ポケモントレーナー ハチマン 〜ぼーなすとらっく集〜 作:八橋夏目
「たのもーっ!」
デオキシス襲来から二週間が経ち、まだまだリーグ大会の余韻が街中を漂っている今日この頃。
……………非常に声にしづらいのだが、SMの女王様がムチを片手にやって来た。
「えっと…………どちらさんで?」
「ああっ!? ようやく見つけたわよ! ヒキガヤハチマン!」
ええー………無視ですか。
「………こちらの質問に答えなければ不法侵入とみなして通報しますよ」
「なっ?! 相変わらず憎たらしいガキね!」
相変わらずということは以前会っているのだろうか。
ダークライにより記憶を全部戻ってきた今、思い出せるはずなのだが、全くといっていい程ヒットしない。
「あなた、わたしの顔を覚えてないとでも言うの?」
「知らん」
「ガク………、いいわ。教えてあげる。わたしはフスベジムのジムリーダー、イブキよ!」
フスベジムのジムリーダー。
つまりジムリーダー。
…………………こんなんだったっけ?
「…………」
ただの痴女だよな。
どこからどう見ても。
それかスポーツジムのトレーナー。でもこの格好で来たんだからやっぱり痴女か。
「ハチマン、ヒャッコクシティの復旧活動についてなのだけれど………あら? お取り込み中だったかしら?」
「あー、いや、なんかフスベジムのジムリーダーを名乗る痴女が道場破りに来たみたいでな」
ユキノがタイミング良く戻ってきた。その手にはいくつか資料が抱えられている。
俺は取り敢えず彼女にもこの痴女の怪しい素性を伝えてみた。
「痴女じゃないわよ!」
「…………ドラゴンタイプ専門のジムリーダー、だったかしら?」
「ええそうよ。兄者は最強のドラゴン使いのワタルよ!」
「…………挙動、容姿、兄者発言を見るに恐らく本人で間違いなさそうよ」
「マジか………。まだその痴女プレイをやってたんだな」
変な格好のジムリーダーっていう風に記憶されていたのだが、今思い返してみると痴女だわ。目の前にいる格好が昔と変わっていない。昔と変わっていないということはこの姿のまま歳を重ねているわけであり………………………二十歳超えてたよな………………ヒラツカ先生と同年代なんじゃ……………。
「あなた、よく本人の前で言えるわね」
「んー、なんか段々と思い出して来たぞ。確か、俺がジョウト地方のジム戦巡りをしてる時に行ったはずだ。ジョウト地方最強のジムリーダーなんて噂もあったが、アサギジムのミカンの方が強かった印象があるな」
「うぐっ…………」
うん、段々と見えてきた。
同時は理由を知らなかったが、確か仮面の男事件の後だったようでチョウジジムが閉鎖されていて、残る七つのジムの中では最強と謳われていたはずだ。事件報告書を読んだことあるが、チョウジジムのジムリーダーの強さは異常だ。ホウオウとルギア相手にデリバードたちで捕獲にまで至ったとか、俺でも無理だわ。
「で、結局いきなり来て何の用すか? 今結構忙しいんで緊急でないのなら後にしてもらえます?」
リーグ大会も荒業ながら無事閉会までいき、ようやくカロスに日常が戻ってきたところなのだ。ミアレシティもヒャッコクシティもこれから復旧作業が本格化していくため、俺たちもバックアップをしていかなければならず休む暇もない。だからこんな痴女を構ってる暇はないんだけどな。
『ハチ、野生のラルトスがいたところのマッピング終えた…………おい、なんだこの痴女は』
あ、ゲッコウガも戻ってきた。
奴には今ラルトスの親を突き止めてもらっている。いくら俺に懐いたとはいえ、元の親に顔は見せる必要があるだろうし、本人次第では親元に帰したいとも考えている。
「だ、だから痴女じゃないし! ってか、えっ? ポケモンが喋った?!」
いちいち反応がデカい人だな。
「………ユキノ、それハルノからの報告書だろ?」
「ええ」
「目通しておくから、悪いがそこの痴女の要件聞いといてもらえるか?」
「はあ………分かったわ」
取り敢えず、痴女のことはユキノに任せてハルノの報告書に目を通すことにした。
ハルノは今ヒャッコクシティの方で活動している。ヒャッコクはハルノが主導で復旧活動を、ミアレはユキノが主導で復旧活動を行なっている。そして俺はその二人の統括というトップとしての役割を担っており、二人からは経過報告書を逐次出してもらい状況を把握しているのだ。
現場監督も大変だろうが、総括ってのもくそ面倒な作業だわ。
「ヒャッコクシティの瓦礫処理も終わったみたいだな。早期復旧が可能なものから手をつけ出したか」
ヒャッコクの住民は今無事だった建物(ほとんどなかった)や隣街のフウジョタウンやレンリタウンで生活している。ミアレはハクダンシティとクノエシティが受け皿となってくれているし、元々無事な建物もヒャッコクよりはあったため、こっちも何とか住民の生活はどうにかなっている。どちらもこれからは街の再建が中心となってくるのだが、人手と時間が足りない。あまり避難生活を長引かせるわけにもいかないし、かと言って欠陥建造物にするわけにもいかないため、その匙加減が難しいところである。
「取り敢えず、バトルして一旦頭を空にするか」
今ここで考えてたってしょうがない。出ないものは出ないのだから考えるだけ時間の無駄だ。休憩がてらバトルしてスッキリすることにしよう。
「ゲッコウガ、ラルトス、いくか」
『はいよ』
「ラール!」
お、なんだ?
抱っこか?
全く可愛い奴め。
「ほれ」
「ラルラル!」
娘ってこんな感じなのかね。
なにそれ、超いいじゃん。
やっぱ可愛いは正義だわ。
一通りハルノの報告書に目を通した後、ラルトスを抱っこしてゲッコウガと共に建物の外にあるバトルフィールドへと向かった。
ユキノたちの方へ向かうと意気消沈している痴女がいた。
一体ユキノに何を言われたんだろうか。ユキノから事情を詳しく聞いてみると………。
「で、つまり以前俺とバトルしてボロ負けした挙句、ボロカス言われたことを根に持っていて、この前の大会の中継で俺がカロスにいることを知り、仕返しに来たと」
「ええまあ、要約するとそんな感じね」
「話を聞きながら色々思い出したが、確かあの頃にリザードンの飛行技が完成したんだ。多分、トレーナー戦で初めて使ったんじゃねぇかな」
「……………それはお気の毒ね」
「しかもあの頃の俺って………」
「強い相手にしか興味なかったものね」
フスベジムといえばカントーのジム戦巡りをした後、ジョウトのジム戦巡りを行い、その七つ目のジムとして行ったはずだ。その頃の俺はポケモンの技以外の技を取り入れることで、手持ち一体という不利な状況の穴埋めをしようとしていた。そして丁度フスベジムで対人戦を初経験したのだ。それまでは攻撃的な野生のポケモンたちを相手に技の精度を上げていたが、まあ対人戦においては酷いことになった覚えがある。反則にはならないため、こちらの攻撃は面白いくらいに通るし、相手の攻撃は全く入ってこないのだ。
で、その被害者第一号がこの痴女改めイブキさんらしい。
「「……………………」」
いやー、そりゃ誰でも根に持つわな。
いつも通り挑戦者の相手をしてたかと思ったら、トチ狂った戦法に翻弄された挙げ句、惨敗。俺だったら心折れてただろうな。しかも最強とか謳っておきながらこの程度かよ的なことを言われたんだろ? それでよくジムリーダーを続けられてたよな。ある意味鋼の精神だと思うぞ。
「えっと、イブキさん。なんかすんませんでした」
つくづく俺も人が悪い。
謝ってはいるが、特に悪いとは思ってないし。
「え、あ、や………」
「けど、よく来ましたね。今の俺がどういう存在かもちろん知ってるんでしょ?」
カロスの大魔王様ですよ?
泣いていいよね。
「と、とにかく! わたしとバトルしなさい!」
「ええー、面倒くさい………」
「ほんと腹の立つ男ね………。憎たらしいったらありゃしない」
ほんとのこと言っただけなのに。
俺今の今まで働いてたの。それをまた働けっていうのん? ただでさえ復旧活動で休みないのに? 俺死ぬよ? 死んじゃうよ? コマチもトツカもヒャッコクで癒してくれるのなんてラルトスだけよ? なのに何が悲しくて身を削る必要があるんだよ。
『さっさとやってさっさと終わらせればいいだろ』
「ちょっとー、人の心読まないでくれます?」
実は接続してましたとか言わないよね?
お前出来ちゃうから怖いんだよ。
「そうね。物分かりの悪い人には身体で教え込んであげるのが筋ってものよ」
えぇ………ユキノさんまでそれ言っちゃう?
俺来た時には既にやってるよね、あなた。怖いんだけど。
「はぁ………分かりましたよ」
「なら、あなたはリザードン一体ね」
「はっ?」
いやいやいやいや。
なして最初からハンデがあるとね?
そこまでするならこっちだって拒否する権利くらいあるぞ!
「それは少々ハンデがありすぎなのでは?」
『ハチ、リザードン一体でも余裕だろ』
「そりゃ今のあいつなら余裕だろうけど」
『ならそれで心を折ってやれ。そして二度と逆らえないようにしてやればいい』
「………お前、どんだけ性格悪いんだよ」
『面倒事は徹底的に排除する。それだけだ』
「へいへい、分かりました。やりますよ」
下手したらゲッコウガが何かやり兼ねないからな。ある意味一番相手をさせてはいけないポケモンだし。下手したらイブキさんジムリーダー辞めるからね?
「言っときますけど、手加減とかできないんで」
「逆に手加減されたんじゃ屈辱よ」
ま、俺からしてみれば今のリザードンも同類だけどな。
でもそこはほら、イブキさんのご指名だし。
「審判は私が務めるわ」
審判はユキノに任せ、俺たちはフィールドの立ち位置へと移動した。
「過去のジム戦が原因のようだし、ジム戦のルールを取り入れるわ。ルールは公式通り、技は四つまで。ハチマンはリザードンが戦闘不能になったら負け。イブキさんは手持ちのポケモンが全て戦闘不能になったら負け。あとジムリーダーなので交代もなしとします」
ルールはイブキさんから話を聞いたユキノが勝手に取り決めた。
「それでいいわ」
「もう好きにしてくれ」
俺としては何でもいいんだけどね。強いて言えばこのバトル自体を無くしてほしいくらいかな。無理だけど。やるって言っちまったし。
「いくわよ、クリムガン!」
「手加減無用だ、リザードン。容赦なく潰してやれ」
うわ、最初から色違いとか出して来やがった。
「クリムガン、きりさく!」
クリムガンが両爪を伸ばして襲いかかって来た。
けど、はっきり言って遅すぎる。
「ドラゴンクローで受け止めろ」
昔オーダイルが暴走した時と同じように、両爪の間に竜の爪を差し込み受け止めた。
「シャアッ?!」
ん?
今リザードンにダメージが入らなかったか?
だが爪は受け止めた。
となると他に原因となるのは…………特性か。クリムガンの特性にはさめはだが有ったはず。ということは触れただけでダメージが入ると思っていいな。
なら、なるべく触る回数を減らすか。
「かかったわね。クリムガン、げきりん!」
クリムガンは竜の気を暴走させた。
爪を受け止められること前提で練られた戦略なのだろう。
だが甘い。
「リザードン、じわれ」
触る回数を減らす。
つまり、一撃で倒せば何の問題もない。
リザードンは左爪を引き抜き、同時に身を屈めると、前のめりになっていたクリムガンのバランスを崩した。そして、勢いを利用し右腕を後ろに倒しクリムガンを地面につけ、振り向きざまに左の拳を地面に叩きつけ地割れを発生させる。クリムガンは呆気なく呑み込まれ、出てきた時には目を回していた。
「なっ…………?!」
いきなり一撃必殺を使われたことでか、イブキさんの顔が青ざめている。
「クリムガン、戦闘不能」
ユキノは淡々と判定を下した。
俺は先に確認してるからな?今の俺がどういう存在なのか分かって来たのかって。それを無視したんだから自業自得である。
「くっ…………一撃必殺を使うなんて聞いてないわよ!」
「いやいや、リーグ大会でもチャピオン相手に使ってますから。ちゃんと調べて来ないそっちが悪いんでしょうに。よくそれでリベンジしに来ましたね」
「ふん、一撃必殺なんて当たらなきゃいいのよ! ギャラドス!」
ギャラドスの特性はいかくか。
じわれに対してひこうタイプで対抗して来たんだろうな。
けど、ギャラドス相手ならもっといい技がある。
「ハイドロポンプ!」
まずは水砲撃か。
この程度の威力なら突っ切れるな。
「トルネードドラゴンクロー」
竜の爪を前に出し、高速で回転しながら水砲撃を弾いていく。効果抜群の技ではあるが、ゲッコウガの水砲撃を受けるのとは訳が違う。あいつのははかいこうせん並みと思っていい。そんなもんを突っ切ろうなんて思わないが、ギャラドスのはそこまでの威力がないようで、勢いも足りない。爪で弾けるしダメージもないに等しい。五年近くでここまで差が開いてしまうとは、それだけ濃い体験をしてきたということなのだろう。
「くっ、アクアテール!」
それは能がないぞ。
ただ単に突っ込んでくるようじゃ躱すのなんて朝飯前だっつの。
「リザードン、躱してかみなりパンチ」
水のベールに包まれた尻尾は地面に叩きつけられた。
単調な一直線の攻撃は身体を捻って、姿勢を低くすれば上手く躱すことができる。
リザードンは振り向きざまに電気を纏った右拳をギャラドスへと叩きつけた。
「ギャラドス!?」
地面にクレーターができる程の威力。
メガシンカを失ってからはこれが通常運転だ。はっきり言ってメガシンカしてた頃よりも強い。リザードン曰くメガシンカを失ってから身体が軽くちょっとした力で今のようになってしまうらしい。
レシラムになった名残なのかもしれないし、抑えられていた力が一気に解放されているだけかもしれないが、本人が快調だというのだから特に問題はない。
ただここにもうかが発動したらどうなってしまうのかちょっと心配である。主に周りへの被害が。
「ギャラドス、戦闘不能」
ふぅ。
これがジムリーダーか。
こっちに来てからジム戦なんてビオラさん、ザクロさんとコルニ相手にしかして来なかったし、前二人は本気すら出してなかったからアレだけど、正直弱いな。あ、言っちゃった。口に出してないからセーフだよね?
「あの、まだやります?」
「や、やるに決まってるじゃない!」
あ、ちょっと気落ちしてるな。
可哀想だが本人がやる気を示している以上、こっちも要望通り手加減なしで続けるしかないな。
「行きなさい、ハクリュー!」
三体目はハクリューか。綺麗なポケモンだよな。
「でんじは!」
麻痺狙いか。
でんじははその名の通り電磁波だ。つまりは波。波は発生してから目標に到達するまでの距離に応じて時間も変化する。距離が遠ければ遠い程時間がかかり、波も弱くなる。弱くなるということは効果も弱くなるということであり…………。
「ハイヨーヨー」
届く前に上空に逃げてしまえば何も問題はない。
「りゅうのいぶき!」
リザードンが急下降に移ると赤と青の色を持つ息吹を吐いてきた。
こっちも麻痺を付与する追加効果を持った技だ。そんなにまでしてリザードンを麻痺させたいのか?
「ブラスターロール」
息吹を翻って躱し、急下降を続ける。
「ハクリュー、躱してげきりん!」
こっちが仕掛ける前に急上昇して通過されてしまった。
だが、それくらいなんてことはない。こっちにもそれに対応できる動きは持ち合わせている。
「エアキックターンからのトルネードドラゴンクロー」
地面すれすれのところで反転し、踏ん張る力を利用して一気に急上昇していく。踏ん張る力が強ければ強い程、空気を蹴る力も高まり、より加速する。上から竜の気を暴走させたハクリューが降ってきているが、それも竜の爪を高速回転させて受け止めた。
「スイシーダ」
リザードンの回転に巻き込まれたハクリューは竜の気を霧散させてしまい、その隙にリザードンは翻り上を取り返した。そして、竜の爪で地面に叩きつけるとまたしてもクレーターができてしまっていた。
本日二個目。ヤバいね。
「ハクリュー!?」
「ハクリュー、戦闘不能」
さて、あと何体出て来るのやら。
ハクリューをボールに戻すイブキさんの目は若干うるうるしている。
うーん、これでヒラツカ先生と同年代…………あの人もこんな姿見せるのだろうか。ちょっと見てみたい気もするが、見たら見たで後が怖い。主に物理的な意味で。
「…………昔もこうだったわ。ドラゴンという聖なる力を宿すポケモンを前に独自の戦法で力を奮う前に倒す。今までバトルしてきた相手には一人もいなかったわ。あの兄者ですら、こんな戦法見せたことない。あなたは、一体何者なのよ………?」
………本当の目的はコレなのかね。
以前バトルした中で不本意ながら明らかに強い印象を残した俺がカロスのトップになっているのを見て、俺の正体を探ろうとしているのかもしれない。ま、それはそれでいいんだけど、多分コテンパンにされたのを根に持っているのも事実なのだろう。だからこそ覚えていたと言っても過言ではない。
「あー、まあ俺もリザードンも普通じゃないんで。イレギュラーな存在っていうとなんか異世界人みたいに聞こえるからアレですけど、普通のトレーナーとポケモンでは絶対に成し得ないものに、不本意ながら手を染めてましたから」
「それは今も?」
「一生ですよ。治りません。条件を揃えなければ回避出来るってだけの代物です」
「………やっぱりあなたは倒さなくてはいけないわっ! ジムリーダーとして!」
これまた正義感の強いことで。
恐らく今の会話で俺が変な組織の一員だって思っているのだろう。そりゃ過去には『一員』になっていたが、今は裏がない。完全なるフリーである。だから悪者扱いされても困るんだよなー。
「そりゃ困りますね。無実の罪を着せられるのは周りが口うるさいんで。………それに、あなたの兄者とやらもやらかしてませんでしたっけ?」
「うっ…………」
「ジムリーダーに向けてこういうのも何ですけど、もっと視野を広く持つべきですよ。導く者としてまだまだです」
「…………ほんとムカつく男ね」
「偶に言われますよ」
よくと言わないだけ褒めてほしい。
昔はよくだったと思うが、最近はそういうヘイト対象にもならなくなってきたからな。ならないようにしていると言った方が正しいか。なんせ周りの女子がうるさいったらありゃしない。まあ、周りから見ていて気分のいいものではないからな。まして自分の大事な奴がそんな風に言われてたんじゃ堪ったもんじゃない。
「キングドラ!」
四体目はキングドラか。
確か切り札的存在じゃなかったか?
ということはこれで最後なのだろう。
「りゅうのいぶき!」
またしても息吹か。
ほんと好きだね。自分の名前と一緒だからか?
「トルネードドラゴンクロー」
さっきと同じように竜の爪を前に突き出し、高速回転をして弾いていく。
「キングドラ、かなしばり!」
っ?!
おおう、まさかそこでかなしばりが来るか。
おかげでリザードンのドラゴンクローは解除され、一瞬動きも止まってしまった。
「ハイドロポンプ!」
へぇ、ようやくジムリーダーらしいバトルをしてくるようになったじゃん。威力もギャラドスとは桁違いだ。
「リザードン、大丈夫………そうだな」
うん、分かってはいたけどね。
効果抜群の技を受けて致命傷になるのはゲッコウガとかオーダイルを相手にした時くらいだもんな。
ぶっ壊れなリザードンを追い詰めるゲッコウガもまたぶっ壊れな存在である。そんなゲッコウガもジュカインだけは相手にしたくないらしい。素早さは互角、使う技は効果抜群ばかり、しかも仕掛けが見えないと来れば流石のゲッコウガでも参るみたいだ。ちなみにジュカインはリザードンが苦手だ。絶賛いわタイプの技を習得中であるくらいには。
あらいやだ、俺のポケモンたちみんなぶっ壊れな存在だわ。この三体に隠れて目立たないが、ヘルガーとボスゴドラもかなりの曲者に仕上がってるし。ラルトスだけは普通に育ってくれるといいな………。
「あれでもダメージにならないの……………っ!?」
イブキさんも大分血の気が引いてきている。ユキノに至っては溜息ばかりだ。そんな呆れるなよ。
「あれ? もう仕掛けて来ないんですか? なら、今度はこっちから行きますよ。リザードン、ソニックブースト」
「くっ………キングドラ、かなしばり!」
安い挑発をしてみたら案の定乗って来た。どんだけ器が小さいんだよ。
「止まらない?!」
ポケモンの技じゃないからな。
「かみなりパンチ」
「こうそくいどうで躱して!」
あ、逃げられた。
キングドラは高速で後方に下がり拳を躱した。
「ハイドロポンプ!」
拳を外したことでリザードンに隙が生まれ、水砲撃を発射準備に入られてしまった。
「リザードン、ソニックブーストで上に飛べ!」
咄嗟ではあったがリザードンも既に対応しており、ギリギリ回避出来た。
こうなったら一旦距離を離すしかあるまい。
ただあっちはこうそくいどうを使った。ということは追撃を掛けてくる可能性が高い。
「こうそくいどうで追いかけながらハイドロポンプよ!」
ほら来た。
好機とばかりに攻めて来たよ。
となるとペンタグラムフォースかコブラだな。
「リザードン、エアキックターン」
リザードンはキングドラを引きつけてから反転し、空気を蹴り出し急降下へと転じた。
「キングドラ、追って!」
キングドラはすぐさま反転し、スピードを加速させながら追って来ている。
「リザードン、後ろから来てるぞ。確実に躱せ」
バトルにおいて細かい動きはポケモン自身に任せた方がいい。俺たちトレーナーが実際に戦うことはないため、戦闘感覚的なものは持ち合わせていない。だから口出しするならば、相手の動きや何をしようとしているかを瞬時に判断し伝えるのがベストだろう。
「キングドラ、速度を上げなさい!」
水砲撃が当たらないためか、速度を上げて至近距離から撃つつもりか。
リザードンは丁度地面近くに降りて来たため、90度切り返して地面スレスレを移動していくとキングドラもそれについて来た。
今だな。
「コブラ」
突然の急停止。
キングドラは反応出来ずにリザードンの横を通り過ぎて行く。
「キングドラ! 後ろ!」
そして急発進。
急停止時の踏ん張る力を利用しての蹴り出しで、一気にキングドラの背後を取った。
「ドラゴンクロー」
今この時だけはこうそくいどうなんて無意味だ。
竜の爪でキングドラを地面に叩き落とした。
「じわれ」
そして倒れ込んだキングドラの真下に地割れを起こし、呑み込んでいく。
「キングドラ、戦闘不能」
出て来たキングドラは目を回しており、ユキノから判定が下された。
「私の記憶ではジムで使われていたのは今ので最後だったと思いますが、まだいますか?」
「………悔しいけど、いないわ」
「そうですか。ではハチマンの勝利ということで」
これで終わりか。
キングドラだけだったな。
「どうしてなの…………。どうして私はあなたに勝てない…………」
「イブキさん。それは考えるだけ無意味なことですよ。ハチマンとリザードンは過去に色々ありました。それはもうイブキさんが想像し難いことまで。その二人がようやく過去から解放されたんです。私たちが勝てるわけありません」
解放はされたけど、条件が揃えばまたなるからね? メガストーンを身につければ再びあの片鱗が出て来るだろうし。
「…………ただ、勝てないのと勝ちたいというのは別ですけどね」
「負けず嫌い過ぎない?」
「あなたに勝てなければあなたの横に立てたなんて思えないもの」
「気にしすぎだろ。俺は今でも充分世話になってるし」
「守られるだけの存在っていのも惨めなものなのよ」
「…………それは分からんでもないが。何もできないってのは歯がゆいからな」
「ええ、だからまずはあなたに勝ちたい。なのにあなたたちときたらさらに強くなるなんて、ほんとドSよね」
「はっ? いやいや何でドSなんだよ。なに、お前ドMなの?」
「な、何を言ってるのよ! そういうことじゃないわよ! 変態!」
「へいへい」
何故強くなることがドSになるのだろうか分からないが深くは聞かないことにする。というか聞きたくない。
「あーそうだ。イブキさんに一つ。キングドラと他のポケモンたちの実力に差がありすぎます。兄者さんの方はそれぞれの特徴を最大限に引き出していると聞きますけど、あなたはそこまで到達していますか?」
「……………あ………」
アドバイスというわけでもないが落ち込むイブキさんに改善点を指摘してみると何か合点がいったらしい。
「あらあら〜、かわいいお客さんね」
おっと、いつの間にか四天王のドラセナさんが来ていたようだ。
…………何でいるの?
「うふふふふ」
「えと、あなたは………?」
笑顔でイブキさんへと近づいていく。目が笑ってないけど。
「うふふふふ」
「あ、あの、近くない………ですか?」
頰に手を当てて小首を傾げながら。
「うふふふふ」
「……………」
今にもキスされそうな距離に涙目になっているイブキさん。
観念したのか無抵抗でドラセナさんに連行されていった。
憐れ…………。
「………先輩、今のは?」
「あー、ジョウト地方のフスベシティってところにあるジムのジムリーダーだ」
「…………なんていうか、変な格好の人ですね」
「まあ、それは否定できないな」
「それじゃ私は行きますね」
「おう、頑張れよ」
イロハは今、ドラセナさんと行動を共にしている。負けた相手からもっと学びたいらしく、直談判しに行ったんだとか。
あいつのこういう時の行動力は素直にすごいと思うわ。それにドラセナさんもよく引き受けてくれたもんだ。
「………さて、仕事するか」
「そうね」
そうして俺たちは事務室に戻り、復旧活動の取りまとめを再開した。
行間
ヒキガヤハチマン 持ち物:キーストーン 菱形の黒いクリスタル etc………
・リザードン(ヒトカゲ→リザード→リザードン) ♂
特性:もうか
覚えてる技:かえんほうしゃ、メタルクロー、かみつく、おにび、えんまく、はがねのつばさ、かみなりパンチ、ドラゴンクロー、シャドークロー、つばめがえし、りゅうのまい、かみくだく、カウンター、じしん、フレアドライブ、ブラストバーン、げきりん、じわれ、だいもんじ、ソーラービーム、リフレクター、はらだいこ
飛行術
・ハイヨーヨー:上昇から下降
・ローヨーヨー:下降から上昇
・トルネード:高速回転
・エアキックターン:空中でターン
・スイシーダ:地面に叩きつける
・シザーズ:左右に移動して撹乱
・ソニックブースト:ゼロからトップに急加速
・コブラ:急停止・急加速
・ブラスターロール:翻って背後を取る
・グリーンスリーブス:連続で攻撃して空中に釣り上げる
・デルタフォース:空中で大きな三角形を描くように連続攻撃
・ペンタグラムフォース:空中で五芒星を描くように連続攻撃
・バードゲージ:スピードを活かして相手の動きをコントロールしていく
・ゲッコウガ(ケロマツ→ゲコガシラ→ゲッコウガ) ♂
特性:きずなへんげ(へんげんじざい→きずなへんげ)
覚えてる技:みずのはどう、あなをほる、かげぶんしん、れいとうパンチ、れいとうビーム、つばめがえし、ハイドロポンプ、くさむすび、グロウパンチ、えんまく、がんせきふうじ、いわなだれ、まもる、かげうち、みずしゅりけん、どろぼう、つじぎり、ハイドロカノン、めざめるパワー(炎)、とんぼがえり、とびはねる、ほごしょく、けたぐり、ぶんまわす、あくのはどう、どろあそび
・ジュカイン(キモリ→ジュプトル→ジュカイン) ♂
持ち物:ジュカインナイト
特性:しんりょく←→ひらいしん
覚えてる技:でんこうせっか、リーフストーム、リーフブレード、ドラゴンクロー、タネマシンガン、ギガドレイン、かみなりパンチ、スピードスター、くさむすび、ソーラービーム、エナジーボール、シザークロス、くさのちかい、マジカルリーフ、タネばくだん、こうそくいどう、つめとぎ、いやなおと、こうごうせい、くさぶえ、やどりぎのタネ、グラスフィールド、なやみのタネ、ハードプラント、つばめがえし、ものまね
・ヘルガー ♂
持ち物:ヘルガナイト
特性:もらいび←→サンパワー
覚えてる技:かみつく、ほのおのキバ、ふいうち、おにび、かえんほうしゃ、かみくだく、れんごく、ほえる、はかいこうせん、アイアンテール、あくのはどう、みちづれ、だいもんじ、ハイパーボイス、ヘドロばくだん、ちょうはつ
・ボスゴドラ ♂
持ち物:ボスゴドラナイト
特性:がんじょう
覚えてる技:ロックブラスト、あなをほる、なげつける、メタルクロー、アイアンヘッド、アイアンテール、てっぺき、メタルバースト、ボディパージ、ヘビーボンバー、ロックカット、ほのおのパンチ、もろはのずつき
・ラルトス ♀
覚えてる技:リフレクター
イブキ
・キングドラ ♀
覚えてる技:りゅうのいぶき、ハイドロポンプ、げきりん、こうそくいどう、かなしばり
・ギャラドス ♀
特性:いかく
覚えてる技:ハイドロポンプ、たきのぼり、はかいこうせん、りゅうのまい、アクアテール
・ハクリュー ♀
覚えてる技:アクアテール、りゅうのいぶき、げきりん、でんじは
・クリムガン(色違い) ♂
特性:さめはだ
覚えてる技:りゅうのいかり、きりさく、ドラゴンテール、げきりん