「これが、さっき言ってた妹を助ける方法なのか?」
平日の昼下がり、テレビの中継が雄英高校の体育祭を取り上げている中、そんな明るさとは無縁の路地裏でスカジャンを着た若い不良風の青年が黒い革ジャンに黒のジーパンを着た青年がバイクに座りながら会話をしていた。
「そうだよ。さっきも言ったけど……その為には俺を含めた連中を倒さないと」
「やってやる。妹助ける為なら例えあんただって倒してやる」
革ジャンの青年はスカジャンの青年にデッキを提示し、スカジャンの青年はそれを受けとると。
「…………?羚羊さん、これが?」
「そうだよ石橋。っと丁度鏡の中で戦ってる奴がいるし、漁夫の利ってのもあるから行ってきなよ」
そんな中丁度いいタイミングで耳鳴りがして、石橋と呼ばれたスカジャンの青年が鏡を見ると、そこにはコウモリのような形容をしたライダーが見たこともない化物と戦っていた。
「どうした?行かないのか?」
「やるさ、やってやる!!」
その事態に震える石橋を羚羊と呼ばれた自分は試すように煽る。それに呼応するように石橋はデッキをビルの窓にかざし
「変身!」
黄色き蟹の戦士仮面ライダーシザースへと姿を変え戦いへと参戦するのだった。
「さて、情報収集頼むよ?」
それを見届けてから羚羊は先程の事を思い出す。
「さぁて、あの二人はまだ置いておいて、〝駿〟との合流まで時間あるし、せっかくだから保須で見つけたライダーでもどついておきますか」
バトルロワイヤル開始宣言の後、羚羊は一人保須で一度見かけた事のあるライダーの情報を探ろうと保須市へと出向いていた。
「とはいえどうしようか。このデッキもう持ってる意味もないしなぁ」
その手に握られているのは、自身が使っているインペラーを除いた二つのデッキ。一つは以前出久と交えた事のあるものでもう一つはまだ何も描かれていないデッキある。羚羊自身インペラー以外のデッキの入手経路はイマイチよく分かってないがそんな事は彼にとってどうでもいい事だった。
「ん、ありゃぁ………」
「そんな!じゃぁ妹はもう………」
そんな溢れたデッキをどうしようかと迷っていたところ、医師のような男にすがりついている青年を見つけ、
「君の妹悪いの?」
「………誰だ?あんたには関係ないだろ?」
丁度いいやと思い声をかけた。当然の如く相手は警戒してきたのだが、
「君の願いが叶うかもしれない方法を知っている者」
「………!?」
願いのバトルのことを説明し危険は伴うが見返りも大きいと相手を出来るだけ事実を交えて説明する。青年は懐疑的ながら話を聞いているたびに
「別に殺す必要は無い。君は勝ち残りさえすればいいんだ。それにモンスターを放置しておくといずれ君の妹もただじゃすまないかもしれないよ?」
「それはだめだ!!あいつは、死ぬべき人間じゃない!!」
「だったら、どうする?」
「お前の話は嘘が多い気がする。でもだけど………それなら………妹は助かるかもしれない、だから」
それしか道はない考えるようになり羚羊の巻いた餌に食いついたのだった。
「ま、契約はしといたし文句言われる筋合いはないな」
とまぁ利用されている事に気づかない青年を見てる哀れと思いつつも
「っても俺の所持してる三つのデッキのうち一個をあげたんだから出来るだけ情報引き出してくれよ。使い捨ての駒?」
出来るだけ情報引き出してあわよくば倒すかあるいは共倒れてくれと思いながら
「変身」
自分の愛用してるデッキを取り出し鏡の中へと入っていったのだった。
―――――――――――――――――――――
羚羊の思惑を知らない石橋は一人丁度モンスターを倒したところである青いコウモリのような姿をしたライダーを見て
「やる。あいつを助けるためだ」
今一度覚悟を決めて、デッキからカードを取り出し片腕に蟹の爪を型どった形状の武器を装備して。
「おりゃぁ!!」
「あ?」
鏡から帰ろうとしていたコウモリのライダーに切りかかる。コウモリのライダーは突然の奇襲にも関わらず反射的に右に装備していたレイピアのような武器でそれを弾く。
「悪いが俺の願いのために倒されてもらう!!」
「ハァ………」
召喚機と蟹の爪を交互に絶え間なく切りかかるシザース。一見優勢に攻めているように見えるそれをコウモリのライダーはしっかりレイピアで受け流しつつ、何も持っていない手でカードを取り出し
『NASTY VENT』
とあるカードをレイピアの開く部分にセットし塚の部分を押すと、機械音と共に周囲に超音波のような音が鳴り響く。
「っぁ!?ぁぁッ」
シザースは頭をわるような音に堪らず両手で耳を抑えてしまう。そんな隙をコウモリの事ライダーが許すはずもなく、レイピアで斬りかかった後全力で蹴り飛ばし、
『FINAL VENT』
追い打ちをかけるようにウイングランサーを構えて敵に突撃し、契約モンスターであるコウモリをウイングウォールとして背中に装備してジャンプ。空中でウイングランサーを軸にウイングウォールで体を包み黒い錐のような姿に変えて激しくドリル回転しながらシザースを襲う。シザースは超音波の影響が残りつつも何とか咄嗟にカードを引き抜き同じようにファイルベントを差し込むも、契約モンスターを呼び出したとほぼ同時に
「ッ…………か…………あ…………は………」
その体を契約モンスターごとコウモリのライダーに貫かれ変身が解除されてしまう。石橋は薄れゆく意識の中で、かつての光景を思い出す。
―――――――――――――――――――――
それはまだ妹が元気だった頃。
父が早くに他界し、母も敵の犯罪に巻き込まれて他界した石橋は
『お兄ちゃん、見てみて』
『ん?どうした、うぉ』
『お兄ちゃんとお揃い!』
『…………ありがとな』
個性もさる事ながら誰にでも優しい妹を絶対守ると心に決め日々を過ごしていた。辛くも幸せな日々、妹が成人するまでは少なくとも続くと思っていた日常。だけど終わりは唐突にやってきた。
「おい!!?千枝!!大丈夫か!!?」
「大………丈夫」
「んな訳あるか!!病院行くぞ!!」
突然苦しみ出した妹にただならぬものを感じた石橋は妹を担いで、どんなに急いで走っても担いだ者に衝撃が渡らないという個性を用いて走り、
「お……兄………ちゃん………」
「大丈夫、助けるからお前は、大丈夫」
「迷惑……けて……めん……ありが………とう」
病院に駆け込んだ。だがその時には既に石橋の妹は意識を失っており、
「それじゃ妹は助からないって言うんですか!?」
妹は未知の病気に犯されており、どんな技術、どんな個性を用いても治す事が出来ず、それどころか最初に意識を失ったその日から二度とその瞳を開けることは無かった。
――――――――――――――――――――――
石橋にとって妹を助ける事は何よりも成しえなきゃ行けないことだった。だからこそ
「だ……は……妹…………を…………」
それでもと震える手を必死に伸ばすが
「行け」
抵抗虚しく、力尽き腕が地面につく。そしてその肉体はライダーの指示を受けたコウモリのモンスターに食べられたのだった。
「…ハァ……私欲のために戦うライダーも………ハァ………粛清対象だァ」
コウモリのライダーはそれを見届けてからそんな言葉を零した後自身の限界を示す現象が起きたので、そのまま近くの鏡から出ていったのだった。
それを遠くから配下のモンスターと眺めていたインペラーは
「おっかねぇな。…ヒーロー殺し……仮面ライダーナイトってとこか」
当初の目的通りに情報収集を終えて
「シザース。ご苦労様。ま、安心しとき、君の妹が続けて治療が受けられるようちゃんとしとくからさ。最も仮に目覚めた時君がいないと知った彼女がどう思うかは知らないけど、ね」
既に脱落した石橋にそんな言葉を送ってミラーワールドから戻って行った後
「もしもし黒霧?見つけたよヒーロー殺し」
自身の所属する組織へと連絡を入れたのだった。
二人が現実に戻った後、石橋のいた場所に落ちていたデッキをフードの男が拾い上げ、力を込めて砕き
「仮面ライダーシザース 死亡
残るライダーは ??人」
誰もいないその場所でそんな事を呟いたのだった。
仮面ライダーシザース
石橋 蓮二 死亡
残るライダー ?人