妖精の尻尾の音竜   作:ハーフィ

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パラレルワールドって本当にあるのかな?


ファイアボール

「ま、まさか…こいつがアースランドの…」

 

「これが…エドラスのあたし…」

 

ダブルーシィが互いを見て固まっていると、援軍なのか王国軍が周りを取り囲んだ。

 

 

「いたぞ!」

 

「は、話は後!ここを切り抜けよう!」

 

アミクが叫ぶとルーシィがナツを揺さぶった。

 

「ほら、ナツ!アミクも!早くやっつけて!」

 

「ルーシィ、今私たちは魔法が使えないんだよ!」

 

「どうしてよ!?」

 

「逆になんでおまえは魔法が使えるんだ!?」

 

「知らないわよ!」

 

言い合っていると、兵士たちがじりじりと近づいてきた。

 

 

「ルーシィ!お願い!今はルーシィだけが頼りなの!」

 

「あいつらをやっつけて!!」

 

「ルーシィさん!」

 

みんなしてルーシィに頼み込むと、滅多にない状況に酔ったのか、「もしかして今のあたしって最強?」とか呟いていた。

 

「今は全能感に酔いしれていいから早くやれ、なの」

 

「すごい毒を感じるけど任せなさい!」

 

ルーシィは金の鍵を取り出して叫んだ。

 

「開け、白羊宮の扉! アリエス!」

 

「あ、あの…がんばります…」

 

すると、もこもことした服を着ている美女、アリエスが現れる。

 

 

先程のスコーピオン、アリエス、そしてジェミニは元々は六魔将軍(オラシオンセイス)にいたエンジェルの星霊だった。

 

しかし、エンジェルが逮捕され契約が解除された三人はルーシィと契約しようとやってきたのだ。

 

 

それで晴れてルーシィの星霊となった三人。ルーシィの頼もしい仲間が増えたわけである。

 

 

急に現れたアリエスに王国軍やエドルーシィは驚きを隠せないようだ。

 

もしかしたら、エドラスに召喚魔法の類はないのかもしれない。

 

「アリエス! あいつら倒せる!?」

 

「は、はい! やってみます!」

 

アリエスは手から羊毛を射出し、兵士たちにぶつけた。すると。

 

「気持ちいい~」

 

「優しい~」

 

「あふ~ん」

 

兵士たちが蕩けたような顔になって羊毛にしがみつく!

 

「なんじゃ、ありゃ!」

 

ふざけた攻撃に思わずアミクが叫ぶ。ついナツっぽい口調になっちゃった。

 

「あれ? 効いているんでしょうか?」

 

「効いてる効いてる! 続けてやっちゃって!」

 

「無力化には最適だけどなんかキモイ!」

 

やられている兵士の表情が。

 

「でもチャンスだよ!今のうちに逃げよう!」

 

「はい!」

 

アミクたちは混乱している兵士の間を抜け、走り去っていく。そのまま、前方に見えてくる森に駆け込んだ。

 

 

「はぁ…ありがとうルーシィ。やっぱりいざって時には頼りになるね!」

 

「普段は頼りにならないのかしら…」

 

とりあえず、ルーシィから話を聞くことにした。

 

 

まず、ルーシィはホロロギウムのお陰でアニマを免れたらしい。ホロロギウム有能すぎ。いつだったか、ネズミの臭い息には昏倒してたのに。

 

その後、ミストガンと遭遇。彼はルーシィに丸薬みたいなのを飲ませるとこちらの世界にルーシィを飛ばしたらしいのだ。

 

「あの人そんなことできるんだ…」

 

「あいつは何者なんだ?」

 

「ここまできたらもう分かるでしょ」

 

今だからこそわかるがミストガンはエドラスのジェラールなのだろう。だからこそ、アニマのことも知ってたし、ルーシィをこちらに送り込むこともできた。

 

「こっちの世界のジェラール…」

 

ウェンディが感慨深げに呟くと「いや、そういうことじゃなくてな」とナツが続ける。

 

「この世界ではどういう立場の奴なんだって話だ」

 

「…出た。ナツの珍しくも鋭い指摘」

 

「なんだとー!」

 

ナツにしてはまともな疑問である。

 

まあ、考えても分からないので今はミストガンは置いとく。

 

「なんでルーシィだけこっちで魔法が使えるの?」

 

ハッピーが聞くと「…もしかしてあたし、伝説の勇者的な――」とか言い出した。

 

「無いな」

 

「…いじけるわよ」

 

「あえて言うと勇者の仲間の魔法使いポジションじゃない?」

 

「そういうのが欲しいんじゃないんだけど…」

 

まあ、アミクなりのフォローだろう、と思う事にする。

 

「まぁ、きっとミストガンが飲ませたって言うボールみたいなモノのお陰だと思うんだけど―――」

 

「あ、そっか…」

 

「その可能性は高いわね」

 

と言っても、ルーシィが魔法を使える理由が分かったところでどうしようもない。そのボールはないんだし。

 

この世界にミストガンが来ていれば、彼に会ってボールをもらうこともできるはずだが…。

 

「なんにせよ、しばらくは戦いでもルーシィを頼りにしそうだね」

 

「でも…ナツやアミクが魔法を使えないんじゃ、不利な戦いになるわね…」

 

「…てめぇら、本気で王国とやり合うつもりなのか?」

 

エドルーシィが真剣な表情で聞いてきた。

 

アミクたちは迷わずに答える。

 

「とーぜん!」

 

「仲間のためだからね!」

 

「魔法もろくに使えねぇのに王国と…」

 

「ちょっと!あたしは使えるっての!」

 

ルーシィが胸を張る。なんだか鼻が伸びているような気がした。

 

「ここは、妖精の尻尾(フェアリーテイル)(現)最強魔導士のあたしに任せなさい!! 燃えてきたわよ!!」

 

「キャー!ステキー!ルーシィ、強い!」

 

「「イェーイ!!」」

 

「なにやってんだよお前ら…」

 

急にハイテンションでハイタッチしだしたアミクとルーシィにナツが呆れた。

 

相変わらずの仲良しさだ。

 

「フラグ臭いけど…なの」

 

「頼るしかないわね」

 

「あい」

 

「頼りにしてます!」

 

調子に乗っていろんなポーズをし始めるルーシィ。

 

(不思議な奴らだ…こいつらならもしかして…本当に世界を変えちまいそうな…そんな気がするなんて…)

 

そんな光景を見ながら、エドルーシィはそう思っていた。

 

 

シッカの街にて。

 

武器に魔力補充も済ませて、宿をとる。アミクの武器は魔力補充の必要がなかったので、ナツとウェンディのだけで事足りた。

 

 

「地図借りてきたよー」

 

アミクがテーブルの上に地図を広げる。

 

「王都までまだまだ遠いな…」

 

「急ぎたいところだけど…王国軍に見つからないようにしないとだし、時間がかかりそうだね…」

 

ナツたちと共に難しい顔をしていると、お風呂に入っていたエドルーシィがバスタオル姿で現れる。

 

「こいつとあたし、体まで全く同じだよ!」

 

「ちょちょー!!そんなはしたない姿で出てきちゃダメー!!」

 

アミクがナツの視線から遮るようにエドルーシィを隠す。

 

その後ろに「アミク、よくやったわ!」とバスタオル姿のルーシィが急いでやってきた。

 

「そんな格好で出ちゃって何考えてんのよ!」

 

「いや、君もだよ!?」

 

なんで二人揃ってバスタオル姿なんだ。ファンサービスか。

 

 

「あたしは構わないんだけどね」

 

「構おうか!?女の子として!!」

 

ナツの方に歩いて行きそうなエドルーシィを必死に止めていると、ハッピーが思いついたように叫ぶ。

 

「二人のルーシィでダブルーシィだ!」

 

「それ、うまい事言ってるつもりなの?」

 

その時、エドルーシィが凝視してくるナツに気付いた。

 

「なんだナツ、見たいのか?」

 

「やめて!」

 

「見るな!」

 

「ぎゃああああ!!!」

 

エドルーシィが胸をはだけさせた途端、アミクは目潰しをナツに決める。

 

「あ、ごめん」

 

「ごめんで済むかああああ!!!」

 

反射的にやってしまった。目を押さえてぐるぐる転がるナツに慌てて謝る。

 

「…て、てか、自分同士で風呂入んなよ…」

 

「「…確かに!」」

 

ちょっと治ってきたのか、目を押さえながらも言ったナツの言葉に、二人は愕然とする。ホントになんで一緒に入ったんだ。

 

「でもホントそっくりだよね」

 

「双子、みたい、なの。あるいはドッペルゲンガー」

 

口調や仕草の違いでしか二人を見分けられないほどだ。

 

「まさかケツの形まで一緒とはな」

 

「そういう事言わないでよ!」

 

「お尻の形なんてみんな同じだよ!」

 

「それは違うと思うけど…」

 

ナツがポンと手を打った。

 

「鏡のモノマネ芸できるじゃねぇか!!」

 

「「やらんわ!!」」

 

「わお!息ぴったり!」

 

「悲しい性、なの…」

 

「ジェミニみたいだねー」

 

アミクが言うと、エドルーシィが首を傾げる。

 

「ジェミニ?」

 

「ルーシィの星霊の一人だよ」

 

「この子よ!開け!双子宮の扉!ジェミニ!」

 

「じゃ~ん、ジェミニ登場!」

 

すでにルーシィに変身しているジェミニが現れた。こちらはちゃんと服を着ている。

 

「すごーい!三つ子みたい!でも同じマガジンで五つ子もいるから新鮮さはないかも」

 

「なんの話よ!」

 

ハッピーが謎の服と帽子を被って急にクイズを始める。

 

「はい問題でーす!この3人のルーシィの内、本物のルーシィはどれでしょうか!」

 

クイズ番組みたいだ。ご丁寧にボタンまで用意してある。(ハッピーの妄想です)

 

目の前には3人のルーシィがポーズをとって並んでいた。

 

1番「あたしが本物よ!」

 

2番「あたしが本物!」

 

3番「あたしこそ真のルーシィよ!」

 

なんだこれ。

 

ていうかアミクたちが答えるのか。

 

ウェンディとシャルルが1番。ナツが3番を選んだので、アミクとマーチは2番を選ぶことにする。

 

ホントになんなんだコレ。

 

「「「ってあたしたちで遊ぶな!!」」」

 

「ノリノリからのツッコミ、ありがとうございまーす!」

 

アホだ。ホント。

 

「トリプルーシィ、か…。ねえ、ちょっと同じポーズで並んでみてよ」

 

「いいけど…なに?トリプルーシィってあんたも上手い事言ったつもり?」

 

トリプルーシィが同じ姿勢で横一列に並んだ。アミクはドヤ顔で告げる。

 

「残像」

 

『ブフッ!!?』

 

「「「いい加減にしろ!!」」」

 

全員が吹き、トリプルーシィがアミクのほっぺを引っ張った。

 

「いひゃいいひゃい!トリプルでいひゃい!!」

 

「「「このこのこの〜!」」」

 

同じ姿、同じ顔の人間が3人で1人をいじめる姿はすごくシュールだった。

 

 

 

 

「あ、あの…。二人とも服を着てください…」

 

ウェンディに指摘され、パジャマに着替えるダブルーシィ。ジェミニは帰った。

 

「でも見分けつかないんじゃややこしいね…」

 

「そうだな…。そういえば確か、髪型を弄ってくれる星霊も居るんだよな?」

 

「そうだけど…キャンサー!」

 

エドルーシィに尋ねられ、キャンサーを召喚する。

 

「お久しぶりですエビ」

 

「蟹座の星霊なのにエビ?」

 

「さすがルーシィ!そこツッコむんだね!」

 

確かに、最近キャンサーを見ていなかったような気もする。

 

 

エドルーシィはキャンサーにスパッと髪を切ってもらった。せっかくの綺麗な髪が短くなる。

 

「こんな感じでいかがでしょうかエビ」

 

「うん、これでややこしいのは解決だな」

 

「えー勿体無い」

 

「アースランドじゃ、髪の毛を大切にする習慣でもあるのか?」

 

エドルーシィが不思議そうな顔をするとキャンサーが返答した。

 

「まぁ、女の子はみんなそうだと思うエビ」

 

「女の子ねぇ…」

 

そう呟くルーシィの顔は寂しげだ。

 

「こんな世界じゃ男だ女だって考えるのもバカらしくなってくるよ。生きるのに…必死だからな…」

 

「こっちのギルドは楽しそうに見えたけど、なの」

 

「そりゃそうさ。無理にでも笑ってねぇと、心なんて簡単に折れちまう。それに、こんな世界でもあたし達を必要としてくれる人達が居る。だから…たとえ闇に堕ちようと、あたしたちはギルドであり続けるんだ」

 

確固とした信念と覚悟を持って言い切るルーシィ。その姿は、夕焼けの光も相まって、より綺麗にかつかっこよく見えた。

 

「でも、それだけじゃダメなんだよな…」

 

「…?」

 

「いや、なんでもねーよ」

 

エドルーシィは疑問符を浮かべるアミクに手を振ったのだった。

 

 

 

 

次の朝。

 

「何よこれ~!!信じらんない!!」

 

アミクはルーシィの怒鳴り声で目が覚めた。

 

「んあ〜どうしたの…?」

 

「朝っぱらからテンション高ぇな…」

 

「見てよこれ!エドラスのあたしが逃げちゃったのよ!」

 

ルーシィが一枚の書き置きを見せてきた。

 

『王都へは東へ三日歩けば着く。あたしはギルドへ戻るよ、じゃあね幸運を…』

 

「手伝ってくれるんじゃなかったの!?もうどういう神経してるのかしら!!」

 

「まぁまぁ、エドルーシィは戦わないって言ってたし、ここまで付き合ってくれただけでもありがたいよ」

 

「そうですよ」

 

アミクたちはそう言って慰めるが、それでもルーシィはご立腹だ。

 

 

「あたしは許せない! 同じあたしとして許せないの!!」

 

「そういうもんか?」

 

ナツの疑問を無視してルーシィは怒り続けた。

 

 

 

 

「フフ~ン♪」

 

「機嫌直るの早っ」

 

「本屋さんで珍しい本見つけて、嬉しいんだろうね」

 

「あれ?お金あったんだ」

 

「エドルーシィさんがいくらか残してくれたみたいです」

 

ルーシィは機嫌良さそうに買った本を抱きしめている。本好きのアミクとしてはその気持ちは分かるが、どんな本を買ったのだろうか。

 

「何買ったの?」

 

「こっちの世界の歴史書。あんたたちも、この世界について知りたいでしょ?」

 

「まあ、そりゃあ…」

 

「歴史書が物語ってるわ! この世界っておもしろい!! 例えばここなんて――」

 

ルーシィが熱くなって色々語りそうになった時、アミクは空からする音に気付いた。

 

「うん…?アレは!?」

 

直後、アミクたちに影が差す。

 

 

「何アレ!?」

 

みんなで上を見上げると、巨大な飛行船が飛んでいた。

 

 

「うわーすごい!クリスティーナより大きんじゃない!?」

 

アミクが呑気にそんな感想を言っていると、近くを王国軍が走ってきた。

 

「急げー!!」

 

「すぐに出発するぞ!!」

 

「やばっ!隠れて!!」

 

ナツたちはすぐに建物の陰に隠れる。アミクは持ち前の聴力で彼らの会話を盗み聞いた。

 

「あの巨大魔水晶(ラクリマ)の魔力抽出がいよいよ明後日なんだとよ!」

 

「乗り遅れたら世紀のイベントに間に合わねぇぞ!」

 

「…!?もしかして!」

 

「な、何?どうしたの?」

 

アミクは今聞いた会話をナツたちに伝えた。

 

「巨大魔水晶(ラクリマ)って…!」

 

「きっと、マグノリアのみんなのことだよ!どういう原理で魔水晶(ラクリマ)になってるのかは知らないけど…」

 

魔力抽出が2日後。徒歩で王都まで行くには3日かかる。これでは間に合わない。

 

「あーしたちが飛べれば、話は違ったかも、なの…」

 

「ないものねだりしてもしょうがないわ。でも…もし魔力抽出が始まってしまえば、二度とみんなを戻せない…」

 

「そんな!どうしよう!!」

 

ハッピーが焦っていると、ナツが飛行船を指差した。

 

「あの船、奪うか!」

 

「…いや、そこは潜入でしょ」

 

「だって隠れんのヤダし…」

 

あんなにたくさんの兵士からどうやって飛行船を奪うのか、という問題はあるが、それが手っ取り早いのも事実だ。

 

「ナツが乗り物を提案するなんて珍しいね、どうしたの?」

 

ハッピーが聞くとナツはドヤ顔して言い放つ。

 

「ふふふ…『平衡感覚養成歌(バルカローラ)』や『トロイア』があれば乗り物など――」

 

「魔法、使えないよ?」

 

「私もです」

 

アミクたちがキョトンとして告げると、ナツは汗をダラダラ流しながら目をそらして「この案は却下しよう」と手の平を返した。

 

 

「あたしは賛成よ! それに、奪わなきゃ間に合わないじゃない!」

 

「でも、どうやって?なの。全員を血祭りにあげることもできないし、なの」

 

「なんで発想が物騒なのよ!あたしの魔法でやるに決まってるじゃない!知ってるでしょ? 今のあたし、最強――って」

 

「めっちゃ調子乗ってる、なの」

 

「ルーエンの街で戦ってわかったのよ。どうやら魔法はアースランドの方が進歩してるんじゃないかってね」

 

どう見ても調子乗ってるし、フラグ臭いがルーシィの言うことにも一理ある。ルーシィに任せてみることにする。

 

 

「まぁ見てなさい!開け、獅子宮の扉! ロキ!」

 

彼女は威勢良く星霊を召喚したーーーーーーーーが。

 

 

 

出てきたのはピンク髪のメイド、バルゴだった。

 

 

「ちょっと!? どういう事!?」

 

「お兄ちゃんはデート中ですので、今は召喚できません」

 

「お、お兄ちゃん!?」

 

「以前、そう呼んで欲しいとレオ様より」

 

「バッカじゃないのあいつ!!」

 

そうしている間に、兵士たちがルーシィに気づいてしまった。

 

「あいつルーシィだ! 捕まえろ!!」

 

「どうしよう! あたしの計算じゃロキなら全員やっつけれるかもって…」

 

「ルーシィ!タウロスは!?」

 

「今日は呼び出せる日じゃないのー!!」

 

ルーシィが涙目になっていると、バルゴが割り込む。

 

「姫、僭越ながら私も本気を出せば―――踊ったりもできます!」

 

「アホか!?」

 

アミクはズッコけた。

 

「やるしかねぇな…こっちのルールで!」

 

「今度こそ甲子園進出も間違いなしの腕前を見せてあげる!」

 

「もう使い方は大丈夫です!」

 

アミクたちがそれぞれ武器を構える…が。

 

「「「わーーーーっ!!?」」」

 

突っ込んできた兵士たちにあっさりぶっ飛ばされてしまった。

 

 

「アミクたちが全然ダメだぁ!!?」

 

「ルーシィよりはマシ、なの」

 

「ごめんなさい〜!」

 

くるくると吹っ飛ばされていたアミクの持っていた袋から音爆弾が全部転がり落ちた。

 

「あー!音爆弾が!!」

 

アミクは急いで手を伸ばした。一個だけ、手に掴む。

 

しかし、残り三つはバラけて地面に落ちる。

 

そして、兵士たちの間に転がっていった。

 

「なんだ?」

 

1人の兵士が首を傾けた瞬間。

 

 

 

三つの轟音が響き、衝撃波が生じる。

 

 

『うわあああああああ!!!?』

 

 

兵士たちは耳を押さえ、吹っ飛んだ。

 

アミクたちは兵士たちが吹っ飛び、ちょうどガラ空きになった場所に落下する。

 

「いったー…け、結果オーライ、だよね!?」

 

「マグレだけど、ナイス!!」

 

アミクたちは痛みを堪えながら立ち上がる。

 

「大丈夫ウェンディ?」

 

「は、はい…!」

 

態勢を立て直す余裕はできたが、依然として不利な状況は変わらない。

しかも、先ほど吹っ飛ばされた兵士たちもすぐに復活してきた。威力はそこまででもなかったようだ。

 

「どうしよう…。このままじゃ…」

 

ルーシィたちも走ってやってきて合流したが、ここを切り抜けるのは難しそうだ。

 

「マズイわ! 飛行船が!」

 

悪いことは重なるもので、狙っていた飛行船が浮かび始めた。

 

「そんな!あれに乗らないと間に合わないのに!!」

 

アミクが飛行船を見上げるが、飛行船は止まってくれない。周りを囲んでいる兵士たちはジリジリ寄ってくる。

 

万事休すかーーーーと思われたその時。

 

 

 

微かにエンジン音が聞こえた。それはどんどん大きくなっている。

 

「な、何か来るよ!?」

 

アミクが警告した直後、妖精の尻尾(フェアリーテイル)のマークが描かれた赤い魔導四輪が突っ込んできて兵士たちを轢き飛ばした。

 

そして、アミクたちのすぐ横に停車すると、扉を開ける。

 

 

「ルーシィから聞いた。乗りな」

 

運転席にいた男がそう、声をかけてきた。信用できるかどうかを考える余裕もない。アミクたちは藁をも掴む思いで魔導四輪に乗りこむ。

 

 

「とばすぜ、落ちんなよ?GO!FIRE!!」

 

途端、ものすごい勢いで発車する。凄まじいスピードで街を駆け抜け、荒野に出た。

 

「助かったわ」

 

「ありがとうございます!」

 

「うぅ…うぇっ」

 

「お…おおお…うぷ…」

 

危機を脱したはいいが、アミクとナツは別の危機に陥っていた。

 

ウェンディが苦しそうなアミクの背中を撫でてくれる。天使だ。

 

 

「王都へ行くんだろ? あんなオンボロ船より、こっちの方が速ぇぜ?」

 

運転手がそう言ってゴーグルを上げ、振り返った。

 

 

「ふふ、妖精の尻尾(フェアリーテイル)最速の男、『ファイアボール』のナツとは、オレの事だぜ」

 

『ナツーーー!!?』

 

「オ、オレ…?」

 

「な、なにこのキザったらしいナツ…」

 

 

エドラスのナツ、略してエドナツが歯を光らせた。

 

 

 

 




単位落としすぎ問題。

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