妖精の尻尾の音竜   作:ハーフィ

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原作が切れました。こうなったら行き当たりばったりで頑張ります。


音竜と天空の巫女と亡霊

ブレインの強大な魔法が放たれた。

 

「伏せろ―――――!!!」

 

魔法が連合軍に直撃するかと思われたその時!

 

 

「岩鉄壁!!」

 

地面から岩の柱が飛び出し、魔法を防いだ。

 

「・・・間一髪」

 

 

 

「ジュラ様!!」

 

それを行ったのはエンジェルにやられたと思われたジュラだ。

 

「すごいやジュラさん!」

 

「ありがとう、助かったよ」

 

「あんたも何気にありがとね・・・」

 

何気にヒビキがルーシィを庇って地面に倒れ込んでいる。彼女を守ろうとしてくれたらしい。

 

 

「あいつらは・・・!?くそ!!」

 

ナツたちが慌てて六魔将軍(オラシオンセイス)を探すが、既にその場から消えていた。 

 

「消えちまったか・・・」

 

「んだとコラ―――!!」

 

「そんな!アミクは!?」

 

「ウェンディ・・・」

 

アミクたちが攫われてしまい、見るからに落ち込む一同。

 

「完全にやられた・・・」

 

 

「あいつら強すぎるよ・・・手も足も出なかった」

 

完敗だ。先手を打つつもりがそれを読まれて逆にコテンパンにされてしまった。

 

六魔将軍(オラシオンセイス)・・・集めた情報以上の魔力だった」

 

「それに頼りのクリスティーナまで・・・」

 

イブが悲しげにボロボロになったクリスティーナを見る。まさか、使われることもなく撃墜されることになるとは思わなかったはずだ。

 

不幸中の幸いだったのがクリスティーナが無人飛行だったことだろう。もし、人が乗っていたらと考えるとゾッとする。

 

「ジュラさんも無事でよかった」

 

「・・・否」

 

よく見るとジュラのわき腹から血が滲みだしている。

 

「――――今は一夜殿の『痛み止めの香り(パルファム)』で一時的に抑えられているが・・・」

 

その名の通り、傷を和らげる効果がある。が、傷を癒すわけではないので傷が開く恐れもあるのだ。

 

それで、その一夜の方を見ると。

 

 

六魔将軍(オラシオンセイス)め。我々が到着した途端に逃げ出すとは・・・さては恐れをなしたな」

 

「あんたボロボロじゃねーか!!」

 

トイレでボッコボコにされたままなのでボロボロだ。

 

「二人とも、アミクがいればすぐに治してくれたと思うけど・・・」

 

今はそのアミクが攫われてしまったのだ。

 

「ふむ・・・彼女の治癒魔法を受けてみたい気持ちはあったが、ない物ねだりしても仕方あるまい。今はこれで凌ごう」

 

一夜は痛み止めの香り(パルファム)をその場に充満させ、皆の痛みを和らげた。

 

「あいつら・・・!よくもアミクたちを!!どこ行ったコラ――――!!」

 

「落ち着きなさいよ!」

 

 

「ぐえっ」

 

早速どこかに駆けだそうとするナツをシャルルがマフラーを引っ張ることで止めた。

 

そして彼女は――――――羽を生やして飛んでいた。

 

 

「羽?」「羽ですわ」「猫が飛んでる」「すごいや!」

 

 

「これは『(エーラ)』っていう魔法。ま、初めて見たなら驚くのも無理ないですけど」

 

 

「ハッピーやマーチと被ってる」

 

「なんですって!?」

 

シャルルがショックを受けた。

 

 

 

「・・・とにかく、あの子たちの事は心配ですけど・・・闇雲に突っ込んでも勝てる相手じゃないってわかったでしょう」

 

「シャルル殿の言う通りだ。敵は予想以上に強い」

 

ジュラも同意するように頷いた。

 

「それに・・・」

 

シャルルが視線だけ別の方向に向ける。

 

そこには腕を押えて苦しんでいるエルザの姿があった。

 

「私の香り(パルファム)が効かないとは・・・!」

 

一夜が申し訳なさそうに言う。彼の魔法では解毒まではできない。

 

「しっかりしろ、エルザ!!」

 

ルーシィたちは苦しむエルザに近づいた。

 

「すまない・・・ベルトを借りるぞ、ルーシィ」

 

「へ?」

 

エルザはルーシィのベルトに手をかけると一気に引き抜いた。

 

スカートがストンと落ちる。

 

「きゃああああああ!!!?」

 

「「「おおおおっ!!!」」」

 

ルーシィの下半身をガン見するトライメンズ。

 

「見るなああああああ!!!」

 

ルーシィが激怒したのは言うまでもない。

 

エルザはベルトを毒に侵された腕に巻きつけ、強く締め上げた。全身に毒がまわらないようにするためだ。

 

「な、何するのエルザ・・・」

 

「すまない・・・アミクがいない今、これでは戦えん。

 斬り落とせ」

 

エルザが剣を地面に投げ出し、腕を差し出した。確かに、このままではエルザは戦力にならないどころか、最悪死に至ってしまう。それよりかは腕を切り落としてでも生き延びることを優先したようだ。

 

「馬鹿なこと言ってんじゃねえ!!」

 

思い切ったことを言ったエルザにグレイが怒鳴りつける。

 

「分かった。俺がやろう」

 

リオンは躊躇いなく引き受けると剣を持ち上げた。

 

「リオン!てめぇ!!」

 

「今、この女に死んでもらうわけにはいかん。アミクちゃんたちの救出にも支障をきたす恐れがある」

 

「そうだ・・・だから早くやるんだ!!」

 

「やめろリオン!!」

 

リオンは剣をエルザの腕に振り下ろしーーーーーーグレイが造り出した氷の剣に止められた。

 

「・・・貴様はこの女の命より腕の方が大事か?」

 

「他に方法があるかもしれないだろ?短絡的に考えるなよ」

 

『そうだな。それをするのはまだ早計だと、私は思うぞ』

 

グレイとリオンが静かに睨み合っていると。

 

 

「ぐっ・・・!」

 

とうとうエルザが力尽きて倒れてしまった。

 

「エルザ!!」

 

エルザの腕を見るとやはりどんどん毒が広がっている。このままでは全身に毒が広がってしまう・・・。

 

「ああもう!!ホントにここにアミクがいてくれたら!!」

 

「・・・ウェンディでも、できるわよ」

 

ルーシィが嘆くとシャルルが静かな声で言い放つ。

 

「え?」

 

「ウェンディでも助けられるわ。今更仲間同士で争っている場合じゃないでしょ。力を合わせてウェンディたちを助けるのよ。・・・ついでにあのオスとメスの猫コンビもね」

 

ウェンディでも助けられる。それを聞いて人々は目を瞬かせた。

 

「あの子、解毒の魔法を使えるの!?」

 

「すごいなぁ」

 

「解毒だけじゃない。解熱や痛み止め、傷の治療もできるの」

 

それを聞いてナツたちは驚いた。

 

「アミクと一緒じゃねえか!」

 

「あんな子が・・・すごい・・・」

 

「あ、あの・・・アミクさんといい、私のアイデンティティーは・・・」

 

一夜の悲しげな言葉が響いて消えた。

 

「今更ですけど・・・治癒魔法は失われた魔法(ロストマジック)だったはずではなくて?そんなのを二人も使えるとなると・・・」

 

「アミクはともかく・・・ウェンディは六魔将軍(オラシオンセイス)が言ってた『天空の巫女』っていうのに何か関係があるの?」

 

ブレインが口走っていた気になるワード、『天空の巫女』。一体どういう意味だろうか。

 

シャルルは少し言葉に詰まると、観念したように話し出した。

 

「あの娘は天空の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)、天竜のウェンディ」

 

滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)!!?』

 

衝撃の事実が発覚した。ウェンディもナツやアミクと同じ、滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)だったのだ。

 

「詳しい話は後。今私たちに必要なのはウェンディとアミクよ。そして目的は分からないけれど、あいつらもあの二人を必要としてる」

 

真剣な顔つきのシャルルの言葉に皆も気を引き締めた。とにかく、これで目的も決まった。

 

 

「あいつらはアミクちゃんの柔肌を傷つけるだけでなく醜悪な笑みを浮かべながら連れ去った。その罪は万死に値する」

 

『なんだその偏った言い方』

 

黒いオーラを浮かべるリオンの言葉もあながち間違いではないが毒が思いっきり混じっている気がする。

 

「だから、やることは一つ。奴らを殲滅してアミクちゃんを救いだす!!」

 

「ウェンディもよ!!」

 

「エルザの為にも」

 

「ハッピーとマーチもね」

 

皆の心が一つになった。

 

アミクたちを助ける。

 

 

全員で拳を突き合わせた。

 

「行くぞォっ!!」

 

『おお――――!!!』

 

連合軍の反撃はここから始まった。

 

 

 

一方。

 

連れ去られたアミクたちは六魔将軍(オラシオンセイス)の隠れ家に連れてこられた。隠れ家と言っても洞窟である。が、このワース樹海の奥はかつて古代人の都があった場所で、この洞窟はかつては儀式に使われていたらしい。

 

「うっ!?」

 

「きゃあ!!」

 

「っ!!?」

 

「うわ! お、女の子には優しくするんだぞ!」

 

 

ウェンディたちは乱暴に洞窟の床に放り投げられた。冷たい感触を全身で感じる。

 

その衝撃でアミクは目を覚まし、苦しげに呻いた。未だ毒が抜けておらず真っ青な顔で大量の汗を流している。

 

「う・・・うぅ・・・!」

 

「アミク!」

 

「アミクさん!」

 

ウェンディたちが悲鳴を上げるようにアミクの名を呼ぶ。大丈夫だと言ってやりたいが口が動かないし、どう見ても気休めにしかならないので無駄だろう。

 

 

「みんな、安心して!オイラが逃がしてあげるからね!」

 

「無駄に頼りになる、の」

 

「そこは素直に褒めてよぉ!」

 

ハッピーが小さな体を精一杯張って六魔将軍(オラシオンセイス)を睨みつける。

 

だが、コブラはそれを鼻で笑い、ブレインに話しかける。

 

「ブレイン・・・音竜(うたひめ)の方はともかくこの小娘は何なんだ?」

 

その疑問に同意するようにミッドナイトも頷いた。

 

 

「ニルヴァーナと関係があるのですか?父上」

 

「そんな風に見えないゾ」

 

 

「そうか!!売ってお金に・・・!!!」

 

すぐ金に走るホットアイ。

 

 

「見ればわかる・・・天空の巫女よ」

 

 

ブレインはニヤッと笑ってウェンディに話しかけた。

 

 

音竜(うたひめ)を治せ」

 

「・・・言われなくても・・・!」

 

 

ウェンディは怯えながらもブレインを睨み、アミクに急いで近付いた。

 

 

「アミクさん・・・!今、解毒します・・・!『レーゼ』」

 

ウェンディがアミクに手をかざすと、手から光が漏れる。すると、アミクは体調がどんどん良くなる感覚がした。毒が抜けていくのだ。

 

アミクはゆっくりと身体を起こした。痛みも熱さももうない。

 

「ウェン・・・ディ・・・、ありが、とう。でも、まさか貴方も治癒魔法を・・・?」

 

そう、これは自分と同じ魔法。しかも見た限り自分よりも使い勝手がいい。それをこんな幼い子供が使えるだなんて。

 

「はい。実は・・・」

 

「アミク!よかった、の!」

 

「心配したよー!」

 

ウェンディが何かを言う前にマーチとハッピーが飛び込んできた。アミクは彼らを優しく抱きとめ、頭をなでる。

 

 

「もう大丈夫。さて・・・」

 

アミクは警戒した目つきで六魔将軍(オラシオンセイス)を見た。何の意図で生かしておいたのかは分からないが、わざわざ元気にさせるとは油断が過ぎないだろうか。

 

 

その六魔将軍(オラシオンセイス)たちは驚いたようにウェンディを見ていた。

 

「治癒魔法だと!?」

 

「こいつも、か・・・」

 

「これは、金の臭いがプンプンしますネ!」

 

ブレインは騒ぐ六魔将軍(オラシオンセイス)を見てふっ、と笑う。

 

 

「見ての通りだ。こやつらを使って()を復活させる」

 

(奴・・・?)

 

六魔将軍(オラシオンセイス)は6人のはず。一体誰の事だろう。

 

 

「そうか。片方が失敗したらもう片方にやらせる、ってわけか」

 

音竜(うたひめ)だけでも可能だとは思うが、予備があるに越したことはないからな。それに――――こやつの方が好都合(・・・)だ」

 

アミクはウェンディたちを近くに寄せながら言った。

 

 

「何を企んでるか知らないけど、貴方たちの思い通りになんかならないんだからね!」

 

「そ、そうです!悪い人たちには手を貸しません!!」

 

「そう!なの!」

 

「協力なんてするもんか!」

 

ウェンディも勇気をもらったのか力強く反論する。猫2匹も便乗した。

 

「貸すさ・・・必ず・・・ウェンディ。うぬは必ず奴を復活させる」

 

「何を根拠に・・・!」

 

ブレインはアミクの言葉を無視し、レーサーに視線を向けた。

 

「レーサー、奴をココにつれてこい」

 

「遠いなァ、俺でも1時間はかかるぜ」

 

「かまわん」

 

「確かに・・・あいつがいればニルヴァーナは見つかったも同然」

 

「!」

 

その人物はニルヴァーナに関係しているのだろうか。

 

何にしろ、その人物はここにはいないらしい。ならばレーサーが連れてくる前にここから逃げ出さねば。

 

 

「・・・おっと。余計なマネはすんじゃねえぞ」

 

そんなアミクの思考を読んだのかコブラがキュベリオスをこちらに向けてきた。

 

 

「怪しい動きをしてみろ。その前にお前かそこの小娘どもの喉笛を噛み千切らせるぞ」

 

「―――死んだら困るんじゃないの?」

 

「なぁに、最悪片方は死んでも構わん」

 

コブラの代わりにブレインが残忍な笑みを浮かべる。

 

 

「何のための予備だと思っている。予備がある以上、まだ替えの利く段階だ」

 

「くっ・・・!」

 

「さて、コブラ、ホットアイ、エンジェル、ミッドナイト、貴様等は引き続きニルヴァーナを探せ。私は念の為ここに残る」

 

「分かりました。父上」

 

――――!チャンスかもしれない。

 

数が減れば、隙をついて―――――

 

「待て、ブレイン。オレも残る。この劣化版が何を仕出かすか分からねえからな」

 

「・・・ふむ、よかろう」

 

(うっ・・・)

 

よりによって厄介な人物が残ってしまった。ブレインだけでも危険なのにコブラまでいたら脱出は非常に難しい。

 

それにしても劣化版とは何の事だろうか。

 

「じゃ、行ってくるゾ」

 

エンジェルたちは早速外に出ていった。これで敵は二人。しかし、この二人が曲者なのだ。

 

 

(この人たちが血眼になって捜すニルヴァーナって・・・一体どんな魔法なの?)

 

 

「アミク、さん・・・」

 

 

すぐ横からした声の方に視線を向けると、ウェンディが涙目になってこちらを見つめていたところだった。それだけで不安がありありと伝わってくる。

 

 

 

「・・・大丈夫。絶対にウェンディたちだけでも逃がすから―――」

 

「そんなの、ダメです!」

 

意外にも、意思のあるはっきりとした声にちょっと驚く。

 

 

「その時は、アミクさんも一緒です!」

 

「またそんなこと言ったら引っ掻いちゃう、の」

 

「え?あの伸びる爪で?」

 

「・・・そう、だね」

 

マーチは勿論のこと、やっぱり、この子は優しい子だ。自分自身も危険な状況で他人を気遣えるような人柄の持ち主。その純粋さがウェンディらしくてアミクはちょっと笑った。

 

 

 

――――ところで結構なブーメランだとは気付いてないのだろうか。

 

 

「ねえ、色黒リコンさん」

 

「・・・なんだ」

 

ブレインの口元が少し引きつった気がしたが気のせいだろう。

 

よく見るとコブラが口を抑えて震えている。ツボッたらしい。

 

 

「結局ニルヴァーナってどういう魔法なの?」

 

それを聞いてブレインは邪悪な笑みを浮かべ、言い放った。

 

 

「光と闇が入れ替わる魔法だ」

 

 

 

 

その頃、樹海を進んでいたナツたちはシャルルに質問していた。現在はこのナツ、グレイ、シャルル

 

 

 

「天空の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)ってさぁ・・・何食うの?」

 

「空気」

 

「うめえのか?」

 

「さあ?」

 

「それ、酸素と何が違うんだよ・・・?」

 

 

空気を食べるということは、アミク以上に頻繁に魔力補給をできるということだろう。ナツやガジルのように食うのに困ることもないわけだ。

 

 

「そこもアミクと似てるよなー」

 

「音もどこにでもあるようなものだからな」

 

 

そう話しているとシャルルがウェンディについて語る。

 

 

「あのコ、アンタとあの音竜(うたひめ)――――『双竜』に会えるかもしれないってこの作戦に参加したのよ」

 

「オレたちに?」

 

「特に音竜(うたひめ)――――アミクの方は絶対に会いたいって言ってたわ。憧れているのよ・・・ともかく、聞きたいことがあるって言ってたわ。あの子に滅竜魔法を教えてくれたドラゴンが、7年前にいなくなっちゃったんだって。アンタたちならそのドラゴンの居場所を知ってるかもって」

 

7年前に――――いなくなった?

 

 

自分たちと一緒。

 

 

流石にここまで来たらその関連性に何かの意図があるように思える。

 

「イグニールとオーディオンとガジルのドラゴンも、それにウェンディも・・・ぎゃっ!?」

 

考え事をしながら走っていたせいで顔面を木の枝に強打してしまったナツであった。

 

 

 

 

「うぇええ!!?ウェンディって滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)だったの!?」

 

「はい・・・その、私を育ててくれたドラゴンはグランディーネっていうんですけど・・・どこにいるか知ってたりしますか・・・?」

 

結局どうすることもできず(暇つぶしに)ウェンディと会話をしていると色々な事を知った。

 

まず、ウェンディが天空の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)であること。そして、自分たちと同じように7年前、忽然と姿を消したこと。

 

「ごめんね・・・。私も、同じような状況なの。だから、君のドラゴンの行方は知らないかな・・・」

 

 

「そう・・・ですよね」

 

 

アミクもウェンディも申し訳なさそうに俯いた。結構似た者同士かもしれない。

 

 

「でも・・・アミクさんに会えただけでも嬉しいです!アミクさんは私の憧れですから!」

 

 

「あ、憧れって・・・照れるな」

 

 

真っ直ぐな言葉にアミクは思わず頬を染めた。

 

 

「・・・私と同じ魔法を使って多くの偉業を成し遂げたって聞きました。だから私もアミクさんのようになりたいって!」

 

 

「偉業は大げさだよっ」

 

 

 

 

「もう二人が仲良くなったみたいでよかった、の」

 

「ね、ねえ。呑気にそんなこと言ってる場合じゃないと思うんだけど・・・」

 

アミクたちの会話をうるさそうに聞いていたコブラがある音を聞きつけた。それはアミクも同じ。

 

 

「・・・参ったぜ、思ったより時間がかかっちまった。こんなに重けりゃスピードだって出ねぇってもんだ」

 

レーサーが鎖で封じられた棺桶を持ってきたのだ。

 

「何を言うか。ぬしより速い男など存在せんわ」

 

ブレインはウェンディとアミクの方を見る。

 

 

「うぬらのうちどちらかにはこの男を治してもらう」

 

「・・・」

 

アミクは黙って成り行きを見守る。

 

 

「わ、私・・・そんなの絶対やりません!!!」

 

 

「そーだ!そーだ!!」

 

 

「身の程を知れ!なの」

 

 

「いや、ウェンディは治す。治さねばならんのだ」

 

 

ブレインはマーチたちの拒絶を無視して、棺桶の鎖を解き、棺桶をゆっくりと開けた。

 

 

 

 

 

―――――その中には1人の青年が鎖で拘束され、眠るように意識を失っていた。

 

 

 

 

そして、その顔はウェンディの―――――アミクの記憶にもあるものだったのだ。

 

 

 

「うそっ!!?」

 

 

 

ウェンディは動揺して声を上げた。恐怖とは別の理由で震える。

 

 

アミクは思わず目頭が熱くなった。

 

 

 

(ああ・・・よかった)

 

 

まず出てきた感想がそれだった。『彼』の姿は最後に見たときから変わってない。端正かつミステリアスな顔も相変わらずだ。

 

 

「この男の名はジェラール、かつて評議院に潜入していた。つまりニルヴァーナの場所を知る者」

 

 

そう、彼は楽園の塔でアミクたちを苦しめ、アミクの命を救ったジェラール・フェルナンデスだった。

 

 

 




ちょっと中途半端で終わります。夏休み入ったのでできるだけたくさん書けるように・・・したいなぁ。

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