妖精の尻尾の音竜   作:ハーフィ

95 / 202
今回でエドラス編は終了。

長かったなぁ…。


リサーナ

「きゃん!!?」

 

浮遊感の後に感じた衝突。どうやら地面に落ちたらしい。

 

だが、痛みはあまり感じなかった。

 

「あ、みんな」

 

下を見ると、ナツたちが積み重なるように倒れている。アミクはその一番上に落下したらしい。

 

 

アミクはナツ達が無事なのを確認すると、周りを見まわした。

 

 

そこには、久しぶりにも感じる、マグノリアの風貌が見渡せた。

 

 

「わー!!帰ってきたんだ!!」

 

アミクは飛びおりて歓声を上げた。もう荒野ではない。元通りになっている。

 

 

ナツたちも嬉しそうに叫ぶ。

 

 

「帰ってきたぞー!!」

 

「マグノリアの街もギルドも元通りです!」

 

「まだ喜ぶのは早い。人々の安全を確認してから―――」

 

エルザがそう、注意した時。

 

「大丈夫だよ」

 

「一足先にアースランドに着いたからね、色々飛び回ってきたんだ」

 

「ギルドも街の人もみんな無事だったよ」

 

「みんな魔水晶(ラクリマ)にされた事すら知らないみたい」

 

「アースランドってすげえな、魔力に満ちてる」

 

 

アミクたちの頭上でエクシードたちが飛びまわりながら話していた。

 

それを見て驚くシャルルたち。

 

「なんで…エクシードがアースランドに!!」

 

シャルルが愕然として言うと、アミクとウェンディが慌てて「エクシードも体内に魔力があるから~うんたらかんたら」と説明する。

 

「冗談じゃないわよ。こいつらは危険!!エドラスに帰すべきよ」

 

シャルルが拒絶するように言い放つ。エクシードたちは沈んだ表情で俯いた。

 

「まぁまぁ…」

 

「そうは言っても、あっちは魔力がなくなってアニマも展開できないだろうし、帰す方法が分かんないよ」

 

「エクスタリアも無くなっちゃったんだし許してあげようよ」

 

アミクたちがシャルルを宥めるも、シャルルは頑なだ。

 

「イヤよ」

 

それほど、恨み千万なのだろう。

 

「石を投げつけたのは謝るよ」

 

「ごめんなさい」

 

「でも俺達帰るところがないんだ」

 

「これから改心するよ」

 

「もう許して」

 

 

エクシードたちも次々と許しを請う。だが、シャルルは怒り心頭、といった感じで大声を上げた。

 

「そんな事はどうでもいいの!!貴方達は私に滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)を抹殺する使命を与えて、アースランドに送り込んだ!!」

 

「そうさ!!女王はオイラたちの卵を奪った!!忘れたとは言わせねえ!!」

 

「あ、おじさん」

 

シャルルに同意するように叫んだのはラッキーだ。それを聞いたパルティータが前に出た。

 

 

「…それについては拙者が説明しよう、だな」

 

「パルティータ…」

 

エクシードの老人たちやシャゴットが申し訳なさそうにパルティータを見る。

 

 

「…シャゴットには未来を見る力があるのは知っているな?6年前、彼女は地に堕ちるエクスタリアを見たらしい、だな。今思えば、エドラスの魔力枯渇による自然落下だったのだろうが…。

当時、シャゴットたちはそれを人間の仕業だと考えていた、だな」

 

「い、いや…なんでおめえがそんなこと知ってるんでぇ?」

 

ラッキーが妙に詳しいパルティータに聞くと、「あの日、卵を取られた後にシャゴットたちから話を聞いたんだ」と返ってくる。

 

 

「人間と戦争しても敵わないと思った彼女たちは、100人の子供をアースランドに逃がす計画を思い付いたのだ、だな」

 

「逃がすだと!?」

 

驚くラッキー。パルティータは説明を続ける。

 

 

「それはエクスタリアの民にも内密に行われていた、だな。滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)抹殺のため、というのも表向き、だな」

 

「もちろん、滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)に恨みがあったわけではありません」

 

老人の一人が付け加えた。

 

「分かっています。そういう設定が必要だったって事ですよね」

 

「本当の事を言ったらパニックになっちゃうもんね」

 

ウェンディとアミクが納得したように励ます。

 

「拙者たちもゴネにゴネて、絶対に他言無用だと言われてから聞かされた、だな」

 

「あのまま放っておくと何をするか分かったもんじゃなかったからのう…」

 

パルティータの言葉に、老人の一人が懐かしむように言った。

 

一方、ラッキーは複雑そうな表情をしていた。女王が自分たちの卵を奪ったのが、自分たちの子供の為だと分かったからだろう。心中お察しする。

 

 

「…と、ここまでが拙者が聞いた話だが…まだ説明し足りないことがあるみたい、だな?」

 

パルティータがそう言うと、シャゴットが頷いて説明を引き継いだ。

 

「人間のアニマを借り、私たちの作戦は成功しました。しかし、たった一つだけ計算外のことが起きたのです…それはシャルル、貴女の力」

 

「え…?」

 

「貴方には私と同じ様な予言の力があったのです」

 

シャゴットの口から衝撃の事実が明かされる。

 

「未来予知…ってことだよね?」

 

「じゃあ、シャルルが前に商会の証拠を掴めたのもその力ってことなんですね…」

 

未来予知ならば、容易いことのはずだ。

 

「しかし、それは無意識に発動しているようで、あなたの記憶を混乱させたのです。避難させた100人のエクシードのうち…貴方一人だけが。

 恐らく、エドラスの断片的な未来を予言してしまった。そして、それを使命だと勘違いしてしまったのです」

 

「そんな…」

 

シャルルはショックを隠せなかった。異常なのはハッピーやマーチの方ではなく自分だったのだ。

 

「じゃあオイラたちは…」

 

「元々そんな使命はなかったのですよ。本当に不運に不運が重なり、あなたは自分の『ありもしない使命』を作り出してしまった」

 

「…じゃあ、なんであの時、貴方たちはあんな事を言ってた、の?」

 

マーチがニチヤとナディの方に目を向けた。彼らはあたかも、自分たちが使命を与えた、といった態度で話していたが…。

 

「それは、全て女王様の威厳を演出するための猿芝居…本当に申し訳ない」

 

「ぼきゅは君が自分の力を知らないことをいいことに、さもぼきゅたちが操っているように言ってみたんだ…ごめんね…」

 

 

その二人が謝るが、シャルルの顔は晴れない。

 

「たくさんの不運と民や人間に対する私の虚勢があなたを苦しめてしまった。いいえ…6年前、卵を取り上げた全ての家族を不孝にしてしまった。

 だから私は貴方に剣を渡したのです。悪いのはエクシード全てじゃない…私一人です」

 

シャゴットが顔を俯かせると、他のエクシードたちが声を上げ始めた。

 

 

「それは違いますよ女王様!」

 

「女王様の行動は全部私達を思ってのこと」

 

「俺達だって自分達の存在を過信してた訳だし…」

 

「折角アースランドに来たんだ!六年前に避難させた子供たちを探しましょう!!」

 

「おぉ!僕達にも新しい目標が出来たぞ!!」

 

「今度は人間と仲良くしよう!!」

 

「新しい始まりなんだー」

 

 

 

「切り替え早いなー」

 

アミクは思わず笑みを浮かべた。前向きなのはいいことだ。

 

「みんな…」

 

シャゴットも感動したのか目に涙を浮かべる。

 

そこで、シャルルが仕方なさそうにため息をついた。

 

「いいわ…認めてあげる」

 

「シャルル…」

 

「でも何で私にあんたと同じ力があるわけ?」

 

シャルルが疑問を口にすると――――なぜか、シャゴットたちがわざとらしく目を逸らしたり咳をしたりし始めた。

 

「ゴホッゴホッ」

 

「ど…どうしてかしらね…」

 

「怪しいね!?」

 

わざとらしい誤魔化しにアミクが思わずツッコミを入れた。シャルルもジト目でシャゴットたちを見る。

 

 

(…そういうこと、なの。まさか、はったりが本当になるなんて、なの)

 

ただ、マーチは気付いたようで意味ありげにシャルルとシャゴットを見比べた。

それに気付いたシャゴットが「しーっ」と口に指を当てる。マーチはシャゴットの意を汲んで黙ってあげることにした。

 

「ねぇおじさん、女王様とシャルルって何か似てない?」

 

「そうかい?」

 

「あい!!ほら、動きとか」

 

「動きだぁ?」

 

ハッピーとラッキーはコソコソと話しながらシャゴットたちを見ていた。それを見たマールがクスリ、と笑っている。

 

「…みんな、素直になれないんだ、な」

 

そんな光景を可笑しそうに見ているマーチの傍にパルティータが寄ってくる。

 

「そうみたい、なの」

 

「まぁ、シャゴットやラッキーたちも、自分の子を想うのに変わりはない、だな」

 

「そういう貴方だって、子ども、いるんでしょ?なの」

 

「…そう、だな。その子を見つけだしたら思いっきり抱きしめてやろう、だな」

 

 

そう言ってパルティータはマーチを力いっぱいに抱きしめた。

 

「!?…ちょ、ちょっと…!!」

 

「すまない…予行練習を、だな…」

 

「なんで…はぁ…しょうがない、の」

 

突然の謎行動。自分にとっては赤の他人の筈の人物から抱きしめられても、なぜか嫌な気分にならなかった。むしろ、温かいような、懐かしいような…。

 

 

(ミーナ…目元がお前に似ている、だな)

 

パルティータは亡き妻とマーチを重ねた。

 

 

「あれー?マーチ、いつの間にかそのおじさんと仲良くなったの?」

 

「いろいろあった、の」

 

ハッピーが問いかけてくるので、そう答える。

 

「とりあえず、無事に終わって良かったな!」

 

「そーだね」

 

ナツが嬉しそうに言うが…なぜかナディみたいに片腕をブンブン振っていた。

 

「おい、感染ってんぞナツ」

 

『グレイもじゃないか』

 

「ちょっと!二人とも何やってんの!」

 

「あんたもよ!!」

 

アミクまでもが腕を振り始めたので、ルーシィがツッコンでくれた。

 

「私たちはとりあえず、この近くに住もうと思います」

 

「あ、そうなの?いつでも会えるじゃん」

 

アミクが嬉しそうに言うと、「何嬉しそうにしてんのよ」とそっぽを向かれた。

 

「そう、いつでも会えるわ。シャルル」

 

「ちょ、ちょっと…」

 

シャゴットがシャルルを抱きしめた。シャルルは戸惑っていたようだが、特に抵抗はしない。

 

なんとなく、シャルルも安心感を憶えているのかもしれなかった。

 

「…そういえばリリーはどこだ…まぁいいか、だな」

 

「いい、の…?結構さっぱりしてる、の」

 

「どうせ、すぐに会えるだろ、だな」

 

「…なんか、その喋り方、親近感湧く、の」

 

「そうか…お前も、いつでも会いに来い、だな。面白い話を聞かせてやる、だな」

 

「気が向いたら、なの」

 

マーチとパルティータも穏やかに話をして、再会を約束する。

 

「いつでも遊びに来なさい。ハッピー」

 

「あい!」

 

「カー!!来なくていいわ!!」

 

相変わらず、素直ではないラッキー。

 

「でもオイラ、おじさんとおばさんの匂いが好きなんだ。なんでだろ?」

 

ハッピーの言葉にラッキーとマールが涙ぐんだ。

 

「カー!!匂いを嗅ぐなんて百年早ぇんだよ!!」

 

 

「あいぃ!!?」

 

照れ隠しにハッピーを追いかけるラッキー。それを涙を拭きながら眺めるマール。その姿は本当の家族のようで、温かいものだった。

 

「みなさん、本当にありがとう」

 

「また会いましょー」

 

「元気でねー!」

 

「ばいばい!」

 

エクシードたちは別れを告げて一斉に飛び立つ。そして、森の方に向かって飛んでいった。

 

 

「…ぐす…」

 

「…どうしました?」

 

飛んでいる最中、パルティータが鼻をすすりあげる。シャゴットが問いかけると、ポロポロと涙を流し始めた。

 

「拙者の娘が!!拙者の娘が!!元気でよかった!!だな!!」

 

「おいおい!?大人がだらしねぇぞ!!」

 

ラッキーが慌てふためいてパルティータの頭を引っ叩いた。

 

「…貴方の妻に似て、綺麗な子でしたね」

 

シャゴットが言うと、パルティータが「そうだろう!!そうだろう、だな!!」と頷く。

 

「ふふ、やっぱり自分の子供が一番かわいいものですね」

 

「か―――っ!!違ぇねえや!!」

 

「うおおおおん!!!ミーナ!!お前の娘は可愛いぞ――!!」

 

親バカたちは笑い声を上げながら飛び去っていった。

 

 

 

「よし!!オレたちもギルドに戻るぞ!」

 

「みんなにどうやって報告しよう?」

 

「いや、みんな気づいてねぇんだろ?今回の件」

 

「しかし、ミストガンの件だけは黙っておけんぞ?」

 

「まぁ、ありのままを伝えればいいと思うけど。おじいちゃんなら信じてくれると思うし」

 

アミクたちが話しあう―――が、なぜか皆、片腕を振る、という奇行を行っていた。

 

「みんな…手…」

 

「ちょ…ちょっと待て」

 

「どうしたのガジル?君もやりたいの?」

 

「それに価値があるならな!!」

 

ガジルは周りをきょろきょろと見回すと、焦ったように叫んだ。

 

 

「リリーはどこだ!!パンサー・リリーの姿がどこにもねぇ!!」

 

言われてみれば、あの黒い豹みたいなエクシードの姿が見えない。

 

 

「―――オレならここにいる」

 

と思ったら草むらから出てきた。だが―――――

 

 

「え!?可愛くなったね!?」

 

あのムキムキとした体躯がなくなっていた。その代わり、ハッピーたち程の大きさにまで縮んでいて、こじんまりとした感じになってしまっていた。

 

「ゆるキャラ化したの?」

 

「ゆるきゃら、というのは分かりませんが、どうやらアースランドと俺の体格は合わなかったらしいです」

 

「なにそれ…合うとか合わないとかあるの…?」

 

入門審査に引っかかった、みたいな感じだろうか。

 

「体はなんともない、の?」

 

いきなり体が変化してしまったらやりづらいところも出てくるだろう。

 

「今のところはな…オレは、王子が世話になったギルドに入りたい。約束通り、入れてくれるんだろうな?ガジル」

 

リリーが聞くと…ガジルが大泣きしてリリーを抱きしめた。

 

「もちろんだぜ!!相棒(オレのネコ)!!」

 

「ガジルが泣いたー!!?」

 

「そんなに欲しかったんだ!!?」

 

ガジルとしては念願叶っての自分のエクシードだ。そりゃあ泣きたくもなる…のか?

 

「そっか!じゃあ、これからは妖精の尻尾(フェアリーテイル)のメンバーになるんだね!」

 

「そういうことになりますね。不慣れな事も多いと思いますが、よろしくお願いします、王女…おっと」

 

リリーがアミクに対して妙に改まった姿勢で言ってきた。が、自分の失言に気付き、口を噤む。

 

「わ、私はエドラスの方のアミクじゃないんだよ?普通でいいよ、普通に」

 

「申し訳ござ―――すまない、どうにも癖でな」

 

「…まぁ、ゆっくり慣れていけばいいよ…」

 

そんな風に畏まられると反応に困るのだが。自分は王女でもないし。

 

「おい、オレがご主人様だぞ!なんでテメェが主人ぶってんだ!!」

 

「そんなつもりはありませ~ん!!」

 

それが不満なのかガジルが突っかかってくるが、どうしろと。思わず涙目になる。

 

そこで、リリーが持っている縄に気付く。

 

「リリー、君が持ってる縄はなに?」

 

「はい、先ほど怪しい奴を捕らえてきたのです」

 

…今は気にすまい。

 

「おぉ!!早速手柄か!!流石オレのネコ!!」

 

「関係ないでしょ…」

 

リリーが縄を引っ張ると、ある少女の声と共にその姿が現れた。

 

 

「ちょ…私、別に、怪しくなんか…きゃっ!」

 

「え…!?」

 

聞き覚えのある声。そしてその人物を見てアミクたちは硬直した。

 

 

その人物が、とても見覚えのある人だったからだ。

 

 

 

銀髪の美少女。その名も――――

 

「リサーナ!!?」

 

 

「なんなのこのネコ!!てかエクシード?」 

 

「パンサー・リリーだ」 

 

「何だてめぇ、俺のネコにケチつけようってのか?ア?」

 

 

なぜ、ここにいるのだ。服装からして、エドラスのリサーナだと思うが…。

 

「もしかして、私たちに巻き込まれてエドラスのリサーナがこっちに来ちゃった!?」

 

「返すのは…無理、なの」

 

「ど、どうしよう…」

 

アミクたちが途方に暮れていると―――。

 

「ナツゥ、アミクゥ!!」

 

「うわっ!!?」

 

「わお!!?」

 

 

リサーナがアミクたちに飛びかかってきたのだ。アミクたちは咄嗟の事で反応できずに地面に倒れ込んでしまった。

 

「また会えた…本物のナツとアミクに」

 

「え?え?」

 

リサーナの突然の行動に驚いていると、彼女は涙を浮かべたままハッピーとマーチを抱き上げる。

 

「ハッピー!!マーチ!!私よ!!リサーナよ!!」

 

「ふぎゅう」

 

「く、苦しい…なの」

 

リサーナはルーシィたちにも目を向けた。

 

 

「グレイとエルザも久し振りだね!!うわぁ!!懐かしいなぁ…その子は新しいギルドのメンバーかしら?小さいウェンディに…もしかしてルーシィ?」

 

「ちょ、ちょっと待って!!」

 

アミクが慌ててストップを掛けると、リサーナはようやく大人しくなってくれた。

 

「もしかして…アースランドのリサーナ!!?」

 

アミクが問いかけると、リサーナは小さく首肯した。

 

「生き返ったのか!!」

 

「うわぁぁい!!」

 

「ま、待て!」

 

大喜びで飛びかかろうとするナツとハッピーの襟首を掴んで止めるエルザ。

 

 

「お前は二年前…死んだはずだ…生き返るなどあり得ん…」

 

『私も、蘇生の魔法など聞いた事ないぞ…私は蘇生というより残滓だし』

 

エルザもウルも信じられないのか呆然と言い放つ。

 

「そ、そうだよ。私が直接見たわけじゃないけど、ミラさんが、リサーナが死んだって…」

 

アミクがそう言うと、リサーナが俯いた。

 

「…私、死んでなんかなかったの」

 

それからリサーナは説明を始めた。

 

 

曰く、2年前、エルフマンが暴走した日。あの場に小さなアニマがあったらしい。瀕死のリサーナはそこに吸い込まれた。そしてエドラスで目が覚めたリサーナは、エドラスの妖精の尻尾(フェアリーテイル)と出会う。

彼らはリサーナをエドラスのリサーナだと思い込んだ。実際はエドラスのリサーナは死んでいたようだ。そこで、リサーナは記憶喪失だという事にしてエドラスのリサーナのフリをした。

 

 

「その時はよく分からなかったけど、今にして思えば、エドラスのリサーナが死んだ事によって、世界に足りない分を補完するために、アニマが私を吸収したのかもしれない」

 

アミクたちは黙ってリサーナの話を聞いていた。

 

「最初は戸惑ったけど、エドラスの事を少しずつ学んで、みんなに合わせながら…段々、エドラスの生活にも慣れてきた。…アミクがいないのは驚いたけど。でも、あとで調べた時に、エドラスのアミクが王女だって分かった時は可笑しかったな…そして二年が過ぎて…六日前、アースランドのナツとアミク、ハッピーとマーチがやって来た」

 

「そっか、あの時…」

 

リサーナと再会したあの時。彼女の様子がおかしい、と思っていたが、あのリサーナは自分たちがアースランドのものだと確信していたのだ。

 

「なんで、あの時、本当の事を言ってくれなかったの…?」

 

アミクが問うと、リサーナは申し訳なさそうな表情をした。

 

「言えなかったんだ…私はエドラスのミラ姉達を悲しませたくなかった…。アミクたちに会えたのは本当に嬉しかったけど…でも…」

 

リサーナが妖精の尻尾(フェアリーテイル)に行った時には、エドラスのリサーナが死んでお通夜みたいな雰囲気だったらしい。彼らにはリサーナを見るなり「生きてたのか!!」と大喜びされたので、本当の事を言えなかったのだそうだ。

 

 

だが、実はミラとエルフマンはリサーナが自分たちの本当の妹ではない事に気づいていた。

 

 

それが分かったのは、リサーナがアニマの逆展開によってアースランドに帰ってしまう、というときだった。リサーナも結局は魔力を体内に持つ人間。彼女も例外ではなかったのだ。

 

ミラたちは身体を光らせて宙に浮くリサーナに「本当のお姉ちゃんとお兄ちゃんを悲しちゃダメ」、と言った。

 

 

「それで、アースランドに戻ってきたの…」

 

 

それで、リサーナの説明は終わりだった。

 

 

つまり、簡単に言うとリサーナは死んだわけではなくエドラスに行っていただけ、と言う事なのだ。

 

 

アミクはそっとリサーナに近付いた。

 

「ごめんね…隠してて…結果的には戻ってきたけど、私は貴方たちをーーー」

 

アミクはリサーナの言葉を遮って思いっきり抱きしめた。

 

「うわっ!?アミク?」

 

すぐに、嗚咽が聞こえ始める。

 

「うえええええん…よかったよぉ、リサーナが生きててよかったよぉ…」

 

堰を切ったようにポロポロと涙を流すアミク。

 

「あ…」

 

「ずっと君がいなくて寂しかったんだよぉ…もっと一緒に冒険したかったのに…うわあああああん」

 

リサーナも瞳に涙を浮かべて抱き締め返した。そっと背中を叩いてあげる。

 

「うん…ごめんね。でも、これからはいつだって冒険できるんだから…」

 

「うん…うん…!!」

 

2人の少女が泣いていると、ウェンディも釣られたのか目元を拭った。

 

 

ナツが立ち上がり、リサーナに手を伸ばす。

 

 

「行こうぜ、リサーナ」

 

「え?行くってどこへ…?」

 

 

「何言ってんの」

 

アミクは涙を拭って満面の笑顔を見せた。

 

 

「君の家族に会いに行かなきゃ!!」

 

 

 

 

カルディア大聖堂。

 

ミラとエルフマンはリサーナのお墓の前にいた。雨が強く降っているが、エルフマンが傘を差してくれているお陰で濡れることはない。

 

「姉ちゃん、そろそろ行こう」

 

「もう少し…」

 

ミラはそっとお墓を見つめる。

 

 

彼女が死んでもう2年。ギルドのみんなのお陰で妹を亡くした悲しみも癒えつつあるが、一度だって彼女のことを忘れたことはない。

エルフマンもトラウマを克服して全身接取(テイクオーバー)も使えるようになったし、自分だって性格こそ変わってしまったが明るく生活している。

だが、やはりリサーナのことを思い出すと、気持ちが沈んでしまう。目の前で空に吸い込まれていったリサーナ。守れなかった自分たちの妹。もし、彼女が生きていたら…。

 

 

「ミラ姉ー!!エルフ兄ちゃーん!!」

 

この声は…いや、そんなはずは…。

 

ミラとエルフマンはバッと振り向いた。そこには…

 

 

「ウソ…リサーナ」

 

少し成長しているが、見違えるはずもない。涙を浮かべながら走ってくる銀髪の少女は、自分たちの妹、リサーナに違いなかった。

 

 

彼女をリサーナだと認めた瞬間。

 

ミラたちの目から涙が溢れ出した。

 

 

「ただいま…!」

 

そう言って2人に抱きつくリサーナ。エルフマンが傘を取り落とし、みんな濡れてしまうが気にもしない。

 

 

なんで、リサーナが生きているのか、わからないが…。

 

 

でも、間違いなく、この少女はリサーナだった。ミラとエルフマンの最愛の妹。

 

ミラもエルフマンも涙と鼻水を流しながらも満面の笑みを浮かべる。リサーナも同様だ。

 

 

「おかえりなさい…!」

 

 

ミラがそう告げると、リサーナはますます泣き出した。

 

 

土砂降りの如く雨が降る中、ストラウス三兄妹は家族同士抱き合って泣き続けた。もはや雨なのか涙なのかもわからない。

 

 

 

そんな彼女たちを、アミクたちは少し離れたところで見守っていた。

 

 

 

「よかった、なの…これで本当に大団円、なの」

 

「うん…本当に、よかった…」

 

 

こうしてアミクたちはエドラスもマグノリアも妖精の尻尾(フェアリーテイル)も救い、リサーナも無事、生還できたのであった。

 

 

 

 




次回から閑話ですね。今回の話でアンケートは打切りにしたいと思います。

今の所ウェンディが一番人気なんだが…。これはウェンディとイチャイチャするチャンスだな。

でも、グレイもよく追い上げてきたな。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。