妖精の尻尾の音竜   作:ハーフィ

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今回から閑話です。S級試験編までどれくらいの閑話にしようかな…。


異世界帰りの日常的な牧歌
アースランドとエドラスのその後


リサーナを連れてギルドに帰ったらもう、大変だった。

 

みんなリサーナを見て信じられないかのような顔をして、リサーナだと分かった瞬間、飛びついてきてエルフマンに「汚ぇ手で触んな!!」とぶっ飛ばされていた。

 

なんかデジャブを感じる。

 

「ギルドもそのままでよかった…」

 

「アニマの事も知らないみたい、なの」

 

「何にせよ無事でよかった」

 

「イカれてるぜ」

 

エルザたちと安心していると、ガジルがそう呟いた。

 

「リサーナ!」

 

「マスター!」

 

そこにマカロフがやってくる。

 

「おじいちゃん!色々話したいことあるけど、まずはリサーナが帰ってきたんだよー!!」

 

「そりゃ、見れば分かる」

 

アミクがマカロフに駆け寄ると、マカロフは優しい笑みでリサーナを見る。

 

「信じておった…」

 

「え?」

 

「ギルドで育った者は、みなギルドの子じゃ…子の心配をしない親がどこに居る、そして子を信じない親がどこに居る。事情は後でゆっくり話してくれればよい、アミクたちもな」

 

ミラから詳しく話を聞いた時から違和感を感じていたそうだ。「空に吸い込まれるように消えた」というのをミラたちは死んだ、と思ったみたいだが、マカロフは「もしかしたら」と希望を持っていたらしい。

 

「うん!ちゃんと話すよ!」

 

アミクが元気よく答えると、マカロフは再び笑みを浮かべた。

 

「とにかく、よぉ帰って来た!!」

 

「マスター…帰って来たんだよね…私、帰って来たんだよね…?」

 

リサーナが震える声で問うと、マカロフが両手を広げた。

 

「そうじゃよ。ここはいつでもお前の家じゃ。おかえり、リサーナ」

 

『おかえり!!リサーナ!!』

 

ギルドのみんなが、リサーナの帰還を喜んでくれている。リサーナの目から涙が溢れた。

 

 

「うぅ…ただいまぁ!!」

 

リサーナはそのままマカロフに飛びつき、抱きついた。

 

「ぬおっ!!?」

 

「おっと」

 

「おお、すまぬアミク」

 

その勢いでマカロフの頭が柱に激突しそうになっていたので、アミクが慌ててマカロフの後ろから押さえた。

 

 

…リサーナとアミクの胸に挟まれて鼻の下を伸ばしているのは見なかったことにしよう…。

 

 

泣きながら抱きつくリサーナを見る、ギルドのみんなの視線は優しいものだった。

 

 

 

『乾杯!!!』

 

リサーナが帰ってきたということで、恒例の如く宴が開かれた。むしろこれで宴を開かなかったら妖精の尻尾(フェアリーテイル)ではない。宴=妖精の尻尾(フェアリーテイル)みたいなところが出来上がっているので…。

 

ギルドにみんなにはエドラスのことももう話してあった。当初、みんな驚いていたがエルザやアミクたちの証言もあるので、すぐに信じてくれた。

 

だから、みんなエドラスについて色々聞いてくるのだ。ナツなんかエドラスでのナツを知られて笑い者にされ、「俺は見世物じゃねえ!!?」と怒鳴っている。

 

「アミクってあっちでは王女なのかよ!!?」

 

「女神だ、天使だ、とは思ってたけど…本当に大物になっちまったんだな…」

 

「でも、凄いエッチな事も言うんだぜ?」

 

『女の子が言うような言葉じゃなかったね』

 

「なにー!?アミクがー!?」

 

グレイの余計な一言のせいでチラ、チラ、とこっちを見てくるメンバーたち。

 

「だ、か、ら!!私じゃなくて向こうの私の話だってば!!」

 

何で同一視してくるのだ。とんだ迷惑だ。

 

 

ナツがギルダーツに挑もうとしてあっさり完封されたり、アミクが必死に否定していたりするのを見て、リリーの口から素直な感想が出る。

 

「さ、騒がしいギルドだな」

 

「第一印象はみんな同じなのね」

 

「新人は大体そう言う、の」

 

「楽しいトコだよ?」

 

リリーがギルドのメンバーを見回しながら、感慨深げに言う。

 

「ここに居る者全員が体内に魔力を持っていると言うのか…つまり、全員が王女みたいなものか」

 

リリーにとっては魔力を持っている人間など、エドアミクしかいなかったのだ。新鮮な気持ちだろう。

 

「そうだ、それがアースランドの魔導士」

 

「エルザ!」

 

そんなリリーに近づいてきたエルザに、彼は驚く。エドラスでは妖精の尻尾(フェアリーテイル)を狩っていたのに、ここでは妖精の尻尾(フェアリーテイル)の一員であるのが、違和感がある。

 

「そう言えば、確かリリーはエドラスでエルザと同僚だった、の」

 

「じゃあ、また一緒だね!」

 

ハッピーが嬉しそうに言うと、エルザがリリーに話しかける。

 

 

「しかし、大切なのは魔法そのものではない。魔法を持つ者の心。そうだろ? リリー」

 

「ふん、別人とは言え、知ってる顔が二人も居ると落ち着くもんだな」

 

 

アミクもエルザも、リリーにとって馴染み深い面子だ。

 

リリーが不敵な笑みを浮かべていると、ガジルの怒鳴り声が聞こえてきた。

 

 

「コラァ!!火竜(サラマンダー)!!音竜(うたひめ)!!小娘ぇ!!オレのリリーと青猫、黄猫、白猫勝負させろやぁ!!」

 

「あァん?」

 

「えー!?ガチのキャットファイトやっちゃうの!?」

 

ナツやアミクの声も聞こえる。それを見てウェンディは苦笑いを浮かべた。

 

「あんたもエライ奴に目をつけられたわね…」

 

「あぅ…」

 

ルーシィの同情の視線に縮こまるウェンディ。

 

そこで、ナツの「望むところだぁ!!」と威勢のいい言葉が返ってくる。

 

「望まないでよ…」

 

ハッピーが呆れてそう言うと、アミクが焦りだした。

 

「え!?やるの!?マーチも強いけど、リリーはヤバそうだよ!?」

 

「アミク…あーしは参加するつもりないから、なの」

 

本人たちの意志とは無関係にナツたちが盛り上がってきた。

 

「言っとくが、オレのリリーは最強と書いて最強だぜ?」

 

「ハッピーは猫と書いて猫だぞこんにゃろう!」

 

「うわーバカな会話…それを言うならマーチだって女と書いて(メス)なんだよ!」

 

「わざわざ混ざりに行った!?」

 

ルーシィが愕然となった。

 

 

「あのさ、オイラ一瞬で負けちゃうよ…」

 

「あーしも、リリーには勝てないと思う、の…」

 

「それ、私たちには勝てるって言いたいわけ?それに、やる前から諦めてどうすんのよ、だらしないわね」

 

シャルルが挑発するように言うと、ハッピーが「オイラ、期待されてる!!」とやる気を出した。

 

「…いや、そうなるとシャルルも戦うことになる、の…」

 

「…野蛮な行為は慎むべきだわ」

 

見事な手のひら返しだった。

 

 

「安心しろ、こう見えても向こうでは師団長を任されていた。無駄な喧嘩は怪我をするだけだからな、元からオレに戦う気ははない」

 

「意外と大人なのだな」

 

「相方とは大違い、なの」

 

エルザとマーチが感心すると、リリーが大人気なく騒いでいるガジルたちを見て「奴らが幼稚なのでは?」と呆れた。

 

「まぁ、エクシード同士、仲良くやろう。ハッピー、マーチ、シャルル」

 

「リリー!」

 

「よろしく、なの」

 

「フン」

 

エクシードたちの仲は良好のようだ。ウェンディはそっと胸を撫で下ろした。以前は仲が悪かったマーチとシャルルも関係が多少改善されたようで何よりだ。

 

 

「…で、なんで本人たちが喧嘩してんのよ」

 

シャルルの言葉にそちらを見ると、グレイやエルフマンたちも混ざってナツたちが暴れていた。

 

「アミクさんは…巻き込まれてますね」

 

ルーシィは、アミクが「ケンカはやめて〜!!」と懇願しながらエルフマンをしばき倒しているのを見て頰を引きつらせた。

 

「思いっきり薙ぎ倒してるじゃない。大丈夫なのかしら」

 

「アミクもきっと、浮かれているだけ、なの」

 

マーチも呆れたように言った。

 

 

 

そうしていると、「激しくぶつかり合う肉体と肉体!!ジュビアも!!」とジュビアが服を脱ごうとしたり、雷神衆も参戦しようとしたり、とかなりカオスなことになってしまった。

 

 

「やっぱりこうなるのね…」

 

ルーシィがため息をついて独り言ちた。

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)はこうでなくちゃね!!」

 

リサーナが可笑しそうに笑う。ケンカ=妖精の尻尾(フェアリーテイル)という面もあるので、彼女の言う事も(不本意ながら)同意できる。

 

目が合ったルーシィとリサーナは笑い合った。

 

 

 

「ところでナツ、向こうの儂はどんなんじゃった?」

 

マカロフが暴れているナツに問いかけると、近くで聞いていたアミクが答える。

 

 

「王様でもやってるんじゃない?きっと」

 

「ああ、そうかもな!」

 

ナツも笑顔で同意する。

 

アミクは改めてマカロフの匂いを嗅いで確信した。

 

 

エドラスの国王、ファウストこそマカロフだったのだ。

 

 

それに、アミクたちがエドラスから離れる直前、ファウストは目を覚ましていてアミクたちに問いかけたのだ。

 

「ギルドは、楽しいか?」と。まるでマカロフが言いそうな言葉。憑き物が落ちたかのような表情だった。敗北した事と、魔力がなくなった事で吹っ切れたのかもしれなかった。

 

さらにアミクには「…すまなかった」と謝ったのだ。それを思い出してアミクとナツは朗らかに笑い合った。

 

それを見たマカロフとギルダーツが顔を見合わせて首を傾けた。

 

「じゃあオレはどうだよ?向こうのオレはどんなだった?」

 

ギルダーツがワクワクした子供のような顔で聞いてくるが…。

 

「…そういえば名前すら聞かなかったね」

 

「ひょっとしたら蛙とか魚だったかもしんねぇな!」

 

「あー、あのでっかいカエルとかでっかい魚とかいたねー…案外そうかも」

 

「酷えな、お前ら!?」

 

ギルダーツがショックを受けた。

 

そうやってギルダーツをからかっていると、グレイやエルフマンたちが文句を言ってきた。

 

「ナツ! 何してやがる!」

 

「休憩こいてんじゃねぇ!」

 

「漢にあるまじき行為!」

 

「うわ、血気盛んだなぁ」

 

ヒートアップしてるメンバーたちに引いてしまうアミク。そこにフリードがやれやれ、とやってくる。

 

「自ら始めた争いに背を向けるとは…そもそも争うと言う言葉の意味を――」

 

「喧しい!!」

 

「フリードぉ!!?」

 

『あらら…』

 

なんの躊躇もなくぶっ飛ばされたフリードにアミクは悲鳴をあげた。ウルも呆れたようにため息をつく。

 

やっぱりこのギルド、無茶苦茶だ。

 

 

 

 

「ふわあ…」

 

夜。みんな騒ぎ疲れて寝静まっている中、アミクは欠伸をしながら起き上がった。

 

「みんな騒ぎすぎだよぉ…あ」

 

そんなアミクの目にリサーナたち三兄妹が、仲良く寄り添いながら寝ている光景が入ってきた。

 

(3人とも、よかったね…)

 

無性に嬉しくなり、心が温かくなったアミクは床で盛大にいびきをかいているナツを見た。

 

「よく寝るなぁ…」

 

「…あ、アミク」

 

その時、ルーシィが起き上がった。

 

 

「起こしちゃった?」

 

「ううん、ナツのイビキがうるさすぎて…」

 

「あはは…」

 

ルーシィはナツを見てから、アミクに視線を移す。

 

 

「…ねぇ…」

 

「うん?」

 

ルーシィが少し考えて口を開く。

 

「ナツも貴方も、早く自分のドラゴンに会えるといいわね」

 

「?…急にどうしたの?」

 

アミクが聞くと、ルーシィがリサーナたちの方を向いて答えた。

 

「ミラさんたちを見てると、アミクたちも早くイグニールやオーディオンに会いたいだろうなって…寂しい時もあるのかなって」

 

ルーシィの言葉に、アミクは彼女の優しさを感じた。アミクは優しく微笑んで、彼女にこう返す。

 

「きっと会えるよ。それに、そこまで寂しくはないよ?」

 

アミクは自分の周囲に寝転ぶ面々を見回し、ルーシィの方を見た。

 

「ルーシィやナツ、マーチたちがいるからね。きっとナツも同じ」

 

「そ、そう?」

 

ルーシィは照れたように頭を掻いた。

 

それから彼女はナツの顔を覗き込む。

 

「眠ってればかわいいトコあるのに」

 

「かわいいって…」

 

褒め言葉…なのだろう。

 

「か…」

 

「んー?」

 

「か…か…」

 

何やら寝言を言うナツの顔を穏やかな笑みで眺めるルーシィ。

 

「あ…やば」

 

アミクはルーシィにナツから離れるよう、警告しようとしたが…。

 

「『火竜の鉄拳』~♪」

 

「ぐっひゃあ!!?」

 

「ルーシィー!!?」

 

ルーシィはナツに寝惚けたナツに殴り飛ばされ、屋根を突き破って夜空に飛んでいってしまった。屋根に人型の穴が空く。

 

「あちゃー遅かったか…」

 

アミクはやれやれ、とナツに近付いた。ナツは天井に拳を突き上げた格好をしていたが、それがパタリ、と床に落ちる。

 

「かかかかっ!! 参ったかグレーイ!! ムニャ」

 

「夢の中でもケンカしてる…どんだけー」

 

アミクは呆れたようにため息をつくが、その顔は優しそうに微笑んでいた。

 

「…はぁ、会いたいなぁ、オーディオン…」

 

寂しさを感じないわけではない。オーディオンのことを思うと、会いたい気持ちが強くなるのは確かだ。

 

しかし、今この場にいる仲間も大切だ。彼らがいるから、アミクはこうして元気に生きていられるのだ。彼らには感謝してもし足りない。

 

オーディオンも妖精の尻尾(フェアリーテイル)も大好きだ。だから、オーディオンのことも焦らずにいようと思う。

 

「ナツ…私たちが付いてるからね…きっと、イグニールにも会えるよ」

 

「…かぁ…」

 

ナツが返事かどうかわからない寝言を発した。仰向けに倒れて、口を大きく開けているナツは、なんというか小さなドラゴンみたいだ。

 

「ふふ、確かに可愛いかも…」

 

 

 

 

「『火竜の咆哮』〜♬」

 

 

 

 

 

ボオオオオオォ!!!

 

 

アミクの上半身が黒焦げになった。

 

 

 

「…やっぱり可愛くないかも」

 

アミクは脱力しながら窓から外を見る。外では頰を腫らしたルーシィが目を回していた。

 

 

 

 

 

 

さて、エドラスの話をしておこう。

 

ミストガンーーーもとい、ジェラールは新しい王になった。

 

では、以前の王であるファウストがどうなったのかというと…。

 

「王都は新たな時代に入った。皆の心は未来に向いている。だが、君たちの存在を忘れてしまった訳ではない。然るべき処分を下し、ケジメをつけなければならない」

 

ジェラールがこの場に集まっている面々を見回した。

 

 

ここには、ファウストや、バイロ、ココ。そしてエルザやヒューズといった魔戦部隊隊長がいた。もちろん、アミクもジェラールの後ろから不安そうにその様子を不安そうに見ている。

 

つまりほとんどが今回の件の首謀者とその仲間たちである。

 

「わかっている」

 

ファウストが穏やかな表情で言った。もう、以前のように魔力に執着する姿は見えなかった。

 

 

「王として、ここに宣言する。ファウスト…あなたに王都よりの追放を命じる。二度と再び、王都へ戻る事は許されない」

 

「お父様…」「そんな…」

 

アミクとココが悲しそうに顔を俯かせる。

 

「エルザ・ナイトウォーカー…私の許可無くして、王都を出る事は許されない」

 

「処刑なら甘んじて受ける。好きにしろ」

 

「いや…民と共に、王都の再建に努めよ。バイロ、シュガーボーイ、ヒューズ。エルザ・ナイトウォーカーと同じ処分を下す」

 

「なっ!!?」

 

ジェラールの言葉にエルザたちは目を見開いた。

 

「スゲェっつーか、スッゲェ納得できねえよ!」

 

「んー、魔戦部隊はお咎めなしって事かい?」

 

「一体、どういうおつもりでしゅかな?」

 

ヒューズたちも抗議や疑問の声をあげるが、ジェラールはそれに対して簡潔に答えただけだった。

 

「罪を償うのだ」

 

「ならばいっそ処刑してくれ!! 生き恥を晒すのはゴメンだ!!」

  

「そーゆー事、わかる?」

 

「もとより覚悟は出来ているからね。んー」

 

「新しき王よ、これが我々の意志でしゅ。汲み取って頂けましゅかな?」

 

 

「ダメ!」

 

 

彼らの言葉を一蹴したのは、アミクだった。

 

 

「王女様…?」

 

「死んで…逃げるなんて…許さない…!生きて…罪を償う方が…貴方達にとって…罰、になる…でしょ…?」

 

アミクが厳しい表情でそう言うと、ジェラールが頷いた。

 

「そういうことだ。まぁ、アミクはこう言っているが、彼女は単純に君たちに死んでほしくないだけだ」

 

「ちょ、ちょっと…!お兄様…!」

 

アミクが赤くなって慌てた。さっきの厳しい表情も演技だったらしい。

 

「カハッ、んだよ、相変わらず甘い姫サマだな」

 

「んー姫さんらしいね」

 

「…ふふ」

 

「ぐしゅしゅ」

 

ちょっとだけ、場が和んだ。アミクは彼らを恨んでいないし、エルザたちも元々はアミクに対して好意的だったのだ。すぐに以前のように仲良くなれるだろう。

 

「とにかく…それが『罰』…!」

 

「だったら、私も一緒に罪を償うよう!」

 

確かに、ココも元々はファウストたちに協力していた。だが…。

  

「ならん。ココ、お前は己の良心に基づいて動いた。それは気高き行為だ。過去はどうあれ、その行為を無にするな」

 

「でも…」

 

ココは納得いってなさそうにしている。そんなココにアミクは言葉を投げかけた。

 

「どうしても…納得いかないって…言うなら…ココも…私たちを…手伝ってくれる…?」

 

「え…?」

 

アミクはポカンとするココに更に話しかける。

 

「貴方は…人を…笑顔に…することができる…だから…エドラスの人々を…笑顔にしてあげて…?それが…この国の為になる…」

 

「そ、そんなことで…」

 

「ううん…とても大事な事…魔力のない…この世界でも…笑顔でいれるってことを…貴方が…証明してあげて…?」

 

「王女様…」

 

ココは涙を浮かべた。

 

ジェラールはそれを見届けると、エルザたちにも言う。

 

「ココだけではない。魔力が無くとも、君たちには人としての素晴らしい潜在能力…そして、知識と経験がある。それを王都の復興に役立てて欲しい。もしもそれが辛いと言うのなら、私が与える究極の『罰』だ」

 

それでも、エルザたちは納得せずにゴネている。

 

「それは陛下―――ファウストも同じだろう。何故1人だけ追放する!!」

 

「…もうよい」

 

ファウストが静かにエルザたちを止める。

 

「達者でな」

 

「…お父様…」

 

ファウストはジェラールとアミクの方に歩み寄る。

 

「新たな王の寛大なる処分に感謝する」

 

そして、ジェラールに軽く頭を下げた。そして、アミクの方を向くと優しく笑った。

 

「結束力…」

 

「え…?」

 

「勇気…信念…私は大切な事を忘れていたようだ。あの若者たち――――アースランドのアミクたちに教えられたよ…」

 

「…っ」

 

「もちろん、お前にもな。アミク」

 

アミクを見るその瞳には、もう憎しみや嫉妬はない。穏やかな瞳で彼女を見ていた。アミクは目頭が熱くなった。

 

「お父様の…そんな笑顔…久しぶり…」

 

「そうだな…儂も、しばらくこの笑い方を忘れていたよ」

 

その時のファウストの顔は確かにアミクたちの父親の顔だった。

 

「…謝っても許されないだろうが…今まですまなかったな…」

 

「…お父様が…自分が囚われていたものから…自由になった…私は…それだけでも…嬉しい…」

 

あんな仕打ちをされてきたというのに、アミクはファウストに対して憎悪を一かけらも抱いていなかった。彼女はずっと父親の事を想ってくれていたのだ。

 

ファウストはやっとそのことに気付けた。

 

「お前は…今でも父だと呼んでくれるのだな。お前を兵器にしたりもしたというのに」

 

「もちろん…怒ってないわけじゃない…でも…私の…お父様であることには…変わりないから…」

 

アミクはボロボロと涙を流した。

 

「やっと…仲直りできたのに…離れ離れなんて…」

 

「…泣くな」

 

ファウストはそっとアミクの頭を撫でた。実に数年ぶりのことである。

 

「今生の別れではない。次に合うときは、立派な王女としての姿を、儂に見せてくれ」

 

「…わかり、ましたっ…!!」

 

 

 

どこまでも真っ直ぐで、人を信じ続けることができる少女。そのうえ、彼女が紡ぐ言葉は、人に希望を持たせ、力と勇気を与えることができる。彼女のその資質は、王女そのものだ。

彼女なら、良い王女となり、王を支えていけるだろう。

 

 

「ココ、これからもよく走れよ」

 

「はいっ…!!」

 

ココはファウストの言葉に涙ながらも頷いた。

 

 

 

ファウスト。エドラス王国から追放処分。

 

彼はまっすぐな顔つきで王都の外にある砂漠を歩いていった。彼の中には悲壮観はない。ただ、これまでの過ちを受け入れ、新しくやり直そう、という意気が感じられる足取りだった。

 

 

それを見送るジェラールとアミク。ジェラールはファウストの後ろ姿を見ながら天に人差し指を立てた。アミクがそれに気付く。

 

「お兄様…?それ…向こうの私と…ナツもやってたけど…どういう意味…?」

 

「アースランドの妖精の尻尾(フェアリーテイル)から教わったものだ。どんなに遠くに離れていようと、貴方をいつでも、ずっと見守っている、というメッセージが込められたものらしい」

 

「…そうなんだ…」

 

意味がわかったアミクは嬉しそうに笑った。

 

「さて、これから忙しくなるな。アミク、お前は休んでいてもいいんだぞ…?」

 

魔法が使えなくなり、貧弱かつ、ひ弱になってしまったアミク。今回の件で散々苦労したし、ひどい目にも遭ったし、無茶ばかりする彼女には大人しく休息をとって欲しいと思うのだが…。

 

「みんな頑張ってるのに…私だけ休む…!ダメ…絶対…!」

 

「そう言うだろうとは思ったが…」

 

はっきり言って、体が脆いアミクは心配だ。そんなアミクが何ができると言うのだ。

 

「そこで…お兄様に…頼みがある…」

 

「…言ってごらん」

 

 

そして、アミクの言う「頼みごと」にジェラールは目を剥くことになるのだった。

 

 

 

 

 

一方、エドラスの妖精の尻尾(フェアリーテイル)は王都に引っ越ししてきた。

 

引っ越しと言っても、もう魔法は使えないので男性陣がギルドを引っ張ってきたのだ。女性陣は中でゆっくり寛いでいた。

 

引っ越してからも大変だった。客の呼び寄せや相談などは女性陣が。力仕事は男性陣が。といった風に女性陣が男性陣を扱き使っていた。女って怖い。

 

「つ、疲れた〜…」

 

「いくらなんでも鬼すぎるぜ、ジュビアちゃんたちは…」

 

ナツたちは力仕事に疲れ果てて座り込んでしまった。女性陣の男性陣に対する扱いが酷すぎる。

 

「魔法が使えなくても、ギルドを続けるってのはいいけどさ…」

 

「こんなのブラックもいいところだよな…」

 

「ほら、そこ!!くっちゃべってないで手を動かす!!」

 

「「はいいい!!?」」

 

ルーシィに注意されて慌てて作業を再開するナツたち。まぁ彼らも文句こそ言っているが、楽しんでもいるみたいなので大丈夫だろう。彼等にとって、もうコソコソせずにギルドとして仕事ができるのは嬉しいのだ。

 

 

「ふぅ、車を運転したい…ん?」

 

思わずボヤいたナツの視界に見覚えのある少女が映り込んだ。

 

「え…?あれは…」

 

「おい、何ボーッとしてんだ、ナツ!!ヘッドロック掛けるぞ…ってアイツは…!!」

 

ルーシィもその少女に気が付いたようで目を大きく見開いた。

 

長い緑色のツインテールを揺らしている、気品ある美少女。

 

 

そう、アミク王女だ。

 

 

「お、おい!アイツ、アミクだよな!?なんでアースランドに帰ってねえんだよ!!?」

 

「ち、違います!!あの人はエドラスのアミクさんですよ!?この国の王女なんですよ!!」

 

「あ、そうなのか。この国のーーーーーーおうじょおおおおおお!!!?」

 

ルーシィの叫び声に他のメンバーたちが何事か、とこちらを見る。そして、ルーシィと同じようにアミクを見て硬直していた。

 

 

「あの方…確か、アースランドからいらっしゃった…」

 

「なんでこんなところに…!?」

 

「小さい方の私と一緒にいた女の子だよな?」

 

「いや、エドラスの方のやつらしいぞ」

 

「そうだ、思い出した!この方は王女だぞ!!」

 

「はああ!!?」

 

ウェンディたちがざわめき合っていると、アミクがナツとルーシィの方に近づいた。

 

「…どうも…初めまして…アミ…です…王女とかではありません…」

 

「え、えぇ…?」

 

訳が分からず混乱するルーシィ。王女だとか言ってたが、もしかしてなんか土下座とかしないと処刑されるのだろうか。いや、それよりも「王女ではない」と本人が言っているのだから、きっとお忍びだろう。いや、でもやっぱり無礼になるのか…?

 

「え、えっと…どうしたの…?」

 

彼女の面識のあるナツが恐る恐る聞く。すると…

 

「加入…希望者…です…」

 

「はい?」

 

ナツが間抜けな声を上げた。

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)…入りたい…です…」

 

・・・・・・・・

 

 

『はあああああああああああ!!!?』

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)全員がびっくり仰天して、街の住人たちが何事か、とこちらを見てきた。

 

 

「いや、いやいやいやいや!!王女様を入れるとか、立場的にダメでしょう!!」

 

「大丈夫…お兄様…国王には許可はとってある…」

 

「こ、国王…」

 

ナツはもう泡を吹いて気絶しそうだ。というか、もうお忍びの意味がないのでは?

 

「いや、あの…なんでウチに…」

 

ルーシィも焦りながら聞くと、アミクは事も無げに答える。

 

 

「私が…入りたかった…ていうのもある…けど…妖精の尻尾(フェアリーテイル)なら…私も色々手伝える…」

 

「え、えー…」

 

「いいんじゃない?」

 

唯一乗り気なのはミラだけだった。

 

「立場はどうあれ、妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入りたいのは本当みたいだし」

 

「まぁ、そうなんだけど…嬉しいんだけど…流石に王女ってなると…」

 

「…おっと…私…王女じゃない…」

 

「もう遅えよ!!」

 

ルーシィがアミクに詰め寄ると、ルーシィの胸がボヨン、となった。

 

それを凝視するアミク。

 

「おい、どこ見てんだ?」

 

「…処刑…」

 

「はいぃ!!?」

 

唐突の理不尽な判決に白目を剥くルーシィ。

 

「この○〇〇!!〇〇!!○〇〇を潰した〇〇〇〇野郎…!!」

 

※暴言のつもりは、多分ありません。

 

「ちょっとちょっと!!この王女様とんでもないこと言ってるよ!!」

 

間近でアミクの卑猥な罵倒を聞いていたナツが赤くなった。

 

「…失礼…取り乱した…」

 

「お、おう…」

 

ルーシィとしても、この妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入りたい、と言ってくれる少女を拒むようなことはしたくない。しかも、知り合いの顔とそっくりともなれば、だ。

 

しかし、王女ともなると流石に体面とかまずいのでは…?王の許可があるとはいえ。

 

「…援助も惜しまない…」

 

「む」

 

「…必要な材料とかあれば…分けてあげる…」

 

「むむ」

 

「…使えそうな資料だって…色々見せてあげる…」

 

「むむむ…」

 

次々と魅力的な提案をするアミク。ルーシィの心が揺れた。

 

「ナツ…王城で魔力じゃなくても…動かせる乗り物の研究・開発だって…考えている…」

 

「え?」

 

「できたら…ナツに運転させてあげる…」

 

「…!!」

 

ナツの髪がピン、と立った。

 

「お願いします…迷惑もたくさんかけるかもしれない…でも…私だって…みんなの力になりたい…エドラスをよりよくするために…尽力したい…そして…」

 

アミクはギルドを見上げて自分の想いを吐露した。

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)で…みんなと一緒に…頑張りたい…」

 

真っ直ぐな瞳でルーシィたちの目を射抜いた。

 

 

「…ったく、しょうがねえな!!」

 

ルーシィは仕方なさそうに腰に手を当てると、微笑んだ。

 

「…じゃあ!!」

 

「どうしても入りたいって言うんだ。でも、入るからには覚悟しろよ?ビシバシ扱き使ってやるからな!!」

 

「望む…ところ…!!」

 

ルーシィが挑発するように言うと、アミクもふんす、とやる気を出した。

 

「じゃあ、よろしくな!アミク王女!」

 

「…ここでは…アミク、でいい…ルーシィ…」

 

「わかった。よろしくな、アミク!」

 

数奇な運命もあるものだ、とルーシィは思う。自分たちに勇気を与えてくれたアースランドのアミクたちが帰っていったと思ったら、エドラスのアミク(しかも王女)が加入希望者として現れるとは。

 

 

ルーシィが新しくメンバーが増えたことを伝えると、どうやら他のメンバーも少しの不安はあれど、アミクのことを歓迎してくれるようだ。

 

ナツは未だにオドオドしている。アミクはそんなナツに近付いた。

 

「…私…ナツの運転する車に…乗ってみたい…」

 

「アミク…さん」

 

「車が…完成したら…お願い…だから…一緒に…頑張ろう?…妖精の尻尾(フェアリーテイル)で…!」

 

アミクの満面の笑みにドキッとなるナツ。だが、すぐにナツも笑みを返した。

 

「…うん!!」

 

 

こうして、王族がギルドに加入する、というエドラスでは前代未聞の出来事が起こったのだった。

 

 

魔力がなくとも生きていける。

 

 

これからも、エドラスの人々は逞しく、希望を持って自分たちの物語を築いていくのだろう。

 

 

 

 




次はアンケートのキャラと仕事行こうと思います。

さてどうしようかな。
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