妖精の尻尾の音竜   作:ハーフィ

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ちょっと短いです。


滅竜魔導士 VS ドロマ・アニム

「行くぞ、火竜(サラマンダー)音竜(うたひめ)

 

「またてめぇと共闘かよ」

 

「ラクサスの時以来だね!」

 

「てめぇらとの決着はよ…このぶっ壊し甲斐のある奴とっちめてからって訳だ」

 

「ええ…そんなぁ…」

 

アミク達がそんな事を言い合っていると、ファウストがドロマ・アニムの中から忌々しそうに舌打ちする。

 

 

『おのれ小娘共…!』

 

 

ナツとガジルが前に出て、アミクが2人の後ろ、ウェンディは更に後ろで構えた。

 

ドロマ・アニムの口が開く。

 

「ウェンディ!!私達で援護!!」

 

「はい!天を駆ける瞬足なる風を…『バーニア』!!」

 

「~♪『移動速度上昇歌(スケルツォ)』!!」

 

どちらも、対象の移動速度を上げる付与術(エンチャント)だ。アミクとウェンディはナツとガジル、ついでにアミクにも掛けた。

 

「うおっ!?めっちゃ体が軽いぞ!!」

 

「二重の付与術(エンチャント)か…ギヒッ、心強ぇな!!」

 

『儂を誰だと思っておるかぁ!!』

 

ドロマ・アニムの口から魔力光線が放たれた。それを物凄いスピードで避けるナツとガジル。

 

アミクとウェンディも後ろに下がってやり過ごす。

 

 

『速い!!?』

 

 

あっという間にナツとガジルを見失ったファウスト。そして、2人は死角から攻撃を仕掛けた。

 

 

「『火竜の鉄拳』!!」

 

「『鉄竜棍』!!」

 

『ぐ、おおおお!!?』

 

強力な威力にのけ反るドロマ・アニム。しかも、多少傷が付いていた。

 

『魔法を通さぬはずのドロマ・アニムが、微量とはいえダメージを受けているだと!?』

 

これも、少し前にアミクが掛けていた『攻撃力強歌(アリア)』のおかげだ。2人の攻撃力が軒並みパワーアップされている。

 

「『音竜の鉤爪』!!」

 

アミクも咄嗟にドロマ・アニムの頭を蹴りつけた。そして、再び後ろに下がる。ヒットアンドウェイだ。

 

アミクの攻撃により、またもや傷ができる。

 

『くっ!!しかぁし!!無駄だ!!』

 

だが、瞬時にその傷は直ってしまった。

 

 

「反則じゃねえか、その再生能力…」

 

「地味に硬えしよぉ…」

 

「だったら…天を切り裂く剛腕なる力を…!『アームズ』!!」

 

ウェンディがアミク達に別の付与術(エンチャント)を掛けた。

 

「これは?」

 

「攻撃力強化の魔法です!」

 

「おっしゃあ!!」

 

「これならもっとデケェダメージが期待できるぜ」

 

そう言うや否や、ナツ達はドロマ・アニムの顔に攻撃を仕掛けた。

 

「『火竜の煌炎』!!」

 

「『鉄竜槍・鬼薪』!!」

 

ナツが両手を叩きつけると装甲が剥がれ落ち、ガジルが突きまくると軽く凹む。

 

「『音竜の輪舞曲(ロンド)』!!」

 

さらに、アミクの両腕がドロマ・アニムの腹部に直撃し、衝撃波で罅ができた。

 

『ぐぅっ、まさかドロマ・アニムがここまでやられるとは…!』

 

 

ファウストも少し焦っているようだが、瞬時に修復されるのを見て余裕を取り戻した。

 

『だが、アミクの魔法も有能だ。どんなに破損しようともドロマ・アニムは完全に回復する!!これが再生の力だ!!これがある限り、貴様らに勝ち目はない!!』

 

「う…」

 

確かに厄介すぎる。あの再生能力さえなければ、もう少し楽な戦いだったはずだが…。

 

『…とはいえ、この攻撃力は鬱陶しいな…あの小娘か!』

 

一番後ろで構えているウェンディをサポートタイプだと判断し、ファウストはウェンディを狙う。

 

『竜騎弾発射!!』

 

ドロマ・アニムの背中の装甲の一部が開き、そこからミサイルが発射された。ミサイルがウェンディに向かう。

 

 

「ウェンディ!」

 

「私なら大丈夫です!!」

 

ウェンディはそう言うと自分にも『バーニア』を掛け、滑るようにミサイルを避けた。

 

だが、一部のミサイルは方向転換してウェンディを追いかける。

 

 

「追尾型!?」

 

『フハハハハ!!!』

 

ウェンディは驚いた拍子に地面に躓いて、転んでしまう。

 

 

「きゃあっ!!」

 

無情にも、そのウェンディに急接近するミサイル。そのミサイルがウェンディに直撃する、と思われたが…。

 

 

「『音竜壁』!!」

 

 

アミクが音の壁を張ってミサイルを防ぐ。壁に当たって落下するミサイル。

 

その間にウェンディを抱いて退避するアミク。

 

『まだまだァ!!』

 

「出させっかよ!!」

 

さらにミサイルを撃とうとしていたドロマ・アニムの発射口をガジルが潰してくれた。

 

『小賢しいっ!!』

 

「うお!?」

 

ドロマ・アニムが尻尾を振り回してガジルに喰らわせると、どこからか2発のミサイルが飛んで来た。

 

 

「うわ!?まだ残ってたの!?」

 

アミクが目の前に『音竜壁』を張ろうとすると。

 

 

「アミクさん!!さっきまでのとは違います!!」

 

ウェンディが制止するが、僅かに遅く音の壁を張ってしまう。ミサイルがそれに当たった瞬間。

 

 

 

爆炎がその場を包んだ。

 

 

 

『ヌハハハハ!!身の程を知らぬ魔導士共が!ドラゴン狩りが聞いて呆れるわ!』

 

ファウストが大笑いするが…。様子がおかしいことに気付く。

 

 

炎がどんどん収束していくのだ。

 

 

その収束先は―――――ナツの口!ナツは炎を全て吸い込んで飲み込む。ナツの後ろにはウェンディとアミクが無傷でいた。

 

 

『なんだと…竜騎弾の爆炎を…!?』

 

 

ファウストが唖然としていると――――。

 

 

尻尾の方から咀嚼音が。

 

見てみると、ガジルが鉄製の尻尾を貪っていた。

 

 

『んなっ!?こいつは尻尾を食っているのか!?』

 

間抜けな声を上げるファウスト。

 

『ふざける――――――!!?―――――!?』

 

ファウストが怒りの声を上げようとしたが、なぜか声が聞こえない。いや、声どころか周囲の音さえも聞こえなくなっていた。

 

(何だ!?何が起こっている!?)

 

ファウストが慌ててアミクたちの方を見ると、アミクが何かを飲みこみ、ペロリと舌なめずりしたところだった。

 

「――――あのドローン、音立てまくるから食い放題♪」

 

『音を…食べた…!?』

 

訳が分からず混乱しするファウスト。

 

そこでナツは口元を拭い、尻尾を蹴って戻って来たガジルも鉄のカスを吐き出す。アミクも「ぱふぅ…」と息を吐いた。

 

「んだよ…このまっずい火は…こんなにムカつく味は初めてだ」

 

「あの王様の声の味も、いやーな感じ」

 

「違ぇねぇ…だがよ、とりあえず――」

 

「「「食ったら力が湧いてきた!」」」

 

ナツ達は獰猛に笑った。ウェンディも勇ましそうに手を構える。

 

(出鱈目だ…これがアースランドの魔導士…)

 

ファウストは戦慄した。炎や鉄、音を食べてパワーアップするなど、本当に人間なのか?

 

「しっかし強ぇな…ドラゴンって言うだけあって」

 

「ざけんじゃねぇ!こんな物、ドラゴンでも何でもねぇよ」

 

「護衛も付けないってことはかなりの自信があるんだろうね」

 

「それに、自己修復しちゃうし…」

 

ウェンディの言う通り、すでにガジルに食べられた尻尾も元通りだ。

 

「へっ、燃えてきたぞ」

 

ナツは拳を握ってドロマ・アニムを睨んだ。

 

(これが滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)…!!だが、だからこそ我が物に!)

 

ファウストがそう思ったその時、アミクがポツリ、と呟いた。

 

「…装甲が硬い、なら…」

 

アミクは一気にドロマ・アニムに駆けだす。

 

「アミクさん!?」

 

アミクは拳に音を纏った。だが、その音がいつもと様子が違う。

 

「『音竜の―――』」

 

アミクは飛びあがってドロマ・アニムの胸元に拳を叩きつけた。

 

「『奇想曲(カプリース)』!!」

 

直撃したのにも関わらず、衝撃波が発生しない。数瞬後。

 

 

『ぐああああああああああ!!!』

 

ドロマ・アニムが急に苦しげに暴れ出した。

 

「内側なら、どうかな?」

 

アミクがそう言った直後、胸元が爆発し、装甲が破壊された。割れた装甲が地面に落ちる。ドロマ・アニムの機械部品がぎっちり詰まった内側が丸見えだ。配線が切れ、魔力が漏れているものもある。

 

それだけでなく、首元や胴体まで罅が広がっていく。

 

 

「ぐあああ!!!ば、バカな!!?」

 

そしてなんと、丁度、胸の内側で操縦していたファウストにまでダメージは通っていた。急に衝撃波に見舞われ、頭をぶつけてしまったのだ。幸い、操縦席まで破壊されることはなかったが、頭から出血してしまっていた。

 

「儂にまで攻撃を与えるとは…こやつ…一体!!?」

 

ドロマ・アニムの中に居れば安全だとすっかり安心しきっていたファウストは激しい焦りに襲われる。中に居る自分にまで攻撃できるならば、ドロマ・アニムの硬い装甲も再生機能も意味がなくなる。

 

「すげええええ!!?」

 

「な、何が起こったんだ!!?」

 

ナツ達も初めてまともな大ダメージを与えられたことに驚愕していた。

 

「アミクさん!どうやったんですか!?」

 

ウェンディは疲れたように息を吐くアミクに聞く。

 

「…拳に音の振動を乗せて殴ったんだ。その振動で、内部から破壊しただけだよ」

 

アミクは腕を押さえて答える。ウェンディがアミクの様子に気づき、心配そうに尋ねた。

 

 

「大丈夫、ですか…?」

 

アミクは弱々しげな笑みを浮かべる。

 

「あれ、強力な分、負担も凄くて…ちょっとしんどいかな」

 

疲労感と痛みで思ったように動けそうにない。

 

「でも!あれは無敵じゃない!!今なら、修復にも時間がかかるだろうし、修復する間もなく一気に壊せば、勝てるはずだよ!!」

 

「後はオレらに任せろ!!あんな状態の奴なんかすぐに燃やしてやるよ!!」

 

「てめえにお膳立てされたってのは気に食わねえが、これでやっとアイツをぶっ潰せるってわけだ」

 

「…私も、手伝います!!」

 

ナツ達は見えてきた突破口に士気を上げた。勝機を掴めた、と彼らは思っていた。

 

 

しかし。

 

 

 

『…思いあがるなよ、小娘共…』

 

 

低い声が、ドロマ・アニムから聞こえた。

 

 

直後。

 

 

ドロマ・アニム全体が光り輝いた。剥がれ落ちていた装甲が吸い寄せられ、破損した部分が更に強く光る。

 

その光が収まると―――――。

 

 

「う、そ、でしょ…?」

 

破壊される前の無傷のドロマ・アニムの姿に完全修復されていた。

 

「修復には時間がかかるんじゃねえのかよ!!?」

 

『このドロマ・アニムは、アミクの自己治癒魔法を最大限発揮できるように改造しておる。あやつの再生スピードがドロマ・アニムにも適用されるのだ!!』

 

この修復速度はニルヴァーナの魔水晶(ラクリマ)にも匹敵するだろう。

 

アミク達は突破口をあっさり潰されたことで唖然となった。しかし、まだアミク達の悪夢はそれで終わりではない。

 

 

『アースランドのアミクよ。儂を怒らせた事を後悔するがよい。見よ!!竜騎士の真の力を!!』

 

 

大気中の魔力がドロマ・アニムに集まってくる。ドロマ・アニムがその魔力を吸収して、どんどんその姿を変えていった。

 

ナツ達は困惑してそれを見ていた。

 

「な、なんだ…?」

 

同時に、アミクの耳にはあるものも聞こえてくる。

 

 

 

「―――――やめて!!私が、もう1人の私が――――!!!」

 

 

絶えずにドロマ・アニムの中から、エドアミクの悲鳴が聞こえてくるのだ。ドロマ・アニムが変形していくにつれ、その悲鳴も大きくなっていく。

 

中で何が起こっているのかは分からないが、間違いなくエドアミクが悲惨な目に遭っているのだろう。

 

その証拠、と言わんばかりにドロマ・アニムの腹部から血が漏れ出てきた。悲鳴もナツ達に聞こえるほどの大きさになっている。

 

「そんな…!!」

 

ウェンディは口を押さえた。ナツ達も胸糞悪そうな表情だ。

 

(こやつ等が居ればもう一度アニマ計画を実現できる。永遠の魔力の為にこの4人を捕獲――こやつらは最早兵器、鹵獲じゃ!多少のパーツの破損は仕方あるまい…)

 

そして、ファウストはアミクを睨んだ。

 

(貴様だけは…儂を傷つけた貴様だけは、魔力を絞り取った後、仲間達の目の前で惨たらしく殺してやる!!)

 

その憎悪の念がアミクにも届いたのか、ブルリ、と彼女が震えた。

 

(最悪ここで殺してしまっても構わん――――貴様ら(・・・)だけは、許してはならんのだ!!)

 

自分の娘であるアミクも、アースランドの魔導士であるアミクも、ファウストにとっては親の仇よりも憎い存在。だから、徹底的に苦しめ、この世から消すことは必須作業なのだ。その考えはアミクの手でダメージを喰らったことでますます強くなっている。

 

 

 

アミク達の目の前でドロマ・アニムに更なる変化が起きた。

 

「色が…変わって…!?」

 

その色を、銀から黒に染めていく。

 

『まずは貴様等全員の戦意を無くしてやろう!ドロマ・アニム黒天の力をもってなァ!!』

 

変形し、竜人のような姿になった黒いドロマ・アニム。それは、口から大音量の咆哮を轟かせた。

 

「いただき!!」

 

アミクがその咆哮を食べてしまったため、ナツ達に特に被害はなかった。

 

先程よりも圧倒的な魔力。威圧感も比べ物にならない。ビリビリと空気が震えるのを感じることができた。それにドロマ・アニム黒天は手に槍と盾を持っていた。

 

 

大幅なパワーアップにアミク達は冷や汗を流す。今の自分達で勝てるのだろうか…。

 

 

 

突然、ドロマ・アニムが飛び出して槍を突き出してきた。

 

「…!」

 

「きゃっ!?」

 

アミク達は咄嗟に避けたが―――――アミクのわき腹を掠め、彼女は吹っ飛ばされた。

 

「ぐっ!?」

 

アミクは地面を滑っていくがすぐに立ち上がる。もう、体が自由に動ける。

 

「~♪『持続回復歌(ヒム)』!!」

 

咄嗟に自分にじわじわ回復する付与術(エンチャント)を掛け、ドロマ・アニムに飛びかかった。

 

「『音竜の響刻(レガート)』!!」

 

音を纏った手を振って攻撃するが、付いたのはかすり傷だけ。それもすぐに消えてしまい、実質ノーダメージ。

 

『効かぬわ!!』

 

「うわっ!?」

 

ドロマ・アニムは尻尾をアミクに叩きつけて地面に落とした。

 

「アミクさん!!」

 

『潰れてしまえ!!』

 

そして、地面に倒れ込むアミクを踏みつけようと足を上げた。

 

 

「うおおおおおお!!!」

 

それを阻止してのはナツだ。彼は両腕に炎を纏って振り下ろした。

 

「『火竜の翼撃』!!」

 

しかし、それを盾でガードしたドロマ・アニムはそのままナツを弾き飛ばす。その間に、アミクはドロマ・アニムの下から脱出していた。

 

「大丈夫ですか、お二人とも!!」

 

弾かれたナツが着地すると、ウェンディが心配してくれる。

 

 

「攻撃力強化中の私達でもあの程度のダメージしか与えられない…」

 

「それに、すぐ直っちまう」

 

 

やっぱり、ここでもアミク達を苦しめるのは自己修復能力だった。

 

 

「やっぱり、あの再生能力が肝だよ…どうにかして剥がせないかな…」

 

アミクが思案していると、ドロマ・アニムの持っている槍に禍々しい魔力が纏わりついた。

 

『フハハハハ!!感じるか…この絶対的な魔力!!素晴らしい!!跪くな!!命乞いをするな!!貴様等はそのままただ震えて、立ち尽くしておるがよいわ!!――恐怖しろ!!ドラゴンの魔導士!!!』

 

そして、その槍を振り下ろそうとする。

 

(ヤバい!!)

 

アミクは咄嗟に駆けだした。

 

「お、おい!!音竜(うたひめ)!!」

 

「『音竜の咆哮』!!!」

 

ガジルの言葉に構わず、槍に向かってブレスを放つ。だが…盾で防がれ、霧散した。

 

「あ…」

 

『愚か者め!!自分から死に来るとは!!』

 

ファウスとは嘲笑すると、ドロマ・アニムが槍を振り下ろした。

 

 

「アミクゥゥゥ!!!」

 

 

ナツの叫びと共に振り下ろされた槍から眩い光が放たれ、アミクだけでなくナツ達も飲み込んでいった。

 

 

 




うーん、同じような表現ばかり出てるような…。

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