『プロローグ』
脳に直接響くような金切り音。
それが聞こえ始めたのは何歳の頃だったかはもう覚えていない。
「ここは」
四歳の時、個性がないと言われ期せずして自身の目指す道を立たれてしまった少年は、十二歳になった今日文字も光も建物も全てが真逆になっている不思議な世界へと迷い込んでいた。
「………物音が聞こえる?」
少年は誰かいるのかと物音のする方に足を運ぶ、すると
「ヒッ………」
自分の体の3倍程の巨体を持った蜘蛛のような怪物が、自分と同じくらいの背丈をした狼のような怪物に糸を絡め、今まさに捕食しようとしてる所だった。
(た、助けなきゃ)
そう思うも少年の身体は動かない。
直感、本能で分かる。
近づいたら食い殺される、と。
震える体、ふと狼と眼があった。その眼はどこか助けを求めているようで
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉ」
少年は思わず、飛び出していた。
それからの記憶はない。
――――――――――――――――――――
「ここは………?」
意識を失った少年が気がつくと、そこは何処かの部屋の一室。周りを見るとさっき助けようとした狼が礼儀正しく座っていた。
「よかった、無事だったんだ」
少年は無事だった事に安堵し、こちらに気づいて近づいてきた狼を撫でる。撫でると言っても毛並みがある訳でも無いそれは何処か機械のようだった。
それでも少年のそれが狼は気に入ったのかこちらに身体を預けてくる。そんな傍から見るとほのぼのした雰囲気を作っていると
「驚いた。モンスターが人間に懐くなんてな」
いつの間にか少年の目の前に優しそうな雰囲気をした赤髪に赤眼で眼帯をした青年が立っていた。
「えっと………貴方が……助けてくれたんですか?」
少年は驚きつつもそんな希望的観測で尋ねてみると青年は肯定する。その事に安堵しつつ、ホッと胸を撫で下ろす少年。
「安堵するのは早いぞ少年。君には二つの選択肢をとってもらうけどいいかな?」
「?」
少年はその質問に意味が分からないと言ったように首を傾かせる。
「一つはこのまま忘れて帰ること。二つはこの世界を知って戦うこと。前者は今までの自分に逆戻り、でも後者を選ぶと、君は誰も知らない、誰からも感謝されない、されど〝英雄〟に「やります!!」………いいのかい?」
「僕はずっと〝英雄〟に憧れてます」
「そうか。なら、話そう、この世界の真実を。ならば鍛えよう君がこの世界で生きていけるように。丁度君の体質、それに君には既にパートナーがいるようだしね」
それから青年はその世界、ミラーワールドの事とモンスターについて話し始めた。
少年は頭が良く回転も早い。
だからこそ話を聞き終えた少年は本質的にも本能敵にもそれが真実だと理解し、恐怖する。でも、自分が誰かのためになるのならと青年の手を取った。
「そう言えば自己紹介がまだだったね。僕は«神崎 風(かんざき ふう)»」
「僕は、緑谷 出久です」
「よろしく出久。その子の名前は決まってる?」
「はい。〝ストライク・レオ〟です」
青年が指して、少年が名付けた狼は嬉しそうに飛び跳ねた。
「それじゃ、厳しくなるとは思うけど、本当に誰からも知られないけれど明日からよろしく」
再度、少年が青年の手を取った。
―――――――――――――――――――――――
「はい!3キロ追加!!」
「了解ですぅぅぅぅ」
緑谷出久が神崎 風と関わり始めて二年、彼は十五にも満たない少年がやるにはかなりハードな身体能力強化を行っていた。
「表の世界でもヒーロー目指してんだろ!!お前『鏡の世界で長期滞在できる体質』なだけで無個性なんだ、そんなんじゃいざって時に死ぬぞ!!!」
基礎体力強化はもちろんの事、腕立てや背筋等の筋力トレーニング、体幹トレーニング、身体ができ始めてからは戦闘訓練、回避技術、受け身。ビシバシと鍛えていく。
「はい、そこはこの公式使う!空気椅子崩スナ!」
「は、はいぃ!!!」
挙句勉強の強化。アイテムの設計知識、物の使い方を叩き込んでいく。
「呼吸は大事にしろ。呼吸の乱れは意識の乱れ。今はレオの食事も俺が面倒見てやってるが、俺もそこまで暇じゃない」
「分かってます!!!」
学校の都合上休日と平日の夜となる風の特訓。
トレーニングや意識方法、かなりこと細かく教えてくれる彼の教えを漏らさないようにノートに纏めて行く出久。出久は風の指導を受けない時も必死に努力した。レオもまた自分の主になるであろう少年のために必死に戦い成長して行った。
そんな成果もあってか彼の肉体は二年という短い歳月で中学生、高校生としても充分過ぎるくらい完成していた。
そして今日
「よし、出久。こいつを」
緑谷出久は神崎風より、狼マークの描かれたデッキのようなものを渡された。
「…………ありがとう、ございます」
出久はお礼を口にしてから直ぐ
「〝ストライク・レオ〟、僕と運命を共にしてくれる?」
デッキからあるカードを引き抜いて、愛狼へと尋ねる。ストライク・レオと呼ばれた狼は当たり前だと言わんばかりにそれを待つ。
「よろしくレオ」
そして緑谷出久はストライク・レオと契約し、何も描かれて居なかったカードに狼のイラスト(AP5000)が浮かび上がり、デッキが銀色にコーティングされた。
「祝え!世界を超え表と裏を行き来する!知られる事の無き英雄!!その名も仮面ライダー………」
「デク」
「仮面ライダーデク、誕生の瞬間である!!!」
こうして中学2年にして少年は逃れられない戦いへと足を踏み入れた。