ポケモントレーナー ハチマン 〜ぼーなすとらっく集〜   作:八橋夏目

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いろはすの誕生日ということで一日早めに。
前回の続きです。
アニメは延期になっちゃいましたが、有識者会議はまだまだ続きます。


ぼーなすとらっく20『有識者会議 その2』

 今回の会議では欠席者がいた。イッシュ地方のアララギ博士とガラル地方のマグノリア博士だ。さっき名前を初めて聞いたため誰だかは知らない。だが、有名らしい。代理の者が来ることも叶わなかったようで、相当立て込んでいるのだろう。

 

「一般的にポケモンはタマゴにいる時から体内に進化のエネルギーを溜め込んでいく。やがてそのエネルギーが充分になると新たな姿へと進化する。なお、ポケモンの進化は基本的に二段階までとされているが、中には複数の進化先を持つポケモンもいたり、進化を経てタイプが変わるポケモンもおり、解明できていない点が山ほどあるのも現状だ。また、進化はポケモンの意思によるところもあり、ポケモンによっては進化を拒否することもあるとされている」

 

 主催者であるオーキドのじーさんの挨拶から始まった会議は、ナナカマド博士の『ポケットモンスター進化論』ーー通称『ポケモン進化論』ーーに移り変わった。恐らく今回のテーマの一つであるらしいメガシンカに繋げるための前座と言ったところであろう。ここにいる奴でさすがに『ポケモン進化論』を理解していない奴はいないはずだ。

 

「次に特定の条件が揃うと進化するポケモンもいる。それらは大きく二つのタイプに分けられるが、そこの君分かるかね?」

「うぇ?! 環境、とかっスかね?」

 

 いたわ。

 名前はゴールド、だったか。ジョウト地方の図鑑所有者。見るからに頭は悪そうである。恐らく直感や閃きでその場を切り抜けるタイプなのだろう。でなければ、こんなのが図鑑所有者ってのもどうかと思う。両隣にいる男女は落ち着いて話を聞いているのに、ゴールドはつまらなさそうに足をブラブラさせたりしているのだ。ナナカマド博士もそれを見越して質問を投げかけたのかもしれない。

 

「うむ、確かに環境というものもあるがそれは各進化条件という項目の一つだ。分類という項目で見ればポケモンの意思が反映されるか否かである。時間帯、性別、トレーナーまたは親と認識したポケモンへの懐き具合等で進化するパターンはポケモンの意思によるところがあるが、環境、天候、特定の技を覚えている等のパターンはポケモンの意思とは関係なしに条件さえ揃えば進化してしまう。中にはそれでも進化を拒否するポケモンがいるかもしれないが、それも希少種であろう。基本的には抗えないものとして捉えておいてもらいたい」

 

 俺のポケモンたちは全員普通の進化方法であるため馴染みは薄い。だが、トツカのポケモンを例に挙げると分かりやすいだろう。特にトゲキッスとマンムー。トゲキッスはトゲピーからトゲチックに進化する際、トレーナーや親と認めたポケモンへの懐き具合が関係してくる。そのため、自らの意志により任意のタイミングで進化することができるのだ。そして、続くトゲキッスへの進化も光の石に触れることで進化に至る。こちらも事故でない限り、任意のタイミングで進化することができるのだ。

 反対にマンムーはウリムーからイノムーへの進化は通常通りなのだが、マンムーへの進化が少々特殊だ。いわタイプの技げんしのちからを覚えることでマンムーへと進化する。文字通りの意味で考えると原始的な力には抗えないということだろう。というか、マンムーが本来の姿だったと言えなくもない。何ならげんしのちからを覚えることで進化するポケモンは、その進化した姿が本来の姿であり、何らかの要因により退化していったのではないか、という論文もあるくらいである。ポケモンの退化というのは未だ発見されてはいないが、メガシンカのように姿が元に戻るという現象はあるのだ。進化があって退化がないとも言い切れないだろう。

 

「他にも道具を使った進化、交換による進化もあるが、それは私より詳しいであろう二人に聞くとしよう」

 

 と、イロハに質問されたらどう答えようかと頭を働かせていたら、ナナカマド博士がそう言ってもう一度後ろを見やった。博士の後ろには図鑑所有者たちが会議の行方を見守っており、その中で男女一人ずつが動き出した。一人はゴールドの隣にいた赤髪。もう一人は司会進行をしてた女。

 ちなみに今の席順はスクリーンに向かって二列に並ぶようにして向き合って座っている。向かって左側の先頭にオーキドのじーさん、ナナカマド博士、シロナさん、ナリヤ博士、ククイ博士とその嫁さん。じーさんズの後ろには図鑑所有者たちが控えている。そして右側の先頭にウツギ博士、オダマキ博士、ダイゴさん、プラターヌ博士、俺、イロハである。こうしてみるとあっち側はすごい貫禄があるんだよなー。さぞかしプレゼンする方は緊張することだろう。

 

「では、道具を使った進化についてはアタシが説明します。道具を使った進化といっても種類は様々あり、大きく分けると進化の石を使う進化かそれ以外のものを使う進化に分けられます。進化の石の場合、それぞれの石に特殊なエネルギーが含まれており、石に触れるとエネルギーが体内へと流れ込み、進化が始まります。しかし、進化後ポケモンによってはタイプや覚える技が変わったりするため、進化させる際は気をつける必要があるわ」

 

 ブルー、だったか。グリーンの嫁候補。間近で見るとプライド高そうだわ。

 

「次に進化の石以外の道具を使った進化についてですが、こちらも進化の石と同様道具に特殊なエネルギーが含まれております。しかし、これらの道具は自然界で生成されたものと人工的に作られたものがあり、どちらも希少種であることに変わりはありません。野生のポケモンにおいてもそれらの道具を使って進化するポケモンはそう多くはないでしょう。人工的な道具の方なんかは特に。ただし、こちらには時間帯が関係してくるポケモンもいます。例えばマニューラは日が沈んだ夜にするどいツメを持たせている必要があり、進化をさせようという時には条件をよく確認しておいた方がいいでしょう。以上が道具を使った進化についてになりますが、何か質問などはありますか?」

 

 その割に妙に情報が抜けている。噛み付きたくないけど、イロハのためだし。グリーンが暴れ出さないことを祈ろう。

 

「………詳しいという割には些か説明不足に思えるんだが」

「というと?」

 

 手を挙げて口を挟んだら訝しむようにして睨まれた。どんだけプライド高いんだよ。

 

「まず進化の石には特殊なエネルギーが含まれているという説明はいい。だが、道具の方は交換が絡んでくるパターンもあるんじゃないのか? 例えばキングドラ。キングドラへの進化にはりゅうのウロコを持たせて交換するのが条件とされている。交換が絡むっつーことでそっちの説明は赤髪の方が担当するんだろうが、それならそれでアンタも一言付け加えるべきだろ。それとそっちの赤髪には先に質問しておこう。そもそもどうして野生のキングドラが存在するんだ? 交換のしようがない野生のポケモンがどうやって進化を成し遂げるんだ? 逆に俺たちが進化させる分には何故交換が必要なんだ?」

「ちょ、あなた………!」

「………分かった。それも含めて説明させてもらう」

「シルバー………」

 

 ああ、そういやアレがシルバーだったな。

 サカキの息子にしてジョウト地方の図鑑所有者。こいつも父譲りの才能はあるということか。

 

「では、オレの方からは交換による進化について説明させてもらいます。交換による進化には二種類の系統に分類できます。特に何かを必要とせず単なる交換で進化するポケモンと、特定の道具を所持している状態でのみ交換すると進化するポケモンです。後者はブルー姉さんの説明でもあった道具による進化と結びつきます。どちらか片方だけが欠けても進化は起こらない、と言いたいところですが、指摘があったように野生のキングドラ等は存在します。ここはオレ自身まだはっきりしているわけではありませんが、恐らく交換による進化は交換のシステムが進化に対する強制力を発揮するものだと考えています。なので、野生のキングドラはりゅうのウロコを手に入れてから長い年月、あるいは相当の強者になっているからこそ進化できたと考えるのが一番ベストだと認識しています」

「………なるほど。それはあるかも」

 

 どうやらイロハには納得できる説明だったみたいだな。イロハにはシードラがおり、りゅうのウロコも渡してある。最終進化に必要な交換というシステムが何故必要なのかを理解しておくのも大事だろう。かく言う俺も大体そんなところだと考えている。でなければ交換というシステムを態々利用する必要性は皆無だからな。

 だが、何故交換のシステムが進化の働きを作用させるのかは謎だけど。システム系に強いわけじゃないから何とも答えられないな。

 

「いいんじゃないか。筋は通っている。研究者でもない俺が言うのも変な話だが」

「いやいや僕からしても今の説明はかなりいいと思うよ。だからこそ、ナナカマド博士も説明を任されたんですよね?」

「うむ、オーキド博士はこの二人を進化に精通した者と評している。もし矛盾が生じるようであれば正すところであったが、見事であった」

「ありがとうございます」

 

 そう言ってシルバーはナナカマド博士に頭を下げた。あんな姿、サカキからは想像できないな。褒めて当たり前。やって当たり前ってのがあの男のスタンスだし。それだけロケット団内ではカリスマ性が高い証でもあるんだろうな。

 

「話を戻すと、以上のことがポケモン進化論になる。まだまだ分かっていないことは多々あるが、根底が覆るということはないだろう。では、次にフォルムチェンジについて軽く説明しよう」

 

 そう言ってスクリーンに映し出されたのはロトムだった。

 

「これはロトムというポケモンである。でんき・ゴーストタイプという組み合わせの珍しいポケモンであるが、このポケモンは様々な姿にフォルムチェンジできる存在だ。今や承知の者もいるだろう。フォルムチェンジとは通常の進化とはまた別の、姿を変化させる能力の総称である。その一例がこのロトムというポケモンであり、我々が普段使っている電化製品に潜り込むことで新たな姿を手に入れたのだ。確認されたもので電子レンジならばヒートロトム、洗濯機ならばウォッシュロトム、冷蔵庫ならばフロストロトム、扇風機ならばスピンロトム、芝刈り機ならばカットロトム、というようにフォルムチェンジとして認定されている。また最近ではロトムが電化製品へ潜り込む性能を活かして、ポケモン図鑑やタブレットの機能を拡張させている者もいるようだ」

 

 あー、ザイモクザがよくやらせるやつね。ロトムの性格上嫌いじゃないんだろうし、変なことさえしていなければ好きにしてくれとしか思わない。確かロトム辞典とか言ったか? あれはインデックスをもじってポケデックスフォルムと言ってたな。ちなみにタイプはでんきの単タイプなんだとか。あれは恐らくナナカマド博士も認知している代物なのだろう。

 

「さらに、ロトムを研究していく中で、フォルムチェンジ後の姿のタイプも元の姿から変化していることが分かっている。つまり、フォルムチェンジの前後でポケモンのタイプも変化することがあるのだ。タイプだけではない。特性すらも変わるポケモンも確認されてきている。尚、姿の違いという観点から見れば、リージョンフォームというものも存在するが、こちらはフォルムチェンジとは異なる姿の違いだ。環境の変化に順応するためと言えよう。詳しくはこの後ナリヤ博士よりリージョンフォームについての説明があるため、そちらで補完してもらいたい。最後にわたし個人の見解ではあるが全世界全てのポケモンの内、八割から九割が進化、あるいはフォルムチェンジ等の何らかの姿の変化を有するものだと考えている」

 

 また大きく出たな。

 全ポケモンの内八割から九割って、つまりはほとんどのポケモンが姿を変えるってことだろ?

 確かにそうかもしれないが、そうなると逆に姿を変えないポケモンたちが不思議に見えてくるな。

 

「進化なりフォルムチェンジなり、姿が変化する事象はとにかくポケモンの能力をも変化させる。それが何を意味するのかはまだまだ分からぬことだらけではあるが、『変化』こそがポケモンをポケモンと言わしめる現象とも言えるだろう。その『変化』は時に進化を超えたり、時に本来あるべき姿に戻ったり、時に環境の変化に適応したりと様々な形で成されている。恐らく今後もポケモンたちは『変化』を遂げていくのだろう。それをわたしたちがどう解釈するのか、そこが重要になってくる」

 

 それでもポケモンと姿の変化は切っても切り離せない関係ってことか。

 深い、物凄く深いな………。

 博士たちは皆、これだから研究をやめられないって顔をしている。その深さを楽しんでいるのだ。

 やっぱり俺には研究職なんて向いてないだろう。今くらいの立ち位置が丁度いいような気がする。自分で研究することはなくても研究の一環には触れていられる。情報も入ってくるし、研究の提案だってできる。でも自分では研究しない。

 こうして聞くと俺ってクソだな……………。

 

「では、それらを頭に入れた上で今回のメインへといこう。プラターヌ博士」

「はい!」

 

 さて、気持ちを切り替えるか。次は早速プラターヌ博士のようだし。

 今日の本題その1はメガシンカについてらしく、最初のメインを務めるプラターヌ博士は冷や汗が止まらないようだ。

 うわー、大丈夫かな。

 ガッチガチに緊張してるぞ。

 前座が師匠ってのがこれまた贅沢な話であり、余計に緊張させる要因だろう。ざまぁ。

 

「イロハ、話はついて来れてるか?」

「はい、一応今のところは基本的な内容でしたので」

「そうか」

 

 今の内に、と思いイロハに状況を聞いてみたが、どうやら今のところはついて来れてるらしいな。次もメガシンカについてだし、他の題目を見るに目新しいものこそあれど、そこまで難しい内容はないと思う。

 

「それよりもいきなり噛み付いていったことに驚きですよ」

「仕方ないだろ。なんかイラッときたんだから。ハルノの劣化版でお前より可愛げもないんだ。それに俺は見届け人らしいからな。指摘してなんぼだろ」

 

 見届け人なんて聞こえはいいが、要は敵役みたいなもんだしな。しかもどこぞの誰かさんが睨んできてるんだ。これくらいの仕返しはしたってバチは当たらんだろ。

 

「先輩、超変わりましたね」

「ダークライのおかげなんじゃね? 半ポケモンになって性格を『変化』させられたとか」

「先輩バカなんですか? バカなんですね。聞いた私がバカでした」

「酷ぇ………」

 

 人が折角ユーモアの交じった返しをしてやろうと思ったのに。面白くなかったからってもうちょっとフォローしてくれてもよくない?

 

「では、私の方からメガシンカ及びそれに類似する現象について説明させていただきます」

 

 お、口を開きだしたらいつも通りに戻ったみたいだな。本番には強い方なんだろう。

 

「メガシンカとはバトル中にのみ起こる現象で、キーストーンとメガストーンと呼ばれる二つの石が共鳴することでポケモンに新たな姿を与えるものになります。また全てのポケモンに起こる現象ではなく、現在確認されているのは46体48種であり、その内33種の詳しいデータを私の方で入手しています。データを収集していく中でメガシンカにはさらにトレーナーとポケモン間での強い絆が必要であることも分かっており、息が揃わなければポケモン側が暴走するという事態に陥るケースもありました。それだけメガシンカのエネルギーはポケモン側に強い力をもたらしていると考えられます」

 

 これは俺もまとめるのを手伝わされたから承知のことだ。メガシンカはこれまでに46体48種を確認している。リザードンとミュウツーには二種類の姿があるため、種類の方が多くなった。その中でも実際のメガシンカするところやその姿の映像などが残されているものは33種あり、足りない情報を俺たちメガシンカ使いが提供したのだ。しかも俺はそれをまとめる手伝いもさせられたため、頭の中にデータも入ってしまったわけだ。残りの15種はメガシンカの使い手がいなかったり伝説のポケモンだったりで、メガシンカするという事実だけが分かっているポケモンたちだった。

 これでも充分データを集めてきたように思えるが、残りのポケモンたちについても博士はいつか完璧に揃えたいとか言っていた。絶対手伝わされるからやめてほしいところだが、やめたら取り柄がなくなるからな………。付き合ってやるしかないのだろう。

 

「メガシンカの起源はホウエン地方にあり、かつて宇宙から飛来する巨大な隕石を退けるため、人々が祈りを捧げた結果、レックウザが姿を変えたことが始まりではないかとされています。そのパワーは巨大な隕石を一撃で粉砕するほどとされ、現在確認されているメガシンカするどのポケモンよりも強大な力を有していると考えられます」

 

 ダイゴさん伝手でメガシンカの起源がレックウザにあるということが分かっている。二年半ほど前にホウエン地方で実際に姿が確認されたからな。映像などはないが詳しい話を聞くことができたし、他にもいろいろなことが知れたのも大きい。

 

「またホウエン地方ではグラードンとカイオーガの新たな姿も確認されました。それもまたメガシンカに匹敵するもので、文献などからゲンシカイキという風に断定しています。ゲンシカイキは自然の力を取り込むことでグラードン及びカイオーガの姿を変え、文献からはこちらが本来の姿という風にも記されるほどの強大な力を有するようです。こちらはメガシンカとは違い人々の祈りなどは関係なく自然の力を取り込むことで姿を変えるため、類似性の高い別物であると位置付けました」

 

 二年半前の事件ではもう一つの現象の特定に至っていた。

 その名もゲンシカイキ。二色の珠に蓄えられている自然の力を取り込み、本来の姿へと戻る現象らしい。グラードンとカイオーガにはそれぞれ陸と海を広げた存在という逸話がある。その逸話を再現したかのような事件がホウエンの大災害であり、その後のデオキシスによる巨大隕石到来の時には、二体がゲンシカイキによって本来あるべき姿に戻るとホウエンの大災害時以上の力を発揮しており、まさしく陸と海の魔物と化していたことだろう。その二体に引けを取らないレックウザも中々のものである。それくらいメガシンカには力があるということだ。

 

「そしてもう一つ、メガシンカに類似するポケモンを発見しました。まずはこちらをご覧下さい」

 

 まあ、来るとは思っていた。というかこれが博士の今日のメインみたいなものだし。

 

『リザードン、メガシンカ』

『シャアァァァアアアアアアアアアアアアッ!!』

 

 スクリーンに映し出されたのは俺とリザードン。どこかでバトルした時にメガシンカした時の映像のようだ。

 

「今のはリザードンからメガリザードンXにメガシンカするシーンです。トレーナーの持つキーストーンとリザードンが持つメガストーンーーリザードナイトXが共鳴し結ばれることでリザードンを白い光で包み込み姿を変えていきます」

 

 メガシンカのメカニズムの説明に使われたのか。

 ということは次だな。

 

『ゲッコウガ』

『コウ、ガァァァアアアアアアアアアッ!!』

 

 こっちもトレーナーは俺だからな。比較の対象としては申し分ない。

 

「っ?!」

「ゲッコウガが姿を変えた!?」

 

 ゲッコウガを知っている者は目を見開いて驚いている。

 

「本人曰く、特性を用いることでメガシンカのシステムを取り入れたんだそうです」

「本人曰くって………、このトレー………ハチマンか」

「なんだハチマン君のゲッコウガか」

「やっぱりハチマン君かー」

 

 トレーナーが俺だと分かるとこれかよ。俺を見ただけで驚愕が吹き飛ぶとか怖すぎるわ。

 

「なんすか、その目は」

「いやー、君のポケモンなら何が起きても不思議じゃないからね」

「言っときますけど、俺は最後の最後にこの特性を安定させる薬を渡しただけですからね。勝手にシステム云々を取り入れたのはそこに映っているゲッコウガの方なんで」

 

 だから俺を変な目で見ないでほしい。

 この人たちは俺を何だと思っているのだろうか。リザードンを前例としているのなら、あれは例外と言いたい。あいつはロケット団にいじくられた謂わば人工体だ。野生で生息する天然体とは比較してはいけないんだよ。

 対してゲッコウガは天然体で自らあそこまで上り詰めた。最後はカツラさん特製の特性カプセルで力を安定させてやったが、根本的なところはリザードンとは別物だ。

 それをこの研究者どもは理解してないわけないのに………。

 

「ゲッコウガはカロス地方における初心者向けのポケモンの最終形態となります。故に他の地方と同様、特性は二種類あり、内一つはげきりゅうを持ち合わせていました。しかし、彼のゲッコウガは第三の特性として自身の姿を変える特性を手に入れたのです。私たちは経緯を踏まえて『きずなへんげ』と呼んでいます。本人たちからもそれとなく聴取を行いまとめたところ、この姿に変化する時ハチマン君の視界がゲッコウガのものへと変わり、感覚が同調したことが分かりました。キーストーンもメガストーンも使わないメガシンカの代償と考えると腑に落ちるところがあり、さらにメガシンカと同等あるいはそれ以上のエネルギーも観測出来ました。もう一つ付け加えるのであれば、メガシンカ時に発する光の代わりとして水のベールを纏うという点があり、以上のことを踏まえてメガシンカに近い現象と考えています」

「………して、ハチマン。これは本当か?」

 

 一通りプラターヌ博士が説明したところで、オーキドのじーさんが聞いてきた。

 

「映像の通りだよ。ま、あいつはもうゲッコウガであってゲッコウガじゃない。規格外だ」

「というと?」

「あいつは強さを求めるあまりメガシンカのシステムを自分の中にあるものだけで再現しようとして、特性を書き換えることで手にしたんだ。しかもトレーナーの俺を使うことで足りないものを補おうとしたりしてな。で、結局カツラさん開発の特性カプセルを飲ませて力を安定させ、無事新たな特性を定着させたってわけだ。今ではそれでも足りないらしく、ポケモントレーナーとして自分でポケモンを仲間にして来て、俺たちとバトルしてるよ。あ、それとテレパシーで会話も可能だ。うん、ありゃもう見た目だけがゲッコウガなだけでただの怪物だな」

 

 自分で言ってて怖くなってきたわ。

 あいつが敵じゃなくて本当によかった。

 

「メガシンカポケモン相手に引けを取らない所か圧倒してるものね」

「そうですね、彼はポケモンとしてもトレーナーとしても優秀でしたよ」

「そうだった、二人は知ってるんでしたね」

「あれから僕も調べてみたんだけど、一つ面白い古書を見つけたんだ。今日君が来ると聞いていたから、伝えようと思って持って来てたんだけど、丁度いいね」

「古書?」

 

 そう言うとダイゴさんが古い本を取り出してきた。見るからに古い、ボロボロ感が満載である。

 

「カロス地方の話なんですけどね。ちょっと読ませてもらいますよ」

「ええ、是非」

 

 プラターヌ博士が促すとダイゴさんが古書を開いて目を通していく。

 

「ーーー元々は一体の神に護られていた。その名はゼルネアス。永遠の命を与えるとも言われている神。人々はその神が造り上げた土地の美しさを称賛し、『カロス』と名付けた。そしてそのカロスを統治する王が誕生した。王はカロスの民に讃えられるも、すぐに王は死んだ。民はゼルネアスに王の復活を願うも神の力は働かず、その後カロスは滅びの一途を辿った。朽ちたのだ。イベルタルという悪魔によって、カロスは朽ち果ててしまったのである。しかし、それだけには留まらずゼルネアスとイベルタルは争いを続けた。民は新たな王の誕生を願い、王の子供が新たな王として立ち上がった。すると『何か』も現れ、神と悪魔の争いを諌め、どこかへと消え去ってしまった。その後、ゼルネアスは樹木に、イベルタルは繭となり眠りについてしまった。これが最初の『カロス戦争』である」

 

 これは俗に言うゼルネアスとイベルタルの伝説だな。生と死の関係の象徴。

 

「時は千年が過ぎ。新たな戦争が起きた。今度は人や魔獣たちも入り乱れて戦う醜いものである。その戦争で王の愛する魔獣が命を落とした。王はすぐに神を倣って命を与える機械を造り上げた。魔獣は見事復活を遂げるも愛する魔獣が一度死んだという事実に、怒りと悲しみで我を忘れた王は多くの魔獣を使い、機械を兵器に造り変えた。その力で戦争はおろかカロスが無に還り、王の愛する魔獣もその出来事を悲しみ、王の元を去った。神も悪魔も眠りにつき、残された民は一度目に現れたという『何か』を探すも見つけられなかった」

 

 その次がカロス王の伝説か。AZのフラエッテが戦争で死んでAZがフラエッテを蘇らせて、やがて最終兵器に作り変えて戦争を終わらせた。その最終兵器が一年前に再起動されたのは今でも鮮明に憶えている。

 

「さらに千年後。三度目の戦争……は起きなかった。起きる前に悪魔が朽ちらせ、『何か』が無に還し、神が新たな命を与え、すぐに元の美しいカロスへと戻ってしまったのだ」

 

 あ、次は起きなかったんだ………。

 人もポケモンも先の戦争を知っていたのかね。

 

「その千年後。再び戦争が起きた。今度は人と魔獣が協力し、石を使って新たな力を得ることで戦争に立ち向かった。その力は魔獣の姿を変え、強大な力を引き出すもので例え神であろうと悪魔であろうと立ち向かうことが出来た。その最中、石を使わずに新たな姿を手にした魔獣がいた。その魔獣の力により戦争は一気に終わりに近づいた。そう、近づいたのであって終わったわけではない。最後はやはり『何か』が現れたのだ。民はまたしても無に還ると覚悟をしたが、『何か』は神と悪魔を諌め消え去ってしまった。その後、民はその魔獣を英雄と評し、同時に『何か』をこう呼ぶことにした。ーーージガルデ、と」

 

 ここでジカルデが正式に出てきたか。ついでにゲッコウガっぽいのも。恐らくこれが千年前の話。そして一年前にも同じようにゼルネアスとイベルタルが復活したというわけか。

 

「我らが子孫たちよ。どうか覚えておいてほしい。カロスには千年に一度ゼルネアスとイベルタルが争い、それをジガルデが諌めるのだ。そして、我らには全てを無に還すジガルデに対抗する刃、英雄ゲッコウガの力が必要になるということをーーー」

「………神と悪魔と英雄と未知の生物か」

 

 なんか勢揃いって感じだな。

 というか伝説のポケモンたちと対等の扱いってどうなのよ。マジで伝説のポケモンになっちゃってんじゃん。

 

「恐らくゲッコウガのメガシンカ擬きは古より伝わるカロス地方にしかない現象なのかもしれないですよ。メガシンカが伝わる以前からのね」

 

 なるほど。

 メガシンカの起源はホウエン地方だが、それを基にした新たな特性はカロス地方が起源と言えるわけか。

 だが、ゲッコウガはあくまで一般的なポケモンだ。子孫だって残してきている。ならばーーー。

 

「博士、これが本当だとすると千年前にゲッコウガの第三の特性が出来上がったってことになるよな。そうなるとだ。そのゲッコウガの子孫ってのはいないのか?」

 

 ーーー最初に姿を変えたとされる千年前のゲッコウガの子孫は残っていないのだろうか。

 

「子孫か………。その可能性は大いにあり得そうだね。ポケモンたちの特性は親から遺伝することもあるからね。特に数が少ない方の特性は強く遺伝する。ゲッコウガも例外なく当てはまるよ。ともすれば、このゲッコウガに子孫がいたとすると、その力を引き継いでいる可能性が高いと思う」

 

 俺が最も気になるのはそこだ。

 俺のゲッコウガは自分で特性を書き換えたが最終的には薬で安定させるしかなかった。もし当時のゲッコウガも俺たちみたいなことが起きていたとしても、書き換えた特性を安定させる技術があったとは思えない。だから仮に特性の書き換えが出来たとしてもどうやって特性を安定させることが出来たのだろうか。

 俺的にはへんげんじざいが突然変異し、新たな特性を持って生まれて来たケロマツがゲッコウガへと進化して英雄まで上り詰めたっていうシナリオの方がしっくりくる。それだと特性の書き換え後の安定化も他の問題事も考えなくて済むし。

 そして子孫が残っているのであれば、その特性も何体かは受け継がれていることだろう。

 

「だが、俺んとこのゲッコウガは元はへんげんじざいだ。第三の特性じゃない」

「そうだね。そうなると………」

 

 ただそうなると俺のゲッコウガは異端な存在になる。元々の特性はへんげんじざいであるため、英雄の子孫ではない可能性もある。子孫だとしても遠縁、傍系というところだろう。

 ならば、直系はというと………。

 

「いるだろ。俺よりも運命ってやつが似合う存在が」

「………オレたちだとでも言いたいのか?」

 

 図鑑所有者たちの方を見るとグリーンが俺を睨んできた。めっちゃ怖いからやめてっ!

 

「いや、アンタらじゃない」

「………ワイちゃんかい?」

 

 ようやく俺の言いたいことが分かったようで答えを導き出してきた。

 カロス地方の図鑑所有者、ワイ。運命力だけでいえば、俺たちよりも図鑑所有者は頭一つ二つは高い。そしてあいつの手持ちにはゲッコウガがおり、そいつが直系の子孫である可能性が高いと俺は考えている。

 同時メガシンカを行ったエックスに対して、石を必要としないメガシンカを行うワイ。こうなれば図鑑所有者の素養としては充分だろ。

 

「ああ。あいつのゲッコウガの特性は答えられるか?」

「そう言われると無理だね………。よし、帰ったら彼女に協力を願おう。調べ方は………」

「げきりゅうでもへんげんじざいでもなければ可能性大と見て調べていく方向でいいんじゃないか?」

「あとは………君のゲッコウガのDNAと比較するのもいいかもしれない。一般的なゲッコウガのDNAデータはあるからね。それと比較して違いを探していこうか」

 

 確かにそうだな。

 うちのゲッコウガは他の一般的なゲッコウガとは何か違うところがあるはずだ。同じようにワイのゲッコウガにも違うところがあれば、非常に確率が高くなってくる。ただそれがうちのゲッコウガとも違う何かであった場合にはもっと未知のものと考えざるを得ないけどな。その時はその時だ。

 

「………………」

 

 ん?

 でもなんでゲッコウガなんだ?

 他のポケモンだって強くなりたいと思ってるだろ?

そうでなくともカントーとホウエンのしんりょく、もうか、げきりゅうを持つポケモンにはメガシンカした姿が存在する。三竦みが欠けることはない。

 ならば、石を必要としないメガシンカにもゲッコウガだけでなく、ブリガロンやマフォクシーにもあるはずなんじゃないのか?

 

「ハチマン君、どうかしたかい?」

「……………いや、どうしてゲッコウガだけなのかなと」

「それは第三の特性があった可能性があるからーーー」

「そうじゃない。そういうことが言いたいんじゃないんだ。メガシンカはカントーとホウエンの初心者向けポケモン三体全員に存在した。ならば、このゲッコウガの現象と同じことが何故ブリガロンやマフォクシーには起きなかったのか。そこがちょっと気になってな」

「それこそ特別な存在だったからじゃないのかい? 君のゲッコウガみたいに」

「確かにあいつみたいにゲッコウガという種族の域を超えた存在って可能性は高い。というかそう説明するのが一番しっくり来る。だけど、それで片付けていいのかとも思うんだよ」

 

 特別なのは特別だ。伝説のポケモンの仲間入りとも思えるような記述があったり、他のポケモンには出来ない芸当を成し遂げているんだから。

 ただ、そんな言葉だけで片付けていいような話でもないだろ。

 

「僕は片付けるべきではないと思うよ。君の指摘は最もだ。フシギバナ、リザードン、カメックスの三体共にメガシンカした姿がある。ジュカイン、バシャーモ、ラグラージの三体にもメガシンカした姿がある。その連鎖性を考慮するとメガシンカのような現象が起こったゲッコウガの他にも、ブリガロンやマフォクシーにも何かあると考えておいていいだろうね。逆になかったらなかったさ。それだけゲッコウガという存在は特別だったというだけのことなんだからね」

 

 疑問に思っていたのはダイゴさんも同じなようだ。

 

「そうですね」

「もう一つ、私はリザードンにだけ何故二つの姿があるのかも気になるわ。もしかすると、そことも何か関係があるのかもしれないもの」

 

 なるほど、それもそうだ。

 リザードンにだけは二つのメガシンカした姿がある。ミュウツーにも二つのメガシンカした姿はあるが、こっちはカツラさんが造り上げた謂わば人工物のメガストーン。だからあまり充てにはならない。

 

「なるほど。だってよ、博士」

「いやー、まさかお二人からも意見が聞けるなんてね。分かった。その二つの線も視野に入れて研究を進めてみるよ」

 

 俺も古い文献から探してみよう。それもホウエン地方のものの方に何か手がかりがあるかもしれない。

 

「プラターヌ博士、貴重な相談役を見つけたな」

「ええ、まあ。彼ほど僕に意見を出してくれる人はいませんよ」

「大事にするのだぞ」

「はいっ」

「………アイツ、博士に対してもああなのね。なんだかムカついてきたわ」

「手は出さない方がいい。返り討ちに遭うだけだ」

「なんでよ! 一発ガツンと言ってやらないと調子に乗るタイプじゃない!」

「………なら、勝手にしろ。オレは忠告したからな」

「ふんっ、グリーンのバカ!」

 

 うっわ、なんかあっちで痴話喧嘩が始まってるんですけど。

 怖いからこっちに来るなよ?

 

「えー、では少々話が脱線してしまいましたが、カロス地方では石を必要としないメガシンカに似た現象があり、これからより詳しく研究していくつもりです」

「ふぅ………プラターヌ博士、ありがとうございました。何か質問などがある方は挙手を願います」

 

 うわ、変わり身早っ………!

 女ってこういう時マジで怖く見えるわ。俺の周りもこんなのがいっぱいいるから超ドキドキする。特に横に座るあざとい後輩とか。

 

「………ないようですね。では、続いてはリージョンフォームについてです。ナリヤ・オーキド博士、お願いします」

 

 次はリージョンフォームについてか。

 博士からもらった資料では見たりしてはいるが、それもこの手元にある資料程細かくはない。姿を比較したやつくらいだな。

 まあ、それだけでも驚きではあるが。生で見たことあるのはイッシキ祖父が連れている白いロコンと薄黄色のキュウコンだけか。

 ………ん?

 そういや誰か首の長いナッシーとか連れてなかったか?

 ………それも全部今から分かることか。楽しみにしておこう。

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