妖精の尻尾の音竜   作:ハーフィ

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トッポギ美味しいよ~。


片鱗

「ってことは、おめえはエドラスのアミクってことかよ」

 

「…肯定…」

 

エドアミクを救出したナツは痛む背中を押さえながら彼女の話を聞いていた。

 

 

彼女は8年間も此処に閉じ込められていて、出されても非道な実験。

 

彼女の事情を聞くうち、ナツの顔が怒りで歪んでいった。

 

 

「ひっでーな!おめーの父ちゃん!」

 

イグニールの下で育てられたナツからしてみれば、そんなの親を名乗る資格がない。

 

エドアミクは瞳を潤ませてお願いする。

 

「…嘆願…お父様…止めて…」

 

「言われなくても、だ!!オレの仲間の命も掛ってるんだ!!」

 

「…そう…」

 

エドアミクは俯いてからそっとナツに質問する。

 

「貴方…アースランドの…ナツ…?」

 

「ん、そうだけど?」

 

それを聞いてエドアミクは「そっか…」と寂しそうに笑った。なんだろうか。

 

「おーし!とりあえず本物のアミク助けっか!」

 

ナツはそう叫んでから「本物のアミクはどこだ?」と聞く。

 

「実験室…東の塔…地下…」

 

 

「そこに居るんだな!?」

 

エドアミクが頷くとナツは「ありがとな!!」とお礼を言ってその場から立ち去ろうとした。

 

「ま、待って…!」

 

エドアミクが制止したので振り返る。

 

 

「私…歩くの…久しぶり…」

 

「おう」

 

「体…力…入らない…」

 

「おう」

 

「…連れてって…」

 

「おう…おう?」

 

じれったいアミクの言葉に首を傾げた。

 

 

 

 

嫌だ。こんなところで、終わるなんて。

 

 

 

こんなところで、実験体として過ごすなんて嫌だ!

 

 

 

 

皆を助けることもできずに、お別れなんて…嫌だ!!

 

 

 

 

 

 

 

「――――――!!」

 

 

誰だろう。

 

 

誰かの声が聞こえる。

 

 

「―――――!!―――――!!」

 

 

何を叫んでるんだろう。そんな必死な顔で。

 

 

ねえ、なんでそんな悲壮な表情してるの?貴方は誰?

 

 

「―――――っ!!…――――!」

 

 

よく、見えない。どんどん周りが暗くなって…。

 

 

 

『ごめんね…』

 

 

 

これは…私の、声?

 

 

ああ、もう何も聞こえない。何も見えない。

 

 

さっきの人は何だったんだろう。

 

 

 

 

 

でも、懐かしい感じがする。

 

 

愛しい想いに包まれる。

 

 

 

凄く、大切な人だったような――――。

 

 

 

 

 

 

 

アミクの体から黒い何かが飛び出した。

 

 

「うおっ!?」

 

ボラは驚いて目を見張った。

 

 

最高電圧を流していたら、急に実験体の体から何かが飛び出してきたのだ。

 

 

「な、何だあれは…!魔法か!?」

 

ボラは咄嗟に魔力を感知する計測器を見る。そして、驚愕した。

 

「す、数値が跳ねあがってる…!?」

 

『あれ』にはとんでもない魔力が籠っていることになる。

 

しかし、彼女は魔法が使えない状態のはずだ。

 

 

一体なぜ…。

 

 

「と、とにかく、対処しろ!!鎮痛剤を…」

 

ボラが命じようとした途端。

 

 

電流を流していた装置が砕けた。

 

 

「…は?」

 

 

呆然としている間にも、様々な器具が黒いものによって壊されていく。

 

 

「うわあああああ!!?」

 

「ぎゃ、ぎゃああああああ!!!」

 

それどころが、それは研究員にまで牙を剥いた。黒いものがうねり、突っ込んで来る。

それに薙ぎ払われ何人かがぶっ飛ばされた。

 

「ひぃ!?」

 

ついでに、『それ』はアミクの拘束をも破壊する。虚ろな瞳をしたアミクが床に着地した。

 

「…」

 

彼女は何も喋らない。ただ、凄い音が鳴る黒い何かを身に纏わせているだけだ。

 

 

「く、来るなァ!!」

 

 

そのアミクがゆっくりボラに近づいて来た。

 

 

「わ、悪かった!!謝るよ!!もう二度と君に手出ししない!だから、見逃してくれぇ!!」

 

 

みっともなく許しを請う。少女に情けなく土下座しながらボラは必死に逃げのびようとしていた。

 

 

「…」

 

 

彼女から噴き出る黒いものが収束していく。そして、全てアミクの中に収まったように見えた。

 

 

「ほっ…」

 

 

ボラは安堵の息をつく…が。

 

 

 

「…貴方は、前に実験されていた子が泣き叫んでいた時、止めてくれたの?」

 

底冷えするような声が聞こえ、カチンと固まる。

 

 

「…虫が良いよ」

 

 

ぞわっと背中の鳥肌が立った。

 

 

体が動かない。ガクガク、と震える事しかできない。

 

 

目の前の少女から轟音が響いてくる。ふと、目についた魔力測定機の数値は『ERROR』。

 

 

「ゆ、許して――――――」

 

 

往性際悪く命乞いをしようとした途端。

 

 

 

 

アミクから黒い「何か」が音と共に弾けた。

 

ボラは吹き飛ばされ、周りの壁に罅が入り、天井は崩落する。

 

 

機械の腕は粉々に砕け散り、ベットも床にめり込んだ。

 

 

 

 

 

立っていたのはただ1人。

 

 

黒いものを纏わせているアミクだけだった。

 

 

 

 

 

 

「…!なに、今の音…?なの」

 

マーチはようやく実験室の近くまで辿りついた。

 

 

しかし、そこで物凄い音と悲鳴が実験室からしたのだ。不安になったマーチは急いで実験室の中に駆け込む。

 

 

「アミク!!だいじょ――――」

 

そして、中の光景を見て声を失った。

 

惨状と言っても差し支えなかった。壁も天井も崩れ落ち、床にも罅が入っている。機械の残骸があちこちに転がっており、切れた導線から魔力が漏れ出ている。

 

 

そして、何人ものボロボロの人々が転がっていた。

 

 

まぁ、これくらいはよくあることだし、大したことではない。

 

「…アミ、ク…?」

 

問題は、探していた人物の方だ。

 

 

 

「…」

 

身体から黒いオーラのようなものを漂わしているアミク。

 

 

彼女がこちらを見る瞳は虚ろだ。

 

 

「…」

 

 

彼女は何も喋らない。マーチを見てもなにも反応しない。

 

「アミク…」

 

マーチは身体が震えているのを感じた。なんだ、この威圧感は。

 

そうだ、マーチは得体の知れぬものを感じている。

 

「アミク…無事で良かった、の」

 

それでも、マーチは笑みを浮かべた。

 

 

目の前のアミクは、アミクに変わりない。

 

だから、いつものように無事を喜べばいい。

 

 

彼女がなんであろうと、マーチが彼女の相棒なのも変わりないのだから。

 

「…」

 

マーチはアミクが纏っている黒いものの正体が分かった気がした。

 

黒い何かからは絶えず音が響いてきている。

 

 

これはいつものアミクもこんな感じだった。

 

 

 

つまり、これは。

 

 

 

 

 

―――――黒い、『音』?―――――

 

 

アミクの『音』を黒くしたような、禍々しい感じ。

 

 

 

 

 

 

そして、それが唐突に消えた。

 

 

 

「…!」

 

 

アミクが糸が切れた人形のように倒れ込む。

 

 

「アミク…!」

 

 

マーチは急いで駆け寄った。

 

 

よく見れば結構酷い状態だ。

 

 

服は焼け焦げ、綺麗な肌にも火傷がある。

 

「アミク…?」

 

マーチは恐る恐る口元に近づいてみた。

 

 

呼吸はしている。マーチは安堵の息をついた。

 

 

「良かった…本当に…なの」

 

 

マーチはそっとアミクを抱き締める。さっきの状態はなんなのか分からない。でも、こうして無事にいてくれて良かった。

 

 

 

 

 

しばらくしてアミクは目を覚ました。

 

 

「う、うん…あれ…」

 

アミクが目を覚ますと目の前でマーチが自分の顔を覗き込んでいるところだった。

 

「…マーチ!」

 

アミクはマーチをギューッと抱きしめる。何が起こったのかは分からないが、こうしてマーチが戻って来てくれた。それだけで嬉しい。

 

「…ごめん、なの。アミク」

 

「謝る必要なんてないよ。私は、ずっと信じてたから」

 

アミクは涙を一筋流す。マーチもポロポロと雫を落とした。互いに切望していた友達に、また会うことができた。その思いで胸が溢れる。

 

 

「…おかえり、マーチ」

 

「ただいま、なの。アミク」

 

 

2人はしばらくそうして抱き合っていた。

 

 

 

 

 

「うおおおおお!!おめえ、軽いなー!やっぱ乳ねえと軽いのか!?ぐえっ」

 

「…次…言ったら…〇〇○を…〇〇〇〇しちゃう…」

 

「ぐおおお!!?とんでもねえこと言うんだなぁっ!!?」

 

ナツはエドアミクを背負って走っていたが、バカなことを言ったため後ろから首を絞められてしまった。

 

「つーかお前の魔法、『自己治癒魔法』だっけ?それって体内の魔力無くなったら使えねーんじゃねえのか?」

 

「…肯定…でも…魔力回復も…速い…」

 

「なるほどな」

 

ナツが言いたかったのは、魔力が切れる危険性もあるのにどうやって実験に耐え切っていたのか、というのだろう。

 

「…そっちの…私…どんな感じ…?」

 

 

エドアミクが聞いた。ナツは楽しそうに笑みを浮かべ答える。

 

 

「変な奴だな!」

 

「…変…?」

 

「ブロッコリー大好きだし、卵大好きだし、悪い奴だって治療しちゃうし、たまに意味分かんねー事言うし」

 

まぁ、確かにちょっと変かもしれないが…。絶対にナツには言われたくないと思う。

 

「でも、全部含めてアミクの良いとこだ!オレ達の仲間だ!」

 

「…仲間…」

 

それを聞いたエドアミクは嬉しそうに微笑んだ。

 

「…楽しそう…」

 

「そうだな、すげー楽しいぞ!」

 

ナツは何の逡巡もなく返した。それほど、妖精の尻尾(フェアリーテイル)が好きなのだろう。

 

 

「なぁ、王様どこにいるか分かるか?」

 

「…曖昧…ずっと…閉じ込められて…記憶…薄れてる…」

 

 

エドアミクは周りを見回してみた。

 

 

何となく記憶にある気はするが、此処がどこなのか思い出せない。

 

 

「しょうがねえ!とりあえず、誰かと合流して――――」

 

「ナツー!」

 

そこにルーシィとグレイがやって来た。

 

「お!お前ら!」

 

「どこ行ってたんだよ―――ってアミク!無事だったか!」

 

「良かった~!!」

 

ルーシィ達はナツに背負われているエドアミクを見て安堵のため息をついた――――が。

 

 

「…仲間…?」

 

「そうだ。ルーシィと変態露出魔な」

 

 

「あぁん!?それは俺の事かぁ!?…ってアミク、冗談はよせよ」

 

グレイが苦笑するがエドアミクはキョトンと首を傾けるだけだ。

 

 

「…おいおい、嘘だろ…?俺はとうとう存在すら忘れられちまったのか…?」

 

グレイが急に落ち込みだした。

 

「え…?あたしよ!ルーシィ!」

 

ルーシィが自分の事を指差すが、エドアミクはある一点―――――ルーシィの巨乳を凝視するだけだった。

 

 

「あぁ、コイツこっちのアミクだ」

 

「こっち…エドラスのアミクって事!?」

 

「な、なんだ、そうか…」

 

ルーシィ達は興味深々にエドアミクを見つめてくる。

 

「ツインテールは変わんねーんだな」

 

「なんていうか…高貴って雰囲気がする!相変わらず綺麗な娘ね…」

 

ルーシィが褒めると、エドアミクは「…感謝…」と短く呟いた。頬が赤くなっているのを見るに照れているらしい。

 

「てか、服ボロボロじゃない!何されたのよ!!」

 

ルーシィがエドアミクの姿を見て声を上げた。そして、エドアミクの胸を見て「え?」と固まる。

 

「おい、どうした――――うおっ!!そこ(・・)が違えのかよ!!」

 

グレイもつい視線をそちらに向けて口に出してしまった。

 

ブチン

 

何かが切れる音が聞こえた。

 

エドアミクはルーシィの胸を睨む。

 

 

「…持ってるからって!…この淫乱…!○○…!!○○○○○抓られて…○○○掘られて…○○○ガバガバ…の癖に…!…ビッチ!!」

 

※暴言の自覚はありません。

 

「いやああああああああ!!!」

 

エドアミクのあんまりな暴言にルーシィが悲鳴を上げた。

 

 

ナツとグレイも口をあんぐり開いて硬直する。

 

 

「アミクの顔で!アミクの声で!そんなこと言うな―――!!」

 

ルーシィの悲痛な叫びがその場に響いた。

 

 

 

 

「マーチは魔法使えるようになったんだ。…私は、相変わらず」

 

アミクはマーチに飛ばしてもらいながらため息をつく。

 

 

(…さっきのことは、言わないでおこう、なの)

 

さっき魔法を使っていたように思うのだが…彼女の悩みの種が増えてしまいそうなので、一旦黙っておこう、と決心するマーチ。

 

「とにかく、ナツ達と合流しよう。なんだか嫌な予感がするし…」

 

滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)の魔力を具体的にどう使うのか、と疑問が浮かび上がると、言いようのない不安に襲われる。

 

 

一刻も早くナツ達と合流し、魔水晶(ラクリマ)にされた皆を助けるべきだ。

 

 

「皆無事だと良いけど…」

 

「大丈夫、なの。シャルル達もそう簡単にやられるほど、ヤワじゃない、の」

 

マーチの言葉にアミクが少し笑った。

 

「それもそうだよね」

 

 

マーチはアミクを運んだまま上へと上がって行くのだった。

 

 

 

 

 

「うおー!?なんだ此処!!遊園地みてーな所だなー!」

 

ナツ達は目の前にあるテーマパークのような場所を見上げていた。

 

 

「…懐かしい…此処…E-LAND…」

 

「え、本当に遊園地!?」

 

ある程度歩けるようになったアミクが感慨深げに口にするのを、ルーシィが目を見開いて驚く。

 

 

「昔…よく…此処で…遊んでた…」

 

「…そう」

 

エドアミクの事情は既に話してある。自分が魔力を体内に持つ、唯一の人間だと言う事。8年間も幽閉されていた事。全部伝えた。

 

ルーシィは目に涙を溜め、痛ましげな表情になり、グレイも胸糞悪そうに顔をゆがませていた。

 

 

やっぱり、良い人達である。ところで、グレイの胸からエドアミクをじっと見る人物(?)。

 

 

(…こんなことになるとは…)

 

 

久しぶりの登場、氷のウルである。

 

 

彼女もアニマに巻き込まれ魔水晶(ラクリマ)になっていたが、ガジルが魔水晶(ラクリマ)を壊してくれたのでウルも元の戻ったのだ。

 

 

目が覚めてみれば異世界だった。なんて、ウルの生前の経験にもない。とりあえず、アミクに会えるまでは黙ってグレイ達を見守っていようとしたのだが…。

 

とんでもない計画も聞かされたうえ、アミクも見つかっていない。ウルも内心焦り出す。

 

(あの娘…無事なんだろうな…)

 

ルーシィ達と合流したナツ達はマーチがアミク救出に向かっていることを聞く。

 

とりあえず、ナツ達もアミク捜索を兼ねて国王を探すことにした。

 

 

しかしエドアミクも、実験室の場所は覚えていても、城の構造は忘れかけているし、匂いを辿ろうにもエドアミクの匂いが邪魔をして上手く嗅ぎとれない。

 

 

そうしてちょっと迷子になっていたら、この遊園地に辿り着いてしまったのだ。

 

(…あの娘、魔力に違和感を感じる)

 

ウルはエドアミクの体内にある魔力の異質さを感じ取っていた。言葉にはできないが、なんだか良いものではないような…。

 

 

「アミク、此処に居るかもしれねえぞ!!遊び倒してんだきっと!!」

 

「そんなわけないでしょ!!あんたじゃないんだから!!」

 

「でも、何かあるかもしれねえだろ?入ってみようぜ!」

 

呑気そうに言うナツに呆れるルーシィとグレイ。

 

エドアミクは懐かしさからか、覚束ない足取りで遊園地の入口に向かって行く。

 

 

「ちょっと、アミク!」

 

「抜け駆けすんなー!」

 

『変に行動力があるところは一緒だな』

 

ナツ達も急いで追いかけた。

 

中に入ると、完全に遊園地である。バイキングにメリーゴーランド、それにジェットコースター。

 

今更だが、城の中にあるには不釣り合いだ。

 

ナツ達は中の光景に圧倒された。

 

「…よく…ヒューズと一緒に…遊んでた…」

 

エドアミクもありし日を思い出すかのように呟いた、その時。

 

 

「ン~、実に楽しいね~!ハ~ッハッハッハ!」

 

 

メリーゴーランドに乗って回っている人物が1人。割れた顎とリーゼントが特徴のシュガーボーイだ。

 

 

「うぇえ!?何よ、アイツ!!」

 

「…シュガー、ボーイ…!」

 

エドアミクがそっと名を言うとシュガーボーイがこちらを見て――――驚愕した。

 

 

「ひ、姫さん!?なんで此処に!?」

 

此処にエドアミクが居ることは予想外だったようだ。

 

突然、後ろから船が迫って来た。

 

 

「うわおおおお!!?」

 

 

「きゃっ!!」

 

慌ててそれを避けて見てみると船の先端に1人の青年が乗っている。彼は手に持っている棒を弄んでいた。

 

 

 

「オイオイ、姫サマが居るなんて聞いてねえヨ。あんたらが連れて来ちゃったわけ?」

 

 

「ヒューズ…」

 

エドアミクは悲しそうに2人を見た。

 

 

「…2人とも…お父様に…従うの…?」

 

 

エドアミクがそう問いかけると、シュガーボーイもヒューズも鼻で笑った。

 

「当たり前じゃん?このスッゲー楽しい魔力がさ、この世界からもうすぐ無くなっちゃうんだ…。あんたらにその気持ち、分かる?」

 

ヒューズが言うと、シュガーボーイも続ける。

 

「ン~、俺達は永遠の魔力を手に入れる。…たとえ、どんな手を使ってもね」

 

「…永遠の魔力…それって…人の命よりも大事なもの…なの…?」

 

エドアミクの胸はやるせなさでいっぱいだった。

 

無邪気な少年だったヒューズ。独特なユーモアで笑わせてくれたシュガーボーイ。

 

ファウストと同様に、昔の彼らは居なくなってしまったのか…。

 

「カハッ、他の世界の奴らがどうなろうと知ったこっちゃないじゃん」

 

「ン~、姫さんは綺麗事が過ぎるんだよ」

 

シュガーボーイは剣呑な光を瞳に灯らせた。

 

「それに姫さん。勝手に抜けだしてきちゃダメじゃないか。また、お仕置きされても知らないよ?」

 

エドアミクはビクリ、と震えて自分の体を抱き締めた。そのお仕置きとやらも相当酷いものだったらしい。

 

「そうだヨ!姫サマの持ち場は、あのスゲェ汚くてじめじめした部屋だよ」

 

ヒューズも吐き捨てるように言った。

 

「…お願い…目を、覚まして…」

 

震え続けるアミクをルーシィがそっと抱き締める。ナツも安心させるかのようにエドアミクの肩に手を置いた。

 

「大丈夫だって!オレ達があいつらを止めてやるよ」

 

「あんた達!!女の子を閉じ込めていじめるなんて最低よ!!」

 

ナツ達の言葉にグレイも同意するかのように構える。

 

『根っこの部分はアミクそのものだな。グレイ、暴れちゃいなよ!』

 

ウルも聞こえないだろう激励を送る。

 

 

ヒューズは棒を構えた。

 

 

「こっちは必死なんだよ。…誰にも邪魔はさせねぇ!」

 

 

 




察しのいい方はあの黒い「何か」の正体にすぐに気付けるはず、です?

まぁ、次回も頑張ります。

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