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妖精の尻尾が消えた日
ギルダーツが帰ってきて数日後。
「777年7月7日?」
「うん、その日に私たちのドラゴンがいなくなったみたいなんだよ。同じ日に、ね」
アミクたちは自分たちのドラゴンについて話していた。
「そういえば、ガジルのドラゴンも同じ日に姿を消したんだっけ…」
「どういうことなの?」
シャルルの問いにルーシィは考え込み。
「遠足の日だったのかしら?」
「何でそうなった!?」
アミクは思わずずっこけた。
「そんな理由だったら私、3日ぐらいオーディオンと口利かない自信ある」
「ルーシィさんも、たまに変なこと言いますよね…」
これはこれで
「火竜イグニール、音竜オーディオン、鉄竜メタリカーナ、天竜グランディーネ、みんな今どこにいるんだろう…」
「案外ホントに遠足してるだけだったりして」
「いやいやそれはないでしょ」
「君が言ったんでしょーが!」
何でルーシィが否定する!?
「シャルル~!これ、オイラが獲った魚なんだ!シャルルにあげようと思って」
「いらないわよ。私、魚嫌いなの」
「いらないならあーしが貰う、の」
ふと、ネコ3匹の会話が耳に入ってきた。いつものようにハッピーがシャルルにアタックしては撃沈しているみたいだ。
「どう?美味しい?」
「…尻尾が食べごろ、なの」
「そっかー。ねえ、シャルル。シャルルは何が好きなの?オイラ…」
「うるさい!!私に付きまとわないで!!」
ちょっと不穏な空気になる。シャルルの様子もいつもと違う。
「ちょっと、そんな言い方しなくてもいいのに、なの」
「ふん!アンタだって私のこと嫌いなら関わらなきゃいいじゃない!!」
「何でそうやって突き放してばっか、なの!?」
「…なにも知らないくせに…!!」
言い合いを始める二人だが、いつもよりも深刻そうだ。アミクとウェンディが慌てて仲裁に入った。
「シャルル!落ち着いて!」
「マーチも興奮しない」
「…ふん!」
シャルルはそれを無視するとギルドの外に歩いて行ってしまった。
「もうあんな奴、知らない!の!」
マーチはまだご立腹のようだ。ハッピーはオロオロとしていたが、マーチの方を向いた。
「マ、マーチ!シャルルを追いかけよう!」
「放っておけばいい、の」
「マーチィ〜…」
マーチはツーンとそっぽを向いた。
「そういうわけにはいかないよ。何で怒ってるのか聞きださないと」
「…はぁ、しょうがない、の。付き合ってあげる、の」
「マーチ…!」
ハッピーは嬉しそうに笑う。そして、二人してシャルルを追いかけていった。
「…あの、私…心配だから探してきますね」
「あ、うん…」
ウェンディはそう言って外に出て行ってしまった。
「どうしちゃったんだろう…」
アミクは窓から空を見上げた。どんよりとした曇り空。何かよくないことが起こりそうな不穏な天気だった。
(そういえば…)
そして、思い出す。
(今日はリサーナの命日でもあったな…)
ポツリ、と雨が一滴降ってきた。
●
「シャルルー!待ってよー!」
マーチたちはようやくシャルルに追いついた。シャルルはゆっくりと立ち止まる。
「シャルル。何で怒ってるのか理由を聞かせてよ」
「確かに、シャルルのことは好きじゃないけど、仲間、なの。あーしもシャルルのこと知っていきたい、の」
「…理由、ですって?」
そういって振り返ったシャルルの瞳。そこには怒り、悲しみ、悔恨…様々な感情が渦巻いているように見えた。マーチたちは思わず息を飲む。
「…私たちには使命があるはずよ」
「使命?」
「一体何の話、なの?」
ハッピーたちが首を傾けると、シャルルがキッと睨んできた。
「
シャルルは指をさして声を荒げた。
「何で、アンタたちはなにも知らないのよ!なにも分かってなくてヘラヘラしてーーー」
ハッピーは言葉に詰まってしまった。使命とか、よくわからない話をされても、困る。でも…大事なことのような気がする。それを自分が知らないのがおかしいのか?
「オイラーー」
「そんなの関係ない、の」
しかし、マーチがシャルルの言葉をぶった切った。
「使命とか意味不明なものは気になるけど、あーしはアミクと
マーチは意志の強い瞳でシャルルを見つめる。その眼光に気圧されたのかシャルルが少し、狼狽えた。
「…能天気で、いいわね!!」
シャルルはそう言い捨ててのしのしと歩いていった。
「マーチ…」
「ハッピーも、そうじゃない、の?」
今度はハッピーの方を向いてきた。ハッピーはマーチの目を見て、やっと笑顔を浮かべた。
「そうだね!みんながいれば、使命とか関係ないよね!」
ハッピーも自信を持てたようだ。
「でも、シャルルだってその『みんな』の中に入ってるのに…」
「…あの、人を信用しすぎないように、一線を引いている感じが、嫌、なの」
そこで、マーチはシャルルのことが気に食わない理由を話し出した。
「みんなといれば、悩みだって乗り越えられるのに、一人で抱え込んじゃってるところが、腹立つ、の」
「…マーチって実はそんなにシャルルのこと嫌いじゃないでしょ」
「そ、そんなこと、ない、の!嫌い、なの!」
ハッピーが指摘すると、マーチが顔を赤くしてそっぽを向いた。これでも、シャルルのことを気にかけているのだ。素直じゃない。
「あれ?」
ハッピーが路地裏から出てくるガジルに気付く。
「ガジル、どうした、の?」
よく見るとガジルの顔には無数の引っ掻き傷があった。
「…チッ、てめえらかヨ。よりによって」
ガジルは不機嫌そうな顔で言うとそのまま、どこかに去ってしまった。
「何だったんだろう?」
「さあ、でも最近ガジルの様子がおかしかったから、それが原因かも、なの」
その時、雨が降り出した。
「あ…」
あっという間に土砂降りとなってマーチたちを濡らした。
●
土砂降りな外を見ながら、アミクはなんとなくジェラールのことを考える。
ジェラール、無事かな…。
せっかくウェンディともエルザとも会えたのに、連れていかれちゃうなんて…。
…そういえば、エルザはジェラールがおかしくなったのは8年前だって言ってたっけ。
そして、ウェンディがジェラールに会ったのも7年前…あれ?
ここでアミクは何かがおかしいことに気付いた。
ジェラールは8年前から「楽園の塔」を作っていたはずで?
でも、7年前にウェンディと旅をしていた?
楽園の塔の建設に注力していたジェラールがそんなことをするだろうか。その時はまだ思念体を作ってはいなかったはずだし、そこまでの余裕はなかったと思うのだが…。
まさか、本当に双子がいたりとかーーーーーー。
「ああああーーーーーー!!!」
「うわ、びっくりしたぁ!!!急にどうしたのよ!?」
アミクが急に大声をあげながら立ち上がったのでルーシィがビクゥッとしていた。
ルーシィの問いかけには答えずにアミクは頭を押さえた。
忘れていた。ジェラールと瓜二つの人物がいたではないか。
「…ミストガン」
何で今まで思いつかなかったのだろう。エルザの知るジェラールとウェンディの知るジェラールがそもそも別人物である可能性。
そして、おそらく、ウェンディの方がミストガンだ。そうだとしたら色々辻褄が合う。
(…でも、まだ確証はないし…)
そのうえ、もしそれが本当だとしてもどうやってウェンディに伝えたものか…。捕まってる方のジェラールではないことは喜んでいいものか…。
ウェンディの気持ちを考えると「君が必死こいて助けようとしたジェラールは別人だったんだよ〜プギャーww」とか言うわけにもいかないし。
(ああ…もっと気分が重くなってきた…)
このどんよりとした雨の日に思い付くなんて。アミクはどさりと突っ伏した。
「えー、もう大丈夫…?」
ルーシィが恐る恐る声を掛けてきたが返事する元気もない。
…そういえば、ウェンディたち傘もささずに外に出ちゃったな。
ちょっとアミクは思い付き、立ち上がった。
「どこ行くの?」
「ウェンディたちを迎えに行ってくる。こんな雨だと風邪引いちゃうよ」
ルーシィにそう答えて、アミクは傘を持って外に出て行った。
今、ウジウジ悩んでも仕方ない。また、その時になったら考えよう。
しかし、「その時」がすぐ来ることは、この時のアミクはまだ知らない。
●
ザー、という雨の音を食べながら道を歩く。
「こんなになったらずぶ濡れになっちゃうんじゃ…あ、いた!」
心配していると、ウェンディの後ろ姿が見えて来る。近くにはシャルルもいる。
「ウェンディ!シャルル!風邪引いちゃうから傘の中に…」
そこまで言いかけて。アミクはその場にいたもう一人の人物に言葉を失った。
その人物は。
「ジェラール…?いや、ミストガン!」
ジェラールの顔だが、あの服装はミストガンだ。
「ア、アミクさん!?」
「アミク…」
ウェンディたちがこちらを向く。
「あ…お、おかえり?」
とりあえず、挨拶。でも、よりにもよってミストガンとウェンディが鉢合わせてしまうなんて…。
「あ!あの、この人は私たちが知ってるジェラールではなくて…」
「ああ、大丈夫。ジェラールと同じ顔ってのは知ってるから」
「そ、そうなんですか!?」
ウェンディもついさっき説明を受けたばかりみたいだ。
「あと…この人が私を助けてくれた「ジェラール」みたいです…」
ああ、アミクの考えは的中してしまったか。でも、救いは涙を溜めてこそいるがウェンディが嬉しそうなことか。まあ、本物の恩人に会えたことは素直に嬉しいだろう。
「やっぱり…」
「…アミク、ウェンディ。今は説明する時間も、再会を喜ぶ時間もない。今すぐ…ぐっ!?」
急にミストガンが苦しそうに顔を歪め、膝をついた。
「ミストガン!?」
アミクたちが近寄ろうとすると、手で制してくる。
「今すぐこの街を離れるんだ…私の任務は失敗した…大きくなりすぎたアニマは、もはや私一人の力では抑えられない!」
「アニマ…?」
ミストガンは悔しそうに空を睨んだ。
「間もなく…マグノリアは消滅する…」
「消滅って!?」
何だそれは。何でマグノリアが消えてしまうのか。
「終わるんだ…消滅は既に確定している」
そんな急に言われても…。
「君たちだけでも逃げてくれ…」
「そんなの…みんなはどうなるの!?」
「全員…死ぬということだ…」
その言葉を聞いた瞬間。
アミクたちは走り出す。
「みんなに、知らせないと!」
「行ってはいけない! 君達だけでも街を出るんだ!」
ミストガンの止める声が聞こえるが、無視してギルドに向かう。
『みんなー!!逃げてー!!早く遠くに!!』
アミクはギルドがある場所に『
「ひぁ!?」
「ウェンディ!」
ウェンディが転びそうになったので慌てて支える。
「大丈夫!?」
「平気でーーーーーえ!?」
ウェンディが空を見上げて目を丸くしていたので、アミクも上を見上げる。
そこには雨雲が不気味に渦巻いている光景があった。その渦はどんどん大きくなっていく。
(ヤバイ!アレはヤバイ!!)
嫌な予感は膨らむばかり。アレがマグノリアに、
「そんなの嫌だ!!」
アミクたちは必死に走る。ーーーーー何ができるというわけでもないのに。
そして。
「あ…」
ギルドの前に着いた時にはもう遅かった。
目の前のギルドが突然歪みだし、白く発光する。それは空にある渦の中心、そこにできた穴に吸い込まれていった。
ギルドだけじゃない。街も、道も、川も、全部。石が捲れ上がり、街灯もスポンと抜けていった。空の穴からは雷のようなものが迸り、そこに竜巻きのごとく吸い込まれていく。
アミクたちは寄り添いながら、呆然とそれを見ていた。
みんなみんな、消えていく…。
「いやああああああああああああ!!!!」
アミクは頭を押さえて絶叫した。
次の瞬間。視界の全てが光に包まれる。
「ーーーー!!」
アミクは咄嗟にウェンディを抱きしめた。
せめて、この小さな命は絶対に守るかのように。
ウェンディが気づいた時には。
全部なくなっていた。
マグノリアも。
自分に覆いかぶさっていたアミクも。
みんな。
ウェンディ一人だけが、残ってしまった。
「そんな…」
この日、
さて、エドラス編ですが…。
当然、エドラスのアミクも出ます。まあ、どういったキャラなのかも考えてあるんで、書き切れるように頑張ります。
あと、アンケートよろしくねー。