妖精の尻尾の音竜   作:ハーフィ

72 / 202
今回でニルヴァーナ編は終了です。やっとエドラスじゃああ!!エドラス!エドラス!


化猫の優しい幻と妖精の歓迎

「わあ!かわいい!」

 

「センスあるぅ!!」

 

 

アミクたちは化猫の宿(ケット・シェルター)のギルドまで来て休息をとっていた。そして、アミクたちはそこで衣装をもらったのだ。現代風とは違い、民族臭のする服装だった。

 

「なんだか歴史ありそうな服!」

 

「私の方が可愛いですわ」

 

アミクやルーシィだけでなく、無事帰ってきたシェリーも服を着ていた。無事で何よりだ。

 

「ここは集落全部がギルドになってて、織物の生産も盛んなんですよ」

 

「へーここ全部が!?」

 

「珍しい、の」

 

集落がギルドになってるっていうのも、変わったものだ。

 

「ニルビット族に伝わる織り方なの?」

 

ニルビット族。400年前にニルヴァーナを開発し、封印した種族である。この集落の住人たちはその二ルビット族の末裔だというのだ。

 

ゼロが最初に化猫の宿(ケット・シェルター)を狙ったのも、再度封印されるのを防ぐため…だったのだが、破壊がすべてだった彼はそれほど気にしていなかった。

 

「えっと…そうなの、かな?」

 

「そっか、ウェンディたちはギルド全体がニルビット族の末裔って知らなかったんだよね」

 

「私たちは後から入ったから」

 

 

ウェンディはジェラールと共に旅をしていて、途中でここに預けられたらしい。

 

 

その時、アミクは片隅で一人座っているエルザに気付いた。まだ、落ち込んでいるらしい。

 

そういう時は気分転換が大事だ。

 

 

「エルザも着てみる?絶対似合うよ」

 

アミクが服を持って近付いた。

 

「ああ…そうだな…」

 

 

しかし、そう返事するエルザの声はどこか上の空だ。…これは立ち直るにはまだ時間がかかりそうだ。さっきも泣いていたし。

 

 

 

「ところでウェンディ、化猫の宿(ケット・シェルター)っていつギルド連盟に加入しましたの?私…失礼ながらこの作戦が始まるまでギルドの名を聞いた事がありませんでしたわ」

 

「そういえばあたしも!」

 

「私もあの時初めて聞いたよ」

 

アミクたちが言うとウェンディが微妙そうな顔になった。

 

「そうなんですか?うわ…ウチのギルド、本当に無名なんですね…」

 

「うーん、服はこんなに可愛いのに…」

 

仮にもギルドが無名なのはまずいのではないのだろうか。

 

 

「まあ、これからは広まっていくと思うよ。闇ギルドの最大勢力の一角を倒したギルドの一つだし!」

 

「そうだといいわね」

 

シャルルは特に興味ないのか素っ気なく言った。

 

 

 

化猫の宿(ケット・シェルター)のマスターであるローバウルがアミクたちを広場に集めたのは数十分後のことだった。

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)青い天馬(ブルーペガサス)蛇姫の鱗(ラミアスケイル)、そしてウェンディ、シャルル。よくぞ六魔将軍(オラシオンセイス)を倒し、ニルヴァーナを止めてくれた。地方ギルド連盟を代表して、このローバウルが礼を言う。ありがとう、なぶらありがとう」

 

(なぶら、ってどういう意味…?)

 

「なぶら」とよく口にする老人、ローバウルが代表して礼を言う。

 

それを聞いてみんな誇らしげな顔だ。一夜が一歩前に出てキザッたらしくポーズを決めた。

 

「どういたしまして!! マスターローバウル!!六魔将軍(オラシオンセイス)との激闘に次ぐ激闘!! 楽な戦いではありませんでしたがっ!! 仲間との絆が我々を勝利に導いたのです!!」

 

「「「さすが先生!!」」」

 

勝手に盛り上がり始める青い天馬(ブルーペガサス)

 

「ちゃっかりおいしいトコ持っていきやがって」

 

「あれ?一夜さんって誰かと戦ってたっけ?」

 

「聞かぬが仏っていう諺がある、の」

 

魔水晶(ラクリマ)を破壊する一役は買っていたみたいだが…。

 

「この流れは宴だろー!」

 

「あいさー!!」

 

ナツたちも盛り上がって拳を突き上げた。

 

 

「一夜が」「「「一夜が!?」」」

 

「活躍」「「「活躍!!」」」

 

 

「それ」「「「ワッショイワッショイワッショイ!!!!」」」

 

 

青い天馬(ブルーペガサス)が変な踊りし始めた。完全にチョーシに乗ってるってやつである。

 

 

『ワッショイワッショイ!!!』

 

というかなんかテンション上がってきたのでアミクたちも一緒にやってしまった。これがハイになってるってやつである。

 

『なにやってんだ…』

 

ついさっき復活したウルが呆れたような声を出した。

 

 

後で赤面するパティーンだこれ。

 

 

「さあ、化猫の宿(ケット・シェルター)の皆さんもご一緒にィ!?」

 

お祭り気分の一夜が化猫の宿(ケット・シェルター)の面々も誘うが…。

 

 

 

ヒュゥゥゥ――――

 

 

 

めっちゃ白けた。ちょっと肌寒くなってくる。

 

 

あまりの温度差にみんな大人しくなってしまった。

 

 

「皆さん…ニルビット族の事を隠していて本当に申し訳ない」

 

そこで、ローバウルは今度は謝った。

 

「そんなことで空気壊すの?」

 

「全然気にしてねーのに…な?」

 

「そうだよ、なぶらさん」

 

「なぶら、それは名前じゃないんじゃが…」

 

アミクが頷いていると、ウェンディも同意する。

 

「マスター、私も気にしてませんよ?」

 

しかし、ローバウルの表情は真剣なままだった。そして口を開く。

 

「皆さん、ワシがこれからする話をよく聞いてくだされ」

 

そして、彼の口から聞かされる衝撃の事実。

 

 

「まずはじめに…ワシらはニルビット族の末裔などではない。ニルビット族そのもの。400年前ニルヴァーナを作ったのは、このワシじゃ」

 

「何!?」

 

「うそ…」

 

「400年前!?」

 

「ニルヴァーナを開発したご本人さん!!?」

 

『そんなことが…』

 

つまり、ローバウルたちは400年もの間を生きてきたというわけか。

 

その話を聞いて特にウェンディとシャルルといった化猫の宿(ケット・シェルター)のメンバーの動揺が大きい。

 

 

「400年前…世界中に広がった戦争を止めようと、善悪反転の魔法『ニルヴァーナ』を作った。

ニルヴァーナはワシらの国となり、平和の象徴として一時代を築いた…しかし、強大な力には必ず相反する力が生まれる。闇を光に変えた分だけ、ニルヴァーナはその闇を纏っていった」

 

何事も、都合よくは行かない、ということか。

 

「…バランスを取っていたのだ。人間の人格を無制限に光に変えることは出来なかった。闇に対し光が生まれ、光に対して必ず闇が生まれる…人々から失われた闇は、我々ニルビット族にまとわりついた」

 

蓄積していった闇が全部彼らに集中してしまったら…。

 

「…ワシらはそのまとわりついた強大な闇に翻弄された。

 地獄じゃ……ワシらは共に殺し合い、全滅した。生き残ったのは…ワシ一人だけじゃ」

 

壮絶な過去にアミクたちは言葉を発せないでいた。

 

 

「…いや、今となってはその表現も少し違うな。我が肉体はとうの昔に滅び、今は思念体に近い存在。

 ワシはその罪を償う為…また、力無き亡霊(ワシ)の代わりにニルヴァーナを破壊出来る者が現れるまで…400年、見守ってきた。今、ようやくその役目が終わった」

 

400年もの長い間、ここでずっと待っていたのか。体を失くしても、思念だけでも生き続け、こうしてニルヴァーナが壊れるのを、ずっと。

 

アミクたちはローバウルの使命に終止符を打ったのだ。

 

「そ、そんな話…何これ、皆!?」

 

「あんたたち!?」

 

ウェンディが信じたくないように頭を押さえていると、ローバウルの身体が光に包まれていく。否、ローバウルだけでない。この集落の住人たちみんなが、だ。

光に包まれた彼らは粒子となって消えていく。

 

 

「マグナ!?ペペル!?なんで、なんでみんなが消えて…!?」

 

「…今まで騙していてすまなかったな。ウェンディ…ギルドのメンバーは皆、ワシの作り出した幻じゃ…」

 

「人格を持つ幻…!!?」

 

「何という魔力なのだ!!」

 

『魔力だけで言ったら聖十並か…!?』

 

それを聞いてアミクたちは驚愕する。ちょっと話しただけでも普通の人間となんら遜色なかったのだ。そんな幻を何十人も…。

 

「ワシはニルヴァーナを見守る為に、この廃村に一人で住んでいた」

 

ローバウル自身も粒子を散らしながら言葉を紡ぐ。

 

「7年前、一人の少年がワシの所に来た」

 

その少年はまだ幼かったウェンディを連れてきて言ったという。

 

『この子を預かってください』

 

その少年こそ、ジェラールだったのだろう。

 

「少年のあまりにまっすぐな眼に、ワシはつい承諾してしまった。一人でいようと決めてたのにな…」

 

懐かしむような口調。

 

ウェンディの瞳に涙が浮かぶ。本当はその時にはまだギルドではなかったのだ。でも、ローバウルは言っていた。

 

ここが魔導士ギルドだ、と。

 

実際はジェラールが魔導士ギルドに連れていく、と言っていたのでウェンディがそこをそうだと勘違いしていただけなのだが。ローバウルはその勘違いを利用したのだ。

 

「そして幻の仲間たちを作りだした」

 

そう、これも全てウェンディが寂しくないように、と。ウェンディの為に。

 

 

「じゃ、じゃあ化猫の宿(ケット・シェルター)って…ウェンディの為のギルド…!?」

 

 

一人の少女の為だけに造られた幻の魔導士ギルド。それが、化猫の宿(ケット・シェルター)なのだ。

 

 

「そんな話聞きたくない!!!」

 

ウェンディは涙を流して耳を塞いだ。ウェンディには辛い現実だろう。

 

今までずっと一緒に過ごしてきた、家族と言ってもいい存在たちが幻だったなんて。

 

 

「ウェンディ、シャルル…もうお前たちに偽りの仲間はいらない」

 

ローバウルはウェンディたちの後ろを指差した。

 

「本当の仲間がいるではないか」

 

 

その方向には、アミクたち、連合軍がいた。共に闘い、苦しみも喜びも分かち合った。それでこそ、仲間の言えるものだ。

 

もうほとんどローバウルの体が消えかかっている。

 

「お前たちの未来は始まったばかりだ」

 

「いや!マスタ―!!!」

 

優しげにウェンディたちを見ながら微笑む。そんなローバウルにウェンディは手を伸ばした。この世界に繋ぎとめるかのように。

 

 

「皆さん本当にありがとう…ウェンディ、シャルルを頼みます」

 

その言葉を最期に、ローバウルの全身が粒子になり果て、空へ昇っていった。

 

 

同時に、ウェンディの肩にあったギルドマークも消えていく。もう、このマークは必要ないのだ。

 

「マスタァ――――――!!!」

 

ウェンディは膝をついて絶叫した。その場に悲しい泣き声が響き渡る。

 

 

シャルルも瞳に涙を溜めていた。彼女にとっても自分を受け入れ、家族同然に接してくれた、大切なところなのだ。

 

それをあっという間に失くしてしまい、二人とも心にぽっかりと喪失感ができてしまった。

 

 

 

泣き叫ぶウェンディにアミクが近付く。そっとウェンディを抱きしめる彼女自身も泣いていた。

 

 

「辛いよね…。好きな人と別れるのって…」

 

アミクにも身に覚えがある、唐突な別れ。

 

 

「でも、その辛さって、仲間が埋めてくるんだよ?だから―――――」

 

アミクは後ろを向いた。アミクの見つめる先には涙を流すエルザが大きく頷いていた。

 

 

「来なよ、妖精の尻尾(フェアリーテイル)に…!」

 

 

コクリ、と頷く感触がした。

 

 

 

 

 

 

「ああ…いい天気…カモメちゃんの鳴き声が心地いい…」

 

軽快に進む船の上、アミクはボーッと頬杖をついて空を眺めていた。

 

 

下を見ると真っ青な海。上を見ても真っ青な空。世界は青色に支配されてしまったのかもしれない。

 

 

絶妙な加減で揺れる船の上、というのも趣がある。

 

 

 

 

 

アミクたちはウェンディたちを連れて妖精の尻尾(フェアリーテイル)に帰る手段として、船を使っていくことにしたのだ。

 

こうして、酔いやすいアミクが呑気に乗っていられるのも、ウェンディの掛けた『トロイア』の効果がまだ続いているためだ。

 

「私のより効果時間が長いなぁ…はぁ…」

 

さっきからアミクは心ここにあらず、といった様子を醸し出している。

 

 

「まだ気にしているんでしょうか…」

 

そんなアミクをウェンディは心配そうに見ていた。

 

「あの子はちょっと悩みすぎだと思うけどね」

 

『そうだな。告白ぐらい気丈に受け止めればいいのに』

 

好き勝手なこと言っているが、じゃあ、あんたら実際に告白されてみろ。

 

 

何があったのかというと。

 

 

連合軍が、それぞれ帰路について別れる前に、何とリオンがアミクに告白したのだ。

 

いや、再会した時から告白していたようなもんだったが、改めて、はっきりとリオンの口から。

 

『アミクちゃん、愛してる!付き合ってくれ!!』

 

『はいぃ!!?』

 

そして魔法で昨日よりも立派な氷の花束を造り、差し出しながら言葉に力を込めていた。

 

突然の事にびっくりして、真っ赤になったアミクがあたふたした。とにかく返事せねば。

 

 

『えっと、ご、ごめんなさい…!リオンの事は嫌いじゃないけど恋愛対象としては見れないです…』

 

『…そうか』

 

リオンの顔は寂しげだったが、どこか清々しいものだった。

 

『そう簡単に諦めるつもりはないが…かなり手ごわそうだ』

 

『えぇ…』

 

『おい、やめとけ。新しい恋見つけた方が楽だって』

 

グレイの言葉にリオンはニヤリと笑みを浮かべた。

 

『ふん、それはおまえの好きな相手かもしれんぞ』

 

『そんな奴いねえよ』

 

『好かれてる人ならいるけど』

 

『なんだそれは』

 

『っていうか、なんでリオン服脱いでるの?』

 

なんていうバタバタもあったが、とにかくそんな告白騒ぎがあったのだ。

 

アミクとしては自分よりいい女なんていくらでもいると思うのだが。エルザとかルーシィとか。

 

 

リオンには新しい恋に目覚めて幸せになって欲しいものだ。

 

 

「…ていうかあんなみんな見てるところで言わなくたって…」

 

「アミク、めっちゃ慌ててた、の」

 

勿論告白されたことがないわけではないが…。慣れないものだ。

 

『いやーいいもん見れたよ』

 

『貴方の弟子、癖強すぎですよ』

 

ウルは何が面白いのかケラケラ笑っていた。

 

 

そういえば、告白騒ぎの直後、天気はいいのに急にリオンの真横に雷が落ちてきた事件があったのだが。

 

異常気象だったのかな?

 

リオンと言えば、シェリーとレンの間の雰囲気がおかしかった。なんだか甘い空間が出来上がっていたんだが、アミクたちが戦っている間に何があったんだ。

 

「はぁ、よし!リオンの事は忘れよう!それよりウェンディだよ!」

 

切り替えてアミクはウェンディに質問した。

 

「『トロイア』っていつまで続くの?」

 

「あ、もうすぐ切れます」

 

ウェンディがそう言うや否や、アミクは崩れ落ちた。向こうで涼んでいたナツも同様だ。

 

「おぷぅ…も、もう一回かけて…」

 

「連続で使うと効果が薄れちゃうんですよ」

 

「それも…私と、一緒、だね…うえ」

 

息も絶え絶えにアミクは言った。

 

 

「『平衡感覚養成歌(バルカローラ)』…掛けとくんだった…」

 

マーチは苦しそうなアミクの背中を撫でながら聞く。

 

 

「本当にウェンディもシャルルも妖精の尻尾(フェアリーテイル)に来る、の?」

 

「私はウェンディがついていくっていうから付いていくだけよ」

 

「あっそ、なの」

 

やっぱりシャルルには素っ気ない。シャルルもそんな態度のマーチにむっとしたようだ。

 

「アンタねえ、なんでずっとそんな態度なわけ?」

 

「シャルルだって最初からツンツンしてる、の」

 

「アンタは私にだけ態度が違うのよ!」

 

「自意識過剰、なの」

 

「ふ、二人とも~…」

 

睨みあう二匹を前にハッピーはオロオロした。

 

「楽しみです!妖精の尻尾(フェアリーテイル)!!」

 

一方、ウェンディはアミクたちが所属する妖精の尻尾(フェアリーテイル)がどんなところなのか、とワクワクしてしていた。

 

 

 

 

「…と言う訳で、ウェンディとシャルルを妖精の尻尾(フェアリーテイル)に招待しましたー。パチパチパチー」

 

アミクの気の抜ける声と共に小さく拍手音が聞こえた。

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)に着いたアミクたちはまず、ウェンディたちの紹介をすることにしたのだ。

 

「よろしくお願いします!」

 

ウェンディが緊張しながらもお辞儀する。シャルルはいつものようにムスーっとしてる。

 

 

新しいメンバーにギルド中が湧き立った。

 

しかもこんな可愛らしい美少女とネコなんてペアだ。

 

 

「かわいい~!」「マーチみてえな奴がいるぞ!」「お嬢ちゃんいくつ~?」

 

 

大勢の人が一気ににじり寄ってくる。小さいウェンディには恐怖ものだろう。

 

「ほらほら!がっつかない!ウェンディ怖がっちゃうでしょ!!」

 

アミクはシッシッ、と手を振り、寄ってくるメンバーを追い払った。

 

「ルーちゃんおかえり~!」

 

「レビィちゃん!」

 

「よく無事だったな」

 

「だんだんルーシィが遠い人に…」

 

「ジュビア…心配で心配で、目から大雨が…」

 

「うえっぷ!!溺れる!!?」

 

「グレイ止めろー!」「なんで俺が~!!」『涙で人を殺せそうだ…』

 

「んでよォ、ヘビが空飛んで…」

 

「ヘビが空なんか飛ぶかよ!!漢じゃあるめーし」

 

「漢関係ないと思う…」

 

帰ってきた途端、この騒がしさだ。

 

 

「あはは、落ち着かなくてごめん」

 

「い、いえ!すごく楽しそうです!」

 

確かに、ウェンディの瞳はこれからの生活の期待でキラキラしていた。

 

話しているアミクたちにミラが近付いてきた。

 

「初めまして、ミラジェーンよ」

 

「うわぁ~!本物のミラジェーンさんだ…!」

 

「そう、生ミラさんだよ!」

 

「魚みたいに言うな、なの」

 

ミラはニコリと笑みを浮かべた。いつ見ても魅力的である。これ、昔だったら獲物を見つけたような笑顔になるんだぜ?

 

「シャルルは多分ハッピーやマーチと同じだろうけど…ウェンディはどんな魔法を使うの?」

 

「ちょっと!オスネコたちと同じ扱い!?」

 

シャルルは不満はそうだが、無視してウェンディはミラの質問に答える。

 

「私は…天空魔法を使います。天空の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)です」

 

それを聞いたメンバーたちが静まり返った。

 

 

(信じてもらえないのかな…)

 

自分のようなものがそんな魔法を使えるなど、信じてもらえるわけがない、と落ち込んでいると。

 

「おぉ!?すげぇ!!」

 

滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)だ!!」

 

「ナツやアミクと同じか!」

 

「ガジルもいるし、このギルドに4人も滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)か!!」

 

「珍しい魔法なのにな!」

 

大興奮だった。

 

ウェンディはあっさり信じてもらえたことに戸惑ったが、アミクがグッドサインしているのを見て笑顔になった。

 

「今日は宴じゃー!!!」

 

『おおおおおっ!!!』

 

「ウェンディたちの歓迎会じゃー!!騒げや騒げっ!!」

 

「ハメ外しすぎないようにねー」

 

マカロフを皮切りに騒ぎ出すメンバーに釘を刺す。

 

 

「ミラちゃーん、ビール!!」

 

「はいはーい」 

 

「うおおおおおっ!!!!燃えてきたぁぁ!!!」

 

「きゃああああ! あたしの服ー!!!」

 

「ちょっとーナツ―――!!私のスカート燃やさないで―――!!?」

 

「グレイ様…浮気とかしていませんよね?」

 

「何だよそれ…」『彼女か』

 

「聞いてよ、アミクねー他のギルドの人から告白されたの!」

 

「ホント!?」

 

「キャー!思い出させないで―――!!」

 

「そこで、オイラが突っ込んで蛇を落としたのです!」

 

「落ちてたのハッピー、なの」

 

あっという間にドンチャン騒ぎになる妖精の尻尾(フェアリーテイル)

 

それを見てウェンディは笑顔でシャルルに話しかける。

 

「やっぱり楽しいところだね、シャルル」

 

「私は別に…」

 

シャルルはじっと騒ぐアミクたちを眺める。その様子からはこの雰囲気が嫌ではなさそうな印象を受けた。

 

 

 

 

ところで。

 

 

 

二階からその騒ぎを眺めていたガジル。

 

 

 

彼は激しい焦燥感に満たされていた。

 

 

 

なぜか。

 

 

 

ナツにはハッピー。

 

 

アミクにはマーチ。

 

 

そして新しく入ったウェンディにはシャルル。

 

 

 

自分以外の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)に漏れなくネコ一匹。

 

 

 

そう、自分以外(・・・・)に。

 

 

「……」

 

 

自分だけ、めっちゃ仲間外れみたいだ…。

 

ただでさえナツとアミクの二人だけだった時にも妙な疎外感を感じていたというのに。

 

 

ウェンディの加入でそれが更に強くなった。

 

 

 

(ネコ…!)

 

 

 

とりあえず、今後の目標は自分のネコを見つけることだ。

 

 

 

ガジルは心の中で決心した。

 

 

 

 

 

こうしてウェンディとシャルルという新メンバーを加え、お祭り騒ぎは夜更けまで続くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

二階にて。ガジルとは別の場所にいた男性はウェンディを見下ろす。明るく笑うウェンディを見ると、彼――――ミストガンは静かにその場から消えていった。

 

 

 




リオンのくだりは書こうか書かないか迷ったんですけど、こんな風に決着を付けることにしました。

これなら7年後にはリオンも吹っ切れているでしょう。


次回から閑話です。
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