鏡とヒーローアカデミア   作:華無月

6 / 24
雄英試験/合格発表

あれから七ヶ月という時間はあっという間に過ぎ去っていき、今は三月。出久は雄英高校の校門前に立っていた。

 

「落ちたら殺すぞ。クソデク」

 

「……分かってる」

 

爆豪はそう言って試験会場に入っていく。出久も後を追うように向かおうとするが、緊張からか不意に身体のバランスを崩しそうになる。

 

「っと、と?」

 

するとどうだろうか、バランスを崩しそうな身体が浮遊感に包まれる。

 

「大丈夫?」

 

「え、あ、はい」

 

声をかけられて、その方向を向くと一人の少女が申し訳無さそうにしているのが分かった。

 

「私の個性。ごめんね?勝手に。でも転んじゃったら縁起悪いもんね」

 

「いや、ありがとう!おかげで緊張が解れたよ」

 

「なら良かった!頑張ろうね!!」

 

「うん!」

 

出久は自分を助けてくれた少女とそんな挨拶を交わし、気を引き締めて試験会場に向かった。

 

して、試験会場。

 

雄英の試験は倍率が300を有に超えている。そして試験会場には雄英に入るため多くの受験生が受けに来ていた。既に筆記試験が終わり、次は実技試験。実技試験の説明はプロヒーローであるプレゼント・マイクが行うのか、マイクを持ってたっている。

 

「今日は俺のライブへようこそ!エヴィバディセイヘイ!」

 

そんなプレゼント・マイクがいきなりそんなことを言い出すものだから、当然反応は薄い。

 

「こいつぁシヴィ―――!!!受験生のリスナー!実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!!アーユーレディ!?」

 

同じく全く薄い反応。

 

「入試要項通り!リスナーにはこの後!10分間の『模擬市街地演習』を行ってもらうぜ!持ち込みは自由!プレゼン後は各自指定の演習会場に向かってくれよな!O.K?」

 

「案の定、同校協力はさせねぇってことだな」

 

「だね。気を引き締めないと」

 

「演習場には”仮想敵”を三種、多数配置してありそれぞれ『攻略難易度』に応じてポイントを設けてある!各々なりの“個性”で“仮想敵”を行・動・不・能にし、ポイントを稼ぐのが君達リスナーの目的だ!もちろん、他人への攻撃等アンチヒーローな行為はご法度だぜ!?」

 

プレゼント・マイクの事を簡単に言うとつまり力で敵をねじ伏せろってことだ。

 

「質問よろしいでしょうか?」

 

「なんだね、メガネ君!」

 

「プリントには四種の敵が記載されています!誤記載であれば日本最高峰の恥ずべき痴態!我々受験者は規範となるヒーローのご指導を求めてこの場に座しているのです!」

 

(確かにいい指摘だし気になるだろうけど………それは多分誤りじゃない)

 

メガネ男子の質問に違うと思う出久。

 

「オーケーオーケー。受験番号7111くん。ナイスなお便りサンキューな!四種目の敵は0P!そいつはいわばお・邪・魔・虫!各会場に一体!所狭しと大暴れするよう『ギミック』よ!戦わず逃げることをお勧めするぜ!」

 

「ありがとうございました!失礼いたしました!」

 

出久の想像通り、誤表記では無かった。

 

「俺からは以上だ!!最後にリスナーへ我が校の”校訓“をプレゼントしよう。

かの英雄ナポレオン=ポナパルドは言った!『真の英雄とは、人生の不幸を乗り越えていく者と!!

 

更に向こうへ!”Pius Ultra!!”

 

それではよい受験を!!」

 

こうしてプレゼント・マイクによる実技試験の説明は幕を閉じた。

 

――――――――――――――――――――

 

~試験会場C~

 

「……広い」

 

出久は金のかかった企画に驚きを隠せないながらも周囲を見渡す。すると、先程出久の事を助けてくれた少女の姿が見えたのでお礼を言いに行こうとすると

 

「その女子は精神統一をしているのではないか?」

 

「あっ………それもそうか。さっき助けてもらったからお礼言おうと思ったんだけど邪魔しちゃ悪いよね。止めてくれてありがとう。メガネの人」

 

「あ、えっと。こちらこそすまない。そういう理由だったんだな。………お礼なら終わってから言うといいさ。今は目の前の試験に集中だ」

 

「そうだね。頑張ろう」

 

少女にお礼を言いそびれたもののメガネの男子と言葉を交わし、出久も精神統一を図る。

 

〝ハイ、スターート!〟

 

突然の言葉に一同唖然とする。

 

「どうしたぁ!?実践じゃカウントなんざねぇんだよ!!走れ走れぇ!!賽は投げられてんぞ!!?」

 

その言葉を境に受験生は一斉に走りだした。

 

「……爆発音。音の大きさからしてみんなが走り出した方向には密集しているだろうけど密集してるだけで周りの対応が遅くなる。敵が不透明なら尚更だ。っだからちょっと遠回りしよう」

 

出久は少し遅れながらも耳に手を当て音を聞きとり冷静に分析し、他の受験者達が走った方向から外れた方向に走っていく。

 

(…………右。声帯砲はまだ使わないほうがいいから)

 

『標的補足、ぶっ殺す』

 

「すぅぅぅぅ、はっ!!」

 

標的に補足された出久は敵のレーザーをかわした後即座に間合いを詰め、敵の機械に対して手のひらをドンっとぶち当てる。するとどうだろうか、出久を追っていた機械が動きを止めた。

 

「ってレーザーの方向に人は………いない。良かった」

 

こんな感じで出久は敵を倒しつつ周囲に目を向けながら、時折怪我してる人に風に習った何もなくても出来る応急処置を施して行ったのだった。

 

〝残り三分〟

 

そうしてプレゼント・マイクが三分を切ったとお知らせしたその瞬間、今までとは大きさも何もかもが違うロボットが現れた。

 

「…………マジか雄英(これがお邪魔虫、マジか雄英)」

 

圧倒的脅威。それを目の前にした人間は正直で、敵がいるのにも関わらず逃げ出す受験者達。しかし出久は違うものを見据えていた。

 

「これだけの被害、巻き込まれた人がいるはず。助けないと。けどみんなパニックで冷静さを欠いている…………」

 

「あいたぁ」

 

どうすればみんなを冷静にさせられるか考え始めた出久だったが、敵の近くで倒れている少女を見て、一目散に飛び出していた。

 

(………あれは!)

 

足を止めてその様子を見たのは先程言葉を交わしたメガネの男子。

 

「大丈夫!?動ける!?」

 

そんな事を知らない出久は少女に手を伸ばしていた。危険を冒してまで自分に手を伸ばしてくれた出久に少女は疑問を浮かべる。

 

「君は……なんで」

 

「ヒーローは助け合いでしょ?……ってやば!?瓦礫…誰か!瓦礫退けるの手伝って下さい!!」

 

出久はそう呼びかけるが、その呼びかけに応じるものはいない。

 

(試験………試験か。試験という言葉で自分のやらなきゃ行けない事をやってなかったんだな僕は)

 

……一人を除いて。

 

「その瓦礫をどければいいんだな?」

 

「君は………なんで」

 

「それは後にしないか?それより俺の個性はエンジン。怪我人をいち早く運べるし、誰よりも早く駆けつけられる」

 

そう言って出久と二人で少女の足を挟んでいた瓦礫を退け、少女を背負うメガネの男子。

 

「さぁ、君も」

 

「いや。僕はアレを引きつける。君はその子を頼む!」

 

「おい待て!!」

 

メガネの男子の制止を聞かずに走りだした出久は、巨大な敵の足元へとたどり着いて

 

「すぅぅぅぅ、〝爆ッッッッ〟」

 

まず地面に向かって声帯砲をぶっぱなした。すると巨大な敵の足元の地面にヒビが入る。出久はそれを見届ける前に、とても器用に巨大な敵の側面を走っていきそいつの頭上からビルに飛びそのビルから敵の頭上に戻って、思いっきり息を吸いこんで

 

「〝爆ッッッッッッッッ〟」

 

先程より大きな音で巨大な敵を頭から地面に押し付けた。

 

「………し゛ま゛った゛」

 

こうして音の衝撃により高度がさらに高くなった出久だったが立て続けに声帯砲を使ったため身体の自由が効かなくなる。

 

「えいっ!!」

 

高高度から垂直に落下して死を悟った出久だったが、地面にあたる寸前で頬を誰かに叩かれる。そこから感じたのは浮遊感。

 

「解、除」

 

「全く冷や冷やしたぞ。動け………無さそうだな」

 

見ると少女がメガネの男子に背負われて出久の元へと来ていた。出久は何が起こったのかを理解して

 

「あ゛り゛がどう」

 

お礼をいった。それから動けない出久と怪我をしている少女を比較的無事なメガネの男子が背負った所で試合終了の合図が鳴り響いた。

 

――――――――――――――――――――

 

「…………凄いな。この二人」

 

試験の様子をモニターにてチェックしている雄英教師。彼らの目はとある二人の生徒に向けられていた。

 

「まずこの爆豪勝己という少年。爆破という恵まれた才能を充分使いこなして誰よりも多く敵を撃破。それどころか爆破で勢いづけて怪我人の元へと速攻で向かい救助。挙句周囲の被害にまで目を配ってる」

 

一人目は爆豪勝己。

 

「次にこの緑谷出久という少年は皆が飛び出していった中冷静に周囲に気を配り、敵を倒しつつ怪我をした人の手当てまでこなした。というか最後のあれ、彼本当に無個性なのか?音を操る個性じゃないのか?」

 

二人目の緑谷出久。

各々が資料を見て出久が無個性ではないと議論が持ち上がるが、

 

「それはないと思うぜ」

 

それを否定したのは先程司会を務めていたヒーロー、プレゼント・マイクだった。

 

「俺の見立てじゃ、その緑谷出久という少年、個性ではなく喉で音を出してる」

 

「…………つまり?」

 

「桁外れた肺活量と鍛えられた喉があってこその技だ。俺や他の人間が個性使わず同じ事やるとまず喉が潰れる。それに見てて思ったんだが、最初の音の後少し動きが鈍ってた。それから最後音を出した後身体が硬直してた。って事は音の調整は出来るがリスクは高いって事だ」

 

音を使う個性故の見解。

説得力はあったため、誰も何も言わない。

 

「とりあえずこの二人は申し分ないとして………」

 

こうして一旦緑谷出久の話題は置いておいて、他の合格者を決めていく雄英教師陣であった。

 

――――――――――――――――――――

 

試験から一週間後、出久は家で結果が来るのを今か今かと待っていた。

 

「出久……少しは落ち着いたらどうなの?満足な結果を出せたんでしょ?」

 

「そうなんだけど、やっぱり結果が来ないと落ちつかなくて……」

 

行けたと思っても結果が出るまで落ち着かない。せわしない時間が過ぎていき、

 

「来たよ!出久!!」

 

郵便が届いたと思ったら引子が慌てた感じで一通の手紙を持ってきた。

 

「見てくる!!」

 

出久はすぐに受け取って部屋で投影マシンを起動させた。

 

『私が投影された!!』

 

「オールマイト!?」

 

いきなりドアップで投影されたオールマイトの顔に驚きの表情をする出久。

それからオールマイトはこの春から雄英高校で教師をすることになったという話をして、出久はこれからも教えを乞うことができると内心喜んだ。

 

『さて、少し早いが君の結果を話そうじゃないか』

 

それを聞いてゴクリッ…と喉を鳴らす出久。

 

『筆記試験はいい成績だった。グレートだ。さらには実技試験ではヴィランポイントは20ポイント。それに加えてレスキューポイントという隠された項目があるのだが、君は最後の女の子の時だけじゃなく、怪我人の処置や周囲への気配りをしっかり務めていた。

 

それが採点されたために80ポイント。

 

合計100ポイント……よって緑谷元少年……おめでとう!!来いよ、緑谷少年!雄英ここが君のヒーローアカデミアだ!』

 

「ッ、はい!!」

 

こうして無事試験を突破した緑谷出久。

その事を母に言うと泣いて喜んで、その日は同じく入学が決まった爆豪と出久の家で両家混じって盛大にパーティーを行った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。