ポケモントレーナー ハチマン 〜ぼーなすとらっく集〜 作:八橋夏目
ともあれ、兄妹対決から一週間後の話です。
それと次回で今作も一旦完結になります。
「剣豪将軍ザイモクザヨシテル、ここに参上!」
…………………。
え、なに急に。
朝っぱらからいきなりヤバい生き物が侵入してきたんだけど。
取り敢えず通報でいいか?
「ザイモクザ君、いきなり現れたかと思えば唐突な自己紹介。あなたとうとう頭のネジがぶっ飛んでしまったのかしら? 病院に連絡しましょうか?」
「ぐはっ?! ………そうだった、ここにはハチマン以外もいるのだった………」
ポケモン並みに効果抜群のダメージを受けてるな。いっそそのまま戦闘不能になってしまえばいいのに。
「んで、何しに来たんだよ。事と次第によっては通報するぞ?」
「ちょ!? 待つのだ相棒! それだけは、それだけは!」
「なら、さっさと要件を言え」
ほんと何なの朝っぱらから。朝はもっと優雅にゆったりと滑らかに行動しろよ。俺なんか寝起きの動きがふにゃふにゃすぎて気持ち悪いとまで言われたことあるんだぞ。俺どんだけ朝弱いんだよ………。最も朝が弱いのはもう一人そこにいるけどな。起こそうとしたら「うにゅ……」って声上げるんだぞ。可愛いすぎて悶え死にそうになったわ。
「けぷこんけぷこん! 古より我らの魂に刻まれた盟約。それにより今世においても我らは出逢うべくして出会い、数々の修羅場を乗り越えてきた我らにも特別な日が存在するのだ! 我が相棒よ、今日がその特別な日なのである!」
「……………」
「……………ついにそっち系にジョブチェンジしたのかしら」
「俺を巻き込むなよ。やだよ、こんなむさ苦しいの。俺はユキノたちのような美少女の方が好みだっつの」
「そう、それは嬉しい限りだわ」
「ちょ、あの、目の前でイチャつかれると心に刺さるといいますか、自重してもらえると……………」
「それはお前の中二病にも言えることだぞ」
「ブーメランとはこのことね」
「ぐはっ?!」
一体何なんだろうか、この生き物は。昔から何一つ変わらないというか、俺以上に人間そうそう変わるわけないだろってのを体現しているこの生き物は、もはや天然記念物に指定してもいいじゃね?
「あ、いたいた。ザイモクザ君、ハチマンにちゃんと話せた?」
「あ、トツカ氏「トツカァァァ!」ぐはっ!?」
今なんか踏んだような気がしたがどうでもいい。こんな朝っぱらから俺のラブリーマイエンジェルに会えるとか、もう奇跡と言ってもいいわ。つか、もうトツカを天然記念物に指定しよう。そうしよう。ザイモクザ、俺の天然記念物に手を出すんじゃねぇぞ!
「ハチマン、言われていたものとか買い揃えてみたよ。最近はいろんな種類が出ててびっくりしちゃった」
「そうか、それはよかったよ。コマチのことをトツカに任せっきりにしてしまうからな。俺が出来るのなんてこれくらいしかしてやれないから非常に助かる」
そうか、もうあと一週間しかないのか………。
トツカはコマチとガラル地方に行くことになっており、あっちに行ってしまえばこんな朝の出会いもしばらくなくなってしまうのだな。
「美少女が大好きと言った数秒後にはこれなのね………」
「いや、もう、トツカ氏に関しては諦めるしかないかと………」
「ハチマン、ちゃんとザイモクザ君のお話聞いてあげてね?」
「お、おう! トツカがそこまで言うならな。仕方がない。それで、特別な日ってのは何なんだ?」
「なんか釈然としないが、よくぞ聞いてくれた。我らは六年前の今日、初バトルをした謂わばライバルというものなのである。ふっ、時には相棒、時には好敵手………実にいいではないか!」
「……………ん?」
六年前の今日?
何かあったか?
「あれ? もしやお主、忘れたわけでは………」
「……………………………………」
うーん。
六年前っていうと何してっけ?
てか六年も前の話を、しかもザイモクザに関してとかマジで記憶を掘り起こすのに時間がかかりそうだわ。
「ハチマーン!」
「うるせぇよ。今記憶を掘り起こしてるんだから、ちょっとは待ちやがれ」
「あ、はい………」
言われてすぐに思い出せるわけないでしょうが、このバカちんが!
「ハチマン、多分だけどスクールの新入生に向けたバトル大会の時のことを言ってるんじゃないかな?」
「バトル大会? あー、なんかそんなのもあったな」
「我の初バトルをお主は…………」
「いや、興味ねぇし。えーと、確かポリゴンとリザードンとでやったんだっけか?」
「よくぞ思い出してくれたな、ハチマン! そう、それである!」
「はいはい。んで、六年経った今久しぶりにやりたいと?」
「うむ、お主の妹君も旅立つ今、ここいらで一つ手合わせ願おうかと思ってな」
コマチ関係なくね?
こいつ事あるごとに何とか記念日とか作る奴だったり?
いやないな。キモすぎる。俺だってそんなのはコマチとトツカだけで充分だわ。ユキノたちとは毎日が記念日だからな。
………うん、冗談でもこんなアホなことを考えるのはやめよう。頭の中がピンクのお花畑なのはユイだけで充分だ。
「珍しいな、お前が自分からバトルしようとか言い出すなんて。それは本気のバトルってことだろ?」
それにしてもこいつが自分からバトルをしようとするのはほとんど見かけないな。基本自分たちでやってるし、ほとんどがポケモンの既存の技を応用したアホな新技を作ってる奴だ。バトルをするのも誘われたらだし、その誘いもトツカやコマチくらいだから、いかんせん誰もこいつの強さを目の当たりにしたことはないだろう。最も、その二人でさえザイモクザの本当の実力は見せてもらえてないだろうが。
「我は基本バトルは楽しむ派ではあるが、長年行動を共にし、緊急時には駆り出され我も付き合わせたお主とだけは本気のバトルというのも吝かではない。どうであるか?」
仕方ない。付き合ってやるか。
でもやるからには場所を選ばないとな。併設された外のバトルフィールドでは周りが危険すぎる。こいつの場合、どんなふざけた技を再現してくるのか分かったもんじゃない。広々としたところでやるのが一番被害を抑えられるだろう。
「なら、えーと…………これか。この紙に記入しろ」
「む? シャラバトルフィールドの使用許可申請?」
「本気でやるなら広い方がいいだろ?」
「よかろう! で、何を書けば良いのだ?」
「俺とお前の名前と日時だな。今からシャラシティに向かったとして昼過ぎからだな」
「では十四時頃としておこう」
「んじゃ、昼前にはここを出るか。それまでに仕事を終わらせるわ」
「…………終わるのか?」
「俺がやることなんて最終決裁とかだからな。それにコマチを見送るためにも先週の内にあらかた終わらせてある」
「さすがだね、ハチマン!」
「可愛い妹の旅立ちの日に仕事で顔を出せませんってなったらお兄ちゃん失格だからな」
そんなことになったらコマチに嫌われるわ俺も立ち直れないわで、ただただ生きた屍になるしかないだろう。
「シスコンは一生治らなさそうね」
「我からすればシスコン度合いがそのままお主らに向いているだけに過ぎぬがな。総じて女子に甘い」
「…………トツカ君は除く、が必要ね」
「それには激しく同意であるな」
さて、今の内に言いたいことは言っておけよ、ザイモクザ。昼が過ぎれば灰にしてやる。
✳︎ ✳︎ ✳︎
で………。
リザードンたちがぶっ飛ばしたおかげで時間前にシャラシティに到着したわけだが………。
「なんでいるのん?」
なんか人が集まっていた。ユイやコルニが来るのはまあいいとしよう。シャラにいるんだからな。
それが何でハルノやヒラツカ先生までいるのだろうか。アンタらやることあるでしょうに。しかもシャラに来るのって結構遠いだろ。
「そりゃ、ユキノちゃんから召集をかけられたからねー」
「はっ?」
原因はお前か!?
「おい、何やってんの?」
「私はただ、今日はシャラシティでハチマンとザイモクザ君が本気のバトルするから午後はいないと伝えただけよ」
「そう言われたらみんな来ますって、先輩」
「そうだよ、お兄ちゃん! お兄ちゃんの本気のバトルなんてそうそう観られるものじゃないんだからさ!」
「えー………」
ちなみにミアレからはあの場にいたトツカと、ユキノから情報をもらったであろうコマチとイロハがくっついてきている。
おい、イロハ。四天王との修業はどうした。無断欠勤とかだったら頭上げられなくなるだろ!
「それにしてもよくもまあこれだけの人数が集まったわね」
「一応ジムの権限はアタシにあるから、うちはアンタのバトルのために午後から休みにできたけどさ。みんなすごいよね」
「みんなやっはろー!」
休みにしちゃったのね。
まあ、今ではシャラジムが最後の関門みたいな扱いになってきているからな。そうそう挑戦者が来ることもないか。
「わしもいるぞ」
「いやまあ、コルニのじいさんですしね。暇であれば来るとは思ってましたよ」
なんか久しぶりな感じもするが。
コルニの祖父コンコンブル博士も紛れ込んでいた。こんな若者集団に紛れ込んでいてよくいられるな。あ、一人若者じゃな………ッ!?
「おいヒキガヤ。今何か失礼なこと考えなかったか?」
「い、いえ……滅相もございません」
「わしからしたら皆充分に若いんよ、カカカッ」
ひぇぇぇ。
一瞬風が吹いたんだけど。
マジで怖い怖い。今時暴力系ヒロインなんて流行らないんですよ。だから結こ………この先を考えるのはやめておこう。もうもらい手がないっていうのならいっそ俺がもらっちゃうか? というか最早誰かに渡すのもなんかな………。
「さて、ハチマンよ。早速始めるとしようではないか」
「へいへい、分かりましたよ」
挨拶も程々に俺とザイモクザはフィールドへと向かった。うん、潮風にさらされているが錆びたりだとかいった劣化は進んでいないようだな。そこは何か特殊な金属でも使っているのだろう。
「ふむ、久しぶりにわしが審判をしよう」
「ういっす」
………まあ、大丈夫だよな?
コンコンブル博士まで吹き飛ぶとかいう惨事にはならんだろうし。
いやでも………うーん。
「あー、コンコンブルさん。ポケモン連れてきてたりとかします?」
「ん? ポケモンか? それならヘラクロスがおるんよ。ほれ」
「ヘラッ」
ほーん。
ヘラクロスか。
まあ、それなら大丈夫だろう。
「それなら一応出しておいてください。どうなるのか分からないので」
「そんなにヤバいん?」
「さあ、それこそ俺が知りたいくらいですね」
「それはそれで見応えあるバトルが期待できるってもんよ」
「そすか」
まあ、期待されてもね。相手が相手だし。
「んじゃ、本気のバトルってことでルールは六対六のフルバトル。技の使用は制限なし。交代も自由。どちらかのポケモンがすべて戦闘不能になったらバトル終了。これでどうよ?」
「問題ないな」
「うむ、我もその方が戦いやすいというものよ」
何かザイモクザの考えにも裏がありそうだが、ひとまずコテンパンにしますかね。
「それなら、バトル始め!」
「いでよ、Zよ!」
最初のポケモンがポリゴンZか。
あいつにとっては最初のポケモンで切り札にも近いエースなんだけどな。
それを最初に出してくるのは………まさか、そういうことなのか?
「はあ、仕方ない。付き合ってやるか。出てこい、リザードン。ある意味一仕事だ」
「シャア」
「え? 最初からリザードンですか?!」
「ヒッキーが六盾しようとしてるよ………」
いや違うから。そこまでやらないから。やらないよね?
「ぬはははは、そちらから来ないのなら先に行かせてもらおう! Zよ、三色攻撃!」
あー、最初はトライアタックだったっけ?
なら、確か俺たちは………。
「躱せ」
一直線に放たれたトライアタックをリザードンは身体を捻って躱した。
「やるな、ハチマン! ならば、ロックオン!」
「背後に回り込め」
次は確かロックオンされるから背後に回り込むんだったよな。んで、今度はこっちから攻撃を仕掛ける番だ。
「メタルクロー」
鋼の爪を一発入れたら振り返られるから、ここで距離を取らないとやられたはず。
「一旦空に逃げろ」
「放て、レールガン!」
ほれ、来た。
ロックオンからのでんじほうは奴らが好みとする戦い方だ。それに攻撃を受けようとも必ず照準を合わせてくるのもあいつらのやり口。
「ふははははっ! さあ、逃げるがよい! 六年前と同じようにな!」
やはり、六年前のバトルを再現しようとしてるんだな。
だったら、俺たちも付き合ってやるよ。
「なら、リザードン。お前も好きに動け」
「ふははははっ! さあ動け動け! 我らのレールガンはいつまでも追いかけるぞ!」
それにしてもすげえ笑ってるな。身体がでかくなった分、鬱陶しさが増している。暑苦しい。
「やれ、リザードン」
「それを待っていたぞ、ハチマン! Zよ、三色攻撃!」
正面からいけば挟み撃ちをしてくるのは知っている。だからこそ俺たちも当時のやり方でやらせてもらうぞ。
「メタルクローで道を切り開け」
ここまで来れば、恐らくリザードンもどういうバトルなのか理解して来た頃だろう。
「連続で三色攻撃!」
シナリオ通りにリザードンが三色砲を弾くと、次々と同じ技を連発してきた。それをリザードンは悉く鋼の爪で弾いていく。
「リザードン、そこで減速」
そしてポリゴンZの目前というところで急停止させた。あの頃は特にこれといった応用技を習得してなかったから名前なんてなかったが、今の動きはコブラである。あの頃から既に似たような動きをしていたのだと感慨深いものがあるな。
「Zよ、容赦はいらぬ! レールガン!」
ザイモクザはこれまたシナリオ通りに急停止したリザードンに向けて、一直線のでんじほうを放つよう命令した。
「今だ。トップギアで駆け抜けろ」
さて、ここからだな。
リザードンはここで急加速してポリゴンZを通り過ぎていく。六年前であれば、この後リザードンを追尾していた初手のでんじほうがポリゴンZを呑み込むことになるが、このバトルを挑んできた以上、みすみすポリゴンZを戦闘不能に追い込んでまで六年前のバトルを忠実に再現しようとは思わないだろう。
「ふははははっ! やはり覚えておったか! だが、我らとてそれを待っていたのだ! Zよ、レールガンに対して体画変色2!」
ふむ、やはりここから新たなシナリオを作っていこうってわけだな。
つか、体画変色2って何だよ。2ってことはあれか? テクスチャー2か? それなら今のでポリゴンZはじめんタイプに変わったみたいだな。特にダメージもなく吸収してたし。
「………全く、男子というのはこういうバトルが好きね」
「いいではないか。かつて戦った相手とまた戦うことができるなんて、最高に熱いぞ!」
「ゆきのん、ヒラツカ先生、どういうこと?」
「六年前、私たちがスクールの六年生に上がろうっていう時に、新入生を迎えるためのバトル大会があったのよ」
「あ、それなら知ってるよ! あたしも見てたもん! あ、でもそっか。ヒッキーって中二ともバトルしてたんだった」
「つまりはあの頃の再現ってことですか?」
「ええ、恐らくは。でも今の最後のところで、リザードンを追尾していたでんじほうをくらってポリゴンは戦闘不能になったのよ」
ユキノもよく覚えてたな。あの時は確かオーダイルの暴走に悩んでたんじゃなかったのか? それとも対戦相手になるかもしれないから敵情視察だったとか? あり得るな。だが、そういうのを抜きにしても見られてたような気がするのは俺だけだろうか。そうでなければ六年も前の敵情報なんて覚えているわけがない。
うわー、なんかそう考えたら俺も結構ヤバい奴じゃん。よくそんなんで周りの男子から襲われなかったな。まあ、さっさと特例で卒業したからだけど。逆に言えば、卒業してなかったらそういう未来が待っていたとも言える。
恐ろしい、ああ恐ろしい、恐ろしい。
「はあ………つかザイモクザ、お前もやっぱバカだな」
「ぬははははっ! そういうお主こそ、忠実に覚えておったではないか」
「記憶を掘り起こす身にもなれよ。お前が最初にポリゴンZを出してきた時点で勘付いていなかったら再現できてなかったからな」
「その時はその時である。だが、そこはやはり我の相棒よ。瞬時に理解して合わせてきたではないか」
「気まぐれだ。お前が本気のバトルをっつーから、それに付き合ってんだよ」
「ふむ、そういうことにするとしよう」
他に何があるんだよ。
こんなのはただの気まぐれだ。記憶にあったのをなぞっただけである。
「して、ハチマン。今の我がお主の知る昔の我と同じだとは思うでないぞ?」
「それはないな。何か策がなければ俺に挑もうとも思わんだろ」
「ふむぅ、確かにそうではあるが………。もう少し乗ってくれてもいいのではないか?」
「やだよ、面倒くさい。再現してやっただけありがたく思え」
「けぷこんけぷこん! では、参る! Zよ、モード第一位!」
「ジー」
モード第一位?
今度は一体どんなネタを仕入れてきたんだ?
「リザードン、取りあえずかえんほうしゃで様子見だ」
どうせまたアホなことに労力を使った戦法が出てくるのだろう。距離を取って様子を見るのが安全だ。下手に突っ込んでやられるって可能性も無きにしも非ずだからな。
「シャア!?」
「おおう、マジか………」
特にザイモクザの指示もなく、真っ直ぐと炎がリザードンへと返ってきてリザードンを包み込んだ。一瞬ものまねで返されたのかとも思ったが、それならば技が相殺されるはずだ。相殺されずに返ってきたということはポリゴンZの方もダメージを受けてなければおかしい。だが、そんな様子は見受けられない。
ということはあれはリザードンが吐き出した炎と見るべきなのだろう。そうなるとやはりポリゴンZが何か仕掛けていたとみるのが妥当か。
それにいくら自分の炎だとしても、効果はいまひとつな耐性のある技だとしても、ダメージを受けたことに変わりはない。ダメージメーターでもあれば、さっきのメタルクローで切りつけたダメージ程ではないがリザードンにも入っていることだろう。いや、リザードンの炎なのだから同じくらいになっているかもしれない。
「……一体何が起きたの?」
「さあ………?」
「リザードンの炎が真っ直ぐとリザードンに返っていきましたよね」
真っ直ぐと返って………。
なるほど、つまりは反射か。
「あー……、そういうことか」
「むふん! どうだ我すごいだろう?」
「あーすごいすごい」
確かにすごいが素直に褒めてやる気にもならない。そこがザイモクザなんだろうが、褒めても図に乗るだけだしな。
「一切感情がこもっとらんな」
「そりゃそうだ。何がモード第一位だよ。どこぞの白いロリコンの能力を再現しただけじゃねぇか」
「だがお主らには無理であろう? なんせ、これはポリゴンZであるが故に成せる業なのだからな」
「それはどういう意味かしらっ?」
ユキノさん?
なにゆえそんなに食い気味なのでせう?
「は、はぽん! まずはポリゴンというポケモンをよく考えてみるのだ。そもそもポリゴンは人間が造り出した人工的ポケモン。それも電脳空間を移動できる異質なポケモンである。そしてアップデートされ、最適化されたのがポリゴン2であり、さらに上を目指した結果能力が偏ってしまったのがポリゴンZである」
「ええ、それは理解しているわ」
「では、他のポケモンにはないポリゴン系統の強みは?」
「それが電脳空間を移動できることでしょ?」
「いいやちがう! 大間違いである! ポリゴン系統の強みはデータの読み取り、及び変換と操作である! 電脳空間の移動はポリゴン系統がポリゴン系統であるがためのアイデンティティなのだ! そこははき違えてはならぬぞ!」
なんか暑苦しい奴がさらに暑苦しいんだけど。周りが海で海風がたまに吹くのがせめてもの救いか。それでも暑苦しい。
って、それよりも今何つってた?
データの読み取り及び変換と操作だ?
いきなりこんなことを語り始めたということは、さっきの技が返ってきたこととつながっているのだろう。なら、この二つを結び付けて考えようとすれば………逆算していくか。イロハの言葉が正しければポリゴンZによってリザードンの炎が跳ね返された。つまりは操作されたのだ。となると、ポリゴンZが技に干渉したことになり………はあっ!?
「お前、まさか………!」
「ようやく気付いたであるか、ハチマン! そう! 今のZは相手の技をデータとして認識し、ハッキングができるのである!」
おいおいおい!
ちょっと待て!
それはさすがにヤバいだろ。いろいろとヤバいって。何がヤバいって技をハッキングとか世界初なんじゃねぇの? こんなの世界中の研究者たちが挙ってザイモクザを研究材料にしようと押しかけてくるぞ。
「公にできねぇことを思いつきやがって」
「……………ハチマンも異常だったけれど、やっぱりザイモクザ君も負けず劣らずだったわね」
「あっはははは…………」
恐らく俺の次くらいにはザイモクザと接点があったであろうユキノも今回はお手上げなようだ。
というかユキノさん? 俺とこいつを一緒にするのやめてね?
「さあ、ハチマン! 技のハッキングという技術を手に入れたZを相手に何ができるのだ? いや、できることはない!」
まあ、確かにできることはないだろうな。
「だからと言ってやらない理由にはならないだろ。リザードン、ドラゴンクロー」
まずはどこまで技のハッキングができるのかを探らないとな。
あの白いロリコンは物理攻撃も反射させていた。というかあらゆるベクトルを操作する能力を有していた。それを真似ているのなら、この物理攻撃も当然干渉してくるだろうが、それがどのような働きをしているのかが気になるところだ。
「Zよ!」
「ジー」
真っ直ぐとポリゴンZへと飛び掛かっていくと、寸でのところで弾かれてしまった。それどころか弾かれた右腕に引っ張られるようにして、俺のところでまで飛ばされてきている。
なるほど、確かに干渉されるみたいだな。それもあのロリコン並みに。
なら、今度は数で勝負してみるとするか。
「リザードン、今度は数で試してみるぞ。かげぶんしん」
態勢を立て直したリザードンに影を増やすように命令。
影はみるみるうちに増えていき、ざっと数十体はいると思われる。
「普通に攻撃したんじゃさっきの二の舞だ。リザードン、まずはドラゴンクローだ」
そろそろこちらも飛行術を入れた戦い方に移行していこう。それでも通用しないとなれば、また違う策を考えるまで。
「ふはははっ! 甘い! 甘いぞ、ハチマン!」
次々と影が消されていくが、まただ。もう少し。
「ジー」
ーーー今だ!
「コブラ」
ポリゴンZが技に干渉してくる、というより技に干渉するために何かしらの技を出す時には必ずと言っていい程、機械音がする。鳴き声なのだろうが、それがこっちにとってはいい合図でもあるのだ。
それを狙ってリザードンに急停止をさせた。
「なぬッ!?」
それにザイモクザは驚いている。
「ッ?!」
そんなザイモクザと一瞬目が遭ってしまった。
「レールガン!」
「リザードン 、そのまま垂直エアキックターン!」
やはり来たか。
なんとなく目がそう言っているような気がした。嬉しくもない話だが、それだけザイモクザとの付き合いが長いということなのだろう。ほんと全然これぽっちも嬉しくないわ。
「よく気づいたではないか、ハチマン!」
「なんとなくだ。お前ならやり兼ねないと思っただけだ」
リザードンはコブラで急停止する際に踏み込んでいた分、すぐに急上昇していき、そんな一閃を躱したリザードンを見上げながらザイモクザが言ってくるため、俺も正直に返してやった。
「………改めて思いますけど、先輩ってすごいですね」
「ええ、でもハチマンにそこまでさせてしまうザイモクザ君も、それだけの実力があるという証でもあるわ」
さて、こうなると攻撃を仕掛けるだけでも骨が折れるな。遠距離から技を吐き出せばハッキングされ、直接攻撃をぶつけようにもタイミングを合わせられて躱されてしまう。いっそ反射された技を再度反射させるということも考えられるが、それをリザードンができるかというとまた難しい問題だ。
「リザードン、りゅうのまい」
取りあえず、竜の気は纏っておこう。ハッキングされて返されてきた技を躱すにも素早い方がいいからな。…………よもや竜の気までもハッキングされるとかってことはない………こともないか。その時はその時に考えよう。まずは色々試してみる時間だ。
「ふっ、そんなにZから距離を取っていいのか、ハチマン! Zよ、影分身の術!」
いや、それただのかげぶんしんじゃん。
ただまあ、こっちがこうして炎と水と電気から竜の気を生成している間に、あっちも何かしら準備をする時間にはなるわな。逆にその時間を無駄にしているようではトレーナーとしてはまだまだと言えるだろう。
「水神よ、我に力を!」
はい?
水神? 水に神って誰だよ。ルギアか?
「うわぁっ!?」
「なんですかあれ………!」
ユイとイロハの驚きは俺たちの方ではなく、ザイモクザの方、もっと言えば奴の奥に向けられている。
「って、おいおいおい………」
まさかそんなことまでできちゃうのかよ。
マジであの白いロリコン並みにヤバい奴になりつつあるぞ。
『………まさか人間が造り出したポケモンはここまでできるというのか? オレたちを凌駕するつもりなのか?』
ゲッコウガ、お前がそこまで評するということは、やはりあのポリゴンZはヤバい領域に足を踏み入れたということでいいようだな。
ったく、面倒なことしやがって。
「Zが秘めたる属性は水。水を操ることが此奴の真の力である。では、ハチマンよ! その力をとくと味わうがいい! スーパーアクアトルネード(仮)!」
「リザードン、ぼうふうだ! その水柱を一本も入れるなよ!」
四本の巨大な水柱が渦を巻きながらリザードンへと発射された。まさかバトルフィールドだけではなく、その外に広がる海までも利用するとか………。
「シャアァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!」
くっ………まさかぼうふうを使うことになるとはな。
範囲技なだけあって、威力は高い。だがその分、周囲への影響は計り知れず、居住区のミアレシティなどでは使えない技である。
「「「「「きゃああああああああっ!?」」」」
黄色い悲鳴が風に割ってかすかに聞こえてきた。見ると女性陣のスカートが激しく翻っており、ユイのルカリオなんかは主人の足元を支えるついでに覗いている。
おい、そこの変態ポケモン! うらやまけしからんぞ!
『ハチ、後ろは任せろ』
「了解」
俺が飛ばされまいとゲッコウガが後ろに立って支えてくれているようだ。
なんだろうか、この違い。いや、ちゃんとルカリオも仕事はしてるんですけどね? せめてもう少し露骨さをなくせよと思ってしまうのは俺だけなのだろうか。
「ゴラムゴラム! さすがはハチマン! さすがはリザードンである! だが、前ばかりに気を取られているようではまだまだ未熟よ! Zよ、今こそ真なる力を発揮せよ!」
ったく………、あれだけの水量を操りながら移動してリザードンを狙おうとしているのかよ。暴風と水柱のせいで周りは見えないし………。ここは燃え上がって離脱させるか。
「燃えろリザードン! フレアドライブ!」
「シャアァァァアアアアアアアアアアアアッッ!!」
「ジー」
機械音とともにドゴン! とリザードンが爆発した。
恐らくリザードンが纏う炎に何かが当たったのだろう。それも爆発が起きる程の何か。
すると他でも次々と爆発音が聞こえてくるようになった。
これは外側からか?
ということは暴風域に水柱がぶつかったのだろう。
それならーーー。
「ーーーねっぷう!」
ぼうふうに加えてねっぷうで熱を送り込めば、ぶつかり合う四本の水柱も次第に蒸発していくだろう。
「Zよ! 一度態勢を立て直すのである!」
ねっぷうに巻き込まれたポリゴンZが暴風域を利用して戦線離脱して行きやがった。
「リザードン 、お前も一旦戻ってこい!」
「ふっ、雷網檻!」
っ?!
あの野郎…………っ!
逃げたと思わせて移動してやがったのかよ。
「シャアッ!!」
あれはエレキネットか?
咄嗟にリザードンが炎を纏ったことで焼き切ることができたようだが、地味なダメージ蓄積が一番痛いな。大ダメージともなれば見かけで状態を把握することも容易だが、小さい蓄積ダメージは中々変化に気づきにくい。
「さすがは炎竜! Zの秘めたる水の力を以ってしても蒸発させてしまうとは! そしてそのまま檻を突き破るその力、見事なり!」
「リザードン 、無事か?」
「シャア」
何とか戻ってきたリザードンに声をかけると、まだまだやれそうな様相であった。まあ、あれくらいで倒れることはないな。
ただ、よく見てみると竜の気が弱まっているような気がする。エレキネットを破ったとはいえ、一度は身体に触れているのだ。追加効果が発動していたとしてもおかしくはない。
さて、こうなると長期戦はこちらが不利になりそうだ。こちらの技は今のところハッキングされるし、そうでなくとも攻めの材料が整っていない。下手に近づけば白いロリコンよろしくこちらの技でやり返されるだろう。
なら、やはりこれしかないか。
ハッキングに使われる技の正体は掴めていないが、何となく予想はできている。しかもこちらはまだそのタイプの技を使っていない。活路を見出すのならそこしかないだろう。使い方も真正面からではなく、
「リザードン、俺が指示した技の後にあくタイプの技を絡ませてみてくれ。メインの攻撃はそっちだ。こっちもなるべく遠距離からの攻撃を指示する。だからハッキングされたらお前の判断で対処しろ。そしてあくタイプの技を一度ぶつけてみるんだ。それで多分、どうすればいいのかが見えてくると思う」
「シャア」
周りに聞こえない音量でリザードンへと指示を出しておく。これならば技をハッキングされたとしても、リザードンのこれまでの経験と身体に染み込んだ直感でザイモクザを翻弄することもできるだろう。
さて、四本の水柱も霧散し暴風も収まり、もはや邪魔者はいない。さっさと試すとしよう。
「行け、リザードン。だいもんじ」
地面を強く蹴り上げ、ポリゴンZへと迫りながら、大の字型の炎を吐き出した。
「ジー」
まあ、反射されるのは想定通り。
ここからリザードン がどうあくタイプの技を入れていくかだな。
「シャアッ!!」
って、おい………。
折角迫って縮めた距離を後ろに回転しながら開いてったんだけど。これ、確かアクロバットだよな。
こっちに来てからはメガストーンを付けてたりしたから、使う機会がなかったんだよな。それが何も持たなくなった今、最大出力で技を発動できるというわけだ。でも、アクロバットはハッキングされるぞ? どうする気だ?
「来るぞぃ!」
「ジー」
ポリゴンZが待ち受ける中、リザードンは躊躇なく突撃していった。
「なっ?! 何故止まらぬ!?」
く、くくくっ………。
そうか、そういうことか。お前も悪知恵が働くようになったな。
「Z! 切り替えるのだ!」
俺が指示したコブラからの垂直エアキックターン。そして回転しながら後方へと下がり、再度エアキックターンで加速して反射されただいもんじを躱しながらポリゴンZへと辿り着いた。まるでひこうタイプの技アクロバットを使っているかのように。だが当然、アクロバットを使っているわけではないので、ハッキングされることもなかったわけだ。
「シャアァァァアアアアアアアアアッッ!!」
そして大きなキバで噛み付き、振り飛ばした。
「ジー!」
ポリゴンZは痛みを感じないが、ノックバックにより身体を地面に打ち付けたことで機械音が鳴っている。人工的に造られたポケモンと言えど、衝撃とかに対しての耐久性ってどうなっているのだろうか。やり過ぎたらポリゴンZが壊れるとかってことはないよな?
「一体何が………?」
「技アクロバットに見せかけたリザードン考案のアクロバット飛行だよ。技を使っているわけじゃないからハッキングもできなかった。それだけだ」
「ぬぅ、しかもあくタイプの技を絡めることでハッキングを躱してくるとは!」
「ま、今ので大体ハッキングの構造は理解できたけどな。しかもポリゴンZにもまだまだ課題が残っている」
「ほう、それはどういうことであるか?」
「簡単な話だ。ハッキングにはサイコキネシスを使っている。だからあくタイプには効果がない。しかもポリゴンZは同時に複数の技をハッキングするのはまだまだ苦手な部類だろ? だから水柱を操作しながらぼうふうをハッキングしてめざめるパワーで攻撃、とはいかなかった。違うか?」
「鋭い奴よのう。ならば、まずはあくタイプに対して体画変色2!」
テクスチャー2であくタイプに強いタイプに変えてきたか。だが、根本的な解決にはなっていない。あくタイプの技はハッキングされないことが分かっただけでも情報としてはかなり大きいだろう。なんせ、サイコキネシスで干渉しているってのが俺にバレちまったんだからな。
タネが分かれば対処も可能だ。
「リザードン、ソニックブースト」
リザードンは投げ飛ばした方へと急加速し、距離を詰めていく。
「力を溜めるのだ!」
めいそうか?
リザードンが距離を詰めて数瞬後にはゼロになるというに。
次は何を企んでいるのやら………。
「かげぶんしん」
サイコキネシスが関係しているのなら、まずは照準を合わせられないようにすればいい。ロックオンを使おうものなら、その手間をかけている間に落とすまで。
「空気を圧縮! 圧縮! もっとだ! もっと圧縮するのだ!」
ッッ!?
こ、れは…………!
いや………、失念していたな。
相手は第一位を模して戦っている。であれば、アレも戦法の一つとして用意していてもおかしくはない。
「今度は高電離気体、プラズマかよ………」
徐々に風が吹き出したかと思えば、ポリゴンZに掴みかかろうとした両腕は空を切った。
否、暴風に呑まれたのだ。
「リザードン、ぼうふうだ! 逆風を巻き起こせ!」
すぐさま逆風を起こしてポリゴンZが作り出す風を中和していくが、鬩ぎ合うに留まり、中々呑み込まない。恐らく、事前に溜めていためいそうによる効力アップが影響していると思われるが、それにしてはリザードンのぼうふうと同等とかおかしくないか?
「ぬふぅ! やるな、ハチマン! まさかここまでやるとは!」
「それはこっちのセリフだっつの! んだよ、プラズマって! 後ろにゲッコウガがいなかったら、あの黒髪ツンツン頭と同じように飛ばされてぐちゃぐちゃになってるぞ!」
今も後ろで俺を支えてくれているゲッコウガ。ポケモンの技でトレーナーにまで被害が及ぶバトルって何なんだろうな。これ、もはやバトル通り越して殺し合いになってない?
「Zよ、押し返すのだ!」
な………ッ!?
「黒い、翼……だと………!?」
おいおいおい!
それはマジでダメなやつだろ!
「ジージージージージージーッ!!」
急に黒いオーラがポリゴンZを包み込んだかと思うと、両腕を軸に黒い翼を生やした。そして、黒いオーラはそれだけに終わらず、今度は頭と胴体を繋ぐように移動していき、最後には尻尾のように胴体からメラメラといった感じで変化していく。ここにきてオリジナルかよ。
「ファイヤー………?」
「でも、黒いですよ………?」
「というかまさか彼までハチマンみたいになって………!?」
「それはないと思うわ。あれは似て非なるもの。参考にしているのがリザードンのアレってくらいじゃないかしら」
何度も吹き荒れる暴風により口数が少なくなっていた外野からでさえ、異常事態という認識が持たれるくらいにはザイモクザがやろうとしていくことはヤバい。
「お前、いつからだ!」
「なに、お主がゲッコウガやジュカイン、そしてリザードンを悉く姿を変化させていくのでな! ダークライやゲッコウガを参考に再現したわけよ!」
…………ほんと、誰だよこんな奴を野放しにしてた奴は。こういう奴こそ、使われるべきだろうに。俺ばっかり表に立たせやがって。
あー、なんかそう考えたらムカついてきたな。確かに有事の際には協力してくれていたが、結局前に立つのは俺だったんだし。美味いところだけ一緒に吸っていくこいつを一発やっても誰も文句言わないよな。
「やれぃ!」
「すー………はー…………リザードン、ソニックブースト」
ザイモクザの合図とともにかえんほうしゃに見立てた黒いオーラが飛ばされてきた。それを急加速して上に躱し、そのまま上昇していく。
「追うのだ!」
「まあ、追いかけて来るよな。リザードン 、エアキックターン」
身体を捻り反転して急停止させると、リザードンは勢いよく空気を蹴り、急下降し始めた。
「Z、超念波だ! 風を起こして巻き上げろぉぉぉ!」
サイコウェーブか。
なら………。
「トルネードドラゴンクロー」
ああ、なるほど。
さっきのプラズマもサイコウェーブを使っていたのか。凝縮にはサイコキネシスの併用ってところか? サイコキネシスの併用自体はできてもハッキングは難しいとなると、ハッキングが如何にすごいことなのかがよく分かる。
ほんと、よく思いつくよな。それだけは本当にすごいと思うわ。
「シャア!」
「躱すのだ!」
おおう、まさかの分裂かよ。確かにポリゴンZの身体は全て分離した状態であるが、今は黒いオーラでファイヤー擬きを作ってるんだぞ。そんなことしたら気味悪いじゃねぇか。
「あなをほる」
受け止められることもなく四肢分裂することで隙間を作り、そこを通されたリザードンはこのままだと勢いよく地面へと突き刺さってしまうだろう。
だが、丁度トルネード状態である。そのまま地面を掘り進めて移動した方が下手に回避するよりも次の攻撃に繋げやすい。
「ぬぅぅぅぅ、あのまま地面に突き刺さってくれておれば………」
「そう簡単にやられるかよ。それよりいいのか? 反射の守備範囲が狭まっているように見えるんだが?」
「ふん、それを仕掛けている張本人に言われるとイラッとするぞ!」
「そりゃ煽ってるしな。リザードン、れんごく!」
「そうはさせないのである! Zよ、全ての力を地面に対して放つのだ!」
地面の中で煉獄の炎を用意し、噴火をイメージした攻撃を仕掛けようとしたら、ポリゴンZの全力の体当たりによってあっさりと完成してしまった。リザードンの手間が省けたのはいえ、衝撃で一緒に掘り起こされてしまったのは計算外である。
まあ、それはザイモクザも同じことだろう。地面を割って強制的にリザードン を掘り起こしてみれば、煉獄の炎が先に噴出してきたんだからな。
「なっ………?!」
「確かにお前の発想は俺よりも上を行ってるだろうな。けど、拘り過ぎるが故に隙も多い。リザードン、ブラストバーン!」
「させぬ! 黒き炎で呑み込むのだ!」
反射をさせないということは、究極技レベルの技はまだ反射できないのだろう。というかそこまでできてしまったら無敵なポケモンになってしまうな。
究極の炎を黒いオーラが包み込んでいくが、その中ではどうなっていることやら。
「リザードン、無事か?」
「シャア………」
疲れは相当。
ダメージを受けているのもあるが、それ以上にプレッシャーが強かった。次は何を仕掛けてくるのか、どの技を使っているのか、頭も常に働かせていないと対処が難しい。そういう意味ではリザードンにとっても未だ脅威の相手となり得るのだろう。
いい刺激になっているのは確かだ。
「シャアッ!?」
と、突如。
黒いオーラの中からの一閃がリザードンを貫いた。
「リザードン?!」
ビリビリとリザードンの身体に電気が走っているのが見える。
これは、麻痺か?
ということは今の一閃はでんじほうってことだろう。
「ゴラムゴラム! Zの最後の悪あがきであるぞ!」
「どうやらそうみたいだな………」
段々と黒いオーラが消え去っていき、そこには地面に伏すポリゴンZの姿があった。
「ポリゴンZ、戦闘不能!」
いやほんと。
二度と戦いたくないわ。
何が嫌って、無駄に面倒なんだよ。こいつのバトルは。でもまだあと五体を相手しないといけないんだろ? 骨が折れるな…………。
「ふぅ、一体目からこれではしんどいんよ。しかも黒いファイヤーまで出てきおって」
「これでまだ一体目なんて………」
「ザイモクザ君………」
あ、どうやらしんどいのは観戦組もらしい。
そりゃ、そうか。場外の海水まで巻き上げてたり暴風を起こしたせいで、幾度となく飛ばされそうになってたもんな。
なんかほんとすまん………。
「………ギガインパクトを打ち付けたら噴火するとか我ビビったぞ」
「それはお前が悪い。人の策を勝手に発動させられたらこっちも計画が狂うっつの」
ポリゴンZをボールに戻しながら、ザイモクザが文句を言ってきたため、俺も言い返してやった。
マジで人の策を勝手に発動させやがって。手間は省けたが心の準備ってもんがあるでしょうよ。
「だが、これでリザードンも動けまい」
「確かにそうだな。麻痺したまま戦わせるわけにはいかないし」
「あれ? それじゃ…………ある意味ハチマンのリザードンを戦闘不能に追い込んだようなもんってことじゃ…………?」
まあ、そうなるな。
「「「「………………」」」」
コルニの呟きに観戦組が唖然としてしまっている。
確かに今までの公式バトルだとリザードンが負けることなんてほぼなかったからな。バトルから引くってことも中々ないし。
「まさかザイモクザの実力がこれほどとは…………」
「そう落ち込まないの、シズカちゃん。あの二人はそもそも発想の時点で別格だから」
おいこら、こいつと一緒にするなよ。
やだよ、こんな厨二病と一緒とか。
「ま、つーわけでリザードンもボールに戻っとけ。あとはゲッコウガが海水巻き上げて息の根を止めるから」
「シャア……」
『人を殺し屋みたいに言うのはやめろ』
冗談だよ、冗談。
流石にそんなことをされたら擁護のしようがないっつの。
取り敢えず、リザードンをボールに戻したが………次は誰を出すべきか。恐らく控えているのはエーフィ、ジバコイル、ダイノーズ、ロトム、ギルガルドだろう。無難なのはほとんどに弱点を突けるヘルガーであるが、今のを見る限り安直に考えてはいけないだろう。ここは少し捻ってジュカインにしとくか。ゲッコウガは緊急時に出てもらおう。
「ジュカイン」
「カイ!」
「いでよ、アブソル!」
え?
アブソル?
はっ?
「………お前、アブソルなんて連れてたか?」
「フフン! 我がポケモンを増やしていないとでも思っていたのだろう? だが、甘い! 甘過ぎるぞ、ハチマン! 我だって、我だって新しい仲間くらい欲しいもん!」
もん! ってお前な………。
ユイとかイロハがやるから可愛いんであって、お前がやったらただの気持ち悪い生き物にしか見えねぇぞ。何が悲しくでむさ苦しいデブの「もん!」を聞かなきゃならねぇんだよ。
「ああそうかよ。新入りってんなら、簡単にやられるのだけはやめてくれよ」
「ぬははははっ! それは心配ご無用! 我がお主とやるのに何の準備もさせていないポケモンを出すわけがなかろう! アブソル、巨角突き!」
調子の上がったザイモクザが先に命令を出した。
巨角突き。聞いたことはないが、あれはどう見てもメガホーンだろうな。
「ジュカイン、シザークロス。受け止めろ」
急突進してきたアブソルの頭の刃を腕を、ジュカインはクロスさせて受け止めた。
「ものまね使ってこおりのつぶて」
そのままいくつかの氷を作り出し、頭の刃を押し込もうとしているアブソル目掛けて放つと、最初の二、三発を受けると同時に身体を捻り躱してきた。
「下がって超念刃!」
そして、追撃する残り礫をサイコカッターで次々と斬り裂いていく。
あれから結構経ったし、ものまねで使える技の精度も高まってきている。それでも上手く捌いたということは、あのアブソルもやり手であるのは間違いない。
それよりも心配なのは、アブソルにも何かネタを仕込んでそうなことだ。ポリゴンZが一方通行ときてるからな。注意しておくに越したことはないだろう。
「ジュカイン、くさむすび」
ただ、出方を待っているだけでは後手に回ってしまう。できることなら、このままこっちを優位的に持っていけると楽だ。
「アブソル、超念刃で叩き斬るのだ!」
足元から伸びてきた蔦に絡みとられたアブソルは、再度頭刃から刃をいくつも作り出し、それを蔦の根本へと叩きつけていく。
「詰めろ、ジュカイン。リーフブレード」
その間にジュカインには距離を詰めさせた。
「鋼鉄の尾で迎え撃つのだ!」
ガキンッ! とぶつかり合う硬い音が聞こえた。ただそこから次の音はない。
鬩ぎ合っているのだ。
アブソルはジュカインの攻撃を受けても吹き飛ばず押し返そうとしている。言い換えれば、ジュカインでも単純な攻撃では突破できない相手であるのだ。
「じならし」
それならあっちの態勢を崩すのが先決だな。
ジュカインに足踏みさせて地面を揺らすと、アブソルがバランスを崩した。
「お返しだ。アイアンテール」
ジュカインは身体を回転させて、遠心力も込めた鋼鉄の尾でアブソルを弾き飛ばしていく。
「アブソル、大の字の炎で壁を作れぃ! 制御もなしだ!」
アブソルはアブソルで追撃を避けようと、飛ばされながら大の字型の炎をジュカインに向けて放ってきた。
ジュカインは炎に気付いて距離を詰めることなく、一旦俺の元へと跳んだ戻ってきた。
「カイッ………!」
ただ、戻ってきたジュカインは腕を押さえている。
「ジュカイン、それ………」
さっき攻防で腕に攻撃を受けていたのだろう。部位を見る限り、やられたのは鋼鉄の尾で受け止められた時か。これ程深く入るとなると、通常の攻撃だけではない何か………恐らく特性とかによる影響も出ていると見た。
「………となると、特性はきょううんか?」
「けぷこんけぷこん! 如何にも! アブソルの特性はきょううん! 急所を狙うのは造作もないことよ!」
フフン! と得意げに鼻を高くするザイモクザ。
やっぱり燃やしたい。燃やしてゴミ処理してやろうかな。
「なら、ジュカイン。こうごうせい」
晴れていることには晴れているため、回復量もそれなりを見込めるだろう。
「カイ!」
「よし」
スッキリという表情でアブソルに目を向けるジュカイン。どうやら火がついたらしいな。
「ふむ、では仕方ない。こちらも本気といこうか。アブソル、モード第二位! メガシンカ!」
はあ?
ザイモクザがメガシンカだと?!
ついにこいつもメガシンカを手にしてしまったというのか?
ザイモクザに限ってメガシンカで暴走させることなんてのはないだろう。何だかんだ自分のポケモンたちとは上手くコミュニケーションが取れている。変なことを吹き込まれてはいるが、それがバトルに役立っているのも事実であり、ポケモンたちも変わったバトルになったとしてもザイモクザを信頼しているのは知っているからな。
いやしかし、ザイモクザがメガシンカか。
「うそ………、ザイモクザ君が?」
白い光に包まれ姿を変えたアブソルは背中に二枚の翼を生やしていた。
あ、うん。
なんか理解できたわ。
「モード第二位で翼の生えたメガアブソルって………。結局そこかよ」
未元物質、ダークマター。
この世の次元とはことなる物質を作り出すとか云々の能力者だが、一方通行より再現難しくないか?
「まずは黒いオーラを纏うのだ!」
あくのはどう。
ある意味使い勝手のいい技だな。攻撃手段にもなるし、足場にもなるし。ザイモクザも俺が如何に使いやすくて多様していたかが分かったことだろう。まあ尤も、ダークライが黒いオーラを自在に操っていたからなんですけどね。
「それから超念刃!」
………なるほど。
そういう使い方ができたか。
「ジュカイン、攻撃は考えるな。まずはリーフブレードで叩き落とせ」
「カイ!」
黒いオーラを纏ったサイコカッターか。これで見た目は未元物質っぽくなってはいるな。
「カイ!?」
…………今ジュカインの腕の刃が空を斬ったか?
まさかとは思うが、オーラで軌道を操作していたり?
「カイッ?!」
珍しく技を外したジュカインに目がいっていると、ジュカインが背後から斬り付けられた。
これはもう、操作されていると見て間違いないだろう。
「ジュカイン、まもる」
ここは一旦防衛だ。
ジュカインが落ち着きを取り戻すためにも空白の時間がほしい。
さて、どうしたものか。
技に干渉できれば落とせるかもしれないが、ものまねを使ってもそれは難しいだろう。しかも黒いオーラのおかけでエスパー技は効かないはずだ。そうでなければ未元物質と称するには弱過ぎる。そこら辺はザイモクザだ。抜かりはない。
「はぽん! いつになく慎重ではないか、ハチマン! いつものドSたっぷりの攻めはどこへ行ったのだ!」
あの野郎………。
ああ、そうかよ。お望みならやってやるよ。
「ジュカイン、メガシンカ」
ポケットからキーストーンを取り出して、ジュカインの首に付けてあるメガストーンと共鳴させた。するとジュカインは白い光に包まれてメガジュカインへと姿を変えていく。それと同時、ジュカインを守るドーム型の防壁を襲っていた黒いオーラを纏った刃が次々と弾けて飛んでいった。
「ハードプラント」
「上に飛び跳ねろ!」
ジュカインが両腕を振り下ろすと、一拍遅れたアブソルが跳躍した。元いた場所には既に太い根が突き出しており、間一髪で躱されたのが窺える。
だが、それならそれでいい。ネタ元が分かった時点でフィールドが空に移行することも予想済みだ。
「こうそくいどう」
「未来を穿て!」
突き出した太根を高速で蹴り上り、上空へと移動したアブソルに一気に辿り着いた。
「ジュカイン、シザークロス」
「辻斬!」
おい、つじぎりはそのまんまなのかよ。
ジュカインの両腕とアブソルの頭刃が交錯すると中々な衝撃が下にいる俺たちのところまで伝わってきた。
「吹雪を起こすのだ!」
技の並行使用は当たり前か。
「球体型のまもる」
ゼロ距離から放たれる吹雪に対し、球体型の防壁を張ることで何とか致命傷を避けにいく。
だが、氷からは守れてもそれを伝える風の勢いまでは殺せなかった。そもそも空中にいるのだから風には煽られやすい。球体型の防壁により地面にぶつかった衝撃でのダメージがなかったことに喜ぶべきだろう。
と、上空から三本ほどの黒い光線が解き放たれた。
「………やっぱりか」
着地した時点ではまだ解除してなかったこともあり、防壁は黒い光線からもジュカインを守ることとなったのだ。
みらいよち。
さっきザイモクザが「未来を穿て」とか何とか言っていたような気がする。それがどこか引っかかってしまい、ものまねでミラーコートを使わせずに球体型の防壁を張るに留めることにしたのだ。長年の経験により蓄積された勘ってのは、ここぞって時に役立つよな。
「むう、まさか読まれているとは」
「ちょっと引っかかってたんでな。そういうこともあるかもしれないとは考えていただけだ」
「やはりお主は抜け目がないな。普通であれば横に捨て置く感覚を捨てずに考慮しているとは」
「そうでもしないといつ誰に狙われるか分からねぇだろ。俺は死にたくないだけだ」
「フッ、確かにそうであったな。では、改めて参ろう! アブソル、真なる力を目醒めさせよ!」
何だよ、メガシンカ以外にもまだ隠し球があるっていうのか?
「ッ!? ジュカイン、掘り起こせ! ハードプラント!」
アブソルの背中の翼が六枚に増えたかと思えば、そこからいきなり無数の光線が解き放たれた。
「カイッ!?」
ジュカインには太根で何とか壁を作らせたが、貫通して何発かがジュカインへと届いてしまった。
「これ、は………」
恐らくはかいこうせん。そして実証できるかは分からないが、翼が六枚に増えたのは部分的なかげぶんしんとかの類だろう。
なんて無駄に再現度を高くしてるんだよ。
でも、負けるわけにはいかないな。これで負けたんじゃザイモクザが図に乗るだけだ。
「ジュカイン、今からものまねで出す技は精度を求めなくていい。手数でいくぞ」
「カイカイ!」
メガアブソルの特性はマジックミラー。状態異常や能力変化を施す技を跳ね返してくる。だが、それ以外なら特別気にするような特性でもない。
「テレポート」
「アブソル、後ろである! 不意を突くのだ!」
ふいうちか。
何かしら対応してくることは読んでいるぞ。
「もう一度、テレポート」
「なっ?!」
人間、焦ると思考が止まるからな。今の内に仕掛けさせてもらうとするか。
「タネマシンガン」
一度目のテレポートでアブソルの背後を取り、振り向いて来たところを再度後ろへと回り込むことで、トレーナーの方を数秒だけでも無力化させる。
そこへ宿木をタネマシンガンで撃ち込み、当たった種から発芽させていった。
「黒いオーラで叩き切れ!」
それをアブソルは黒いオーラで一瞬にして消し去ったのだから、もはや未元物質の根源となりつつある黒いオーラは異常だ。ダークライですらそんな使い方しなかったぞ。
「エレキネット」
休む間も与えず、電気の網を投げつけた。
「ぬぅぅ、巨角突き!」
上から電気網に囚われたアブソルは下降していき、メガホーンで突き破る頃には地面に着地していた。
「くさむすび」
なので、早速地面から蔦を伸ばしてアブソルの四足から身体中に絡みつかせていく。
「ほのおのうず」
そして、炎の渦の中に閉じ込めた。蔦を導線にアブソルへと引火もしていることだろう。
「水を纏うのだ!」
おっと、水も操れたのか。ここまで水を動かせるということはみずのはどうか?
水を纏うことで鎮火したアブソルは距離を取るようにザイモクザの方へと下がっていった。
「ぜぇ、ぜぇ………ハチマン、お主もやるよのぅ」
どうやら今の攻防でザイモクザの方が先にバテたようだな。
「なんだよ、もうへばったのか? ここからだってのに」
「フン、久しぶりで昂っている証よ! アブソル、やれぃ!」
強がるのも昔と変わらんな。だが、やはり思考が単調になっているようだ。一直線すぎる。やることが手に取るように伝わってくるぞ。
「………まあ、それがザイモクザか。ジュカイン、気張れよ。ひかりのかべ」
六枚翼から放たれる無数のはかいこうせん。それを今度はひかりのかべを何枚も張ることで受け止めた。
「カイッ、………ガァッ…………クカッ………?!」
やはりそれでも貫通はしてくる。
まあ、狙いはそこにあるため予定通りではあるが、攻撃を受けてしまうジュカインには申し訳ない限りだ。一発の威力が威力だしな。
だが、それくらいしなければ未元物質を突破することもできないだろう。威力は低い技を絶え間なく撃ってみて分かったのは、どの技に対しても黒いオーラが付与されていることだ。俺はやっていなかった使い道をザイモクザは既に切り開いていたのだ。意図的ではないだろうが、参考にされているのは言うまでもない。
だからアレの脅威さが嫌と言う程分かってしまう。
「ーーーメタルバースト」
返し技でもミラーコートはまだ使えない。ボスゴドラから習得したメタルバーストがいいところだ。だが、それでいい。受けたダメージを返せればいいのだ。
「躱せぃ! 躱すのだぁぁぁ!」
恐らく無理だろう。
はかいこうせんを何発も連射しているのだ。連射できただけでも大したものである。
「くぅ………。アブソル、超念刃!」
直撃したことで足元をフラつかせるアブソル。それを見てザイモクザも唸り声を上げていた。
「ジュカイン、こうそくいどう」
黒いオーラに包まれた無数の刃が一気にジュカインと押し寄せてくる。
それを一瞬にしてアブソルの懐に入ることで躱した。
「辻斬!」
「けたぐり」
姿勢も低くしていたこともあり、前脚を崩すには丁度いい技だった。
「掴め!」
横殴りにアブソルの前脚を蹴り払うと、反転して仰向けの状態になったアブソルの腹にのし掛かり、顎と前脚を押さえつけさせた。背中の翼は二枚に戻り、これで今までの大半の技を使えなくなっただろう。ただ黒いオーラだけがジュカインを退かそうと蠢き始めている。
「ギガドレイン!」
そうした中で一気に体力を吸わせ始めた。
いきなりのことで黒いオーラも動きが止まり、徐々に身体をじたばたさせて足掻き始めている。
「アブソル!?」
遂には動かなくなり、メガシンカまでもが解除された。
ジュカインの勝ちだな。
「アブソル、戦闘不能!」
恐らく、ジュカインにとっては中々にないバトルだっただろう。最後なんて直接捕まえに行ったくらいだ。いつもならくさむすびで捕獲して斬るなり穿つなりするが、それが黒いオーラによって阻まれていたからな。しょうがないと言えばしょうがない。ただ、そういう相手も中にはいるってことが体験できただけでも充分な経験である。
「………カイ………カァ……………!」
それにしても相当のダメージをこっちも受けていたんだな。ギガドレインで残りの体力を吸わせたものの、疲弊しているのがよく分かる。
休ませてやりたいところだが…………嫌な予感がするんだよな。多分、ジュカインじゃなければ相手を弱体化できないと思う。
「どうする? 交代するか?」
「カイカイ………」
交代するか問うてみたら、首を横に振りやがった。
いつにも増してやれるところまでやってみたいという気持ちが強いのだろう。それだけザイモクザのポケモンを強敵と認めている証だ。
まあ、俺としてもそっちの方がありがたい。いかんせん、相手はザイモクザだ。メガシンカを使ってしまった以上、その特性を発揮させないで交代させてしまうのは惜しい。
「さすがハチマンよのう。第二位を再現してもそこに囚われない。真意を見抜くその眼は些か脅威であるぞ」
「アホ。元ネタを知ってれば予想はつくっつの」
「ほう、では次のポケモンも予想できておるのか?」
「エーフィとギルガルドではないことは確かだな。お前の本命であろう第三位を再現するには、そいつらでは無理だ」
「けぷこん! やはり鋭いな、我が相棒は」
「誰が相棒だ」
「では、我が本命の第三位の力を見せてやろうぞ! ジバコイル!」
やっぱりジバコイルだったか。
エーフィはでんじほうを使えるが第三位の能力とは合致しない。ギルガルドはそもそもでんじほうが使えない。となるとジバコイルかダイノーズかロトムということになるが、ロトムも何か違う気がしたのだ。そもそもでんじほうを覚えるのかも怪しいレベルだし。
まあ、消去法でジバコイルの方がイメージ的には合うかなと思ったまでのこと。
だからジュカインにはジバコイルも相手してもらえると割と楽なんだよな。
「第一位から始めてるし順番的には第三位になるが、いいのか? 相手はジュカインだぞ?」
「フン! 我らを舐めてもらっては困るというものよ! ジバコイル、砂鉄の剣!」
ザイモクザがそう叫ぶとジバコイルは砂嵐を起こして身を投じた。
「ジュカイン、にほんばれだ。天候を変えろ」
まあ、やりたいことは見え見えなため、こちらも天候を変えて抗ってみる。
「あ、あれって………!?」
「砂鉄、ですか………?」
砂嵐が晴れるとジバコイルは両側のU型磁石に砂鉄をかき集めて剣を作っていた。
「ふははははっ、あの一瞬でもこれだけのことができるのであるぞ! ジャイロ回転!」
そう言うや否やジバコイルが回転し出して、砂鉄の剣が振られてきた。
なるほど、単に砂鉄の剣を作って振りかざすのではなく、ジャイロボールで回転を加えることで技への干渉もできなくしてきているのか。
確かに幻想殺しもないからな。打ち消すこともできなければ、触れることすらままならないだろう。
とは言っても。対処しなければやられてしまうのが現状だ。
「ジュカイン、屈みながらつじぎり」
低い態勢で黒い手刀だけを突き上げ砂鉄の剣と交えると、案の定受け止められなかった。
「アイアンテール」
二撃目に対して鋼の尻尾を打ち付けると、今度はガチン! と弾ける音がする。どうやら鋼であれば砂鉄の剣にも通じるようだ。
「くさむすび」
即座にジバコイルの下から蔦を伸ばし、ジバコイルを絡め取っていく。
「ジャイロ回転!」
まあ、そう来るのは折り込み済みだ。俺でもそうしている。
「グロウパンチ」
だからこそ、先に次の手が打てるというもの。
ジュカインはジバコイルの真下に潜り込み、拳を突き上げた。同時に攻撃力が上昇していく。
だが、ジャイロ回転している相手には一発ではあまり効果がないようだ。
「砂鉄の渦に閉じ込めるのだ!」
そんなことを逡巡しているとジュカインが砂鉄の渦に閉じ込められた。あっちもあっちで来ると予想していたのかもしれない。
「ジュカイン、ほのおのうずで砂鉄の渦を焼き尽くせ」
その砂鉄の渦を炎の渦で呑み込み溶かしていった。
「ジバコイル、鋼鉄砲!」
頭上からはジバコイルが鋼の光線を放ってきている。
「かえんほうしゃ」
ジュカインは口から炎を吐き、鋼の光線を受け止めた。
技の相性ではこちらが有利ではあるが、こっちはタイプ一致でもなければ本来持ち技としているものでもないため威力が見劣りしている。しかも日差しも弱まってしまっているため炎の勢いが増すことはない。比べる対象なんて倣っているリザードンの炎しかないが、アレがそもそもおかしいため余計にそう感じてしまう。ただそれを分かった上でジュカインはものまねの領域を拡大させようと日々修練しているのだ。トレーナーである俺がそれを無視して判断を変えるのはおかしな話だろう。
俺に求められているのは、本来の技の八割程度で計算したバトルの組み立てだ。だから今必要なのは如何に鋼の光線を撃ち返すか。
「渦に使った炎も巻き上げろ」
炎の威力がないなら足す以外の選択肢がない。それは子供でも分かることだろう。
「ぬぅ。ならばジバコイル! もっと火力を上げるのだ!」
炎の渦が吐き出している炎を中心に集まっていき、炎の直径が広がっていく。それを見たザイモクザがジバコイルに更なる火力アップを求めてきた。
「………あれは?」
押し返されたいた鋼の光線が再度押し返してきた。ただ、さっきまで気づかなかったが、ジバコイルの身体は電気を纏っているようでバチバチと青い筋走っている。両側のU字型磁石にもまだ砂鉄が繋がっていた。
「………そういや、ジバコイルの特性はじりょくだったよな」
「うむ、如何にも」
「なるほど、青い筋は放電している証拠か。常時か?」
「どうやら気づいたようであるな」
「まあな。ネタは分かっているんだ。それをポケモンでどう再現するのか、その一点に尽きる。そして、お前はジバコイルの特性を活かしてほうでんで砂鉄を集めてジバコイルへと付着させていた。それだけのことだ」
ほんと、そういうところは抜け目ないよな。見た目から入る奴だし、拘りというものがあるのだろう。
ただ、ジバコイルがほうでんしているのならジュカインの特性が発動してもいいと思うんだけどな。やっぱりジュカインに向けて放たれてない且つ微弱だからなのだろうか。
「ジュカイン、5秒後に吐くのをやめてテレポートだ」
これ以上はジュカインも炎を吐き出すのが辛くなってくるはずだ。ザイモクザも何となくその辺に賭けていそうだし、こちらからアクションを起こしてみることにした。
「5.………4………3………2………1………やれ」
合図を出すとジュカインは炎を吐くのをやめて一瞬でその場を離れた。
「なぬ!?」
ザイモクザも状況が掴めていないようだし、今がチャンスだな。
「ジュカイン、連続でグロウパンチ。叩き落とせ」
「まずい!? ジバコイル、砂鉄を纏うのだ!」
俺の合図でようやく悟ったザイモクザが、上を見上げながらジバコイルに慌てて命令した。
だが遅い。ジュカインはアブソルと対峙した時に素早さを上げている。いくら空中であろうと、砂鉄を纏うまでにジバコイルの上に着地するだろう。
「カイカイッ!」
ほれ見ろ。
砂鉄より先にジュカインの拳が届いてるぞ。
「あっ………!」
あっ?
何だよ「あっ」って。砂鉄がジュカイン諸共覆ってしまっただけだろ?
「ッ!?」
と思ったらいきなり大爆発した。
はっ………?
大爆発?
自分がピンチになったらジュカインを巻き込んでの退場って算段なのか?
「…………ぬ、ぬははははっ! こ、こんなこともあろうかと事前に指示を出しておいたのである! ぬは、ぬは、ぬはははは………ははは………はは………………はい、完全に忘れてましたぁぁぁ!!」
最初は高らかに笑っていたザイモクザであるが、段々と皆の白けた視線に耐え切れなかったのか、ジャンピング土下座をかましてきた。
「いや、バトルだからいいんだけどさ。それも立派な作戦だし。ただそれをトレーナーが忘れるって、お前な…………」
さすがにお前だけは把握しておけよ。それくらい分かってることだろうに。何年ポケモントレーナーをやってるんだよ。
「トレーナーとしてどうなのかしら。あんな凄いバトルを見せていたのに、ザイモクザ君ならやり兼ねないと納得できてしまうのが怖いところよね」
ほら、ユキノも悲しい目を向けているぞ。
「一応コマチの師匠の片割れなんですけどねー。封印するべき?」
コマチに至っては存在そのものを封印しようとしているし。こりゃもう擁護のしようがないわ。
哀れ、ザイモクザ。
「えー、ジュカイン、ジバコイル、共に戦闘不能ー。…………最後が締まらんのよ」
ご尤もで。
なんかやられたという気にもなれない終わり方だよ。ジュカイン、なんかすまん。こんなバカの相手をさせちまって。
「で、結局なんて指示出してたんだよ」
「ジバコイルの頭にアンテナがあるであろう? あそこを攻撃されたら迷わず爆発しろとな」
「ジバコイルの攻撃が届かない位置だからか?」
「うむ、その通りである!」
「いつの話だよ」
「ジバコイルに進化した頃の話である。我も忘れていなかったことに驚いた」
先にお前が忘れてたくらいだもんな。
やっぱりこんなトレーナーなのに、ポケモンたちは律儀なところがあるんだよな。変な関係性だこと。
「………こりゃ後でガス抜きさせる必要があるかもな」
『それはオレに相手をしろと言っているのか?』
「お前がやられなければな」
『フン、言ってろ。敗北はユキメノコの時だけで充分だ』
「そりゃ頼もしいことで」
ジュカインをボールに戻しながら、後ろに控えるゲッコウガとそんな会話を繰り広げた。
そういえば、ゲッコウガがユキメノコにやられた時もこんな感じで、こっちが攻撃した瞬間に道連れにされたんだっけな。ジュカインはあの時ボーマンダと相打ちになっていたが。
「んじゃ、次だな。ヘルガー、よろしく」
「むむむ? ヘルガーだと? ハチマン、お主既に我が次に出すポケモンを知っておるのか?」
「残り三体。お前のポケモンでまだ出していないエーフィ、ギルガルド、ロトム、ダイノーズの中なら、どれが来てもタイプ相性が有利なのはヘルガーだからな。さすがにゲッコウガに三盾させるのはお前らに申し訳ないだろ」
まあ、第一位がポリゴンZで第二位がアブソル、第三位がジバコイルだったところから考えれば、次は第四位になるポケモンが出てくるのは予想できる。そして、俺の知るザイモクザが連れているポケモンの残り四体の中から第四位に沿わないのはギルガルドとダイノーズだろう。となると次に出て来そうなのはエーフィかロトムであり、エスパーやゴーストタイプに強いあくタイプのヘルガーが適任というわけだ。まあ尤も、アブソル同様新顔があれば俺の読みなんて外れてしまうんだが。そこまで言う義理はないから言わないでおく。
「我の次のポケモンは此奴である! 行くのだ、エーフィ!」
おっと、マジで正解だったか。順序を付けたがためにバトルしづらくなってないか? あくタイプ相手にエスパータイプなんてさっきのジバコイル以上にバトルの組み立てが難しいだろうに。
「第四位の力を見せてやるのだ! 原子崩し!」
すると、これまでのバトルで壊れたフィールドの破片が宙に浮いていった。
これは………サイコキネシスで操って、破片で攻撃か?
いや、それだったら原子崩しの再現にはならない。となるとサイコショックか?
けど、襲ってくる気配がないな。
取り敢えずはアレをやっておくか。
「ヘルガー、黒いオーラを纏っておけ」
「ヘガ!」
ヘルガーには黒いオーラ、あくのはどうを纏わせて擬似的にダーク化をさせておいた。これで動きがより活発化して、対処の範囲も拡大する。
ん?
そういや原子崩しって光線みたいなやつだったような………。
「ッ?! ヘルガー、ハイパーボイス! 破片を撃ち落せ!」
ヤバい。
サイコショックがプリズムの役割だっていうならマジでこの状況はマズい。
「ヘガァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」
耳を塞いで成り行きを見守っていると、マジで光線が飛んできやがった。
しかもプリズムを使って四散するだけに留まらず、他の破片を使って何度も方向を変えてきている。
「ッ、はあっ?! マジかよ………っ! ヘルガー、躱せ!」
ヘルガーの絶叫は確かに破片を撃ち落としてはいたが、やはり相手はエスパータイプということか。破片は落ちてもまた宙に浮いていく。ついでという感じで光線の方向を変えて絶叫を回り込むようしてヘルガーを捕らえられてしまった。
「ヘルガー、まもる!」
何度か躱したものの、両サイドから捕捉されてしまったため、防壁を張らせることにした。
「ヘゥッ………!」
次々と光線がドーム型の防壁にぶつかって行き、弾かれては破片に当たって方向を変えてまたヘルガーに向かって行くの繰り返しである。
「ヘガッ?!」
何度か凌いだものの、それが原因となりパリン! と防壁が割れた。そこからは予測不能な動きをする光線にバランスを崩され、一発もらったところから次々と襲われてしまった。
「…………」
いや………、久しぶりに言葉を失った。
まさかこんな攻撃になるとは。原子崩し恐るべし。一度捕らえられたらレールガンよりも脅威だ。あの予測不能な動きから、あの威力。まさか光線繋がりではかいこうせんだったりしないよな………?
「ヘルガー、まだいけるか?」
「ヘ、ガ………」
うん、これはヤバいわ。
擬似ダーク化して活発的になっていたヘルガーでさえ躱せず、黒いオーラでもダメージを軽減できていない。
早急に片付けないと第二波が来るだろう。
「ヘルガー、ほのおのうず。エーフィの視界を奪うんだ」
あれがはかいこうせんであったことに賭けて、次の攻撃まで幾ばくかの猶予があると読み、まずは炎の渦の中に閉じ込めることにした。
「エーフィ、超念力で炎を消すのだ!」
やはりそうなるか。
だが、それは囮だ。
「原子崩し!」
再度サイコパワーで破片が宙に浮いていくが、分かっていれば先にも動ける。
「ふいうち」
炎を消した後にヘルガーを探すこともしなかったザイモクザのミスとも言えよう。
エーフィの背後へと向かっていたヘルガーにより叩き飛ばされて行った。
「エーフィ!」
「フィアーッ!!」
効果抜群の技ではあったが、一発で戦闘不能にさせることは無理だったようだ。というかアレで戦闘不能になるような奴が原子崩しを再現できるわけがないか。
エーフィは飛ばされたところから帯電し、電撃を宙に浮く破片に飛ばしていった。
今度はでんじほうか。こちらの方がネタ元には近いような気がする。
しかし、こうなるとやむを得ない。
アレを使うしかないか。
「みちづれ」
さっきのを見る限り防壁を張ったところで意味がなく、躱すにもいずれバランスを崩して捕捉されてしまう。炎や黒いオーラで対処しようにも動きが予測不能なため、こちらの対処が追いつかない。
もはや逃げ道はないと言えよう。
ならば、こっちも相打ちを狙いに行くしか方法がない。
「………すまん、ヘルガー」
四方から撃ち抜かれたヘルガーはバタリと倒れた。
それと同時に向こうでもバタリと倒れる音が聞こえてきた。
どうやら間に合ったようだな。
致し方ないとはいえ、やはり気持ちのいいやり方ではない。
「ヘルガー、エーフィ、共に戦闘不能!」
まさかザイモクザにジュカインとヘルガーを持っていかれることになるなんてな。リザードンも麻痺して実質戦闘不能だし。普段バトルをしない奴に限ってこれだからな。怖い怖い。
「ヘルガー、お疲れさん。何の対抗策も思いつかなくて悪かったな。ゆっくり休んでくれ」
ヘルガーをボールに戻すとエーフィもボールに吸い込まれていた。
「さすがのハチマンも何の対抗策も思いつかなかったようだな」
「まあな。あくのはどうで擬似的にダーク化したところで、あの攻撃には何の意味もないことがよく分かった」
「そこで相打ちを狙いに行くのはさすがではあるがな」
「それもお前やユキノがそうしていたからだ。ゲッコウガがユキメノコにやられた時の衝撃は凄かったからな。咄嗟に出てきたのがあの時の映像だったんだよ」
ゲッコウガではないが、あれは忘れたくても忘れられないからな。あのゲッコウガがユキメノコに相打ちを取られるなんて考えてもいなかった分、衝撃は凄かった。ただ、あれから俺とバトルする時は相手がそういうやり方も視野に入れていると思ってバトルするようにはしている。いよいよ以って、俺もそういうやり方をやられる側になってきたんだと実感するわ。
あー……、たださっきのジバコイルは例外だな。あれはトレーナー側も忘れていた指示だから予想のしようがなかったわ。
「なるほどのう。して、次のポケモンは誰であるかな?」
『ヘルガーが倒されたんだ。次はオレが行く』
「だとよ」
どうやらゲッコウガも触発されたみたいだな。リザードンがやられ、ジュカインが倒され、ヘルガーも相打ちになるしかない相手だ。さぞゲッコウガもふつふつと闘志を漲らせていることだろう。
「では、行くのである! ギルガルド!」
さて、次はギルガルドか。
順番的には第五位、心理掌握に相当するんだろうが、ギルガルドでは中々想像できないな。そもそもあの巨乳は運動音痴だし、戦うというイメージがない。精神を操って人にやらせるというのが基本だし、混乱とかそこら辺を狙っているのか?
「これが第五位の力である! 心理掌握!」
ん?
今何かやったのか?
特にモーションもなければゲッコウガの様子も変わりないように見えるが。それとも本当に第五位よろしくリモコンで操作するようなことでも起きるのか?
「ギルガルド、ゲッコウガに跪かせるのだ!」
そういうとゲッコウガがスタッと片膝をついた。
なるほど、既にゲッコウガは操られているというわけか。となると俺も声とかをかけるべきか?
「聖なる剣を振り降ろせぇ!」
盾と一体になっていた刀身を抜き天へと掲げると、伸びた剣を振り下ろされた。
『………何を狙っているのかと思えば』
だが、ギリギリのところでゲッコウガが受け止めている。手には黒い手刀。
あいつ、最初から効いてなかっただろ。
「霊力が効いていないだと!?」
『フン、精神攻撃がしたければオレの魂を奪うくらいでないとな』
メロメロも効かないしな。
精神攻撃に関しては無敵と言ってもいいかもしれない。
「くっ………! ならば、オプション変更! モード楓の木!」
ん?
楓の木?
あのシリーズにはなかったと思うが。というか楓の木で何が起きるって言うんだ?
あ、ネタ元を変えたのか?
「毒竜!」
ヒュドラ………だと?
いや、ヒュドラ自体は色んな小説に出てきたりするが、敢えてここで出すということは何かの作品に移行したと見るべきだろう。
『うおっ!? 気持ち悪っ! 毒か、これ』
楓の木、毒竜………まさかな………。
地面から出てきた三メートル程の竜の姿をした紫色の何かがゲッコウガを襲うも、水を操作して浄化していた。さすがの対処力だな。判断が早い。
「アシッドレイン!」
と、今度は雨雲が発生して雨が降り始めた。なのに、紫色である。
『毒の雨……!』
これもやっぱり毒か。
あまごいに何か毒を発生させる技を付与しているのだろう。
下から来たかと思えば上から降り注ぐ毒。しかもギルガルドははがねタイプであり、毒の効果はない。何とも合理的な技の組み合わせであるな。
『チッ、毒をこういう使い方で付与してくるとか鬼畜すぎるだろ』
対してゲッコウガははがねタイプではないため、毒をもらってしまうってわけだ。ゲッコウガの方は水のベールで何とか防いでいるが、こういう手法が取れないポケモンは毒の雨だけでやられ兼ねないな。
まあ尤も、雨が降るということは毒を完封しているゲッコウガにも恩恵がいくことになるんだが…………。
「滲み出る混沌!」
あれは分身体か?
表現がアレなだけに大技かと身構えてしまうのは、ザイモクザ戦法の一つのアドバンテージと言えよう。
『それならこっちもだ』
ゲッコウガも分身体を作り出し、それぞれでギルガルドの分身体を潰しにかかった。
恐らく斬撃の技はせいなるつるぎだろう。ゲッコウガには効果抜群であり、間合いも広い。
「それは囮であるぞ。七ノ太刀・破砕!」
ぬっとゲッコウガ本体の背後から現れたギルガルドが刀身を大きく振り下ろした。一撃で仕留めるつもりだったのだろう。
だが、ゲッコウガが水の柱を作り上げたことで、斬撃は水流に持っていかれてギルガルドも呑み込まれてしまった。
『オレが単調に攻めているわけがなかろう』
同時に姿を変えたゲッコウガは黒い手刀を片手にギルガルドへと飛び込んでいく。
「一ノ太刀・陽炎!」
手刀が届く寸前、ギルガルドは消えた。
『チッ、ゴーストタイプ特有の能力か!』
悪態を吐きながらもすぐ様反転し、何もない背後を斬りつけた。
『感触が、ない………!』
「やはりお主もハチマンと同じで読みが早い。それを見越しての、ここである」
『ッ?!』
おお、まさかのただ消えただけだったとは。虚を突くとはこのことだな。
『ぐぁッ!!』
元いたところに姿を現したギルガルドに背後から斬り付けられたゲッコウガは地面へと叩き落とされてしまった。
「毒竜!」
そして、追い討ちをかけるようにヒュドラを作り出し、斬り付けられた部位へと噛み付いていく。
結局、あの技は何なんだろうか。絶対大技ではないだろうな。見た目が三メートル程の竜の姿をしているだけで。逆に何をどうやればあんな姿に作り替えられるのやら。ゲッコウガのあの無駄なパフォーマンスと同じ臭いがするのは俺だけだろうか。
まあ、今は置いておこう。
『ッ………!?』
起き上がったゲッコウガは背中に手を回している。
あれは毒だな。しかも猛毒っぽい。
『あの感じ、どくどくか?』
やられた感触で技を判断できるものなのだろうか。だが、猛毒っぽいし可能性は高いだろうな。
え、でもまさかどくどくで竜を作っちゃうのん?
あのギルガルド、絶対ゲッコウガ並みの無駄を楽しむ派だわ。
「それに毒の雨………。あまごいにどくどくってところか」
「如何にも! 第五位だけでは攻撃のやりようがないのでな。ギルガルドだけ、他の作品を混ぜてあるのだ!」
「さすがに歩く要塞だけは勘弁してほしいがな。楓の木の異常枠連中をポケモンバトルに活かすお前も相当な異常枠だぞ」
「ゴラムゴラム! 異常枠上等! 可愛いは正義なのである!」
「あーはいはい」
コイツのネタ元作品の選び方の基準は何なんだろうな。絶対好みのキャラがいたからとかだろ。スキルがバトルで使えるかどうかは二の次っぽい。ただ、表現してみたかった。それに尽きるのだろう。
『ハチ、やり口が分かったのか?』
「まあな。表現は大袈裟だが、やってることはお前ならそう難しいことでもない。ある意味、お前自身と闘っていると思ってもいいかもな。ただまあ、その傷と毒では長期戦はまず無理だ。速攻で堕とすしかない」
『なら、様子見もこの辺で終わりだな。どの道背中がずっとヒリヒリしているんだ。さっさと片付けてくる』
「ああ、行ってこい」
相手の強さが分かれば、ゲッコウガでも対処はできるだろう。何なら自分が相手だと言われれば尚更だ。自分が嫌がることをやればいいだけだからな。
「ギルガルド、ヴェノムカプセル!」
おい、毒を纏う気かよ。
いくらはがねタイプでも溶けないのか?
「マジでそれっぽいな………」
黒紫色の球体に身を投じたギルガルドは、砲弾さながらにゲッコウガへと突っ込んでいく。
「ほー」
ゲッコウガは場外の海水を集め、巨大な網を作り出した。
『エレキネットは使えないが、水をネットのように作り替えることはできるんでな』
そして分身体を増やし、その四方を掴んで巨大な砲弾を捕らえた。
『凍れ!』
続け様に吹雪が襲い、水の網が凍り始めていく。
「イージス!」
恐らく砲弾の中では防壁が張られたことだろう。しかも考えられるのはキングシールド。フォルムチェンジを行い防御力もアップさせているはずだ。
と、凍った砲弾に蔦が巻きつき始めた。
「くさむすびか」
となると次はアレかな。
『オラ!』
ゲッコウガから内なる光が迸り、蔦に火がついた。そしてそのまま凍りも溶かし始めて砲弾が火達磨になっていく。
「あ、雨も上がったのか」
これで火が消えることもなさそうだ。
あとは中から出てきたギルガルドがどうなっているかだな。恐らく、ダメージが一切入ってなさそうだけど。
「ぬははははっ! どうだ見たか! 鉄壁の守りを!」
砲弾は破壊できたが、ギルガルドはシールドフォルムへとチェンジしており、球体型の防壁を張っていた。
あ、キングシールドではなかったか。
「では、次はこちらから参ろう! 一ノ太刀・陽炎!」
『フン!』
同じ手は食わないとでも言うかのようにすぐさま背中の手裏剣を投げた。
「甘いわ! 同じ手を二度重ねるわけがなかろう!」
まあ、そうだよな。
次対策してくるのなんて分かり切ってることなんだから同じような動きはしないよな。
今度はゲッコウガの背後からギルガルドが現れ、その一太刀を振り下ろした。
「ぬぅ、姑息な………」
それをお前が言うか。
ギルガルドが斬り付けたゲッコウガは影であり、斬られた瞬間に消えていった。代わりにギルガルドの真上から黒い手刀が飛んできている。
「上だ! 四ノ太刀・旋風!」
ギルガルドが振り下ろした刀身を真っ直ぐと振り上げ、黒い手刀を弾いた。負けじとゲッコウガも左手から黒いオーラを飛ばすも、それを再度上から下に振り下ろすことで一刀両断。再び刀身が振り上げられ、ゲッコウガは消えていった。またしても影だったらしい。
「な、何故だ!? 何故斬れぬ?!」
ザイモクザもギルガルドも連続で空かしたことに動揺し始めている。恐らく、ゲッコウガの狙いはこの状況だろうな。
「お前が相手していたのは全部影だよ」
『オレが一番嫌いなのは見下ろされたバトルなんでな。これで終わりだ』
すると上空から水でできた鳳が落下してきた。
ありゃ、水神ルギアだな。
「ギルガルド、七ノ太刀・破砕!」
当然のごとく、ギルガルドは鳳を真っ二つに斬り裂くも触れた瞬間にギルガルドが凍りついていく。
「なっ………!?」
それには俺も驚きが隠せないでいるが、ザイモクザのは大袈裟すぎると思わなくもない。というかあいつはいつだって大袈裟か。
『それは衝撃が加わることで一気に凍るように仕掛けてある。これでギルガルドはブレードフォルムから姿も変えられない』
上から戦況を確認しながら影を操り、相手の動揺を誘っている間に上空で準備をしているとは。しかも仕掛けが今日は一段と手が込んでいる。何だよ、触れた途端に瞬間冷却とか。それでギルガルドを凍りつかせて動きを封じ、尚且つフォルムチェンジも奪う。えがつないわー。
『トドメだ』
凍った鳳諸共、ギルガルドを黒い手刀で薙ぎ払った。ドサドサドサと落ちていく氷に紛れ、ギルガルドも地へと落ちていく。
「ギルガルド、戦闘不能!」
様子を見に行ったコンコンブル博士が手を上げ判定を下した。
「お疲れさん」
『間に合うか賭けではあったがな。早い段階で動揺してくれて助かった。次は任せる』
「おう、休んでろ」
よく間に合ったものだ。
戻ってきたゲッコウガはふらふらもふらふら。今にもぶっ倒れそうというか今まさにぶっ倒れている。意識はあるが、相当毒が回っているらしい。
だが、ボールに戻る気はないようでキルリアがつんつんと突っついている。可愛いな、おい。
「ヤバいよ、ゆきのん。この二人異常だよ」
「あ、諦めるのよ。元々、この二人はそういう類の人種なのだから」
「いやいやいや、それにしてもですよ。なんですか、毒の雨って………。ヒュドラ? 何をどうしたら、ああなるんですかっ!」
「コマチ、頭痛くなってきたよ………」
「というかみんなして、ハチマンのポケモンも次に出せないくらいにはやられてることに何も言わないの!?」
ご尤もで。
コルニの言う通り、なんだかんだでみんな負傷して、次のバトルへの持ち越しができなくなっている。ジュカインだけがメガシンカして特性を活かせたがために二体連続で相手にしてられたが、リザードンとゲッコウガは戦闘不能にならずとも戦線離脱である。
これがイロハたち同士だったら普通の展開なのだが、対俺に関しては勝手が違う。実質相打ちという状況が作り出せるだけで、そいつの実力が相当レベルが高いと見られてしまうのだ。なんせ、チャンピオンにも勝ってる俺だからな。報道系の人間に情報がいけば、それだけでニュースにもなることだろう。マジでそうなったら俺は引きこもるぞ。
「どうだ? 俺とはまた違ったベクトルから来るだろ?」
「うむ、やり口は似ているがポケモンならではというものがあったぞ。中々に手強い相手であった」
「ならよかったよ。ゲッコウガにとってもギルガルドのやり口は刺激的だったろうし」
まあ総じて二度とやりたくはないが。
だって面倒臭すぎる。毎度毎度技が何なのかを見極めないといけないとか、誰が好き好んでやるんだよ。
「さて、次がいよいよラストだ。これでやっとお前とのバトルを終わらせられるな」
「はぽん! 久しぶりの刺激故、つい没頭してしまっていたが、もう終わりが近づいているとはな! さあ、ハチマン! 最後まで我らの全てをかけて相見えようぞ!」
しょうがない。
さっさと終わらせてリザードンたちを回復させることにしよう。
「ボスゴドラ」
「ダイノーズ!」
最後の一体はダイノーズか。となると外されたのはロトムということだな。
『ハチ、上から見ていて気づいたが、あいつは何か端末を使って随時こちらの動きを分析しているようだった』
「端末?」
ぶっ倒れているゲッコウガが俺を見上げて端末がどうとか言い出した。言う通りにザイモクザの方を観察すると奴の傍に確かに端末のようなものが動いていた。
「本当だ」
ということはあいつは戦闘中にあの端末から色々と情報を引き出していたということか?
ルール上、特に決めていない内容だし違反にはならないが………。そうか、恐らく渡したのはシトロン辺りだろうな。何やら仲良さげだったし。
「では参る! ダイノーズ、モード第七位! すごいパーンチ!」
ん?
すごいパーンチ?
第七位?
第六位じゃなくて?
てか、それよりも防御しないとか。
「ボスゴドラ、てっぺき」
チビノーズ三体を鉄壁で受け止めるも衝撃で後方へと弾き飛ばされていった。もの凄いパワーだな。
「もう一発ぅぅぅ!! すごいパーンチ!!」
今度は地面にひびが入り、破片が重力に逆らって昇っていく。
「ロックカットで躱せ」
単に受け止めるだけではこちらが不利になるだけ。ならば、ダメージを受けないように躱した方が後を考えると殊勝だ。
「色彩爆発!」
そのままダイノーズの方へと突っ込んでいくとカラフルな爆発が起きた。
あれ、もしかしてもしかしなくても第七位の謎の爆発を再現してるのか?
そもそもあれは攻撃用ではなかったような………。
「ドラゴンダイブ」
「超速度で躱すのだ!」
青と赤の竜を纏った突撃もダイノーズを目の前にして躱されてしまったか。技は恐らく素早さアップにロックカット、浮くためのでんじふゆうってところだろう。
後ろからはチビノーズたちも来ているし、ここはまずあの三体を落とすとしよう。
「アイアンテールでチビどもを薙ぎ払え」
「させぬ! ダイノーズ、完全防御!」
鋼の尻尾を振り回した瞬間、ダイノーズにより受け止められた。
「今だ! すごいパーンチ!」
そして三度目のすごいパーンチ。
恐らく破片が重力に逆らって昇っていく方はダイノーズによるげんしのちから。そして、げんしのちからの力で底上げされた攻撃力でばくれつパンチといったところだろうか。
はあ………マジで毎度頭をフル回転させるのが疲れてきた。
「だいちのちから」
振り返っているようでは反撃できないのは目に見えている。それなら、見なくてもいい技を出すしかないだろう。
ボスゴドラが地面を一踏みすると背中側に地面からエネルギーが放出した。しかも丁度チビノーズたちを巻き込んでいる。壁にでもなればと思ったんだがな。
「根性見せるのだぁぁぁ!」
いや、根性だけでどうにかなるのは特性だけだろ。
「ゴラァ!?」
と思ったが、まさかの根性で再攻撃してきた。
えー………、いつからお前らは根性論で片付けるような育て方にしたんだよ。ヒラツカ先生に弟子入りでもしたのん?
「………ったく、根性論まで真似しなくてもいいだろうに」
こうなった素早さを上げて、さっさと全員落としてしまおう。
「ボスゴドラ、ボディパージ」
身体を軽くしてちょっとでも回避能力を上げて。
「もう一発ぅぅぅ! すごいパーンチ!!」
「でんじふゆう」
そして身体を浮かしたところで、チビノーズたちが目の前にやってきた。
「カウンター」
どうせ来るのは分かっているんだし、毅然と待ち構えて打ち付けてきたところで反撃に出る。
チビノーズたちはボスゴドラに弾かれるように飛んでいき、ダイノーズへとダイブしていった。
「色彩爆発!」
距離を詰めると先程のカラフルな爆発を起こしてきた。やはりまだ倒れてなかったか。
「躱してばかぢから」
左に躱してから一直線に突撃していく。
弾け飛んだダイノーズは地面を二、三度バウンドしピタリと動かなくなった。チビノーズたちも固まっている。
「ダイノーズ、戦闘不能! よって、勝者ハチマン!」
恐らく特性はボスゴドラと同じがんじょうだったのだろう。というかチビノーズは攻撃したところで本体のダイノーズへのダメージにはならないってのが腹立つわ。数の暴力じゃねぇか。
「はあ………やっと終わった。もうやりたくない」
「ゴラァ……」
「お前もそう思うか? 出してきた技を予想するのも面倒だよな。ボスゴドラもお疲れさん」
ボスゴドラを労ってからボールへと戻すと、ザイモクザもダイノーズをボールへと戻していた。
「ハチマン、我らも強くなっていたであろう?」
「ああ、そうだな。強いというかウザいってのが本音だわ」
「あれー? ひょっとして我嫌われてる?」
「そう悲観することはないわよ。ウザいというのはそれだけハチマンを追い込むことができたということだもの」
「ユキノ、お前な………」
素直にそう褒めたらまたバトルしろとか言われるだろうが。俺もう嫌だからね?
「ハチマーン! やっぱりハチマンはすごいね! アレだけのバトルを冷静に対処してたんだもん! 僕にはついていくのがやっとだったよ!」
「トツカ、あれは慣れみたいなものだぞ。ザイモクザが使っていたのはネタ元を知っていたから対処できたまでだ」
知らなかったらどうなっていたことやら。それこそ、トツカみたいについていくのがやっとだったかもしれないし、対処するのもポケモンたちの勘に頼っていたかもしれない。
「トツカ氏よ、キーストーン助かったのである」
「ううん、いいよいいよ! それよりもすっごいバトルだったよ! ハチマンとあれだけできるなんてすごいことだよ!」
「そう言ってもらえると我もハチマンとバトルした甲斐があるというものよ」
お前、トツカからキーストーンを借りてたのかよ。通りで知らなかったわけだ。
「トツカ氏よ、トレーナーは才能が必要かもしれぬ。ポケモン側も才能が大部分を占めるであろう。しかし、お互いに強くなりたいと願うのであれば、それはきっと新たな力を生み出すことになるのだと思う。だがそれは、不明瞭で答えのない茨の道とも言えるだろう。だからトツカ氏よ。指示を出すトレーナー側が先に思考を止めてはならぬ。見聞を広め、知識と経験を蓄えるのだ。それがいずれお主らの武器となるであろう。………とハチマンの背中が雄弁に語っているぞ」
こいつ、トツカとコマチを送り出すためにこのバトルを吹っかけてきたのか?
それにしても俺を出汁に使うとは。もうちょっと自分の言葉ってことにしておけよ。
「最後くらい自分で締めろよ。俺を使うな」
「実に見事なバトルだったんよ。命の危険を何度味わったか」
「案外しぶといっすね」
「そりゃ簡単にくたばるわけにはいかんよ」
「ヘラクロスもご苦労さん」
「ヘラ!」
よくもまああれだけのバトルを間近にしてピンピンしてられるな、このヘラクロスも。やはり実力者のポケモンというだけのことはあるということか。
「まあ、コマチにとっては二人のバトルはハイレベルすぎて参考になりませんでしたけどねー」
「ぐはっ!?」
「ちょ、コマチちゃん!?」
おっと、ザイモクザに効果抜群だ。
コマチにはザイモクザの思いが伝わってなかったかー。
「でも、お兄ちゃんにもユキノさんたちの他に対等にバトルができる人がいるのが知れたのでよかったです。これで安心してお兄ちゃんを置いていけますよ」
「ちょっとー、コマチちゃんー?」
なんか巻き込まれて事故に遭ってるんですけどー。
よし、話変えよう。
「それで、ザイモクザ。バトルしている時から気になってたんだが、その端末? は何なんだ?」
「む? これであるか?」
『ボクはロトム辞典! ポケモンの知識ならお任せロト!』
おお、喋った。
てか、ロトムが入ってんの?
「おや、これはアローラのポケモン図鑑じゃないか! シトロン君にもらったのかい?」
「うむ、ただポケモン図鑑そのままだと運命力が働くかもしれないと言われて中身を別のシステムに変えてあるがな」
「ほほう、ロトム図鑑の正式名称はロトム・ポケデックスフォルムというんだけど、これはそのままそう呼ぶのかい?」
「それはシトロンに確認してみなければ分からぬが、インデックスから来ておるのか?」
「うん、そうだよ。ポケモン図鑑はある意味目次欄みたいなものだからね」
「インデックス………やはり我はあの作品と縁があるということか」
「なに? 禁書でも入ってんの?」
『容量は10万3000冊に該当するロト』
「まんまかよ」
何故そこでその数字が出てくるんだよ。つか、容量多すぎじゃね?
「はあ………今回はやけにあのシリーズに拘ってたみたいだが」
「どうせ超電磁砲を習得したのだから、他のレベル5もやっておこうかなと」
「おかけでもうお前とは二度とバトルしたくなくなったわ」
「ええー」
ええーって。
そんな残念がられても困るだけで嬉しくねぇよ。
「あれ? そういえばゲッコウガは?」
「あそこで爆睡中だ」
コルニが聞いてきたため、未だバトルフィールド場外で倒れているゲッコウガを指差した。
「ほんと自由だね」
「毒が回ってたからな。寝て回復してるんだろ」
「それなら早くポケモンセンターに連れてこうよ。リザードンたちも回復しなきゃでしょ」
「それな」
「では、話の続きはポケモンセンターでということにしましょうか」
ユキノの言葉で全員が移動の準備を始めた。
さて、リザードンも出せない俺はどうやって移動したらいいんだろうな。満潮時に近くてとてもじゃないが歩けないぞ?
行間
ヒキガヤハチマン 持ち物:キーストーン 菱形の黒いクリスタル etc………
・リザードン(ヒトカゲ→リザード→リザードン) ♂
特性:もうか
覚えてる技:かえんほうしゃ、メタルクロー、かみつく、おにび、えんまく、はがねのつばさ、かみなりパンチ、ドラゴンクロー、シャドークロー、つばめがえし、りゅうのまい、かみくだく、カウンター、じしん、フレアドライブ、ブラストバーン、げきりん、じわれ、だいもんじ、ソーラービーム、リフレクター、はらだいこ、ぼうふう、ねっぷう、あなをほる、れんごく、かげぶんしん
飛行術
・ハイヨーヨー:上昇から下降
・ローヨーヨー:下降から上昇
・トルネード:高速回転
・エアキックターン:空中でターン
・スイシーダ:地面に叩きつける
・シザーズ:左右に移動して撹乱
・ソニックブースト:ゼロからトップに急加速
・コブラ:急停止・急加速
・ブラスターロール:翻って背後を取る
・グリーンスリーブス:連続で攻撃して空中に釣り上げる
・デルタフォース:空中で大きな三角形を描くように連続攻撃
・ペンタグラムフォース:空中で五芒星を描くように連続攻撃
・バードゲージ:スピードを活かして相手の動きをコントロールしていく
・スモール・パッケージ・ホールド:背面飛行で相手の下を飛行する
・ゲッコウガ(ケロマツ→ゲコガシラ→ゲッコウガ) ♂
特性:きずなへんげ(へんげんじざい→きずなへんげ)
覚えてる技:みずのはどう、あなをほる、かげぶんしん、れいとうパンチ、れいとうビーム、つばめがえし、ハイドロポンプ、くさむすび、グロウパンチ、えんまく、がんせきふうじ、いわなだれ、まもる、かげうち、みずしゅりけん、どろぼう、つじぎり、ハイドロカノン、めざめるパワー(炎)、とんぼがえり、とびはねる、ほごしょく、けたぐり、ぶんまわす、あくのはどう、どろあそび、ふぶき
・ジュカイン(キモリ→ジュプトル→ジュカイン) ♂
持ち物:ジュカインナイト
特性:しんりょく←→ひらいしん
覚えてる技:でんこうせっか、リーフストーム、リーフブレード、ドラゴンクロー、タネマシンガン、ギガドレイン、かみなりパンチ、スピードスター、くさむすび、ソーラービーム、エナジーボール、シザークロス、くさのちかい、マジカルリーフ、タネばくだん、こうそくいどう、つめとぎ、いやなおと、こうごうせい、くさぶえ、やどりぎのタネ、グラスフィールド、なやみのタネ、ハードプラント、つばめがえし、ものまね、みがわり、じならし、アイアンテール、けたぐり、つじぎり、グロウパンチ、まもる
・ヘルガー ♂
持ち物:ヘルガナイト
特性:もらいび←→サンパワー
覚えてる技:かみつく、ほのおのキバ、ふいうち、おにび、かえんほうしゃ、かみくだく、れんごく、ほえる、はかいこうせん、アイアンテール、あくのはどう、みちづれ、だいもんじ、ハイパーボイス、ヘドロばくだん、ちょうはつ、ほのおのうず、まもる
・ボスゴドラ ♂
持ち物:ボスゴドラナイト
特性:がんじょう
覚えてる技:ロックブラスト、あなをほる、なげつける、メタルクロー、アイアンヘッド、アイアンテール、てっぺき、メタルバースト、ボディパージ、ヘビーボンバー、ロックカット、ほのおのパンチ、もろはのずつき、ラスターカノン、ドラゴンダイブ、でんじふゆう、だいちのちから、カウンター、ばかぢから
・キルリア(ラルトス→キルリア) ♀
特性:シンクロ
覚えてる技:リフレクター、ねんりき、まもる、テレポート、マジカルリーフ、シャドーボール、マジカルシャイン、トリックルーム
ゲッコウガ
・ニダンギル(ヒトツキ→ニダンギル)
特性:ノーガード
覚えてる技:ラスターカノン、せいなるつるぎ、つばめがえし、かげうち、つじぎり、シャドークロー、きんぞくおん
・キリキザン
特性:まけんき
覚えてる技:つじぎり、くろいまなざし、ロックカット
・アギルダー
特性:うるおいボディ
覚えてる技:スピードスター、むしのさざめき、ギガドレイン、みずしゅりけん、こうそくいどう、かげぶんしん、こころのめ、はたきおとす、バトンタッチ
・ダンバル(色違い)
ザイモクザヨシテル
・ポリゴンZ(ポリゴン→ポリゴン2→ポリゴンZ)
特性:てきおうりょく(トレース→てきおうりょく)
覚えてる技:トライアタック、でんじほう、ロックオン、じこさいせい、テレポート、れいとうビーム、かえんほうしゃ、はかいこうせん、テクスチャー2、こうそくいどう、でんじは、かげぶんしん、テクスチャー、めざめるパワー(水)、サイコキネシス、エレキネット、サイコウェーブ、あくのはどう、ギガインパクト、めいそう
・エーフィ(イーブイ→エーフィ) ♀
特性:シンクロ(てきおうりょく→シンクロ)
覚えてる技:でんじほう、サイコキネシス、はかいこうせん、シャドーボール、めいそう、サイコショック
・ジバコイル
特性:じりょく
覚えてる技:でんじほう、ロックオン、ジャイロボール、エレキフィールド、かげぶんしん、めざめるパワー(炎)、テレポート、ほうでん、ラスターカノン、だいばくはつ、すなあらし
・ダイノーズ ♂
特性:がんじょう
覚えてる技:でんじほう、ロックオン、マグネットボム、てっぺき、めざめるパワー(地面)
・ギルガルド(ヒトツキ→ニダンギル→ギルガルド) ♂
特性:バトルスイッチ
覚えてる技:てっぺき、きりさく、つばめがえし、せいなるつるぎ、ラスターカノン、つじぎり、キングシールド、めざめるパワー(鋼)、シャドーボール、れんぞくぎり、どくどく、あまごい、かげぶんしん、まもる
・アブソル
持ち物:アブソルナイト
特性:きょううん←→マジックミラー
覚えてる技:メガホーン、サイコカッター、アイアンテール、だいもんじ、あくのはどう、とびはねる、みらいよち、つじぎり、ふぶき、はかいこうせん、ふいうち、みずのはどう、かげぶんしん
控え
・ロトム(ポケデックスフォルム) ロトム辞典
特性:ふゆう
覚えてる技:ほうでん、めざめるパワー(草)、シャドーボール、でんじは