ポケモントレーナー ハチマン 〜ぼーなすとらっく集〜 作:八橋夏目
「ワパ、ワパワパ!」
「ちょ、マシュマロ待ってぇぇぇ!」
この子を拾って二週間。
毎日振り回されてばっかり。可愛いから許しちゃうけど、もうちょっと落ち着かないかなー。
「ユイさんも大変だね………」
「あははは………」
二週間前、久しぶりに隣町のヒヨクシティの港に行ったんだけど、これがあたしの運命なのかな。ウインディのクッキーみたいに船に乗り込んでいたマシュマローーワンパチっていうポケモンーーに体当たりされてしまった。どうやらお腹が空いていたらしく、あたしが持っていたシャラサブレを狙ったみたい。取られちゃったから仕方なくシャラサブレを全部食べさせていると…………誰も探しに来なかったんだよねー。恐らくトレーナーのいない野生のポケモン。どうしようか悩んでたら食べ終えたワンパチがあたしの顔まで舐め始めて、その可愛さにあたしの方がやられてしまい現在に至る。
あ、ちなみにマシュマロは女の子だよ! こんなにやんちゃだけど!
「シュウ、マロン! マシュマロを止めてー!」
目を離すと、というか見ていたとしても何かしらやらかしたがるこのやんちゃ坊はとにかく大変だ。ルカリオのシュウやブリガロンのマロンが激しい技の応酬をしているところに突っ込んでいくくらいには無鉄砲。
「バギ?!」
しまいにはコマチちゃんがガラル地方? へ旅だった翌日にコンコンブルさんからもらったタマゴが孵って生まれたバルキーのビスケまで巻き込まれてしまう。
生まれたばかりで戦い方もよく分かっていないし、逃げることもままならないんだよね……………。
「ビスケ、大丈夫?!」
「バ、バギーッ!」
ああもうほら泣いちゃったじゃん!
「ルガ………」
「ワパワパ!」
「ありがと、シュウ」
マシュマロの首根っこを掴んで捕まえてくれたシュウからマシュマロを受け取った。そしてビスケを慰めてくれるようだ。頼もしい限りだよ。それに比べて………もう、今度こそ逃がさないからね!
「マシュマロ、ちょっと落ち着くし! いくらお腹空いたからって走り回らないの! 周りは特訓してたりする子もいるんだから、みんなが危ない目に遭うでしょ! それにマシュマロだって怪我しちゃうんだからね?!」
「ワパワパ!」
「分かった!?」
「ワパワパ!」
はあ………、絶対分かってないよぅ。
ヒッキー、ゆきのん、マジでどうしたらいいのー!
「はあ………」
「さすがに三匹相手じゃ手が足りないか………」
「ほんとだよー。もうなんでみんなしてやんちゃなのかなー」
「こっちははしゃぎ回るだけだけど、向こうはバトルにすら参加したがるもんねー」
コルニちゃんが指す向こうとは、グラエナのサブレに挑んでいるイワンコのスコーンのこと。あっちはマロンやシュウにまでバトルに挑んでるんだもんなー。
確かにバトルセンスはあるんだけど、まだまだいなされている状態。レベルの違いを気にしないそのやる気は特性のせいなのか元からの性格なのか…………。
「はあ………、子育てってこんな感じなのかなー」
「おやおや? それはいわゆるおめでた報告というやつですかな?」
「な、ななななんでそうなるし! あ、ああああたしはまだ! まだなんだからね!」
「まだ? ということはいずれ………」
「コルニちゃんもヒッキーのこと好きなくせに」
「うっ………」
もう、別に隠さなくてもいいのに。
ヒッキー以外みんな気づいてるからね?
「姉ちゃん、勝負だよ!」
おっと、お客さんだね。
「あ、ショコラ。マシュマロのことお願いしていい?」
「ブル!」
マシュマロにシャラサブレをあげて落ち着かせると、グランブルのショコラにマシュマロを預けた。マシュマロはショコラにだけは従順というか大人しい。前に一度ショコラにやんちゃして怒られたのがトラウマなのかなー。でも嫌ってるわけでもないようで、たまにやんちゃしに行ってたりする。姉妹みたいな感じかなー。ゆきのんとハルノさんみたいに。
「お、少年久しぶりだね」
「バッジ七つ集めて来たぜ!」
「へぇ、やるじゃん! てことは?」
「そうだよ! ここが最後!」
「そっかそっか」
あ、いつぞやの少年君じゃん! 前に来たのって三ヶ月弱くらい前だったっけ?
「久しぶり、少年君!」
「………ねぇ、なんか増えてない?」
「あー、ここ一ヶ月の間に三体も増えちゃって…………」
「おじいちゃんからタマゴもらって、ヒヨクの港市場でイワンコもらって、しまいにはガラル地方の船に乗って来たワンパチを拾って。ほんと毎日振り回されてるよ、ユイさんが」
「たはは………」
でもみんな可愛いし、なんだかんだあたしの言うことも聞いてくれてるもん。大変だけど、大事な子たちのためならあたしはいくらでも頑張れるよ!
「まあでも、オレの方がいっぱい仲間にしたもんね!」
「前は確かゲコガシラ一体だけだったっけ?」
「うん、でも今はフルバトルだってできるからね!」
「そっか、なら約束通りバトルだね!」
「あー、それなんだけどさー」
「えっ? まさかダメなの?!」
「あ、いや、そうじゃなくて。と、その前に一つ確認するけど、ユイさんとフルバトルできるって言ったらやりたい?」
「え? できるの!? できるならやりたい! です!」
取ってつけたような敬語まで……………。
そんなにあたしとフルバトルしたいの?
えへへ、それはなんか嬉しいなー。
「オッケー。なら、こうしよう。ユイさんとのフルバトルに勝てたらバッジをあげるよ」
「ほんとに?!」
「ちょ、コルニちゃん?!」
それはジムリーダーとしてまずくない?!
ジムはジムリーダーとバトルして勝ったらバッジがもらえるのがルールでしょ? ただその挑戦者が増えて来たからこうしてあたしがジムトレーナーとして挑戦者をしぼってるんであって…………。
あたしがバッジ渡しちゃったらコルニちゃんがいる意味ないじゃん!
それに………。
「あたし、かくとうタイプだけでフルバトル出来ないよ?!」
「………ユイさん、ここはかくとうタイプ専門のジムだからさ、いつもはかくとうタイプを持つマロンとシュウだけ……それもメインをシュウでの選出をお願いしてるけど、別に規定ってわけじゃないんだよね」
「え? そうなの?」
てっきりそういうルールだと思ってたんだけど。
「うん、何ならオールマイティなジムだってあっていいんだよ。ただ、そうなるとやっぱりハードルが高くなるでしょ? タイプが統一されたパーティなら弱点は同じだから、攻略も分かりやすい。けど、オールマイティなパーティは弱点がバラバラで他のポケモンで弱点を突かれることだってあるじゃん?」
「うん、確かにそうだね………ゆきのんの四天王戦見てて思ったよ。ズミさんやガンピさんは弱点を突けばって感じだったけど、ヒッキー相手じゃ隙がなさすぎだもん。タイプがバラバラな分カバーしてるっていうか。まあ、それはゆきのんにも言えてたことだけど」
それでもゆきのんのポケモンは三体がこおりタイプだったから、半分は四天王の人たち寄りとも言えちゃう。だからこそ、ヒッキーのバラバラパーティは攻略できる気がしない。改めて、ゆきのんってスゴいんだね…………。
「でしょ? でもズミさんやガンピさんも強かった」
「うん」
「それは二人とも対策をしてるからだよ。そしてそれはジムリーダーも同じ。各専門タイプに分かれて、一貫した弱点に対策を打つ。そんな彼らとバトルして勝ったトレーナーは、本物だと思わない?」
コルニちゃんの言う通りかも。
四天王二人に勝ったゆきのんの実力は本物だもん!
それにイロハちゃんだって。リーグ大会は途中で負けちゃったけど、四天王の人たちに認められてるし、コマチちゃんもヒッキーとあんなバトルができてたんだ。あれで素質がないなんて絶対誰も思わないよ!
「ジムリーダーの役目って、そうやってトレーナーの素質を引き出すことだからさ」
あ、そっか………。
そういうことなんだ。
だからジムリーダーはバトルするんだね!
「で、あたしは少年君の素質を引き出せるのはユイさんだと思うんだよ」
「へ? あたし?」
「うん。少年君が前来た時に負けた後、アタシがフォローするべきだったのに、ユイさんがそっちまでやっちゃったからさー。なら最後まで責任取ってもらおうかなーって」
え?
あたしコルニちゃんの仕事取っちゃってたの?!
「だからあたしとフルバトルってこと?」
「そういうこと。だから、ジムリーダー代理として全力でやっちゃって」
「んんー、これでいいのかなー。でもジムリーダーがいいって言ってるんだし………分かったよ。それに約束だったもんね、あたしの全力を見せるって。少年君、かかっておいで。ゆきのんに鍛えられたあたしの全力、見せてあげる!」
「望むところだ!」
フルバトルなんてリーグ大会の時以来かも。
「アンアン!」
「ん? スコーンやりたいの?」
「アン!」
バトルと聞いてスコーンが飛びついて来た。尻尾まで振っている。
まるで自分も参加させろと言わんばかりに鳴き始め、シュウやマロンにアイコンタクトを取るとやれやれという感じだ。なんだかんだ寛大だよね、みんな。
「よし、ならやろっか!」
「アンアン!」
メンバーはこのままマロンとシュウ、それにクッキーとサブレにするとして、あと誰にしよっかなー。ビスケはまだバトルできるレベルじゃないし。ショコラにはマシュマロを抑えておいてほしいし、そうなるとマーブルかなー。
あ、ちなみにあたしのポケモンはみんなこのジムにいたりする。しかもずっとボールから出して。
コンコンブルさんからタマゴをもらった当初は、育て屋で生活してもらおうかなーって思ってたんだけど、タマゴが孵る前にスコーンをもらって、ビスケが生まれて、マシュマロを拾ってって立て続けに増えちゃったから、二人にお願いしてここでみんなで生活してるんだ。それに案外こっちの方が便利だしね。挑戦者が来ない時はみんなで特訓して、挑戦者が来たらマロンとシュウとで仕事をする。他のみんなにはそのバトルを見学してもらい、挑戦者が帰ったら各々試したいことを試してみたりと色々できちゃうんだよ。しかもコルニちゃんも相手してくれるからみんなにいい刺激にもなるし。
「シュウ、マロン、サブレ、マーブル、クッキー、スコーン。一旦戻って」
ボール置き台から六個取り、それぞれをボールへと戻した。今ので少年君には出すメンバーを覚えられちゃったかな…………?
「コルニちゃん、準備おっけーだよ!」
ショコラがビスケとマシュマロを連れて観客席に移動したのを見て、コルニちゃんに合図を送る。
「オレもいつでもいいよ!」
「それじゃ、ルール確認ね。使用ポケモンは六体。どちらかのポケモンが六体全て戦闘不能になったら負け。技の使用は四つまで。交代は自由。オッケー?」
「「うん!」」
「なら、バトル始め!」
最初は………あ、うん、主張が強すぎるよ。そんなにバトルしたかったの?
「いくぞ、ヤミカラス!」
「いくよ、スコーン!」
「アァーッ!」
「アンアン!」
最初はヤミカラスか。マロン辺りを出すと思ったのかな?
「姉ちゃん、さっき聞きそびれたけど、そのポケモンって?」
あ、そっか。
イワンコってカロス地方にはいないんだっけ?
「イワンコ、いわタイプのポケモンだよ。アローラ地方とかに生息してるポケモンなんだって」
「イワンコ………いや、タイプ相性だけがバトルじゃない!」
どうやら出だしが不利になったことは理解したみたい。ここまで来る間にいろんなポケモンに出会って、いろんなポケモンのタイプを覚えて来たんだね。
「突っ込め!」
「スコーン、ステルスロック!」
スコーンはシュウやマロンとバトルしたいみたいだけど、実際に覚えてる技が二人とやり合えるだけのものじゃないんだよねー。それを分かってないまま二人とやろうとするからかえって危なく感じちゃう。それくらい二人のバトルは激しくなるんだよ。
「はがねのつばさ!」
フィールドに仕掛けをし終えたところで、ヤミカラスの硬くした翼に打たれた。効果は抜群だけど、スコーンはこれくらいいつものことなんだよね。逆にこれよりももっと激しくやってあげないと気がすまないというか…………。やる気がありすぎるのも大変だよ。
「スコーン、がんせきふうじ!」
くるりと回って少年君のところに戻ろうとヤミカラスの頭の上から、次々と岩を落としていく。それもヤミカラスの目の前に来るように。いきなり目の前に現れた岩に驚いてバランスを崩したヤミカラスは、それから次々と岩に打たれ、地面に落とされた。
「ヤミカラス!?」
あたしが知らない間にマロンとシュウが教えたみたい。初めて見せられた時はかなり驚いたなー。いわおとしからがんせきふうじに進化してるんだもん。サイズも大きくなってるし。マロンもシュウも仕方なくって感じだったけどね。でもそれはスコーンには内緒。今はこうやって技を覚えていってくれればいいからね。
「ほえる!」
「アオオオォォォォォォンンン!!」
トドメとまではいってないし、追撃して決めるのがいいんだろうけど、生憎スコーンはこれくらいしか攻撃技がない。一応かみつくもあるけれど、あの岩の下にいるヤミカラスに噛みつきにいくには岩が邪魔。退けていたらそれこそ反撃の隙を与えるだけ。それならステルスロックを発動させるようにした方が賢いって、ヒッキーなら言うんだろうなー。
スコーンの吠えでヤミカラスは強制的に少年君のところのボールへと吸い込まれていった。そして代わりにクイタラン……だったよね? 赤いポケモンが出てきた。
「クタ………!?」
うん、ちゃんと成功してるみたいだね。
「ステルスロックにほえる………。そんな使い方があるんだ………」
「そうだよー。驚きだよね。あたしも教えてもらった時はみんなよくこんなこと思いつくなーって思ったくらいだよ」
ゆきのんにはいろいろとコンボ技なるものを叩きこまれた。その技一つでは使いにくくても他の技と組み合わせることで化けるって言ってたっけ。確かにステルスロックは化けたと思う。交代や戦闘不能で次のポケモンが出てくる度に岩が浮き出て攻撃するんだもん。強制的に交代なんてさせられてたら、どうしようもないもんね。
「………だったら! クイタラン、じごくづき!」
早速クイタランが右の拳を黒く光らせて飛び込んで来た。
じごくづきは確かあくタイプの技で…………なんか効果があったような………。
「スコーン、クイタランの拳にかみつく!」
身体の一部を使った技であるなら、その技を封じるように動きなさい。
ゆきのんはそう教えてくれた。
逃げるなら闇雲に逃げるんじゃなくて引きつけてから。受け止めるなら勢いをつける前に。攻撃するならその技に対して。
「っ?! クイタラン、左手使え!」
引きつけてから躱すのはまだ出来ない。受け止めるには技がない。しかも攻撃が好きな性格だから打ち消すように指示したけど、少年君の咄嗟の判断で別方向からも攻撃されてしまった。そしてそのままクイタランに捕まってしまい………。
「スコーン、ほえ………!」
そうだ、思い出した!
じごくづきはもらえばしばらく声が出せなくなる技だった!
よく見るとスコーンの喉が腫れている。これじゃ交代もさせられない!
「ギガドレイン!」
やるなぁ、少年君。
まさかここまで的確な判断が出来るようになってるなんて………。
「………イワンコ、戦闘不能」
「よっしゃ!」
何気にこれがスコーンの初陣。勝たせてあげたかったけれど、バトルに出すのもまだ早かったとも思ってる。
「ナイスファイト、スコーン。もっともっと強くならなくちゃだね」
でも、これがいい経験になってくれればいいな………。
「コルニちゃん! 少年君、強くなってるよ!」
「え、ほ、ほんとに?!」
「うん、アタシもそう思ったよ。少年、クイタランのじごくづきは見事だった。ほえるという音技を喉を狙う技で封じて隙を作りトドメを刺す。今のはトレーナーとしての成長を感じられる一撃だったよ」
あたしの評価にコルニちゃんも賛同してくれた。
少年君は強くなった。二ヶ月前よりもトレーナーとして実力をつけて来たのだ。あたしだったらまだ燻ってた頃だっていうのに。これは、コマチちゃんやイロハちゃんみたいになっちゃったりもするのかも………。
「よっしゃ、ならまだまだいくよ!」
「あ、でもユイさんを甘く見ない方がいいよ。多分、ここからだから」
もー、やだなー、コルニちゃんは。人を何だと思ってるんだろ。
「クッキー、いくよ!」
あたしの次のポケモンはクッキー。ヒッキーとバトルした時にやられたほのおタイプ同士の対決。わざと同じタイプをぶつけることで相手に本来の戦い方をさせない方法があるって分かったのだ。しかも特性がもらいびだからほのおタイプの技は効果がない。こんなバトルを思いつく人ってどういう頭のつくりしてるんだろうね。
「しんそく!」
まずは先制攻撃。
ヘルガーとバトルした時よりも速くなった。だから避けられるポケモンはそういないと思う。ゲッコウガあたりなら見えてそうだけど。
「速いっ!? く、クイタラン、じごくづき!」
「クッキー!」
クッキーに呼びかけるとすぐさまあたしのところまで戻って来た。普段からしんそくで突撃したら相手が態勢を立て直す間に戻って来るように言ってあるのだ。反撃が来るのなんて分かってるんだから、そんな相手からは離れてしまえばいいんだよ、とはコルニちゃん。ヒッキーもそういう戦い方してたなーと思って取り入れている。
「届かない………!」
ん?
クイタランがきのみを取り出して食べ始めたね。まだそんなにダメージ入ったとは思ってなかったんだけどなー。計算違い?
「今のでもうくいしんぼうが発動するの………? 姉ちゃん、強すぎ」
くいしんぼう?
特性、だったっけ?
まあ、見たところきのみを食べてるし、名前からして早めにきのみを食べちゃう特性だね。
「離れてる相手には、ほのおのムチ!」
ふふっ、これは一手もらっちゃったかな。
「クッキー?!」
それっぽく焦ってみせる。
「クイタラン、そのままじごくづき!」
すると簡単に掛かってしまった。
うーん、イロハちゃんみたいな相手にはまだまだ翻弄させられそうだなー。
「しんそく」
まあ、これも経験だよ、少年君!
あたしもイロハちゃんにたくさんやられたからね! 女の強かさも味わっておくべきだよ!
「クイタラン!?」
うん、ちゃんともらいびも発動してるみたいだね。クッキーが赤いオーラを纏っている。
「ど、どうして………っ?」
「クッキーの特性はもらいび、だからだよ」
打倒ヒッキーを掲げるなら、これくらいは仕掛けて来るって可能性をなくしちゃダメだよ。ヒッキーは相手の嫌な一手を突くのが上手いんだから。逆に掌で踊らされているフリをするくらいじゃないと。まあ、そういうあたしも出来ないんだけどね。ヒッキー強すぎるんだよ。そうでなくてもゲッコウガがヒッキーと似たような思考回路してるからすぐにバレるし。
「もらいび………だから敢えてほのおタイプを……………っ!」
「そういうこと! クッキー、もう一度しんそく!」
ジムトレーナーとしてシャラシティに来る前にゆきのんから言われた。『バトルの主導権は渡してはダメよ。むしろ挑戦者があなたから主導権を奪うことが出来ないようであれば、ジムリーダーに挑む価値がないくらいの気持ちで挑戦者を待ち受けなさい』って。
ゆきのんなりのあたしへの気遣いだったんだろうけど、これが結構為になっていたりする。連勝が続いているのもバトルの主導権を意識してるからだ。唯一掴めなかった挑戦者はホウエン地方のチャンピオン、ダイゴさんだけである。あの人は同じようにやっていたのに、最初から奪われていた気がする。
「ま、まもる!」
そんなこんなしてる内に、クッキーのしんそくをクイタランは防壁を貼ることで防いでしまった。
「ほのおのムチ!」
………効果がないとさっき教えたはず。なのに懲りずに使ってくるなんて、他に何か仕掛けようとしてるんだね。
「ギガドレイン!」
なるほどー、ムチを伝って体力を奪うのか。それは考えたことなかったなー……。
「甘いなー、ほんとに甘い。クッキー、振り切って! トドメのしんそく!」
でも甘い。
ほのおのムチの締めが緩いし、そもそも効果が発揮されてないんだ。抜け出すことなんて簡単だよ。
「クイタラン!?」
「クイタラン、戦闘不能!」
ふぅ、これでおあいこだね。
「ユイさん、性格悪いね」
「えー、ヒッキーがやってたことやっただけじゃん」
「そりゃそうだけど。そこを取り入れること自体が………」
性格悪いなんて、これも一つの手じゃん。あたしはこれやられた時になるほどーって思ったんだよ?
「タイプと特性だけでここまで出来なくなるなんて…………。今までこんなことなかったのに」
まあ、ジムはそれぞれ専門タイプがあるからね。同じタイプを出すなんてことは中々ないだろうし。少年君もそういう風にして来たんだろうなー。
「タイプと特性で来るなら、ゲッコウガ! いくよ!」
次はゲッコウガか。
みず・あくタイプ。クッキーの弱点を突くことで今の戦い方はさせないってことだね。それにしんそくも使わせないって考えもあるんだろうなー。
「コガッ!?」
ステルスロックが発動。
今の内にフィールドを整えておこう。
「クッキー、にほんばれ!」
みずタイプの対策にもなるにほんばれ。
これでゲッコウガの攻撃力は半減したと思ってもいい。あとはあの素早い動きをどう対処するかだね。
「しんそく!」
まずは高速で突撃。
でもこれは躱してくるはず。
「ゲッコウガ、躱してみずしゅりけん!」
うん、ここまでは予想通り。
「クッキー、切り返して!」
二歩で切り返し、再度ゲッコウガへと突撃していく。その先には水の手裏剣が飛んできているけれど気にしない。
「インファイト!」
手脚による猛攻撃。
クッキーの場合、脚しかないけど。上からのしかかるような態勢に持って行けたら両脚攻撃に切り替えられるけれど、ゲッコウガ相手には難しそう。
それでもゲッコウガには効果抜群。一発で戦闘不能に追い込みたいけれど、少年君のゲッコウガは恐らくエース級。他のポケモンたちよりも強く育っているはずだから、それも難しいかもしれない。
「ゲッコウガ、大丈夫?!」
「コ、ガ………!」
うん、まだいけるみたいだね。
「あくのはどう!」
「クッキー、だいもんじ!」
遠距離からの攻撃で来ると思ったよ。近づけばまたインファイトを打ち込むつもりだし。だからこっちも炎の大の字の壁で黒いオーラを受け止めた。
「………く、効いてない……………」
さて、少年君。
ここからどうするのかな?
「ゲッコウガ、一旦戻れ!」
ありゃ、交代か。
まあ、今のフィールドでは日差しが強い状態だしみずタイプのゲッコウガには不向きだもんね。仕掛けたあたしが言うのもアレだけど。
「ガラガラ!」
ガラガラ………じめんタイプだっけ?
頭が骨なんだよね。ずつきとか注意した方がいいかも。
「ガラッ!?」
「ステルスロック………厄介すぎるな」
いわタイプの技だしザクロさんとか使いそうなのに、使わなかったのかな。あたしらがジム戦しに行った時は使ってきたのに。
「クッキー、しんそく!」
「っ、ガラガラ! ボーンラッシュ! 受け止めろ!」
しんそくが使えるのはあと二回くらい。それ以上はクッキーの脚によくない。これでも特訓して使える回数を増やしたんだけど、やっぱり瞬間移動並の突撃は負荷が大きいだよね。
その技をガラガラの太い骨に受け止められてしまった。そうなるとこのまま押し返されるだろう。
「そのまますてみタックル!」
「クッキー、だいもんじ!」
予想通り、クッキーは押し返された。そして勢いをそのままに全身で突進してくる。
こちらも炎の大の字で勢いを殺しにかかる。
「ガララ!!」
「ウガゥ!?」
あたしの前まで突き飛ばされたクッキーは身体を地面に打ち付け、態勢を取り直した。
ガラガラも少年君のところに戻り、同時に日差しが弱まった。これでほのおタイプの技の威力は元通り、みずタイプの技の威力も元通り。でも、ゲッコウガを出してくることはないと思う。あたしの直感がそう告げているのだ。
「ガラガラ、まだまだいくぞ!」
ガラガラの様子を見る限り、反動のダメージを負っていないように見える。確か特性にダメージを受けないものがあったはず。ガラガラの特性もそれなのかもしれない。
「ホネブーメラン!」
なるほど、そのためにあっちに戻ったのか。ボーンラッシュもすてみタックルも近距離でしか技を当てられない。でもホネブーメランはその名の通り骨を投げる遠距離からでも攻撃できる。
けど、その速さならクッキーには意味ないよ。
「クッキー、しんそく!」
「くそっ、ガラガラ! すてみタックル!」
しんそくでブーメランを躱しながら突進。
それに反応して、ガラガラも突進してくる。
二体の猛進がぶつかり合い、勢いが勝るクッキーがガラガラを突き飛ばした。
「諦めるな! ガラガラ!!」
「ガ、ガラッ!!」
それでもなおガラガラの目は死んでなくて、地面に拳を叩きつけ、地面から岩を突き出してきた。
「ウガゥッ?!」
予想外のことにあたしもクッキーも反応できなくて、クッキーは地面から突き出した岩に突き飛ばされてしまう。
「今のは…………?」
あ、少年君も想定外だったんだね。
「ストーンエッジ、だね。ガラガラの最後まで諦めない心が咄嗟の閃きを生んだんだよ」
コルニちゃんの解説でようやく理解した。人間、予想外のことが起きると一瞬頭が回らなくなるよね。
「さて………ガラガラ、ウインディ、共に戦闘不能!」
まさかクッキーがやられるとは………。
あたしのポケモンの中でも強い方なのに。連戦で弱点タイプとくれば相討ちにできただけでもすごいことなのかな?
ヒッキーやゆきのんを見てるからか、そういう感覚がズレてしまっている気がする。
「クッキー、お疲れ様。ゆっくり休んでね」
「ガラガラ、やったぞ! ウインディを倒したぞ!」
「ガラ……」
そんなに喜ばなくても。
まあ、気持ちは分かるけど。あたしもヒッキーのポケモン倒せたってだけで喜んじゃうし。
あれ…………? ってことはあたしって少年君の中ではヒッキーみたいな存在なの?!
うわ、うわわわ、なんかそう思ったら気恥ずかしくなってきたよ!
だって、あたしだよ!? ヒッキーやゆきのんみたいなすごいトレーナーじゃないんだよ!?
「ユイさん、どしたの?」
「うん、いや、うん、なんでもない、よ………?」
落ち着け、あたし。たまたま、たまたまだよ。少年君の初めてのジム戦の相手だったから思い入れが強いだけ。うん、あたしはそんな強くない。まだまだ知らないことだらけだし、コルニちゃんみたいに専門的にもなれていないんだ。思い上がっちゃダメ。
「マロン、次お願いね」
「ガロ!」
切り替えよう。
今はバトルに集中だ。
「ブリガロン………、それならヤミカラス!」
マロンを見ただけでひこうタイプを選択してきたか。
「カーッ!?」
でもステルスロックのダメージはひこうタイプには大きいんだよ。
「くっ、まずは先制だ! ヤミカラス、ねっぷう!」
マロンには効果抜群。これを起点に接近戦を考えてるのかな。
「マロン、ジャイロボール!」
マロンはその場でジャイロ回転を始める。
すると送り込まれてくる熱風を霧散させた。
「………はっ? えっ?」
あー、ついてこれてないか。やっぱりこういう技の使い方って思いつかないよね! 絶対ヒッキーたちの頭のつくりが変なんだよ!
「技にはこういう使い方もあるみたいだよ。ちなみにあたしが考え出した方法じゃないからね!」
「ほんとに人なの?」
「人だよ、人間なんだよ。あ、いや、ポケモンの方も同じような頭のがいるけど」
「…………世界って広いんだね」
「ほんとにね」
さて、次はどうくるかな?
起点作りも失敗したんだし、直接来そうだけど。
「すーはー………! ヤミカラス、かげぶんしん!」
おおー、かげぶんしん覚えてたんだ。
それならこっちも。
「マロン、ビルドアップ!」
マロンがマッスルポーズを決めて筋肉を活性化させた。
これで迎え撃つ準備はできたよ。
「ドリルくちばし!」
ヒッキーのポケモンたちのかげぶんしんよりは数は少ない。けど、本体を見極めるのが難しいくらいはいる。そんな時にはやっぱりこれだね。
「ニードルガード!」
マロンの十八番といってもいい技。
姿勢を低くし、両腕を顔の前で重ねた。そこへヤミカラスが次々と襲いかかってくる。
「カーッ!?」
かかった!
正面の方から痛がるうめき声が上がった。
ニードルガードは攻撃を防ぐだけでなく、直接攻撃してきた相手に身体のトゲで逆に攻撃する防御技。
「マロン、正面だよ! ドレインパンチ!」
さっきはギガドレインを使われたからね。こっちにも回復できる技があることを教えてあげるよ。
「カァーッ!?」
「ヤミカラス?!」
あと一発くらい…………あれ?
「………こりゃ伸びてるね。ヤミカラス、戦闘不能!」
戦闘不能になっちゃった………。
そんなにダメージ与えてたかなー。
「くそぅっ!」
ちょっと予想外。そんなにステルスロックが刺さってたんだね。恐るべしステルスロック。
「攻めるポケモンから守るポケモンまで、姉ちゃん幅広すぎ」
「たはは………、別にそういうつもりで仲間にしてたわけじゃないんだけどねー。なんか流れでというか懐かれたというか…………」
バトルしてゲットした子いないからなぁ。
ブリーダーの人からママに買ってもらったヒッキーによく懐いてる子。プラターヌ博士からもらった初めての子。旅の道中で仲良くなった絵描きっ子。緊急時に協力してくれた元気っ子。初めてバトルして捕まえようとして先に懐かれてしまった変態っ子。お菓子が大好きで追いてきた女の子。タマゴから孵った赤子。ヒヨクの港でもらったバトルっ子。シャラサブレに飛びついてきた迷子。こうしてみるとヒッキーといい勝負かもしれない。
「やっぱり進化を考えた方がいいのかな………」
ヤミカラスをボールに戻しながら、少年君はそう呟いた。
「確かにそれも一つの手だね。アタシもとある事件をきっかけにポケモンたちを進化させることにしたし。でもちゃんとみんなの意志を確認してからだけどね」
「うん、あたしも強引な進化は好きじゃないなー。ポケモンたちも生き物。自分の思いってものもあるんだし、そこは確認してあげた方がいいよ」
「ん、だよね。分かった」
ポケモンの進化はポケモン自身が強くなりたいって思いが込められてると思う。だからあたしはそういう思いを大事にしたい。ポケモン自身がまだ進化したくないっていうのなら、それがその子にとっての一番だと思うもん。
「よし、クレベース、いくよ!」
五体目はクレベースか。見た目の通りのこおりタイプだよね。マロンにとっては苦手なタイプだけれど、あっちもかくとうタイプは苦手なタイプだから、イーブンかな。
「クベ……ッ!?」
ステルスロックでまずはダメージ。
硬いポケモンだからなぁ。ウルップさんの時も苦戦したし。
「マロン、まずはビルドアップだよ!」
さっきもしたけどもう一度。あの硬い氷を割るにはこれくらいしないと。
「クレベース、つららばり!」
少年君がそういうとクレベースはいくつもの氷柱を作り上げた。これ、さっきと同じ展開だね。
「ジャイロボール!」
ジャイロ回転で飛んでくる氷柱を次々と弾き砕いていく。
「なっ………!? そうだった、ジャイロボールは…………」
そんでもってジャイロボールははがねタイプの技。こおりタイプには効果抜群なのだよ。
「もう一度、ジャイロボール!」
再度ジャイロ回転し、今度はそのまま距離を詰めていく。さあ、少年君。君はどうするのかな?
「ほのおタイプにはほのおタイプ…………! それなら、ジャイロボールにはジャイロボールだっ! クレベース!」
おおー、そうきたか。
面白いよ、少年君!
そうだよ! あたしが見たかったのはこういうのだよ!
「いっけーっ!」
「ガロンッ!?」
あっ!?
今のは………偶然? それとも狙ったの?
「そのままゆきなだれ!」
ジャイロ回転をジャイロ回転で無に還されて、バランスを崩したマロンの頭の上から大量の雪が降り注いだ。降り注ぐというかドカッ! と落ちて来たって感じ。あれ、巻き込まれたら骨折とかしそう。
「マロン! 大丈夫?!」
「…………ガロ!」
呼びかけると雪に埋もれたマロンが顔を出した。よかった、戦闘不能にはなってなかったよ。でも今のはすごかった。狙ってやったのだったらすごいことだよ!
「クレベース、ブリガロンに反撃の隙を与えないで! じならし!」
うん、これでいい。
ようやくバトルっぽくなってきたよ!
「マロン、ビルドアップ!」
雪に身体が埋もれた状態じゃ、どっちにしろ躱せない。なら、まずは防御力を上げて少しでも受けるダメージを減らす!
「ガッ!?」
クレベースの足踏みとともに地面が揺れ、再度バランスを崩したマロンは雪の上へと倒れ込んだ。
「つららばり!」
あ、ヤバい!
背中から倒れちゃってる!?
「っ、そうだ! マロン、ジャイロボール! 背中を使って! 腕はニードルガードの時みたいにね!」
マロンの背中はボールのように丸くなっている。だから背中で回転して盾のような両腕で受け、氷柱を砕く。
「くっ、ジャイロボール!」
そして雪の高低差を生かして立ち上がる!
「後ろから来たよ! ニードルガード!」
丁度立ち上がった背後からジャイロ回転したクレベースが襲いかかってきた。
それを背中からもトゲを出してガード。クレベースの勢いが強かったためか、上手く弾き返ってくれた。
「ドレインパンチ!」
そして振り向き様に拳を叩きこんだ。弾き飛ばぶ勢いは加速し、体力も吸収していく。
「クレベース!?」
少年君の前に倒れこんだクレベースは、それでもなお立ち上がろうともがいている。まだ戦う気持ちはあるんだね。
「………負けたくないもんな。クレベース、じならし!」
「クー、ベス………ッ!」
起き上がった。そして足踏みを始めた…………ところで勢いをなくし、また地面に倒れこんでいく。
「………クレベース、戦闘不能!」
最後まで足掻いたけど、限界みたいだね。
でも今のバトルはよかった。
「………ありがとな、クレベース。お前の負けん気は無駄にしないぞ」
クレベースの負けん気は少年君に何か伝えられたみたいだね。そうだよ、そうこなくっちゃ。
「マロン、お疲れ様。あとはシュウに任せて」
おかげでちょっと早いけど、マロンを休ませることにした。
「ゲッコウガ、巻き返すぞ!」
「シュウ、いくよ!」
あ、もう一度ゲッコウガなんだ。
もしかして六体目のポケモンが切り札なのかな。
「コガッ………!?」
…………フルバトルでのステルスロックって、なんか、危険だね。
「シュウ、しんそく!」
急加速し、接近。
しんそくはクッキーだけが使える技じゃないんだよ!
「躱せ、ゲッコウガ!」
これを躱せるかどうかでゲッコウガの速さは分かる。
「コガッ!」
躱した!
「みずのはどう!」
みずのはどう。
ヒッキーのゲッコウガみたいに変幻自在に変わるわけではないみたいだね。
それなら!
「シュウ、水の先だよ!」
そのまま水を追えばいい。
ゲッコウガはそこにいるし、シュウの速さならなんてことはない!
「インファイト!」
「めざめるパワー!」
めざめるパワー?!
それって厨二が自分のポケモン全員に覚えさせてる技じゃん!
なんかピカーッて光るやつ!
「ルガゥ!?」
今のはすごくタイミングがよかった。まさか接近させてから使ってくるなんて。そもそもめざめるパワーを使えるなんてことすら頭になかったよ。ヒッキーいわく、引き出すのに相当の鍛錬が必要だって。そんな難しい技を少年君が特訓してるとは考えてもいなかったよ。ジムトレーナー失格だなー。
「シュウ、しんそく!」
一刻も早く抜け出さないと。
そう思って再度しんそくを使わせた。
「コガッ?!」
すると偶然なのかゲッコウガの呻き声が上がった。
「ゲッコウガ?!」
「コガァ………」
ズザザザザァァァッ…………と地面をスライドしていくゲッコウガ。どうなったんだろ。
「がんばれ、ゲッコウガ!」
「コウ、コウ……………………ガッ!!」
立ち上がった!!
なんかゾクゾクしてきたよ!
「みずしゅりけん!」
「ボーンラッシュ!」
両手に骨を作り出し、それを武器に飛んでくる手裏剣を次々と落として距離を詰めていく。
「ゲッコウガ、めざめるパワー!」
「シュウ、躱してインファイト!」
身体がピカーッと光るゲッコウガの背後に回り込み拳と蹴りを叩きこんだ。
無防備な状態のところを狙ったのだから、次こそは倒れたはず。
「ゲッコウガ!?」
「コウ……………ガ…………………」
うん、今度こそ倒せたみたいだね。
「ゲッコウガ、戦闘不能!」
思いも寄らない粘りを見せられて驚いちゃったよ。
「…………テル兄が教えてくれた技でもダメなのかよ。ごめんな、ゲッコウガ」
テル兄?
まさかとは思うけど…………。
「ね、ねぇ、少年君? めざめるパワーって誰から教わったの?」
「テル兄だよ。ミアレジムに行った時にコテンパンにされて、その後特訓に付き合ってくれたんだ」
「ミアレジム…………もしかしてだけど、ザイモクザヨシテルって人?」
「え? 姉ちゃん知ってるの?!」
「あ、ああ、うん、まあ、ちょっとね…………」
やっぱりかー!
めざめるパワーを使ってるの厨二くらいしか知らないし!
というか厨二とバトルしてたことに驚きだよ! 確かにミアレジムのシトロン君とは仲がいいみたいだけど、そんなことになってたなんて。
「あー、あの人か」
「コルニさんも知ってるの?」
「まあね。あの人は強いよ。なんでジムリーダーにも四天王にもならないのか分からないくらい」
「え………? そ、そんな強い人だったの?」
「そうだよ。なんたってハチマンが認めてる実力者だし」
「………………」
あらら、少年君が言葉を失っちゃったよ。
そんなに意外だったかな。病気もあって結構風格だけはあると思うだけどなー。見た目の割に中身がアレだから小物っぽく感じるけど、バトルしたら何気に強いし。しかも意味がない技も使ってただただバトルを楽しめるだけの余裕すらあるし。あれ…………? 厨二って実はヒッキーやゆきのんの次くらいには強い…………? 勝つことにこだわったら絶対強いよね!? というかヒッキー相手にあんなバトルしてたんだから強いに決まってるよ!!
「さあ、最後のポケモンだよ!」
「くっ………、ヘラクロス! いくよ!」
最後のポケモンはヘラクロスだったんだね。
むし・かくとうタイプ。コンコンブルさんも連れているからよく知ってるよ。
「クロ……スッ………!?」
「…………ん?」
あれ?
ツノに付いてるのって…………。
コルニちゃんにアイコンタクトを送ると頷き返してくれた。やっぱりそうなんだね。
「少年君、最初から全力を見せてもらうよ!」
「っ!? 分かった………ヘラクロス!」
「シュウ!」
コルニちゃんからもらったバングルをぎゅっと握りしめた。するとバングルとシュウの持つルカリオナイトが光りだし結びついていく。光はシュウを包み込み姿を変え始めた。
「「メガシンカ!」」
と、同時にヘラクロスも光りだし、姿を変えていく。
きた、メガシンカ。
ヘラクロスのツノに付けてあるのはやっぱりメガストーンなんだね。
「メガシンカ、手に入れたんだね」
「これもテル兄とあの人のおかけだよ」
また厨二が絡んでるんだ。
厨二は少年君に一体何を教えたの?
「なら、いくよ! シュウ、しんそく!」
「受け止めろ!」
シュウの超速突撃をメガシンカしたことで太くなった両腕に受け止められてしまった。シュウの攻撃力が上がっているのと同じようにヘラクロスの防御力も上がってるんだね。
「メガホーン!」
そしてツノが光った。押し返すつもりだ。
「ボーンラッシュ!」
再度両腕に骨を作り出しクロスして尖ったツノを受け止めた。これでイーブンだね。
でもヘラクロスは防御力だけが上がったわけじゃない。攻撃力も上がっている。つまり………ーーー。
「押し返せぇぇぇっ!!」
攻撃を受け止められた分、押し返す力に負けてしまった。二本の骨が壊れるくらいの威力。でもそのおかげでシュウへのダメージは少ない。
「ミサイルばり!」
ヘラクロスの背中が開き、無数の針が打ち上げられた。
「なにこれ…………!?」
あたしの知ってるミサイルばりじゃないよ! この多さは!
「スキルリンクの力を見せてやれ!」
スキルリンク?
特性………だよね。じゃあ、この針の多さは特性の効果もあるってわけか。
「シュウ、ジ・イクリプス!」
この量は普通に技を使っているだけじゃ捌ききれない!
少年君にそーどすきるはまだやめた方がいいと思ってたけど、ここまできたら全部見せるしかない!
「はっ………?」
シュウは両腕にもう一度骨を作り出し、右腕を右上から斜めに斬り下ろした。そして左腕も同じように左上から斜めに斬り下ろしていき、ミサイルばりを地面に叩きつけていく。
「少年、よく見ておいて! これがユイさんたちの実力だよ!」
シュウの斬撃はまだまだ止まらない。
左腕を今度は右上から斜めに斬り下ろし、そこから返すように右腕を左下から斜めに斬り上げていく。足下は落ちた針が円を作り、シュウの周りだけがキレイなまま徐々に前進している。
「ヘラクロス!!」
さすがに危険を察知したのか、少年君はヘラクロスに呼びかけた。それに応えるように打ち上げる針の量がさらに増えていく。
それでもシュウは止まらない。
増えてもなお斬り落としていき、十四撃目にして正面突きで一気に距離を詰めた。
続く十五撃目には左腕の水平斬りがヘラクロスを掠り、十六撃目の右上からの斜め斬り下ろしでヘラクロスにダメージを与えることに成功。
「ッ?! ヘラクロス、リベンジ!」
ヘラクロスに届いたことで少年君が焦りを見せるけど、かまうもんか。
シュウはヘラクロスがリベンジの態勢を取るのと同時に右腕を左下から斬り上げ、続く左腕からの二連撃でヘラクロスの技を破った。
「いっけぇぇぇっ!」
ここからはまさにシュウの独壇場だった。
残りの八撃を完璧に決め、ヘラクロスを突き飛ばした。
技を破られたヘラクロスはもちろん少年君もあり得ないものを見るような目をしている。
「二十七連撃」
「えっ………?」
「今の攻撃の回数だよ。この技はシュウができる最大数の連撃なの」
「………………ロス」
おっと、ヘラクロスはまだやれるみたいだね。
やっぱ強いなー、メガシンカしたポケモンは。
「さあ、少年君! ヘラクロスはまだまだやる気みたいだよ!」
「………………」
あたしがそういうと少年君は立ち上がろうとするヘラクロスをじっと見つめた。それに気づいたヘラクロスも少年君に目で何かを訴えている。
「……………ヘラクロス、勝てると思う?」
「ヘラ………」
「それでもやるんだな?」
「ヘラ!」
勝てないと分かってもシュウに挑むんだね。
………ヒラツカ先生だったら涙して喜びそうな展開だなー。まあ、あたしも素直に嬉しいけどさ。先生が生徒にバトルを教えてたのはこういう喜びがあったからなのかも。今はなんとなくそう思えるようになってきたよ。
「シュウ、決めにいくよ! しんそく!」
「迎え討て! カウンター!」
二人とも覚悟は決まったみたいだし、最後の一撃を入れに走り出した。
速さではシュウに勝てないと判断して、カウンターを選んだんだね。でも、当たらなければ意味ないよ。
「ジャンプしてブレイズキック!」
ヘラクロスにぶつかる瞬間にジャンプして、カウンターのタイミングをずらした。すると返す気満々でいたヘラクロスの腕は止まることなく前に突き出され、空を切った。
そこへ頭の上から炎をまとった脚で蹴りを入れる。
「うわー、ライダーキックまで…………。ユイさん、えげつないよ」
効果は抜群。
シュウが着地するとともに、ヘラクロスは仰向けで倒れていき気を失っていた。
「ヘラクロス、戦闘不能!」
そして、メガシンカが解除されてコルニちゃんが判定を下してくれた。
「よって、勝者ユイさん!」
ステルスロックのダメージとボーンラッシュが後半届いてくれたからだね。それがなかったらまだまだ反撃されることもあったと思うなー。
「ルガゥ!」
「あ、ちょ、こら、急に抱きつくひゃあ?! シ、シュウ!? どこ触ってんひゃあぁ!?」
急にシュウが抱きついてきたかと思えば、後ろに手を回してお尻を触ってきた。顔も胸に埋められてしまい、これがヒッキーだったら完全にアウトな状態だったと思う。なんか、いろんな意味で。
「…………ヘラクロス、やっぱ姉ちゃんは強かったよ。ありがとな」
ちょ、マジでダメだからね!?
シュウ、あたしはヒッキーのものなんだから!
「はあ…………また負けた………」
「どう? ユイさん、強いでしょ?」
あ、ちょ、こら!
あー、もう!
せっかくカッコよく決めたってのに、なんでこうなるのさ!
「シュウ、めっ! 大人しくしなさい!」
「強すぎるよ………。いや、強いのはあの時見せられて知ってはいたけどさー。でも強すぎだし! こんなの勝てっこないよ!」
怒ったらしゅんとするシュウがまたかわいい。なんでそんな顔するかなー。怒るに怒れないじゃん。
「それはどうかなー。まあアタシが言えたことじゃないけど、ユイさんよりも強い人はカロス地方に何人もいるよ? アタシが知ってるだけでザッと十人近くかなー。君の言うテル兄もユイさんより強い」
「たったそんだけじゃん」
「じゃあヒキガヤハチマンより強い人は何人いると思う?」
落ち着いてきたらなんかあっちでヒッキーが出てきてるし。
ヒッキーより強い人だっけ?
「…………いないんでしょ」
「いるよ? ヒッキーより強い人」
「え………?」
「その人は悪人、悪い人だけどさ。ヒッキーは何度もその人に追い込まれてるんだよね………。あたしもよくは知らないけど、ヒッキーのリザードンの強さにも一枚噛んでるんだって」
純粋なバトルの結果は知らないけど。というか決着そのものがついてないと思う。あの二人が決着をつける時は捕まえるか殺されるかのどちらかだろうし。
でも強いのは確か。ヒッキーとやり合うことができて、ヒッキーとリザードンの秘密も知ってて、ヒッキーの弱点があたしたちだってことも知ってる怖い人。ヒッキーよりも悪知恵が働き、汚いやり方ででも勝てばいいっていうような男だってヒッキーは言ってた。
「悪人て…………で、でもその人だけじゃん!」
「あたしはそうは思わないな。世界にはあたしの知らないことが山ほどあるんだし、ヒッキーより強い人なんていくらでもいると思うんだー。そう思うとあたしより強い人なんて山ほどいるじゃん? だから少年君にも可能性はあると思うよ」
そんな男もいるんだから、世界にはヒッキーよりも強い人はまだまだいるんだと思う。だから、あたしなんてまだまだなんだよ。
「負けた相手に言われるとなんかムカつく………」
あらら、いじけちゃった。
「もう、いじっぱりだなー」
「ちょ、や、やめ………!」
あ、コルニちゃんズルい! あたしもなでなでしたい!
「少年、フルバトル初めてやったでしょ」
「うぇっ?! 分かるの!?」
「そりゃあね。アタシ、これでもジムリーダーですから。一応人より多くバトルして来てると思うよ」
うぅー………。
あたしも!
「ワパワパ!」
「うきゃ?!」
な、こ、今度はなにーっ?!
「そこで提案なのだよ、少年。君はもう一度ジム巡りをするんだ」
「えっ、な、なんでだよ! せっかくバッジ集めたのに!」
「うんうん、バッジは集まったよね。でも、バトルの経験がまだまだ足りない。それも強い相手とのね。だから君はユイさんには勝てないんだよ」
「バトルの、経験………」
「ワパ!」
マシュマロ〜!
急に後ろから乗ってこないでよ〜!
「君だけじゃない。君のポケモンたちもだ。バトル中の咄嗟の回避なんかはトレーナーよりもポケモン自身の方が気付きやすい。その危機回避の予知って言うのかな、そういうのを感覚的に身につけてないと強い相手とはいい勝負すらできないと思うんだよね」
「ブル!」
「ワパ?!」
ふぅ、助かった。
ありがと、ショコラ。
「それは、言えてるかも………。あたしも毎日ゆきのん扱かれてたし打倒ヒッキー! なんて言って毎日バトルしてたもん。ほとんど勝てたことなかったけど……………」
何とか会話だけは聞いててよかった。このままスルーされたらコルニちゃんに任された意味ないじゃん。
「ね? ユイさんでもこうなんだよ。強い人ってのはそれまでの経験の積み重ねがあるから強いんだ。正直、アタシはユイさんが羨ましいからね。格上とのバトルの経験だけならユイさんの方が積んでるし」
「そうだったんだ…………」
へぇ、そんな風に思ってたんだ。
まあ、確かにあり得ない環境だったとは思うよ。ヒッキーとかゆきのんはチャンピオン経験者だし、そんな人たちから育て方やバトルを教えてもらってたんだから。時には実践込みで。
「そりゃあね。でも、だからこそアタシはユイさんをジムトレーナーに誘ったんだよ。アタシも強くなりたいからさ」
「コルニちゃん………!」
でも、だからこそあたしも焦ってる時期があった。強くなりたいけど、なかなかうまくいかなくて。ヒッキーやゆきのんに相談したくてもなんて言ったらいいのか分からなくて。そんな時にコルニちゃんが声かけてくれてジムでの修行を提案してくれた。
それがなかったらあたしは一人落ちこぼれになって逃げ出してたと思う。
「というわけでだ、少年。もう一度ジム巡りして、全力でフルバトルして下さいって言ってきな。熱意を訴えれば応えてくれると思うよ。それがジムリーダーの役目なんだし」
強い人と戦う。
あたしと違ってそれが今の少年君に必要なことなんだ。
んー………あ、なら!
「そうだ、少年君! 君にいい人紹介してあげるよ! 元々トレーナーズスクールの先生だったからさ、いいアドバイスくれると思うんだ!」
ヒラツカ先生ならもっと的確なアドバイスをくれるんじゃないかな! 当たり前だけど、あたしよりも教えるのがうまいし。バトルの経験だって相当あるんだから、どこが悪いのかちゃんと見てくれるはず。
それから少年君と連絡先を交換して、ヒラツカ先生の名前と居場所を教えてあげた。
「コルニさん、姉ちゃんに勝つまでバッジいらないから!」
そして少年君はその言葉を残してジムを走り去って行った。
「うーん、男の子だねー」
「だねー」
「………少年、強くなるだろうなー」
「なるだろうねー。この二ヶ月半くらいでここのバッジ以外全部集めて来たんだもん。しかも一人で」
「ユイさんたちは三人で改めて、だったもんね」
「うん、それも半年かけてじっくりって感じだったし」
「いやー、恐ろしい」
「そうだね。でもヒッキーたちもこんな気持ちだったんだろうなー。あたし、嬉しいって気持ちもあるんだ」
「それがジムリーダーの役得ってもんだよ」
「そっか……。ヒッキーたち、元気かなー」
今頃ヒッキー何してるのかなぁ。
✳︎ ✳︎ ✳︎
「スコーン、食べないと元気出ないよー」
「………」
その日の夜。
唯一バトルで負けたスコーンは晩御飯を全然食べていなかった。
負けたのが相当悔しいみたい。
もうね、後ろ姿が暗いの。
「ワパワパ!」
「あ、こら、マシュマロ! これはスコーンの分!」
どうしたらいいのか分からず、取り敢えず声はかけるようにしてたけど、自分の分を食べ終えたマシュマロが減っていないスコーンの分を見て、そこに飛び込んでいった。
「ウゥゥゥーッ」
目の前で自分の分の晩御飯を取られたことでスコーンがマシュマロを威嚇し始める。
って、なんか目が鋭くない?
「ワ、ワパワパ!?」
「アンアン、アン!」
急に威嚇されたマシュマロは焦り、そこへスコーンが体当たりをして突き飛ばした。
「あ、ちょ、スコーン!?」
と、そのまま脱走。
え、脱走!?
ちょ、それはまずいでしょ!
「ショコラ、マシュマロのことお願い!」
あたしも慌ててスコーンを追いかけ、ジムを飛び出した。おかけでまだスコーンを見失ってはいない。
でもそれも時間の問題かも。だって、外真っ暗なんだもん。街灯がぽつぽつあるくらいで、スコーンが向かってるのは海側。だんだんと灯りがなくなっていく一方なんだよね。
「………はあ………はあ………………」
しばらく追いかけ続けると元々マスタータワーがあった島にスコーンが走っていってるのが見えた。ちょうど水は引いていて地続きになっている。
「アンアン、アン!」
なんとか追いつくとスコーンはリーグ戦で使われたバトルフィールドの上で海に向かって吠えていた。
「………スコーン、今日のバトル負けて悔しいんでしょ?」
「アンアン、アンアン、アォォォン!」
聞こえているのかは分からない。
でもスコーンが悔しがってるのはさっきからずっと感じてきた。それも悔しさをどこにぶつければいいのかも分からない状態。
「あたしもね、最初はそんなんだったよ。サブレを連れてこっちに来てさ、プラターヌ博士からマロンをもらって、練習がてらコマチちゃんやイロハちゃんとバトルしたの。二人ともあたしと一緒にポケモンをもらったっていうのに、あたしだけ誰にも勝てなかった」
「アォォォォォォン……………」
だからこそ、あたしは伝えなきゃいけないんだ。トレーナーとしても同じ思いをした先輩としても。
「勝てなかったんだよ…………。頭の中にはね、やりたいバトルってのがあったんだ。マロンもちゃんと分かっててくれてたんだよ。でも勝てなかった…………」
「アォォォ……………」
「悔しかったよ、泣きたかったよ。どうしたら強くなれるのか全然分かんなくて、わけ分かんなくなってた。でもそこにヒッキーが見せてくれてゆきのんが細かく教えてくれることになったんだ」
「……………」
遠吠えはいつしか小さくなっていて、スコーンがあたしをじっと見てきていた。
「スコーンもね、その時のあたしと同じなんだよ。やりたいバトルはあるけど、うまくいかない。周りはみんなできるのに自分だけができない。それが悔しくて焦ってくる。つらくて惨めでしょうがない」
あたしの指摘が当たっていたのか、スコーンは視線を外した。
言い当てられて恥ずかしいし悔しい。
そんな声がスコーンから聞こえてきたような気がして、思わず抱きしめた。
「………………でもさ、あたしにヒッキーやゆきのんがいたみたいにスコーンにはあたしがいる! トレーナーのあたしがスコーンがやりたいバトルを実現させてあげる!」
スコーンは一人じゃないんだよ。あたしやみんながいる。みんなを見てるとつらいっていうならあたし一人で受け止めてあげる。だから………、だから………っ!
「だからあたしともっといっぱい特訓して強くなろ! 強くなって少年君をもう一回倒そう! そんでもってヒッキーやゆきのんを驚かせてあげよう! 見てみろ、俺はこんなにも強いんだって!」
そう言ってぎゅーと抱きしめていると、しばらくしてスコーンが身体をよじり始めた。なんかあたしから離れようとしてるから抱きしめる力を緩めると、さっと抜け出してしまった。
「ぁ………」
スコーンが飛び出して離れた距離が、なぜか心の距離のように思えて胸が張り裂けそう………。
「アオォォォン!」
するとスコーンは再び遠吠えを始めた。
「アオオォォォン!!」
今度は悔しさとかの感情を感じない。どちらかというと決意みたいなものを感じる。
「アオオォォォオオオオオオンンン!!」
一際大きな遠吠えーーいやもうこれは雄叫びだね。
「へ、進化………?!」
激しい雄叫びが上がったかと思えば、スコーンが白い光に包まれていった。
進化だ!
スコーンは強くなるために進化することを選んだんだ!
「ルガルガン、だったっけ?」
「ルガゥ!」
月明かりに照らされたスコーンは紅い身体に白い毛をしていた。そして後ろ足で立ち上がり、あたしと同じくらいのところに顔がきている。そこに一際目立つ瞳が紅い。こんな夜には一層鋭く感じられる。
「サー、ゴーー!」
「「っ?!」」
奇妙な鳴き声が聞こえたため振り返ると、何かがいた。
その周りには岩が…………岩!?
「ス、スコーン!」
「ルガ!」
逃げようとしたらすでにスコーンに飛びつかれていた。そしてそのまま転がって、元いたところには無数の岩が飛んできている。
痛くはない。スコーンがうまく支えてくれているからなんだと思う。
「って、またくるよ! 今度は多分おにび!」
「ルガルガ!」
スコーンの背中越しに見えたポケモン?は火の玉を円形に作り出していた。
スコーンは振り返って地面を叩きつけストーンエッジを放った。
「ニゴー!?」
火の玉に照らされたその姿は見たことのないポケモンだった。色は白。しかも浮いている。でも出てきた場所を考えると海の中から。
何タイプなのか全く想像がつかない。見たこともないし新種のポケモンかもしれない。
「サーゴー!」
あ、今度はうずしおだ。
「スコーン、がんせきふうじ! 壁を作って!」
「ルガゥ!」
巨大なうずしおが飛んでくる前に岩で壁を作っていく。
「サーゴ!」
きた!
「ストーンエッジ!」
受け止めた岩の壁が壊れると同時にスコーンは地面を叩きつけて岩を突き上げ、うずしおを押し返した。
でも白いポケモンには軽々と躱されてしまった。
「ルガゥ?!」
え?
スコーンどうしたの?!
「っ!? 体力を吸い取られてるの?!」
体力を吸い取る技はいくつかある。でもそれはくさタイプの技が多く、白いポケモンが使っているのも恐らくくさタイプの技。だって、スコーンの苦しみ方が尋常じゃないもん。
「サゴーン」
今度はリフレクターだ。
体力を回復してたら防御力を強化してきた。なんか、戦い慣れてない?
…………まさかどこかにトレーナーいたりする?
「スコーン、かわらわりっていける?」
「ルガ!」
「おっけー、ならかわらわり! 壁を壊して白いポケモンにも攻撃だよ!」
「ルガゥ!」
まずはあのリフレクターを壊す。そしてそのまま白いポケモンにもダメージを…………えっ!?
「ルガゥ?!」
スコーンのチョップがすり抜けた!?
壁は壊せたから幻なんかじゃない…………。
えっと、どういうこと?
かわらわりはかくとうタイプの技で攻撃が効かないなんて…………まさかゴーストタイプ!?
「っ?! スコーン、何かくる!」
追い討ちをかけるように白いポケモンは力を溜めているように見えた。
「ルガ!」
発射されたのはハイドロポンプだ!
でも当たる直前にスコーンの姿が消えた。
「サゴ!?」
「スコーン!」
いつの間にかスコーンは白いポケモンの背後にいた。
これってまさかふいうち?!
進化して三つも新しい技を覚えたんだね!
「えっと………大丈夫……じゃないね」
フィールドに落ちてきた白いポケモンにかけよると気を失っていた。ふいうちが効いたのかな? でもそうなるとますますゴーストタイプな気がしてくる。
「どうしよっか」
「ルガ」
「えっ………?」
スコーンに聞いてみたらスボンのポケットを指差された。
えっ、捕まえろってこと?
「…………このまま放ってもおけないか」
「ルガゥ」
いきなり襲われたとはいえ、このままここに放置していくのも気が引けるのは確か。取り敢えず、しばらくはボールに入れておこうかな。
「えい」
新種のポケモンである可能性もあるし、それを確かめるためにもヒッキーに連絡してみよう。
あたしはそう決めて、ハイパーボールを当てた。近くで見たら白くて丸いんだね。さっきはツノみたいなのがあったように見えたんだけど。
「…………スコーン、すっごくカッコよかったよ」
「ルガ?」
「うん、強くなってるよ。でもだからこそ、これからも頑張ろうね!」
「ルガゥ!」
あたしはポケモントレーナーだ。
ポケモンたちがやりたいことを実現されるのが仕事なのだ。
戦ってくれるポケモンたちのためにもあたしも頑張るよ!
「あ、ヒッキー! やっと出たし!」
ホロキャスターを取り出してヒッキーを呼び出したけど、なかなか出なかったんだけど!
もう、忙しいのは分かるけど、あたしもヒッキーに会いたいの我慢してるんだからね! 声くらい聞かせてよね!
行間
ユイガハマユイ 持ち物:キーストーン
・グラエナ(ポチエナ→グラエナ) ♂ サブレ
持ち物:きあいのハチマキ
特性:いかく(にげあし→いかく)
覚えてる技:こおりのキバ、かみなりのキバ、アイアンテール、とっしん、ふいうち、じゃれつく、どろかけ、カウンター、はかいこうせん
・ブリガロン(ハリマロン→ハリボーグ→ブリガロン) ♂ マロン
持ち物:かいがらのすず
覚えてる技:タネマシンガン、つるのムチ、やどりぎのタネ、ころがる、ドレインパンチ、まるくなる、ミサイルばり、ニードルガード、ウッドハンマー、ジャイロボール、ビルドアップ
・ドーブル ♀ マーブル
持ち物:きあいのタスキ
覚えてる技:スケッチ、おにび、ハードプラント、ダークホール、こらえる、がむしゃら、いわなだれ、ハイドロポンプ、ほごしょく、ハイドロカノン、へんしん、サイコブースト、ふういん
・ウインディ ♂ クッキー
持ち物:ひかりのこな
特性:もらいび
覚えてる技:ほのおのキバ、バークアウト、ニトロチャージ、りゅうのいぶき、かみなりのキバ、しんそく、にほんばれ、だいもんじ、りゅうのはどう、インファイト
・ルカリオ(リオル→ルカリオ) ♂ シュウ
持ち物:ルカリオナイト
覚えてる技:ブレイズキック、でんこうせっか、けたぐり、はどうだん、ボーンラッシュ、りゅうのはどう、しんそく、カウンター、インファイト
・ルガルガン(イワンコ→ルガルガン) ♂ スコーン
特性:やるき
覚えてる技:いわおとし、がんせきふうじ、かみつく、ステルスロック、ストーンエッジ、かわらわり、ふいうち、ほえる
控え
・グランブル(ブルー→グランブル) ♀ ショコラ
持ち物:たつじんのおび
覚えてる技:たいあたり、しっぽをふる、かみつく、じゃれつく、インファイト、ストーンエッジ、マジカルシャイン、こわいかお
・バルキー ♂ ビスケ
・ワンパチ ♀ マシュマロ
・???
覚えてる技:パワージェム、うずしお、ギガドレイン、ハイドロポンプ、おにび、リフレクター
少年君 持ち物:キーストーン
・ゲッコウガ(ゲコガシラ→ゲッコウガ)
特性:げきりゅう
覚えてる技:みずのはどう、でんこうせっか、みずしゅりけん、あくのはどう、めざめるパワー(地)
・ガラガラ
持ち物:ふといホネ
特性:いしあたま
覚えてる技:ホネこんぼう、ほのおのパンチ、じごくぐるま、ホネブーメラン、ボーンラッシュ、すてみタックル、ストーンエッジ
・ヘラクロス
持ち物:ヘラクロスナイト
特性:???←→スキルリンク
覚えてる技:ミサイルばり、かわらわり、メガホーン、リベンジ、カウンター
・ヤミカラス
覚えてる技:はがねのつばさ、ねっぷう、ドリルくちばし、かげぶんしん
・クイタラン
持ち物:オボンの実
特性:くいしんぼう
覚えてる技:じごくづき、ほのおのムチ、ギガドレイン、まもる
・クレベース
覚えてる技:つららばり、ジャイロボール、ゆきなだれ、じならし