妖精の尻尾の音竜   作:ハーフィ

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なんとか近いうちに出せました。


ラクサスの妖精の法律(フェアリーロウ)

ラクサスを中心に大きな魔力の高まりを感じる。

 

妖精の法律(フェアリーロウ)・・・!マスタージョゼを一撃で倒したあの・・・」

 

「よせ、ラクサス!!」

 

ガジルが呆然となり、ナツは床を這ってでもラクサスを止めようとした。

 

 

「反則だろ!!!“敵と認識した者全て”が攻撃対象なんてよォ・・・!!」

 

 

「うおおおおお!!!」

 

「ラクサス!!」

 

 

「おおおお!!!」

 

アミクがラクサスの名を呼んでも雄叫びを上げ続ける。

 

 

その時。

 

 

「やめて―――っラクサス!!!」

 

何とレビィがやって来たのだ。

 

 

「レビィ!?」

 

 

「バカが・・・何しに来た・・・」

 

レビィが現れてもラクサスは無反応だ。

 

それでもレビィは、何かを必死に伝えようとする。

 

「マスターが・・・あんたのおじいちゃんが・・・危篤なの!!」

 

 

「え・・・?」

 

アミクは頭の中が真っ白になった。

 

 

(おじいちゃんが・・・)

 

ラクサスもその言葉を聞いてやっと反応した。

 

 

「だからお願いっ!!もうやめてっ!!マスターに会ってあげてぇっ!!!」

 

レビィが悲痛にラクサスに呼びかける。

 

 

「き、危篤?じっちゃんが・・・死ぬ?」

 

ナツも呆然と言葉を紡ぐ。

 

 

まさか、それほど深刻なことなっていようとは。アミクはあまりのショックに思考停止してしまっていた。

 

自分の祖父同然であるマカロフが死ぬ、と聞いて冷静でいられるはずがない。

 

 

「ラクサスゥ!!!」

 

それはラクサスも同じだった。だが―――――

 

 

 

「丁度いいんじゃねえか。これでこのオレがマスターになれる可能性が再び浮上した訳だ」

 

今更止まれない。ラクサスは醜悪な笑みを浮かべて言いきった。

 

 

彼にとってはそれが喜ばしい事だとばかりに。

 

(違う・・・)

 

それを聞いてアミクも少し冷静になった。

 

「ヤロウ・・・」

 

「・・・・」

 

ラクサスのあまりの言葉にガジルたちは言葉を失う。

 

 

「ふははははっ!!消えろ妖精の尻尾(フェアリーテイル)!!オレが一から築き上げる!!!誰にも負けない!!!皆が恐れ戦く最強のギルドをなァァ!!!」

 

(違う・・・!)

 

 

光の輝きが増し、床がめくれ上がった。

 

「そんな・・・」

 

「おまえは・・・何でそんなに・・・!」

 

レビィが泣き崩れ、ナツがラクサスを睨む。

 

 

「違う!!それは、ラクサスの本心じゃない!!」

 

そんな中、血を吐くようにアミクは叫んだ。

 

 

そして――――

 

 

 

「『妖精の法律(フェアリーロウ)』!!!発動!!!」

 

 

 

無慈悲な光が全てを包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

ラクサスは荒い息を吐いていた。さすがにこの規模の魔法を使うとなると負担も並大抵ではないのだ。

 

彼は震えながら笑みを浮かべる。

 

 

「オレは・・・ジジィを超えた・・・!」

 

 

そう言いながらも、なぜか心に浮かぶのは「やってしまった」という思いばかりだ。

 

 

なぜだ、これでいいはずだ。これで最強の妖精の尻尾(フェアリーテイル)を作ることができる・・・。

 

 

そこで、ラクサスは誰かが咳こむ声に気付いた。

 

「ケホッ、ケホッ!」

 

「!」

 

煙のせいでよく見えなかったが、アミクたち三人もレビィも無事のようだ。

 

 

「そ、そんなバカな・・・!!」

 

 

ラクサスは震え上がった。

 

 

「何故だ!!?なぜ誰もやられてねえ!!!」

 

 

ラクサスの焦ったような叫びを尻目にガジルはレビィに問いかけた。

 

「おまえ・・・無事か」

 

 

「うん・・・私は平気。アミクとナツは?」

 

 

「だ、大丈夫」

 

 

「・・・」

 

「ナツも大丈夫だよ」

 

 

みんな無事であることにラクサスは愕然となった。

 

 

「どうなってやがる!!あれだけの魔力をくらって平気なわけねえだろ!!!」

 

 

そこに、フラフラとしながらある人物が聖堂の入口に現れる。

 

 

「ギルドのメンバーも街の人も皆無事だ」

 

そう口にしたのは、ボロボロのフリードだった。

 

 

「フリード!!?」

 

 

「誰一人としてやられてはいない」

 

息を荒らげながら言うフリードに対してラクサスは必死に言葉を放った。

 

 

「そんなハズはねえっ!!!妖精の法律(フェアリーロウ)は完璧だった!!!」

 

「それがおまえの『心』だ。ラクサス」

 

 

ラクサスは目を見開いた。

 

 

「おまえがマスターから受け継いでいるものは力や魔力だけじゃない」

 

 

祖父であるマカロフからは実力以外にも受け継いでいるものがあったのだ。

 

 

「仲間を思うその心」

 

 

ラクサスとは程遠そうな言葉が出て来た。

 

 

妖精の法律(フェアリーロウ)は術者が敵と認識した者にしか効果がない。言ってる意味わかるよなラクサス」

 

 

つまり、ラクサスはアミクたち妖精の尻尾(フェアリーテイル)を『敵』と見なしていないということだ。

 

 

アミクは嬉しそうに笑って言った。

 

 

「魔法に嘘はつけないね!それがラクサスの『本音』ってことだよ」

 

 

それを聞いてもラクサスを認めたくないのか叫び続けた。

 

 

「違う!!オレの邪魔する奴は全て敵だ!!!敵なんだ!!!」

 

「もうやめるんだ、ラクサス。マスターの所に行ってやれ」

 

「ジジィなんかどうなってもいいんだよ!!!」

 

ラクサスは足を踏みしめる。

 

 

「オレはオレだっ!!!ジジイの孫じゃねえ!!!ラクサスだっ!!!ラクサスだぁああああーーっ!!!」

 

 

それはラクサスの魂の叫び。アミクにはラクサスが孤独の中にいた哀れな獣のように見えた。

 

 

「そんなのっ、誰だって知ってるっ!!!」

 

アミクはフラフラと身を起こした。

 

「おじいちゃんの孫だから、なんなの?血の繋がりが、そんなに大事なの?」

 

そして、アミクは前々から言いたかったことを言った。

 

「結局、そういうの一番気にしてるの、ラクサス自身じゃん!!」

 

好き勝手振舞っているように見えて、ラクサスは血筋にずっと囚われていたのだ。

 

 

「てめぇに・・・何が分かる・・・!!」

 

 

自分と行動を共にしていただけで何が分かる。

 

アミクはラクサスではない。ラクサスの苦しみはラクサスにしか分からない。なのに、何が分かると言うんだ・・・・!!

 

 

「分からないから!!互いに手を伸ばすんだよ!!ラクサスっ!!!」

 

 

「黙れえええええええええええっ!!!アミクゥゥゥゥゥゥアアアアアアアアア!!!」

 

 

アミクとラクサスは同時に拳を振り上げた。

 

 

「うおおおおおあああああああ!!!!」

 

「ーーーーーあああああああっ!!!!」

 

「オレの前から消えろアミクゥゥゥ!!!」

 

「絶対に!!君を止める!!!」

 

アミクは拳に音を、ラクサスは拳に雷を纏った。

 

 

「ギルドは、君一人だけのものじゃない!!私たちみんなの帰る場所なんだ!!!」

 

 

互いの拳が交差した。雷と音がすれ違い、相手に向かって行く。

 

そしてーーーーー

 

 

「ーーーーか、はっ!!!」

 

その拳が届いたのはラクサスの方だった。頭を殴られたアミクは後ろに吹っ飛ぶ。

 

「アミク!!」

 

だが、アミクは空中で体勢を立て直して着地した。だが、とても無事とは言えない姿だった。

 

頭からは血が流れており、荒く呼吸をくり返している。しかし、その顔には笑みが浮かんでいる。

 

 

「・・・私は、この程度で済んでるよ。やっぱり、無意識に手加減しちゃってるよね?」

 

「・・・!!」

 

ラクサスが本気でやれば手負いのアミクの首をポッキリやってしまう事だってできるだろう。しかし、アミクは今こうして立っている。

 

「君は、優しい。君が喜んで仲間を殺すなんてできるわけがないんだよ」

 

確信しているかのような口調で言うアミク。その真っ直ぐな瞳が見ていられなくなりラクサスはアミクに飛びかかった。

 

 

「この・・・死に損ないがあっ!!!」

 

 

そして再びアミクの顔を殴りつけようとする、がーーーー。

 

 

「オレを忘れんじゃねえっ!!!」

 

ナツがアミクを押しのけ、ラクサスに蹴りを放つ。しかし、それを物ともせずにナツを殴り飛ばし、ついでにアミクを叩き落とした。

 

「てめぇらごときがオレに勝てる訳・・・」

 

息が荒いラクサスはそこで言葉を止め、驚愕する。アミクが口から血を流しながらも立ち上がろうとしているからだ。

 

向こうではナツもヨロヨロと立ち上がっている。

 

「アミク・・・ナツ・・・」

 

レビィがあまりに痛々しさに涙を浮かべた。

 

一方フリードは二人のしぶとさに思わず息を呑む。

 

「ギルドは、死んでも渡さねえぞ・・・」

 

ナツもアミクと同じ思いだ。ギルドはみんなのものであり、だれか特定の人物が独占していいようなものではない。

 

「黙れェ!!!ザコがオレに説教たァ100年早ェよ!!!アァ!!?」

 

激昂したラクサスは近くにいたアミクを執拗に蹴り付けた。何度も何度も。そして、最後に一際強く蹴り、吹っ飛ばす。

 

 

今度こそ動かないだろう、と思ったラクサスだったが・・・。

 

 

「まだ、立つのか・・・」

 

 

未だ、ボロボロながらも立ち上がろうとするアミクを見てフリードは戦慄した。彼女の瞳に諦めの色はなく、こちらが気圧されそうな光を灯している。もはやそれは執念と呼べるものであり、狂気に至ってるようにも見えた。

 

 

「ハァ、ハァ!!ハァ、ハァ!!!」

 

 

「もうやめてアミク・・・死んじゃう・・・」

 

レビィは自分の無力を嘆いた。自分よりも年下の少女が体を張っているのに、自分はこうして見ることしかできない。

 

「この(アマ)ぁ・・・!!」

 

「オレを忘れんじゃねぇって、言っただろ!!」

 

ナツが一気にラクサスに接近した。

 

「・・・グッ!」

 

不意を突かれ、防御も回避も間に合わない。

 

「うおおおおああああああ!!!」

 

ナツはそのままラクサスの脇腹を殴った。

 

 

「がは!!」

 

流石に痛みを感じたラクサスは、咄嗟にナツの頭を掴み床に叩きつける。そして、前方にぶん投げた。

 

 

「ぐほぁ!!」

 

床を滑りながら床に足をつくナツ。そんなナツを見てラクサスは一気にカタをつけることにした。

 

「跡形もなく消してやるァ!!!」

 

ラクサスは両手を掲げると雷でできた方天戟を創り出した。

 

(・・・まずい!!)

 

アミクはダメージのせいで動けないナツの前に両手を広げて立つ。

 

「ア、ミク・・・どけろ・・・」

 

「よせ!!ラクサス!!!今のアミクにそんな魔法を使ったら・・・!!」

 

フリードが慌ててラクサスに叫ぶが、一歩遅かった。すでにラクサスは聞いておらず、アミクを見てもいなかった。自棄になってしまっている。

 

 

「『雷竜方天戟』!!!」

 

ラクサスが方天戟を思いっきり投げた。雷の槍がアミクに向かって一直線に進む。

 

「殺す気かぁっ!!!」

 

「くそぉおおおっ!!!や、やめろおおおおおおっ!!!」

 

「イヤーーーーーー!!!」

 

グリードが、ナツが、レビィが。叫び声をあげた。

 

「・・・!!」

 

 

向かってくる方天戟を見てアミクは思わず目を瞑った。

 

その時。

 

 

カクン

 

 

方天戟が急に方向を変える。それが向かった先は。

 

 

「うおおおおおっ!!!?」

 

鉄の腕を伸ばしたガジルだった。方天戟がガジルに直撃し、そのまま感電する。

 

「があっ!!!」

 

ガジルは満身創痍になりながら倒れ込んだ。

 

「ガジル・・・」

 

「鉄・・・まさか自ら避雷針に・・・」

 

鉄は金属なので雷を引き寄せやすい。それを利用して、鉄を長く伸ばすことで避雷針の役割を担ったのだろう。

 

 

「ガジル!!」

 

アミクが思わず叫ぶと、ガジルは力強く言い放った。

 

「行け」

 

 

その声に視線で応えるとアミクは残り少ない魔力をかき集め、絞り出した。後ろにいたナツも同様だ。

 

「お、おのれ・・・!!」

 

ラクサスはガクガクと震えていて身動きが取れていなかった。魔力を使い果たした上に今までのアミクたちの攻撃によるダメージも大きいのだ。

 

「ナツ、いくよ!!」

 

「おう!!」

 

そんなラクサスにアミクとナツは突っ込んでいった。二人で同時に拳を構える。炎と音が融合する合体魔法(ユニゾンレイド)

 

「おのれェェェェっ!!!」

 

まさか、自分が。こんな弱者どもに。負けるというのか!

 

「『火炎音響滅竜拳』!!!」

 

二人は全力でラクサスの腹部を殴った。

 

「がはっ!!!」

 

ラクサスが吐血する。少し心が痛みながらも、そこでアミクは止まらなかった。

 

「『音竜の響刻(レガート)』!!!」

 

音を纏った指先でラクサスの脇腹を抉るように振るった。

 

 

 

そこで。

 

 

 

「う・・・・ぁ・・・」

 

 

かくん、と膝をついてしまった。

 

 

(も、もう・・・限界・・・・!!)

 

すでに魔力がすっからかんだ。ダメージも相まって体が言うことを聞かない。

 

「・・・後は、ナツが決めて!!!」

 

アミクの声に後押しされるようにナツの魔力が高まった。

 

「その魔法、竜の鱗を砕き、竜の肝を潰し、竜の魂を刈りとる・・・」

 

レビィが呟き、フリードはガクガクと震える。

 

「『滅竜奥義』・・・」

 

炎を纏って向かってくるナツ。その矛先であるラクサスの心の中は疑問と動揺でいっぱいで。ただ、信じられないものを見ているかのように目を見開いているだけだった。

 

そして。

 

 

「『紅蓮爆炎刃』!!!」

 

炎を纏った両腕を振るい、爆炎を伴った螺旋状の強烈な一撃を叩き込んだ。

 

一匹の竜が宙を舞う。そのまま床に落下し、転がっていった。

 

(ラクサスが・・・)

 

動きを止めた時にはすでに彼の目は白目を剥いていた。身じろぎ一つもしない。

 

(負けた)

 

ナツが勝利の雄叫びをあげる。

 

 

アミクはその雄叫びを食べながらラクサスの元に這っていく。

 

 

「ラク、サス」

 

なんとか辿り着き、彼の体に手をかざした。

 

「『治癒歌(コラール)』・・・」

 

わずかに回復した魔力でラクサスの傷を癒した。ラクサスのことだから生きているはずだが、オーバーキル気味に攻撃を加えてしまった気がする。だから、少しだけ回復させるつもりだ。

 

その後はナツとガジルを・・・。

 

(あ、れ・・・?)

 

だが、そこでアミクの意識が遠くなった。もう魔力が無くなってしまったらしい。それに疲労がハンパないせいで体が休息を求めているのだ。

 

アミクはナツたちが自分を呼ぶ声を聞きながら気絶した。

 

 

 

 

 

こうして、バトル・オブ・フェアリーテイルは終結したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




主人公がナツのセリフ掻っ攫っていっちゃった件。


ちなみにナツだけ滅竜奥義ぶちかましたのは、二人も滅竜奥義やっちゃうと流石に死ぬんじゃないかなぁ、と要らぬ心配をしたためです。

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