究極の闇、『ン・クウガ・ゼバ』   作:ルシエド

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 実は投稿前に書き終わってたの一話だけでそこからずっと自転車操業で書いてます



理解

 ステータス・スペックを数値化し比較したりすることができる、というのが聖杯戦争だ。

 強力なステータスの敵とは戦いを避ける。

 ステータスが低い敵は宝具(ひっさつわざ)やスキルを警戒する。

 サーヴァントの能力を使用しステータス数値などを偽装して、油断させる。

 聖杯戦争の常道と言えるだろう。

 

 グロンギのゲゲル運営進行を担当する『ラ』は、特殊なアイテムを用いることによってグセギス・ゲゲルに限り、ゲゲルの中で戦う者のステータスを可視化することが可能である。

 『ラ』は戦いには加わらない。

 参加者が参加者を殺しても、クウガのような乱入者が参加者を殺しても、何も言わずゲームの進行だけを考え行動を選択する。

 

 ラ・ブウロ・グはビルの屋上から戦いを見下ろし、ドゥサとクウガのステータスを計測。

 

「……」

 

 しようとしたが、クウガの方のスペックが予想以上に低かったため、計測に失敗した。

 やむなく現在のクウガのスペックを測定上の最低値として設定し、それを基準にした測定へと切り替える。

 そうすることで、上手く行った。

 

「欠片を三つ使用しても、欠片一つ分の出力すら引き出せていないのか」

 

 ブウロは溜息を吐いた。

 イレギュラーがいるとゲームは盛り上がるのだが、イレギュラーが弱すぎても白ける結果にしかならない。

 何人かプレイヤーを殺してしまうくらいがちょうどよかろうに、とブウロは考えていた。

 双方のステータスを確認する。

 

「これが、クウガ」

 

筋力:E

耐久:E

敏捷:E

魔力:E

幸運:EX(桁違いに低い)

 

総合戦闘力評価:E

断片出力:E

 

「これが、ドゥサ」

 

筋力:C

耐久:D

敏捷:A

魔力:D

幸運:C

 

総合戦闘力評価:C

断片出力:D

 

「……」

 

 戦いの結末は見えている。

 

 ブウロは穏やかに、リントの所作を真似た動きでクウガに向けて十字を切った。

 

 

 

 

 

 ドゥサは、右肩上がりに熱しやすいタイプである。

 決定的な悪口雑言によって一気に激怒するタイプではない。

 何を言われても怒らないタイプでもない。

 良いことがあっても嫌なことがあっても、時間経過で同じように頭に血が昇っていき、どんどん冷静さを失っていき、どんどん攻撃的になっていくタイプ。

 戦いに酔いやすい、というのがクウガのドゥサ評である。

 

 クウガは死を覚悟していたが、諦めたわけではない。

 ドゥサのこの特性に、クウガは唯一の勝機を見出していた。

 数時間しか間を空けていない連続戦闘。しからば二戦目の今、ドゥサの頭に血を昇らせることはさほど難しくはないはずだ。

 

 頭に血が昇ったドゥサは攻撃的になり、総合的に見ると攻撃力が上昇する。

 そのせいで防御が甘くなり、総合的に見ると防御力が低下する。

 一瞬の隙を突いて、首に全力の一撃を当てられれば、あるいは。

 

 ―――そんな甘い考えを、ズ・クウガ・バは持っていた。

 

「グッ、ガッ、ギッ!?」

 

 甘い考えなど砂糖で出来た城に等しい。突けば崩れる脆いものだ。

 背後を取られたクウガが空中に蹴り上げられ、空中にて跳んで来たドゥサの爪に抉られ、トドメに巨大な尾の振り下ろしにぶっ叩かれ、地面に凄まじい勢いで叩きつけられる。

 路面が崩れて、近くにあった自動販売機が倒れていった。

 

「グッ……!」

 

 本気のメ・ドゥサ・レは強い。

 目を覆いたくなるほどに強い。

 しかもこれすら序の口だった。

 ドゥサが普段ザコ相手には決して使わない奥の手が、闇の中で開帳される。

 

「ギベ*1

 

 街灯に照らされる闇の中、ドゥサが唸る。

 叫ぶのではなく唸る。

 唸りは前に天馬を出した時と同じく、血の色の魔力を滲み出させるが、前回と違いそれはドゥサの全身を包まず、その瞳に集まっていった。

 

「ギベ・クウガ」

 

 地図に消しゴムをかけるように街を消してしまった空翔ける天馬(ベルレフォーン)と同格……いや、それ以上の魔力が瞳に集められ、形を成した。

 

 ドゥサが隠していた秘中の秘。

 頭に血が昇っていなければ、絶対にズ・クウガ・バなどという弱き者には使わなかった、メドゥーサにもメ・ドゥサ・レにも使えない、その二つの融合体ゆえに為せる技。

 殺意の顕現。

 

「ギベ・クウガ」

 

 眼が、輝いた。

 

 全ての眼が、輝いた。

 

 メドゥーサは世界で最も有名な石化の魔眼を持つ怪物。

 その眼に宿る魔眼・キュベレイは二つの(まなこ)で最上級サーヴァントの多くを即死、そうでないサーヴァントも大いに弱体化させてしまう規格外だ。

 二つで十分。

 二つあれば、ほとんどの敵を倒せてしまう最悪の眼球。

 

 繰り返そう。ドゥサの瞳の、全てが輝いた。

 

 ドゥサの頭部の蛇の総数は36対の72体。

 72の頭には、144個の眼球があり、本体の顔も合わせて眼球総数146。

 では、もしも。

 ()()()()()()()()()()宿()()()()()()()

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 魔眼の石化力、拘束力、強制力は、7()3()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ギベ・クウガッ―――『天衝く石よ瞳より来たれ(アンリミテッド・スレイ・キュベレイ)』ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 宝具。

 それは、サーヴァントの切り札。

 神話と伝承に語られる逸話を再現し、時に圧倒的な格上ですら一撃で葬り去る必殺の一。

 その名を口にすることで神秘は奇跡の一撃となり、敵を討つ。

 

 特にデミ・グロンギの場合、そのスキルや宝具が憑依継承(サクスィード・ファンタズム)によって、時に桁違いのレベルにまで昇華されている。

 『石化の魔眼』を持つメドゥーサ。

 『無数の蛇の頭と眼』を持つメ・ドゥサ・レ。

 この組み合わせは、最悪中の最悪だった。

 

「―――!?」

 

 クウガが死ななかったのは、ただの運だ。

 それまであまりにもドゥサにタコ殴りにされ、吹っ飛ばされ、周囲の建物を破壊しながら転がされ続けた結果、その時の彼の前には大鏡があった。

 施設設置用のとてつもなく大きなものだ。

 その後ろに隠れたクウガは、なんとか即死するのを免れ―――されど、街は悪夢に飲み込まれていく。

 

「バンザボゼバ!?*2

 

 146の石化の魔眼は、その眼で見たものを全て石化させる。

 生物も、建物も。

 植物も、動物も。

 有機物も無機物も。

 ありとあらゆるものが石化していく。

 

 空を舞う鳥が石化し落ち、地面を這うアリの全てが石化する。

 透き通ったガラスは許されるかと思いきや石化し、水も石化した。

 地面に転がる石も石であるのに石化される。

 石化した石が更に石化されその状態から更に石化し、過剰な石化効果による構造干渉で"石"という状態を保つことすら不可能になり、砂になって吹き散らされていく。

 そして吹き散らされた砂がまた魔眼の力で石化させられた。

 

 クウガは足元に転がっていた尖った石を握り、念じる。

 尖った石がグロンギの種族能力である物質変換によって剣へと変わり、クウガがそっと鏡の裏から剣を出す。

 鏡の裏から出た瞬間、一瞬で剣は石化し、ものの数秒で過剰石化によって砂へと変わり、砂へと変わった後に石化し、また過剰石化が始まった。

 

「…………剣でこれなら、肉で受ければ…………最悪、か」

 

 不味い。

 何が不味いかと言えば、クウガには『飛び道具』も『飛び込む脚』もないのだ。

 

 ズ・クウガ・バは、グロンギの力の系統樹では『紫の剣士』に属する。

 他と比べて厚く硬い装甲皮膚と、剛力がこの系統の売りだ。

 武器を剣ではなくハンマーにして『重装甲同士の戦いに勝つ』ことを戦略に組み入れたグロンギもいれば、重装甲とスピードを両立したグロンギもいる。

 そしてこの系統の弱点は、青の槍のような特化した素早さも、緑の弓のような飛び道具も、大抵備えていないというところにある。

 

 石化は即死だ。

 重装甲は何もかもが意味が無い。

 ならば一瞬の隙をついて超高速で魔眼の視界の隙間を抜けるか、遠距離から攻撃を重ねてちまちまダメージを与えたり眼球を潰していくくらいしかない。

 どちらもドゥサに通じるかは怪しいが、通じる可能性が僅かにでも有るだけマシだ。

 今のクウガには、そんな僅かな可能性すらない。

 

(鏡を盾に接近?

 不可能。

 敵は体を動かせる。

 この攻撃は目しか使っていない。

 両手両足で滅多打ちにされる。

 鏡が壊されたらそれこそ終わり。

 あの無数の魔眼を封じて一撃で何か決められれば―――)

 

 その時、ミシッ、と嫌な音が鳴った。

 

「…………え」

 

 ミシ、ミシ、と嫌な音が続く。

 音がするのは鏡から。

 壊れている、とクウガが気付くも、逃げ場がない。

 鏡がこのまま壊れれば死亡。鏡の後ろから出ても死亡だ。

 

 神話において、メドゥーサを倒すのに使われた鏡の盾は、一説には伝説の盾アイギスであり、一説には磨き抜かれた金属の盾である。

 すなわち、当時における真の意味での『鏡』たる盾であった。

 現在の鏡は、板の上に銀膜や特殊膜などを重ね、その上に透明なガラスや樹脂などでガラス部を上塗りすることで完成する。

 

 光を反射する銀塗料の隙間には、銀塗料ほどの反射率の無い塗料がある。

 そもそもの話、先程ガラスはそのまま石化させられてしまっている。

 つまり、この鏡ではアンリミテッド・スレイ・キュベレイを防げない。

 崩壊は時間の問題であった。

 英雄ペルセウスの鏡ならともかく、現代の軟弱な鏡に負けるほど、今の魔眼は弱くない。

 

「ッ」

 

 打つ手がない。

 逃げ場がない。

 どうしようもない。

 けれど何もしないなら、そのまま直行デッドエンドだ。

 盾にしていた鏡の角が石化の果ての崩壊を始める。

 

(どうする、どうする、どうする!?)

 

 そして、鏡が崩壊し。

 

 何の策も見つからないまま、クウガとドゥサの間の視線の道を遮るものが何もなくなった。

 

 

 

 

*1
死ね

*2
なんだこれは!?

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