「身体作り始めたんだ」
「………あっそ」
石ころみたいだと思ってた奴からの宣言。どうせ続かないと思っていたが日をまたぐ事に筋肉の付き片、体力が以前と変わっていて本気だとわかる。………苛つく。
「ハァハァ……ハァ…」
(本気の眼………)
たまたま奴の姿が見えたからつけてみたら、汗だくになりながらも必死に身体を鍛えてる少年の姿が映る。しかもそれが無駄になっていない事を日に成長していく少年を見ていてわかる。苛つく。
「先生、放課後体育館借ります」
その日、偶然机に置いてあった三冊のノート。少年はそれを苛立ち反面興味本位で開く。するとどうだろうか、効率的な筋肉の付け方から始まり、こんなサポートアイテムを作ったらどうだろう、挙句クラスメイトの個性があったらどう使うかまでこと細かく記してあった。
「………これは」
その中には当然自分の事も書いてあった。それもほかとは違い何年も書き直されてきたのか何ページも。
『かっちゃんは僕の目標』
ページの最後にはそんな事が書いてあるもんだから、少年は更に苛ついた。その反面、心の何処かでノートの持ち主を認めていて尚苛つく。そんな折
「僕は………普通科目指すよ」
ノートの持ち主がそんな事を言うものだから
「おいクソデク、ツラ貸せや」
少年はノートの持ち主、緑髪がトレンドマークの少年、緑谷出久に話しかけていた。
――――――――――――――――――――
緑谷出久が仮面ライダーデクとして成った次の日、彼は幼なじみである少年に海浜公園へと呼び出されていた。
「えっと………話って何?かっちゃ」
「戦え」
「へ?」
有無を言わさず爆破を使って接近戦を仕掛けてくる彼に対して、慌てながらも
「避けるよなぁ、テメーは!!」
「ま、ま、ま、まって、ちょっとまって、なんで!?」
しっかり避ける出久。
「ンなもん、テメーが鍛えてるからに決まってんだろうが!!知ってんだよ!!!ずっと石ころだったてめーが二年前からずっと汗水垂らして努力してた事をよぉ」
そんな出久に少年は攻撃の手を休めずに連続して爆破を仕掛けてくる。
「ずっと!俺の後ろ付いてきて!俺と同じもんに憧れて!!ずっと誰かを助けたいって思っちまうてめぇがッッ!!何もしてなかったてめぇがッッ!!死にものぐるいで特訓してたの知ってんだよ!!」
「なっっ!?」
出久は少年の言葉にあっちの事がバレたのかと危惧し、デカい一撃を貰いそうになるが何とか避ける。そんな出久の懸念は外れていて。
「テメーのノート見たんだよ」
「へ?」
少年の口から思わぬ言葉が出て、気を抜いてしまう。が少年からの追撃はない。
「あそこに書かれたこと毎日やってンだろ?それにヒーローについて丁寧な分析に、穴が少ないサポートアイテムの開発設計図、俺はそこまでやってねぇ、才にかまけてやろうとすら思わなかった。正直すげぇと思っちまった」
「なっ!?かっちゃん!!?」
「戦えクソデク、テメェが凄いと思った俺がテメェを倒す。俺はテメェの先にいる。ずっとだ!ずっと俺はテメェの前に行く!そうすりゃ」
「いやその言葉は最後に聞くよ……それより本気で行くよ。かっちゃん」
そこから先はお互い本気の喧嘩。
速攻で間合いを詰め右の大振りからの爆破、それを出久は後方に跳躍して躱す。
「おせぇ」
爆破を利用し距離を詰める少年、その勢いを利用しようとタイミングを見計らって右の回し蹴りを繰り出す出久だったが、見て反応した少年が爆破を使って回避した上で、空中で回転するように蹴りを繰り出し、それをすんでのところで回避する。
「っぶな」
「よけんな、デク!!」
回避しては攻め、攻めては守る。
お互いに一切の気を抜けない攻防。
いつしか二人は笑っていて。
「ハァ………ハァ………」
「ハァ…………ハァ………」
三十分くらいたった頃だろうか二人の息が荒くなり、呼吸が整わない。
それでも攻撃の手は休めない。
「終わりだクソデク!!」
少年の気力も集中力も個性も全部出し尽くした最後の一撃は
「右…!!………もらっ………なっ」
「あめぇ!」
右の大振りをフェイントにした、左の爆破。これにより、出久の体制が崩され、そのまま少年の右ストレートが出久の顔面へと炸裂した。
「ハァ………ハァ………クソッ………俺の勝ちだ」
「ハァ…………ハァ…………僕の負け…………か」
勝負を終え、爆破の影響か一部更地と化した海浜公園で大の字になる二人。
最初に倒れたのは出久。
よってこの勝負は出久の負けだった。
「俺は強ェだろ」
「…………うん」
それでも二人の表情は晴れている。
「………胸糞悪いが俺はテメーの目標なんだろ?」
「………うん。君の強さはオールマイトと同じくらい僕にとって鮮烈なんだ」
「だったら………普通科なんて甘えた事言ってねぇで………せめて、俺と同じ土俵に立つくらいしやがれ。俺は常にその上を行く」
本気でやり合って、やり合ったからこそ少年は緑谷出久の事を認めた。認めたからこそ許せなかった。
「………でも」
「じゃねェよ。クソデク。テメーは俺に食らいついてきた、個性云々じゃねぇ、食らいついてきた………いや、食らいつけていた。そいつはテメーが努力したからだろ?だったら自分を下げんなや」
ヒーローを目指しながら、ヒーロー科を諦め普通科を目指す。そんな彼を許せなかった。
「………かっちゃん、でも僕………わっ」
それでも卑屈になる彼の首元を、いつの間にか立ち上がっていた少年が掴む。
「こんだけ言われて何が不満だってんだァ!?アァ!?」
「僕は……弱いし」
「ンなもんたりめェだろ。俺はお前より強い」
「だったら」
「けどな、覚えてないかもしれんがテメェ昔俺に手ェ指し伸ばしただろ。弱い癖に」
それは幼少期の記憶。
「あの時のお前をふとした瞬間、思い出してイラつくんだよ。何でこいつは無力なのに助けようとすんだってな」
とある川で転んだ時手を差し出された記憶。
「……それは、だって」
それは出久にも覚えがあった。
「助けたいと思っちまうんだろ?」
「………うん。考えるより先に助けたいって」
「だったら、一度しか言わねぇから耳の穴かっぽっじってよく聞け」
少年は出久の事を立たせ、向かい合う。そんな彼の真剣な眼差しを出久はしっかりと見つめた。
「俺が、爆豪勝己が勝って救う!!テメーが、緑谷出久が救って勝つ!!テメーが勝てないやつは俺が倒す!!いいな!!」
「…………うん。うん。なら………なら僕は君の救えない所を救う。それだけは譲れない!」
「それでいい。それとデク、今のお前は『頑張れ』って感じのデクだ」
こうして緑谷出久は少年、爆豪勝己と同じ道を歩み始めた。そしてそんなタイミングを見計らったかのように
「……っていい風に閉めてるとこ悪いんだけど、ちょっといいかな?中学生二人」
青年が現れた。
「誰だテメェ」
「………師、師匠」
「君達さぁ、あんだけ爆破………法律破っといてお咎めなしって思ってる?」
「あっ」
青年の言葉にサァーっと血の気の引く二人。
「なんて、爆破の音は私の個性『防音にする』って個性で消しといたから知られることはないから安心して」
「………マジですか師匠」
「おいデク、誰だこいつ」
「この人は神崎 風さん。僕を鍛えてくれている人、です」
「マジか」
爆豪はその事に驚いた。だってそうだろう、どう見ても高校生くらいにしか。
「見えないって思ったらノすぞ?」
「すいませんっした!!!」
土下座。とても綺麗な土下座。気がつくと横で出久も土下座していた。
「そうかしこまらなくいいよ。とはいえ私もヒーローの端くれ、君達のこれ見て見ぬ振りってのはちょっと駄目な気がするかな」
爆豪の横でガタガタ震える出久。その様子から神崎風の恐ろしさが垣間見えた爆豪。
「なので、許可貰ってるからここら一帯をきっちり片付けようか。ヒーローはほら、奉仕活動も仕事って言うじゃん?」
「ここら一帯を!?」
「期間はそうだな。雄英高校試験まで、綺麗な海を再生させよう。二人でいいね?」
当然、二人に拒否権は無いのだが
「は、はい!!」
「お、おぅ!!」
それを分かってるのか否かわからないが元気よく返事する二人。
「元気があってよろしい。とそうそう、爆豪君、君と出久が戦ってるとこ見て、鍛え方のコツとかいろいろまとめといたからよかったら参考にしな。っても君の場合その天才的な感覚とか反射神経で必要無くなるとは思うけどね」
それから爆豪に一冊のノートを手渡す風。爆豪は貰ったノートを見て戦慄した。一冊びっしり書いてあったことも驚きだがそれ以上にさらっと読んだだけでもわかる出久のノートに負けず劣らずの内容の濃さ。今はもとより今後必要な技術まで事細かに記してあった。
「あ、あざっす」
爆豪は素直に礼を言っていた。
「それから出久。お前、必殺技作っとけ。もう少しで出来んだろ?あれ。それと××が近いしアイツが腹空かせてる。初陣してこい。いいな?」
「は、はい!!」
「お、おい、何処に」
こうして足早とどこかへ掛けていく出久。そんな背中を戸惑い見つめている爆豪の肩に手を置いて風は話しかける。
「爆豪勝己君。出久の事頼むよ。あの子はこれから更に過酷な道を進む事になるだろうから。そんな時友の存在は大事なのさ」
優しい声色。爆豪はそれが無個性でヒーローになる事の険しさを指しているだろうと思い、素直に頷き
「わぁってる」
そう宣言した。
ちなみに
「ここに××がある」
出久は走り去ったあと直ぐ、鏡に向かってデッキをかざす。するとベルトのようなものが腰に現れ、出久は変身ポーズをとって
「変身ッ」
デッキをベルトに差し込み、仮面ライダーデクとなりミラーワールドへと入り
「こいつか」
緑色でかつ人形の蜘蛛型のミラーワールドモンスターと対峙する。蜘蛛型ミラーワールドモンスターは出久と相対するや否や鉤爪で攻撃してくる。出久はその鉤爪を最小限の動きでかわしながら、カードを抜き取って右腕にあるレオの頭部を象った感じの形状をしている召喚機『ストラバイザー』にカードを差し込む。
『SWORD VENT』
すると機械音と共にレオが現れ、レオの尻尾を模したような日本刀をだして駆け抜ける。蜘蛛型モンスターは鉤爪が交わされた事から距離を取り今度は口元から日本刀を奪うように糸を吐くも、絡め取られる前に全て切り裂かれる。たじろぐ蜘蛛型モンスターは逃走を図るように今度は螺旋状に糸を吐くが
「行くよ、レオ!!」
『STRIKE VENT』
出久の取り出した二枚目のカードを読み込まれ『ウルフシュート』の口が開く。打ち込むように出久が右腕を出すと開いた口から青い炎が放出され、吐き出された蜘蛛の糸諸共蜘蛛型モンスターを焼き払う。炎の中衰弱した蜘蛛型モンスターに対して出久は距離を詰め、左手に装備し直していた日本刀でその腹部を貫き、蜘蛛型モンスターは爆散した。
「レオ!」
倒したモンスターから現れた光の玉をレオに食べさせ、出久は見事初勝利を収めたのだった。