巧みに踏み込み、一瞬にて騎士は蛇の怪人との距離を詰めた。
怪物なのか?
人間なのか?
どちらとも言えない人型の怪物・未確認生命体には、怪人の呼称こそが相応しい。
「しっ!」
騎士は蛇を立香から引き離すべく、体ごとぶつかる勢いで両手剣を振り下ろした。
対し、蛇怪人は同じように距離を詰め、剣が振り下ろし切られる前に剣を真正面から蹴る。
足裏と剣が衝突し、騎士の剣が押し負け、弾かれた。
「ッ!」
蛇怪人の足裏に切り傷がついたが、その傷は一秒未満の時間で跡形もなく治りきってしまう。
振り下ろした剣を真正面から弾き返された騎士はたたらを踏み、なんとか体勢を整えようとするが、その背後には既に蛇怪人がいた。
騎士が体勢を整えるよりも速く敵の背後に回り込む信じられないスピードと、背後に回り込むチャンスを見逃さない目敏さ、滑らかに背後を取る身のこなしのコラボレーション。
騎士の手中に打つ手なし。
「ゴゴギ*1」
騎士の背中が、怪人の尾に思い切り強打され、吹っ飛ばされた。
「ガッ」
吹っ飛ばされた騎士が電柱に衝突し、電柱を何本もへし折りながらもなお止まらず、鉄筋コンクリートの塀にその体をめり込ませた。
「きゃあああっ!?」
電柱が何本も倒れ、立香が悲鳴を上げて頭を庇う。
電柱は運良く立香の上にも騎士の上にも倒れなかったが、不幸中の幸いと言うにはあまりにもささやかすぎる幸いだった。
速い。
強い。
蛇怪人はスピード、パワー、どちらも明確に騎士を上回っている。
それこそ、今の数秒の攻防で素人の立香にすら『勝てない』と理解させてしまうほどの身体スペックの差が存在した。
よろめきながら立ち上がる騎士に、蛇が追撃の尾を振るう。
騎士の剣は横薙ぎに振るわれ、それを迎え撃つ。
尾は剣よりも速く、剣よりも重く、剣よりも力強く振るわれ、剣と騎士はまとめてまた鉄筋コンクリートの塀に叩きつけられる。
肉が裂ける音。
骨が折れる音。
騎士の体が潰れる音が、鈍く響く。
二度の衝突によって、鉄筋コンクリートは壊れた玩具のようにバラバラになり、騎士と共に吹っ飛んでいった。
「ビガラザ・ズ・ンガギバビュグ*2」
「グ……!」
「バドグン・ゲンギグ……パダギビ・バデス・ロボバ!*3」
蛇の怪人は騎士に背を向け、立香を見る。
怪人の顔に付いている目だけでなく、髪の代わりに頭に生えているおぞましい無数の蛇も一匹一匹が生きているかのように、同様に立香の方を睨みつけていた。
その眼光に恐怖し、立香の足が竦む。
何故か。
何故だか、分からないが。
怪人はその場から一歩も動いていないのに。
立香の生物的本能が―――
「!」
されど、そこに復帰した騎士が駆けつけた。
蛇の怪人を背後から斬りつけんとする騎士の剣が振り下ろされる。
奇襲のタイミングも、やり方も、完璧だった。
だが致命的に『身体能力』が足りていなかった。
あまりにも遅すぎた。
騎士の奇襲は軽やかに跳躍でかわされ、振るわれた尾が伸びて立香を狙う。
騎士は全力で跳び、全身で尾に当たりに行き、立香の身代わりになる形で尾を弾く。
「グッ」
甲冑に見えるその身を粉砕されながら、騎士はなんとか着地後に体勢を整え踏ん張り、立香を庇うように彼女の前にて剣を構えた。
「あ、ありがとう」
「もう少し…………下がって」
「は、はい」
慣れない日本語で少女に下がるように言う騎士は、満身創痍だ。
否。
満身創痍、だった。
一秒、二秒と経過する内に、騎士の全身の傷はあっという間に癒えていく。
騎士の粉々になった骨が治っていく音、裂けた肉が再生する音、欠乏した血液が急激に再補充される音が微かに聞こえて、それがなんとも気持ち悪い。
立香は一つ、テレビで見た話を思い出していた。
『未確認生命体は普通の攻撃では死なない』。
『仮に傷付けられてもすぐに治ってしまう』。
第一次未確認生命体災害の時、警察が大口径の銃を持って囲んで滅多撃ちにしても、未確認生命体は全く死ぬ気配がなかったという。
この騎士も、あの蛇も、簡単には死にはしない。
ゆえにこその怪物なのだ。
蛇の怪人がとん、とん、と路面の上で軽やかに跳ねる。
構える姿は余裕綽々。
まるで、"本気を全く出さなくてもお前程度には苦戦しない"とでも言いたげに。
「パバサンバ*4」
蛇は騎士に問いかけた。立香には何を言っているのか分からない。
「バゼゴラ・ゲグゾラ・ロス・リント? シジュグ・グリガダ・サング*5」
体外に飛び出た骨を引き抜き投げ捨て、体内で骨を再生しながら、蛇の言葉に騎士は応える。
「グブスギ・ルドボ・ソゾリデ・ロダボギ・ブバギ・リント*6」
立香に騎士の言っている言葉は分からない。
生物的なところはあっても、騎士甲冑に似たその顔は表情など動くはずもなく、表情から感情を読み取ることはできない。
ゆえに少女は想像するしかない。
「ゼロ*7」
剣を構える騎士が、騎士らしいことを言っているのだと、立香は思った。
「グブスギ・ルゾゾ・ダボギギバサ・グロンギ*8」
自分を守ろうとする言葉を言ってくれているのだと、立香は思った。
蛇の怪人が忌々しそうな声色で、吐き捨てるように理解できない言葉を叩きつける。
「……ビグスギグ!*9」
蛇が跳ぶ。
周囲の建物、電柱、信号機、塀、全てがこの怪人にとっての足場である。
縦横無尽に、まるで狭い部屋で勢いよく射出されたスーパーボールのように跳ね回る。
目を動かすだけでは到底追えない。
首を振っても動きが追えない。
体ごと動き首を振って目で追おうとしても追いきれない。
立香は一瞬で敵を見失い、蛇がどこにいるか分からなくなってしまった。
されど騎士は不動。
蛇を目で追う様子も見せず、静かに立香の傍らで構えている。
騎士は待ち、とことん待ち……蛇が攻撃に移る気配を感じ、最高のタイミングで最適に迎撃の剣を振り上げた。
狙うは斜め上方より飛び込んで来る敵の首。
だが、遅い。
騎士の反応は最速であったにもかかわらず、それでも騎士の身体スペックでは蛇の攻撃に反撃を合わせることは叶わなかった。
蛇怪人の鋭い爪が、騎士の首へと一気に迫る。
首を切り飛ばすに足るその一撃は断頭台のギロチンを思わせた。
振り上げた剣は、間に合わない。
その瞬間。剣の表面が爆発し、剣閃が加速する。
「!」
攻撃速度は逆転し、蛇の爪よりも先に騎士の剣が到達した。
首を狙った騎士の剣が敵の首を刎ね―――ることは、なく。
反射神経のみで思い切り首を捻ることで、蛇の怪人はギリギリのところで剣閃を回避する。
蛇が回避行動を取ったことで蛇の爪も騎士には当たらず虚空を切った。
空中で蛇怪人が攻撃を回避したことで体勢が崩れ、攻撃も防御もできない状態となる。
ここに来て初めて到来した、唯一無二の騎士の勝機。
「―――!」
その瞬間、騎士の剣の軌道が『曲がった』。
剣の表面で爆発も起こっていない。
剣が何か特別な力を発したわけでもない。
なのに何故か、剣閃の軌道がほぼ180°の鋭角にて曲がり、剣をかわした怪人の首を再び狙って振り下ろされた。
異能の気配もなしに空中で唐突に曲がるという、原理不明の断頭剣。
初見であればほぼ全ての生物が回避すること叶わぬだろう。
それはまさしく、
「ゾグ*10」
相手がこの怪人でなければ、殺せていただろうに。
「ゴソババ・ルガブド・ギグパ・ベゼロバ・バダダバ*11」
「……グッ」
空振った剣が路面に突き刺さり、蛇の怪人が嘲笑する。
必殺の魔剣は当たらず終わった。
一体何が起こったのか?
その答えは、蛇の怪人の手の中にあった。
怪人の手の中には鎖付きの短剣が握られており、その末端が信号機に絡みついている。
どうやら空中で無防備な姿を見せたのは騎士の奥の手を引き出すための誘いであり、信号機に巻き付けた鎖付き短剣を引っ張ることで空中を高速で移動、騎士の魔剣をかわしたようであった。
そして攻防が再開される。
素人の立香が見ても分かった。
騎士が持つ二つの攻撃手段は極めて強い。
剣の表面で起こる謎の爆発は剣を加速させ、剣の威力を倍増させる。
時々使用される原理不明の魔剣もまた、空中で唐突に軌道が曲がるため、相手が人間であればどんな対抗手段があっても首を刎ねられるとしか思えない。
(剣の軌道が空中で不自然に曲がる。剣が爆発してる。……まるで、漫画みたいで)
怪物の戦いを、安全圏とは到底言えない場所でへたりこんだ立香が見つめていた。
恐怖で感覚が麻痺し、騎士の非現実的な魔剣が少女から現実感を剥ぎ取っていく。
(現実じゃ、ないみたいで……でも、確かに現実で)
なのに少女が現実逃避できないのは、
「ガギギョンバ・ブギザベ・ジソグ・ゼビレス・デビザ・ダダバ*12」
通らない。
斬撃を謎の爆発で加速させても。
斬撃の威力を謎の爆発で倍増させても。
斬撃を90°曲げても、180°曲げても、蛇の首を刎ねられない。
生半可な傷はものの数秒で治ってしまい、何もかもが致死に至らない。
騎士が力で負けているからというのもある。
騎士が少女を庇っているからというのもある。
だがそれ以上に、速さの差が圧倒的だった。
最初に魔剣を披露した時以来、一切の斬撃が追いついていない。
斬る。蹴りで受けられる。
蹴られる。剣で受けられない。
攻防の応酬が行われるたび、騎士の側にのみダメージが蓄積していく。
蛇の怪人は、まさしく疾風であった。明らかに弱者である騎士をいたぶって楽しんでいる。
「ゴボゼビレ・サセバギ・ゴラゲザバサ。ビゴジョダンボザ・ダグバ*13」
「……ゴンバボドパ、パダギグ・ギヂダンジョブ・パバデデギス!*14」
戦いの最中蛇の尾が瓦礫を弾き、それが立香に飛んでいき、騎士が咄嗟に剣にて弾く。
その隙を見逃さず、蛇の怪人の両手爪が騎士の胴体を深く深く切り裂いた。
切り抉られた傷口から赤き血が吹き出す。
急速に再生が始まるが、すぐに傷口は塞がらない。
されど騎士は止まらない。
血を吹き出しながら剣を振り続ける。
騎士は痛みに歯を食いしばり、少女を庇い続けた。
「ボダゲソ!*15」
そして、叫ぶ。
「ゴラゲグ・ドシボンザ―――ゲギセギ・パバンザ!*16」
騎士の叫びに、蛇は鼻で笑って応える。
騎士の胴体から流れる血が止まった頃に、バックステップ一つで数十mの距離を取り、両の腕を広げて構えた。
何かが来る。
とてつもない何かが来る。
直感的にそれを察知した騎士は、構えた剣を両手で強く握った。
「ギギザソグ。リゲデジャス*17」
血のような、けれど血ではない何かが、ドロドロと蛇怪人の口より漏れる。
それが蛇怪人の体を包んでいくのを見た騎士は、跳んだ。
少女を庇うのをやめ、右を向いて遮二無二走る。
全速力で逃走を始めた騎士だが、間に合わない。
大気が震える。
地面が震える。
体躯が震える。
「パガバゾ・ビザン・ゼガン・ジョビゴヂソ。パガバザ―――*18」
爆音と閃光が発せられ、蛇の怪人が変わる。
その体が『天馬』へと変わる。
自らを天馬へと変じさせる異能が行使され、"蛇の怪物より天馬が生まれた"という神話がここに形を成した。
騎士が構えた剣が光を宿し、膨大な光と熱を発し始めたが、天馬と比べればあまりにも弱い。
「―――ラガンン・ギビグリ・『メ・ドゥサ・レ』・ザ!*19」
「
天馬へと変わった蛇が閃光となって突撃し。
光り輝く天馬へと変わった怪物と、騎士が振り下ろした光り輝く剣が衝突した。
されどその剣、騎士の勝利を約束することはなく。
街の一角もろとも、天馬を剣で受け止めた騎士は吹き飛んだ。
騎士の判断は、正しかった。
立香を庇う立ち位置のままでは、一直線に突っ込む天馬の一撃にて少女も騎士も諸共に吹き飛ばされてしまっていただろう。
騎士が逃げたからこそ、少女は守られたと言える。
結果的だけ見れば、バラバラになったのは騎士の体だけで―――だから、この判断は、極めて正しかったのだ。
これ以上の結果など、騎士には望むべくもなかったのだから。
「あ……」
それは、信じられない光景だった。
まるで小学生が絵に書いた地図に消しゴムをかけたかのように、街の一角が綺麗に消し飛んでしまっている。
天馬が通り過ぎた跡は建物の残骸すら吹っ飛ばされており、建物があった痕跡が少し見て取れるのみ。更地になっていると言っていい有り様であった。
その直撃を受けた騎士の体は、もはや見るに堪えない。
四肢が体から離れてこそいないものの、繋がっているのは神経と肉の一部くらいのものだ。
顔の肉も胴体の肉も大半が吹っ飛び、内臓も三割ほどが消し飛んでいる。
飛び散ってバラバラになった肉片はもう拾い集められる数ではなさそうだ。
無事に見えるのは胸の辺りと腰回りくらいのものである。
にも、かかわらず。
その体は再生が始まっていた。
騎士の怪人はまだ生きていた。
「ボンギジョ・ブバサバ・ブジヅビ・ボソギ・ダザズ。ザグ。ゾグギグ・ドシブブザ?*20」
蛇怪人も怪訝な目で騎士を見ている。
どうやら未確認生命体基準でも、この生命力と再生力は異常なようだ。
だがこれほどのダメージともなればすぐに再生はしないらしい。
騎士の体は中々人型に戻らず、そのままの状態で口を開く。
「……『メドゥーサ』。ゴセゾ・ジビガデデ・ギダボバ*21」
「ゴグギ・グボドザ。ボセボゴグ・メ・ドゥサ・レ・ボ・グンレギ*22」
かつて、髪が無数の蛇である蛇の怪物メドゥーサを英雄ペルセウスが討ち、その首を切り落とした断面から溢れ出た血は、天馬ペガサスを生み出したと言われる。
ペガサスは元よりメドゥーサの体の一部であった。
ペガサスはメドゥーサの体が変じたものだった。
メドゥーサの体はペガサスとなる。神話にはそう伝えられている。
ゆえに、これは
天馬から蛇の怪人へと姿を戻したドゥサが、立香の方を向いた。
騎士が反応し、戦わんとするが、神経と少しの肉で繋がっているだけの手足は指先を僅かに動かす程度のことしかできない。
今彼にできることは、少女に向けて叫ぶことだけだった。
「逃げろ!」
「え、え、え」
「早く!」
逃げろ、と言われて、逃げ切れるだろうか?
普通の少女が? この怪物相手に? 不可能だ。
無駄な戦いに無駄な叫び。ドゥサは騎士を嘲笑う。
「バビロ・バロル・ザザダダバ。ズ・クウガ・バ*23」
とてつもない威力を放った化物も、それを受けてバラバラになってもまだ死んでいない化物も、どちらも立香から見れば恐ろしい。
恐れは足を竦ませ、少女から逃げる力を奪う。
今、藤丸立香の心は恐怖が支配している。
だが。
その心に恐怖しか無いというのは、きっと間違っている。
「逃げ――」
騎士は逃げろ、と重ねて叫ぼうとして、その時初めて気付いた。
少女の目は逃げ道を探していない。
少女の目はドゥサを見ていない。
自分を狙う怪物に命乞いすらしていない。
立香の目は、騎士を見ていた。
再生過程の傷だらけの騎士を見ていた。
当たり前のように、優しく。
普通の女の子が、目の前で怪我をした人を見る時のように。
自分の心配をすることも忘れて、自分を守ってズタボロになった騎士の心配をしていた。
「―――」
それは人間として当たり前の心。人間として当たり前の優しさ。
未確認生命体には無い心であり、優しさであった。
騎士は何か、何かできないかともがくが、少女に歩み寄る蛇の怪人に何もできない。
「ゴパシザ*24」
終わる。
騎士の健闘も意味はなく。
少女は何もかも知ることはなく。
終わる。
無慈悲に、ただただ強いだけの悪による暴虐によって、全てが終わる。
そう思われた、その時。
「
声が、した。
声がしたのが先だったのか。
何かが飛来し着弾し、爆発したのが先だったのか。
あまりにも一瞬のことだったので、立香はどちらが先だったか分からなかった。
『誰か』が撃った何かが、ドゥサに直撃する。
そして、指向性のある大爆発が起こった。
ドゥサが狙っていた立香には傷一つ付けず、ドゥサだけを爆発が飲み込む。
爆炎、爆煙、そして巻き上げられた土煙が、ドゥサの視界を遮断した。
すかさず駆けつけた『誰か』が、立香に手を差し伸べる。
「立てるか?」
「……た、立てません。腰が抜けてて」
「そうか。それなら、ちょっと我慢してくれ」
その『誰か』は、立香を肩に抱えて駆け出した。
足音が聞こえる。
煙の中のドゥサの足音……だけではない。
人が居なくなり静寂に支配されていたはずの街の中に、立香を抱える男性や、慌ただしく駆ける様々な人の足音が聞こえる。
「あの、これどうなってて、なにがどうなってて、というかあなたは誰なんですか!?」
「ん? 俺?」
少女を軽々抱え、軽々走る男は只者ではない。
未確認生命体を前にしても緊張した様子や恐怖する様子を見せてない時点で、何かが違う。
少女の問いかけに、男は自然体で答えた。
「俺は『衛宮士郎』。この先の警察署で、普段は刑事をやってる男だ」
その答えに少女は目を丸くする。
「衛宮! 早く戻ってこい! 何やってんだ!」
「分かってる! そう焦るなって、慎二!」
誰が来たのか、は、立香にも分からない。
けれども何が来たのかは分かる。
事件発覚から15分。やたらと強いおまわりさん達が、人の命を助けにやって来た。
■グロンギ
通称、未確認生命体。
2000年頃に一度、2013年頃に再度、そして2014年のこの年に三度、大事件を起こしている。
それぞれが第一次、第二次、第三次の未確認生命体災害と一般的に呼称される(正式名称ではない)。
第一次での死者数は三万人をゆうに超え、第二次では160万人を超える死者が出かねない状況にまで至っていた。
人間体で人間社会に潜伏する特性と、怪人体の異常な戦闘能力が一般に特に知られている脅威である。
個体差も大きいが、凄まじいのはその生命力と再生能力。
数十トンクラスの攻撃の直撃を食らえど平然と立ち上がり、心臓を撃ち抜かれても眉一つ動かさず、腹に深々と剣が刺さろうがそれだけでは致命傷とならず、大剣が腹の奥まで刺さった傷が数秒で消えてなくなってしまうことも。
最下級のプレイヤーでさえ大口径の銃弾の連射を受けても皮膚に傷一つ付かない。
神経を完全に破壊され体組織の三割ほどを失ってもなお蘇ることすらある。
その強固な体を決定的に破壊したとしても、全治半年級の傷が長くとも数時間で痕跡すら残らず消えるのは、もはや尋常な生命とは言えないだろう。
怪人体よりも異常性が低い人間体であっても、銃弾に抉られた肉は数秒で再生を完了する。
更に、肉体には耐性獲得の能力も持つ。
人間がグロンギに有効な毒物を使っても死に至らず、次に戦う時には効果がなくなっている。
逆にグロンギの毒物に人間が防御手段を講じても、それにすら耐性を得て毒が対策を貫通してしまう。
グロンギの体を切り裂いた攻撃が、数秒後には傷一つ付けられなくなったことすらある。
この耐性は同族のグロンギの能力に対しても有効であり、神秘を身に付けた人間を死亡させるグロンギの毒も、最下級のグロンギは死に至らしめることができないこともある。
最悪なのは、耐性獲得の過程で他の能力までついでに強化されることもあること。
弱点を突かれただけでその日の内に強化形態を獲得する個体すら存在する。
もちろん、それらの特性が無かったとしても個体戦闘能力は極めて高い。
知性が高いグロンギは、普通の人間を遥かに凌駕する知性を持っていることすらある。
形態変化による対応力、物質変化による武装の獲得、等々個体によって強みは様々。
『超古代のクウガ』はこのグロンギ達を殺すのではなく、封印するという最適解を取った。
『仮面ライダークウガ』は必殺技の封印エネルギーをグロンギの魔石・ベルトと反応させることで、グロンギを体内から爆発させ、体表に傷一つ付けないまま爆死させることができた。
第一次、第二次の未確認生命体災害時、警察は体内の神経節を完全に破壊する神経断裂弾を用いた。
『ズ・クウガ・バ』にはそのどれもが不可能。
『封印エネルギーでのトドメ』『神経断裂弾による神経誘爆』のどちらでもない殺害方法を選ぶ場合、トドメの一撃には絶大な威力が求められる。