妖精の尻尾の音竜   作:ハーフィ

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今回はリサーナ回だぜー。ついでにアンケートで2位だったナツとのお仕事です。

今回はスピーディーの終わらすために、ちょっと短いです。


久しぶりのチーム

「アミク、アミクー!!」

 

アミクがマーチと共にギルドでボケーっとしていると、リサーナが走って来た。

 

「一緒に仕事行こー!」

 

「おお!」

 

アミクはバッと立ち上がった。

 

「リサーナと仕事!?行く行く!!」

 

「久しぶりでしょ?実に2年ぶりだね!!」

 

「魔法はもうちゃんと使えるようになった、の?」

 

リサーナ帰還してから1週間以上経ったが、その間、彼女は魔法の練習をしていたり、リハビリがてら、エルフマンたちと仕事に行っていたりしたのだ。2年間もエドラスにいたので、魔法の使い方を忘れてないか、と心配したためである。

 

「うん!すぐに勘を取り戻したよ!!」

 

彼女の魔法はエルフマンやミラと同じ『接収(テイクオーバー)』だ。動物や獣人に変身できる動物の魂(アニマルソウル)の持ち主である。

 

「ナツやハッピーたちも誘って行こうよ。これで昔馴染みのチーム復活だね!」

 

「実はもうナツたちも誘ってあるんだー」

 

リサーナが悪戯っぽく言うと、ナツたちが「仕事行くぞ!!リサーナ、アミクー!!」「あいさー!!」と盛り上がっていた。

 

 

「リサーナとまた仕事ができるんだね!」

 

ハッピーが嬉しそうに言う。マーチも同意するように頷いた。

 

「懐かしい、の」

 

アミクたちはクエストボードの前に集まった。

 

「何受けるー?この面子だから討伐系にする?」

 

「いいじゃねえか!全部オレがぶっ倒してやる!!」

 

「相変わらず、ナツは血の気が多いなー」

 

ガヤガヤ話しながら依頼書を物色していると、とある依頼が目に付いた。

 

 

「お…!この『森バルカン』討伐ってのがちょうどいいんじゃない?」

 

森バルカンとはアミクたちが以前戦ったバルカンの亜種である。

 

「これにしようぜ!」

 

「賛成ー!」

 

ナツたちからも賛同を得られたので、依頼書を持ってミラの元に向かう。

 

「ミラ姉ー!久々にナツたちと仕事に行ってくるね!」

 

「あら。確かに、このメンバーは懐かしいわね」

 

ミラは懐かしむようにアミクたちを見回した。そして、少し心配そうにリサーナを見る。

 

「…行くのね?」

 

「うん!大丈夫だよミラ姉。ちゃんと無事に帰ってくるよ」

 

ミラにとってはリサーナが仕事に行くだけでもトラウマかもしれない。リサーナはそんなミラの心境に気付いて明るく言った。

 

 

「わかったわ…気をつけてね」

 

「行ってきます!」

 

アミクたちは依頼を受注すると、早速仕事に出かけた。

 

 

アミクたちはハッピーたちに運んでもらって依頼場所の森までやってきた。その前にこの近くにある村で村長から話を聞いたのだが、森バルカンが森から出てきて畑や田んぼを荒らしたり、女を攫って行ったりすると言う。

(その女性は無事、自力で逃げ出した)

だから、魔導士ギルドに依頼したのだ。

 

「確かここと似たような森でギルダーツと出会ったんだよね」

 

「あの時、ナツは森バルカンにボコボコにされてたよねー」

 

「あん時とは違えよ!!」

 

アミクたちは森の中を歩いていた。この森は以外と広く、森バルカンを見つけ出すのはちょっと苦労するだろう。

 

「そういえば、リサーナはエドラスでは武器で戦ってたんだよね?」

 

「うん。最初は慣れなかったけど、今ならうまく使いこなせるよ」

 

「『接収(テイクオーバー)』と魔法の武器を使い熟す魔導士…強そう!」

 

「ハイブリッドってヤツ、なの」

 

「なんか違うような…」

 

アミクたちが呑気に話しているとナツが不満を言った。

 

「出ねえじゃねえか!!出てこーい、ゴリラー!!」

 

「ナツー、そんなこと言ってたら余計に出てこないよー?」

 

森バルカンはバルカンの亜種なだけあって、警戒心も強い。無駄に知恵も回るので狡猾な方法で攻めてくることもあるのだ。

 

当然、『接収(テイクオーバー)』も使えるので、油断していると取り込まれかねない。

 

「前みたいな変異種じゃなきゃいいけど」

 

「どんな奴が出たってオレが燃やしてやるから安心しろよ!」

 

「森ごと燃やさないようにね〜」

 

アミクはナツを諌めると、口から超音波を発した。

 

「『反響マップ』」

 

これを使えば、森バルカンがどこいにいるか知ることができる。

 

「あ、私も。『接収(テイクオーバー)』!ラビット!」

 

リサーナは魔法を使って兎に変身。

 

動物の魂(アニマルソウル)!なの!懐かしい、の」

 

「2年前と遜色ないくらいに使えてるみたいだね」

 

これで耳を澄まして、バルカンを探るつもりなのだ。足も速いので速攻で攻撃を仕掛けることもできる。

 

「…見つけた!あそこ!」

 

アミクが木々に隠れている所を指差した。

 

「任せて!」

 

リサーナがそう言うと、彼女は兎の姿のままでアミクの指差した方向に走っていくとそこを思いっきり蹴飛ばす。

 

「ウホォ!!?」

 

アミクの言う通り、森バルカンが蹴飛ばされて転がり出てきた。

 

「バレたか!!隙を見て女だけを攫おうとしてたのに!!」

 

「また出た!!変態ゴリラ!!」

 

バルカンが悔しそうに歯噛みしていると、ナツが獰猛な笑みで飛びかかっていく。

 

「やっと暴れられるな!!リサーナ復活記念の一発だ!!『火竜の鉄拳』!!」

 

「ホガア!!?」

 

顔面を炎のパンチで殴られる森バルカン。ぶっ飛ばされた先には、アミクが待ち構えていた。

 

「はい、リサーナ、パス!『音竜の旋律』!!」

 

「ガボォ!!?」

 

今度はアミクがバルカンの脇腹を蹴り抜き、横にぶっ飛ばした。その先には魔法を使おうとしているリサーナの姿が。

 

「『接収(テイクオーバー)』!!ペンギン!!」

 

「ぶぎゅう!!?」

 

リサーナが巨大なペンギンに変身して飛んできたバルカンをその巨体で押し潰した。

 

「よし!まずは1匹だ!!」

 

「ナイス、リサーナ!!」

 

「ぶっつけ本番で連携成功したね!」

 

アミクたちは互いにハイタッチで喜び合った。

 

 

「さすが、息のあった連携、なの」

 

「2年間もブランクあったはずなのに、そんなの感じられないね!」

 

元々、この3人(ついでにもう2匹)は2年前まではよく一緒に仕事に行っていた仲である。

 

息の合った連携プレイも幾度もしており、リサーナも体が覚えていてくれたのだろう。

 

 

「この調子で森バルカン5匹討伐!頑張ろう!!」

 

「おっしゃあ!!燃えてきたぁ!!」

 

「ナツはホントに細心の注意を払ってね…」

 

勢い付いたアミクたちはどんどん先に進むのだった。

 

 

 

それから順調に3匹の森バルカンを倒した。これで計4匹だ。

 

「あと、1匹!いい調子だね!」

 

「なーはっはっは!!オレにかかりゃ、こんなの楽勝だぁ!!」

 

「私たち、でしょ。あーあ。結局木を何本か燃やしちゃったし…」

 

喜ぶリサーナ。調子に乗るナツ。ため息をつくアミク。

 

三者三様の反応。こう言う感じも、昔と変わっていなかった。

 

 

「油断しないで、なの。順調なときに限ってとんでもないことが起こるもの、なの」

 

「また、そーゆーフラグ臭いこと言う!!」

 

アミクが頭を抱えた。

 

「アミクもマーチも心配しすぎだよー。ナツたちなら大丈夫だって!」

 

「そーだそーだ!」

 

ハッピーやナツは余裕こいているが、アミクやリサーナたちは警戒を怠らなかった。

 

「よーし、最後の1匹、出てこーい!!この森を燃やされたくなかったら、さっさとオレに倒されろー!!」

 

「君は私の話を全然聞いてないね!!?」

 

脅してして成立してかも怪しい。

 

吠えるナツを抑えるアミク。そんな光景を見て、リサーナは嬉しそうに目を細めた。

 

「ああ…この感じ…本当に懐かしいなぁ…」

 

エドラスにいた頃も何度も夢見ていた。また、こうしてナツやアミクたちと冒険できることを。

 

(帰ってきてよかった…)

 

やっぱり、自分はこっちの世界の住人なのだと実感したリサーナであった。

 

 

そんなリサーナの感傷に水を差すように、地面が揺れた。

 

「やっとお出ましか!」

 

「そっちから出向いてくれるなんてね」

 

ナツたちが身構得ている間にも地響きはドンドン大きくなってきていた。

 

「…なーんか、フラグ回収しちゃいそうな予感…」

 

「奇遇だね。私も」

 

アミクとリサーナは顔を見合わせて苦笑いを浮かべた。

 

 

そして、地響きの正体が姿を現わす。

 

 

 

「で」

 

『でっかーーーーーーーー!!!?』

 

 

普通のより遥かに大きな森バルカンだった。普通のに比べて3倍はでかい。

 

「オレの子分をいじめてくれたのは、お前らか?」

 

巨大森バルカンがアミクたちを見下ろして鼻息荒く問いかけてきた。鼻息もでかい。

 

「そうだって言ったら、どうすんだよ?」

 

ナツが挑発するように聞き返すと、巨大森バルカンがその巨大な手を振り上げた。

 

「当然、仕返しだ!!ついでに女供も頂く!!」

 

「そこはブレないね!!?」

 

アミクのツッコミとともに巨大森バルカンの手が振り下ろされた。

 

大振りなので、余裕を持って避けるアミクたち。地面に手が直撃し、地面や木が大きく揺れる。

 

「アミク!!リサーナ!!空から攻撃だ!!」

 

「うん!」「りょーかい!」

 

ナツとアミクはハッピーとマーチに飛ばしてもらい、リサーナは腕が翼であるハーピーに変身して飛んだ。

 

「ウホ!!空に逃げても無駄だぞ!!」

 

巨大森バルカンはそう言い放つと、アミクに向かって飛び上がった。

 

「うわ!!?」

 

「頂きぃ!!」

 

そのまま、アミクを叩き落とそうと腕を振り上げた、途端。

 

 

「『接収(テイクオーバー)』!!ええい!!」

 

急接近してきたリサーナが猫人に変身して、その鋭い爪で巨大森バルカンの目元を抉った。

 

「め、目がぁ!!?」

 

堪らず目を抑える巨大森バルカン。リサーナはさらに追い打ちをかける。バルカン体を伝い、彼の足元のまで駆け抜けながら爪であちこち切り裂いていったのだ。最後に足を切り裂き、バルカンの体勢を崩した。

 

 

「イダァッ!!?」

 

「今だよ!」

 

「ありがと、リサーナ!!ナツ、一気に決めるよ!」

 

「おう!アレか!!合わせろよアミク!!」

 

二人の会話から、ナツたちが何をしたいのか察しがついたハッピーとマーチが、同時に巨大森バルカンに突撃した。

 

「離すよナツ!」

 

「行っちゃえ、なの!」

 

ハッピーたちが離すと、ナツとアミクは慣性に従って巨大森バルカンの顔面まで進んでいく。

 

そして、アミクは音を、ナツは炎を拳に纏った。

 

二人の、お馴染みの合体魔法(ユニゾンレイド)

 

「「『火炎音響滅竜拳』!!!」」

 

二つの拳は、巨大森バルカンの顔面に直撃した。巨大森バルカンは悲鳴も上げられないまま、ゆっくり倒れ込む。

 

「やった!!」

 

それを見たリサーナが喜んでいると、彼女の近くにナツとアミクが着地したーーーーーーーーアミクは足を滑らせて尻餅をついていた。

 

「最高だよ二人とも!!」

 

「リサーナこそナイスアシストだったよ」

 

「やっぱりこのチームもいいな!」

 

ナツが嬉しそうに言うと、ハッピーやマーチもやってきて同意する。

 

「さすが!」

 

「リサーナ、全然強かった、の」

 

リサーナは照れ臭そうに笑った。

 

「エルフ兄ちゃんに修行してもらったかいがあったよ」

 

「そうだね。この分ならリサーナも…なんか、焦げ臭くない?」

 

アミクが何かが焦げるような匂いを嗅いだ。

 

「まさか…」

 

アミクたちは恐る恐る振り返る。

 

 

そこには、木から木へと炎がどんどん広がって行く光景があった。先程の攻撃で木に炎が燃え移ってしまったらしい。

 

 

「結局こうなるのー!!?」

 

「ヤベ、燃えちまった!!なっはっはっは!!」

 

「笑い事じゃなーい!!」

 

このままでは山火事になって被害が大きくなってしまう。十分大ごとなのだ。

 

「あはは、こうして何かやらかしちゃうのも変わってないんだね」

 

「リサーナ、懐かしがるもんじゃないよ!!?はい、早く鎮火する!!」

 

「あいー!!」

 

「なの」

 

 

 

 

アミクやリサーナたちの尽力もあって、被害はそこまで大きくならずに済んだ。

 

しかし、ちょっと叱られ、報酬が減ってしまったのはご愛嬌。

 

 

 

 

 

その後。アミクたちは打ち上げに寿司屋にきていた。有名な回転寿司である。

 

 

この寿司屋は妖精の尻尾(フェアリーテイル)のメンバーの一人がバイトをしている所でもあるのだが…。それは置いておく。

 

 

「というわけで、お疲れ様でしたー!」

 

『おー!!』

 

アミクが音頭をとると、リサーナたちが手を挙げて応えてくれた。ハッピーやマーチは早速貪るように寿司を食べ始める。

 

「リサーナ、お疲れー。久しぶりに私たちと仕事だったけど、どうだった?」

 

アミクがたまごを頬張りながら聞くと、リサーナは面々の笑みで言い放った。

 

「もちろん、楽しかったよ!アミクもナツも前より強くなってたみたいだし、やり易かったなぁ」

 

「ほほほへむがじゃきく!!」

 

「ナツ、ちゃんと口の中のもの飲み込んでから言ってよ」

 

アミクが5皿目のたまごを手に取りながら注意した。

 

「ごくん、また一緒に仕事行こうな!!」

 

「そうだね。これまで出来なかった分もやっていこうよ。3人揃ったんだし」

 

ナツとアミクが言うと、リサーナは薄っすらと涙を溜めて頷いた。

 

「うん…二人とも、大好き!!」

 

「もぐもぐ…でぇきてるぅぅぅ〜」

 

「もぐもぐ…どっちが?」

 

黙々と食べ続けていたハッピーたちがそう呟く。

 

アミクが10皿目のたまごを口に放り込んでからリサーナに言う。

 

「今日は私とナツの奢りだからじゃんじゃん食べてよ!!」

 

「おい!!なんでオレもなんだよ!!?」

 

「男なら甲斐性見せなさい!!」

 

「…アミク、たまごばっかだね」

 

 

こうして、リサーナやナツとの仕事は無事に終わったのだった。

 

 

 

 




原作ではリサーナの出番が少なかったので、ちょっとリサーナ回を入れて見ました。

寿司食べたい。

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