「……かっちゃん気づいた?」
「ったりめェだ」
昼休憩に入る少し前、騎馬戦の結果発表があってすぐ出久と爆豪の二人はミラーワールドの中へと潜っていた。出久程ではないが爆豪もミラーワールドでの滞在時間は長い。それ故にこうして変身せずに契約モンスターに引きずり混んでもらって生身で入る事もある。出久はともかく爆豪は個性を使えるメリットが発生するため必ずしもそれが悪い訳では無い。
「来たか………って生身で大丈夫なのか!?」
「慣れてますから」
そんな二人と同じくミラーワールドに潜って緑色のカメレオンを型どった仮面ライダー〝ベルデ〟が合流し、流れるようにオルタナティブも合流する。
「遅くなった」
というのも出久・爆豪の二人は轟が氷のフィールドを作った時、表面に黒いフードを被った人物がいたのを目撃したため、木村及び物造にメールを送り、合流して現在に至ると言う事だ。
「こっからだ」
四人が合流しUSJの前まで来ると、まず爆豪が中から妙な気配を感じ、他の三人も同じような気配を感じる。気配を感じてすぐ出久・爆豪は変身し仮面ライダーとなる。
「時間もない行くぞ」
二人が変身出来たのを確認し四人のライダーは勢いよくUSJの扉を開けた。
「………あいつ」
扉を開けてすぐ広場にフードを被った人物を視認し警戒を強める四人。
「来たか」
そんな四人の登場をまるで予期していたかのようにフードの人物が話し始める。その声は男性のような女性とも取れる声でUSJ全体に響き渡る。
「デク・トラスト・ベルデ……オルタナティブ」
ただ名前を呼んだだけなのにフードの人物から発せられる声に何処か威圧感があり、思わずびくっとなる四人。
「戦え」
威圧感のある声から出る言葉は威圧感があり、四人は聞かされている感覚に陥る。
「最後の勝者だけがたった一つのどんな願いをも叶える事が出来る」
四人に向けているようで別の誰かに向けられた言葉。
「戦え 最後の一人になるまで」
「んなもんてめぇの都合だろ!!」
「僕達は人を守る為にライダーになったんだ!!」
言葉を言い終える前に出久と爆豪は互いに武器を装備しフードの人物に襲いかかるも、その攻撃は謎の障壁に阻まれ、
「クソっ」
「っあ」
「大丈夫か!?二人共!!」
逆に障壁を広げられ元いた位置まで吹き飛ばされる。
「戦え 願いある者達よ」
フードの人物は何事も無かったかのように言葉を区切り、まるで初めからそこにいなかったかのように姿を消した。
―――――――――――――――――――――
出久達がフードの男と遭遇したと同じ頃、とある部屋の一室で
「ふんふーん」
巨体の黒い生物を解体している男がいた。
黒い生物の身体は解体された箇所から否応なしに再生されていく。
「超回復って便利だな」
男は解体した腕や足を鏡に向かって投げつける。鏡が割れると思いきやそんな事は無く表面が歪んで黒い生物の部位を通していく。
「まだまだ強くなってもらわないと」
男が言うと鏡の表面から多くのモンスター達が今か今かと待っている。男は切っては投げ切っては投げを繰り返す。やがてモンスター達は満足したのか鏡の表面から映らなくなる。それを見届けた後
「それで?願いってのはなんでもいいのか?」
「戦えインペラー。勝てばどんな願いでも叶える事が出来る」
「プレイヤーの人数は?」
「いずれ分かる」
フードの男に話しかけフードの男は淡々と答え、男が何かをいう前に姿を消した。
「そうかい…………面白くなってきた」
男………羚羊は誰もいなくなった部屋で不敵な笑みを浮かべ、いいタイミングで携帯が鳴り響く。
「とりあえず、あの二人には声掛けとくか…おっ、いいタイミング」
『久しぶり羚羊。何やら面白い事になってんな』
電話先の相手はよく知る人物。
「あぁ。折角だ、〝駿〟お前も合流しろ」
『ってこたぁ参加すんのな?俺達が生き残るまで共闘でいいよな?』
「いい。少なくとも二人強い奴がいる。そいつら殺るまでは、な」
『了解。………なら来るかわかんねぇけど〝タイガ〟の奴にも声掛けとくわ』
「面白くなってきた」
通話を終えた羚羊は再度不敵な笑みを浮かべた。
――――――――――――――――――――――
影でそんな事があったことを知らない出久達がミラーワールドから戻ってきて今後について話し合おうとすると昼休憩終了のアナウンスが流れる。
「オリエンテーションは参加出来なさそうだね」
「はなっからするつもりはねぇよ」
出久と爆豪、物造は急いで会場に向かうと
『最終種目の発表の前に予選落ちの皆に朗報だ!!あくまで体育祭!全員参加のレクリエーション種目も用意してんのさ!そして見よ!!』
テンションの高いマイクのアナウンスが流れたと同時に、会場にぞろぞろとA組、B組、サポート科の発目などが姿を見せる。
『本場アメリカからチアリーダーも呼んで、より一層盛り上げ…て……ん?何だアリャ…』
「なーにやってんだアイツら?」
そんな中ふとマイクと相澤は、何かに気づき眉をひそめる。それは…
『どーしたA組!!?何でチアの格好してんだ!?!』
A組の女子全員はチアの格好をして登場した。
「…………」
沈むような表情のA組女子。それを見た峰田と上鳴はガッツポーズをする。そんな中で葉隠だけテンションあげていた。
『さぁさぁ皆楽しく競えよレクリエーション!それが終われば最終種目!!』
A組女子のみ沈んだ空気を無視しつつマイクがアナウンスをかける。それにより最終種目は一体一のガチバトルという事が分かり、主審のミッドナイトがトーナメントの対戦相手をくじ引きで決めようとしたのだが、そこで尾白が挙手をして辞退を申し出る。
「俺、辞退します」
理由は騎馬戦での出来事をほとんど覚えていないから出る権利がないと言う。尾白と同じチームで騎馬を務めていたB組の庄田二連撃も同様の理由から棄権を申し出る。
「気にしすぎだよ!」
「そんなんだったら私だって」
皆はせっかく見てもらえる機会なんだから思い直せというけれど、尾白はプライドが許さないという事で庄田は体育祭の趣旨と反するのではと主張する。
『何か妙な事になってるが』
主審のミッドナイトはそれを受け、
「そう言う青臭いのは………好み!!」
(好みで決めた)
といって受諾して二人の辞退を認めた。
尚、物造は参加するとの事。
「繰り上がりは五位の拳道チームだけど……」
「そういう話で来るんなら……ほぼ動けなかった私らよりアレだよな?な?」
その代わりに拳道の提案から鉄哲チームが上がることになり、B組の鉄哲徹鐵と塩崎茨が入る事になった。
こうして十六名の出場者が決まりモニターに対戦相手が表示される。
緑谷 vs 心操
轟 vs 瀬呂
塩崎 vs 上鳴
飯田 vs 発目
芦戸 vs 常闇
物造 vs 八百万
鉄哲 vs 切島
麗日 vs 爆豪
「あんただよな?緑谷出久って」
「………ん、あ、よもッッ」
モニターに相手が表示され出久の対戦相手の心操が出久に話しかけ、出久がそれに応じようとした所尾白に口を塞がれる。そして尾白から忠告を受ける。
とまぁこんな事があったりしたが
(緑谷は上がってくるだろうな……)
「飯田って貴方ですか?」
「そうだが………」
「………八百万」
「麗日、か」
「ひぃっ」
皆思い思いに対戦相手を見つめるのだった。
――――――――――――――――――――――
個人戦までの間、生徒達がレクリエーションを行っている時
「俺の分も頑張ってくれな」
「うん」
出久は尾白から話を聞いたあと関係者以外立ち入り禁止の文字が書かれている部屋に来ていた。
「おせぇぞ」
「ごめんごめん」
その部屋にはオールマイトを初めとして、物造、木村、爆豪、拳藤の五人が集まって座っていた。オールマイトは本来の姿を取っていたが木村、物造、拳藤の様子から既に説明を終えた所だと納得する。
「緑谷君も来たことだし今後について話そうか」
今後というのは言うまでもなくミラーワールドの事と戦いについてだ。フードの男の残した言葉が本当なら既にゲームは始まってしまっている。
「まず、君達はゲームに参加する気なのかい?」
オールマイトの問いに一泊置いて出久から順に
「始まってしまった以上はやるしかありません」
「どの道俺らも手詰ってたんだ。やるしかねぇよ」
「俺はどっちでもいいけど………どっちにしてもモンスターは倒さないとって思ってるししばらくはやるつもりです」
爆豪、物造が答える。その瞳からは相応の覚悟が伺えた。
「………ここは一人のヒーローとして止めるべき所なんだろうけど………彼らが俺達より長く居られてかつ戦いに慣れてるのは事実。参加してるライダーの数も不明………だから頼らざる終えない状況……歯がゆいな」
「………木村君もそう見るのか」
木村もまた一人のヒーローとして参加を決めている。オールマイトは呆れたように、そして自分の不甲斐なさを嘆くように呟く。
「それって……人を殺すって……事だよ、ね?」
そんな中ライダーでもヒーローでもない拳藤は恐る恐る問いかける。
「それは」
「今まで以上にギリギリの戦いになる。殺られる前に殺るしかねぇなんざざらにある。だからそうなる可能性は低くねぇ」
「そう………なんだ」
言いくそうにする出久の代わりに爆豪が答える。
「…ごめんなさい……少し外します………」
その場から逃げ出すように拳道は部屋を後にする。
「追って、かっちゃん」
「んで俺が。それにまだ話は……っておい」
「いいから」
その後を追わすように出久は爆豪の身体を押して外に出す。爆豪は不本意ながらも頭を掻きながらそれを追った。
「……続けていいのかい?」
こくりと頷いた出久は物造とアイコンタクトを取り、意図を察した物造はボイスレコーダーを設計して録音ボタンを押す。
「………とりあえず、しばらくはライダーに警戒しつつ可能ならデッキの破壊及び契約者の確保、モンスター討伐を行うって事でいいかい?」
残った者の中に意を唱える者はいない。
「緑谷少年。二ついいかい?」
方針が決まった所でオールマイトが話題を切り出す。一つは何故木村の事を黙っていたのか。という質問だった。
「………疑っていたんでしょうね。木村さんの事。デッキの入手についてどうにも出来すぎてる気がしたんです」
「爆豪君も言ってたが……まぁそうだろうな。それに関しては理解出来る。オールマイトの秘密を考えれば尚更、慎重になるのも分かる。そこは俺に免じてこれ以上の言及はやめておいてくれないか?」
「分かっているさ……ただ、確認はしておかないとね」
オールマイトは一つ目の話をそこで区切る。問題は二つ目。オールマイトは爆豪の発言に引っ掛かりを覚えていた。
「先の爆豪少年が言ってた〝手詰まり〟とは何の事だい?」
「そう言えば言っていたな」
手詰まりと言うことは何かを探っていたということでありオールマイトはそこに気がついた。
「……師匠の行方ですよ」
「神崎君の………?」
「神崎とは誰の事だい?」
出久は事情を知らない木村と物造に掻い摘んで説明する。二人は納得するようにうなづいた。
「他のライダーと遭遇した時真っ先思い浮かんだのが師匠でしたから、僕とかっちゃんは師匠の居場所と過去を追ってるんです。最もほとんど手掛かりは無いですけどね」
遠くを見つめる出久の視線、オールマイトはそれ以上何も言えなくなる。
「バトルに参加していれば師匠は必ず現れます。断言してもいい。師匠なら多分僕達以上にあのフードの男について把握してるでしょうから」
それだけ言い残し物造にボイスレコーダーを託して出久は部屋を後にした。物造はあとを追うように部屋を出ていった。残されたプロ二人は
「神崎君………か」
「信用出来るんですか?その人」
「分からない。だが緑谷少年の言うように手詰まりである事は確か……か」
「……俺達は想像以上に重いものを少年に背負わせてるのかも知れませんね……」
ため息と共にそう呟いたのだった。
突っ込み所は多いと思うけど、USJ襲撃脳無ってモンスターの餌には丁度いいよねっていう。