妖精の尻尾の音竜   作:ハーフィ

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「コブラ」を「子豚」と誤字ってしまうこの頃です。

関係ないけど、ソーセージは鶏肉で出来た方が美味しいです。


聖十大魔道ジュラ

 

「うう、キッツイよぉ・・・」

 

ニルヴァーナに落下したアミクはあまりの気持ち悪さに身動きができない。

 

「きゅー・・・」

 

マーチはまだ気絶している。彼女が起きなければ、此処から飛ぶこともできない。それに先ほど飛び回ったせいでナツ達が居る場所から大分離れてしまった。早く治療しないといけないのに。

 

 

向こうにはコブラが倒れているのが見える。その側でキュベリオスがコブラを心配そうに見ていた。

 

「・・・ごめんね」

 

そのキュベリオスの姿を見るのが辛くてつい謝ってしまう。こんなのただの自己満足なのに。

 

 

「ま、まだだ・・・」

 

「え・・・嘘・・・」

 

その時、コブラがフラフラと起き上がった。なんていうタフさだ。

 

 

「クソ、よく聴こえねえ・・・」

 

今のコブラは鼓膜が破れてしまっているので、聴力が大きく低下しているのだ。

 

 

「の、乗り物に弱いのはアイツと一緒か・・・」

 

コブラはよろつきながらも近づいてきた。瞳孔は開ききっているし立っているのも辛いはずだが、すごい精神力だ。

 

コブラは腕を変化させ、アミクに向ける。

 

「このまま、心臓を貫いてやる・・・!」

 

鋭い爪がキラリ、と光った。ちょっとまずいかも。

 

「!後ろ・・・う、しろ!」

 

コブラは必死に声を上げるアミクを見た。「後ろ」?気を逸らすためなのか。

 

その瞬間、アミクが力を振り絞って飛び上がった。そして、コブラに覆い被さる。

 

「なにっ!!?」

 

彼女から仕掛けてくるとは思わなかった。完全に油断していたコブラはそのままアミクによって倒された。その直後。

 

「ぐう!!」

 

アミクの背中を何かが抉った。緑色をした魔法。これは・・・ブレインの?後ろを向くとブレインが杖を構えているのが見える。

 

「な、なぜだ・・・」

 

それはアミクとブレイン、両方に対しての疑問だった。

 

「コブラよ、せっかく休息を与えてあげようとしたのだが・・・邪魔されてしまったな」

 

(小娘1人殺せないとは、役立たずめ)

 

辛うじて聴き取れたブレインの心の声。コブラは自分が思ったよりショックを受けてることに気付いた。愛情がないことは分かっていたが、それでも幼い頃からずっと一緒に居たのだ。ずっと6人でやってきていたのだ。

 

だから、せめて仲間としての情くらいは持ち合わせていると思っていたのに・・・。ブレインはコブラを、いや自分以外の六魔将軍(オラシオンセイス)を駒としてしか見ていなかったのだ。

 

「おっと、聴こえるんだったな」

 

ブレインは嘲るように口を歪めた。やっとブレインの真意が分かったコブラーーーーいや、本名をエリックと言うーーーーーエリックは無意識に涙を流した。

 

2人の様子から、ブレインの本性をなんとなく見抜いたアミク。苦痛に表情を歪めていた彼女は憤りのまま、ブレインに叫んだ。

 

「な、仲間でしょ!!?それなのにそんな仕打ちはひどいよ!!」

 

その言葉からは自分を労わる雰囲気がする。エリックはちょっとだけ心が救われるのを感じた。自分のために怒ってくれている。そういえば、そんなの今までほとんどなかった気がする。

 

奴隷時代は自分のことで精一杯だったし、ブレインに連れ出された後も、厳しい訓練のため自分も仲間も心が摩耗していっていた。だから、自分や他の仲間がやられた所で大きく心を動かされることもなくなった。

 

でも、こうしてアミクの優しさに触れ、別の意味で涙が出てくる。

 

そして、思い出した。自分の原型を。ずっと忘れていた、自分の願いを。

 

 

(そうだ・・・オレは、友達のーーーキュベリオスの声が聴きたかったんだーーーー)

 

キュベリオスとは幼い頃、奴隷時代に出会った。その時は自分の掌で包めるくらい小さかった。辛かった奴隷時代では心の癒しで、そんなキュベリオスとは絆を深め合っていると感じていた。そこで生じたのは「キュベリオスの声が聴きたい」という願望だった。どんな声で話すのか聴きたかった。どんなことを考えているのか聴きたかった。自分の事をどう思っているか聴きたかった。

 

そんな願いが、エリックの心に生まれたのだ。

 

そして、その願いがこの『聴く』魔法を習得するきっかけともなった。

 

(キュベリオスーーーー)

 

キュベリオスは舌をシュルシュル、と出し入れし、自分を見つめる。声は、聴こえない。

 

コブラはそっと手を伸ばして、力尽きた。

 

 

「・・・その絆、大事にしてね。きっと心の声が聴こえなくても、変わらないはずだから・・・」

 

意識を失う直前、優しげな少女の言葉が聴こえた。

 

 

 

「う、もう無理!」

 

アミクは口を押さえて蹲った。相変わらず大きく揺れているニルヴァーナは凶悪だ。弱っているアミクを見てブレインは顎に手を当て思案する。

 

「ふむ・・・コブラよりもこの娘の方が使えるかもしんな」

 

この少女はコブラよりは劣るが、優れた聴力を持っている。その上、希少な治癒魔法や付加術(エンチャント)を使える。味方に引き込めば、強大な戦力になってくれるはずだ。

それにこのように強い光の持ち主ならば、闇に堕とせばその分強力なものになるだろう。

 

「うぬを六魔将軍(オラシオンセイス)の一員として迎え入れよう」

 

「闇側にスカウトされちゃったー!!うぷ、こんなの初めてだよぉ」

 

狙われたことは幾度もあるが、メンバーにさせられそうなのは初体験である。嬉しくない。

 

ブレインはアミクのツインテールの片方を掴むと引きずっていく。

 

「痛い!痛い!気持ち悪い!禿げちゃう!」

 

「騒がしい小娘だ」

 

「女の子の髪は大事なの!そんなのも分かんない人は禿げちゃえ!」

 

「不吉なことを言うでないわ!」

 

意外と、ハゲとか気にする質らしい。

 

 

「おえええ、吐きそう・・・」

 

 

乗り物酔いのせいでブレインに抗うこともできず、為す術もないまま連れられていく。

 

このままでは本当に闇の仲間入りになってしまいそうだ。

 

 

「誰か、助けてえええ・・・」

 

アミクが弱々しく助けを求める声が響いた。

 

 

 

 

「ナツ!!?」

 

「てめえ、こんな所で何寝てんだよ!」

 

「む、猫殿も居るのか・・・」

 

倒れてるナツとハッピーの元にルーシィとグレイ、途中で会ったジュラが走り寄って来る。

 

「お、おお、お前ら・・・」

 

「あい〜・・・」

 

「ナツ殿もネコ殿も・・・体調が悪そうだな」

 

「毒だよ・・・ナツはそれだけじゃないけど」

 

ハッピーがたどたどしく何があったかを説明した。先程アミク達が自分達を助けにきたが、コブラと交戦し始めてから姿を見ないことも告げる。

 

「オイオイ、やれられてんじゃねえだろうな」

 

「さっきのデカイ声、アミクよね?あれからどうなったのかしら・・・」

 

あんな大声出せるのはアミクぐらいなものなのだ。何の為にそんなことをしたのかは分からないが、少なくともその時点では生きてはいたわけだ。まだ死んでないが。

 

 

「でも、ナツの方もどうにかしないと・・・」

 

「みなさーーーん!!大変ですー!!」

 

ナツの治療方法が分からず途方に暮れていると、向こうから小さな影が走ってくるのが見えた。ウェンディとシャルルだ。

 

 

「ウェンディ!良かった、無事だったのね!」

 

「ルーシィさん達も!そうだ、この都市、私達のギルドに向かってるかもしれません!」

 

『え!?』

 

ウェンディの言葉に皆驚いた。確かウェンディのギルドは化け猫の宿(ケット・シェルター)。ニルヴァーナの進行方向にそのギルドがあるのか。

 

「大変じゃない!だったら早く止めないと!」

 

「お、おう・・・頼む・・・!これ、止めてくれ・・・」

 

「ナ、ナツさん!?」

 

ウェンディがぐったりしているナツとハッピーを見て悲鳴を上げる。

 

「まさか毒に・・・早く解毒しなきゃ!」

 

「オス猫もよ!全く、だらしないわね!」

 

ウェンディは急いでナツとハッピーの治療に当たった。

 

「デカブツが言ってたな、制御してるのは王の間だとか」

 

「リチャード殿か」

 

「中央だって言ってたから・・・あの建物ね」

 

リチャードとは、ホットアイの本名のことである。ジュラと交戦していた際、ニルヴァーナが始動し、その影響で悪から善に改心したのだ。それから彼も連合軍に協力してくれることになって、今は六魔将軍(オラシオンセイス)の1人であるミッドナイトと交戦している。

 

「あそこに行けばニルヴァーナを止められるかも・・・」

 

そのリチャードが教えてくれた情報が、「ニルヴァーナは中央にある『王の間』で制御されている」だ。

 

「というか、アミクも探さないと!」

 

「それもそうだが、今はニルヴァーナを止めることが先だ。アミク殿ならきっと無事だ」

 

ジュラが冷静に述べた。アミクたちの方も心配だが、闇雲に探して時間を消費するより、まずは目的がはっきりしている所に向かうべきだという。

 

「それに、王の間に居るかもしれないわよ?」

 

シャルルの言葉に納得するグレイとルーシィ。そこで、ウェンディが困惑した声をあげた。

 

 

「どうしよう・・・解毒の魔法を掛けたのに、ナツさんが・・・」

 

そこには未だ、顔色を悪くしているナツが。

 

「ナツは乗り物に弱いんだよ」

 

「情けないわね」

 

シャルルは辛そうなナツを見て鼻で笑った。

 

「乗り物酔い? だったら、バランス感覚を養う魔法が効くかも」

 

そう言うとウェンディは、手に淡い光を集め、ナツにその光をゆっくりと流し込む。

 

「『トロイア』」

 

「!おお!?」

 

途端、ナツが俊敏に立ち上がり生き生きと動き出した。

 

「おおお!!平気だぞ!ウェンディもアミクみてえに酔わなくなる魔法使えるんだな!」

 

「アミクさんも、ですか・・・やっぱり凄い・・・」

 

ウェンディが目に尊敬の念を浮かべた。

 

「そうだ、そのアミクだよ!アイツ俺の相手横取りしやがった!」

 

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょーが!!それに、今無事かどうかも分かんないのに・・・」

 

ナツはそれを聞いてキョトンとする。

 

「無事に決まってんだろ?ぜってーあの毒野郎をぶっ倒して勝ち誇ってるぜ、チクショー!」

 

ナツはアミクが勝っていると信じているようだ。これもコンビだからこその信頼だろう。

 

「というか、あっちの方からアミクの匂いがするぞ?」

 

「た、確かにそうです!」

 

ナツが指差したのはーーーーー王の間のある方向だった。

 

「もしかしてシャルルの憶測が当たった?」

 

「なんにせよ好都合!急いで向かうぞ!」

 

ナツたちは王の間に向けて駆け出した。

 

 

 

 

 

そして、ナツ達が着いた時には、アミクの髪を引っ張ってるブレインが王の間に入ろうとしているところだった。

 

 

「ちょっと、アンタ!!アミクを離しなさいよ!!」

 

ルーシィが叫ぶと、ブレインがニヤリと笑った。

 

「それはできん話だ。この娘は新たな六魔将軍(オラシオンセイス)の仲間になるのだ」

 

ブレインの言葉を聞き、ルーシィ達は驚く。

 

 

「アミクを闇ギルドに!?」

 

「想像できねえな・・・」

 

「むしろ正規ギルドに変えちゃいそうだよね」

 

勝手なことを言っていると、アミクが苦しげに声を出した。

 

「た、助けて・・・もうせり上がってきてヤバイの・・・」

 

「ここで吐くなよ『音竜(うたひめ)』!!?」

 

ジュラが心配そうに言った。

 

「アミク殿、体調が悪そうだな」

 

「アミクも乗り物に極端に弱いんだよ」

 

ハッピーがブレインに説明していると、アミクは必死に顔を上げてブレインに言い放つ。

 

「禿げちゃえ!」

 

「まだ言うか!?」

 

「・・・わ、割と元気そうだ・・・はぁ」

 

ジュラが地味にショックを受けていた。

 

「少しは黙らんか」

 

「うあっ!」

 

ブレインはアミクの頭を下に叩きつけた。

 

「てめえ!!」

 

その瞬間、怒りの表情を浮かべるナツ達。今にも飛び出しそうだ。

 

「う、みんなぁ・・・早くこれ止めてぇ・・・」

 

「そうだな。おめえのためにも、早く止めてやんよ」

 

グレイの言葉を聞いたブレインが不気味に唇を歪ませる。

 

「止める?ニルヴァーナを?出来るものか・・・この都市はまもなく第一の目的地、化け猫の宿(ケット・シェルター)に到達する」

 

「や、やっぱり・・・!」

 

ウェンディが震える声で言った。

 

 

「目的を言え、何故ウェンディ殿達のギルドを狙う」

 

ジュラが鋭い声で問うも、ブレインは笑みを浮かべたままだ。

 

「超反転魔法は一瞬にして光のギルドを闇に染める。楽しみだ・・・地獄が見られるぞ」

 

嫌な予感しかしない言葉だ。突然、魔力が大きく高まった。その源はジュラだ。

 

「聞こえなかったか?目的を言え」

 

「うぬのような雑魚に語る言葉は無い!われは光と闇の審判なり、ひれ伏せぇ!!」

 

「困った男だ・・・まともに会話もできんとはな」

 

ブレインの気迫にも動じずに傲然と立つ、ジュラ。その場のほとんどが、ジュラのその姿に畏怖を覚える。

 

そこで、ナツがジュラを押しのけ前に躍り出た。

 

「よーし、オレが相手だぁ!!」

 

「待て、ナツ殿」

 

ジュラがナツの肩に手を置く。

 

「ここはワシに任せてくれないか?連合軍として役に立たねば、面目が立たんのでね」

 

ちょっとふざけるように言うジュラ。もしかしたら、最初に不覚を取られて刺されたことを気にしているのかもしれないが、その表情は余裕そうだ。

 

「消え失せろ蛆虫共が!!」

 

ジュラがブレインに手を向けた瞬間・・・・ブレインが吹き飛んでいた。周りの建物を破壊し、ぶっ飛んでいき崩れた瓦礫に埋まる。

 

それに、全員が驚き、戦慄した。

 

「・・・な、なんだこの魔力は・・・!?」

 

「立て。化猫の宿を狙う理由を吐くまでは寝かさんぞ」

 

ブレインを超える気迫を放ちながら凄むジュラ。

 

「も、もしかしてこのオッサン・・・」

 

「滅茶苦茶強い・・・!?」

 

「これが、聖十の魔導士の力・・・!?」

 

ブレインは瓦礫をどかす。

 

「・・・なるほどな、少々驚いたが・・・聖十の称号は伊達ではないということか」

 

すぐに冷静さを取り戻すブレイン。そのまま立ち上がってジュラを見据える。

 

化け猫の宿(ケット・シェルター)より近いギルドはいくらでもある。わざわざそこを狙うからには特別な目的があるのだろう?」

 

「これから死ぬ者が知る必要はなかろう・・・『常闇回旋曲(ダークロンド)』」

 

「・・・『岩鉄壁(がんてつへき)』!」

 

闇の塊とでもいうべき魔力が、ジュラに襲いかかる。しかし、ジュラは冷静に魔法を見据えて固くした土をぶつけた。

 

「かかったな!『常闇奇想曲(ダークカプリチオ)』!」

 

さっきの魔法は囮。ブレインはすぐに後ろに回ってジュラに向けて魔法を放つ。

 

しかし、ジュラはそれさえも読んでいたかのように、目の前に出した岩を後ろに曲げて防ごうとする。

 

「岩が曲がった!?」

 

「馬鹿め!『常闇奇想曲(ダークカプリチオ)』は貫通性の魔法!その岩ごと粉砕してくれるわァ!!」

 

「ふん!」

 

ジュラは貫通された岩を、瞬時にまた曲げて地面に魔法の接触部分を叩きつける。すると、魔法は曲がって空へと向かっていった。

そして、それに驚いたブレインの隙を突くかのように、ジュラは操っていた壁を壊し、破片をブレインに向けて飛ばす。

 

「ぐぁっ!な、なんだこれは・・・!?」

 

飛ばされた破片はブレインを閉じ込めるかのように集まっていく。

そして、最終的にブレインは全身を岩の破片によって覆われてしまっていた。

 

「・・・『覇王岩砕』!!」

 

「うあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!」

 

その岩の集まりが爆砕する。そして、ボロボロになったブレインが現れ、バタッと倒れる。

 

「六魔の1人を・・・こんな、無傷で一方的に倒すなんて・・・」

 

「なるほどな。リオンがさん付けで呼ぶわけだ」

 

「す、すっげー・・・強えなオッサン!!」

 

(ほ、本当に凄い・・・!さすが聖十の1人!)

 

ナツ達が呆然とし、アミクも酔いながらも感心する。

 

「さぁ、ウェンディ殿達のギルドを狙う訳を言え」

 

ジュラはブレインに近づき、質問を繰り返した。

しかしそれでも、ブレインは答えようとはしなかった。

 

「ま、まさか・・・この私が、やられる・・・とは・・・!ミッドナイトよ、あとを頼む・・・六魔は、決して倒れてはならぬ・・・六つの祈りが消える時・・・あの方が・・・!」

 

(あの、方・・・?)

 

気になる言葉を残して、ブレインは気絶してしまった。その時、ブレインの顔にある模様のラインの一つが消えた。

 

「あれ?今、顔の模様が消えなかった?」

 

「はぁ?なんだよそれ」

 

気持ち悪さを抑えてブレインの顔を見てみれば、確かに最初に見た時より顔の模様が減ってる気がする。しかし、ルーシィ達はそれを気のせいだと判断したようだ。

 

 

「で、でも、これでニルヴァーナは止まるのよね?」

 

「コイツが操っていたっぽいしな」

 

「だが、倒しただけで止まるとは思えん。やはり、王の間でニルヴァーナを制御している者を見つけ出す必要があるだろう」

 

 

ジュラの言葉に全員が頷いた。そこで、アミクが弱々しい声で喋り出す。

 

 

「ねえ、もう吐いていい・・・?」

 

「うおー!?ウェンディ、オレに掛けたのと同じ魔法をアミクに使ってくれ!」

 

「え、でもアミクさんの魔法を使えば・・・」

 

「酔ってる時は使えないのよ」

 

ルーシィの言葉を聞いた後、ウェンディは慌ただしく魔法を使った。

 

 

「『トロイヤ』」

 

「・・・ふぅ・・・死ぬかと思った・・・ありがとう、ウェンディ・・・」

 

アミクはよろよろと立ち上がる。そして、大きく背伸びをした。

 

「うーん!酔わないって素晴らしい!髪の毛引っ張られるわ、闇ギルドに強引に勧誘されるわ・・・散々だよ!」

 

「これも人生経験だと思えよ」

 

「こんな経験いらなーい!禿げろ禿げろー!」

 

恨みが募っているのか、アミクが気絶してるブレインの髪に念を送っていた。なぜそんなにハゲに拘る。

 

 

「あ・・・!失礼しました・・・」

 

「・・・いや、謝られた方が傷付くのだが・・・」

 

 

アミクがジュラの頭を見て頭を下げる。すごく失礼だが、これも天然なのだ・・・。

 

 

その時、シャルルはキョロキョロしているハッピーに気付いた。

 

「何探してるのよ?」

 

「んーーー、マーチは?」

 

「あ、忘れてた」

 

さっき気絶していたところを見たのが最後だったが、そろそろ起きただろうか。

 

「アミクー、皆ー!見つけた、のー!」

 

噂をすればなんとやら、マーチが飛んできた。目を覚ましたらしい。

 

「もう!目を覚ましたら蛇がこっち睨んでくるし、記憶が急に途切れちゃってるし、アミクは居ないし!散々、なの!」

 

「う、うん・・・色々ごめん・・・」

 

ペットは飼い主に似るというが、マーチも先程のアミクと似たような愚痴を言っている。

 

「そういえば、アミク達はコブラって奴を倒したのか?」

 

「もっち!ちょっと嫌な出来事もあったけど・・・」

 

アミクはブレインを睨む。またブレイン絡みだろうか。いい加減、禿げろビーム出すのやめろ。

 

「せっかく新しくした服も結構ボロボロになっちゃったしさ」

 

「ちょっと!背中!何この怪我!」

 

「忘れてた・・・意識しだしたら痛くなってきた・・・あー痛い」

 

「わ、私が治します!」

 

「アンタ、また魔法使うの!?」

 

「マーチ、オイラ心配で心配で・・・」

 

「はいはいそっちこそ無事で何より、なの」

 

「何だよ、勝てなくてアミクに助けられたのかよ。ププッ、だっせー」

 

「何だとー!!あのままでもオレが勝ってたわ!!」

 

 

 

「・・・本当に元気な若者達だ」

 

 

あっという間に騒がしくなるアミク達を見て、呆れたように苦笑するジュラであった。

 

 

 

 




ニルヴァーナを二ラヴァーナと誤字ってしまった。ニラで出来てそう。全てのものをニラに反転させる、超反転ニラ魔法を搭載している。


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