鏡とヒーローアカデミア   作:華無月

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ヘドロ事件/無個性の技

『ヘドロ事件/無個性の技』

 

出久と爆豪が和解してから数ヶ月、彼らは三年生となり、神崎より出された依頼は八割方終わっていて、海浜公園は昔からして見れば有り得ないくらい綺麗になっていた。

 

「また××。師匠が人手足りてないって本格化してる気がするな」

 

そんなある日、緑谷出久はいつものようにミラーワールドへ趣き、モンスターを倒し表の世界に戻って来てそんな事を呟くと

 

「Mサイズの隠れ蓑」

 

「………なっ」

 

ヘドロの敵が突然現れ、出久の事を取り込もうとする。咄嗟の事、モンスターとの死闘で疲れていた出久は対応が遅れてしまい「やばっ」と身体をこわばらせる。

 

「貰った」

 

ヘドロが出久に飛びかかろうとした次の瞬間、突然マンホールが勢いよく飛び上がり、煙の中からよく知る人物が現れた。

 

「もう大丈夫だ少年!!私が来た!」

 

煙の中から現れたのは出久が最も憧れ、尊敬するヒーロー、オールマイトであった。

 

「TEXAS SMASH!!」

 

ヘドロはオールマイトの拳によって出久を捉える前に吹き飛ばされる。

 

「オールマイト?」

 

突然憧れの人物が目の前に現れ、しかも自分を助けてくれたことに出久は驚きのあまり硬直する。

 

「ああ、少年。少し待っててくれないか?話はあとでするから」

 

オールマイトはそう言うと空のペットボトルにヘドロ敵を詰め始める。

 

(液体の個性。バラバラに散らばらせたのなら何かに入れるのが効率的。か)

 

出久は冷静にオールマイトの行動を分析し、改めてオールマイトを尊敬する。

 

「さて、待たせて済まない少年。そして巻き込んですまなかったね。いやー、私もオフだから慣れない土地に浮かれてしまってね。HAHAHAHAHA!」

 

「って事はこの敵はオールマイトが追っていたのですね」

 

「そうだよ………っともう行かないと」

 

「ちょ、ちょっとだけ待ってください、まだ聞きたいことが」

 

「すまない、ヒーローは時間との戦いなのさ。それじゃ今後とも応援よろしくね!」

 

そう言って凄まじい勢いで飛んでいくオールマイト。オールマイトがみる街がみるみる小さくなっていく。

 

しかし、オールマイトは左足に違和感を感じた。まさかと思って左足をみるとそこにはさっき助けた少年が必死にしがみついていた。

 

「コラコラ!!熱狂が過ぎるぞ!?」

 

「それでも僕は」

 

(マジか少年)

 

そう思いながら、確かにこの速度で万が一少年が振り落とされたら不味いと思い、近くの降りられそうなビルを探す。そこでオールマイトは自身の口から血が出ているのに気がづいた。

 

「んじゃこれで私はこれで少年」

 

「ま、待ってください。無個性でもヒーローになれますか!?」

 

「No.待たな……(ん?無個性?)………あっ」

 

突然オールマイトの身体から白い煙が出たかと思うと、オールマイトの体が萎み骸骨のような人がいた。

 

「…………それが本来の姿なんですね」

 

出久はいつも映像で笑ってるオールマイトの本来の姿がこちらだと理解する。

 

「この際だから言うけど肯定だ。間違っても帰ってネットに書き込むなんてしないでくれよ」

 

それからオールマイトは自身のシャツを捲る。そこには息を呑むような手術の跡があった。

 

「五年前・・・敵の襲撃で負った傷だ。呼吸器半壊、胃袋全摘、今や私のヒーローとしての活動時間は1日約三時間程なのさ」

 

「五年前………って事は〝個性を奪う者〟ですか」

 

「なっ!!?」

 

出久の返答に今度はオールマイトが驚愕した。それもそのはずで、その名を知っているものは極小数しか居ないのだから。

 

「君は知っているのか!?」

 

「僕が、と言うより師匠がですかね。と言っても知ってるのは個性を奪う個性があって、今のオールマイトと戦えばお互い無事じゃすまなかったって事くらいでそれ以上は何も」

 

「………そ、そうか。私の事もそうだがそいつの事も」

 

「分かってます」

 

真っ直ぐな出久の言葉に安堵するオールマイト。それから一泊置いて、オールマイトは言葉を発する。

 

「………さっきの質問だったね。分かっているとは思うけど『プロはいつだって命懸け』。個性が無くても成り立つなんてとてもじゃ無いが口に出来ない」

 

「そう……ですよね。お時間取らせてしまい、すみませんでした」

 

「いや構わないよ。ところで君は無個性なのかい?」

 

こくりと頷く出久。

 

「そうか…………それは険しい道を選んだね」

 

「分かってます。でもそれでも僕はヒーローになります。険しくても厳しくても命懸けでも、それでも『助けたい』って思っちゃうから。それに同じ道をいく友達がいるから」

 

「(少年、強い目をしているな)………そうか。さっき厳しいこと言ったけど一つ『君のその夢を応援する』。これは私個人の意見だ。覚えておくといい」

 

「………はいッ」

 

「それと一つ、機会があればその師匠って人に合わせてもらえないか?奴について知ってるのなら話が聞きたい」

 

「分かりました、伝えておきます」

 

こうしてオールマイトは出久の前から姿を消した。消したと言うより超高速で移動したのだが、見えないのだから変わらない。

 

――――――――――――――――――――

 

オールマイトから激励とサインを貰った出久は、

 

「さて、もう少しラストスパートだから頑張らないとな」

 

ほとんど八割型綺麗になった海浜公園の事を思い出しながら帰路へと付いていた。

 

「な、なんだ!?(……ってあれはさっきの)」

 

するといきなり絶え間なく爆発音が聞こえてきたと思って音のした方向を振り向くと、先程オールマイトが倒したはずの敵が見知った顔の少年を飲み込もうとしていたのが見えた。

 

「(あいつは多分打撃技が通じない)でもだからって」

 

気づけば出久は走り出していた。

 

「バカヤロー!止まれ!!」

 

途中対応に追われていたヒーローが出久を止めようとするが、それよりも早く出久はヘドロの目の前へと現れる。

 

(来んな!!クソデク!!)

 

(大丈夫!かっちゃんアレやるから合わせて!!)

 

(そういう事じゃ…………チッ)

 

ヘドロに捕まり以前もがく爆豪は目の前に現れた見知った顔の少年と短くアイコンタクトをとった。爆豪が出久のやると思われることを察したと分かった瞬間、

 

「すぅぅぅぅぅぅ」

 

出久は思いっきり息を吸いこみ肺に空気を溜め込んで

 

〝爆ッッッッ!!!〟

 

思いっきり大声を出した。

それによって音による衝撃波が起きる。

 

「ハァ………ハァ…………」

 

これぞ、緑谷出久が鍛え上げた肺を生かした声帯砲である。

 

『っ、なっ』

 

ヘドロとはいえ会話が成立する以上聴覚があるヘドロは爆弾のような大声を受けて案の定、硬直した。そしてその隙を見逃す爆豪ではない。すぐさま自分の出せる最大火力をぶっぱなし、ヘドロからの拘束を緩まり、爆豪はヘドロから自力で脱出した。そうして駆けつけるのはもちろん

 

「ドアホ!!インターバル置いてねェだろうが!!それに音が分散するわ!こんな所で使うな!!!」

 

「ご………め゛ん」

 

出久の元。

爆豪は声帯砲で動けない出久の元へと駆けつけその首元を掴んで爆破を使い距離を取った。ヘドロは硬直が解けたのか怒り混じりに爆豪達へと距離を詰める。クソっと苛立つ爆豪だが、そんな彼らの元に

 

「全く無茶する少年だ。だが、安心しろ、私が来た」

 

平和の象徴、オールマイトが笑って駆けつて

 

「……ったく、君の方がよっぽど私よりヒーローじゃあないか……!君を応援すると言っておいて………己が実践しないなんて!!

 

『プロはいつだって命懸け!!!』

 

DETROIT SMASH!!!」

 

空をも割りうる一撃がヘドロの敵を吹き飛ばした。

 

「スゲェ!オールマイト!」

 

「拳ひとつで天気を変えやがった!」

 

「オールマイト!」「オールマイト!」「オールマイト!」

 

ヘドロを倒し市民の称賛を受けたオールマイトは、横目で友に肩を借りる緑髪の少年を見つていた。

 

――――――――――――――――――

 

ヘドロを倒し事後処理に入るヒーロー達。そんな中、爆豪は称賛を、出久は注意を受けていた。

 

「全く、君が無理をする必要は無かったんだ」

 

そんな折、

 

「そうだぞそれに個性の無断使用は」

 

とあるヒーローが口にしたその言葉に、爆豪がとても静かに切れて

 

「おい。そいつは無個性だ」

明らかに怒気を含んだ声でそういった。無個性と言う言葉に周囲は驚いたがそんな事よりも怒気を纏った爆豪に恐怖を覚えた。

 

「それにだ、テメェらは人の事いえねぇよ。無個性のこいつが前に出たのにテメェらは仲良しこよしの譲り合いだァ?ざけんな。ヒーローなんだろ?手が出しにくい状況?それを何とかすんのがヒーローだろ」

 

じりじりと詰め寄る爆豪はヒーロー達を無視して未だ少し声ががらっとなっている出久の元に行き、その手を掴んで

 

「行くぞ、デク」

 

その場所を後にした。

 

「あ゛の。ヘドロな゛ら、消化器と、か使え゛たと思い、ます」

 

去り際爆豪をフォローするかのようにそんな呟きを残して、少年達は今度こそその場を後にした。

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