ポケモントレーナー ハチマン 〜ぼーなすとらっく集〜 作:八橋夏目
その次からはいよいよバトルに入れるかと………。
「えーと、次はなんじゃったかな………」
「伝説ポケモンの進化についてですわ、オーキド博士」
「おお、そうじゃった」
「では、ククイ博士。お願いします」
議題は移り、次は伝説ポケモンの進化についてらしい。
確かにこれまで確認されてきた伝説ポケモンは全て進化しないポケモンたちだった。精々フォルムチェンジやメガシンカといった姿を変化させてパワーアップというものくらいだ。
「本来、オレの研究とはかけ離れた内容になりますが、恐らく他に確認されている事例がないものだと思い用意してきました」
ただ、俺は特殊な例を知っている。人工的に伝説ポケモンに進化させる方法を。イロハの祖父イッシキ博士が考案したとされる計画、『レジェンドポケモンシフト計画』。そしてそれを踏まえた『プロジェクトμ’s』。俺とリザードンはこの実験の被験体であり、成功者でもある。ただし、今現在はそれも叶わないがな。力の媒体となるメガストーンがぶっ壊れちゃどうにもならん。
ここで話すつもりもないが、どうかこんな非現実的な実験によるものでないことを祈りたい。
「実はアローラ地方の伝承に残されている話が関係しているので、そちらから。アローラ地方の四つの島にはそれぞれ守り神として祀られているカプ神がいます。メレメレ島にはカプ・コケコ。アーカラ島にはカプ・テテフ。ウラウラ島にはカプ・ブルル。ポニ島にはカプ・レヒレ。この四体によってアローラ地方は守られてきたのです。しかし、突如として空に現れた裂け目から太陽を食いし獣ソルガレオ、月を誘いし獣ルナアーラが現れ、持てる全ての力を使いカプ神を従えました。その後、ソルガレオとルナアーラの間にコスモッグというポケモンが生まれたのです。そして、このコスモッグこそが進化する伝説のポケモンなのです」
へぇー。
アローラ地方ってそういうところだったのか。
プラターヌ博士を通じてアローラ地方のポケモンの資料とかも目を通してはいたが、確かに地域特性なるものまでは把握していなかったな。
「コスモッグは進化するとコスモウムというポケモンになり、その後ソルガレオまたはルナアーラに進化します。これにより彼らは複数の個体が存在するポケモンだと考えられます」
コスモッグ、コスモウム、そしてソルガレオにルナアーラ。進化するという点もだが、同時に分岐進化というところも着目してもいいだろう。
しかし、太陽を食いし獣に月を誘いし獣か。分岐らしく太陽と月という対比。やはり何か特殊な力が働いたと考えるのが自然かもしれない。まあ、それは自然界の中での話であり、人工的なものは一切ないだろうけども。
「うーむ、一つ進化する伝説のポケモンとまではいかないが、マナフィというポケモンからフィオネという別のポケモンが生まれた事例はある。それもここ数年の出来事だ。わたしもこの目で確認している。ただ、フィオネがマナフィに進化するのかは未だ不明だ」
え、それ初耳なんだけど。
そういうパターンもあったのかよ。
これ、フィオネとやらがマナフィに進化しなかったら超特殊な例になるんじゃねぇの?
「伝説のポケモンといえどポケモンはポケモン。されど伝説のポケモン。分からないことが多い分、子孫をどうしているのか、それとも永遠の存在なのか、こういう分け方もできるかもしれませんね」
うわ、横でなんかすげぇいい事言いましたよ感を感じるんだけど。
「なるほどのう」
「伝説といっても様々なパターンがありますからね。案外、伝説のポケモンという括り方が漠然としているのかもしれないですよ」
オーキドのじーさんは深く唸っているが、俺たちが知っているポケモンなんて世界の極わずかでしかないだろ。そこにあーだこーだ理論を組み立てて法則を作って該当ポケモンを当てはめているにすぎない。言ったら、そんな人間の法則に従う程ポケットモンスターという存在は甘くないということだ。だから新たなパターンが出てきたところで何らおかしなことはない。
と、じーさんを見てそんなことを考えていたら目が合った。
「ハチマンはどう思う?」
するとニヤリと笑みを浮かべて俺に話を振ってきやがった。
「え? 俺に振る?」
さすがに俺も驚いてしまい、率直に言葉が出てきてしまったが、それも全部俺に話を振ったじーさんが悪い。だからそんなに睨むなよ、グリーン。
さて、どう答えたものか。
話題は伝説ポケモンの進化について。その肝となったソルガレオないしルナアーラ。この二体はその昔アローラ地方の空に突如として現れた裂け目からやってきてカプたちを従えた。そしてコスモッグを生み落とした。伝説に名を残したのはやはり島の守り神たちを従えたからだろう。しかも子孫までを残して。
だが、何故ソルガレオとルナアーラはアローラ地方に来てまでそんなことをしたんだ?
別に空の裂け目に…………裂け目………裂け目ねぇ……………。
「………そもそもそのソルガレオとルナアーラはこちら側のポケモンじゃないでしょ。なら、まずはそこも分別していくべきなんじゃないかと思いますけどね」
時空の狭間だの世界の裏側だの、そういう輩は前々から知られてるじゃねぇか。
だったら、そこを棲み分けて考えてしまえばいい。
こちら側とあちら側。
門となるのは何かしらの空間を貫く穴。それを境界線として今現在のポケモンを分類し直すというのも手だろ。
「君は彼らがどういう存在なのか知ってるのかい?」
「いや? 初見ですけど?」
何を急に。
俺が知ってるわけないだろうが、変態博士2号。
「けど、俺はあちら側のポケモンも知っている。しかもそいつらは特異性を持つそこら辺のポケモンとは系統が異なる伝説に名を残すポケモンだ。だけど、そいつらにはある共通点があります」
「それは………?」
これは何を言い出すのかという目だな。一瞬、眉間に皺ができたぞ。
「あいつらはこちら側に来る際に空やら地面に穴ーーこの場合裂け目と表現した方がいいかもですけど、それがゲートとなってこちら側の世界に現れ、裂け目が消えたらその周辺の空間は元通りになるんです」
「「っ?!」」
今度は夫婦揃って俺を見て眉を上げた。
「………そう言われるとあの時ギラティナは大きい穴を開けてこちらの世界に来たわね。それが分かっていたから不意を突くことができたのだけれど」
ふぅ、なんかシロナさんが落ち着いて呟いてくれたおかけで、ほっとしたわ。怖いよ、あの夫婦。目がギランギランしてる。食いつきすぎじゃね?
というか、シロナさんもギラティナと対峙したことがあるのか。
だから俺が言いたかった名に行き着いたわけだ。
「個体差はあると思いますが、俺の知っているダークライは裂け目を生み出し、破れた世界にもいくことができますよ」
「あら、ダークライもなのね。だったら何故あのダークライはあの戦いにーーー?」
どうやらシロナさんには過去のダークライに引っかかるところがあったようだ。まさかあいつだったりしないよな………?
「裂け目といえばもう一つ。これから説明する内容にもなりますが、UBーーウルトラビーストも同様に空に裂け目を開けてやってきます。オーキド博士、このままウルトラビーストの説明に移ってもよろしいですか?」
「うむ」
え、もう次行っちゃうの?
えっと、次はウルトラビースト………空に裂け目が開き………そういうことか。
「アローラ地方では度々空に裂け目が開き、そこから生物がやってくるという現象が確認されていました。ここにいるバーネットもその裂け目からやってくる生物について研究している一人です」
「わたしたちはその裂け目をウルトラホール、裂け目からやってくる生物をUBーーウルトラビーストと称し、日々研究してきました。ウルトラビーストはこちらの世界に降り立つと破壊活動やわたしたちの生活環境を著しく損なわせる行為を行い、非常に危険視されている生物です」
つまるところアローラ地方には空の裂け目から伝説ポケモンなりウルトラビーストなり、色んな生物が入り込んで来ていたというわけか。なら、伝説ポケモン二体とウルトラビーストとやらは同一系統のポケモン………ポケモンと表していいのか分からんが、同じような存在ってことにはならないのか?
それこそさっきの俺の考えたこちら側とあちら側の世界のポケモンとして分類するってのが効果的なように思えるんだが。
「ウルトラホール自体を研究しようとした者もいますが、残念ながら裂け目の向こう側へ行ったっきり帰って来ないという事例がいくつもあります」
何という無茶なことを………。
どこに帰れる保証があったのだろうか。それとも興味本位だけで身を投じたバカな奴なんだろうか。どちらにしても生きてはいないだろうな。
「しかしながら、約一年前の話にはなりますがアローラ地方では一つの事件が起きました。その事件は開始から半年もの間アローラ地方を恐怖に陥れるウルトラビーストの楽園が形成されていました。それにより数々のウルトラビーストがアローラ地方に降り立ち、猛威を奮い、またわたしたちがこれまで観測してきたウルトラビースト以外の姿も発見されたため、これからそちらも含めてご紹介していこうと思います」
え、一年前から半年もかけて?
ってことは収束したのは半年くらい前ってことか?
その時期って確かルミルミがアローラ地方に行ってなかったっけ?
ん? あれ?
そういや何か大変なことになってるとか言ってたような…………。
「では改めて。アローラ地方で猛威を奮ったUBーーウルトラビーストについて情報共有させていただきます。まず、ウルトラビーストとは異空間世界に存在する生物の内、特に危険生物として特定された生き物を指します。国際警察の方でも調査されており、あちら側の住人との接触が既に行われていました。オレたちよりも遥かに詳しい情報を得ていることから協力を仰いだところ、ウルトラホールの先にある様々な世界の情報を共有させていただくことができました。オレたちの方でも現在エーテル財団のご子息グラジオの協力を経て、ウルトラホールの先の世界について調査しているところです。今回は協力を経て得たデータを基にウルトラビーストについて紹介していきます」
国際警察も絡んでるのか。
事は地方のみで考える事態ではないみたいだな。
つか、国際警察ってあの人がいたよな。
「まずはこのウツロイドというウルトラビーストです」
ッ?!
こいつは………っ!!
「帽子を被った少女のようにも見えるシルエットですが、その実人間に寄生した例があり、恐らく人やポケモンに寄生して操ることができるのだと考えられる非常に危険な存在です。また、タイプはいわ・どくタイプ。加えて、ウルトラビーストはそれぞれの異空間とも呼ぶべき世界を有しており、そこにそのウルトラビーストのみが生息していると考えられます。ウツロイドの世界は特に何もない洞窟のようなところであり、ウルトラディープシーと称されているようです。国際警察では特に危険な区域として特定しています」
初っ端からとんでもないのをぶち込んできたな。
スクリーンに写された白い生物に俺は心当たりがある。遭遇の仕方も今日の内容で説明がつく。
こいつは、ウツロイドなるウルトラビーストはカロス地方に二度、11番道路とレンリステーションに現れている。それも裂け目を通って現れ帰っていった。
しかも…………。
「…………お前だったのか」
一体は何故か俺のハイパーボールに入ってしまった。俺が捕まえたわけじゃない。ゲッコウガでもない。ヤツが勝手に、自らの意思でボールに入ったのだ。
こんな形で正体が判明するのも何とも言い難いものがあるが、俺はウルトラビーストに連れられ、ヤツらの世界に一度行ったことになる。
なら、あの託された丸い石は何なんだ? 一応持ってきてはいるが、これは出さない方がよかったりするのか?
「これはマッシブーンというウルトラビーストです。膨張する真っ赤な筋肉が特徴的な体躯で、体当たり一つでものすごい威力を誇る存在です。タイプはむし・かくとうタイプ。マッシブーンの世界は草や木々に覆われており、ウルトラジャングルと称されているようです」
マッチョかよ。
白いののせいで全然話が入って来ねぇわ。
「次はフェローチェというウルトラビーストです。相手を魅了する力があり、雌雄関係なく虜にされてしまう非常に危険な存在で、脚力とそれによる移動速度がウルトラビースト随一と見ています。前出のマッシブーンとは異なる性質ですが、タイプは同じくむし・かくとうタイプ。フェローチェの世界はマッシブーンの世界で火山が噴火し、木々が枯れ果てたような砂地や岩石に覆われており、ウルトラデザートと称されているようです」
こっちの白いのはどうでもいいんだって。
取り敢えず、ウツロイドだ。
どうするよ。今ここでウツロイド連れてます、なんてことを言ったらどういう反応をされるんだ?
いや、きっと反社会勢力とか見なされそうだな。というか絶対グリーンあたりがアクションを起こしてくる。そうなれば他の図鑑所有者たちも黙ってはいないはず。となるとクチバジムは吹っ飛ぶだろうな。
「四体目はデンジュモクというウルトラビーストです。このデンジュモクは国際警察の方にも資料がなかったようで、オレたちの方で樹木のような見た目で放電していたところからデンジュモクと名付けました。タイプはでんきタイプ。デンジュモクの世界は他とは異質で黒く太いコードのような道が結束バンドでいくつも束ねられ張り巡らされています。発見者はグラジオであり、オレたちの方でウルトラプラントと名付けました。この世界では道から落ちた者は命がないでしょう」
いっそ図鑑所有者たちと対立関係を築くか?
ロケット団が表にいない今、俺が新たな火種になりかけているのは明白だ。それこそウツロイドが俺のボールに入った時点で事は起きている。そうでなくともカロス地方では何かしらが裏で動いているのだ。
例えばカラマネロ。あの三体は一体何が目的で育て屋を襲撃してきたのか。一見、じじいを襲いに来たとも見えるが本当にそうなのだろうか。ゲッコウガの感触からはあいつら同等、あるいはそれ以上の手練れらしい。戦闘力だけでいえばフレア団をも上回るだろう。
…………ところで、あれは何だ? おおよそ生き物には見えねぇな。ウツロイドの方がまだ可愛げがあるわ。能力はくそ怖いけども。
「続いてはテッカグヤというウルトラビーストです。見た目が竹のように見え、くさタイプかとも思えますが、タイプははがね・ひこうタイプ。ウツロイドら程何かが危険ということはありませんが、一度空を飛ぼうと発射準備を始めると周りの空気を取り込み、高密度のエネルギーを生み出し、発射されるとそれが一気に放出されるため甚大な被害が出ました。テッカグヤの世界ーーウルトラバレーを訪れたグラジオの証言からは森が一つ消える程だということが分かっています」
さて、どうしたものか。
話を聞く限り、ウルトラビーストは人の手に余る能力を持っているのは明白。ボールに入っているからといって、指示を聞き取るのかどうか怪しいところだ。ゲッコウガも会話が成立しないと言っていた。バトルという概念も持ってなさそうだし、ウツロイド自身が身の危険を感じる状況にならなければ戦闘に参加するとも思えない。というかボールに出した時点で、毒を振りまいて俺たちを支配する可能性だってあるだろう。
「そしてテッカグヤとは対照的な大きさであるウルトラビーストはカミツルギというウルトラビーストです。タイプはくさ・はがねタイプ。ウルトラビーストはおろか全ポケモンの中でもとても軽量型のウルトラビーストになります。カミツルギは何かと物を斬りたがる習性があり、何にでも斬れてしまうその身の刀ゆえに国際警察では特に危険なウルトラビーストとしてマークしています。カミツルギの世界はウルトラフォレストと称され、特にこれといった特徴のない世界という点がとても特徴的だったとグラジオが証言していました」
ああ、なんて面倒なものと出会ってしまったかね。いっそこのカミツルギとやらに斬ってもらいたいわ。
そういや、そもそもの話、何でウツロイドは11番道路で大量発生していたんだ?
確か人間を襲っていたみたいだが、いたのは………シャムと男が一人。このシャムという女が果たしてあのシャムなのかどうか、調べてはみたものの仮面の男事件は十年近く前の話だ。資料に残されたわずかな写真でも十年も経れば顔が変わっていて判断が難しいところ。ただ、あの相方の男の反応。あれは俺を恐怖の対象として見ていた目だ。それが意味するのは裏社会、なのだろう。
「次はアクジキングと呼ばれるウルトラビーストになります。このウルトラビーストは国際警察でもトップの危険生物として認定されています。その所以はアクジキングのこの巨大な口の奥にあり、アクジキングの体内はブラックホールと化しているようです。ゆえに食欲旺盛で何もかもを呑み込み、また食べ続ける。気性も荒く、食事の邪魔されればその口で一呑みされる。この点からウルトラホールの奥に広がる様々な世界を消滅させてきたのではないかと考えています。しかし、彼らにも居座る世界があるようで、グラジオが訪れたところはこの世界にもあったような建物が崩壊した後のようで、いかに危険な存在かが解りました。その世界はウルトラビルディングと名付け、指定危険区域になっています」
つまり、あの男はカーツ………という可能性が高い。シャムとカーツ。仮面の男事件では重要人物である。
あ、あとアローラのお宝が奪われたとか言ってたよな。アローラのお宝ってなんだ? とても貴重な進化の道具とかか? それとも金の玉とかのそっち系のやつか?
…………いや待て。そうじゃない。ウツロイドが現れたのはアローラ地方。そして奪われたのはアローラのお宝。となるとシャムとカーツが取ってきたお宝というのは何かしら重要なものなはずだ。それを取ってきた、いやウツロイド側からすれば奪われたお宝をカロス地方にまで追いかけてきて奪い返した…………?
そう考えるとスッキリするな。
なら、そのお宝とやらは今現在どこにあるんだ?
やはりあのまま持って帰ってウツロイドの世界……に…………っ?!
く、ははっ………そうか、そういうことか。
アローラのお宝はあの球状の石だったのか。ただ、あれが何なのかまでは分からないが、辻褄だけは合う。とにかくあの石を奪われることだけは避けるべきだな。
でも、それなら何故俺に託した?
分からん。今はまだ考えても仕方ないことなのかもしれない。
「いや、だから何でウルトラビーストはこんなゲテモノ生物しかいねぇんだよ」
「うわ、どうしたんですか、先輩?」
「あ、いや、すまん。ウツロイドが一番まともに見えてきてな………」
「まあ、確かにそうかもですねー」
何なの、あのアクジキングとやらは。
ブラックホール? 世界の消滅?
もう何が何やら………。
アクジキングってアルセウスの対極的存在とか何かなのん?
「続いてはズガドーンというウルトラビーストです。このウルトラビーストは丸い頭と身体が分離しており、頭を投げつけてきたりして攻撃してきます。タイプはほのお・ゴーストタイプ。ゴーストタイプの能力として正気を吸い取ることが確認されています。この生物もウルトラビーストであるため、何かしらの危険要素があると思われますが、姿を確認できたのはアローラ地方に降り立った個体のみであり、生息世界等々まだまだ実態を把握できていません」
ウルトラビーストか。
こちらの世界にいるポケモンとは姿がまるで異なる。異質といえば異質。把握されている能力を見ても伝説ポケモン並、あるいはそれ以上とも取れる。このズガドーンとか初めて見るタイプだし。頭と胴体が切り離されてる? 俺の知る限り、そんなポケモンはいなかった。異質な存在と思えたのもギラティナやダークライといった伝説のポケモンたちくらいだ。
だが、ウルトラビーストはそれが当たり前。何なら複数個体いる、あちら側では普通のポケモン。あちら側の世界が統一されてこちら側の世界を侵略しにかかればひとたまりもないだろう。
「これはツンデツンデというウルトラビーストです。このウルトラビーストは現在アローラ地方で運び屋をしているサンというトレーナーが捕獲しているため、他のウルトラビーストよりも詳しい情報を得られています。全てを今ここでご説明するのは時間がかかってしまいますので、他同様の部分に留めておきますが、お手元の資料には現在分かっていることを全て記載しています。ツンデツンデのタイプはいわ・はがねタイプ。非常に堅い防御力を有しており、どの方位からの攻撃にも即対応してくる柔軟性も有しております。故に鉄壁のウルトラビーストとされ、危険視されています。現在ツンデツンデはサンが捕獲した個体のみ確認されており、生息世界は未だ調査段階にありますが、あちら側ではよく知られたウルトラビーストであるようです」
ほら、来た。
ちゃんと壁役すら担えるウルトラビーストが存在している。これは確かに危険生物として注視していく必要があるわ。しかもこのツンデツンデは人間によって捕獲された。これはいよいよ以ってウルトラビーストを利用した世界征服もあり得ない話ではなくなってきたぞ。
いや、一部なりとも事件は起きていたんだったな。冒頭でバーネット博士がウルトラビーストの楽園が形成されていたと言っていたではないか。もはや手遅れな気もするし、二番煎じ、三番煎じが出てくる可能性だってある。一番厄介なのはサカキに目をつけられることだ。アイツはあの手この手で力を掌握するのが得意な奴だ。きっとウルトラビーストですら手篭めにしてしまうだろう。
「最後は本題であるベベノムとアーゴヨンというウルトラビーストです。この二体はウルトラビーストでは唯一の進化の関係にあり、小さい方のベベノムから大きい方のアーゴヨンに進化します。タイプはベベノムがどく、アーゴヨンがどく・ドラゴンタイプとなり、あちら側の住人にとっては比較的友好な関係にあるようです」
やり口はこうだな。
比較的友好というこのベベノムやアーゴヨンをまずは手中に収めて、アーゴヨンを軸にウルトラビーストを捕獲していき、ウルトラビースト軍団で世界征服って感じだろう。
というか、ちょいちょいあちら側に人がいるように聞こえるんだけど。
「あの、一つ質問いいですかね」
「お、何だ?」
「さっきからちらほらとあちら側に人間がいるような表現を見受けられたんですけど」
「サンやムーンが言うにはウルトラメガロポリスなる街が向こう側には存在し、そこに人間が暮らしているらしいぞ」
「えー…………」
ポケモンもだけど、そっちの方が重要じゃね?
「まあ、そのことについてはまた後日ということじゃな。今回はポケモンについての会議じゃ。確かにポケモンと人間は切っても切り離せない関係であり続けておるが、今ここでそのことにまで触れようものなら話が進まなくなるからのう」
なんかウルトラビーストよりもびっくりだわ。
「えー、続けますと、そのウルトラメガロポリスにベベノム及びアーゴヨンは生息しているとのことです」
気になってそっちにしか頭がいかなくなってきたし。切り替えなければ………。
「それからウルトラビーストの上位種と思われる存在もいます。向こう側では輝き様という愛称で崇められているネクロズマという生物です。国際警察ではウルトラビーストの一種として調査されていましたが、この度ウルトラビーストの中でも上位種という結論が出されました。所謂、向こう側の世界における伝説のポケモンです」
ウルトラビーストの上位種、あちら側の伝説ポケモン。数多く生息しているであろうウルトラビーストですら、俺たちは危険視しているのだ。能力的にはこちら側の伝説ポケモンに引けを取らない。なら、その上の存在となると一体誰をイメージすればいいのやら………。
「ネクロズマはかつて向こう側の人間たちの科学力によりその身に宿す光を失い、蓄積させる機能も失ったため、常に光を求めるようになり、結果向こう側の世界を闇に包む形となってしまいました。それでも光を求めたネクロズマはあちら側に広がる様々な世界から光を集め、その行動の反動でウルトラビーストたちがアローラ地方や各地方に降り立つという現象が起きていたと推測できます」
お前かい、原因はっ!
ネクロズマが原因でウルトラビーストがこちら側に来ていたのかよ!
というか黒!?
しかもウルトラビーストに近い姿してるし。
「さらにネクロズマは光の象徴たるソルガレオとルナアーラに着目し、交戦を繰り広げ、半年前の事件では二体をそれぞれ吸収して一時姿まで変えていました。ただその先に見える未来がアローラ地方から、或いはこの世界からも光を奪うというものであり、立ち上がったアローラの人間たちと向こう側の人間の協力によりネクロズマが新たな姿を手に入れて、向こう側の人間に捕獲されました」
あー、分かった。
イメージするのは本来の姿になったグラードンとかカイオーガでいいわ。世界をぶっ壊せる程の力なんてイメージしやすいのはあいつらだろ。
「オレとバーネットはこの事件を振り返る中で、ソルガレオとルナアーラもネクロズマと同じくウルトラビーストの中でも上位種の存在であること、ネクロズマが姿を変えた現象をフォルムチェンジであることを結論付けました」
んで、ソルガレオとルナアーラもネクロズマに近い存在ときたか。まあ、分からなくもない。姿を見る限りはソルガレオとルナアーラが光の象徴なのに対し、ネクロズマが影の象徴という対比。だが、上に立つのはネクロズマだな。
「ククイ博士、一つ質問よろしいですか?」
「どうぞ」
と、図鑑所有者の方からククイ博士に質問を投げかけた。あれは誰だ? ブルーさんではない方の女性。うーん。
「ウルトラホールとその先々に存在する世界とはどのようにして繋がっているのでしょうか。ウルトラビーストがアローラ地方へ降り立つ際には自分の棲まう世界から直接ウルトラホールを開いてやってくるように見受けられますが、そうなると調査協力者であるグラジオ君がどのようにして各世界を調査しているのか説明がつきません」
「オレ自身、ウルトラホールに潜り込んだことはないので何とも言えませんが、話を聞く限りソルガレオやルナアーラが開いたウルトラホールの先には無限の空間が広がっているようです。オレたちはそこをウルトラスペースと名付け、その空間から各ウルトラビーストの世界やウルトラメガロポリスへと移動していると見ています」
無限の空間………?
それってーーー。
「ーーー時空の狭間。そしてその先にある破れた世界」
「えっ…………?」
同じ空間かどうかは分からないが、位置関係は同じだ。
「そのウルトラスペースと先々に広がる世界ってのは時空の狭間とその先にある破れた世界と似たような位置関係だなと」
俺の呟きに反応を示したシロナさんに補足するように付け足した。
「それってディアルガ、パルキア、ギラティナのこと?」
「まあ、あいつらも関係あるかもですけど、俺が言いたいのはその空間そのもののことです。こちらの世界と破れた世界の間にあるのが時空の狭間。世界と世界を繋ぐ空間と考えれば、ウルトラスペースと同意義であるんじゃないですかね」
「………つまり、その三体も何かしら関係するのではないか。そう言いたいのかしら?」
「ええ、まあ。ただ結局のところ、全てを知っているのはアルセウスなんでしょうけどね」
「アルセウス………世界を創造したポケモン……………」
「アルセウス………?」
ん?
ククイ博士がアルセウスという言葉に反応した?
「確かシルヴァディはアルセウスをモチーフにして開発されたビーストキラーで……………特性がARシステム………………ディスク挿入によるタイプの変化………………ッ!!」
あ、なんか一人の世界に入り込んでるぞ。口々に何か聞きなれない言葉が出てきているが、何かアルセウスに関係する話でもあったのか?
「ダーリン、どうしたの?」
急に一人の世界に入ってしまったククイ博士に、思わずという感じにバーネット博士が顔を覗き込んでいる。
「シルヴァディを開発したのはエーテル財団。その御曹司であるグラジオがトレーナー。グラジオの父親は行方不明。名前は確か………モーン! シルヴァディの設計をしたのが彼だとしたら…………何かに気づいてウルトラホールの調査に…………?」
あ、なんか結論が出たみたいだ。
「やはり鍵はアルセウスってわけか…………?」
「ダーリン………?」
「ククイ博士、どうされたのじゃ?」
顔を上げたククイ博士にオーキドのじーさんが様子を伺った。これはさすがに気づいたのか、投げかけに言葉を続けていく。
「調査協力者のグラジオはシルヴァディという対ウルトラビースト用に人工的に造られたポケモンを連れているんです。その製造元はエーテル財団であり、そこにはかつてモーンという研究者がいました。彼はウルトラホールに呑まれたきり行方不明となっているようで、一応本人らしき人物をキャプテンのマツリカが発見したという話がありましたが、未だ発見できていません。ただ、彼はウルトラホールの研究をされていたらしく、論文などの資料には残されており、そこにシルヴァディの設計などがあったのではないかと思い至りました」
エーテル財団?
どこかで聞いたことがあるような………。
「これがシルヴァディです。特性がARシステムという独特な特性で頭部にある円形状の収納部にディスクを挿入することでタイプを変更させることができます」
「「「っ!?」」」
はっ?
マジで?
ディスクをプレートに置き換えればアルセウスってことじゃね?
「ククイ博士、一ついいですか?」
お、ダイゴさんもか?
「そのシルヴァディというポケモンは、アルセウスを元に造られたのではないですか?」
「目敏いね。そう、そう通りです。シルヴァディはアルセウスを元に造られたポケモンなのです」
「では、何故ビーストキラーを造る上でアルセウスをモチーフにする必要があったのか、であるな」
あ、ナナカマド博士、そこで出てきます?
いやまあ、要はそこになるんだとは思いますけどね?
でもそれはそのモーンという研究者が何を掴んだかによるだろ。ただ可能性としては考えられることが一つある。
「それについては現段階で申し上げられることはありません」
「それこそディアルガ、パルキア、ギラティナもウルトラビーストに近い存在なんじゃねぇの。三体がそれならあいつらを生み出したアルセウスも然り。結局はこの世界の外側の話でしょ。神かUBか、それとも他の何かか。複雑に考える必要は今はまだないと思いますけどね」
「では、予定にはないが次の議題を外側に棲むポケモンについて、ということでよろしいかな?」
あ、これ………続けるんだ…………。
ミスったな……。こうなるなら口を挟まなければよかった。これでは昼食どころではなくなってしまうではないか。たたでさえ内容が内容なだけに話が長くなってしまうというのに。
既に十二時を回ってるんだぞ? 予定外の内容をやってたらいつ昼食にありつけるというんだ。絶対二時とか回るだろ………。
「はあ………」
オーキドのじーさんもプラターヌ博士も俺を研究職に就きたがらせているが、さすがに俺には昼飯を抜きにして話し合える程の体力は持ち合わせてないから無理だな。