妖精の尻尾の音竜   作:ハーフィ

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決着です。あと1,2,3話したらニルヴァーナ編終了で、閑話挟んでエドラス編です。


無と竜の力

ルーシィはふらつきながら魔水晶(ラクリマ)に向かっていた。

 

しかし、その息は荒い。

 

「ルーシィ、急ごうよ。もう残り時間が10分切っちゃったよ」

 

「もうすぐで着くから、頑張れ、なの」

 

「う、うん…分かってる…うっ」

 

マーチたちが励ますが、ルーシィはふらついて壁に手をついた。

 

「ルーシィ!」

 

そのままルーシィは膝をついてしまう。アミクの治療が不十分だったのか。

 

「ルーシィ大丈夫?」

 

「うん、大丈夫…みんなも頑張ってるんだ。アタシも頑張らなくちゃ…!」

 

ルーシィは気合を入れて立ちあがった。

 

「無理はしないで、なの」

 

「うん…」

 

ルーシィはちょっと暗い顔しながらも懸命に進んでいった。

 

●

 

残り五分。

 

ルーシィはなんとか3の魔水晶(ラクリマ)に辿り着いた。

 

しかし、彼女の顔は俯いたままだ。

 

「…ルーシィ?」

 

マーチが疑問の声を上げると、ルーシィは震える声で悔し涙を流す。

 

「見栄とか張ってる場合じゃないのに…『できない』って言えなかった」

 

座り込んで泣くルーシィ。マーチたちは掛ける言葉が見つからなかった。

 

「もう…魔力がまったくないの…」

 

エンジェル戦の時、大量に魔力を消費してしまって、それがまだ回復していないのだ。

 

「だ、だったら!ナツかアミクに任せればよかったんじゃ…!」

 

「あの二人、鼻がいいんでしょ?」

 

ルーシィの言葉にハッピーは言葉を止めた。

 

「あの二人は匂いでゼロがどこにいるか分かってたんだと思う」

 

そう思ったきっかけは二人とも同じ番号を選んだことだった。

 

「ゼロを相手に一人でやるのは危険よ…。だからナツとアミクの二人に任せるしかない」

 

しかし、そこでルーシィはキッと顔を上げた。

 

「それでもウェンディたちのギルドを守りたい、俯いていたくない。だからあたしは最後まで諦めない」

 

自分は妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士だから。絶対に諦めたりしない。

 

その覚悟でルーシィは立ちあがり、素手ででも壊そうと考えていた時。

 

「「時にはその想いが力になるんだよ」」

 

後ろから声が聞こえた。ルーシィたちがそちらを向くと、そこには―――――。

 

「「君の想いは僕たちを動かした」」

 

「ジェミニ!?」

 

エンジェルの星霊であったジェミニだった。

 

「「ピーリッピーリッ」」

 

ジェミニはルーシィに変身すると、鍵を取り出した。

 

「僕たちが君の意志になる。5分後にこれを壊せばいいんだね?タウロスでいい?」

 

星霊の中でも怪力であるタウロスが妥当だと踏んだのだろう。

 

「…お願いっ!」

 

「これで、壊せる!なの!」

 

マーチは思わぬ助っ人に喜んだ。しかし、エンジェルに召喚されたわけでもないのに勝手に出てきてもいいのだろうか。

 

と、疑問に思ったが、ロキやバルゴもしょっちゅうやってるので気にしないことにした。

 

 

●

 

 

 

 

ドラゴンフォースを解放したアミクとナツ。

 

 

二人の力が発揮されようとしていた。

 

 

「ドラゴンフォース…粉々にするには惜しい男女だが…」

 

 

滅竜魔法というのがどれほど貴重なのかはゼロでも分かる。その使い手を潰すのはちょっともったいない。

 

 

「もうよい。楽しかったよ…」

 

十分楽しめた。ゼロは手に魔力を纏わせ、ゆっくり回転させた。

 

 

「貴様らに最高の『無』をくれてやろう。我が最大魔法をな!」

 

ゼロの魔力も高まった。宣言通り大技を放つつもりらしい。

 

 

「『滅竜奥義』!!」

 

「…『滅竜奥義』っ!」

 

ナツとアミクは同時に構えた。そして。

 

 

 

「『紅蓮爆炎刃(ぐれんばくえんじん)』!!」

 

「『音災神楽組曲(おんさいかぐらスイート)』!!」

 

二人で当時に飛びだした。

 

 

残り1分。

 

●

 

 

ジェミニはタウロスを召喚した。気分的にルーシィも一緒に唱える。

 

「「開け!!金牛宮の扉…タウロス!!!」」

 

「よーし!!」

 

「行ける!の!」

 

「MOOOOOOO!!!」

 

雄叫びを上げながらタウロスが召喚された。

 

 

「「頼んだからね!!タウロス!!」」

 

「MOOOO!お任せあれ!二人のナイスバディ!!」

 

タウロスは斧を構えた。

 

 

「あーしも、援護する、の!」

 

「え”」

 

マーチも爪を伸ばして待機する。そんなマーチを驚いたようにハッピーは見た。

 

 

●

 

 

「我が前にて歴史は終わる…。無の創世記が幕を開ける」

 

ゼロは突っ込んでくるナツとアミクを見据えた。そして、カッと目を見開く。

 

 

「『ジェネシス・ゼロ』!!」

 

そう叫んだ瞬間、ゼロから怨霊のようなものが溢れだした。

 

「開け、鬼哭の門!」

 

怨霊がゼロの背後から前から横から下から、大量発生する。人のなれの果てのようなその姿。表情は苦痛しかなく、全身が禍々しい紫色に包まれている。

 

見ただけで感じる、おぞましい感覚に総毛立つ。

 

その者たちがアミクたちに向かって手を伸ばしてきた。

 

 

「無の旅人よ。その者たちの魂を、記憶を、存在を喰い尽せぇ!!」

 

限りのない怨霊たちがアミクたちをあっという間に覆い尽した。

 

「きゃああっ!!?」

 

「消えろ!!『無(ゼロ)』の名の元に!無の彼方へ!!」

 

「うわあああああ!!!」

 

無の旅人がどんどんナツたちを飲みこんでいく。完全に飲まれてしまえば、アミクたちの存在は消される。世界からも、人の記憶からも。

 

「チク、ショオオオオオオ!!!」

 

ナツが悔しげに叫び声を上げた、その時。

 

 

 

「―――――諦めちゃ、ダメ!!」

 

無の旅人に取り込まれかけたナツの手をアミクが掴んだ。

 

 

「アミク…!?」

 

「こんなところで終われない!!そうでしょ!?」

 

掴んでいるアミク本人も飲まれかけている。しかし、アミクは言葉を続けた。

 

 

「もっと自分の力を信じて!私たちは、ドラゴンに育てられた滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)!!その誇りを、忘れないで!!」

 

 

とうとう頭以外全て覆われてしまった。しかし、アミクの瞳に浮かんでいるのは絶望ではない。

 

 

メラメラと輝く、戦意だった。

 

 

「――――私たちには、仲間と、ドラゴンが付いてる!!!」

 

 

その言葉を最後に、アミクたちは完全に無の旅人に飲み込まれてしまった。

 

 

「これでおまえらも、無の世界の住人だ」

 

それを見届けたゼロは達成感に包まれた。二つの存在を『無(ゼロ)』にした、と。

 

「終わったな」

 

 

そう呟いた、瞬間。

 

 

 

 

ナツたちが消えたはずの空間から光が漏れた。

 

 

「な、なんだ!!?」

 

 

突然、そこから金色の炎が吹き荒れる。

 

 

驚愕するゼロの前で、炎を纏った人物が静かに立っている。その者は一人の少女を抱えていた。

 

 

「…ありがとな、アミク」

 

アミクの言葉でナツもイグニールの言葉を思い出した。彼も同じような事を言っていた記憶がある。

 

そうだ、自分は滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)。

 

 

この程度の逆境、乗り越えなくてどうする。自分になら、必ずできる!!

 

 

炎はどんどん燃え広がって、無の旅人を飲みこんでいく。

 

 

「金色の炎が、オレの魔法を燃やしているだと!!?」

 

 

そんなことは一度もなかった。自分の魔法が破られるなど、考えたこともないというのに。

 

 

それだけではない。

 

 

炎から逃れた怨霊たちも光に包まれて消えていっているのだ。

 

 

「消えただと!!バカな!!ありえん!!」

 

 

驚愕の連続。ふと、気がつけば金色の炎の中から光り輝く歌声が聞こえていた。

 

見てみると、ナツのとなりにアミクがしっかり自分の足で立っていた。

 

 

そして、その口から歌声が聞こえてくる。

 

 

「…『鎮魂歌(レクイエム)』」

 

辺りが眩い光で満ちた。ゼロも眩しくなって思わず目を瞑る。

 

「安らかに、眠って…」

 

 

次に目を開けた時には…。

 

 

「全て、消えた…!?いや、成仏しただと!!」

 

無の住人が全ていなくなっていた。アミクの歌で全員浄化したのだ。

 

 

「あああああああああああっ!!!」

 

ナツの雄叫びが響くと、同時に。

 

 

ゼロの視界にははっきりと、ナツとアミクの後ろで咆哮するドラゴンが見えた気がした。

 

 

――――ドラゴンを倒すために、ドラゴンと同じ力を身に付けた魔導士!―――――

 

 

アミクたちは同時に飛びだして同時にグーをゼロの顔面にめり込ませた。

 

 

――――これが本物の、滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)!!――――――

 

ぶっ飛んだゼロに向けて、ナツは構える。

 

 

「全魔力解放…!」

 

ボゥ、と炎が燃え広がった。

 

 

「『滅竜奥義「不知火型(しらぬいがた)」』!」

 

そして、思いっきり突っ込んでいった。

 

「『紅蓮鳳凰劍(ぐれんほうおうけん)』!!!」

 

 

炎を纏ったナツがゼロに直撃し、そのまま天井を突き破り、上へ上へと進んでいく。その姿はまるで本物の鳳凰のようで。

 

 

残り10秒。

 

 

「うごあああああああああ!!!」

 

「うおおおおおおおおおお!!!」

 

 

ナツ一緒に燃えているゼロは既に白目だ。しかし、ナツはそのまま突き進んで―――――魔水晶(ラクリマ)のある場所まで到達した。

 

飛びあがって、ゼロをぶっ飛ばす。

 

 

「ナツ…!」

 

ジェラールはそれを見て喜色を浮かべた。しかし。

 

 

 

「ま、まだ終わりじゃねえぞぉ…!!」

 

 

ゼロが気力を振り絞って覚醒し、ナツに方向転換した。

 

 

「潰れちまえええええ!!!」

 

 

そのまま、手に魔力を溜め、撃ち放とうとした。

 

 

「やっ」

 

 

そのゼロの真横に、緑髪の少女が浮いている。

 

(一瞬でここまで…!?)

 

いつの間にいたのか。まだ下にいるものだと思っていたが。

 

 

「消えろォ!!!」

 

すかさずアミクに向けて魔法を放つ。しかし―――――

 

シュッ

 

「あ…?」

 

一瞬で姿が消えた。と思ったら。

 

 

「音速移動、っと…」

 

「なあっ…!?」

 

 

すぐ後ろにいた。ゼロは驚愕を禁じえない。音速で動いたというのか。

 

 

 

 

 

 

 

「『滅竜奥義』!」

 

 

 

 

 

 

アミクは手刀を大きく振りかぶった。その手にどんどん魔力が溜まる。甲高い音も聞こえ始めた。

 

 

そして。

 

 

 

 

「『超音刃奏鳴曲(ちょうおんぱソナタ)』!!!」

 

 

思いっきり振り下ろした。大きな音の斬撃が射出する。『音竜の斬響(スタッカート)』に毎秒4万回もの超音波振動を加え、切れ味を増し、巨大化したもの。

 

 

それがゼロに向かう。ゼロはそれを見ている事しかできなかった。

 

 

――――これが、滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)の真の力――――

 

 

「があああああああああああああっ!!!!」

 

大きく斬り裂かれたゼロ。彼は血を撒き散らしながら落下して、動かなくなった。

 

 

 

残り3秒。

 

 

音の斬撃は止まらない。そのまま魔水晶(ラクリマ)まで向かう。

 

 

「行けええ、アミクぅ!!」

 

 

ナツが叫ぶ。そして。

 

 

 

スパッ、と斬撃が魔水晶(ラクリマ)を通っていった。直後、魔水晶(ラクリマ)が罅割れ、粉々に砕けた。

 

 

1の魔水晶(ラクリマ)、破壊!

 

 

●

 

 

「『氷雪砲(アイスキャノン)』!!」

 

 

2の魔水晶(ラクリマ)、破壊!

 

 

○

 

 

『いっけえええええええええ!!!』

 

 

「MOOOO裂――――!!!」

 

 

「切り裂く!なの!」

 

 

3の魔水晶(ラクリマ)、破壊!

 

 

☆

 

「キラメキ無限ダーイ!!!」

 

 

4の魔水晶(ラクリマ)、破壊!

 

 

♡

 

 

「この一撃に、残された魔力を全て込める!おおおおおおおおおっ!!!」

 

 

5の魔水晶(ラクリマ)、破壊!

 

 

■

 

 

「『天竜の咆哮』!!!」

 

6の魔水晶(ラクリマ)、破壊!

 

 

 

△

 

 

 

 

その途端。ニルヴァーナの6つの足の根元付近から爆発が起きた。

 

 

 

 

●

 

「やったのか…!?みんな同時に!」

 

 

グレイは揺れる足場で成功を実感できないでいた。

 

 

●

 

 

「「やった―――!!!」」

 

「やった、なのー!!!」

 

 

マーチたちは抱き合って喜んだ。タウロスとジェミニもハイタッチしている。

 

 

「でも、爪痛めちゃった、の…」

 

 

マーチがボロボロになった爪を見てしょんぼりした。

 

 

 

●

 

 

「エルザさん、アミクさん、みんな…グッジョブ!」

 

筋肉ダルマになった一夜がキラーンと歯を光らせる。

 

●

 

「ナツ、アミク…やったか」

 

エルザは二人の勝利を悟って嬉しそうに微笑んでいた。

 

 

 

●

 

 

ジェラールは床に着地し損ねてお尻を打ち付けるアミクと、彼女に近寄るナツを微笑みながら見ていた。

 

 

「あたたた、最後かっこよく決めたかったのに」

 

「ったく、これでいいんだろ?アミク」

 

「ばっちり!ナイス滅竜奥義!」

 

アミクは座り込んだままグッとグッドサインした。

 

 

「つーかあの歌はなんなんだよ」

 

 

「『鎮魂歌(レクイエム)』の事?アレは怨霊とか亡霊みたいなのに効果があって…聖属性的なものが…」

 

 

アミクが説明していると。

 

 

揺れが酷くなり、床が崩壊した。

 

「きゃあっ!!?」

 

「アミクっ!!」

 

その崩壊に巻き込まれ、アミクが落ちてしまう。それを追いかけ飛び込むナツ。

 

 

「ナツ、アミク!」

 

それを見たジェラールが床を蹴ってすぐにナツの足を掴んだ。そのナツの手にはアミクの手が掴まっている。

 

 

「ジェラール!?貴方まで落ちちゃうよ!!」

 

「真ん中のオレは前にも後ろにも引っ張られて痛え――――!!」

 

「でも、ここでおまえたちを死なせるわけにはいかない…!!」

 

ジェラールは必死にナツたちを引きあげようとするが、ジェラールの足場も崩れてきた。

 

 

「このままじゃ…!」

 

その瞬間。天井が崩れ落ちた。

 

 

●

 

 

「あの双子め!なの」

 

マーチは一足先に星霊界に帰ってしまったジェミニに毒づく。

 

「どーせなら外に出してくれればいいのに、なの」

 

「私たちだけで出るしかないわ!」

 

ルーシィたちは落ちてくる瓦礫をよけながら外に向かった。

 

「アミク、無事でいて、なの!」

 

 

●

 

 

崩壊していくニルヴァーナの外にて。

 

 

マーチたちはホロロギウムのお陰で無事、脱出できた。他の人たちもうまく脱出できたらしい。

 

 

ナツとアミク、そしてジェラールを除いて、だ。

 

 

 

「ナツさんとアミクさんは!?ジェラールも!」

 

「見当たらないな…」

 

「何してやがんだ…クソ炎!!」

 

「アミク…」

 

いつまで経っても現れない三人にみんな不安になった。その時。

 

 

「ニルヴァーナが!!」

 

 

ニルヴァーナが音を立てて完全に崩壊した。

 

 

「そんな…!」

 

遅かったか、と絶望した時のことだった。

 

 

 

急に地面が盛り上がり、人が現れる。

 

 

 

「愛は仲間を救う…デスネ」

 

 

ナツとアミク、そしてジェラールを抱えたリチャードだった。

 

「アミク、ナツ!!」

 

「た、助かったよ~彫刻さん!」

 

「私にはリチャードという名があるのですが…」

 

 

シャルルが警戒したように叫んだ。

 

 

「六魔将軍(オラシオンセイス)がなんで!?」

 

 

「色々あってな…大丈夫…味方だ」

 

ウェンディたちを助けて、外まで連れ出してくれたジュラが宥める。

 

 

そして、アミクとナツが下された途端。ウェンディはアミクに抱きついた。

 

 

「アミクさん!本当にありがとう!ギルドを…守ってくれて…!」

 

見るとうっすらと涙が浮かんでいる。うれし涙らしい。

 

 

「ナツさんも!約束を守ってくれた…!」

 

「約束?」

 

「まあ、ちょっとな」

 

 

ウェンディはナツにも笑顔を向けた。

 

 

アミクはウェンディの頭を優しく撫でる。

 

「これはみんなの力があったからだよ。もちろん、ウェンディの力もね」

 

「そうだな。今度は元気にハイタッチだ」

 

「…はい!」

 

ウェンディはアミクたちと元気よくハイタッチした。

 

 

こうして、連合軍と六魔将軍(オラシオンセイス)との戦いは連合軍の勝利で終わった。

 

 

 




オリジナルティ出そうと思ったら結局原作と似たり寄ったりになっちゃった。

次回、評議員メガネ出ます。再登場です。
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