究極の闇、『ン・クウガ・ゼバ』   作:ルシエド

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 後回しにしてたイベントを一気に消化してきました、つかれみ
 事件簿のボス強かった……


2

 ―――時は少々、遡る。

 

 ズ・クウガ・バが最初に考えていたグロンギの迎撃は、水際での防衛戦であった。

 すなわち、他のグロンギよりも先にこの地球に来ていたアドバンテージを活かし、日本に侵入して来た瞬間を襲撃、日本侵入直前に全滅させる。

 グロンギはリントの末裔……日本人狩りを好む。

 ここにいずれ来ることは明白な事実であった。

 

「本当にやるんですか? 私は無理だと思いますよ、数でも質でも負けてるじゃないですか」

 

「カーマは…………隠れてて」

 

「はいはい」

 

 その頃のクウガには、まだ眼があった。

 おそらくはドゥサを倒した頃のクウガと比べれば、まだ思い上がりもあった。

 "勝てるわけがない"という卑屈さに、"勝たなければならない"という使命感が僅かに勝ってしまうくらいには。

 

 かくしてクウガは敗北する。

 水際防衛戦はいともたやすく粉砕され、クウガはガルメ一人に打ち倒された。

 ガルメの爪が、クウガの両目を抉る。

 抉られた眼が、再生しない。

 ガルメの額の角からするりと、まるで水の中から浮き上がってくるように、黄色の短槍が排出された。

 ガルメの瞳と角の色は黄色。

 その短槍と、よく合う色合いであった。

 

 それは、"ガルメの色に染まった概念武装"。

 一つ目の地球でもなく、三つ目の地球でもなく、二つ目の地球での人間狩りでガルメが得た聖堂教会なる組織の武装。

 リントの武器に興味を持たないグロンギ達の中で一人、ガルメはその武装に興味を持ち、自らに染め上げお遊びに使う武装とした。

 

 怪物と不死を殺す呪詛に、不死殺しの概念を付与し方向性を持たせた強力な怪物殺しであり、同時に不死殺しである融合短槍。

 怪物を殺すために人間が作り、怪物が奪って人殺しに使い始めた、皮肉の武装。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という、人造宝具と言うにはあまりにも"足りない"黄色だった槍。

 だが、グロンギと一体化し、グロンギが武器として使うなら、同族相手には十分過ぎる。

 

「ぐ、あ、がっ…………!?」

 

「こいつは傷が治らない、不死殺しの呪詛だかを持ってるんだとさ」

 

 手の中で弄んでいた短槍を、ガルメは再び額の角へと潜行させる。

 またすうっと、短槍がガルメの体内に沈み、融けていった。

 

「お前の目は治らない。お前の目を抉り取った、俺という呪詛の主体が生きている限り」

 

 強力な呪詛は、術者か、呪いの傷を付けた道具を破壊しなければ解除されない。

 それがルール。

 ガルメは今回のゲゲルに勝つため、自らの爪に不死殺しの呪詛を乗せるという手段を選んだ。

 

 極めて強い再生能力を持つグロンギを殺すため、クウガはプラズマによる大火力を選び、ガルメはリントの対不死をパクろうと考えた、とも言い換えられる。

 そしてテストと言わんばかりに、クウガに対し使ったのだ。

 抉られた眼を抑えるクウガを見て嘲笑い、どこか歪んだ喜びを見せ、ガルメはクウガを海へと蹴り落とす。

 

「ケケケ、あばよ。東京までまだ追ってくるなら……また遊んでやる」

 

 ガルメを殺さなければ、クウガは目を取り戻せない。

 

 この瞬間から、この聖杯戦争において、ガルメはクウガにとっての最大の宿敵となった……と、ガルメは考えていた。

 

 

 

 

 

 そうして、海に蹴り落とされたクウガは沈んでいく。

 グロンギの体重は重い。

 見かけ上の体格が同じくらいの人間を並べても、個体によっては倍以上に重い。

 人間体と怪人体に切り替わる肉体、腹の中の魔石、強靭で弾力のある金属と言える怪人体などが理由と考えられるが……詳細な理由は不明である。

 

 と、いうことは。

 目を潰されて『どちらが海面か』も分からなくなっているクウガは、海に落とされたなら這い上がる手段が何もなかった。

 少年はどちらが上かも分からないままもがき、水を飲み、溺れていく。

 ガルメはクウガを過大評価しすぎた。

 クウガは無力で無能なのだ。他のグロンギと比べれば、圧倒的に。

 

 ゆえに、彼女が海に飛び込んで彼を引き上げなければ、クウガはそのまま溺れ死んでいたかもしれない。

 

「はー、ほんと、私貧乏くじ……」

 

「…………ごめん」

 

「……いーんですよ、好きにやってください。別に全否定まではしませんから」

 

 ぶっきらぼうに、海水で肌に張り付く白い髪をかき上げていたカーマの姿を、その時の少年はもう見ることが叶わなくなっていた。

 

「ちょっと色々考えて、隙を見てあいつをぶっ殺すかしないといけないでしょうね」

 

「そう…………だね」

 

 カーマはクウガを背負って運ぼうとする。

 

「お……重い! 何食って育ったらこんなに重く……」

 

「ごめん」

 

「あーもう鬱陶しい! 東京に着くまで謝罪禁止です!」

 

 四苦八苦しながら二人が東京に到着する頃には、ゲゲルの準備は終えられていた。

 

 後手後手に回ったクウガ達が被害を事前に抑えることなど不可能で、ドゥサが先に動き、そこにクウガが割り込むという形になってしまった。

 

 ……これが、一年前からクウガが動いていたのに、メ・ドゥサ・レの最初の行動による犠牲者を守れなかった理由である。

 

 

 

 

 

 そのガルメが、今、クウガの目の前に居る。

 倒せばクウガの目は戻る。

 にもかかわらず、ガルメはクウガが了承するしかない同盟の件を提案してきた。

 ここで断るのは、仲間の人間のことを思えば絶対に無理。

 戦いの最中で裏切るというのも、相手が『あのガドル』というなら無理にもほどがある。

 

 ゴ・ガドル・バ。

 "ダグバが居なければ『ン』になっていた"と言われる男。

 その逸話には枚挙に暇がない。

 そんな存在が、人類史でも指折りの大英雄ヘラクレスと一体化したなら、どこまで強くなってしまっているのだろうか?

 

 ガルメは、境界線を想定しながら交渉している。

 この線を越えたらアウト。

 この線を越えなければセーフ。

 人によって違う境界線を、ちまちまと想定しながら交渉している。

 状況によって、クウガを時に利用し、時に自分を狙うよう誘導する……それは、敵をコントロールするという戦い方だ。

 

 ガルメは昔から、殺人予告の後の人間の動きを観察したりして、対象の動きの傾向と誘導法をよく考えているフシがあった。

 

「…………」

 

 誘導されている自覚はあった。

 だが選択肢は無いに等しい。

 クウガは毒が回る体に活を入れながら頭を回す。

 内よりランスロットが少年の思考へと語りかけてきた。

 

『マスター。

 奴は自分の情報すら交渉材料にしています。

 そこで我々が考えるべきなのは、そのリスクと対価、です』

 

(リスクと、対価?)

 

『これは奴にとって大きなリスクです。

 自分の情報を公開すれば、その分勝ちにくくなる。

 負けの可能性が高くなる。

 我々人間サイドがガルメの情報を言い触らす可能性だってあるわけですからね。

 となると、考えられるのは二つ。

 奴にとって自分の情報公開は痛手にならない、ということ。

 そして、情報を公開しても勝てると思える道筋がある、ということです。

 たとえば……ステータスに表記されない切り札を隠し持っている、などでしょう』

 

(なるほど)

 

『ゆえに、対価も重い。

 重要な情報に代わりはなく、表面上は命を我々に預けるに等しい。

 かなり重いものを差し出されてしまった、と言えるかもしれません』

 

(この後、戦いへの参加以上のことも求められるかも、と?)

 

『いえ、それならこういう話の持って行き方はしないでしょう。

 私が思うに……あなたはドゥサを倒したことで、強さの評価が上がったのです』

 

(強さの、評価)

 

『ええ。

 ガドルとの戦いで使える、と思われる程度には。

 だからこそ……見えてくるものもある。数です』

 

(?)

 

『このゲゲルの参加者は、マスターも入れて合計八人。

 ドゥサが脱落したので七人。

 今回倒すべきガドルを引いて六人。

 詳細不明が三人。

 あなたと、ガルメと、その協力者で三人。これが現在の内訳です。

 つまり……ガルメはあなたを引き込めれば、ガドルを除いた参加者の半分が味方だ』

 

(!)

 

『たとえばですが、ガドルを倒し、すぐさま貴方を奇襲し殺したとします。

 ガルメとその仲間で二人。それ以外の参加者は三人となります。

 この時点で、数だけを見るなら、残り三人が同盟を組まなければかなり安全です。

 その三人がすぐに連絡を取って交渉して同盟を組む、というのも難しいでしょう。

 ガルメとその仲間が一人倒してしまえば後は、二対二か、二対一対一にしかなりません』

 

(そうか……七人でのゲゲルでの、数を計算した立ち回り)

 

『ガルメが三人目に貴方を誘いに来たのも、少し分かります。

 おそらくは、三人目の勧誘を少し考えたい状況なのでしょう。

 ガルメが貴方以外の三人目を勧誘してしまえば、七人の内三人。

 貴方を入れれば四人です。

 七人中四人での同盟など、必ず予想不可なところで空中分解します。

 何せ、聖杯戦争の勝者は一人。

 同盟相手は必ず殺さねば勝てません。

 二人同盟なら良いのです。

 最後の二人になるまで裏切らないと思えますから。

 ですが四人同盟ともなれば、有利すぎて"どこで裏切るか"を皆考え始めます。

 勝者が一人のゲームは、同盟の人数が少ないほどに予想外の裏切りが減るものなのです』

 

(なるほど)

 

『ガルメの理想は、おそらくガドルを三人で倒し、二人生き残る形……

 つまり。

 "聖杯戦争を勝ち抜く相方としての同盟相手"と。

 "ガドル戦で使い捨てる使い捨ての同盟相手"だと思います。

 あくまで、ガルメの得を考えた結果ですが……現在の情報から私が思うことは、以上です』

 

(ありがとう。助かります)

 

『ゆめゆめ油断なさらぬよう。

 この男、おそらく人心掌握は上手くないものの、嘘をつきなれています』

 

 語り口の中に唐突に嘘を紛れ込ませ、推測を間違わせるくらいはやってのけるだろう。

 

「ガルメ…………一つ、聞かせろ」

 

「何だ?」

 

「君の、同盟相手だ」

 

「そう来るか。まあそこも判断材料にしたいよな?

 だがそれはお前がこの話にイエスと答えてからだ」

 

「…………」

 

「いいわよ別にバラしても。そうでしょう?」

 

「「!」」

 

 二人同時に、声がした方に目を向ける。

 騎士の怪人、避役の怪人(カメレオン)はまだ分かる。

 この毒の中で、怪人体で立っていられるのは感覚的に理解できる。

 だが。

 そこに立っていた女性は、人間と変わらない姿をしていた。

 怪人体など微塵も発現させていない。

 清潔感のある身だしなみに、短く切り揃えられた髪。

 ぴしっとしたスーツと特筆する特徴のないメガネは、「こいつが人間のOLの中に混じっていても気付けない」と人間に断言させることだろう。

 

 人間では立っていられないこの毒の中で、平気そうに微笑んでいるという事実が、この普通の人間にしか見えない美人を、化物であると理解させる。

 クウガはその人間体を見た覚えがあった。

 けれど目は見えないので、彼がその女性を認識したのは聞き覚えのある声の方。

 

「―――! ジャーザ、さん…………!?」

 

「少しばかり久しぶりね。あら、もしかして背が伸びた? いいわねえ、成長期の男の子は」

 

 『ゴ・ジャーザ・ギ』。

 

 グロンギ達の中で、『最強の三』と呼ばれる三人の一人である。

 クウガは予想だにしなかったガルメの協力者に、思わず剣の向け所を見失った。

 

 グロンギには、隔絶した力の差が存在することがある。

 ズ、メ、ゴ、ン、の四階級は分かりやすい。

 だがそのゴの中にも、『最強の三』と呼ばれた存在がいて、その強さは頭一つ抜けていた。

 

 二つ目の地球で耐性を全能でぶち抜く愛歌に消されたという、『ゴ・バベル・ダ』。

 今ここに来ている、海の覇者『ゴ・ジャーザ・ギ』。

 そしてその二人ですら敵わないという、最強の三の中ですら最も強い『ゴ・ガドル・バ』。

 この三人は、出るゲゲルによっては参加した時点で勝者となることが確定する、と言われたほどの化物である。

 化物であるグロンギの一部にすら、化物と呼ばれる規格外であった。

 

 そして―――ズ・クウガ・バに、気まぐれの暇潰しに、簡単な日本語を教えた者だった。

 ゴ・ジャーザ・ギの頭脳はグロンギでもトップクラスであると言われている。

 "学力を比べる文化"がグロンギには存在しないために、正確なところは判明していないが、クウガはジャーザこそが最も賢いグロンギであると思っていた。

 強く、頭が使えて、実力と肩書きが釣り合っている。

 女性でありながら『最強の三』に数えられるジャーザは、他の女グロンギにとって、憧れと嫉妬と殺意の対象でもある、そんな存在であったという。

 

 クウガは、そこで新たな事実に気付く。

 

「…………そうか、ガルメの理想のゲゲルは…………そういえば、ジャーザさんのものだった」

 

「……ふん」

 

 記憶を探り、クウガは思い出す。

 ガルメは以前、『次は○○で殺す』と殺人予告をして殺すゲゲルをしていた。

 だがこれは本来、ジャーザが得意とするゲゲルだ。

 殺人予告をして、対策されようとそれを越え、殺す。

 この"縛りプレイ"を考案したのがジャーザであり、それを真似したのがガルメなのだ。

 

 知と力を併用できるジャーザは、ガルメにとっては密かに理想形である。

 クウガはそれを知っていた。

 

 ―――ガルメは、その殺人が綺麗だったから憧れた。

 その理想の殺人に憧れ、その後を追ったのだ。

 だからだろうか。ジャーザとガルメが今、組んでいるのは。

 

「分かったか? 勝機はある。あとはお前の考え次第だ」

 

 勝てるわけがない、と思っていたクウガの思考に、希望が湧いてくる。

 

 ダグバを除けば最強、というのがガドルの評価だ。

 だがガドルに次ぐ戦士といえば、ジャーザかバベルのどちらか。

 いや、沙条愛歌の殺戮を越え経験を詰んだ分だけ、ジャーザが勝るとクウガは考える。

 強さの順はダグバ、ガドル、ジャーザであり、その強さの差を埋める"何か"があれば十分勝てる……そういうことだ。

 その"何か"に、クウガとガルメがなればいい。

 

 不安要素はあまりにも多すぎるが、元より受ける以外に道はない。

 だが、何も考えず話を受けたのでは何にもならない。

 しっかりと考え、しっかりとガルメの狙いを考えた上で、クウガは頷いた。

 

「…………分かった」

 

「交渉成立、だな。ひひひ」

 

「ま、こうなるでしょうね。

 あなた達に約束した報酬の情報は、警察のパソコンに打ち込んでおいたわ。

 『ラ』の確認の下やったから嘘はないと思っていいわよ。それじゃ、またね」

 

 ガルメが腕を振り、建物内に何かを振り撒き、透明化して消える。

 ジャーザもまた、堂々と廊下を歩き入り口から出て行った。

 クウガは今の話と周りの人間の心配で頭がいっぱいになり、他のことを考えている余裕がなかったが、周りの人達が何事もなかったかのように起き上がるのを見て、ほっとする。

 

『……警察の情報を、どさくさ紛れに抜かれたか……?』

 

 そして常に視野が広いランスロットの一言に、あ、とクウガは口を抑える。

 

 警察のパソコンを弄られたということは、そのデータベースに情報を打ち込めるほどに操作されたということは、そういうことだった。

 

 

 

 

 

 『拮抗作用』、というものがある。

 分かりやすく言えば、プラスの作用のある毒とマイナスの作用のある毒を同時に摂取した場合、毒の効果が互いに打ち消し合う、というものだ。

 "毒を操るサーヴァント"の能力をガルメが自己流に昇華させたものの一つが、これだった。

 

 例えば、トリカブトにはアコニチンという毒がある。

 フグにはテトロドトキシンという毒がある。

 アコニチンは人体のナトリウムチャネルを活性化させ、ナトリウムが細胞に流入し続けるようにしてしまい、人を死に至らしめる。

 テトロドトキシンは人体のナトリウムチャネルを塞ぎ、ナトリウムが細胞に流入しないようにしてしまい、人を死に至らしめる。

 よってこの二つを同時に摂取すると、両方共に猛毒であるにもかかわらず、両者の効果が打ち消し合いすぐに死ななくなるのだ。

 

 ガルメは、人類が未だ発見したこともないような毒で皆を苦しめ、そして同様に未知の毒でそれを拮抗作用にて打ち消したのだ。

 正確に言えば、人体の中で毒が自然消滅するまでの時間、毒が影響を及ぼすことができなくなった、というのが正しいだろう。

 

 それが、全員が復活した後に施設内を調査した警察が出した結論であった。

 これこそが、ガルメが便利に使った毒のメカニズムである。

 一時間足らずで特定した警察の有能さは人間としては凄まじいものがあるが、こんなものを平然と使うガルメは"人間離れしている"としか評せまい。

 

 ガルメに毒を吸わされた人間は、血を吐いた人間ですら今やピンピンとしていたが、念の為順に精密検査を受けていた。

 医務室のベッドにて、間桐慎二は壁を殴る。

 

「くそ……クソ野郎め……この僕にこんな屈辱を……!」

 

「慎二。まずは礼だろ。空我にまだ礼言ってないのお前だけだぞ」

 

「衛宮に言われなくても分かってるっての。……ま、なんだ、よくやったよ、お前」

 

 礼言ってないですね、と医務室の隅でカーマが呟いた。

 体を動かして苦笑している士郎とは対照的にに、慎二はピンピンしてるというのに安静にしていて、医務室のベッドの上で地図を広げていた。

 

「で、空我。どの経路から来るんだって?」

 

「情報によると…………ここですね」

 

「東側か」

 

「ここの橋を渡って…………ここの警察を、狙って来るとか」

 

「げっ、中央区の方に寄って来んのか……ん?」

 

 ガルメからの情報を元にクウガが引いた線と矢印によると、ガドルは江戸川区から中央区・千代田区に向かって進んでくる、大きく移動しながらの"リントの戦士狩り"をしようとしている。

 小松川署の次に本所警察署か、城東警察署狙いだろうか、と慎二は推測していた。

 中央区、千代田区の警察署や派出所は多い。

 ダグバが焼き払った範囲に新造のものができたのと、元々この二区には多かったのもあって、警察拠点の数は15を超える。

 ならここ狙いかな、と思ったところで、慎二は気が付いた。

 

「あれっ、こっちって、皇居」

 

「…………ガドルは、こーきょけーさつに、興味を持ったそうで」

 

「皇居警察!?最悪じゃないか! 僕らが止められなきゃ皇居が廃墟!?」

 

「慎二。そのダジャレは上手くないと思う」

 

「皇居が廃墟ってはははダジャレだねーって言ってる場合じゃないよ!?」

 

 ちょっとどころでなく、洒落にならない事態になってきたようだ。

 

「どうするどうする考えろ僕……そうだ、橋の上くらいか。周り巻き込まないでいいのは」

 

「橋の上…………ですか?」

 

「どうせそのクソ強い奴ってのを空我に空き地まで運べって言っても無理だろ?」

 

「はい」

 

「荒川の上にかかる橋を選ぼう。小松川橋がいいか?

 ……ああ、荒川ってのは東京にある川な。

 川幅は最大で2.5km。

 とはいっても今回使う橋の長さは1kmには届かないな、くらいのもんだ。

 だけど、ここしかない。

 ここ以外は全部市街地のど真ん中だ。

 いいか? 許されるフィールドは橋の上、縦600m。

 お前達の攻撃がこの範囲をはみ出たら、街に被害が出るって思って戦うんだぞ」

 

「はい。分かりました」

 

「よし。ゲゲルの時間中はこの橋を封鎖するから、結果で応えろよ」

 

 橋の上での決戦。

 小松川橋は東京のやや古き町並みから、東京の新なる都へと続く橋とも言える。

 東京の橋から中央へと向かう橋、ここをガドルが通り、止められればクウガ達の勝ち、通してしまえば大惨事。

 戦いの構図は、大分シンプルになった。

 地の利がある警察側の提案だ、ガルメ達も警察が優位性を示せば認めるだろう。

 

 現在時刻、15:40。

 最短で、あと八時間ほどでガドルは攻めて来るだろう。

 橋を進む暴虐の嵐をどう止めるか―――考えること、打てる手は、いくつかある。

 叶うなら、橋も無傷で終わらせたいところだろうが、はてさてどうしたものか。

 

(上手くやって三人まとめてぶっ殺せないだろうか)

 

『マスターは思考が時々本当に明後日の方向に吹っ飛びますね……まずは生き残りですよ』

 

(はい)

 

 クウガもまた、ランスロットと色々考えていた。

 

「ともかく、だ。クウガ、礼は言うけどさ。

 今回みたいに、僕らのことを考えて短慮はやめなよ」

 

「…………はい」

 

「今回だって、室長代理がどうにかしたかもしれなかったんだし、毒」

 

「あの、なんなんですかあれ…………

 気付いたら、ピンピンしてたトーコさんが、外にいましたけど……」

 

「あー、あの人はさ、リポップできるんだよリポップ」

 

「リポップ」

 

「死んだらどっかから生えてくんの」

 

「生えてくる」

 

「ガルメが毒撒いたから、体が動く内に自殺して建物外でリポップしたんだね、ありゃ」

 

「なんというか…………あの人…………凄いんですね」

 

「うん、まあ、なんというか。

 『何があっても警察の指揮系統を維持するために雇われた』人だからねあの人……」

 

 人間には、工夫する力がある。

 

 力が全てではない。あとは、頭の使いようだ。

 

 大切なのは諦めないこと……クウガは五代雄介から、ずっとそう教わってきた。

 

 

 




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