妖精の尻尾の音竜   作:ハーフィ

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ニルヴァーナ編スタート・・・テンション低めですうぇーい。

でもやっとウェンディ出せるぜ・・・!最高のロリ!あ・・・。


ニルヴァーナの協奏曲
連合軍、集結!


「いらっしゃいませー♪ご注文はお決まりですか?」

 

アミクは今、ホワイトブリム、黒い服の上に白いエプロン、そして白いニーソックスという服を着ていた。

 

 

 

つまりはメイド服である。

 

彼女が何をやっているかって言うと、レストランのウェイトレスだ。当然仕事である。満面の営業スマイルで注文を聞く。

 

 

「えーこの灼熱イカスミパスタとナイトメアコーラ。あとレインボータルトを頼むっす」

 

「拙者はGGバイキング。ボンバーオニオンスープもお願いするでござる!」

 

「はい承りましたー!」

 

「あ、申し訳ないっす!メタルギア・リゾッドも追加で!」

 

「了解でーす!」

 

 

 

注文を全て書きとったアミクはルーシィの方を向く。すると――――。

 

 

「――――ってなにやってんのよ、あたしはっ!!」

 

 

同じメイド服姿の金髪美少女が我に返ったかのようにメモ帳を床に叩きつけた。

 

 

「急にどうしたの?」

 

「なんであたしたちこんな恥ずかしいコスでウェイトレスなんてやってるのよ!?」

 

「似合ってるよ?」

 

「アンタもね!・・・ってちがーう!!」

 

ルーシィは頭を抱える。

 

「ルーシィ、これも仕事のうちだぞ」

 

そこにウェイター姿のナツが料理を運んできた。意外と似合っているが、ナツが真面目にこういうのをやっているのを見ると違和感しかない。

 

だっていつもデストロイ!!ばっかしてて繊細な作業とか苦手そうなんだもん。

 

「こんなの全然魔導士の仕事じゃないじゃない!」

 

 

「このレストランのシェフが魔法料理を作ってる、の」

 

「マーチのメイド服似合ってるー!」

 

マーチやハッピーもメイド服やウェイター服を着て仕事をしていた。ぶっちゃけ二匹はマスコットみたいな存在だ。

 

 

「ンだ。オレたちも手伝ってやってんのに」

 

「ってお客さんの料理食べちゃダメでしょー!!」

 

自分が運んできた料理を自分で食べ始めるナツ。アミクはそんなナツの頭を叩く。

 

立派な営業妨害だ。

 

 

「たまにはウェイターの格好もいいもんだぜ」

 

「服着てから言って!!」

 

今度はグレイが飲み物を運んできた。

 

 

――――――パンツと蝶ネクタイのみという完全なる変態の格好で。

 

 

「誰の家賃の為にやってんだ?」

 

「あう・・・ごめんなさい」

 

 

そう、今回はルーシィの家賃が危ないためアミクたちが仕事に付き合ってあげているのだ。

 

 

「いや、でも服は着てよ。この店の評判下げる気?」

 

「あ、ハイ」

 

 

 

アミクが服を差し出すと素直に着始めた。

 

 

「それに見ろ」

 

 

着替えながらグレイはある方向に目を向けた。

 

 

そこにはアミクたちと同じくメイド服を着たエルザがあるテーブルに近付いている所が見られた。そして――――

 

 

「注文を聞こうか」

 

テーブルの上に座る、という大胆な姿勢で注文をとるエルザ!

 

 

「あんなにノリノリの奴もいる」

 

「店間違えてない?」

 

恥ずかしいのかアミクが頬を染めながら言った。

 

 

ともかく、アミクたちは順調(?)に仕事をこなしていったのだった。

 

 

 

「いやーお疲れ様。スっかし最近の若い子は働きモンだねぇ。またいつでも来なさいよ」

 

 

このレストランのオーナーであるヤジマが人好きのする笑顔を浮かべる。

 

 

「はい、今日は勉強になりました」

 

「エルザ、すごいノリノリだったもんね」

 

「ミラちゃんの気持ちが少しは分かったよ」

 

『ミラはおまえと違って服脱がないけどな』

 

ウルが呆れたように呟くのをアミクをしっかり聞きとった。

 

「ふぅ~食った食った」

 

「あんた、店のモン食べすぎ!!」

 

「ナツ、食べた分のお金全部ナツが出す、の」

 

「うっへぇ!!それは勘弁してくれぇ!!」

 

一方、ナツはマーチの言葉に悲鳴を上げていた。

 

「あの、評議会を辞めたと聞いたんですけど・・・」

 

アミクはおずおずと質問した。

 

 

先日、評議会支部に行った時にヤジマが辞めたことを知った。そしてギルドに帰ってマカロフから詳しい話が聞いたのだ。

 

「「評議会!!?」」

 

ナツとグレイがびっくりしていた。二人はヤジマが元々評議員だったことを知らないらしい。

 

 

「アミクちゃんたちが気に病むことはないよ。・・・ところでアミクちゃんは今の評議会についてどれくらい知っておるのかな?」

 

「・・・以前とは違う評議会を立ちあげようとしている、みたいなのは感じています・・・」

 

ヤジマはアミクの言葉に頷いた。

 

 

「うむ、ズーク・・・いやズラールだったかの」

 

「ジェラールです」

 

エルザがすかさず訂正した。

 

 

「そう!そのズラールとウルティアの裏切りで大変な失態をスたからねえ。今はアミクちゃんの言う通り新生魔法評議会を立ちあげるべく各方面に根回スとるみたいよ」

 

 

「評議員が辞めていっているのもその一貫って事ですか」

 

「そういうことだねえ」

 

 

ヤジマを含め何人かの評議員が既に引退していることも聞いた。メンバーも新しくするつもりなのだろう。

 

(・・・ウルティア・・・!?)

 

ウルは今聞いた名前に心臓が止まる思いがした。その名前は、まさか・・・いや、そんなはずは・・・。

 

 

「君たちにも本当に迷惑をかけたね。申訳ないよ」

 

ヤジマは申し訳なさそうに頭をポリポリと掻く。

 

 

「いえ・・・ヤジマさんは最後までエーテリオン投下に反対されていたと聞きました。行動を恥じて引退など・・・」

 

ヤジマはあの場で唯一反対を貫いた人物だ。さらに、責任を感じ自主的に引退している。

 

 

「ワには政治は向かんよ。やはり、料理人の方が楽いわい」

 

確かに今のヤジマは評議員だったころに比べて遥かに生き生きしているように見えた。評議員だったころは醜い責任の押し付け合いや何の生産性もない言い合いなどで辟易していたのだろう。

 

思っていたよりずっと元気そうでアミクは安心した。

 

「確かにヤジマさんの料理おいしいですもんね。評議員だった頃から」

 

前に何度かヤジマから料理を振るわれたことがあって、ほっぺたが落ちるほどのおいしさだったことを憶えている。

 

「ワがこうしてレストランを開いているのも、アミクちゃんの言葉があったからなんだよねえ」

 

「え?」

 

「君がレストラン開いたら絶対繁盛する、って力説てたからちょっと挑戦してみようと思ったのよ」

 

 

そう言えばそんなこと言ってた気がする。

 

「結果はこの通り。ほっほっほ・・・ところでナツくん、グレイくん」

 

ヤジマは話の矛先を二人に向けた。

 

「これから評議院は新しくなる。ワはもういない。妖精の尻尾(フェアリーテイル)を弁護る者はほとんどいないと言っていいだろう」

 

 

今まではアミクの功績やヤジマがなにかとフォローに回ってくれたから大きな問題もなかった。しかし、今後はそうもいかない。

 

 

「アミクちゃんのおかげでそう簡単に何かされるとは思わんが、彼女にばかり負担を掛けてはいけないよ。今後はそういうこともよーく考えて行動なさい」

 

「「行動ます」」

 

 

ヤジマの口調が二人に移った。

 

 

「それじゃマー坊によろくな」

 

「今日はありがとうございました」

 

「客としても来ますねー!」

 

アミクとしてはヤジマの料理は気に入っているので個人的に来たいところだ。

 

 

アミクたちはヤジマに手を振ってギルドへと帰っていった。

 

 

 

ウルティア・・・か。

 

 

 

ヤジマは今も行方不明の元評議員を思い浮かべていた。

 

 

今はどこにおるのかのう・・・

 

 

 

 

 

 

アミクはさっきから黙ったままのウルに違和感を覚える。なんだか様子がおかしい気がする。アミクは『声送(レチタティーヴォ)』を使ってこっそり話しかけた。

 

 

『どうしたの?ウル』

 

『・・・!アミクか。いや、大したことではないけど・・・』

 

ウルは歯切れ悪そうに言うが、アミクはなんとなくウルが隠し事をしているように感じた。

 

まぁ、だが特に追求しない。ウルにも知られたくないことぐらいあるだろう。

 

『ふーん・・・それならいいけど。でも、私いつでも相談に乗るから』

 

アミクの言葉にちょっと心が軽くなったウル。まだ話す気持ちにはなれないが、きっと彼女なら親身になってくれるだろう。

 

 

とにかく今はまだ、彼女がそうと決まったわけではない。・・・そもそもそんなことはありえないのだ。

 

 

そう、『ウルティア』が自分の娘(・・・・)かもしれないなど、あるはずがない。

 

 

なぜなら彼女は、もうこの世にいないからだ。

 

 

 

 

 

 

「何コレ?」

 

ある日、ルーシィは空中に浮かんでいる図をみてアミクに聞いた。

 

「闇ギルドの組織図を書いてみたんだって」

 

「あ、書いたのオレ」

 

リーダスが控えめに自己主張した。

 

「どうしてまた?」

 

「近頃、動きが活性化してるみたいだからね。ギルド同士の連携を強固にしないといけないのよ」

 

ミラの言葉にマーチが同意するように頷いた。

 

 

「確かに、孤立してると狙われちゃう、の」

 

連携していれば情報も得やすく、対処もしやすい。互いにライバルとはいえギルドの同士の繋がりは大事なのだ。

 

「この大きいくくりは何だよ?」

 

「ジュビア、知ってますよ。闇ギルド最大勢力、バラム同盟」

 

 

様々なギルドが線で繋がり、枝分かれしている中、特に目を引く三つのギルドが中心でひと括りにされていた。

 

 

バラム同盟は『六魔将軍(オラシオンセイス)』『悪魔の心臓(グリモアハート)』『冥府の門(タルタロス)』の三つのギルドで構成されている闇の最大勢力。

 

それぞれが幾つかの直属ギルドを持ち、闇の世界を動かしているのだ。

 

 

「タルタルソース?」

 

冥府の門(タルタロス)な」

 

アミクの言い間違いをグレイが正した。

 

組織図の端っこには一つのギルドがどことも繋がらずにポツン、とあった。

 

大鴉の尻尾(レイヴンテイル)・・・)

 

マカロフの息子であるイワンが立ちあげた闇ギルド。このギルドはどこともつるまずに独立しているらしい。

 

そこで、ルーシィがあるギルドの名前に反応する。

 

「あ!鉄の森(アイゼンヴァルト)って!!」

 

 

「あー、エロゴールとカゲちゃんたちがいたギルドね」

 

「いい加減名前憶えてあげろよ・・・」

 

いや、憶えているがふざけただけだ・・・本当だよ?

 

「カゲちゃんといえば前にファンタジア見に来てたよ」

 

「え!?マジで!?」

 

「出所したんだな、あいつら」

 

パレード中にちょっと見えただけだが、元気そうだったのでよかった。

 

ちょっと話が脱線したので元に戻す。

 

「で、あれは六魔将軍(オラシオンセイス)ってギルドの傘下だったのか」

 

 

つまり六魔将軍(オラシオンセイス)はかなり厄介だった鉄の森(アイゼンヴァルト)を従えていたわけだ。

 

「雷神衆が潰した屍人の魂(グールスピリット)もそうだ」

 

「ジュビアもガジル君もファントム時代に幾つか潰したギルドが全部六魔将軍(オラシオンセイス)の傘下でしたー」

 

「笑顔で言うな」

 

ルーシィはビビって体を抱きしめた。

 

「うわ~、怒ってなきゃいいけど」

 

「そういえばアカリファで私たちが相手した裸の包帯男(ネイキッドマミー)六魔将軍(オラシオンセイス)の傘下らしいよ」

 

「もう手遅れ感!!」

 

がっつり六魔将軍(オラシオンセイス)にケンカ売っちゃった気がするルーシィだった。

 

「それに私だって結構闇ギルドと遭遇してるからね・・・その中に六魔将軍(オラシオンセイス)の傘下ギルドもあったかもしれない」

 

壊滅、とまではいかないが多くのメンバーを改心させたり捕らえたりしたせいで弱体化したギルドも多いはずだ。

 

 

こうしてみると妖精の尻尾(フェアリーテイル)は――――ガジルとジュビアは別のギルドでのことだが――――数多くの闇ギルドを機能不全にしている。

 

まさに闇ギルドスレイヤーだ。

 

 

「でもよ、噂じゃ六魔将軍(オラシオンセイス)はたった6人しかいねーらしい」

 

「どんだけ小せェギルドだよって」

 

男たちがバカにしたように笑うが、言いかえればたった6人で最大勢力の一つを担っているわけだ。

 

それだけの強さも持ち合わせていることになる。侮れない。

 

 

そのとき、マカロフがやってきた。

 

「その六魔将軍(オラシオンセイス)じゃがな・・・ワシらが、討つことになった!!」

 

その言葉で、ギルド中に衝撃が走る。まさか、今話題にしている闇ギルドを本当に相手することになるとは思わなかったのだ。

 

 

「お、おかえりおじいちゃん」

 

「違うでしょ!」

 

 

アミクもテンパってるのだ。察してくれ。

 

「マスター、一体・・・どういうことですか?」

 

エルザも流石に予想外だったのか困惑した声を出す。

 

 

「先日の定例会で、何やら六魔将軍(オラシオンセイス)が動きを見せている事が議題に上がった。無視はできんという事になり、どこかのギルドが奴等をたたく事になったのじゃ」

 

「それを・・・妖精の尻尾(うち)が?」

 

「またビンボーくじ引いたな、じーさん」

 

アミクとグレイの言葉にマカロフは首を振る。

 

 

「いや・・・今回ばかりは敵が強大すぎる。ワシらだけで戦をしては、後々バラム同盟にココだけが狙われる事になる。そこでじゃ」

 

 

マカロフは言葉を区切って拳を握りしめた。

 

 

「我々は連合を組む事になった」

 

『連合!!?』

 

 

連合。つまりは妖精の尻尾(フェアリーテイル)だけでなく他のギルドとも協力する、という事なのだろう。

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)青い天馬(ブルーペガサス)蛇姫の鱗(ラミアスケイル)化猫の宿(ケット・シェルター)。4つのギルドが各々メンバーを選出し、力を合わせて奴等を討つ」

 

 

「それは・・・すごいね」

 

化猫の宿(ケット・シェルター)?そんなギルド聞いたことない、の」

 

「オレたちだけで十分だろっ!!てかオレ一人で十分だ!!」

 

「無茶言わないの」

 

「マスターは後々の事を考えてだな」

 

ギルドのみんな興奮して騒ぎ始めた。なんせこういうことは初めてなのだ。だから未知への不安と期待が渦巻いているのだ。

 

 

『・・・それにしても、相手はたったの6人なのに・・・そこまでするとは相当ヤバい奴らなんだろうね』

 

 

ウルの警戒を含んだ声にはアミクしか気付かなかった。

 

(・・・もし、私が選ばれたら・・・今度こそアレ(・・)の使いどきかもね・・・)

 

アミクは自分が持っているある物に思いを馳せた。

 

 

 

 

ゴーン、ゴーン、ゴーン

 

 

マーチ「で」

 

ルーシィ「何コレ」

 

アミク「アニメのアレだよ。場面切り替えのやつ」

 

 

 

「なんでこんな作戦にあたしが参加することになったのー!?」

 

馬車の中でルーシィが頭を抱えて嘆く。何でこうなっていたのかわからない。いつの間にか、あれやこれやのうちに自分も参加することになっていたのだ。

 

 

「オレだってめんどくせーんだ。ぶーぶーゆーな」

 

「マスターの人選だ。私たちはその期待に応えるべきじゃないのか?」

 

「まぁ、おじいちゃんだって私たちならできるって判断して送り出したわけだし。がんばろうよ!」

 

「前向きねぇ・・・」

 

アミクのそういう部分はちょっと見習いたいところだった。

 

「そもそも、バトルならガジルやジュビアだっているじゃない」

 

「二人とも、別の仕事行っちゃった、の」

 

「てか!オレ一人で十分だっての!!」

 

「まだ言ってる・・・」

 

ナツが未だに文句を言ってるが、もう決まった事なので納得してもらおう。

 

 

「結局いつものメンバーなのよね」

 

六魔将軍(オラシオンセイス)討伐に選出されたのはナツ、アミク、ハッピー、ルーシィ、マーチ、グレイ、エルザの5人と2匹、つまり最強チームである。

 

 

「その方がいいだろう?今日は他のギルドとの初の合同作戦。まずは同ギルド内の連携がとれている事が大切だ」

 

 

「そうそう。だったら私たちがうってつけ・・・うぷっ!?」

 

急にアミクが口を押さえて苦しみ出した。

 

 

「あ、『平衡感覚養歌(バルカローラ)』切れちゃった?」

 

「今、ちょうど集合場所が見えてきたところなのに・・・」

 

少し遅かったようだ。

 

「う、うぽぉっ!・・・オレ、もうお”り”でいぐ・・・!」

 

「もう少しよ!頑張って!」

 

『こんなんで大丈夫か・・・?』

 

ウルは馬車内の惨状を見てちょっと不安になるのだった。

 

 

 

集合場所である青い天馬(ブルーペガサス)のマスターボブの別荘。アミクたちは早速中に入っていた。

 

「ボブさん、こんなところに別荘持ってたんだ」

 

「趣味悪いわね」

 

「ま、まだ着かねえのか・・・」

 

「もう着いてるよナツ・・・」

 

 

アミクもナツもまだ具合が悪い。ホントどうにかしてほしいこの体質。

 

「他はどんな人たちが来るんだろ・・・ちょっと緊張してきたな。仲良くできるかな」

 

「そう身構えなくてもいい。アミクならすぐに打ち解けられるはずさ」

 

緊張するアミクをエルザが励ました。

 

 

その時、急に中が暗くなった。かと思うとホールの中心当たりにスポットライトのように光が降り注ぐ。

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)のみなさん」

 

「お待ちしておりました」

 

その光の中に3人の影が浮かび上がった。

 

「我ら青い天馬(ブルーペガサス)より選出されし、トライメンズ」

 

 

 

 

「百夜のヒビキ」

 

 

 

「聖夜のイヴ」

 

 

 

「空夜のレン」

 

 

そして現れたのは3人の美男子。アミクとルーシィは思わず見惚れてしまった。

 

「か、かっこいい・・・!!」

 

「顔面偏差値ヤバい・・・!!」

 

「キザッたらしい、の」

 

マーチだけ辛辣だった。

 

それに比べて、とルーシィは後ろを向いた。

 

「しまった!服着るの忘れた!!」

 

「うぷ・・・」

 

「こっちはダメだぁ」

 

「比べちゃだめだよ・・・」

 

グレイはパンツ一丁、ナツは酔いのためダウン。なんて妖精の尻尾(フェアリーテイル)の男衆はカオスな状態になっていた。控えめに言っても残念だ。

 

 

「初めまして妖精女王(ティターニア)

 

「噂に違わぬ美しさ」

 

「さあ・・・こちらへ」

 

 

トライメンズはエルザを誘って壁の近くあったソファに座らされた。いつの間にかテーブルまである。

 

 

「おしぼりをどうぞ」

 

「水割りでいいのかな?」

 

「いや・・・」

 

この状況にエルザも困惑しているようだ。あまりこういった経験はないのだろうか。

 

 

「さあ・・・お前も座れよ」

 

「うわぁ」

 

「つーか、おまえかわいすぎるだろ」

 

ルーシィもレンによってソファにまで連れて来られていた。そしてアミクは――――

 

 

「君は・・・音竜(うたひめ)だね?前から会ってみたいと思ってたんだ」

 

「ど、どうも・・・」

 

(ひぇ~!近~っ!!)

 

ヒビキがアミクの手を優しく取り、ソファまで導く。

 

 

「うん。聞いていた通り、息を呑むことも忘れそうな程の美貌だね」

 

「決めた!僕は君の幼馴染になるよ」

 

「つーか、おまえ美声すぎるだろ」

 

「わっ、わわわっ!」

 

美を体現してるかのような男たちに囲まれ、お姫様のような対応をされている。いい香りもするしクラクラする。

 

初心なアミクは夢心地のまま、顔を赤くしてあたふたしていた。

 

「・・・悪くない味、なの」

 

そこに、いつの間にいたのかマーチが勝手にジュースを飲んでいた。

 

 

「なんなんだコイツらは・・・」

 

グレイは服を着ながら、自分たちのギルドの女性に馴れ馴れしい男たちを見てイラッときていた。

 

『私も一応女性なんだけど・・・ま、いいか』

 

仲間外れにされた気がして納得のいかないウルだが仕方がないだろう。

 

「今回はよろしく頼む。皆で力を合わせて「かわいいっ!!」

 

イブがエルザの話を遮るように叫んだ。

 

「その表情が素敵だよ。僕・・・ずっと憧れてたんだぁ」

 

甘い声で庇護欲をそそられそうな表情をするイブ。だが、エルザはそんなイブにドン引きしていた。

 

一方、レンはルーシィにノンアルコールのワインを差し出す。

 

「べ・・・別におまえの為に作ったんじゃないからな」

 

目を逸らし、照れながら言うレン。

 

「ツンデレ!!」

 

自然にツンデレ属性を見せつけることができるのは、その道のプロだからだろうか。

 

今度はヒビキがアミクの顔を覗き込んだ。

 

「おや・・・?顔色が優れないね」

 

「さ、さっき乗り物酔いしてたから・・・」

 

「それはイケないね」

 

ヒビキはアミクの顎を指でクイッとする。

 

「僕が君を癒してあげよう。さあ、身も心も全て僕に任せて・・・すぐに気持ち良くなるよ」

 

「ひゃ―――――っ!!」

 

超至近距離に見えるヒビキの綺麗な顔。無駄に高性能な聴力で一語一句記憶してしまうとろけるような声。ずっと嗅いでも飽きない甘い香り。

そのすべてが、アミクの脳を掻き回した。

 

自分はロキでこういう事に慣れてると思っていたがそうでもなかったらしい。

 

 

「ふふふ、真っ赤になっちゃって。かわいいね」

 

(た、助けて――――!!)

 

アミクは心の中で悲鳴を上げた。これはもう完全にホストである。いや、青い天馬(ブルーペガサス)自体、少しそういった部分があるのも事実らしい。

 

 

「ん・・・?静電気かな?」

 

ヒビキはちょっとピリピリしたものを感じて首を傾けた。実はその頃とある雷男が自分でも無意識に放電しまくっていたとかなんとか。

 

気を取り直してヒビキはウィンクした。

 

「さあ・・・長旅でお疲れでしょう。今夜は僕たちと・・・」

 

『フォーエバー♡』

 

『・・・』

 

3人揃ってポーズをとる。

 

アミクたちは呆れて声も出なかった。

 

「・・・アミク、大丈夫?顔がまだ赤いわよ?」

 

「し、刺激が強すぎた・・・!!」

 

アミクが別の意味で顔色を変えていると・・・。

 

 

 

「君たち、その辺にしておきたまえ」

 

新たな声が一つ響いた。

 

「な、何!?この甘い声!?」

 

「一夜様!」

 

「一夜?」

 

アミクはその名前に聞き覚えがあった。

 

「久しぶりだね、エルザさん」

 

「ま、まさかおまえが参加してるとは・・・」

 

どうやら一夜とエルザは知り合いらしい。

 

そして無駄にキラッキラッして現れた一夜なるその男は―――――――端的に言うとブサイクだった。

 

「会いたかったよ、マイハニー。あなたの為の一夜でぇす」

 

トライメンズと比べると酷い格差である。

 

「あ、あの人がボブさんが言っていた一夜さん・・・」

 

アミクは以前、マスターボブと会ったことがあった。その時に一夜の名前も聞いていたのだ。ボブ曰く「と~ってもイケメンなの~」。

うん、ボブは眼科行った方がいい。

 

「ってかマイハニーって・・・」

 

エルザの方を見ると、彼女は鳥肌が立ったように戦慄しているところだった。

 

 

「一夜様の彼女でしたか・・・それはとんだ失礼を」

 

「全力で否定する」

 

 

エルザがトライメンズをビシッと指差して否定した。

 

 

そこで、一夜が怒鳴る。

 

「片付けろ!!遊びに来たんじゃないぞ!!」

 

 

「へい!兄貴!!」

 

すぐさまトライメンズはソファやテーブルを片づけた。

 

 

「さっき一夜様って言ってなかったっけ」

 

「一貫してないんだね」

 

 

一夜が変なポーズを取りながらアミクたちの前に立つ。

 

「君たちのことは聞いてるよ。エルザさんにアミクさん、そしてルーシィさん・・・あとその他」

 

「おい!!」

 

男のあんまりにも雑な扱いにグレイがショックを受ける。

 

 

「むっ」

 

一夜は突然ルーシィに顔を突き出し、匂いを嗅ぎ始めた。その次にくるくる回りながらアミクに近付き、執拗に匂いを嗅ぐ。そして―――――

 

 

「二人とも・・・いい香り(パルファム)だ」

 

ビシッと気取ったポーズで言われた。

 

 

「キモいんですけど・・・」

 

「うわあ・・・」

 

「すまん、私もこいつは苦手なんだ。すごい魔導士であるんだが・・・」

 

「いろんな意味ですごい、の・・・」

 

流石のアミクたちもドン引きだ。別の意味で「うわあ・・・」である。

 

 

「アミクさん。特にあなたの事はマスターから聞いているよ」

 

「は、はぁ、そうですか・・・」

 

アミクが気のない返事をしても気にせずに一夜はアミクの手をとった。

 

ヒビキの時とは違い、ゾワゾワと背中が粟立つ。

 

「貴方には前々から興味があった。こうして出会えたのもまた、運命。この出会いを私は一生忘れない」

 

「わ、私も忘れられそうにありません・・・!」

 

一夜のインパクトが強すぎて。

 

 

「つまり、私と貴方は両想い」

 

「違いますっ!!」

 

一刻も早くこの手を振り払いたかったが、それは失礼な気がしたので我慢していると。

 

 

「おい、青い天馬(ブルーペガサス)のクソイケメンども。あまりうちの姫様方にちょっかい出さねーでくれねーか?」

 

『あまりに馴れ馴れしいと嫌われるよ・・・聞こえてないだろうけど』

 

不機嫌そうなグレイとウルの声が響く。

 

そしてアミクは一夜の気が逸れた隙にルーシィに引っ張られ救出された。

 

一夜はグレイに面倒そうな顔を向ける。

 

「あ、帰っていいよ男は」

 

 

「「「お疲れ様っしたー!」」」

 

 

「オイオイ!!」

 

やっぱり男に対しての扱いが女性とは違って雑だ。

 

 

 

「こんな色モンよこしやがってやる気あんのかよ」

 

 

グレイの言っていることも最もだ。さっきから女性を口説いてばっかりだし、強そうには見えないからだ。

 

トライメンズは目を据わらせて冷笑を浮かべる。

 

 

「ためしてみるか?」

 

 

「僕たちは強いよ」

 

 

「ケンカか!!?混ぜてくれ―――!!」

 

そんな中、相変わらず空気の読めないナツ。

 

 

「やめないか!!お前たち!!!」

 

 

エルザが止めに入るが、いつのまにか一夜がエルザの背後に回り、エルザの香りを嗅いだ。思わずぞわっとなる。

 

 

「エルザさん。相変わらず素敵な香り(パルファム)だね」

 

 

「近寄るなっ!!」

 

 

「メェ――――ン!!!」

 

 

「あー、やっちゃった!」

 

エルザは反射的に一夜を殴りとばし、それを見たアミクが額を押さえる。

 

 

吹っ飛んだ一夜はそのまま入口に向かい・・・

 

 

 

誰かに頭を鷲掴みにされた。

 

 

「こりゃあ、随分ご丁寧なあいさつだな」

 

 

その声は妖精の尻尾(フェアリーテイル)の面子、特にグレイやウルには聞き覚えのある声だった。

 

『まさか・・・』

 

「貴様らは蛇姫の鱗(ラミアスケイル)上等か?」

 

ガルナ島で戦った、ウルのもう一人の弟子、リオン・バスティアが一夜の頭を凍りつかせていた。

 

「リオン!?」

 

「グレイ!?」

 

ここでまさかのリオンとの再会。リオンの方もここでグレイと会うとは思わなかったのか驚いた顔をしている。

 

 

「リオン、ギルドに入ったんだね!」

 

アミクが嬉しそうに言うと。

 

 

「フン」

 

「メェ―――――ン!!」

 

一夜を適当に投げ捨て、つかつかと近づく。

 

「お、おい」

 

グレイが声を掛けようとしたそのとき・・・。

 

「会いたかった、アミクちゃん!!」

 

突然、アミクの前で跪いて魔法で氷の花束を作りだし、アミクに差し出した。

 

グレイもウルも他の全員も突然の出来事にポカーンとなる。

 

「え?ええ?ひ、久しぶり?」

 

一番困惑しているのはアミクだ。ぶっちゃけ誰だコイツ、である。

 

「ああ、こんな所で会うとは思わなかったが。でもこうして出会ったのは運命かもな」

 

「・・・」

 

あれれー?さっきも同じような事を聞いたぞ?

 

『・・・うちの弟子がいつの間にキザ男になっていた件』

 

ウルなんか動揺しすぎて変な事を言いだしている。せっかくの再会なのに、懐かしさとか嬉しさとかが吹っ飛んでしまった。

 

「オイオイオイ!!キャラ変わりすぎだろ!!あのクールなおまえはどこ行っちまったんだ!!」

 

動揺しているのはグレイも同じだ。ガルナ島で会った時は危うさとクールさを併せ持つ男だったのだが・・・。

 

「恋は人を変えるってこういうことか、なの」

 

「変わったっていうか豹変だけどね」

 

マーチとハッピーがポツリと会話した。

 

 

「黙れグレイ。いつもアミクちゃんと一緒にいられるおまえが妬ましい」

 

「知るかよ!!おまえが別のギルドに入ったんだろ!!」

 

グレイとリオンが言い合っていると、会話に付いていけなかったトライメンズが加わってきた。

 

「つーかうちの大将に何しやがる!!」 

 

「ひどいや!!」

 

「男は全員帰ってくれないかな?」

 

 

そのとき、急に絨毯がもこっと膨らむ。

 

「あら・・・女性もいますのよ?」

 

そして、勝手に動き出しアミクとルーシィを襲ってきた。

 

 

「人形撃『絨毯人形(カーペットドール)』!!」

 

 

「私ですか――――!!?ってかこの絨毯酔いそ―――!!」

 

「てか・・・この魔法・・・」

 

慌てて逃げるとカーペットの陰から人が現れる。

 

 

「うふふ・・・私を忘れたとは言わせませんわ」

 

赤紫色の髪の少女。前見た時とは格好が違うが、この口調は間違いない。

 

「そして過去の私は忘れてちょうだい」

 

「どっちよ!!」

 

「私は愛のために生まれ変わったの」

 

 

そう、彼女の名は―――――

 

 

「シェリア!!」

 

 

「それは従妹ですわ!!シェリーです!!シェリー・ブレンディ!!」

 

彼女もガルナ島で出会った人物だ。人間以外のものを操る魔法を使う。

 

 

シェリーはアミクをキッと睨んだ。

 

 

「貴方が・・・リオン様の愛を奪った泥棒猫・・・!!」

 

「な、なんの話―――!!?」

 

シェリーは怨念のようなものを放ちながら恨み事を言う。

 

「よくも、よくも!!あの日からリオン様は貴方にばかり夢中で私には振り向いてくれませんの・・・。倒すべき恋敵ですわ!!」

 

「何か漂うジュビア臭・・・」

 

 

ルーシィはシェリーを通してジュビアが見える気がしていた。

 

 

「もっと・・・!もっと貴女の香り(パルファム)を私に・・・!!」

 

「近寄るな!斬るぞ!!」

 

一夜が懲りずにエルザに接近し、

 

「リオン」

 

「グレイ」

 

『あんたたち・・・』

 

リオンとグレイは睨みあい、

 

 

「かかってこいやー!!」

 

ナツはもはやケンカしか頭にない。

 

トライメンズも不穏な空気を醸し出しているし、

 

 

「貴方方は愛せない」

 

「あたしも嫌いよっ!!」

 

シェリーとルーシィの間にも険悪な空気が流れた。

 

 

まさに一触即発の状態になってしまった、その時。

 

 

 

 

も――――!!!皆落ち着いて―――――!!!

 

 

アミクの大声量の一喝でその場は静まり返った。あまりの声の大きさに耳を押さえている者もいる。

 

 

「ケンカしに集まったわけじゃないでしょ!!そこらへん分かってる!?」

 

プンプン怒りながら言うと気まずい雰囲気が流れた。そして――――

 

「・・・ワシが止めるまでもなかったな」

 

入口に大柄な男が現れた。

 

「その者の言う通りだ。ワシらは連合を組み、六魔将軍(オラシオンセイス)を倒すのだ。仲間うちで争っている場合か」

 

「ジュラさん」

 

その男――――ジュラを見てリオンが喜色を浮かべる。

 

「ジュラ!?」

 

「こいつがあの・・・」

 

「ラミアのエース、岩鉄のジュラ」

 

どうやらジュラは有名らしい。アミクも聞いたことがある。

 

「誰?」

 

「聖十大魔道の一人だよ」

 

ナツは知らないようなので教えてあげた。

 

そう、近くにいるだけでも強者のオーラと高い魔力を感じる。それは聖十大魔道と言われるに相応しいものだった。

 

 

「あたしでも聞いたことある名前だ・・・」

 

「妖精は5人、天馬は4人、私たちは3人で十分ですわ」

 

「むぅぅ~・・・」

 

「ハッピーとマーチを入れたら7だけどね」

 

アミクたちがそう話しているとジュラが話しだした。

 

「これで3つのギルドが揃った。残るは化猫の宿(ケット・シェルター)の連中のみだ」

 

「連中というか、一人だけだと聞いてまぁす」

 

鼻血を流しながら一夜が言うと、グレイたちが驚いて喋り出す。

 

 

「一人だと!?こんな危ねー作戦にたった一人だけをよこすってのか!!?」

 

「ちょっとぉ~、どんだけヤバイ奴が来るのよぉ~」

 

「まさか、また聖十大魔道だったり?」

 

アミクがそんな風に憶測していると。

 

 

一つの小さな影が入口の方から走ってきた。

 

 

 

そして――――

 

 

「きゃあっ」

 

ズテェ――――ン

 

 

そんな効果音が付きそうなほど見事に転ぶ。

 

「痛ぁ・・・あ、あの・・・遅れてごめんなさい」

 

その人物はパンパン、と服を叩くと起き上がる。

 

 

化猫の宿(ケット・シェルター)から来ました。ウェンディです。よろしくお願いします!!」

 

そこには緊張した面持ちで自己紹介する、可愛らしい少女がいた。

 

 

「子供!?」

 

「女!!?」

 

全員が意外な人物に驚いた声を上げる中。

 

 

「ウェンディ?」

 

「あれ・・・?ウェンディ?」

 

 

ナツとアミクはその名前を反芻するのだった。

 

 

 

 




文字数過去最高じゃね?

やっと皆出せました。僕の小説で一夜やウェンディを出せるとは・・・。


ただ、リオンがジュビアに恋してるときみたいな状態になっているので悪しからず。

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