ポケモントレーナー ハチマン 〜ぼーなすとらっく集〜 作:八橋夏目
我が名は剣豪将軍ザイモクザヨシテルである!
でんじほうを愛し、ライコウに魅せられた者なり!
「厨二さん、ほら頑張ってください!」
「あ、はい………」
現実逃避をしていたら怒られたのである。
全く、手厳しい妹君であるな。
デオキシス・ギラティナと命の駆け引きをしてから早二月半。我は今ミアレシティにあるミアレタワーに向かっている。少し前まではヒャッコクシティの復旧作業を手伝って(手伝わされて)いたのであるが、ようやくこっちに戻ってこられたと思ったらのこれである。数日前にも行ったというのに! ハチマンは鬼だ! 相棒に対してこの仕打ち。何か仕返ししてやりたい気もしなくもない。けど怖いからしない。主に周りが。
なにゆえ彼奴はあんなにもモテるのだ? しかも実の妹からまで。おかしい、おかしいぞ。世界は一体どうなってしまったというのだっ!!
ハチマンがモテるのならば我もモテたっていいではないか! 理不尽である!
「あ、コマチさんこんにちわ!」
「あ、ユリーカちゃん! こんにちわ!」
…………あれ?
早速?
早速なのか?
言った側からこれは酷くなーい?
我泣くぞ? 遊んでくれなきゃ泣いちゃうぞ?
「厨二さん、何気持ち悪い百面相してるんですか。行きますよ?」
「………はい」
世知辛いのである!
現実はこんなにも世知辛いのである!
妹君から言われるとハチマンに似てる時があって、余計にダメージデカいのであるぞ! アホ毛の力恐るべし!
「ユリーカちゃんは将来ポケモントレーナーになったら、どんなポケモンと旅したい?」
「うーんとね、デデンネと旅するの! それでいろんなポケモンたちと出会ってともだちになりたい!」
「そっかー。トレーナーになるのが楽しみだね!」
「うん! それでね、お兄ちゃんとバトルしてバッジもゲットするんだよ!」
「いいなー、うちのお兄ちゃんとか鬼いちゃんだからなー。勝つとか負けるとかの次元じゃないし」
あれはもはや人間なのか怪しいがな。それを言ったらゲッコウガももはやポケモンなのか怪しいまである。つまり、彼奴らは人間でもポケモンでもない我らとは違う生き物なのだろう。だからバトル中にクレーターを作ろうが水圧で地割れを起こそうが草で鉄筋を破壊しようが、それはもはや序の口と言えよう。
帰ってくるなりあの惨状を見せられたのには、さすがの我でも頭がついていかなくなるのも無理もない話なのである。
「重いでござる………」
というかこの箱何が入っているのだ?
普通の箱の割に重すぎやしないか?
我の力を以ってしても重いのである。そもそも我そんなに腕力ないのだが。
ならばジバコイルに磁力で持たせるか頭にでも置けばよくね? と思ったのだが、悲しいかな、既に占領されているのである。量が多すぎるのだ。これなら宅配業者に頼めばいいものを、妙なところでケチるから我にしわ寄せが来るんだぞ!
…………我、ほんとに何を運んでいるのん? 爆発とかしないよね?
✳︎ ✳︎ ✳︎
「ぜー、はーっ」
やっと着いた…………。
最後エレベーターがあってほんと助かったぞ。我もう無理………。
「お疲れ様です、ヨシテルさん」
し、シトロン殿か……。
う、声が、出せん………。
「と、取り敢えず、お水をどうぞ」
差し出された水を一気に飲み干した。
うぃー、生き返るのである!
「我、復活!」
「それはよかったです」
「すまぬな、シトロン殿」
シトロン殿は少し前にこれまたハチマンの使いでこのミアレタワーにやって来た時に出会ったミアレジムのジムリーダーである。機械工学を得意分野とし、ミアレシティを始め、現在カロス各地でシトロン殿が設計した(中には自ら完成させたものまである)商品が使われているのだとか。そのバックアップをしているのがポケモン協会であり、つまるところハチマンが手を引いているらしい。そして、今回もそれ関連なんだそうだが…………ぐぬぬ、ハチマンめ。いつの間にそんな契約を交わしていたのだ。協会の理事になってからというもの無駄にカリスマ性を発揮してないか? 基本的なステータスも無駄に高いくせに…………。イケメン完璧超人のハヤマ某ですら霞む勢いであるぞ。これだからリア充は。我も早く大人になりたい…………。
「厨二さん、ありがとうございました」
「う、うむ。ま、まあ、ハチマンの頼みだしな。我に出来ることくらいならたまに手伝うのだって吝かではないのであるぞ」
「ではでは、次もよろしくお願いしますね!」
「お、おうふ………」
あのハチマンにしてこの妹あり、であるな。
なんかやっぱりこの兄妹には勝てない気がする……………。
「あ、そうだシトロン君! さっきここに来るまでにユリーカちゃんからポケモントレーナーになったらどんなポケモンと旅したいか話してたんだけどね」
「ユリーカがポケモントレーナーに、ですか」
「うん、シトロン君はユリーカちゃんがジムに挑戦しに来たらどうするの?」
「どうするも何も全力で相手をするまでです。例え妹であれど手は抜きません。それに、ユリーカとはジムリーダーとしてバトルするのも僕の夢の一つですから」
「ほえー」
兄妹での本気のバトルであるか。アホ毛兄妹も本気でバトルした暁には…………やめておくのである。想像するまでもなく悲しい結末しか見えぬ。お願いだからクレーターはやめるのだぁぁぁあああ!
「ヨシテルさんは何か将来の夢とかってありますか?」
「ぬ? 我の将来の夢であるか? それならば考えるまでもない。我の夢は小説家になることである!」
「小説家、ですか………?」
「うむ、我の周りにはネタになりそうな者がちらほらといるのでな。そこの妹君然り、その兄然り」
最近全く手をつけられていないがな! ガハハ!
いや、復旧作業に人手がいることは重々承知しているのだ。我だって早く元のカロスに戻ってほしいと願っているまであるぞ!
あっちでは老若男女問わず皆が一丸となっており、我も感銘を受けたくらいだ。小説の題材にしようかなとか、これネタになりそうじゃね? とか色々考えてもいるのだ。何なら、我とライコウの出逢いとかも小説にしたいまである! これ割と昔から温めてあるネタだから超大事!
しかし、しかしである。それを文字に起こす暇がないとは頂けないぞ!
ま、まあそれをハチマンに言ったら、「俺なんか入院中からずっと働いてますけど何か?」と言われるのがオチである。だから言わない。口は災いの元であるからな。お口はチャック。我賢い。
「それに我も一度御伽話のような出逢いをしているのだ。今の我を作り上げていると言っても過言ではない」
「へぇ、それはまたすごいですね。どんな出逢いだったんですか?」
「うむ、あれは我が十歳の時。当時はまだ自分のポケモンを連れていなかったのであるが、好奇心というものは人を変えてしまうようでな。気づけば我は野生のポケモンに取り囲まれていたのだ。八方塞がりでここで死ぬのだと覚悟した時、奴は颯爽と現れ我のピンチを救ってくれたのだ」
「奴、というと?」
「伝説のポケモン、ライコウである」
あの時のライコウは神だと思ったくらいである。獣々しくあり雄々しくあり。それでいて美しさを兼ね備えている。我のハートは一瞬にして握り潰され………潰されたら我死ぬな………ま、まあ、そういうことである。
「ライコウ………確かでんきタイプのポケモンですね。ジョウト地方の言い伝えにはホウオウの力で蘇ったとかありました」
その話も感動的なものであるしな。
我にとってライコウは我がポケモントレーナーとしての全てと言っても過言ではないわ!
ヌハハハハ!
「この時、野生のポケモンを追い払うために使ったのがでんじほうでな。その一閃に魅了されてしまった我はライコウを調べ、でんじほうにたどり着き、でんじほうを覚えるポケモンを最初のポケモンにしようと決めたのだ」
そしてでんじほう!
我を助け出す時のあの戦慄!
我今でも思い出すだけで奮い立ってくるぞぃ!
「それはそのジバコイルのことですか?」
「いや、我の最初のポケモンは今はZへと進化したポリゴンである。ライコウに出逢ってからはライコウについて調べ、あの時使われた技が何かを調べ、でんじほうに辿り着いた後は、どのポケモンがでんじほうを使えるのか、ずっと調べ回る毎日であったな。その過程でタマムシシティに行った際に気分転換に行ったコインゲームでボロ儲けしてしまい、ポリゴンを引き換えたというわけである」
ほんとはそこでボロ儲けできたことでコインゲームにハマり、足繁く通った後に引き換えられたのだがな。でなければあんなくそ高い交換条件、果たせるわけがなかろう。だけどまあ、少しくらい端折ってもバレぬだろう。
「厨二さん、それハマりにハマって何回も足繁く通ってのことじゃありませんでしたっけ?」
「う、うむ、そうとも言うな」
く、くそぅ。
いいではないか、少しくらい話を端折ったって!
全く、ハチマンといい妹君といい細かいところに拘る兄妹であるな。
「…………ジム、ここ?」
ぬ?
ジムへの挑戦者か?
「おや、ジム戦ですか?」
「え、あ、うん………」
ふむ、この少年。
見たところ一人で旅しているようであるな。後ろに誰もいないし。
「僕がこのミアレジムのジムリーダー、シトロンです。あ、そうだ! ヨシテルさん、彼とバトルしてもらえませんか?」
「む?」
え、我?
我ジムリーダーでも何でもなくね?
「実はミアレジムにもジムトレーナーを採用しようかと思ってるんですけど、その際の細かいルール規定を検討中でして。ジムごとに細かい規定を取り決めていいとは言われているものの、シャラジムなどとはちょっと傾向が違うので、その調整をしたいんです」
なるほど。
つまりは臨時のジムトレーナーというわけか。
「我は構わぬが………」
やるには構わぬが些か少年がかわいそうではないか?
「ええ、仰りたいことは分かっています。ヨシテルさんにはジバコイル一体のみ、挑戦者は手持ち全てのハンデをつけます。交代も自由です。そして、ヨシテルさんに勝てれば、僕とバトルができるということでいかがでしょうか」
「なにゆえジバコイルであるのだ?」
「僕もジバコイルを連れているからです。ジム戦でも使います。ジムトレーナーはジムリーダー攻略のヒントとなるように、と規定されてますからね。ジバコイルを連れているヨシテルさんは打って付けなんです」
シャラジムもユイガハマ嬢がルカリオでバトルしていると聞く。ジムトレーナーにはジムリーダーと同じ種族のポケモンを使ってもらった方が理に適ってるというわけであるな。
「けぷこんけぷこん! そのルールしかと心得た! それならば我の役目としても十分であろうぞ!」
「はい、それとレールガンも見せてください」
「………………」
此奴、しれっと自分の目的優先させてないか?
とんだ曲者であるな。
「…………お主、それが本心なのでは?」
「やだな〜、そんなわけないじゃないですか」
背筋が凍りつく勢いである。
まるでイッシキ嬢であるな。怖い怖い。あざといメガネ少年とか誰得なのだろうか。あといろはす超怖い。
「ま、まあ、よかろう。少年、お主もそれで良いか?」
「シャラジムでジムトレーナーの姉ちゃんにコテンパンにされたからな! ここで取り戻してやる!」
「…………」
まさかの被害者であったか………。
「お主も被害者であったか…………」
「ひがいしゃ?」
なんか無敗を記録しているとか、負けたのは元チャンピオンの奴にだけとか、色々話を聞くが………。
そんな噂が出てくるようなユイガハマ嬢にコテンパンにされて来ていたとは……………。
「いや、何でもないのである」
少年が変なのーとか言ってるが気にしない。気にしたら負けなのである。
超どうでもいいがミアレタワー内にジムって、安全性は問題ないのであるか? 力出しすぎたら床が抜けるとかない…………のよな?
「審判は僕がしますね。ルールは先程の通りヨシテルさんはジバコイル一体。挑戦者は手持ち全てとします。交代も自由です。また技の使用は四つまでとします。それでは、バトル始め!」
仕方ない。
かわいそうではあるが、受けたものを今更やめるのも我の流儀に反す。やるからには全力で楽しむまでよ!
「では、参る。ゆけぃ、ジバコイル!」
「いくぞ、ガラガラ!」
うむ、まずはガラガラであるか。でんきタイプのジムにじめんタイプを連れてくる。王道であるな。
「来ないのならこっちから行ってやる! ガラガラ、ホネこんぼう!」
そんなことを考えていたら先手を取られたでござる。
では、その攻撃力が如何程か試すとしんぜよう。
「ジバコイル、ジャイロボール」
突き出して来た骨ごと、ガラガラをジャイロ回転で弾き飛ばした。これだけ軽く飛ぶということは、さほど攻撃力はないと見えよう。
「なんで………効果抜群の技じゃないのかよ………」
タイプ相性から見れば正しい判断である。だが、それ以前に実力の差というところに目が行ってなさそうであるな。それに、そんな王道ばかりではつまらぬぞ!
「少年よ、技というのは相性だけが全てではないのである。時には効果がないと分かっていても使いたい時だってあるのだ! ジバコイル!」
「ジー」
「な、何か来る?! ガラガラ、ジバコイルにほのおのパンチだ! 先に決めろ!」
さて、じめんタイプには効果がないが、やはりバトルで使いたいものは使いたいのだ。それが楽しいのだから、我はそれでいいのである。
「正々堂々、真正面から挑むのはいいことではある。しかし、時にはそれが命取りになるということも忘れるでないぞ。ジバコイル、レールガン!」
ふっ、決まった………!
「これが………レールガン、ですか」
「ゴラムゴラム! これが我が秘技レールガンである!」
驚いてくれたようで何よりである、シトロン殿。
我、そういう顔が見たくて使ってるまであるからな。
「ガラガラ! ………って、あれ? ダメージがない?」
お、気がついたようであるな。
「左様、この技はでんじほうであるからな。じめんタイプには効果がない。故にダメージはないのである!」
「それじゃ意味ないじゃん」
だが、分かってない。分かってないのである!
「甘い、甘いのである! バトルは楽しむもの! 使いたい技を使って勝つ! それがポケモンバトルである! 楽しくないバトルなどやる価値もないわ! というか疲れるだけである! それにダメージがないだけであって、ゼロ距離から放たれた衝撃でジバコイルとの距離は随分と離れたではないか! ヌハハハハッ!」
「っ?!」
技を当ててダメージを与えることだけがバトルではないのだ! 嘘だと思うのならホウエン地方に行ってみるがいい。コンテストといういわゆる魅せるポケモンバトルのようなものがあるのだからな! ………あれってバトルしてたかは定かではないが、とにかく魅せるのだから例えに使っても文句はあるまい。
「だったら交代だ! 戻れガラガラ! ヘラクロス、遠距離からでも攻撃が出来るお前の力を見せてやれ!」
なるほど、つまりガラガラに遠隔攻撃がないと見た。いや、あるのかもしれんがまだ使い慣れてないという可能性もあるな。
そして次はヘラクロスであるか。むし・かくとうタイプ。はがねタイプを持つジバコイルには相性が悪い相手である。
「ミサイルばり!」
「むははははっ! それは意味がないと先程見せたではないか! ジバコイル、ジャイロボール!」
だがしかし! かくとうタイプの遠距離攻撃って意外と少なかったり技術を要するものが多い。この少年ではまだそこに到達していないだろうし、恐るるに足らん相手なのだぞ!
「今だ! ヘラクロス、かわらわり!」
と思っていた時期もありました。
綺麗に一発入れられたぞぃ!
「なるほど、ミサイルばりを囮にして来たであるか。ならば、こちらも本気を見せるとしようぞ」
ジバコイルには申し訳ないことしたのである。お詫びに一発撃たせてやるとしよう。
「ジバコイル、レールガン!」
「さっき見たから躱せるだろ! ヘラクロス、飛べ!」
本来のレールガンはロックオンからのでんじほうである。
飛んだところで追尾機能が働き、狙われ続けるのだ。
「えっ……?」
少年、お口あんぐり。
あれ以上開くと顎が外れやしまいか心配になってくるぞ。
「軌道が一直線だと思っていたのならば、それは間違いである」
「ヘラクロス、戦闘不能!」
やはり思っていたのであろうな。
もの凄く悔しそうな顔をしているのである。まるでハチマンに嫉妬している我を見ているようだ。
「だったら、当たる前に倒せばいい! 速さで勝負だ! ゲコガシラ!」
ヘラクロスをボールに戻して次はゲコガシラを出して来た。
ゲコガシラであるか。
ハチマンのゲッコウガを見ている我らにとって、脅威でも何でもないのである!
「レールガン!」
「でんこうせっか!」
もう一度レールガンを放つとでんこうせっかで交わされた。だがすぐに追尾機能が働き、逃げるゲコガシラの後をついて行っている。
昔スクールでハチマンとバトルした時を思い出すな。あの時は逆に利用されてポリゴンがやられてしまったが。
「ゲコガシラ、そのまま引き付けろ!」
「ヌハハハハ! 余所見とは些か余裕ではないか? 隙だらけであるぞ! レールガン!」
背後をチラリと見やるゲコガシラ。
全く、隙だらけではないか。
「ゲコガシラ!?」
ふっ、これでゲコガシラもーーー。
「やったっ! 躱せた!」
躱したであるか!
ならば次の手に移るのみである。
「ジャイロボールである!」
躱した先に向かいジャイロ回転にゲコガシラを巻き込み、地面へと叩きつけた。痛そうであるな。我痛いのは嫌いだぞ。
「ゲコガシラ?!」
おお、なんとまだ耐えるのか。
ならもう一手であるな。
「まだだ、げきりゅうが来た! ゲコガシラ、みずの「レールガン!」はーー」
おっと、このゲコガシラの特性はげきりゅうであったか。先に動かれていればそれなりにダメージを食らっていたやもしれぬな。
だがまあーーー。
「ふっ、先の読みが甘いのである。我の相棒は一手から数パターンの対処法を瞬時に用意しているのだ。それを毎度見せられて来た我にはこれくらいの一手、想定内である!」
「くっ………」
ハチマンのバトルを見てきているのだ。それくらいのことは想定内であるぞ。
「もう一度だ、ガラガラ!」
再びガラガラの登場であるな。となると他に対処できるポケモンがいない、もしくは手持ちがこれで最後であるか。
「ガラガラ、ホネ………ホネを投げるんだ! ホネブーメラン!」
これは今出来た技と見て良かろう。
土壇場で思いつき、技として完成させるポケモンの潜在的な能力。
此奴、育てばもしくは………。
「じごくぐるま!」
骨を躱したところをガラガラに掴まれ、ジバコイルは地面に叩きつけられた。
効果抜群………む?
もしやこのガラガラの特性はいしあたまではないか? 反動のダメージを受けておらぬではないか。
「ヌハハハハ、お見事である。だがまだまだであるぞ!」
さて、立て直すとしよう。
「ほのおのパンチ!」
此奴の可能性を信じて、我がとっておきの秘儀をお見せするのだ。
「テレポート!」
炎を纏った拳が届く寸前にジバコイルは消えた。
「厨二さん、テレポート使えたんですか?!」
「え? 我のジバコイル、昔から覚えてるのであるぞ? ハチマンにも見せたことないがな!」
「コマチ聞いてないよ………」
そりゃとっておきの秘儀である。滅多に見せるわけがなかろう。
「ホネブーメラン!」
「ジャイロボール!」
ジャイロ回転で再度投げて来た骨を弾いた。
「そのまま突っ込むのである!」
そして、トドメの一撃をくれてやったのである。
ふっ、これぞテレポート戦術。
「ガラガラ!?」
「ガラガラ、戦闘不能! よって勝者、ヨシテルさん!」
ヌハハハハ、勝っちゃったのである。
どうしよう、我勝っちゃった………。後先考えてなかったのであるぞ…………。
「厨二さん、エゲツなーい」
「かわいそー」
ぐぬぬ………。
これでも手加減していたつもりなのだが…………。
ええい! こうなったら先人の知恵というものを授けてプラマイゼロにしてやるのだ!
「少年よ、某に足りないものは何だろうな」
「………ポケモンのことが分かってないから、だろ」
「いや、バトルを楽しむ心である。今のお主には焦りと驕りが見受けられる。恐らくここに来るまでにヒヨクジムにでも挑戦して、相性がいいとは言えない中で見事勝利した。その自信が驕りとなり、早くジムを攻略したいという焦りからバトルを楽しむ心を見失ったのであろう」
これは我がバトルをしていて思ったことである。
この少年、些か焦りを見せておったのでな。シャラジムに行ったと言っていたのだし、ヒヨク回りでミアレに来たと思われる。外れてたら知らん。我そこまで知るわけないし。
で、取り敢えず一つはジムバッジを獲得していると見た。となれば一つ獲得出来たことでの驕りも合わさってのことだと伺えよう。
そういう悪いところを指摘して次からこうするといいと教えれば、我の株も下がらないはず!
「だから、次かーー」
「もうわけ分かんねぇ! なんだよ、みんなして! 姉ちゃんはポケモンたちをもっと知れっていうし、今度はバトルを楽しめっていうし! なんでこんなに複雑なんだよ!」
あ、失敗したでごじゃる。
我の続きがかき消されてしまったぞ。此奴、幻想殺しでも持っているのか?
くそぅ! なしてハチマンは出来て我には出来んかね。理不尽ったい!
あ、ついホウエンの訛りが出てしまった。カントー出身なのに。
「………それはポケモンバトルの主役がポケモンたちだからです。トレーナーは指示を出すだけで実際には戦わない。だからこそ、ポケモンたちが上手く動けるように見て聞いて、冷静に判断をする必要があります。極論を言えば、ポケモンたちの全てを理解し、相手の動きも全て見切れることが理想なんです。でもそんなことはできない。できる可能性があるのはチャンピオンよりも強い『あの人』くらいでしょうが、彼もまた人間です。恐らく無理でしょうね。それくらい難しく奥が深い。それがポケモンバトルなんです。そしてポケモンジムというのはそのトレーナーとポケモンの可能性を試す場となっています。ジムリーダーはその壁として、試練として立ちはだかる存在であり、挑戦者の成長を見極める役目があるんです。だから敢えて言わせてもらいます。今の君では僕に勝つことはおろか、ヨシテルさんのジバコイルに勝つことも難しいでしょう」
あれ?
なんだかすごく空気悪くなってなーい?
我、どしたらいいのん?
ーーー笑えばいいんじゃね。
………………。
我の中のハチマンって一体…………。
だが仕方あるまい。
この居た堪れない空気にいることこそ、我無理!
「ヌハハハハ! 我、ジム戦とかしたことないし初めて聞いたのである!」
「ええっ?! ジム戦したことなかったんですか?! あんなに強いのに!?」
「え? だって我そういうのに興味ないし? ハチマンがジム戦してるのくらいしか見てないし? そもそも我ハチマン以外とバトルなんてほとんどしたことなかったし? 緊急時以外でのバトルなんて楽しければそれでよくね?」
ふっ、決まった。
これぞ必殺なりきりハチマン!
なりきりハチマンとはハチマンがこういう時に言いそうなことややりそうなことを実行し危機を回避する必殺技である!
「そもそもポケモンバトルは楽しむためのものなんです。中にはポケモンを道具のように扱って攻撃させたりする人もいますが、それは間違いです。人とポケモンはお互いに分かり合うことで呼吸を合わせ、楽しいバトルを作り上げていける。僕はそういう関係だと思っています」
トホホ………。
無理であったか。
必殺技なのに………。
やはり初めて使ったのが悪かったのであるか………? そうなのか?
教えてハチマン先生!
ーーーいや、知らんし。
ぐぼぁっ?!
お、お主それでも我の相棒か………?
我の中でくらいもう少し優しくしてくれてもよくなーい?
我引きこもっちゃうぞ? ヒッキーになっちゃうぞ?
あ、それはどちらかと言えばこの少年の方であったな。此奴、このまま挫折して壊れるんじゃね?
え、なにそれ超怖い。しかもそうしたの我とのバトルだし。
助けてハチえもん!
ーーー諦めろ。
ぐぬぬ………。
し、仕方あるまい。こうなればもう一度なりきりハチマンを発動させるまでよ!
「少年よ、しばらくの間我と特訓せぬか?」
「えっ………?」
「我とバトルをしてくれた礼とでも受け取ってくれればよい」
「………お願い、します」
「うむ、心得た」
や、やったぞハチマン!
ついにこの居た堪れない空気から脱出したであるぞ!
褒めるがよい! 讃えるがよい! 我、結構頑張ったぞ!
ーーーいや、それこそ知らんし。
ぐぼぁっ!?
ま、またであるか?!
それともなりきりハチマンが発動中のままだったり…………?
いいもん! もういいもん! 我は少年とバトルに明け暮れるもん! しばらく手伝ってあげないんだからね!
…………うわ、我ながらキモいのである。これがトツカ氏であればどんなによかったか。
うむ、そうだ! 今度からなりきりトツカ氏を発動させるとしよう。その方が我へのダメージが少ない、はず………。少ないよね? 少ないと言って!
ーーートツカはやらん!
ハチマンの鬼ィィィイイイイイイイイイッッ!!
「と、というわけである、シトロン殿。今日のところは失礼させてもらうぞぃ」
「はい、ありがとうございました。君も是非また挑戦しに来てくださいね」
「うん………」
………どうにか切り抜けられたな。いやほんと危なかったのである。思わず発狂して妹ズにキモいと連呼されて発狂してキモいと連呼されるループに陥るところだったわ! それもこれも全部ハチマンのせいである! うん、そうだ! ハチマンが悪い! 我はちっとも悪くないのである!
「取り敢えず、何か食わぬか? 我の奢りである」
「いいのっ?」
「うむ、これでもちまちま稼いではいるからな。一食くらいへっちゃらであるぞ!」
「じゃ、じゃあレストラン行きたい!」
「了解したである!」
さて、今日は妬け食いであるな。爆ぜろリア充! 弾けろハチマン! バニッシュメント・ディス・ワールド!
あ、さすがにハチマンに死なれては困るな…………。
行間
ザイモクザヨシテル
・ポリゴンZ(ポリゴン→ポリゴン2→ポリゴンZ)
特性:てきおうりょく(トレース→てきおうりょく)
覚えてる技:トライアタック、でんじほう、ロックオン、じこさいせい、テレポート、れいとうビーム、かえんほうしゃ、はかいこうせん、テクスチャー2、こうそくいどう、でんじは、かげぶんしん、テクスチャー、めざめるパワー(水)
・エーフィ(イーブイ→エーフィ) ♀
特性:シンクロ(てきおうりょく→シンクロ)
覚えてる技:でんじほう、サイコキネシス、はかいこうせん、シャドーボール、めいそう
・ジバコイル
特性:じりょく
覚えてる技:でんじほう、ロックオン、ジャイロボール、エレキフィールド、かげぶんしん、めざめるパワー(炎)、テレポート
・ダイノーズ ♂
覚えてる技:でんじほう、ロックオン、マグネットボム、てっぺき、めざめるパワー(地面)
・ロトム
特性:ふゆう
覚えてる技:ほうでん、めざめるパワー(草)、シャドーボール、でんじは
・ギルガルド(ヒトツキ→ニダンギル→ギルガルド) ♂
特性:バトルスイッチ
覚えてる技:てっぺき、きりさく、つばめがえし、せいなるつるぎ、ラスターカノン、つじぎり、キングシールド、めざめるパワー(鋼)
少年君
・ゲコガシラ
特性:げきりゅう
覚えてる技:みずのはどう、でんこうせっか
・ガラガラ
特性:いしあたま
覚えてる技:ホネこんぼう、ほのおのパンチ、じごくぐるま、ホネブーメラン
・ヘラクロス
覚えてる技:ミサイルばり、かわらわり