ポケモントレーナー ハチマン 〜ぼーなすとらっく集〜   作:八橋夏目

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今作品も今日で丸一年というのに、長かったような短かったような気がします。これも皆々様方のおかげです。まだもう少しだけ続きますので、どうかお付き合いくださいませ。

さて、今回も会談です。バトルまではもう少しだけお待ちください。


ぼーなすとらっく21『有識者会議 その3』

「リージョンフォームとはその地方の環境や文化に影響され、適応する中で姿を変えたポケモンたちのことを指す。変化するのは見た目はもちろんのこと、タイプ、特性、技、進化方法等様々であり、種全体で変化したポケモンもいれば、最終進化形だけが変化したポケモンもおる。さらに新たな発見としてはリージョンフォームからのみ進化するポケモンがガラル地方で発見されておるのじゃ」

 

 次はリージョンフォームの説明となり、前に立ったナリヤ博士が話し始めた。オーキドのじーさんがロン毛になるとあんな感じなのか。というか色黒で、違和感すら感じてしまう。別人だとは分かってるんだけども。

 

「それと、元々の姿のリージョンフォームかどうかを判断するのはDNA検査や元々の姿が覚える技を覚えることができるかどうか等いろいろある。では、まずはアローラ地方で確認されたリージョンフォームのポケモンたちをお見せしよう」

 

 さて、どんなポケモンがリージョンフォームをしているのやら。ロコン、キュウコンと首の長いナッシーくらいしか知らないし楽しみだ。

 

「最初はコラッタとラッタじゃ。タイプはどちらもあく・ノーマルタイプ。他のポケモンとの縄張り争いの結果、夜行性となり人間の生活空間にも住み着くようになったとされておる」

 

 コラッタとラッタか。

 カントー地方でもお馴染みのポケモンだな。リージョンフォームしても似たような感じだし。だが、カントー地方にいるのは昼間から活動してるし、生活環境によって昼夜逆転ということもあるのか。

 

「あくタイプが前に来ているのも生活環境が大きく変化し、片やあくタイプの方へと染まっていった表れであろう」

 

 ………確かに。言われてみれば、あくタイプの方が前に来ているな。姿の方に気を取られていて気づかなかった。

 

「次はライチュウじゃな。タイプはでんき・エスパータイプ。アローラ地方には特殊なエネルギーが蔓延しており、そのエネルギーを含んだアローラの雷の石で進化したことでエスパータイプを手に入れたと考えておる。尻尾をサーフボードのようにすることで素早い身のこなしを可能にするところから、特性をサーフテールと名付けられておるようじゃ」

 

 おおう、ライチュウまでか。

 しかも尻尾に乗ってふわふわ移動するとか、なんか画期的だな。

 え、てかアローラの雷の石ってそんなヤバいのか?

 

「これはサンドとサンドパンじゃ。タイプはどちらもこおり・はがねタイプ。元々はハイナ砂漠というアローラ地方の砂漠地帯に生息していたのではないかとされており、同じ島にあるラナキラマウンテン、あるいは隣の島のヴェラ火山の噴火により住処を追われ、ラナキラマウンテンに移動したと考えておる。じゃがラナキラマウンテンは氷山でもあり、その環境に適応するために変化したのじゃろう。特性もすなかきからゆきかきへと変化しておる」

 

 サンドにサンドパンまで………。

 まあでも、俺的にはこっちの方がカッコよく見えるのは気のせいか? それにしてもほのおタイプとかくとうタイプへの耐性が辛いな。

 

「次はロコンとキュウコンじゃな。こちらもこおりタイプへと変化しておる。キュウコンはこおりタイプに加え、フェアリータイプも取得し、雪山の聖霊とまで評されたりしておるんじゃよ。サンドやサンドパンと同様、ロコンたちも住処を追われてラナキラマウンテンに移動し、環境に適応したと考えておる」

 

 これは見たことあるな。

 しかし、白いキュウコンは美しいな。こう、毛並みがサラッとしてる感が出ていて神々しいというか。雪山の聖霊と評されるのも頷ける。

 こいつも相当人気があるんだろうな。

 

「これはディグダとダグトリオじゃ。一見これまでのディグダとダグトリオのようじゃが、頭頂部にヒゲがあるのが分かるかの?」

 

 ヒゲ?

 あのちょこんと頭頂部にあるやつが?

 髪だろあれは。ハゲ頭に毛が一本にしか見えないわ。

 

「ヒゲ………? 髪じゃなく?」

 

 ほら、オーキドのじーさんまでもが聞いてるじゃん。

 てか、アンタも知らなかったのかよ。

 

「髪じゃなくヒゲなんじゃよ。このヒゲは身を隠すところが少ない火山地帯で生活するために、地中から外部の様子を探るレーダーの役割として生えたんじゃ。その影響でダグトリオに進化するとじめん・はがねタイプに変わっておる」

 

 あ、こっちは三本に増えてるわ。それでも三本か。なんか見てる方は悲しくなってくるな。まあ、本人たちはレーダーが増えて、より索敵がしやすくなったってことなんだろうけども。ヒゲの進化ではがねタイプを取得するとは中々乙な変化を遂げているな。

 

「次はニャースとペルシアンじゃな。元々はアローラには生息していなかったポケモンじゃが、王政時代に連れて来られて王政が崩壊した後、野生化したという記録がある。希少種ゆえに贅沢な生活を与えられたせいで、非常に我儘でプライド高くなってしまったようじゃ。そしてタイプもノーマルからあくタイプへと変化してしまったんじゃな」

 

 うわ、これがペルシアンかよ。なんつーか太々しい顔だな。超悪そうだわ。おまけにリージョンフォームした理由も酷いな。贅沢に浸ってしまってああなるとか。メリハリはしっかりつけるべきだというのがこいつらを見てると改めて思い知らされる。

 

「これはイシツブテ、ゴローン、ゴローニャじゃ。全員いわ・でんきタイプである。残念なことに変貌の記録は残されておらん。じゃが、ゴローンがドラバイトという鉱物を好んで食しており、その成分が電気を生み出しでんきタイプを手に入れたのではないかと考えておる。イシツブテやゴローニャもドラバイトを食したゴローンが進化したり、子孫を残したことで変化したのじゃろう」

 

 でんきタイプの要素なくね?

 どっちかっつーとはがねタイプ………もないか。内部電力が外にまで出てると思った方がいいのかね。取り敢えず、あの眉が太いのが印象的だな。あと顎髭か。

 

「ちなみに太い眉のように見えるのは砂鉄じゃ。故にくっつく場所が違う個体も出てくるじゃろう」

 

 え、マジで?

 でんきタイプの要素ってそこなのかよ。確かにあれが砂鉄なら、引き寄せるための磁力を生み出している電気を体内に有しているとも考えられるな。

 

「お次はベトベターとベトベトンじゃ。アローラ地方のゴミ問題をきっかけに連れて来られたようじゃが、ゴミを主食にしておったらこの有様のようじゃ。タイプはどちらもどく・あくタイプ。見た目はカラフルでより危険度は増しているように見えるが、体内で毒素を生成して溜め込んでおるから悪臭はしないんじゃな」

 

 いやいやいや。

 ゴミ食ってたらあんなカラフルになっちゃうとかどんなゴミ食ってたんだよ。そっちの方が気になるわ。しかもあくタイプが追加って………。

 

「これはナッシーじゃ。アローラ地方の日差しは強いからの。その影響で大きく成長したようじゃ。タイプもくさ・ドラゴンとこれまでのナッシーとは異なっておる。またアローラの人々はこっちが元々のナッシーだと考えている者も多いようじゃな」

 

 おおう、これこれ。この首の長いナッシー。確かリーグ大会かなんかで誰か連れてたんじゃなかったっけ?

 進化方法はリーフの石を使うってことでいいんだよな? 雷の石といいアローラの進化の石は恐ろしいな。

 

「最後はガラガラじゃ。アローラ地方には天敵のくさタイプが多く生息しており、ガラガラの生息圏と被ることが多かったようじゃ。そこで仲間との結束を高めることで強い霊感を手にし、炎を生み出せるようになったようじゃな。タイプはほのお・ゴーストタイプ。骨を使って攻撃するのは変わっとらんの」

 

 なんか意外なタイプに変化してるな。しかもタイプ二つ持ちに。あの骨の両端に青い炎を纏わせているのはかっこいいし。元々の姿よりリージョンフォームの姿の方が俺は好きかも。

 ただ、みずタイプに弱いのは変わらないんだな。

 

「取り敢えず、ここまでで気になるようなことはあるかの?」

 

 これでアローラ地方のリージョンフォームは全て出てきたみたいだが、気になることと言えば一つある。

 

「………話を聞いていて一つ疑問に思ったんですけど、アローラ地方の進化の石は他の地方の進化の石とは性質が異なるんですかね。その割にライチュウとナッシーしかリージョンフォームしてませんけど」

「ふむ………、確かに言われてみるとそうじゃのう。仮に雷の石とリーフの石が他地方とは高密度のエネルギーを持っていて、その影響を受けたピカチュウとタマタマが新たな姿を手に入れたと考えたとすると、イーブイなんかも進化した姿が変わっていてもおかしくはない。じゃが、そう事例は一切見受けられんかったし、ないのじゃろうと推測しておる。これはわしの一仮説でしかないが、恐らくアローラ地方特有のエネルギーが関係しているのやもしれん。例えばアローラ地方の雷の石をカロス地方に持っていき、ピカチュウを進化させたとしてもアローラの姿のライチュウには進化せんのじゃ。進化の石だけが影響を与えているとも限らんのじゃろうな」

「なるほど………、だからガラル地方でもリージョンフォームは起きているということですか」

「左様じゃ」

 

 リージョンフォーム。

 その根本的なところにはその地方特有のエネルギーが関係しているということか。アローラ地方にはZ技とかもあるからな。その辺が影響さているのだろう。

 ただ、ともするとカロス地方にもメガシンカがあり、エネルギーだけで言えばアローラ地方と似たような環境とも言えなくもない。だが、リージョンフォームしたポケモンの姿は未だ確認されていないのだから、エネルギーの種類にも関係があると見ていいのかもしれない。

 全く………、ポケモンは不思議な生き物だな。

 

「なら、アローラ地方で進化したイーブイたちが他の地方で進化した時よりも炎なり電気なりを高密度に生成することが出来るようなったとかいう事例とかってあるんですかね」

「さすがにそこまでは研究出来ておらぬ。比較をするにしても二箇所以上で進化した姿を手懐けるか、協力者を煽ぐしかなく、我々では中々そこまで手が出せんのじゃ」

「まあ確かに、メガシンカの研究ですらメガシンカ使い頼りなところはありますからね。今の話を聞いている限りでは、リージョンフォームともなると余計に難しいでしょう」

「では、我々も微力ながらお手伝いいたしましょう。リージョンフォームの方は難しいでしょうが、元の姿の方のポケモンを所持しているトレーナーを見つけることは出来るかと」

「そういうことなら私たちも」

 

 おっと、俺余計なこと言っちゃったかな?

 でもまあ、地方を跨いで有名なダイゴさんとシロナさんが協力してくれるというのなら協力者を煽ぐことも可能だろう。

 

「なら、協会本部に掛け合ってみるのも一つの手かと。あのクソじじいが渋るようなら俺が助言したとでも言えばいい。何ならじーさんの方が交渉には適しているかもな」

「およそ部下の発言とは思えん言葉じゃのう。内部事情を垣間見た気分じゃ。ナリヤ、そっちはわしに任せてほしい」

「うむ、ではよろしく頼む」

 

 よし、これで俺が直接動かされることもないだろう。こっちはメガシンカのことを手伝っていたんだからな。仮にもカロス支部の長をこき使うのは変態だけで充分である。そうでなくとも面倒な話が後々回って来そうで怖い。

 

「さて、次はガラル地方のリージョンフォームをお見せするとしよう。じゃがその前に、わしもガラル地方には行ったことがなくての。ガラル地方のリージョンフォームは研究し始めたばかりで、取り敢えず資料を集めるだけ集めて分かったことしか言えんということを頭に入れておいてほしい」

 

 そう言えば、ナリヤ博士の拠点はアローラ地方だったな。そりゃ現地のリージョンフォームは詳しく調べられてもガラル地方のリージョンフォームは現地に赴かない限り調べられないか。

 

「では、最初はこのポケモンたちじゃ。ニャースとニャイキング。アローラ地方でもリージョンフォームを遂げているがガラル地方でも別種のリージョンフォームを遂げている珍しいポケモンじゃ」

 

 は?

 マジで?

 ニャースの適応力ヤバくね?

 え、てかこれがニャースなのかよ。全体的にボサボサじゃん。

 

「ニャースは海洋民族と暮らしていたようで、その環境に鍛えられて爪や額の小判が黒鉄に変化したと記されておる。毛がボサボサなのも民族に溶け込むためじゃろう。また、これまでのニャースたちとは違い非常に好戦的で、海洋民族と船の上で生活するには四足歩行のペルシアンでは不便なのもあり、その結果ペルシアンとは別のポケモンに進化してしまったようじゃ。それがこのニャイキングである。爪を伸ばせば短剣にもなり、非常に戦いに特化した姿と言えよう。大きさはニャースの頃とあまり変わらず、タイプもニャース共々はがねタイプである」

 

 ニャイキング。

 海洋民族って要は海賊だろ?

 海賊っていうとバイキングが出てくるし、名前もそこから来てるのかね。しかもはがねタイプって………、相当戦いが激化していた可能性もありそうだな。

 

「次はポニータとギャロップじゃ。タイプはポニータがエスパータイプ、ギャロップがエスパー・フェアリータイプとなる。元々ポニータやギャロップの炎には彼らに認められると熱を感じなくなるという不思議な現象があった。そして物凄い脚力の持ち主でもあり、その二点が環境に合わせて変化していったのではないかとわしは考えておる。まだ実際に目にしたわけではないため、何とも言えぬのが現状じゃな」

 

 なるほど。

 それはそうかもしれない。

 ポニータやギャロップ自体がそもそも不思議な炎を有していたのだ。それが根本的にポニータやギャロップが持つ特有の力であるとするならば、環境次第ではリージョンフォームしていてもおかしくないな。それもエスパーとフェアリータイプとくれば、首も大きく縦に振れる。

 いっそ翼が生えて空を飛ぶ姿とかも見たかったと思わなくもないがな。それはそれ、これはこれである。

 

「お次はカモネギとネギガナイトというポケモンじゃ。ガラル地方のネギは太くて長い品種で、そのネギを使いこなすうちに独自の変化を遂げたとされておる。そして歴戦を戦い抜いた者がネギガナイトに進化するとされているが、詳しい進化方法はまだ分かっておらん。タイプはどちらもかくとうタイプ。飛ぶことを捨て陸上で戦い抜くことを選んだ珍しいポケモンじゃな」

 

 おいマジか。

 カモネギさん、翼を残したまま飛ぶことを捨てちゃいましたよ。リージョンフォームって怖っ?!

 そういうパターンもマジであるんだな。

 んで、進化したらしたでネギを矛と盾にしちゃってるし。それほど翼よりもネギが大事だったんですね………。

 

「バリヤードにバリコオルというポケモンじゃ。こおり・エスパータイプに変化したとしか言えることはない。進化前のマネネはどうやらリージョンフォームを遂げてないようで、ガラル地方にこれまでの姿で生息しておる。ガラル地方が寒いから適応するために進化の際にタイプも変化したのかもしれんが、何も分かっておらん」

 

 これはどこの大道芸人なんでしょうね………。

 あんな服着た人、探せば普通にいるぞ。

 しかもガラル地方でもリージョンフォームしてこおりタイプを獲得するんだな。リージョンフォームでのこおりタイプ率の多さときたら………。

 

「これはサニーゴとその進化形のサニゴーンというポケモンじゃ。太古の海に生息していたようじゃが、隕石の落下で絶滅した後の姿とされておる。タイプはどちらもゴーストタイプ。サニゴーンはサニーゴの霊力が限界に達して殻を破ったようじゃ。そのため下手に触って刺激を与えれば石のように動けなくなるとも記されておった。普段は枝を伸ばさずただただ丸い姿になっているようで、気づかずに踏みつけられてしまうというパターンもあるようじゃな」

 

 ………………。

 おいこれ、絶対死んでも死に切れなかったやつじゃねぇの?!

 つーか、どこかで見たこと………あっ!?

 

「先輩………?」

「………………」

 

 似たようなポケモンの写真をユイが送ってくれていたことを思い出し、ホロキャスターに写し出してみた。

 手元にある資料と交互に見返し、スクリーンに大きく写し出された白いサニーゴと見返した。

 ………やはり似ている。

 

「………おや、ハチマン? どうかしたかの?」

「あ、これ、ユイ先輩の……!」

「………トゲを取ったらフォルムが似てるな」

「ん? ………あ、本当だね。ガラルのサニーゴに似てるね」

 

 そんなことをしていたら、プラターヌ博士が横から覗き込んできた。オーキドのじーさんも俺が眉をひそめているのに気づいた。

 

「ガラルのサニーゴを知っとるのか?!」

「あ、いや、ユイ………カロスにいる俺の大事な奴が捕まえたみたいでな。捕まえたはいいけど、見たことのないポケモンだって言ってきて写真を送ってもらったんだ」

「プラターヌ博士」

「僕も初めて見ましたが、特徴はどこも似ているかと。ただし、触覚といいますかトゲがない姿、みたいな感じですね」

「データの共有はできるか?」

「ホロキャスターでできるんすか?」

「貸せ。オレがやる」

 

 えー………。

 そこで出てくるのかよ。

 

「なんだその目は」

「いや、機械に強かったっけと思って」

「機種の互換がなくともデータの抜き取りだけならできるんだよ」

 

 グリーンはそう言いながらも俺のところにまで来て、手を出して差し出してきた。

 その手は渡せということか。

 

「………壊すなよ?」

「安心しろ。もし壊れたら新しいのはオレが責任を持って買ってやる」

 

 それはそれで嫌なんだけど。

 何が悲しくてグリーンからプレゼントされなきゃならねぇんだよ。壊れないことを強く願おう。

 

「出てこい、ポリゴン2」

 

 あー、そういうこと。

 そりゃ、いけるか。ザイモクザもそういうのZにさせてるし。

 ……うん、もうタネは分かったし安心だわ。

 

「ホロキャスターの中からこの画像を俺の図鑑にコピーして送信してきてくれ」

 

 グリーンがそう言うと、ポリゴン2はポケモン図鑑の中へと潜り込んでいった。

 よく見ると図鑑の側面に小さい鉄板があり、そこを通して潜り込んだようだ。ザイモクザの場合はボールを通して直接機械に潜らせているが、ポケモン図鑑だとこういうやり方になるのか。

 

「………お、来たか」

 

 どうやら早速データが届いたらしい。

 仕事がお早いことで。というかポリゴン2だったんだな。Zに進化させてはいなかったのか。

 

「おじいちゃん」

「うむ、…………ナリヤ」

「ほほー、こりゃ正真正銘サニーゴのガラルの姿じゃな」

 

 やはりそうなのか。

 ユイが捕まえたという白いポケモンはサニーゴのリージョンフォームだったんだな。そりゃ、既視感を覚えてもしょうがない。サニーゴ自体は知っているんだからな。

 

「サニーゴの特徴的な枝はないけど?」

「うむ、ガラル地方のサニーゴはゴーストタイプのポケモン。リージョンフォームした時には枝のない丸い形のもので誕生したと考えられておる。このスクリーンの写真は自ら大きく見せるためのサイコパワーに近い力で石などを浮かせておるんじゃ。そのため、白いサニーゴの本来の姿はこっちというわけじゃよ」

「な、なるほど………取り敢えず共有するよ」

「みんなにも見せてやっておくれ」

 

 グリーンが図鑑からパソコンにデータを送信し、ユイが撮った写真がスクリーンの右側に写し出された。左側には今まで写し出されていた方の写真があり、比較できるように表示されている。

 

「………確かに似てるわね」

「ここをこう隠してみるとどうじゃ?」

 

 っ?!

 確かに、そうやって見ればユイが捕まえた白いポケモンと一緒だわ。

 ナリヤ博士がスクリーンの白いサニーゴの枝の部分を隠してみせてきた。それだけでユイが捕まえたポケモンと同一だと分かった。

 でもそうなると………。

 

「これはカロス地方で捕まえたのか?」

「ああ、ただ場所が場所だ。捕まえたのはマスタータワーがあった浜だ。位置的に考えて海を渡って来たんだと思う」

 

 グリーンが捕獲場所の特定をしてきた。

 新たなポケモンをどこで捕まえたかというのは、この世界では重要視されてるからな。祖父に仕込まれているグリーンなら、いや………頭脳派の図鑑所有者なら当然のことだろう。

 

「群をなしていなかったんじゃな?」

「ユイが言うにはな。襲ってきたのはそいつだけだったらしい」

「つまり、カロス地方に生息していると考えるにはまだ早いようじゃな」

「一体だけでは生態系の変化とは言えないからな。俺も迷い込んだ一体くらいに捉えている」

 

 これが大群で押し寄せてきたって話なら、新たな生息地の発見ってなったんだろうが、一体だけではそうとは考えづらい。

 

「ただ、夜中だったからな。昼間にまた調査する必要はあると思うぞ」

「そうじゃな。ガラルのサニーゴはワイルドエリアという広大な大地に生息しているらしい。つまり内陸なのじゃ。じゃからどうやってカロス地方の海にやってきたのかは突き詰める必要があるじゃろうな」

 

 分からないことは調べるに限る。

 これで帰ってからの課題が一つ明確になったな。

 

「ちなみに時間帯は?」

「昨日の夜更けだな。こんな時間に何やってんだって思ったし」

「そんな遅い時間だったのかい?」

「なんかルガルガンが………そういえば、ついさっき進化したとか言ってたな」

 

 途中でカメラを持たせてたし。目も紅かったしなー。夜中にあの目を見るのは怖いと思うんだが、俺だけか?

 

「イワンコが飛び出していったかと思えば進化しちゃったって言ってましたよ、先輩」

「ああ、そうだっけ? まあ、というわけらしい」

「なるほど、そういうことか」

「おや、ククイ博士。何かお判りになったんですか?」

「ああ、話を聞く分にはイワンコが真夜中に急に飛び出していき、海に向かって雄叫びを上げて進化した。だが、その雄叫びに驚いた白いサニーゴが襲ってきたというところだろう」

 

 ニヤっと不敵な笑みを浮かべたのに一早くダイゴさんが反応した。

 

「イワンコは進化する際、トレーナーの元を離れる習性がある。そして進化の際も雄叫びを上げるのが常だ。今回はその一連の流れが白いサニーゴを呼び寄せてしまったと考えられる」

 

 あー、それは大いにありそうだな。態々海にまで行って進化したんだし。進化する際に雄叫びを上げられる場所に移動するためにトレーナーの元から離れるとも考えられる。

 

「ちなみに進化したのはルガルガンの真夜中の姿にだろ?」

「目が紅くて二足歩行だったし恐らくは」

「ククイ博士、ルガルガンというポケモンはいくつかの姿があるのかな?」

「あ、はい。ハニー、イワンコとルガルガンの画像出せるかい?」

「ええ、任せて」

 

 ククイ博士がそう言うと、嫁さんのバーネット博士がタブレットをいじって一体のポケモンを写し出した。

 

「えー、まずはこちらがイワンコというポケモンです。いわタイプのポケモンで人懐っこいポケモンなんですが、進化の予兆が現れるとトレーナーの元を離れる習性があるんです」

 

 イワンコ。

 ユイがどこぞの誰かからもらったらしいいわタイプのポケモン。もらったはいいけど知らないポケモンだから調べて欲しいってことで、ユキノが調べていたのを覚えている。その流れでククイ博士からイワンコとルガルガンの資料をもらい、俺も目を通していたため幾ばくかは知っている。

 

「そしてこちらがルガルガンになります。進化する時間帯によって姿が異なる珍しいポケモンです。昼にーー太陽が昇っている時に進化すると左の真昼の姿に。夜ーー太陽が沈んでいる時に進化すると右の真夜中の姿になります」

 

 画像が切り替わり今度は二体のポケモンが写し出された。

 左の四足歩行のポケモンがルガルガンの真昼の姿。幼い印象のイワンコから風格のあるルガルガンへと成長したような姿だ。反対に右の二足歩行のルガルガンは真夜中の姿というらしい。猫背で目と体色が紅く、怒ると怖そうな印象だ。

 

「それともう一つ」

 

 ん?

 

「ルガゥ!」

 

 え?

 

「む、色違いっ?」

「真昼の姿と似ているな」

 

 はっ?

 マジで………?

 もう一種類いたのん?

 

「似てはいますが別の姿と見ています。その名も黄昏の姿!」

 

 画像ではなく実物をボールから出してきたククイ博士。

 実はこれを披露したくて機を伺ってたんじゃないだろうか。

 だって、今日の議題一覧にはない話だし。

 

「進化した時間帯が太陽が沈む時というかなり珍しいタイミングでした。立ち会わせた時には半分太陽が海に沈んでおり、深いオレンジ色になっていたのを覚えています。また、その太陽の外縁に緑色の光が見えました。その瞬間に進化が始まったため調べてみたところグリーンフラッシュという現象だったようです」

 

 ぶふっ?!

 ヤバい。

 グリーンフラッシュと聞いてグリーンの頭が光るイメージしか出てこなかった。こんなこと冗談でも口に出そうものなら殺されそうだが、この状況下ではそうイメージしても仕方ないだろう。そう思いたい。

 だって、そこにグリーンがいて技にフラッシュってのがあるんだし。

 

「先輩、どうしたんですか? 顔が気持ち悪いことになってますよ?」

「いや、何でもない。どうでもいいことを想像してしまっただけだ。それと気持ち悪くなってるのは自覚してるから口に出すのはやめてね」

 

 いや、急に隣で気持ち悪い顔がさらに気持ち悪くなったらそりゃ気になるだろうけども。俺だって気になるさ。でも口に出さないで欲しい時もあるってもんなんだよ。

 

「実は昔から稀に確認されていたみたいなんです。ただあまりにも真昼の姿に似ているため、色違いや奇形と考えられていたみたいなんですよ。オレも進化を目の当たりにするまではその違いに気づくこともなかったでしょう」

「なるほど、確かに判断は難しいな。だが、よく見ると所々違う点も見受けられる」

「ええ、それで使える技等も調べた結果、真昼の姿でしか覚えないアクセルロックや真夜中の姿でしか覚えないカウンターを使えることが分かりました」

「ど真ん中じゃな」

「それで、黄昏時に進化したということで黄昏の姿と名付けた次第です」

 

 リージョンフォームは元々の姿が覚える技の中から使える技があるかで判断することもあるようだが、姿違いになるとその逆で覚える覚えないで判断していくんだもんな。話は脱線したものの意外と対局的な話でタイミングはよかったと思う。この人、見た目はこんなんだが結構やり手なのかもしれない。

 

「これは登録案件じゃな」

「うむ、わたしも是非協力しよう」

「話は脱線してしまったが、これはこれで収穫ものじゃったな。カロスでの白いサニーゴの発見。アローラでの新たな進化方法。記録に残すには充分に値する話じゃった」

 

 俺もユイが捕まえたポケモンの正体が知れたのは収穫物だったしな。これだけの頭脳が一堂に会する機会に参加できたのは大きい経験だ。

 

「では気を取り直して。次はジグザグマ、マッスグマ、タチフサグマじゃな。この種族は少々特殊で、こちらの姿の方が原種とされておる。そのためある意味ホウエン地方で登録されたジグザグマ、マッスグマの方がリージョンフォームと言ってもいいかもしれんな。またガラル地方のマッスグマには進化形があり、それがこのタチフサグマというポケモンじゃ。タイプは全員あく・ノーマルタイプ。好戦的で向こう見ずな種族である」

 

 忘れていたが、まだリージョンフォームは残っていたんだったな。

 ナリヤ博士がスクリーンを切り替えて写し出したのは黒い模様が入ったジグザグマとマッスグマ。それに立ち上がったポケモンだった。名前はタチフサグマか。

 あ、てかこっちが原種なの?

 リージョンフォームなのはホウエン地方の方ってか。そういうパターンもあるんだな。しかもあく・ノーマルからノーマル単タイプへ。環境によって変化するってのがリージョンフォームだし、ホウエン地方はそれだけ穏やかってことなのかね。というか進化も捨てたってことだろ?

 ある意味退化になるのでは………?

 

「最後はダルマッカとヒヒダルマじゃ。と言っても皆にはあまり馴染みのないポケモンじゃろう。元々ダルマッカとヒヒダルマはイッシュ地方に生息し、他の地方で見かけることはなかったんじゃが、どうやらガラル地方では寒冷化に適応して生息しているようじゃな。タイプはどちらもこおりタイプ。ちなみに元々はほのおタイプじゃ。それとヒヒダルマにはダルマモードという特性があり、体力が減ってくるとフォルムチェンジをするらしいぞ」

 

 なんか最後は雪だるまみたいなやつだな。

 ダルマッカにヒヒダルマか。実物を見たことはないし、リージョンフォームは以ての外。しかも特性によるフォルムチェンジ持ちときた。中々に興味深いポケモンだな。

 

「大分サラッとした説明になってしまったが、お配りした資料にわしが知る限りの情報はまとめてあるので、そちらで補完していただけると幸いじゃ。それと付け加えておくならば、これだけがリージョンフォームとは限らん。これはわしの知る限りのほんの一部にしか過ぎん。故に新たな姿を見つけた時には是非とも知らせてほしい」

 

 リージョンフォームはまだまだいると見ていいのだろう。というかリージョンフォームこそが世界中にポケモンが存在している鍵なんじゃないかとすら思えてくる。

 

「おや、ユキナリ。どうかしたかの?」

「今回出席されなかったマグノリア博士の案件なんじゃがな。ガラル地方にはダイマックスという現象があるようじゃ。何でもポケモンが巨大化するのだとか。詳しいことはマグノリア博士にご説明願うつもりだったんじゃが………ハチマンは何か知らぬか?」

 

 はっ?

 何でいきなり俺に振るわけ?

 

「は? 俺が? 知るわけないでしょ、ガラル地方に行ったこともないんだし。コマチから聞いたのだってじーさんの情報程度でしかないぞ。そもそも何で俺に聞くんだよ」

「そりゃ、お前さんが一番知ってそうじゃからな」

「ないない。ここに専門家がいるってのにZ技もよく分かってないんだぞ。ほとんど実体験のないことなんて分かるわけないだろ」

「ふむ、となるとやはり誰かを送った方がいいんじゃろうか」

「俺は無理だからな。コマチの付き添いだって断らなくちゃいけなかったんだぞ」

「しょうがないのう。こっちで考えるとするか」

 

 酷い話だ。

 何を根拠に俺が知ってると思ったのだろうか。そりゃ情報が集まりやすい立場ではあるが、それはパイプがあるところからだけであってガラル地方にはパイプなんてものが一切ない。強いて言えばコマチとトツカくらいだろうが、あいつらも全てを理解してるわけではないし、聞いた話もじーさんの持つ情報とさして変わらなかったぞ。

 

「あの………」

「ん? イロハ、どうかしたか?」

「その………ダイマックスについてなんですけど、コマチちゃんから小耳に挟んだことがありまして………」

「コマチから?」

「はい、なんでもガラル地方のチャンピオンのダンデとかいう人はダイマックスを使えるみたいなんですけど、その対象者であるリザードンがダイマックスすると姿を変えるとか言ってました」

 

 え、俺知らないんだけど。

 コマチちゃん?

 そういうのはもっと早くに教えてね?

 

「姿を変える………? メガシンカみたいにか?」

 

 それにしても姿を変えて巨大化とか、もはや誰ってことにはならないのだろうか。

 

「恐らく………。私も実際に姿を見たわけじゃないので何とも言えませんけど、コマチちゃんが言うにはテレビ放送されていたチャンピオンのバトルではそうだったと」

「ふむ………ダイマックスはそのままの姿で巨大化すると聞いておる。とするとそのリザードンの変化現象はダイマックスでありダイマックスでないのかもしれんな」

 

 まさかのリザードンかよ。

 あれ? ひょっとするとうちのリザードンさんも巨大化しちゃったりするのん? 今の強さで? ヤバくね? 街一つ余裕で破壊できそうだわ。

 

「………ある特定のポケモンにのみ起こる現象、と考えた方がいいかもしれませんね。俺の研究対象でもあるZ技にも特定のポケモンにのみ使えるZクリスタルがあります。例えば先程のルガルガンにはほのおタイプのZクリスタルなどの使える技の各タイプのZ技が使えますが、その他にストーンエッジをZ技に変えるルガルガンだけのルガルガンZというものが存在します。こちらでもそういう特別性とでもいいますか、その他大勢とは異なる存在というものがありますし、ダイマックスにおいても特別性があると考えておく余地はあるかもしれませんよ」

 

 あー、そういえばコマチはカビゴンZなるものを持ってたもんな。他の特定のポケモンにのみ存在するZ技があってもおかしくないわな。

 

「なるほど………」

「そうですね。メガシンカにおいてもゲッコウガのようなメガシンカでありながらメガシンカでない存在もいることですし」

 

 メガシンカにしろZ技にしろ特別な存在というものがあり、その特殊性が歴史に大きく影響を与えてきているのだろう。そしてそれはダイマックスなるものも同じなのだと思う。巨大化してなお、更なる力を求めた結果、姿をも変化させてしまったのだ。

 結局、ポケモンは何事においても環境とその変化に左右されていく存在なのだろう。まあ、それは人間にも言えたことではあるが。

 

「………小さくなったり大きくなったり。ポケモンの細胞ってどうなってるんですかね」

「ほんとじゃのう………」

 

 うーんと頭を唸らせているとイロハが率直な感想を述べた。それに同意したのはナリヤ博士の方。声だけ聞くと全く判別がつかない。

 

「だが、元々モンスターボールの開発にはポケモンが小さくなる現象が基となっている。それを考えるとポケモンが巨大化するのも何らおかしいことではないだろう」

「そうですな。ではダイマックスにはそのままの姿で巨大化するポケモンもいれば、姿を変えて巨大化するポケモンもいるという認識を持っておくことにしよう。あとはわしの方で詳しく調べてみるとする」

 

 ダイマックス、か。

 これも帰ってからの調査案件だな。

 もしかしたらリザードンに新たな力を与えられるかもしれないし、適合しないならそれはそれでいい。

 まずはどういう代物かを知ることの方が大事だ。

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