妖精の尻尾の音竜   作:ハーフィ

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今外国にいるのであんまり投稿できないかもしれません。


ニルヴァーナ、始動

「――――で、道はわかる?」

 

「うん?わかんね」

 

「ダメじゃん」

 

アミクたちは迷子になっていた。

 

 

「上から見れば簡単に分かると思ったけれど――――甘い考えだったわね」

 

「さっき来た道は憶えてない、の?」

 

「そもそもここがどこかよく分からないわ」

 

「役に立たない、の」

 

「なんですって!?」

 

「ふ、二人ともケンカはダメだよ~」

 

上空でふわふわ浮いて周りを確認して見るがどこに行けばいいのか分からない。

 

せめて目印でもあれば――――と途方に暮れていると。

 

 

『――――ナツ君、アミクちゃん。聞こえるかい?』

 

「うわ、これって・・・」

 

 

「おまえは・・・」

 

『僕だ。青い天馬(ブルーペガサス)のヒビキだ。良かった、誰にも繋がらないから焦ってたんだ』

 

 

急に二人の頭の中にヒビキの声が響いてきた。

 

「念話?」

 

「うん。ヒビキさんからだって」

 

『アミクちゃん・・・よかった。無事だったんだね』

 

「その節はご迷惑をおかけしました・・・」

 

自分たちを助けるために皆が奮闘してくれているのは簡単に聞いた。本当に申し訳ない。

 

 

『気にすることないよ。こうして無事に取り戻せたんだし』

 

「うん、ありがとう!」

 

『ごめん、ちょっと静かに・・・敵の中にはアミクちゃんみたいに恐ろしく耳の良い奴がいる。僕達の会話は筒抜けている可能性がある。だから、君たちの頭に直接語りかけているんだ』

 

それは厄介だ。自分だからこそわかる。優れた聴力というのはあらゆる場面で役に立つ。それが敵にあるなら、脅威になるだろう。

 

 

『ところでウェンディちゃんと猫君たちは・・・』

 

「元気だよ!」

 

『そうみたいだね。よし、それじゃあ君たちの頭にこの場所までの地図をアップロードする・・・ううん、アミクちゃんとの繋がりが弱いな。魔力を多く消費でもしたのかい?』

 

ヒビキの通信は魔力が低下していると繋がりにくいらしい。

 

「あーちょっと治癒魔法をね・・・」

 

さっきジェラールを治すために大量の魔力を使ってしまった。そのせいだろう。

 

「それで、アップルがどうした?」

 

「アップロードね。でもそんなことまでできるなんて流石ヒビキさん・・・わっ」

 

そこで、アミクとナツの脳裏に地図が浮かんだ。ヒビキの古文書(アーカイブ)によるものだ。

 

「すごい便利!」

 

「よーし、みんな今度こそ突っ込むぞ!」

 

「あいさー!」

 

「なの!」

 

「お、置いて行かないでくださーい!」

 

「全く・・・落ち着きないんだから」

 

 

 

アミクたちは地図を頼りに空を猛スピードで進んでいった。

 

 

 

「着いたー!!」

 

「アミク!よかった!」

 

「スゲーな。お前の魔法!!ここまでの道が頭の中にスラスラと出てきたぜ!!」

 

「それより、エルザは!?」

 

到着するや否や嬉しそうな顔をするルーシィの脇を通り過ぎて、エルザの方に向かった。

 

既に彼女の体の大半が毒に侵されており、すぐにでも死んでしまいそうだ。

 

 

「~♪『状態異常無効歌(キャロル)』!!」

 

高速で歌い、魔法を使う。すると、着実にエルザから毒が抜けていく。

 

 

「――――ふぅ、ちょっとキツイなぁ」

 

アミクはフラッとして倒れそうになったがそれをヒビキが支えてくれた。

 

「魔力を使いすぎたね。あまり無理はしないでね」

 

「うん、大丈夫・・・」

 

さっきのジェラールの時にも使ったこともあり、魔力は残り少ない。倦怠感も感じるので、休みながらしばらく魔力回復に努めた方がいいだろう。

 

「あ、あの・・・後は私に任せて下さい!魔力なら余ってるので!」

 

「そう、だね。じゃ、後はよろしくね」

 

アミクはウェンディと交代して後ろに下がった。ウェンディの方が効率もいいだろうしちょうどいい。

 

エルザから離れると、やっぱり負担になっていたようでアミクは力なく木に寄りかかり座り込む。

 

 

「でも、これでエルザは安心、なの」

 

「一時はどうなるかと思ったよー」

 

ハッピーたちも安堵して力を抜いた。

 

(ジェラールのことはどう説明しよう・・・)

 

ただ、アミクはエルザにジェラールのことをどう言ったものか、と悩んでいた。

 

 

 

 

「終わりました。エルザさんの体から毒は消えました」

 

「お疲れ、ウェンディ」

 

エルザの体から毒が抜けて、彼女の顔色が良くなった。

 

「おっしゃー!!!」

 

それを見てみんな歓喜の声を上げる。

 

「ルーシィ、ハイタッチだーっ!!」

 

「よかった~~!」

 

互いに手を合わせるルーシィとナツ。

 

「はい、ウェンディも」

 

「は、はい・・・」

 

アミクたちも可愛らしくハイタッチしていた。

 

 

「シャルル!マーチ!オイラたちも!」

 

「仕方ないわね」

 

「はい、なの」

 

猫たちも喜びを分かち合ってる中、ウェンディが疲れたように言った。

 

 

「・・・しばらく目を覚まさないと思いますけど、もう大丈夫ですよ」

 

 

ヒビキがエルザに顔を近づける。

 

「すごいね・・・この短時間で本当に顔色がよくなってる。これが音楽魔法と天空魔法」

 

二人掛かりとはいえ、短い時間の中でここまで回復できるのは二人の実力のおかげだろう。

 

「ちょっと、近い近い!」

 

アミクが慌ててヒビキを引き離した。

 

 

「いいこと? これ以上天空魔法をウェンディに使わせないでちょうだい」

 

シャルルがみんなに注意した。アミクの音楽魔法と同じく、天空魔法はウェンディに結構な負担がかかるのだ。その割りにはアミクはポンポン使っているが。

 

 

「私の事はいいの。それより・・・」

 

ウェンディはチラ、とアミクの方を見た。どう説明したものか、はかりかねてるのだろう。だが、アミクたちが何かを言う前にヒビキが口を開く。

 

 

「とにかく、これでエルザさんは無事だ」

 

「あとはエルザが目を覚ませば反撃開始だね!!」

 

「おーーーーっ!!!ニルヴァーナは渡さねぇぞぉ!!!」

 

そんな風にみんな気合いを入れているので話しづらい。そうしていると・・・

 

 

「なに!?」

 

 

樹海の方から黒い光の柱が上がった。

 

 

「く、黒い光・・・?」

 

「まさか・・・」

 

「あれはニルヴァーナ!!?」

 

この異質な感じと禍々しさはそう判断するだけのものがある。

 

「まさか六魔将軍(オラシオンセイス)に先を越された!?」

 

「いや、六魔将軍(オラシオンセイス)じゃねえ・・・あれはジェラールだ!!」

 

「ジェラール!!?」

 

「あ、ナツ待って!話を聞いて!!」

 

ナツはアミクの制止も聞かずに走り去ってしまった。あの様子だとジェラールに会った途端殴りかかりそうだ。

 

アミク自身もまだ混乱している。あれは本当にジェラールが起こしたものなのか?そうだとしたらなぜ?ニルヴァーナでどうするつもりなのか・・・などの思考が渦巻いて落ち着かない。

 

一旦、冷静になるためにもジェラールが復活した事情とかも含めて説明したかったのだが・・・。

 

「ちょっとナツ!!ジェラールってどういう事!!?」

 

「それは、私がジェラールを・・・」

 

「そんな・・・ジェラール」

 

アミクが説明しようとするとウェンディがショックを受けた表情でアミクを見た。ウェンディも現状が受け入れられないようだ。

 

 

そこで、ヒビキが提案した。

 

 

「ナツ君を追いかけよう。さすがにこの状況で1人は危険だ」

 

それは確かにそうだ。六魔将軍(オラシオンセイス)がどこにいるのかもわからない今、下手に単独行動をとるのは自殺行為だろう。

 

 

「ナツ、ジェラールって言ってたよね・・・」

 

「説明は後よ!!それより今は追いかけにーーー」

 

「あれーーーーー!!?なの」

 

その時、マーチが大声をあげたのでみんなそっちを向いた。

 

「エルザがいない!の」

 

『ええ!?』

 

確かに、エルザがいない。いつの間に起きていたのか。

 

 

「なんなのよあの女!!ウェンディに一言の礼もなしに!!!」

 

「エルザ・・・もしかしてジェラールって名前を聞いて・・・」

 

確か、その時アミクはナツに意識が向いていた。そのせいで物音を聞き逃したのだろう。アミクにしては珍しい失敗だ。

 

 

「どうしよう・・・私のせいだ・・・」

 

ウェンディが暗い瞳で自分を責め始めたのでアミクは慌てて励ました。

 

「ウェンディは悪くないよ。治療したのは私だし、まだジェラールが悪いことするって決まったわけじゃ・・・」

 

「で、でも・・・このままじゃ・・・」

 

アミクはそっとウェンディを抱きしめた。

 

 

「ウェンディは恩人のジェラールを助けたいって思っただけ。なにも悪い事はしてないよ。それに、ジェラールを信じてるから助けたかったんでしょ?

だったら信じ続けなきゃ」

 

「アミクさん・・・」

 

「大丈夫。きっとジェラールは君の知るジェラールだから・・・。後悔も反省もする必要ないよ」

 

優しく撫でるアミクの手つきに段々ウェンディの瞳に光が灯ってきた。全てを包み込むような包容力に安心感を得る。

 

もうウェンディを支配する闇はなくなっていた。

 

 

「・・・落ち着いた?」

 

「はい・・・」

 

ウェンディはふわりと笑顔を浮かべた。この様子ならば大丈夫だろう。

 

 

「・・・ありがとう。ウェンディちゃんを傷つけずに済んだ」

 

その時、急にヒビキがお礼を言ってきた。

 

「え?どゆこと、なの?」

 

「それは移動しながら説明するよ」

 

「あ、ついでにこっちのことも話すよ」

 

「も、もう!さっきからなんなのよう!!」

 

アミクたちはナツが向かった方に走り出す。なにも知らないルーシィは混乱で泣きそうになっていたがそれでもアミクたちの後を追ってくる。

 

とにかく、ナツたちを追いかけながらヒビキとアミクは事情を説明することにしたのだ。

 

 

 

「嘘・・・」

 

「そんなことが・・・」

 

アミクの話を聞いたルーシィたちは驚いて目を見開いた。

 

 

「えーと、それで・・・勝手なことしてごめん・・・」

 

あの時、ああしたことを後悔はしないが、褒められた行動ではないと思っていたので気まずい気持ちで謝る。

 

 

「・・・まぁ、それでこそアミクだし!しょうがないわね」

 

ルーシィは呆れながらも笑みを浮かべていた。アミクのこういった行動は今に始まったことじゃないし、アミクだからこそ受け入れられる。

 

アミクはアミクらしく。彼女の意思を尊重してやりたい。

 

 

ルーシィのそんな気持ちを読み取ってアミクは泣きそうになった。やっぱ最高の親友だ。

 

「君の人となりは聞いていたけどね・・・。こうして間近で見てみると驚きを禁じ得ないな。けど、そこが魅力的でもある」

 

ヒビキもなんだかんだ許してくれるらしい。

 

「それに、ジェラールの存在によって逆に、状況の打破に繋がることもあるかもしれないからね。ひとまず、様子見だね」

 

というより、まずはナツくんの追跡だけど。と言葉を続けて真剣な顔になる。

 

「次は僕の番だね。本当の事を言うと・・・僕はニルヴァーナという魔法を知っている」

 

「え!?」

 

「そうなんですか・・・!?」

 

別荘では詳しい事はわからないと言っていたが・・・嘘をつかなければならない事情があった、らしい。

 

 

「ただ、その性質上誰にも言えなかった。この魔法は意識してしまうと危険だからなんだ。だから一夜さんもレンもイヴも知らない、僕だけがマスターから聞かされている」

 

「そんなに危ない魔法なんですか?」

 

「うん、これはとても恐ろしい魔法なんだ」

 

ウェンディはそう返されて怖気ついた。

 

「光と闇を入れ替える。それがニルヴァーナ」

 

「光と闇を・・・」

 

「入れ替える!?」

 

聞いただけではなんだか抽象的な魔法だ。具体的にはどういう事なのだろう。

 

「しかしそれは最終段階。まず封印が解かれると黒い光が上がる、まさにあの光だ。黒い光は手始めに、光と闇の狭間にいる者を逆の属性にする。強烈な負の感情を持った光の者は、闇に落ちる」

 

なるほど。人の内にある光と闇のことだったらしい。これは確かに恐ろしい魔法だ。

 

「だから、さっきのウェンディの状態だと危なかったってわけ?」

 

「うん。実はああなった彼女を気絶させようとしたんだけどね・・・」

 

負の感情。あの時のウェンディは自責の念という『負の感情』を持っていた。あのままだったらウェンディは闇に堕ちていたかもしれないのだ。

 

「そうする前にアミクちゃんが慰めてくれたから助かったよ・・・さすが聖女様だね。闇を浄化する力を持つ君には相応しい称号だよ」

 

「そんな大げさなもんじゃないけど!?まぁ、なんにせよ事情はわかったよヒビキさん・・・いや、ヒビキ」

 

アミクが呼び捨てにするときは大抵は親愛の印だ。こうして自分たちのためを思い行動してくれたのでアミクの好感度が上がったのだ(笑)。

 

 

「あれ・・・じゃあ怒りは?」

 

ナツが怒って走り去った時のことを思い出しているのだろう。マーチの質問にヒビキが難しい顔をする。

 

「何とも言えない・・・その怒りが誰かの為なら、それは負の感情とも言い切れないし」

 

ふと、気になったアミクは思わず言ってしまった。

 

「なんかナツが闇堕ちしても大して変わんない気がする」

 

『あー』

 

なぜか納得する一同。ていうか今は関係ない。

 

「と、とにかく!どういうこと?」

 

「あんたバカでしょ。つまり、ニルヴァーナの封印が解かれたその瞬間から、光と闇…正義と悪とで心が動いてる者の性格が変わるって事よ」

 

「それが僕がこの魔法の事を黙っていた理由。人間は物事の善悪を意識し始めると、思いもよらない負の感情を生む」

 

アレだ。傷に気づいてないときは痛いとも感じないのに、気付いた途端なんか痛いような気がするヤツ。

 

(あれ?なんか違うかな・・・?)

 

まぁ、いいやと会話に意識を戻すアミク。

 

「そんな危険な魔法は、止めないとね!」

 

アミクはそう意気込むと前を向いて走り出した。

 

 

 

 

 

 

 




中途半端に終わっちゃった。なるたけ出すんで。

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