ポケモントレーナー ハチマン 〜ぼーなすとらっく集〜 作:八橋夏目
予定としては残り二話で完結させようと考えています。その後は新シリーズに移行となります。
『それでね。この子はガラル地方に生息するサニーゴなんだって』
『なるほど、リージョンフォームね。アローラ地方に続き、ガラル地方でも発見されていたのね』
私は今ユキノちゃんとガハマちゃんとテレビ電話をしている。内容はガハマちゃんが捕まえたという白いポケモン、もといガラル地方のサニーゴ。本来カロス地方にはいないはずなのに、シャラシティのマスタータワー跡地で襲われたらしい。
「流石にお姉さんでもリージョンフォームまでは辿りつけなかったなー」
一昨日、ガハマちゃんから画像を送られてきた時は何事かと思ったけどね。仕事の傍ら色々調べてはみたものの、私もユキノちゃんも正解には辿りつけなかった。
なら、どこから正解を得たのかというと、今現在カントー地方に出張中のハチマンからである。各地方のポケモン博士が集まる会議に出席していたため、そこでリージョンフォームを研究しているポケモン博士に出会えたんだとか。
やるね、ハチマン。流石私のハチマンだわ。おっと、私たちのってことにしておかないとユキノちゃんがこうして睨んでくるからなー。
『姉さん、また変なことを考えてないかしら?』
「何のことかなー? お姉さんにはさっぱりだよー」
昔はもっと可愛げがあったのに。
どうしてこうも姉に対して冷たくなってしまったのか。
まあ、原因は私にあるんでしょうけど。
昔の私は私と同レベルの実力者を求めていた。けれど、それは四天王やチャンピオン級のことであり、そのレベルのトレーナーなんて世界中探してもほんの一握りしかいない。だからこの人っていう人に出会える確率なんてゼロに近く、それならばと自分で用意しようとまで考えてしまったのだ。
私の運命はそこで変わってしまったのだと思う。私がチャンピオンに任命された時にはすでにロケット団の一研究者となっていた。あーだこーだ自分でこういうトレーナーがほしい、こういうトレーナーにするためにはどういう教育を組むべきなのか、そもそも人工的に造り出せるのか、といった超自分本意な研究をしていても将来的にはそれが金になると考えられていたのかもしれないわね。
その結果、私はあるトレーナーを造り出してしまった。本人からすれば大組織にいいように使われただけの被害者だって言ってくれるけれど、やっぱり私がそんな考えを持たなかったら、彼はもっと真っ当な人生を歩めたんじゃないかと今でも思えて仕方ない。
彼と出会ったのは私も参加したカントー地方でのリーグ大会。大会内でチャンピオンとバトルができるかもというのを売りに、私が盛り上げ役として参加していた中、彼はリザードン一体で決勝まで登りつめてきて、あろうことかチャンピオンだった私のポケモンも全員やられてしまった。でも大事なのはそこじゃない。最後のカメックス戦で見せた暴走のような力の解放。そして、それをコントロール下においてしまうトレーナーの実力。そこで私は自分の過ちに気付くことができた。
観戦してた人からすればただの最後の力を振り絞った結果に見えるだろうけども、他に思い当たる節がある方からすればマジかと驚きを隠せない衝撃的なものだった。
それと同時に彼を助けなきゃという使命感に駆られ、その場でチャンピオンを辞退し、ロケット団との関係も断った。
そして、彼のことを調べていく内にあるポケモンの存在を知り、そのポケモンと対をなすポケモンの力を借りることを思いついた。ダークライとクレセリア。彼はダークライを潜ませており、彼と同等の存在になるにはクレセリアが必要なのだと結論付けた。そしてクレセリアを求めて探し回り、三日月の羽というクレセリアの羽を見つけたけれど、それは私ではダメだった………。その羽が反応したのはユキノちゃんにだったのだ。
だから本人には内緒であれこれユキノちゃんにそれとなく叩き込んでいった結果、ちょっと姉妹間で距離ができちゃった。
でもこのカロスに来て彼ーーハチマンとも直接触れ合う機会も増えていき、みんなに全てを話すことにした。辛かったけど、ハチマンもユキノちゃんも感謝してくれていたのには驚きだったなー。恨まれこそすれ、まさか感謝されるなんて普通思わないじゃん。
それがきっかけでユキノちゃんとも距離が戻せたと思うし、同時にハチマンに対して恋心を抱くようになってしまった。
うん、まさか私が誰かを恋しく思う日が来るとは夢にも思わなかったけど、よくよく考えればあのリーグ戦でバトルした日からずっとハチマンのことを考えて生きてきたわけだし、当然の結果だったのかもしれない。
しかもユキノちゃんにはそこら辺の過程までバレてるようで、こうして冗談めかした戯れ合いもするようになったというわけさ。
なんか…………私だけやられっぱなしじゃね?
『ハルノさんは何か捕まえましたー?』
おっと、こっちに意識を戻さないとね。
「んー? わたしー? 私はねー、ワルビルがワルビアルに進化したくらいかなー」
『おおー!』
『あくタイプがどんどん増えていくと姉さんが悪者に見えてきてしまうから不思議よね』
「ユキノちゃん、ひっどーい。そういうユキノちゃんこそ、こおりタイプに目覚めて本当に雪女みたいじゃん」
後ろの壁に同化してるイノムーとか。
いつの間に捕まえたのか知らないけど、抱きかかえているクマシュンとか。
絶対そっちの部屋は寒いでしょ。そんなところにいるユキノちゃんなんて、本当に雪女と言われてもおかしくないわ。まあ、言うのはハチマンくらいでしょうけど。いてつくしせん、なんて技を習得してたりして。そもそもそんな技があるわけないんだけどね………。ないよね?
『ゆきのん、そのクマシュンって男の子? 女の子?』
『メスよ。人懐っこい子でハチマンやゲッコウガにも懐いてるわ』
さすがハチマン。ポケモンには好かれやすい上にメスときたら、そりゃ懐かないわけがないだろう。例外はイロハちゃんのマフォクシーくらいかな。あれはゲッコウガに対してホの字だから他の男であるハチマンには一歩引いた位置にいる。というかよくゲッコウガといるため、ゲッコウガを返せと睨んでるまであるわね。
「ユキメノコと喧嘩になったりはないの?」
『ええ、そこは大丈夫よ。ハチマン、ユキメノコにも甘いもの』
そりゃそうか。
素直になれないユキノちゃんの気持ちを表に出したような子だもんね。よく抱きついてたりするし、緊急時にはオーダイルと一緒にハチマンの指示で動いたりするし。
『それにしてもゆきのんも随分とこおりタイプのポケモン集めたよねー』
『そうね、元々仲間になってくれる子にこおりタイプの子が多くなってきてたのがきっかけだったのだけれど、いつしかこおりタイプの魅力に惹かれてしまって………』
『あー、分かるなー。あたしもシャラジムで働くようになってからかくとうタイプの魅力ってーの? そういうの感じ始めちゃってるし。ヒラツカ先生には言えないけど』
『言ったら怒涛の勢いで熱弁されるでしょうね』
みんなそれぞれ心にゆとりもできてきたということの証なのでしょうね。かく言う私もあくタイプのポケモンを調べちゃってたりしてるし。元々はじめんやはがねタイプが中心だったのに、いつの間にか変わっちゃうのが人生ってやつなのかしら。いやでも、じめんやはがねタイプも今でも好きだし、好きの範囲が広がっているということにしておきましょう。いっそイロハちゃんみたいに三タイプを揃えてみるのもありかも。
『ドゴン!?』
わひゃっ?!
え、なに、どしたの!?
『ゆ、ゆきのん、今すごい音聞こえなかった?!』
『ごめんなさい、どうやらコドラとボスゴドラの特訓が激しくなってきてたみたいなのよ』
え、それでそんな地響きするような音が聴こえてくるの?
確かに金属が擦れるような音と言えばそうだったけど………。
というか一体どんな特訓をしているのかしら。
『…………ヘルガーの炎を纏ってぶつかってるわ。何考えてるのかしら』
「身体を鍛えてるとかなんじゃない?」
コドラやボスゴドラの身体は鋼の鎧を着ているわけだし、それを熱で柔らかくして激しくぶつけることで鋼を鍛えているのでしょう。そうじゃなかったら私もお手上げよ。他を想像できないわ。
『ヒッキーの提案?』
『だとは思うのだけれど。でもボスゴドラの群れでの経験という筋もあるわ』
確かに。
ハチマンのボスゴドラは元々群れの長だったわけだし、仲間を強く鍛えるための方法を持っていたとしてもおかしくない。というか絶対ハチマンはそれを参考にイロハちゃんのコドラを鍛えているはず。効率重視の彼が利用しないわけがないもの。
『あ、シードラが怯えてるわ。ちょっと行ってくるわね』
『あ、うん! それじゃまた連絡するね! ハルノさんもバイバーイ!』
「うん、またねー」
シードラって確かそんな弱気な性格じゃなかったわよね。それが怯えてるってことは相当のことが起きてるんじゃないの? ユキノちゃん、大丈夫だよね?
「ふぅ………。リージョンフォームかー……………」
まあ、あっちはあっちに任せておきましょう。
私もガハマちゃんの白いサニーゴでリージョンフォームについて興味も出てきちゃったし、そっちを調べてみるのも楽しそうだわ。
「師匠の白いロコンのような存在か。今のところカロス地方では確認されていないようだが、ポケモンは摩訶不思議な生き物だ。私たちが知っている情報全てが正しいとも限らんだろうな」
なーんてパソコンの画面を変えようとしたら、独り言に応答があった。
「………さも当然のように居座ってるけど、いつからいたの? シズカちゃん」
「ついさっきだ。シロメグリに案内されて来てみればお前があいつらと話をしていたのでな。聞き耳立てながら待たせてもらっていた」
メグリ………。
せめて一声かけてよ。多分、あの子なりに配慮してくれたんでしょうけど、相手はユキノちゃんたちだから…………。
「一声かけてくれればいいのに」
「いや、興味深い組み合わせだったのでね。ついな……」
「ワルビアルの顎でかみくだいてもらう?」
「勘弁してくれ。私だって人間だ。普通に死ぬぞ」
まあ、そうだよね。いくらシズカちゃんでもそんなことできるわけないか。
というか、ちゃっかりコーヒーなんか飲んでるし。メグリが用意してきたのでしょうね。
「あ、そうだ。シズカちゃん、ちょっと付き合ってよ」
「今度は何をする気だ?」
「ワルビアルの試し打ち。進化はしたけど、ここのところバトルができてなかったからさ。パーティー内だけじゃどうしてもワンパターンになってくるじゃん?」
「言いたいことは分かった。だが、仕事の方はいいのか?」
「いいのいいの。ほとんど終了段階に入ってきてるから。あとは本当に時間のかかるような心のケアとかが中心になってくるから、私たちじゃどうしようもないんだ」
「よかろう、相手してやろうじゃないか」
「やったー! シズカちゃん、ありがとー!」
こうやって気兼ねなくバトルとかできるようになったのも、ヒャッコクシティの復旧作業が随分と進んできている証なんだよね。そうじゃなかったら、各進捗状況を取りまとめて、遅れているところ、資材が不足しているところなどを割出さなければいけないもの。
「………ハルノ、何かあったのか?」
「んー? どうしてそう思うの?」
「私の勘だ。ただ、近からずも遠からずといったところか?」
教師の勘ってやつかしら。
辞めたというのに今度はこっちのポケモンスクールを回ってるし、根っからの教師なのかも。だから勘も現役のままってね。
「復旧作業に追われてたからさー。あまりみんなのこと知らなかったけど、この数ヶ月で随分と成長してるなーと思って」
「なるほど。対して自分は滞ってるままだと、そういうことだな?」
「うんまあ、それもあるけど………。いずれ私たちは今の立場を捨てる時が来るんだろうなーって」
私もハチマンも経歴がグレーだもの。そんな人間が協会のトップにいたんじゃ、信用なんてバレたら一瞬で無くなるわ。今はまだ何とか広まってはないけど、それも時間の問題でしょ。それに私たちがいることで新たに問題が発生する可能性も高いしね。
「それは………どうなるか分からんな。引き際はあいつが決めるだろ」
「どうかなー。実は最初から決めてたりして」
「…………ありそうだな」
「だね………」
ハチマンならそれを理解した上で協会のトップになったのかもしれないわ。就任期間を有限にすることでやるべきことの優先度を比較して、できることを今やっていると言ってもいい。
案外、その後のことも考えてそうだけど。
「お前も何か考えがあるのではないか?」
ほんとよく見てるよね。
「目敏いねー。実はカロスの復旧が最終段階に入った時点で辞めようかなって思ってる」
「その後はどうするのだ?」
「久しぶりに旅したいなーって」
「ほー、それはいいんじゃないか。旅は何歳になってもいいものだ。新しい発見ばかりだからな」
「うん、思えば私は旅したのなんてチャンピオンになる前以来なんだよね。だからちょっとユキノちゃんたちが羨ましい」
しかもあれは最初の旅だからね。チャンピオンになる前までだから十五歳になる前。旅の期間は逆算して四年くらいかな。スクールは特例で卒業してるし。
「ん? あ、ちょっとごめん。イロハちゃんからだ。これは………グループ通話?」
「どうやら私もらしいな」
イロハちゃんは今カントーにいるんだよね?
それが何でまたグループ通話?
「もしもーし、どうしたの?」
「イッシキ、こんな時間にどうしたのだ?」
『イロハちゃん、やっはろー! こんな時間にどうしたのかな? そっちは今夜中だよね?』
繋がったのは私とシズカちゃん、それにユイちゃんだけだった。ユキノちゃんは今しがた、コドラたちの様子を見に行ったところだし、育て屋の方は忙しいのかな?
『………すみません! 私がついていながらまた先輩がやらかしました!』
え………?
『有識者会議は滞りなく進んでいて、実際のメガシンカとかをバトルで披露しようってことで先輩と私もバトルに参加してたんですけど、クチバジムが襲撃に遭い、そこでウルトラビーストという総称で危険視されているポケモンたちを呼び寄せられて、先輩がまた…………』
…………。
なん、でよ…………!
何でまたアレが起きちゃってるのよ!
「で、でもメガストーンはもうないはずよ!」
そうだ。
彼との共通認識として、あの暴走はメガストーンを通して起きていたもの。メガストーンがなければもう起きないって話だったのに………。
『それが………図鑑所有者のグリーンという方がリザードンを連れていまして、彼がリザードンのメガストーンを先輩に貸す形で成し得ることになりました』
っ?!
図鑑所有者………!
確かにオーキド博士主催の会議ならばそのお孫さんの図鑑所有者も来るのはあり得たわね。しかも彼はトキワジムのジムリーダー。外野からの意見を求めるのならば打って付けの配役だわ。
「ちなみにリザードンのメガストーンは二種類あるが、今回はどっちだったんだ?」
『Yの方です。でもそのままホウオウの姿に変わりました』
ホウオウ………?
メガリザードンYはほのお・ひこうタイプ。そのタイプのまま昇華したということね。だからメガリザードンXではほのおとドラゴンタイプを持つレシラムに昇華した。分かってはいたことだけど、Yの方ではホウオウになるのか。
『イロハちゃん、ヒッキーはやっぱり倒れたの?』
『はい………、ただ先輩も先輩でその………ウルトラビーストの一種であるウツロイドというポケモンを連れていたんです。そのポケモンは人やポケモンに寄生する習性があり、寄生した相手を毒で麻痺させて思い通りに操ることができるとか言ってました。そしてそのウツロイドというウルトラビーストが先輩に寄生し、毒を盛ったことで戦闘後もしばらくは倒れることはありませんでした』
えっと………え? 毒? それにウルトラビースト?
ついさっき、イロハちゃんが危険視されているポケモンって言ってよね?
それを何でハチマンが連れているの?
私、聞いてないんだけど!
『取り敢えず、さっき先輩が目を覚ましてまた眠りについたので皆さんに報告がてら連絡させていただきました。私がついていながら本当に申し訳ありません』
「イッシキ、これは君が気に病むことではないよ。突然の状況の中であいつが絞り出した最速策だったんだと思う。ただ、やはり我が身を省みないのはもはや病気でしかないがな」
「イロハちゃん、それでその襲撃の犯人とかは分かってたりするの?」
『はい、一応………。ただ、その人たちはどうやら一緒にいたカラマネロに操られていたらしくて記憶がないとか………』
「カラマネロ………?」
確か以前、育て屋を襲撃したのもカラマネロだったわよね。その時はハチマンが何とか追い返したみたいだけど。……………まさか、同一個体、とか?
いやいや、そんなわけない……………こともないのかな。分からないわ。その時も今回も私はずっとヒャッコクシティにいたのだもの。話に聞く程度にしか分からないのが一番悔しいわね。
「………兎にも角にも君たちが無事で何よりだよ」
「そうね。これはイロハちゃんでなくともどうこうできた問題じゃないわ。気に病むなとは言ってしまえば早いのでしょうけど、私たちはその場にいなかったから無責任には言えないわ。ただ、あまり自分を責めるようなことはしないでね。きっとハチマンもそれは望んでないと思うから。あと、ちゃんと寝てね」
『はい、ありがとうございます………』
ともかく二人は無事なのは確か。帰ってきたらきっちりハチマンには問い詰めないとね。
『それで………ユキノ先輩は?』
「あー……なんかイロハちゃんのコドラがヘルガーの炎を纏ってボスゴドラとやり合ってるとか何とかで、ユキノちゃんが様子を見に行ってるみたいよ。さっき通話越しに凄い音がしたもの」
『何やってんの、あの子たち』
『あのシードラが怯えるくらいらしいよ』
『うわー………、やっぱりヘルガーもボスゴドラも先輩のポケモンだったよ。なんで先輩の手にかかるとみんなそうなの………?』
「ポケモンはトレーナーに似るっていうくらいだ。諦めろ」
『はあ…………って!? 今ユキノ先輩は一人ってことですか!?』
「まあ、そうなるかな。シズカちゃんもこっちにいるし」
「いるとすればザイモクザくらいだろうな」
『イロハちゃん、ゆきのんが一人だと何かマズいの?』
『それが、その………私の推測が正しければユキノ先輩のところにロケット団が向かってるんです。私も先輩が目を覚ますまでずっと側にいたので気付くのが遅れてしまって………』
ロケット団!?
え、なんでそこでロケット団が出てくるのよ!
「………ねぇ、何でそこでロケット団が出てくるのかな?」
『クチバシティのジムリーダー、マチスがロケット団の幹部というのはご存知ですよね?』
「ええ………ッ、まさか!?」
そう、いうことなの!?
あのマチスが応援としてサカキを呼びつけた………?
ということはマチスは既に会議にいたってことなんじゃ………!
『はい、恐らくご想像の通りかと。近くにいたサカキをマチスが呼びつけたみたいです。そして、先輩のあの暴走にも立ち会ってまして、暴走のシステムに何やら目処を立てたみたいなんです』
「それって………え、ちょっと待って。頭の中整理させて」
ハチマンは有識者会議に行って、会議は終わったけれどその後に襲撃を受けて。その時に図鑑所有者のYの方のメガストーンを使ってメガシンカし暴走させた。そこにマチスに呼びつけられたサカキも登場して…………あの男もハチマンに加勢したってこと?
それはつまり………襲撃してきたカラマネロはロケット団とは無関係? いや、そう装わせることもあの男には可能ね。ならば、その考えを捨てるのは時期尚早か。
そして暴走のシステムに何かしらの目処を立てたサカキがユキノちゃんのところに向かってる?
…………何だろう。何か嫌な予感がする。何か見落としがあるような…………。
《ーーーウツロイドというウルトラビーストが先輩に寄生し、毒を盛ったことで戦闘後もしばらくは倒れることはありませんでしたーーー》
ウツロイド!? それに毒よ!
要するにハチマンのあの力の抑制はユキノちゃんでなくとも、そのウツロイドとかいうウルトラビーストの毒であれば可能だった。
それを目の当たりにしたサカキは…………違うわ。何か、そうじゃないのよ。
《ーーーウツロイドというウルトラビーストが先輩に寄生し、毒を盛ったことで戦闘後もしばらくは倒れることはありませんでしたーーー》
そう!
しばらくは倒れることがなかった。けど、結局は意識を失って倒れているのよ!
ということはウツロイドの毒は倒れるまでの時間の延長。根本的な解決には至っていない。そして、私の計画の方もそれは同じことを言える。ユキノちゃんがハチマンに接触、もっと言うとキスなどの濃厚接触すると制御できるけれど、ハチマンたちの身体そのものに対しての根本的な解決には至っていない。
加えてロケット団も同じってこと?
いや、サカキは今私たちよりも先の発想を得ている可能性が高いわね。でも何故そこでユキノちゃん?
「………………ッ?! 待って。それではロケット団の行動の理由が………」
違う、そうじゃない。ユキノちゃんは鎮静、ウツロイドは延長、ならロケット団は一体…………。
いえ、今はそんなことを言っている場合ではなさそうね。
「ユキノちゃんが、危ない…………?」
まだはっきりとはしていないけれど、これだけは言える。サカキはハチマンの暴走の件に対してユキノちゃんを使って何かを企んでいる。そして相手はあのロケット団。手段を選ばない世界的犯罪組織。
「シズカちゃん、ミアレに行くわ!」
「お、おい、ハルノ?!」
『ハルノさん?! き、急にどうしたんですか!?』
「イロハちゃんが言ったようにサカキがユキノちゃんのところへ向かっているのなら、危険だわ! 今すぐにでも向かわないと!」
『な、ならハルノさん! あたしも!』
「うん、お願い!」
『すみません………ユキノ先輩を、お願いします』
「ええ、お姉さんに任せなさい! イロハちゃんもハチマンをよろしくね!」
ユキノちゃん…………。
無事でいてよ!
✳︎ ✳︎ ✳︎
シズカちゃんとメタグロスに乗って移動し、今しがたミアレへと到着。
さっきまでとは打って変わって、ポケモン協会周辺は静まりかえっていた。
嫌な予感がする………。
「ユキノちゃん………」
「あら、ハルノ。やっぱり来たのね」
ッ?!
この声はっ!?
「ナツメ………!?」
何であなたまで出てくるのよ………。
「妹のお迎えかしら?」
「そうね、あなたたちがいなければそうならずに済んでいたわ」
「あら、それは残念ね」
…………っ!
落ち着け、私。この女のペースに乗せられてはダメよ。
「………何を企んでいるのよ」
「さあ? ボスの考えていることなんて分からないわよ。ただ、あの少年を気にかけているのは確かね」
はっ?
サカキがハチマンを気にかけてる?
それは敵としてじゃなくて?
そんなことあるわけないじゃない
「そんなわけ…………! だってあの男は悪の組織のトップよ! そんな男がハチマンなんかにそこまでする理由がないわ!」
「そうかしら? あの子はロケット団の実験体を偶然ながら手にしてしまった。なら、その力をあの子共々ロケット団の思うように制御しようと考えるのは普通ではないかしら?」
それは分かるけれど、だからと言ってこの執拗なハチマンへの干渉。こんなの絶対普通じゃないわ。
「それにしては力の入れ方が違うわ。普通なら暴走した時点で見捨てるのがロケット団じゃない! 現にカツラさんとミュウツー。ばっさり切り捨てて敵として迎え撃ってたじゃない! なのに、ハチマンに対しては、干渉のしすぎ。投資のしすぎよ!」
「投資………、確かに投資になるかもしれないわ。けれど、それだけの価値があの子たちにはある。それがボスの考えなのではないかしら?」
「なら、何故ユキノちゃんを狙うの!?」
「必要だからとしか言えないわね」
結局、この女は全てを知っているわけではないということなの?
なのに、私の邪魔をする。そういうことなのね。
「………だったら通しなさいよ」
「悪いけれど、サカキ様から通すなと言われてるの。無理ね。特に今のあなたは」
「なら力尽くでも通してもらうまでよ。バンギラス、ゾロアーク、ワルビアル!」
「はあ………、仕方のない子ね。フーディン、モルフォン、バリヤード」
ユキノちゃんのためにもこの女を倒す!
「シズカちゃんは行って! 私はこの女を倒さなきゃならないから!」
「………分かった。ヤマブキジムのジムリーダー、ナツメさん………でしたよね? あなたが何を思ってサカキに付き従っているのかは知りませんが、私の教え子に手をかけるようならば私はそれを阻むのみです。それだけはお忘れなく」
「フフッ、だったら真実を見てくるといいわ」
シズカちゃんは通すんだ………。
絶対倒す!
「…………」
「………フフッ」
バンギラスの特性すなおこしによる砂嵐が巻き上がる中、ナツメがほくそ笑んだ。
「ッ!! ワルビアル、じごくづき! ゾロアーク、あくのはどう! バンギラス、ストーンエッジ!」
「モルフォン、エナジーボール。バリヤード、ひかりのかべ。フーディン、きあいだま」
ナツメの終始余裕そうな表情にカチンと来た私は、つい先制攻撃を仕掛けたしまった。
やはりこの女を前にすると冷静にはいられないみたい。
だけど、黒い波導だけ見えない壁に阻まれてしまい、バリヤードには届かなかった。攻撃が当たったワルビアルは代わりに大量の気を集めた弾丸を撃ち込まれ、その場に蹲り、バンギラスの方も地面から突き上げた岩を悉く砕かれたしまった。
「マジカルシャイン」
攻撃が当たらなかったバリヤードは、怯むことなく身体から光を迸らせ、ゾロアークを吹き飛ばしてくる。
効果は抜群。
やはりナツメのバリヤードは危険だわ。見えない建物を作られる前にさっさと倒してしまわないと。
「ワルビアル、かわらわり! ゾロアーク、ナイトバースト!」
今度は対象を交換し、バリヤードにはワルビアルを、フーディンにはゾロアークを走らせた。ダメージを受けていてもまだいける。
「バンギラス、メガシンカ!」
それにこっちは手を抜く気がない。
バンギラスをメガシンカさせ、再度砂嵐を発生させていく。
「サカキ様も仰っていたわ。進化を超えるメガシンカという現象があると。そして、それはこのフーディンもあるとね」
ッ!?
それってまさかナツメまでメガシンカを?!
「フーディン、きあいだま」
考えすぎかしら………。
それに私を混乱させるための嘘かもしれない。
「ほんといかすかないわね。バンギラス、いわなだれ! ゾロアーク、シャドークロー! ワルビアル、アイアンテール!」
ワルビアルにフーディンのきあいだまを弾かせて、消えたであろう見えない壁を気にせず、ゾロアークに影から爪伸ばさせて攻撃させた。その間にバンギラスが三体の頭上から岩々を降り注ぎ、逃げ場を埋めていく。
「………結局、あなたはいつまで経っても変わらないわね」
ッ………。
この女…………。今の絶対躱す気がなかったでしょ!
何なのよ、本当に何がしたいのよ!
「妹の成長を願っているくせに自身の成長は全く見受けられない。ポケモンたちだってこんなに成長しているというのに、下手したら大事な妹にすら劣っているのではないかしら?」
挙句こちらをバカにしてきて。
「それくらい、今のあなたは滑稽だわ」
そんなの当の昔に知っているわよ!
私は何もできない滑稽な生き物だって。いろんなパイプはあれど、私個人には何かを創造する力もない。
「………だったら」
責任の取りようもなければ、取らなくていいとまで言われる始末。私の中の指標ともなっていたハチマンを元に戻すという目標が、本人たちから拒否されたのよ。
そんなのもう前に進んだらいいのかなんて分かるわけないじゃない。
「………だったら、どうしろって言うのよ! こればかりは私が撒いた種! 私が自分本意に人体実験に近い計画立ててしまった! それが廻り廻って一人の少年の運命を狂わせてしまったのよ! 挙げ句の果てには大事な妹にすら同じように施して! いくら二人から気にしてないって言われても私の罪は消えないのよ!」
私は罪人。
その事実は消えないのよ。いくら二人が気にしなくとも、私は気にしてしまう。
「私には表舞台に立つ資格はない。他を蹴落として成長しようだなんて烏滸がましいわ。そんなの、そんなの…………ただの偽物よ」
だから二人を放ってどうにかなろうだなんて考えられないし、考えたくもない。何なら離れる気もないくらいよ。
「………だったら、今すぐポケモントレーナーをやめるべきね。そんなくだらない理由で自分のポケモンたちともまともに向き合えていないあなたにポケモントレーナーを名乗る資格もないわ」
ッ!?
ほんとに、ほんとに何なのよ! この女は!
さっきから言いたい放題。
「ジムリーダーとしてこんなのが元チャンピオンだなんて恥ずかしい限りね。カントーの汚点だわ」
なのに言い返せない。
自分でもそう思っているから。事実だから言い返すようなこともない。
ただ、他人に言われると腹正しい。それだけのことね。
「………私は汚点よ。ユキノシタ家の面汚し。そんなことは分かり切った話だわ。でもね、それをあなたにとやかく言われる筋合いはないわよ」
「そうかしら? あなたは元ロケット団で元同僚。その好で言う権利はあると思うのだけれど」
「だからこそよ。あなたは悪。同じ悪のあなたに私のことをとやかく言われる筋合いはないって言ってるのよ」
カントーの汚点。
ええ、その通りよ。自覚はあるわ。それと同時にユキノシタ家の汚点でもある。まさか長女が犯罪組織に属していた過去があるだなんて知ったら、お父さんもお母さんも卒倒しちゃうわ。
でもいずれはバレる。
だから、ハチマンの件が済んだら、ちゃんと言わなくちゃね。
「興醒めね。話にもならないわ。結局、あなたは何かに依存しないといられないのよ。昔は妹があの少年に依存しているだの言っていたのが、今は自分が二人に依存してしまっている。その証拠にあなたは成長していないどころか劣化しているわ」
ッ?!
私が、依存している………?
まさか私が………?
あの二人に…………!?
「やっぱり自覚なかったのね。だから、あなたは成長していないのよ。自分のことも分からなくなってしまったが故に、あの二人に固執して。いい加減、卒業しなさい」
パァン!!
「ッ!?」
え、なっ、え………?
私今………ビンタされた…………?
なんで………?
「ついて来なさい。今サカキ様が何をされているのか、あなたの目で確かめるのよ。そして、如何に自分が何もして来なかったかを自覚しなさい」
「え、ちょ、離して………っ!」
訳が分からないまま手を引かれ、バトルフィールドの方へと連れて行かれた。
そこではRのマークが入った黒い服を着ている男女が数人作業をしており、その中にはユキノちゃんが拘束されていた。側には黒いスーツのサカキの姿もある。
「え………と、何を………しているの?」
「血液検査に唾液検査、それから髄液検査を行うそうだ」
「はっ?」
疑問を口にしたら、隣にシズカちゃんが現れて説明してくれた。エルレイドとバシャーモもいる。
けれど、意味が分からない。血液検査に唾液検査? それに髄液検査って、一体全体本当に何を企んでいるの?
「サカキ様、唾液検査の結果が出ました」
「ほう。アルロ、結果は?」
「陽性です。例の少年の推移と極致していますね」
「まあ、そこは予想通りであるな。となると後は他の体液だな」
「ボス、血液の採取が終わりました」
「ご苦労、シエラ。アルロに回して髄液検査を進めてくれ」
「承知しました」
今までのロケット団とは思えない、繊細な作業。こういうのは研究員がやっていたはずなのに。
「………ヒィッ!?」
な、なんか変なオブジェがあると思ったら、ザイモクザ君………よね?
えと………何で亀甲縛りなの? 誰の趣味? ちょっと気持ち悪すぎて普通に恐怖を覚えたわよ。
「それで、人の体液を検査してまで何を企んでいるのかしら? ハチマンのためとだけ説明されてもそう易々と信じられないのだけれど。こんな拘束までされて」
口を開いたユキノちゃんでも状況をあまり説明されていないのね。
でも、今私が何かしようものならユキノちゃんの命を天秤に掛けられるのは目に見えている。だから下手には動けない。というか未だナツメに掴まれてて動けないんだけど。絶対超能力も使ってるわ。
「データがなければ何とも言えんが、『レッドプラン』及び『プロジェクトM's』の最終段階に入る」
「………またあの力が使われたというのに?」
「またあの力を使うことになったからだ。レジェンド化の条件は出揃った。そして力のコントロールもある程度条件を揃えれば可能だということも検証できた。ならば、あとは自由自在に力を操れる、暴走の危険性もない制御力と抑制力を身につければ最強のトレーナーとポケモンの完成というわけだ」
「………その最強のコンビを完成させたとして、ハチマンたちをどうする気?」
「それを知ってお前はどうする?」
「私は今も昔もこれからも、ハチマンの味方よ。悪に落ちるというのなら一緒に落ちるわ。ただし、あなたたちが干渉しない新たな悪ならばの話だけれど」
ッ!?
ユキノちゃん、あなたそんなことを考えていたの………?
私にはそんな覚悟………元より私は悪なのだから今更落ちるとかの話ではない。だから私だけでいいと思っていたのに………。
「ほう、正義を貫くと思っていたのだが、少々見誤りすぎていたようだ。だが、生憎あいつを悪に仕上げるつもりはない。仕上げようにも時既に遅し。お前たちとの交流があいつに光を与え続けている。そしてそれはこれからも変わることはないだろう。なんせ、悪に落ちようともついて来る覚悟を持った奴がいるのだ。落ちるに落ちられないだろう」
ユキノちゃんは本当にハチマンのことが好きなのね。だからハチマンの真髄まで見て、理解している。それに比べて私は…………依存していたに過ぎないのかもしれない。でも、時渡りまでしてこんな私を助けてくれた時のあの感情は、恋以外の何物でもないと思っている。現に私はハチマンのことが好きだし、好きだからこそ力になりたいと思っている。けれど、ユキノちゃんみたいな覚悟は……………。
「………して、サカキ殿。我の推測が正しければ、貴殿はカツラ殿とミュウツーの関係を目指しているのではないか?」
え………?
それってどういう………?
「………何を根拠にそう思う」
「メガリザードンYからホウオウへと至ったと聞いた時、メガストーンの交換の話をハチマンから聞いたのを思い出したのだ。ただ力を制御するというのでは具体性がない。メガストーンの交換という指標があれば前例もあり、偶然にもハチマンたちはその前例に近い存在となっている。ならば、舵取りはそちらに向くと考えた。それだけである」
メガストーンの、交換?
そんなことできるわけ……………。
いや、ハチマンなら不可能すら可能にしちゃいそうよね。同時メガシンカはもちろんのこと、レジェンド化にまでギリギリ何とかできているのだから。そりゃ身体的負荷は今はまだ残っているけれど、それが改善できれば………。でもそれがまず無理に等しい。だって、ユキノちゃんを使って力を中和してもこれなんだから。根本的なところが改善しない限り、あの力をどうにもしようがない。だから私はずっと方法を探っているのよ。
「フッ、伊達にハチマンの部下ではないな。察しの良さは高く評価されているのだろう」
それをまさかこの男は解を見つけたというの?
「だが、答えは保留とさせてもらう。まだデータが出揃っていない。何をするにもデータが不可欠だ。人体実験なのだからな」
っ………!
ああ、そうか。そういうことなのね。さっき、ここに来る前に見えそうだったのはこの事だったのね。
「………ロケット団の力をコントロールさせるやり方だけでも、私の力で中和して抑制させるやり方だけでもダメだったのね。ウツロイドの毒、あるいはどくタイプのポケモンの毒を入れることで力の延長する図る。そしてその全てが合わさることでハチマンを助けられると」
はは………なんてバカな話なんだろう。
結局、各々が独自にやっていたからハチマンはいつまで経っても改善しなかったんだ。私たちがしっかりと情報共有をしてハチマンのために敵味方関係なく手を尽くせば今よりも早く、どうにかなっていたのかもしれない。
「でも、どうしてあなたがハチマンを助けるの! あなたはハチマンの敵でしょう?!」
「………敵であろうが、オレには責任を果たす義務がある。それだけだ」
「何よそれ………、そんなの……………」
ずるい。
今のだけで分かってしまった。
サカキはずっとハチマンに負い目を感じていたんだ。私と同じように。けど、自分は悪だから悪に努める必要がある。悪だからこそ、問題を大きくしてそれを対処させれば、自ずと力のコントロールもできるようになってくる。難儀だけれど、それをやり遂げていた。ハチマンはそのことを………いえ、分からないわよね。ずっとそう思われないように悪に努めて来てのだから。
「時にハルノ。何故お前ではなく、お前の妹をハチマンの力を中和できる存在にした」
「…………ハチマンにはダークライがいる。その力も関与しているのだとしたら、対となるクレセリアの力が必要になってくる。けれど、クレセリアが選んだのは私ではなく、ユキノちゃんだった。それだけよ………」
「フッ、やはりな。これで合致した」
合致したって………。
まさか気付いていたというの?!
「サカキ様、まだ全てとは行きませんがこれを見てください」
「………フハハハッ、いいだろう! 丁度面子も揃っているのだ! ここに最終計画の実行を宣言する!」
ああ、これでようやく、ハチマンもあの力から解放されるのね。
………なのに。嬉しいはずなのに、悔しくて悔しくて仕方がなかった。
ーーーだって、サカキは。
ーーー私が長年ずっと探して来たものを。
ーーー先に見つけてしまったのだから。
「………ごめんね、ハチマン。やっぱり私は無力だ………」
「そう思うのなら、あの小娘に感謝することだな」
「へ?」
あの小娘って言った?
一体誰のことを指しているというの?
「イッシキイロハだったか。あの小娘、啖呵切ってきただけのことはある」
「それはどういう意味かしら?」
「あの小娘は自分の命さえレイズする覚悟を示し、どこに行ってもあの小娘はハチマンとともにあることを宣言したのだ。だからオレはヒントを与えてやった。故に何かしら動くとは思っていたが、それがまさかお前たちを即座に送り込んでくるとはな。こちらの手間まで省いてくるとは、オレの部下にしたいくらいだ」
イロハちゃん、あなたまさかサカキに喧嘩を売ったっていうの?!
………師匠が師匠なら弟子も弟子ね。あの二人、命知らずにも程があるわ。
でもそっか。
あの子は動けたんだね。襲撃されて未知の生物にも襲撃されて。ハチマンも自らを暴走させて、最後には毒に侵されて。そんな散々な状況の中、それでも次の一歩のために動いてくれた。
なら、次は私たちの番ね。年下の女の子にここまでさせたのだから私が動かなきゃ、それこそユキノシタの名に恥じる行為だわ。
「………分かったわ。この件に関してだけは共戦といきましょう」
「姉さん、いいのね?」
「ええ、私だってあなたたちに負けないくらいハチマンが大切だもの」
「ようやく覚悟を決めた目になったわね」
「………うるさい」
くっ、この女。
私に覚悟が足りてないがために通す気がなかったって言いたいのでしょ!
ここまでくれば誰だってアンタの意図も分かるわよ!
「では始めよう」
こうして敵と味方の垣根を越えた新たな計画が、一人の青年のために動き始めた。
行間
ユキノシタハルノ 持ち物:キーストーン etc………
・カメックス ♂
覚えてる技:ハイドロポンプ、ハイドロカノン、じわれ、しおふき、あまごい、まもる、はかいこうせん
・ネイティオ ♀
覚えてる技:みらいよち、サイコキネシス、つばめがえし、リフレクター、まもる、はかいこうせん、テレポート
・メタグロス
覚えてる技:サイコキネシス、ラスターカノン、はかいこうせん、コメットパンチ
・バンギラス ♂
持ち物:バンギラスナイト
特性:すなおこし←→すなおこし
覚えてる技:いわなだれ、じしん、かみくだく、はかいこうせん、なみのり、ストーンエッジ、かみなり、げきりん
・ゾロアーク ♂
特性:イリュージョン
覚えてる技:ナイトバースト、はかいこうせん、あくのはどう、シャドークロー
・ワルビアル(ワルビル→ワルビアル) ♂
覚えてる技:かみくだく、じごくづき、かわらわり、アイアンテール
控え
・パルシェン ♂
覚えてる技:からにこもる、シェルブレード、こうそくスピン、ゆきなだれ、からをやぶる
・ハガネール ♂
覚えてる技:アイアンテール、アクアテール、りゅうのいぶき、がんせきふうじ、じわれ、かみくだく、はかいこうせん
・ドンファン ♀
覚えてる技:たたきつける、ころがる、まるくなる、じわれ、かみなりのキバ、タネばくだん、こおりのつぶて
ユキノシタユキノ 持ち物:キーストーン etc………
・オーダイル(ワニノコ→アリゲイツ→オーダイル) ♂
特性:げきりゅう
覚えてる技:アクアテール、アクアジェット、ドラゴンクロー、れいとうパンチ、ハイドロポンプ、シャドークロー、つばめがえし、りゅうのまい、げきりん、カウンター、ハイドロカノン、ドラゴンテール、めざめるパワー(電)、ゆきなだれ、れいとうビーム、アクアブレイク
・ユキメノコ ♀
覚えてる技:こごえるかぜ、れいとうビーム、みずのはどう、10まんボルト、シャドーボール、めざましビンタ、ふぶき、かげぶんしん、あやしいひかり、かみなり、でんげきは
・ボーマンダ(タツベイ→コモルー→ボーマンダ) ♂
持ち物:ボーマンダナイト
特性:いかく←→スカイスキン
覚えてる技:りゅうのいかり、かえんほうしゃ、そらをとぶ、ドラゴンダイブ、ハイドロポンプ、つばめがえし、だいもんじ、かみなりのキバ、いわなだれ、ドラゴンテール、ハイパーボイス、げきりん、ギガインパクト、りゅうせいぐん、ねむる、ねごと、はがねのつばさ、かげぶんしん、すてみタックル
・ユキノオー ♂
持ち物:ユキノオナイト
特性:ゆきふらし←→ゆきふらし
覚えてる技:ふぶき、ぜったいれいど、くさむすび、じしん、ウッドハンマー、きあいだま、ギガドレイン
・イノムー(ウリムー→イノムー) ♂
・クマシュン ♀
控え
・ペルシアン ♂
覚えてる技:きりさく、だましうち、10まんボルト
・ギャロップ ♀
特性:もらいび
覚えてる技:かえんぐるま、ほのおのうず、だいもんじ、フレアドライブ、でんこうせっか、にほんばれ、ドリルライナー、スピードスター、まもる
・フォレトス
特性:がんじょう
覚えてる技:こうそくスピン、ジャイロボール、パワートリック、ボディパージ、リフレクター、だいばくはつ
・マニューラ ♂
覚えてる技:つじぎり、こごえるかぜ、こおりのつぶて、ふぶき、れいとうパンチ、はかいこうせん、カウンター、シャドークロー、みやぶる、かわらわり、まもる、つららおとし
・エネコロロ ♀
覚えてる技:こごえるかぜ、メロメロ、ソーラービーム、でんげきは、ハイパーボイス、れいとうビーム
・ニャオニクス ♀
特性:すりぬけ
覚えてる技:エナジーボール、シグナルビーム、サイコキネシス、シャドーボール、チャージビーム、みらいよち、なりきり
ユイガハマユイ 持ち物:キーストーン
・グラエナ(ポチエナ→グラエナ) ♂ サブレ
持ち物:きあいのハチマキ
特性:いかく(にげあし→いかく)
覚えてる技:こおりのキバ、かみなりのキバ、アイアンテール、とっしん、ふいうち、じゃれつく、どろかけ、カウンター、はかいこうせん
・ブリガロン(ハリマロン→ハリボーグ→ブリガロン) ♂ マロン
持ち物:かいがらのすず
覚えてる技:タネマシンガン、つるのムチ、やどりぎのタネ、ころがる、ドレインパンチ、まるくなる、ミサイルばり、ニードルガード、ウッドハンマー、ジャイロボール、ビルドアップ
・ドーブル ♀ マーブル
持ち物:きあいのタスキ
覚えてる技:スケッチ、おにび、ハードプラント、ダークホール、こらえる、がむしゃら、いわなだれ、ハイドロポンプ、ほごしょく、ハイドロカノン、へんしん、サイコブースト、ふういん
・ウインディ ♂ クッキー
持ち物:ひかりのこな
特性:もらいび
覚えてる技:ほのおのキバ、バークアウト、ニトロチャージ、りゅうのいぶき、かみなりのキバ、しんそく、にほんばれ、だいもんじ、りゅうのはどう、インファイト
・ルカリオ(リオル→ルカリオ) ♂ シュウ
持ち物:ルカリオナイト
覚えてる技:ブレイズキック、でんこうせっか、けたぐり、はどうだん、ボーンラッシュ、りゅうのはどう、しんそく、カウンター、インファイト
・ルガルガン(真夜中の姿)(イワンコ→ルガルガン) ♂ スコーン
特性:やるき
覚えてる技:いわおとし、がんせきふうじ、かみつく、ステルスロック、ストーンエッジ、かわらわり、ふいうち、ほえる
控え
・グランブル(ブルー→グランブル) ♀ ショコラ
持ち物:たつじんのおび
覚えてる技:たいあたり、しっぽをふる、かみつく、じゃれつく、インファイト、ストーンエッジ、マジカルシャイン、こわいかお
・バルキー ♂ ビスケ
・ワンパチ ♀ マシュマロ
・サニーゴ(ガラルの姿)
覚えてる技:パワージェム、うずしお、ギガドレイン、ハイドロポンプ、おにび、リフレクター
ヒラツカシズカ 持ち物:キーストーン(研究所からの借り物) etc………
・カイリキー ♂
覚えてる技:ばくれつパンチ、どくづき
・サワムラー ♂
覚えてる技:メガトンキック、とびひざげり、ブレイズキック、まわしげり
・エルレイド(ラルトス→キルリア→エルレイド) ♂
持ち物:エルレイドナイト
覚えてる技:テレポート、サイコカッター、かみなりパンチ、インファイト
・ハリテヤマ ♂
覚えてる技:ねこだまし、バレットパンチ、はたきおとす、ばくれつパンチ
・ゴロンダ ♂
覚えてる技:じしん、アームハンマー、ビルドアップ
・バシャーモ ♀
持ち物:バシャーモナイト
特性:かそく←→かそく
覚えてる技:ブレイズキック、ブレイブバード、かみなりパンチ、みがわり
ナツメ
・モルフォン ♀
覚えている技:サイケこうせん、かぜおこし、ねむりごな、メガドレイン、エナジーボール
・バリヤード ♀
特性:フィルター
覚えている技:サイケこうせん、ねんりき、アンコール、ひかりのかべ、マジカルシャイン
・フーディン ♀
特性:シンクロ
覚えている技:サイコキネシス、きあいだま