究極の闇、『ン・クウガ・ゼバ』   作:ルシエド

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再臨

 クウガと立香は警察の車に乗せられ、どこかへと連れていかれていた。

 

「私、パトカー乗ったの初めてだなぁ」

 

「…………パトカー?」

 

「この車のことだけど、パトカー知らない?」

 

「ワタシは…………知らないことが、多いのです。リツカ」

 

「そうなんだ。

 これはパトカーって言ってね、警察が使う車なんだよ。

 えーと、今回みたいな時とか、犯罪が起こった時に警察の人がこれに乗ってくるみたいな?」

 

「…………なるほど。戦士の車。戦場の車両。『戦車』…………ですね?」

 

「違うよ!?」

 

「えっ」

 

 何話してんだこいつら、と運転手の慎二が呆れた顔をしていた。

 助手席の士郎は苦笑している。

 

「少し、聞いても…………よろしいでしょうか」

 

「どーぞ」

 

 気の抜けた返答で慎二が応える。

 

「ワタシ達は、どこに、向かって、いるのでしょうか…………」

 

「うちの本拠地。未確認生命体対策班の根城ってとこかな」

 

「根城…………」

 

「警視庁があって、未確認生命体事件の捜査本部があって。

 んで独立した対応部隊として未確認生命体対策班がある。

 その未確認生命体対策班を包括するのが未確認生命体対策室。

 指揮系統としては、捜査本部と対策室&対策班は別系統って感じだね」

 

 クウガと立香が、同時に首を傾げた。

 

 説明が理解されなかった慎二がイラッとして、「これだからバカは!」と言いそうになり、ぐっとこらえて髪をかき回した。

 

「……あー! 面倒臭い! 衛宮! 覚えさせなくていいよな!?」

 

「まあいいんじゃないか? 必要でもなさそうだし」

 

「…………いえ、覚えました。未確認生命体サクサクパン、ですね」

 

「覚えてねえ」

「覚えてないな」

 

 すっかり夜も更けている。

 すれ違う車が増えてきて、歩道にも歩行者がちらほら見えてきた。

 動く人や動く車を一台も見ることがなかった先程までの状況が終わったことを実感し、立香はこっそりと安堵の息を吐く。

 

「僕らの対策班はちょっと特殊でね。

 室長はいるけど、基本的には室長代理が色々やってる。

 警察組織だけど室長代理は警察官じゃなくて……ま、組織的には、僕が責任者って形かな」

 

「この間桐慎二ってのが班長だから、それだけは覚えておいてくれ。俺は普通の刑事だ」

 

「はい…………」

 

 クウガは素直に頷く。

 立香はバックミラー越しに見える慎二の"僕は結構偉いんだから敬えよ?"と言いたげな表情に、言いようのない感情を覚えていた。

 

「その…………お二人は、どこまで…………聞いて、いますか」

 

 何を? と思った立香とは違い、"ふん"と鼻を鳴らした慎二は何を聞かれているのか分かっているようであった。

 

「一年前、クウガを名乗る未確認生命体が日本の警察に警告してきたこと。

 警告の内容が、『疑似第二魔法で異世界から新たな未確認生命体が来る』だったこと。

 警察の上層部のほとんどはイタズラだと思ったこと。

 でも、一部は真に受けて一年前から準備をしてたこと。

 その新しい未確認生命体には、神秘も含めた攻撃の一切が通じない可能性があることとか」

 

「………………合って、います」

 

「第二魔法―――平行世界の運営。

 平行世界からの侵略者。

 まるでSFだね。

 その平行世界の侵略者の一味に裏切り者がいて、日本に警告して来るってのも」

 

「慎二」

 

 士郎が慎二を嗜め、慎二が少し自分の言動を省みる。

 慎二は少年を気遣わない。味方なだけのただの未確認生命体として見る。

 士郎は少年を気遣う。彼の同族殺しの苦痛を慮り、一人の少年としても見ているようだ。

 が、クウガは少なくとも表面的には同族殺しを苦痛に感じていないようでもあった。

 

「ワタシ達はかつて…………ある最悪の形で……………

 世界の壁を大きく越える…………種族の革新を迎えたグロンギです…………」

 

 独特の間をもって語るクウガ。

 無知ゆえにちんぷんかんぷんな立香は士郎が大まかに理解できるよう、単語の説明や大雑把なイメージの解説をしているが、クウガの話を聞いている慎二ですら完璧に話が理解できているとは言い難い。

 細かなところで、妙に説明不足が目立つ。

 それはおそらく、クウガがまだ人間の言語で喋ることに慣れていないからだ。

 

「ワタシ達は…………この星にとって、外なる世界からやってきた、侵略者。

 人型の異界常識。独立する別世界。神秘の法則性の外側にいる、人の敵、世界の敵、です」

 

「だから攻撃が通じないって? なんていうか、無茶苦茶だね」

 

「はい」

 

「でも……同族であるお前(クウガ)の攻撃は通用する」

 

「はい。倒せるのは…………ワタシだけ、です」

 

 一瞬、沈黙が流れる。

 もしも、クウガが言っていることが本当ならば、クウガによる同族殺し以外に今の危機を解決する方法は無いということになる。

 士郎と立香の表情からは、同情の色が見て取れた。

 

「この世界にやって来た同族は…………

 ワタシが、必ず、全員の首を刎ねてみせます…………」

 

「あんなに苦戦してたのに?」

 

「…………」

 

「僕は一人じゃ絶対に無理だと思うけどねえ」

 

 運転中の慎二のクウガをやや茶化すような物言いに、立香が思わず眉間に皺を寄せ、士郎が慎二の脇を小突いた。

 

「慎二」

 

「分かってる、分かってるって、意地悪したわけじゃないっての。

 ま、その辺の話は室長代理が正式にしたりするんじゃないかな、多分」

 

 この人はあんまり良い警察官じゃないのかな、と立香は慎二に対し思い始めていた。

 立香は基本的にクウガに好意的だ。

 なのでクウガに対しズケズケと言う慎二にあまり良い感情を抱けず、逆に時々慎二を嗜めている誠実そうな士郎の方に好感を持っている。

 まだ大人でない立香の好感の持ち方は、シンプルだ。

 

「なんつーか。今時正義の味方気取りって流行んないと思うよ。

 自分がやらなきゃやらなきゃって気張ってると衛宮みたいになるしさ」

 

「おい慎二、どういう意味だ」

 

「まんまの意味だよ。

 ってか、ほら、さ?

 一人で気張っても勝てそうにないじゃん?

 自分にできないことはできないことと認めて、一回よく考えた方がいいんじゃないの」

 

 諭すように、慎二は言う。

 クウガは端正な顔を悩ましそうに動かし、腕を組んで何やら考え始めた。

 

「そう…………です、ね。勝つ方法を…………考えてみます」

 

 頷く少年をバックミラー越しに見て、慎二は鼻を鳴らす。

 この場で慎二のひねくれた内心を完全に理解しているのは、衛宮士郎ただ一人。

 付き合いが浅い人間にこの困った男のことは分からない。

 立香はまた少し、この男が良い人なのか悪い人なのかよく分からなくなってしまった。

 

 見えない目を車の外に向け、クウガがぽつりと呟く。

 

「この辺りの、町並みの、空気は、少し不思議ですね…………」

 

 車窓の外の流れる町並みは見えていないはずなのに、まるで見えているかのように言う。

 少年の綺麗な横顔を見つめて、立香は目が見えない人が見ている景色はどんな風なんだろう、と思いを馳せた。

 クウガは話し方も在り方も独特で、そこにいるだけで空気が変わるような気すらする。

 

「この辺りは十数年前に0号が大暴れして粗方燃えたとこだからね。

 直接的被害者三万人以上。

 二次災害なども含めれば死者三万人も超える。

 千代田区の北から文京区まで大火事さ。

 で、焼けた建物を十数年かけてちまちま入れ替えて今に至るってワケ。

 当時0号が出現した地域は都市機能が完全に麻痺してたけど、焼け落ちたのはここだけだ」

 

 慎二がそう言った瞬間、クウガの動きが一瞬止まった。

 

「…………0号」

 

「そ、未確認生命体第0号」

 

 クウガの不思議な反応を見て、立香は"知らないのかな"と思い、補足に入ろうとする。

 

「0号って知らない? ダグバっていう名前の未確認生命体だよ」

 

「―――ダグバ。ン・ダグバ・ゼバ」

 

「あ、知ってるんだ」

 

「…………」

 

 クウガは頷く。

 

「はい」

 

 未確認生命体第0号。

 最強最悪の未確認生命体と認識され、かつて4号によって倒されたグロンギの首領に相当する『最も強きグロンギ』である。

 その暴虐は凄まじく、半ばお遊びの殺戮によって三万人という規模の人間が犠牲となった。

 ただ手をかざすだけであらゆるものをプラズマ化・発火させる『超自然発火』により、万単位の人間を生きたまま焼き尽くし、雨の中の火災まで引き起こしたという。

 4号との東京都内での戦いの最中に、手慰みに焼き尽くされた東京の一角がいくつかあるという話まである始末だ。

 

 0号/ダグバは遊んでいただけだ、という分析もある。

 万単位の人間を遊びで殺し、遊びで東京の一角を炭と灰にしたのだ、という分析である。

 立香から一つ一つ0号の話を聞きながら、何やら考え込んでいく。

 

 クウガはダグバが焼き尽くし人間が再建した町並みの空気を肌で感じながら、ひたすら何かを考え込んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【東京都文京区本駒込 2014/07/31 07:50 p.m.】

 

 到着。

 慎二の運転で到着したその場所は、警察署のような建物だった。

 ただ、普通の警察署より幾分か小さく見える。

 

「ここが例の未確認生命体対策の本拠。

 ああそうだ、ここも0号が焼いた土地の再整理で出来た建物だね。

 僕も詳しいわけじゃないけど、当時未確認生命体対策のための本拠点として作られたとか。

 衛宮、僕らが帰ってきたことを先に中に伝えに行ってくれないか」

 

「ああ、分かった」

 

 先行して士郎が建物に入っていき、立香とクウガも車から降りる。

 車から降りたクウガの手を取り、立香が建物の中に導……こうとしたが、何故かクウガはその場で胸を張り始めた。

 

「ワタシは…………自慢では、ありませんが、負けることが多く…………痛みに強いです」

 

「……? クウガ君、なんで痛みに強いアピールを……?」

 

「注射は…………初めてですが…………」

 

「ここは駐車場であって注射場じゃないよ!?」

 

「おい藤丸! クウガ! 何コントやってるんだ! 僕を待たせるんじゃない!」

 

 結局、慎二が二人まとめて建物の中に引っ張っていくのであった。

 

 中で士郎と合流して、四人で階段を上がっていく。

 道中、クウガと立香は色んな警察官を見かけた。

 デスクで仕事をしている人、銃の管理をしている人、通報の応対をしている人……沢山の警察官が、一つの生物のように動いている。

 廊下で警察官とすれ違うたび、立香はぺこりと頭を下げて、何故彼女がそうしているのかよく分かっていないクウガも真似して頭を一緒に下げていた。

 

「リントの戦士が…………多い…………」

 

「リントの戦士? あ、警察官か。クウガ君から見るとそう見えるんだね」

 

「…………戦士が多いのは、いいことだと、思う」

 

「リントの戦士、か。

 普段あんまり考えないけど、私達を守ってくれてる人達なんだよね。感謝しないと」

 

 クウガと立香の会話を聞いていた慎二が、何かを思った様子で二人の髪をクシャッと撫で、撫でるのが恥ずかしくなったらしく途中からくしゃくしゃにし始めた。

 

「…………?」

 

「あの、髪に癖つけないでください」

 

「生意気なガキンチョどもにはこんくらいの扱いが相応だ。そうだろ衛宮?」

 

「あー二人共、気にしないでくれ。慎二はこういう奴だからさ」

 

 クウガはよくわからない動物を見る目で慎二を見て、立香はセクハラしてくるおっさんを見る目で慎二を見て、士郎は困った奴を見る目で慎二を見て苦笑していた。

 

「だけど、大丈夫なのか? クウガ」

 

「…………?」

 

 歩きながらの士郎の問いに、クウガは首をかしげる。

 

「ここまでの道中でも、お前が日本語下手なのは伝わってきたよ。

 まだあんまり俺達の言葉を正確に理解できてないのも。

 それで齟齬なくそっちの事情を説明できるのか?」

 

「それは…………そう、ですね」

 

「クウガ君そこちょっと出っ張ってるから躓かないよう気を付けて」

 

「ありが、とう、リツカ」

 

 士郎の疑問はもっともだが、クウガはそこに不安を持ってはいないようだ。

 

「でも、大丈夫、です。いざという時は…………頼れる通訳がいるので」

 

「頼れる通訳?」

 

 クウガは立香の手を離し、何も見えない目にて虚空を見つめ、呼びかけた。

 

「カーマ…………カーマ…………いるかい?」

 

「喋るのが苦手だからって私を都合よく使わないでほしいんですけどね」

 

「!?」

 

「ま、いいです。クウガさんが口下手なのは知ってますので」

 

 すると、そこから少女が現れる。

 どこから現れたのか、どうやって現れたのか、全く分からない。

 見ていた者がそこに現れたことだけを理解できる謎めいた出現。

 明らかにまともな人間ではなかった。

 

 年頃はクウガや立香と同じくらいだろうか?

 白い髪のクウガ同様、その少女も白い髪。

 ただしクウガと比べると髪が長くサラサラで、クウガの白が無垢さを感じさせるのに対し、その少女の白は美しさを感じさせる。

 幼さが残る容姿に色気を漂わせているがゆえに、その少女には危うい魅力すら感じられる。

 油断すると、その容姿と色気で道を踏み外してしまいそうで。

 "美人になっていく過程の少女"と表現するのが正しいだろうか。

 

 カーマと呼ばれたその少女と立香を一緒に見ると『美人と可愛い女の子』といった風になるが、カーマとクウガを一緒に見ると姉弟か兄妹のようにも見える。

 そんな風味の容姿。

 

「どこから……いやそもそも誰!?」

 

 今日一日で知らなかったファンタジーをありったけ詰め込まれた立香が、新たなるファンタジーの登場に盛大にうろたえていた。

 カーマはうろたえる立香を見て、可愛らしく小首をかしげ、その慌てぶりにちょっとイタズラ心が湧いたような顔をした。

 

「あなたこそ誰です? さっきまで異性の手を堂々握っちゃってやーらしい」

 

「な、ななな何がやらしいっての!?」

 

「そのくらいで照れる純情っ子なら初めからしなければいいのに……」

 

「は、はー? 高一にもなってこんなことで照れるわけないし?」

 

「こりゃまた普通の子に隷呪が付けられたもんですね……かわいそうに……」

 

 カーマは表情をコロコロを変える。

 容姿の良さもあって、その表情の一つ一つが魅力的だ。

 慎二もちょっとその魅力にほだされかけていた、が……その横に立っている衛宮士郎は、カーマが変な動きをすれば即座に切り捨てられる位置取りを徹底していた。

 優しい表情は変わらないまま、カーマを"よくわからないもの"と定義し、一切の油断も隙も見せていなかった。

 こっわ、と内心でカーマは盛大にビビる。

 

「あの、私イカレグロンギ達と違って切ったら死ぬのでやめてくださいね」

 

「ん? ああ、すまない。そういうつもりで警戒したんじゃないんだ」

 

 士郎の警戒が少し緩み、カーマのチキンハートがほっとする。

 

「クウガ君、知り合い? 仲間? 友達?」

 

「…………セフレ?」

 

「!?」

「!?」

「!?」

 

 士郎、慎二、立香が同時にぎょっとした。

 

 されどカーマは冷静に、かつ呆れた顔で、何やら考え込み始める。

 

「……ん、んー、正義フレンドの略……? クウガさん、どうでしょうか」

 

「あ、そう…………それだね」

 

「それだね、じゃなーい! いや本当にびっくりしたよ今の!?」

 

 カーマの推測。クウガの肯定。

 立香はもう、叫ぶ以外にこのやり場のない感情の出し方を思いつかなかった。

 

「ごめんなさい。この子グロンギだけど俗なことに興味なくて頭あんまり良くないんです」

 

「申し訳ない…………」

 

 二人して頭を下げるクウガとカーマ。

 ああこれは敵とかそういうことはないな、と薄々皆が理解していく。

 

「で、結局なんなのさ。僕や衛宮にそいつがなんなのか説明してよ」

 

「カーマはワタシの仲間…………あ。

 違い、ます。カーマはナカーマというダジャレを言いたかったわけではなく…………」

 

「なんでまともな日本語覚える前にダジャレ概念覚えてんだお前は!

 誰だこいつに日本語教えた奴! 僕は日本語能力をリコール要求するぞ!」

 

「基本私ですけど。カーマちゃんに何か文句があるんですか?」

 

「お前かよ!」

 

「ナカーマちゃんですので。それより何か用事があってここに来たんじゃないんですか?」

 

「ああもう……なんだこれ、なんなんだ衛宮」

 

「俺に聞くなよ……」

 

 情報のすり合わせをするために来たのに、カーマが来てから情報のすり合わせをするための場所に1mmも近付いていない。

 由々しき事態であった。

 

「今の私は基本無害ですよ。

 魔力もほとんど感じないでしょう?

 その辺のペットショップでカブトムシ買ってきたらきっと私より強いと思います」

 

「ええ……?」

 

「今の私の取り柄と言ったら、この可愛さとクウガの意を汲んで言語化することくらいですよ」

 

「うん…………頼りにしてます」

 

「はい、頼りにされます。そういうわけで、情報の齟齬はないと思っていいですよ」

 

「とりあえずはクウガの仲間、って認識しておけばいいか。どうする慎二?」

 

「未確認生命体のクウガ以上に、ここに招き入れて危険な奴っていないんじゃない?」

 

「……お前なぁ」

 

 とにもかくにも、先へと進む。

 行き着いた場所は会議室。

 会議室の前には綺麗な女性が立っていて、士郎と慎二は顔パスで会議室に入っていく。

 クウガは他の人間を真似た所作で、初対面のその人に自己紹介をした。

 

「通信担当の衛宮桜と言います。奥で室長代理がお待ちですよ」

 

「ズ・クウガ・バです……どうぞ、よろしく」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

 部屋の中に入ると、一番奥の席に座る、美しい容姿の女性が目に留まる。

 赤色の髪。形状にこだわりのある眼鏡。

 席の横には、見たことのない形の大きな旅行カバンが置かれていた。

 

 立香とカーマにとっては知らない人であり、クウガにとっては写真で見たことがある人……そして、この日本で探していた人の一人であった。

 

「ようこそ、怪物狩りの城へ」

 

 眼鏡の女性は、不敵に笑った。

 

「室長代理の『蒼崎橙子』だ。その辺の適当な席に座ってくれて構わない」

 

 室長代理・蒼崎橙子。

 警視・間桐慎二。

 刑事・衛宮士郎。

 戦士・クウガ。

 一般人・藤丸立香。

 翻訳・カーマ。

 それぞれが話しやすさを考えつつ思い思いの席に座る。

 橙子はどこか懐かしそうに、クウガへと語りかけた。

 

「あのバカは、『五代雄介』は元気だったか?」

 

「はい…………とても、健やかだったと、思います」

 

「そうか」

 

「あ…………伝言、ありました。

 ユースケからトーコさんへ。

 『青子さんじゃなくて橙子さんが言ってた方が正しかった。海が最高に綺麗だった!』

 …………と、トーコさんに、伝えて欲しいと…………言ってました」

 

「……ふん。そうか。相も変わらず律儀な奴だ」

 

「ワタシも…………見て、来ました。

 トーコさんが…………教えてくれたという、綺麗な海への…………冒険」

 

 橙子は言葉ではなく、かすかな笑みをもって返答とした。

 

 そしてすぐに、呆れたような感嘆したような言葉にし難い表情で、クウガを見る。

 

「しかしなんというか。

 本当に未確認生命体を人間の味方に育ててしまうとは……二千何番目の技だ、これは」

 

「…………育てられて、しまいました」

 

「そうか、育てられてしまったのか、うん」

 

「ユースケのお友達の…………トーコさん。

 トーコさんの、言うことは、ちゃんと聞けと……言われてます……」

 

「友人? ……まあ、あいつが言っていたなら、そうかもしれないな」

 

 ふぅ、と室長代理橙子は息を吐き、眼鏡を押し上げる。

 

「知人の頼みだ。面倒は見てやるから、ちゃんと言うことは聞くように」

 

「はい」

 

「よし。では始めようか、情報のすり合わせだ」

 

 さあ話が始まるぞ、というところで、カーマがするりと立ち上がった。

 

「じゃあまず、私がクウガさんの代わりに軽くまとめますね。あのグロンギは、何なのか」

 

 何故あんな異常な未確認生命体が、突如この世界に現れたのか?

 

 カーマはその解答を、簡潔にまとめることができる。

 

 この最悪を、分かりやすく言語化できる。

 

「彼らは最初の地球で、リント……人類を狩りつくしちゃったグロンギです。

 人類を絶滅させた彼らは考えました。

 退屈だ。

 リントがいない。

 じゃあ、別の世界に行こう。

 他の地球にはまだリントが沢山いるはず。じゃあ、平行世界に行ってみよう……ってね」

 

「―――!?」

 

 士郎達が息を呑み、信じたくない事実を各々の受け止め方で受け止める。

 

 そう、この世界は既に、滅亡のレールに乗っている。

 

 開幕のベルは打ち鳴らされた。

 

「この地球は、彼らの新しいハンティングゲーム会場に選ばれたんですよ」

 

 この世界で、人間(リント)が重ねてきたある罪がある。

 この世界で、怪人(グロンギ)が行わなかったある罪がある。

 

 『絶滅』だ。

 

 狩りすぎて滅ぼす。

 狩りすぎて絶えさせる。

 人間を狩ることを生態としていたグロンギは、その罪だけは成してはいなかった。

 されど今この世界を脅かすグロンギは、その罪を成してしまった未確認生命体。

 幾多の平行世界を渡り歩き、いつか全ての平行世界の人間を絶滅させる狩猟侵略者。

 

 絶やして滅ぼす悪魔達。勝たなければ、この世界に未来はない。

 

 

 




 桜子さん、青子さん、橙子さんという五代雄介に繋がる三色カラーズ
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