、へへへ、やっぱり身内が偉いと自分まで偉くなったと勘違いするんですかね」

 

「・・・」

 

「それに器も小さい。マカロフの孫なら全てを受け入れる寛容さも持ち合わせて欲しいものです」

 

 

いい加減ぶん殴りたくなってきた。ラクサスのイライラが頂点までたっする、直前。

 

「ちょ、ちょっとそこのおじさんたち!!」

 

ご立腹のアミクが男たちに指を指しながら現れた。

 

 

「なんだこのガキ」

 

 

「さっきから聞いてれば孫孫まごまご、うるさいなぁ!マスターの孫だとか関係ないじゃん!!おじさんたちの勝手な物差しで測らないでよ!!このV字ハゲ!!」

 

「ハ、ハゲとらんわ!!」

 

「子供が大人のやることに首を突っ込むんじゃねえ!」

 

「ひゃう!・・・」

 

男たちが凄んでアミクを睨むとアミクは涙目になって縮こまった。

 

 

その時。

 

 

「聞こえなかったか?失せろって言ったんだ」

 

 

バチバチと帯電しながらラクサスが男たちを脅した。

 

 

『ヒ、ヒイイイイイイ!!!?』

 

それにビビった商団はスタコラサッサと逃げだした。

 

 

「あ、ありがとラクサスさん・・・」

 

「・・・テメェ」

 

 

ラクサスはちらり、とアミクの方を向くと質問してきた。

 

「何であんなこと言ったんだ」

 

アミクを見定めるかのような視線。

 

 

だが、そんな視線を物ともせずにアミクは答えた。

 

「だってあのおじさんたちひどいんだもん!ラクサスさん自身の事は見てないしさ!ラクサスさんはラクサスさんでしょ?」

 

 

それを聞いてラクサスは大きく目を見開いた。

 

 

「人の事外面でしか見ない人なんかマスターに紹介なんてできないよ!」

 

 

そこまで言ってアミクはビクッと硬直し、恐る恐るラクサスを振り返った。

 

 

「え、ええと・・・もしかして余計なお世話でしたか・・・?」

 

「そうだな」

 

「うう・・・」

 

シュン、と落ち込んだアミクの頭をラクサスは乱暴に撫でた。

 

 

「ガキのくせに一丁前に大人ぶりやがって」

 

「いや、大人ぶったわけじゃないけど・・・」

 

 

アミクはチラ、と上目づかいに見上げた。ラクサスのほうが背が高いので自然とそうなるのだ。

 

 

「―――ラクサスさんがマスターの孫だろうとなんだろうと私は気にしないよ?きっとギルドの皆だってそう。世の中にはちゃんと人の事を見てくれる人だっているんだから。まずは身内(私たち)を信じてみてよ」

 

 

 

――――心が温かくなったような気がした。

 

今までラクサスを正当に評価する人はいたかもしれないが、自分に直接そんな事を言ってくれる人はほとんどいなかった気がする。それも自分よりもかなり年下の少女に面と向かって言われるとは。

 

 

 

少し、興味が湧いた。

 

 

 

「ラクサス。そう呼べ。『さん』はいらねえ」

 

 

「え?いいの、ラッくん」

 

 

「図々しさを飛び越えてきたなお前」

 

 

このことをきっかけにアミクとラクサスの交流が始まった。時折会話し、たまに仕事に一緒に行く。そんな関係がしばらく続き、当初こそ妖精の尻尾(フェアリーテイル)の中ではちょっとした話題にもなったがその内気にしなくなった。

マーチもナツもラクサスと共にいることを特に気にしてなかった。マーチとラクサスが話していた所を見かけたこともあったので仲は悪いわけではなかったと思う。

 

 

 

そうして数年が過ぎた。

 

 

その間に雷神衆が結成し、ラクサスは雷神衆と仕事に行くことが多くなった。アミクはアミクでリサーナの件があったりして塞ぎこんでいたためラクサスとは少し疎遠になっていた。

 

 

それでも、自分たちの間にある絆は壊れることなんてない、とアミクは信じていた。いや、今も信じている。

 

 

いつからかラクサスは妖精の尻尾(フェアリーテイル)で挑発的な言動をすることが多くなった。それと共にラクサスのアミクに対する態度も刺々しいものに変わっていった。

 

それでも変わらず自分に話しかけようとするアミクにラクサスは鬱陶しさを感じながらも、どこか愛しさを感じている自分がいることに気付かなかった。

 

 

 

 

「行くよ、ハッピー、マーチ!!」

 

「本気?ルーシィ、痛いよ」

 

「痛くてもやるのっ!!」

 

「なら、こっちも腹を括る、の」

 

 

ルーシィたちは同時にジャンプした。

 

 

「えぇい!!」

 

 

マーチは伸ばした爪で神鳴殿の一つを斬り裂いた。

 

 

 

 

 

グレイがウォーレンの念話によって妖精の尻尾(フェアリーテイル)のメンバーに神鳴殿を壊すことを伝えてきた。

 

 

少し一悶着あったが、全員一つになって神鳴殿を壊す。マーチもその一人だ。隣の神鳴殿はルーシィとハッピーが二人で壊していた。

 

 

「やった、の!!」

 

 

無事に破壊することができて喜んだのも束の間。

 

 

 

バチバチバチ!!!

 

 

「にゃああああああ!!?」

 

 

全身を激痛が駆け抜けた。覚悟はしていたが予想以上に痛い。そのまま仰向けに倒れ込む。

 

 

『み・・・みんな・・・無事・・・か・・・?』

 

 

その言葉を最後にウォーレンの声は聞こえなくなった。

 

『まったく・・・おまえたちは何という無茶を』

 

『お互い様・・・って事で』

 

『ふふ・・・本当・・・いいギルドだな私たちは・・・』

 

『ラクサスが反抗期じゃなかったらもっとな』

 

「反抗期で済ませちゃうなんて・・・なの」

 

 

呆れたように言うマーチだったがそんな彼女の顔にも笑顔が浮かんでいた。

 

 

 

 

<神鳴殿 機能停止>

 

 

術式の情報ボードに表れたその文章をみてラクサスは呆然となった。

 

 

「ほら、ね?」

 

 

アミクは得意げにラクサスを見る。

 

 

それから、ボードには誰が何個の魔水晶(ラクリマ)を壊したかが書かれた。良く見るとマーチも一個壊している。

 

 

「・・・ギルドを変える必要なんかないって分かったでしょ?みんな同じ輪の中にいるんだよ」

 

みんなが一体となって立ち向かう。そんなことができる妖精の尻尾(フェアリーテイル)は十分魅力的だ。

 

 

「その輪に入ろうとしねェ奴がどうやってマスターになるんだ!?ラクサス」

 

 

ナツもラクサスに語りかけた。

 

 

 

それに対する、さっきから震えているラクサスの答えは。

 

 

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 

 

咆哮だった。ラクサスに触っただけで消し飛ばされてしまいそうな雷が纏わりつく。

 

魔力の高ぶりを感じ、アミクとナツは戦慄した。

 

 

「支配だ」

 

 

そう言い放つラクサスの目は狂気を孕んでいた。

 

 

 

 




週一ぐらいのペースになってるな最近・・・。
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